(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117396
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】燃料吹込装置、燃料吹込方法
(51)【国際特許分類】
C04B 7/44 20060101AFI20240822BHJP
F23G 5/20 20060101ALI20240822BHJP
F23K 1/00 20060101ALI20240822BHJP
F23K 3/00 20060101ALI20240822BHJP
F23K 3/02 20060101ALI20240822BHJP
F23K 5/00 20060101ALI20240822BHJP
F23L 5/02 20060101ALI20240822BHJP
F23L 1/00 20060101ALI20240822BHJP
F23N 1/02 20060101ALI20240822BHJP
F23N 1/00 20060101ALI20240822BHJP
F23C 1/12 20060101ALI20240822BHJP
F23C 9/08 20060101ALI20240822BHJP
F23C 99/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C04B7/44
F23G5/20 A
F23K1/00 B
F23K3/00 302
F23K3/02 301
F23K5/00 301D
F23L5/02
F23L1/00 B
F23N1/02 102
F23N1/00 102A
F23C1/12
F23C9/08 400
F23C99/00 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023468
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】内藤 浩一
【テーマコード(参考)】
3K003
3K023
3K065
3K068
3K091
3K261
4G112
【Fターム(参考)】
3K003AA01
3K003AB02
3K003BB01
3K003CA03
3K003CA05
3K003CB05
3K003CC01
3K003DA03
3K003DA06
3K023BA07
3K023BA13
3K065TA01
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3K065TD07
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3K091AA01
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3K091FB32
3K091FB42
3K261AA04
3K261DA02
3K261DA13
3K261DA21
4G112KA02
(57)【要約】
【課題】クリンカの品質を担保しつつ、NO
xの発生を抑制しながら、クリンカ焼成用の燃料として可燃性ガスを利用することを可能にする、燃料吹込装置及び燃料吹込方法を提供する。
【解決手段】セメント焼成用のロータリーキルンの内部に、固体の第一燃料を含む気流を吹き込み可能なバーナを備えてなる燃料吹込装置であって、バーナのロータリーキルン側の先端に備えられた第一ポートに連絡された第一流路と、第一流路に第一燃料を供給する第一燃料供給装置と、第一流路に可燃性ガスを供給する可燃性ガス供給装置とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント焼成用のロータリーキルンの内部に、固体の第一燃料を含む気流を吹き込み可能なバーナを備えてなる、燃料吹込装置であって、
前記バーナの前記ロータリーキルン側の先端に備えられた第一ポートに連絡された第一流路と、
前記第一流路に前記第一燃料を供給する第一燃料供給装置と、
前記第一流路に可燃性ガスを供給する可燃性ガス供給装置とを備えたことを特徴とする、燃料吹込装置。
【請求項2】
前記第一流路に大気を供給するファンと、
前記ファンから前記第一流路に供給される前記大気と、前記可燃性ガス供給装置から前記第一流路に供給される前記可燃性ガスとの流量比を調整可能な第一調整弁とを備え、
前記第一燃料は、固体の粉末状の燃料であり、
前記第一ポートは、前記第一調整弁を通過した気流と共に前記第一燃料を前記ロータリーキルンに吹き込むことを特徴とする、請求項1に記載の燃料吹込装置。
【請求項3】
前記第一燃料は、固体の可燃性廃棄物であり、
前記バーナの前記ロータリーキルン側の先端に備えられた、前記第一ポートとは異なる第二ポートに連絡された第二流路と、
前記第二流路に固体の粉末状の燃料からなる第二燃料を供給する第二燃料供給装置と、
前記第二流路に大気を供給するファンを備えたことを特徴とする、請求項1に記載の燃料吹込装置。
【請求項4】
前記可燃性ガス供給装置は、前記第二流路にも前記可燃性ガスの供給が可能な構成であり、
前記第二流路に供給される前記可燃性ガスの流量を調整する第二調整弁を備えたことを特徴とする、請求項3に記載の燃料吹込装置。
【請求項5】
固体の可燃性廃棄物からなる前記第一燃料を含む気流を吹き込み可能な前記バーナに対応する第一バーナと、
前記第一バーナとは独立した位置に配置され、前記第一燃料とは異なる固体の粉末状の燃料からなる第二燃料を含む気流を吹き込み可能な第二バーナと、
前記第二バーナの前記ロータリーキルン側の先端に備えられた第二ポートに連絡された第二流路と、
前記第二流路に前記第二燃料を供給する第二燃料供給装置と、
前記第二流路に大気を供給するファンを備えたことを特徴とする、請求項1に記載の燃料吹込装置。
【請求項6】
前記可燃性ガスが、水素、炭化水素、アンモニア、前記固形燃料をガス化した後の揮発ガスからなる群から選択される1種以上からなることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の燃料吹込装置。
【請求項7】
セメント焼成用のロータリーキルンの内部に、バーナの前記ロータリーキルン側の先端に備えられたポートから燃料を吹き込む燃料吹込方法であって、
固体の第一燃料を吹込可能な前記ポートである第一ポートから可燃性ガスを含む気流を前記ロータリーキルンの内部に吹き込むことを特徴とする、燃料吹込方法。
【請求項8】
前記第一ポートは、上流側において第一流路に連絡されており、
前記第一流路に対して前記第一燃料と前記可燃性ガスとが供給可能であり、
第一調整弁によって、前記第一流路に供給される前記可燃性ガスの流量を調整し、
前記第一調整弁を通過した前記可燃性ガスを含む気流を、前記ロータリーキルンの内部に吹き込むことを特徴とする、請求項7に記載の燃料吹込方法。
【請求項9】
前記第一燃料は、固体の粉末状の燃料であり、
前記第一流路に対して前記第一燃料と前記可燃性ガスと大気とが供給可能であり、
前記第一調整弁によって、ファンから供給される大気と可燃性ガス供給装置から供給される前記可燃性ガスとの流量比を調整し、
前記第一調整弁を通過した前記可燃性ガスを含む気流と共に前記第一燃料を前記第一ポートから前記ロータリーキルンの内部に吹き込むことを特徴とする、請求項8に記載の燃料吹込方法。
【請求項10】
前記第一燃料は、固体の可燃性廃棄物であり、
前記バーナの前記第一ポートから、前記第一燃料と共に又は単独で、前記可燃性ガスを含む気流を前記ロータリーキルンの内部に吹き込み、
前記バーナの前記ロータリーキルン側の先端に備えられた、前記第一ポートとは異なる第二ポートから、固体の粉末状の燃料からなる第二燃料と大気を含む気流を前記ロータリーキルンの内部に吹き込むことを特徴とする、請求項7に記載の燃料吹込方法。
【請求項11】
前記第二ポートから吹き込まれる気流は、前記可燃性ガスを含み、
前記第二ポートから吹き込まれる気流に含まれる前記可燃性ガスの流量を第二調整弁によって調整することを特徴とする、請求項10に記載の燃料吹込方法。
【請求項12】
固体の可燃性廃棄物からなる前記第一燃料を吹き込み可能な前記バーナに対応する第一バーナから前記可燃性ガスを含む気流を前記ロータリーキルンの内部に吹き込み、
前記第一バーナとは独立した位置に配置された第二バーナから、前記第一燃料とは異なる固体の粉末状の燃料からなる第二燃料と大気を含む気流を前記ロータリーキルンの内部に吹き込むことを特徴とする、請求項7に記載の燃料吹込方法。
【請求項13】
前記可燃性ガスが、水素、炭化水素、アンモニア、前記固形燃料をガス化した後の揮発ガスからなる群から選択される1種以上からなることを特徴とする、請求項7~12のいずれか1項に記載の燃料吹込方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント焼成用のロータリーキルンの内部に、燃料を含む気流を吹き込み可能な、燃料吹込装置に関する。また、本発明は、前記燃料を含む気流をセメント焼成用のロータリーキルンの内部に吹き込む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントの製造に際しては、1400℃を超える高温での焼成が必要である。この焼成過程における化学反応により、主要原料である石灰石が脱炭酸(CaCO3⇒CaO+CO2)する。これらの事情により、セメントの製造過程で大量のCO2が発生することが知られている。
【0003】
セメントの製造過程で発生するCO2のうち、化石エネルギーの消費や電力消費といった、エネルギーに由来するものが約40%を占める。このため、温暖化への影響に鑑み、従来の主燃料である石炭と比べてCO2排出原単位の低い都市ガス等の可燃性ガスを、主燃料の代替燃料として利用することが検討されている。単位熱量あたりのCO2排出量を比較すると、都市ガスは石炭の6割程度である。
【0004】
下記特許文献1は、石炭等の主燃料を吹き込むバーナに、主燃料が投入されるポートとは別の専用のポートを設け、この専用ポートから可燃性ガスの一種であるアンモニアガスをセメント焼成用のロータリーキルンに吹き込む技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
可燃性ガスは気体であるため、固体である石炭よりも燃焼速度が速くなる傾向を示す。このため、可燃性ガスをセメント焼成用の燃料としてバーナで用いた場合、石炭と比べて可燃性ガスの燃焼反応が急速に進み、ロータリーキルン内で局所的な高温部が形成されやすい。この結果、ロータリーキルン内におけるNOxの発生量が増加する。
【0007】
NOxは大気汚染源の一つであるため、排ガスに含まれるNOxの量を抑制することは、セメント業界にも要請されている。NOxの発生量が増加すると、排ガスに含まれるNOxの量を低下させるために脱硝剤の使用量を増加することが余儀なくされ、セメント製造原価の上昇につながる。
【0008】
また、可燃性ガスは石炭と比べて燃焼速度が速いため、石炭と可燃性ガスとを吹き込むバーナの先端の温度が、可燃性ガスを吹き込まない場合と比較して上昇する。この結果、バーナの先端に連絡された流路が熱損傷を起こし、流路断面積が拡大する場合がある。このような現象が発生すると、バーナから吹き込まれる気流の風速や風量が所望する範囲内に保つことが難しくなり、クリンカの容重やフリーライム等がセメントの品質基準を満たさなくなる懸念がある。
【0009】
このような課題を改善すべく、局所的に高温になるのを抑制する観点から、バーナの構造を変えずにバーナから吹き込む空気量を減らして燃焼を緩慢にする方法が考えられる。しかし、この方法を採用すると、バーナから吹き込まれる気流のモーメンタムが減少するため火炎が不安定となり、クリンカ品質が不安定になってしまう。
【0010】
別の方法として、バーナから吹き込む空気の先端流速を遅くするなどの設計変更をして燃焼を緩慢にする方法も考えられる。しかし、この方法は、気流の流速を調整することで高温化を回避しようとするものであるため、セメントの要求品質を満たすためには、燃料種に応じた複雑な調整が必要になり、現実的ではない。言い換えれば、セメントの要求品質を満たすために、クリンカ焼成に必要な温度プロファイルを確保しつつ、状況に応じて多様な燃料種を使い分けることが困難となる。
【0011】
更に、特許文献1のように、主燃料を含む気流を吹き込むバーナに、可燃性ガスを吹き込むための専用のポートを設けると、バーナの流路が増えることでバーナの重量が増加し、制作費が高くなる懸念もある。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑み、クリンカの品質を担保しつつ、NOxの発生を抑制しながら、クリンカ焼成用の燃料として可燃性ガスを利用することを可能にする、燃料吹込装置及び燃料吹込方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る燃料吹込装置は、
セメント焼成用のロータリーキルンの内部に、固体の第一燃料を含む気流を吹き込み可能なバーナを備えてなる、燃料吹込装置であって、
前記バーナの前記ロータリーキルン側の先端に備えられた第一ポートに連絡された第一流路と、
前記第一流路に前記第一燃料を供給する第一燃料供給装置と、
前記第一流路に可燃性ガスを供給する可燃性ガス供給装置とを備えたことを特徴とする。
【0014】
前記燃料吹込装置によれば、第一流路を介して通流する可燃性ガスと第一燃料を含む気流を、第一ポートからセメント焼成用のロータリーキルンの内部に吹き込むことができる。この結果、第一燃料の燃焼用ガスを空気(大気)とした場合に比べて、空気が可燃性ガスと少なくとも一部置換される結果、バーナの先端(第一ポート近傍)の酸素濃度が低下する。これにより、主燃料を空気と共にバーナのポートから吹き込みつつ、可燃性ガスを同一バーナの専用ポートから吹き込む特許文献1の構成と比較して、可燃性ガスの燃焼速度が低下するため、NOxの発生が抑制される。
【0015】
更に、可燃性ガスの燃焼速度が低下するため、バーナの先端温度が局所的に上昇する現象が生じにくく、この結果、バーナ先端での熱損傷の発生も抑制できる。
【0016】
加えて、固体の第一燃料を吹き込むポートと共通のポートを利用して可燃性ガスを吹き込むことができるため、可燃性ガスを吹き込むための専用のポートをバーナに別途設ける必要がない。これにより、上記の装置を実現するに際し、バーナの大幅な設計変更は必要がなく、装置の製造コストを低廉化できる。
【0017】
更に、特許文献1の構成と比較して可燃性ガスの燃焼速度が低下するため、局所的な高温化を避ける観点でバーナから吹き込む気流の流速を別途調整する必要がない。この結果、バーナから吹き込まれる気流のモーメンタムが一定となるため安定した火炎を維持でき、かつ一次空気を減らせるため熱量原単位を削減する効果も得られる。
【0018】
また、前記燃料吹込装置によれば、可燃性ガスを燃料として利用できるため、固形燃料(固体の第一燃料)の消費量を減らしながら、CO2排出量の削減を図ることができる。
【0019】
前記可燃性ガスとしては、水素、炭化水素、アンモニア、前記固形燃料をガス化した後の揮発ガスからなる群から選択される1種以上を利用することができる。
【0020】
前記燃料吹込装置は、
前記第一流路に大気を供給するファンと、
前記ファンから前記第一流路に供給される前記大気と、前記可燃性ガス供給装置から前記第一流路に供給される前記可燃性ガスとの流量比を調整可能な第一調整弁とを備え、
前記第一燃料は、固体の粉末状の燃料であり、
前記第一ポートは、前記第一調整弁を通過した気流と共に前記第一燃料を前記ロータリーキルンに吹き込むものとしても構わない。
【0021】
上記構成によれば、主燃料として一般的に利用される石炭等の固体の粉末状の燃料と共に、可燃性ガスを同一の第一ポートからロータリーキルンに吹き込むことができる。
【0022】
一例として、第一調整弁は、例えば、ファンから供給される大気を通流させる流路と、可燃性ガス供給装置から供給される可燃性ガスを通流させる流路との合流地点に設置され、下流側は第一流路に連絡された三方弁とすることができる。
【0023】
別の一例として、可燃性ガス供給装置からの可燃性ガスがファンの吸気口に向けて供給され、ファンの吸気口又はファンと可燃性ガス供給装置との間の流路に設置された第一調整弁が、ファンの吸気口から取り込まれる可燃性ガスの流量を調整できるものとしても構わない。なお、ファンの吸気口が開度を調整できる構成である場合、この吸気口が第一調整弁に対応するものとしても構わない。
【0024】
上記いずれの場合においても、第一調整弁は、可燃性ガスの流量と共にファンから取り込まれる大気の流量についても調整可能とすることもできる。
【0025】
前記第一燃料は固体の可燃性廃棄物であり、
前記燃料吹込装置は、前記バーナの前記ロータリーキルン側の先端に備えられた、前記第一ポートとは異なる第二ポートに連絡された第二流路と、
前記第二流路に固体の粉末状の燃料からなる第二燃料を供給する第二燃料供給装置と、
前記第二流路に大気を供給するファンを備えるものとしても構わない。
【0026】
ロータリーキルンに燃料を吹き込むバーナには、主燃料としての固体の粉末状の燃料を吹き込むためのポートと、可燃性廃棄物を吹き込むためのポートとを備えるものが存在する。上記構成によれば、可燃性廃棄物(第一燃料)を吹き込むためのポート(第一ポート)から可燃性廃棄物と共に可燃性ガスをロータリーキルンに吹き込み、第一ポートとは独立した第二ポートから、主燃料としての固体の粉末状の燃料(第二燃料)を吹き込むことができる。
【0027】
この場合においても、可燃性廃棄物を吹き込むための気流の少なくとも一部を可燃性ガスで形成できるため、気流に含まれる空気の流量を減らすことができ、主燃料が吹き込まれるバーナの先端の酸素濃度が低下する。したがって、上記の構造と同様に、可燃性ガスの燃焼速度が低下し、NOxの発生が抑制される。
【0028】
なお、上記構成の燃料吹込装置を利用するに際しては、第一ポートから可燃性ガスが形成する気流によって運ばれた可燃性廃棄物がロータリーキルンに吹き込まれる時間帯と、第一ポートから可燃性ガスが単独でロータリーキルンに吹き込まれる時間帯とが存在するものとしても構わない。更に前者の時間帯において、前記気流には大気が一部含まれていても構わない。
【0029】
前記可燃性廃棄物としては、熱硬化性・熱可塑性樹脂の廃棄物、RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)、RDF(Refuse Derived Fuel)、バイオマス(木屑、食品系の滓(コーヒー滓、ビール滓、茶滓等))、ASR(Automobile Shredder Residue)、衣類、ゴム屑、カーボンファイバーの廃棄物からなる群から選択される一つ以上とすることができる。
【0030】
前記可燃性ガス供給装置は、前記第二流路にも前記可燃性ガスの供給が可能な構成であり、
前記燃料吹込装置が、前記第二流路に供給される前記可燃性ガスの流量を調整する第二調整弁を備えるものとしても構わない。
【0031】
上記構成によれば、同一のバーナに備えられた、主燃料として一般的に利用される固体の粉末状の燃料を吹き込むための第一ポートと、可燃性廃棄物を吹き込むための第二ポートの双方から、それぞれ可燃性ガスをロータリーキルンの内部に吹き込むことができる。
【0032】
前記燃料吹込装置は、
固体の可燃性廃棄物からなる前記第一燃料を含む気流を吹き込み可能な前記バーナに対応する第一バーナと、
前記第一バーナとは独立した位置に配置され、前記第一燃料とは異なる固体の粉末状の燃料からなる第二燃料を含む気流を吹き込み可能な第二バーナと、
前記第二バーナの前記ロータリーキルン側の先端に備えられた第二ポートに連絡された第二流路と、
前記第二流路に前記第二燃料を供給する第二燃料供給装置と、
前記第二流路に大気を供給するファンを備えるものとしても構わない。
【0033】
燃料としての固体の粉末状の燃料をロータリーキルンに吹き込むバーナとは独立した別のバーナから、補助燃料としての可燃性廃棄物がロータリーキルンに吹き込まれる場合がある。上記構成によれば、この可燃性廃棄物を吹き込むためのバーナ(第一バーナ)に搭載された、可燃性廃棄物を吹き込むためのポートと同一のポート(第一ポート)から可燃性ガスを吹き込むことができる。また、可燃性廃棄物を吹き込むためのバーナとは別の第二バーナからは、主燃料としての固体の粉末状の燃料が吹き込まれる。このような構成であっても、可燃性廃棄物を吹き込むための気流の少なくとも一部を可燃性ガスで形成できるため、気流に含まれる空気の流量を減らすことができ、主燃料が吹き込まれるバーナの先端の酸素濃度が低下する。したがって、上記の構造と同様に、可燃性ガスの燃焼速度が低下し、NOxの発生が抑制される。
【0034】
更に、上記の構成によれば、主燃料が吹き込まれる第二バーナとは独立した第一バーナから可燃性ガスが吹き込まれるため、主燃料が吹き込まれる第二バーナの先端温度が局所的に上昇する現象がより生じにくくなり、第二バーナの先端で熱損傷が発生する可能性は大きく低下する。
【0035】
なお、上記構成の燃料吹込装置を利用するに際しては、第一バーナの第一ポートから可燃性ガスが形成する気流によって運ばれた可燃性廃棄物がロータリーキルンに吹き込まれる時間帯と、第一バーナの第一ポートから可燃性ガスが単独でロータリーキルンに吹き込まれる時間帯とが存在するものとしても構わない。更に前者の時間帯において、前記気流には大気が一部含まれていても構わない。
【0036】
また、本発明に係る燃料吹込方法は、セメント焼成用のロータリーキルンの内部に、バーナの前記ロータリーキルン側の先端に備えられたポートから燃料を吹き込む燃料吹込方法であって、
固体の第一燃料を吹込可能な前記ポートである第一ポートから可燃性ガスを含む気流を前記ロータリーキルンの内部に吹き込むことを特徴とする。
【0037】
上記方法によれば、固体の第一燃料を第一ポートからロータリーキルンの内部に吹き込むに際し、前記第一燃料の流れを形成する気流の少なくとも一部を可燃性ガスによって実現できる。この結果、第一燃料を含む気流に含まれる空気の流量を減らすことができるため、第一燃料が吹き込まれるバーナの先端の酸素濃度を低下できる。これにより、可燃性ガスの燃焼速度が低下し、NOxの発生が抑制される。
【0038】
上記方法において、前記第一ポートは、上流側において第一流路に連絡されており、
前記第一流路に対して前記第一燃料と前記可燃性ガスとが供給可能であり、
第一調整弁によって、前記第一流路に供給される前記可燃性ガスの流量を調整し、
前記第一調整弁を通過した前記可燃性ガスを含む気流を、前記ロータリーキルンの内部に吹き込むものとしても構わない。
【0039】
更に、前記第一燃料は、固体の粉末状の燃料であり、
前記第一流路に対して前記第一燃料と前記可燃性ガスと大気とが供給可能であり、
前記第一調整弁によって、ファンから供給される大気と可燃性ガス供給装置から供給される前記可燃性ガスとの流量比を調整し、
前記第一調整弁を通過した前記可燃性ガスを含む気流と共に前記第一燃料を前記第一ポートから前記ロータリーキルンの内部に吹き込むものとしても構わない。
【0040】
上記方法によれば、主燃料として一般的に利用される石炭等の固体の粉末状の燃料と共に、可燃性ガスを同一の第一ポートからロータリーキルンに吹き込むことができる。このとき、固体の粉末状の燃料を通流させるための気流を構成する大気と可燃性ガスとの流量比を、第一調整弁によって調整できるため、第一燃料が吹き込まれるバーナの先端の酸素濃度をコントロールできる。
【0041】
また、前記第一燃料は、固体の可燃性廃棄物であり、
前記バーナの前記第一ポートから、前記第一燃料と共に又は単独で、前記可燃性ガスを含む気流を前記ロータリーキルンの内部に吹き込み、
前記バーナの前記ロータリーキルン側の先端に備えられた、前記第一ポートとは異なる第二ポートから、固体の粉末状の燃料からなる第二燃料と大気を含む気流を前記ロータリーキルンの内部に吹き込むものとしても構わない。
【0042】
上記方法によれば、可燃性廃棄物を吹き込むためのポートを利用して可燃性ガスを吹き込むことができる。この場合において、ある時間帯においては、可燃性ガスが形成する気流によって運ばれた可燃性廃棄物を第一ポートからロータリーキルンに吹き込み、別の時間帯においては、可燃性ガスを単独で第一ポートからロータリーキルンに吹き込むものとしても構わない。なお、前者の時間帯において、気流には大気が一部含まれていても構わない。
【0043】
前記第二ポートから吹き込まれる気流は、前記可燃性ガスを含み、
前記第二ポートから吹き込まれる気流に含まれる前記可燃性ガスの流量を第二調整弁によって調整するものとしても構わない。
【0044】
上記方法によれば、可燃性廃棄物を吹き込むための第一ポートと、主燃料としての固体の粉末状の燃料を吹き込むための第二ポートの双方から、可燃性ガスを吹き込むことができる。
【0045】
固体の可燃性廃棄物からなる前記第一燃料を吹き込み可能な前記バーナに対応する第一バーナから前記可燃性ガスを含む気流を前記ロータリーキルンの内部に吹き込み、
前記第一バーナとは独立した位置に配置された第二バーナから、前記第一燃料とは異なる固体の粉末状の燃料からなる第二燃料と大気を含む気流を前記ロータリーキルンの内部に吹き込むものとしても構わない。
【0046】
上記方法によれば、主燃料としての固体の粉末状の第二燃料を吹き込むバーナ(第二バーナ)とは別に、可燃性廃棄物を吹き込むためのバーナ(第一バーナ)が搭載されている場合において、この第一バーナから可燃性ガスを吹き込むことができる。この場合において、ある時間帯においては、可燃性ガスが形成する気流によって運ばれた可燃性廃棄物を第一バーナの第一ポートからロータリーキルンに吹き込み、別の時間帯においては、可燃性ガスを単独で第一バーナの第一ポートからロータリーキルンに吹き込むものとしても構わない。なお、前者の時間帯において、気流には大気が一部含まれていても構わない。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、クリンカの品質を担保しつつ、NOxの発生を抑制しながらも、クリンカ焼成用の燃料としての可燃性ガスをロータリーキルンに吹き込むことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】第一実施形態の燃料吹込装置がセメント焼成用のロータリーキルンに付設されてなるセメント製造設備の一部分を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1に示すバーナ10のロータリーキルン2側の先端部分を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図2に示すポート11に連絡された流路を含むシステムの構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図4】
図2に示すポート11に連絡された流路を含むシステムの別の構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図5】第二実施形態の燃料吹込装置において、
図2に示すポート11及びポート12に連絡された流路を含むシステムの構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図6】第三実施形態の燃料吹込装置がセメント焼成用のロータリーキルンに付設されてなるセメント製造設備の一部分を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図6に示すバーナ20のロータリーキルン2側の先端部分を模式的に示す平面図である。
【
図8】
図7に示すバーナ20のポート21に連絡された流路を含むシステムの構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図9】
図7に示すバーナ20のポート21に連絡された流路を含むシステムの別構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図10】
図7に示すバーナ20のポート21に連絡された流路を含むシステムの別構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図11】シミュレーションに用いたロータリーキルン2及びバーナ(10,20)を含むセメント製造設備1のモデルを模式的に示す図面である。
【
図12】シミュレーションに用いたバーナ10のモデルを模式的に示す断面図である。
【
図13】実施例と比較例のそれぞれにおけるバーナ10及びバーナ20の先端の温度を比較したグラフである
【
図14】実施例と比較例のそれぞれにおけるキルン出口9で得られる気体に含まれるサーマルNO
xの濃度を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明に係る燃料吹込装置及び燃料吹込方法の実施形態につき、適宜図面を参照して説明する。以下の図面は模式的に示されたものであり、図面上の寸法比は実際の寸法比と一致していない。また、各図面間においても、寸法比は必ずしも一致していない。
【0050】
[第一実施形態]
燃料吹込装置及び燃料吹込方法の第一実施形態について説明する。
【0051】
図1は、第一実施形態の燃料吹込装置がセメント焼成用のロータリーキルンに付設されてなるセメント製造設備1の一部分を模式的に示す断面図である。このセメント製造設備1は、ロータリーキルン2と、ロータリーキルン2に接続されたキルンフッド4とを備える。
【0052】
ロータリーキルン2は、クリンカ原料を焼成してセメントクリンカ(以下、「クリンカ5」と記載する。)を製造する装置である。典型的には、上流側に設置された不図示のプレヒータを介して仮焼されたクリンカ原料が、ロータリーキルン2の窯尻部に流れ込む。ロータリーキルン2は、下流側(キルンフッド4側)に向かって若干下方傾斜した横向きの円筒状を呈し、回転しながらクリンカ原料(又は焼成が一部完了したクリンカ)の焼成を行う。
【0053】
キルンフッド4は、その上流側が、ロータリーキルン2の下流側端部に連絡されており、ロータリーキルン2の下流側端部を包囲する部位である。キルンフッド4の下方は、クリンカクーラ3に連絡される。キルンフッド4の下流側壁面4aには、バーナ10が固定されている。キルンフッド4の下流側壁面4aの一部分は、典型的には開閉が可能な扉状になっており、ロータリーキルン2の補修作業や、バーナ10の取付・交換作業の際に開放される。
【0054】
キルンフッド4に取り付けられたバーナ10により、ロータリーキルン2の内部を下降するクリンカ原料が焼成される。焼成が完了したクリンカ5は、キルンフッド4の下方に配設されたクリンカクーラ3に向かって落下し、クリンカクーラ3内で冷却される。
【0055】
焼成されたクリンカ5は1000℃以上であり、典型的には1200℃~1500℃程度である。このクリンカ5は、クリンカクーラ3に接続されている不図示の冷却ファンから送り込まれた常温(20℃~30℃程度)の大気AA1により、冷却される。冷却されたクリンカ5はクリンカクーラ3の出口側端部から排出され、不図示のクリンカサイロに貯蔵される。
【0056】
クリンカクーラ3に流入された大気AA1は、高温のクリンカ5と熱交換された後、二次空気AA2として、ロータリーキルン2内に供給される。この二次空気AA2は、バーナ10で燃焼用の空気として利用される。
【0057】
以下の説明では、鉛直方向をZ方向とし、ロータリーキルン2のキルンフッド4側における軸方向をX方向とし、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向とする、X-Y-Z座標系が適宜参照される。
【0058】
図2は、バーナ10のロータリーキルン2側の先端部分を模式的に示す平面図の一例である。
図2に示すバーナ10は、同心円状に配置された複数のポート(11,12,14,15)を備えている。各ポートは、それぞれ独立した流路に連絡されている。
【0059】
詳細には、固体の粉末状の燃料を含む気流(固体粉末燃料流)をロータリーキルン2に吹き込むポート11と、可燃性廃棄物を含む気流(可燃性廃棄物流)をロータリーキルン2に吹き込むポート12と、空気流をロータリーキルン2に吹き込むポート14及びポート15を備える。
【0060】
ポート14は、固体粉末燃料流の内側において、好ましくは旋回空気流をロータリーキルン2に吹き込む。ポート15は、固体粉末燃料流の外側において、好ましくは直進空気流をロータリーキルン2に吹き込む。なお、ポート15とポート11との間に、旋回空気流をロータリーキルン2に吹き込むためのポートを別途備えても構わない。また、ポート15が同心円状に複数配置されていても構わない。
【0061】
更に、ポート14の内側において、可燃性廃棄物流を吹き込むポート12以外に、液状の燃料(油等)をロータリーキルン2に吹き込むためのポートを別途備えても構わない。
【0062】
図3は、ポート11に連絡された流路を含むシステムの構成例を模式的に示すブロック図である。本実施形態の燃料吹込装置は、ポート11に連絡された流路31と、流路31に対して固体の粉末状の燃料C1(以下、「粉末燃料C1」と略記する。)を供給する粉末燃料供給装置41と、流路31に対して可燃性ガスG1を供給する可燃性ガス供給装置42と、流路31に対して大気A1を供給するファン43とを備える。
【0063】
本実施形態では、粉末燃料C1が「第一燃料」に対応し、粉末燃料供給装置41が「第一燃料供給装置」に対応し、流路31が「第一流路」に対応し、ポート11が「第一ポート」に対応する。
【0064】
粉末燃料供給装置41は、典型的にはオートフィーダを付設しており、流路31内に供給される単位時間あたりの粉末燃料C1の量が制御可能な構成である。このオートフィーダは、粉末燃料供給装置41に付設されていても構わないし、粉末燃料供給装置41の供給口と流路31とを連絡する接続用流路に介在していても構わない。
【0065】
粉末燃料C1としては、主燃料として一般的に利用される石炭等が利用可能である。
【0066】
可燃性ガス供給装置42は、流路31に対して可燃性ガスG1を供給可能な構成である。可燃性ガスG1としては、水素、炭化水素、アンモニア、前記固形燃料をガス化した後の揮発ガスからなる群から選択される1種以上を利用することができる。可燃性ガス供給装置42としては、ガスボンベ、都市ガス用の埋設配管等が利用できる。
【0067】
ファン43は、大気A1を取り込んで流路31に対して供給する。
【0068】
本実施形態では、流路31に対して供給される可燃性ガスG1と大気A1との流量比を調整するための三方弁45が設けられている。三方弁45の開度が調整されることで、流路31に対して大気A1を供給せずに可燃性ガスG1を供給する状態を実現しても構わないし、逆に、流路31に対して可燃性ガスG1を供給せずに大気A1を供給する状態を実現しても構わない。三方弁45は、「第一調整弁」に対応する。
【0069】
三方弁45を制御して、流路31に対して可燃性ガスG1を供給せず大気A1を供給する状態を実現した場合について説明する。このとき、粉末燃料供給装置41から供給された粉末燃料C1が大気A1の気流と共に流路31を通じて搬送され、流路31に連絡されたバーナ10のポート11から燃料流としてロータリーキルン2に吹き込まれる。この状態は、ロータリーキルン2に対して主燃料を吹き込む従来の方法と共通である。
【0070】
本実施形態の燃料吹込装置では、三方弁45を制御することで、流路31に対して可燃性ガスG1を供給することが可能である。このとき、粉末燃料供給装置41から供給された粉末燃料C1は、可燃性ガスG1の気流と共に流路31を通じて搬送され、流路31に連絡されたバーナ10のポート11から、粉末燃料C1と可燃性ガスG1とを含む気流(燃料流)としてロータリーキルン2に吹き込まれる。
【0071】
粉末燃料C1と可燃性ガスG1とを含む燃料流がロータリーキルン2の内部に吹き込まれることで、大気A1と粉末燃料C1のみによって形成される燃料流が吹き込まれる場合と比較して、大気A1が可燃性ガスG1と少なくとも一部置換される結果、バーナ10の先端(ポート11近傍)の酸素濃度が低下する。これにより、可燃性ガスG1の燃焼速度が低下し、NOxの発生が抑制される。
【0072】
また、可燃性ガスG1の燃焼速度が低下することで、バーナ10の先端の温度が局所的に上昇する現象が生じにくくなり、バーナ10の先端近傍における熱損傷の発生も抑制できる。
【0073】
更に、この構成においては、粉末燃料C1を大気A1の気流によって吹き込むために利用されていたポート11と共通のポートを用いて可燃性ガスG1が吹き込まれる。このため、可燃性ガスG1を吹き込むための専用ポートを、バーナ10に別途設ける必要がない。
【0074】
ポート11から粉末燃料C1をロータリーキルン2の内部に吹き込むに際しては、大気A1と可燃性ガスG1との混合ガスによって形成される気流を用いても構わないし、可燃性ガスG1単独の気流を用いても構わない。また、本実施形態の構成の下であっても、三方弁45を調整して可燃性ガスG1を流路31に供給せず、大気A1単独の気流を用いてポート11から粉末燃料C1をロータリーキルン2の内部に吹き込む時間帯を設けても構わない。
【0075】
流路31に供給する可燃性ガスG1の流量を調整する方法としては、三方弁45を用いる方法には限定されない。例えば、
図4に示すように、可燃性ガス供給装置42が流路47を介してファン43の吸気口46に連絡されており、吸気口46の開度が制御されることで、吸気口46から取り込まれる大気A1の流量と、可燃性ガス供給装置42から取り込まれる可燃性ガスG1の流量とが調整されるものとしても構わない。この場合、可燃性ガス供給装置42から供給された可燃性ガスG1は、ファン43を通過して大気A1と混合された状態で、流路31に導入される。
【0076】
図4に示す構成の場合、開度の調整が可能な吸気口46が、「第一調整弁」に対応する。
【0077】
[第二実施形態]
燃料吹込装置及び燃料吹込方法の第二実施形態について、第一実施形態と異なる箇所を中心に説明する。なお、第一実施形態と共通する要素については同一の符号を付して、その説明が適宜割愛される。
【0078】
本実施形態において、バーナ10の構造は第一実施形態と共通する。すなわち、本実施形態においても、バーナ10の先端は
図2のような構造を示す。詳細には、
図2に示すように、本実施形態のバーナ10においても、第一実施形態と同様に、固体の粉末状の燃料を含む気流(固体粉末燃料流)をロータリーキルン2に吹き込むポート11と、可燃性廃棄物を含む気流(可燃性廃棄物流)をロータリーキルン2に吹き込むポート12とを備えている。
【0079】
図5は、ポート11及びポート12に連絡された流路を含むシステムの構成例を模式的に示すブロック図である。本実施形態の燃料吹込装置は、第一実施形態と比較して、可燃性ガス供給装置42がポート12に連絡された流路32に向けて可燃性ガスG1を供給する点が異なっている。
【0080】
詳細には、本実施形態の燃料吹込装置は、ポート12に連絡された流路32と、流路32に対して固体の可燃性廃棄物R1を供給する可燃性廃棄物供給装置51と、流路32に対して可燃性ガスG1を供給する可燃性ガス供給装置42と、流路32に対して大気A2を供給するファン53とを備える。また、第一実施形態と同様に、本実施形態の燃料吹込装置は、ポート11に連絡された流路31に対して粉末燃料C1を供給する粉末燃料供給装置41と、流路31に対して大気A1を供給するファン43とを備える。
【0081】
本実施形態では、可燃性廃棄物R1が「第一燃料」に対応し、粉末燃料C1が「第二燃料」に対応する。すなわち、本実施形態では、可燃性廃棄物供給装置51が「第一燃料供給装置」に対応し、粉末燃料供給装置41が「第二燃料供給装置」に対応する。
【0082】
本実施形態では、可燃性廃棄物R1が通流可能な流路32が「第一流路」に対応し、この流路32に連絡されたポート12が「第一ポート」に対応する。
本実施形態では、粉末燃料C1が通流可能な流路31が「第二流路」に対応し、この流路31に連絡されたポート11が「第二ポート」に対応する。
【0083】
可燃性廃棄物供給装置51は、粉末燃料供給装置41と同様に、オートフィーダを付設していても構わない。すなわち、可燃性廃棄物供給装置51は、流路32内に供給される単位時間あたりの可燃性廃棄物R1の量が制御可能な構成である。このオートフィーダは、可燃性廃棄物供給装置51に付設されていても構わないし、可燃性廃棄物供給装置51の供給口と流路32とを連絡する接続用流路に介在していても構わない。
【0084】
可燃性廃棄物R1としては、熱硬化性・熱可塑性樹脂の廃棄物、RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)、RDF(Refuse Derived Fuel)、バイオマス(木屑、食品系の滓(コーヒー滓、ビール滓、茶滓等))、ASR(Automobile Shredder Residue)、衣類、ゴム屑、カーボンファイバーの廃棄物からなる群から選択される一つ以上とすることができる。
【0085】
可燃性ガス供給装置42は、流路32に対して可燃性ガスG1を供給可能な構成である。ファン53は、大気A2を取り込んで流路32に対して供給する。
【0086】
本実施形態では、流路32に対して供給される可燃性ガスG1と大気A2との流量比を調整するための三方弁55が設けられている。三方弁55の開度が調整されることで、流路32に対して大気A2を供給せずに可燃性ガスG1を供給する状態を実現しても構わないし、逆に、流路32に対して可燃性ガスG1を供給せずに大気A2を供給する状態を実現しても構わない。三方弁55は、「第一調整弁」に対応する。
【0087】
三方弁55を制御して、流路32に対して可燃性ガスG1を供給せず大気A2を供給する状態を実現した場合について説明する。この場合、可燃性廃棄物供給装置51から供給された可燃性廃棄物R1が大気A2の気流と共に流路32を通じて搬送され、流路32に連絡されたバーナ10のポート12から可燃性廃棄物流としてロータリーキルン2に吹き込まれる。この状態は、ロータリーキルン2に対して主燃料を吹き込むバーナ10から、可燃性廃棄物を吹き込む場合の従来の方法と共通である。
【0088】
本実施形態の燃料吹込装置では、三方弁55を制御することで、流路32に対して可燃性ガスG1を供給することが可能である。この場合、可燃性廃棄物供給装置51から供給された可燃性廃棄物R1は、可燃性ガスG1の気流と共に流路32を通じて搬送され、流路32に連絡されたバーナ10のポート12から可燃性廃棄物R1と可燃性ガスG1とを含む気流(燃料流)としてロータリーキルン2に吹き込まれる。
【0089】
可燃性廃棄物R1と可燃性ガスG1とを含む燃料流がロータリーキルン2の内部に吹き込まれることで、大気A2と可燃性廃棄物R1のみによって形成される可燃性廃棄物流が吹き込まれる場合と比較して、大気A2の少なくとも一部が可燃性ガスG1と置換される結果、バーナ10の先端の酸素濃度が低下する。これにより、可燃性ガスG1の燃焼速度が低下するため、NOxの発生を抑制することが可能となる。
【0090】
本実施形態の場合、可燃性廃棄物R1を大気A2の気流によって吹き込むために利用されていたポート12と共通のポートを用いて可燃性ガスG1を吹き込むことができる。このため、可燃性ガスG1を吹き込むための専用ポートを、バーナ10に別途設ける必要がない。
【0091】
流路32に供給する可燃性ガスG1の流量を調整する方法として三方弁55を用いる方法に限定されない点は、第一実施形態と同様である。例えば、第一実施形態の項で上述した
図4に示す流量調整方法を本実施形態においても利用することが可能である。
【0092】
[第三実施形態]
燃料吹込装置及び燃料吹込方法の第三実施形態について、第一実施形態と異なる箇所を中心に説明する。なお、第一実施形態又は第二実施形態と共通する要素については同一の符号を付して、その説明が適宜割愛される。
【0093】
図6は、本実施形態の燃料吹込装置がセメント焼成用のロータリーキルン2に付設されてなるセメント製造設備1を、
図1にならって図示した断面図である。本実施形態は、第一実施形態と比較して、キルンフッド4の下流側壁面4aに、バーナ10に加えてバーナ20が設置されている点が異なる。
【0094】
バーナ20は、バーナ10とは独立した位置に設置されている。バーナ10は、第一実施形態と同様に、粉末燃料C1を吹き込むバーナである。バーナ20は、可燃性廃棄物R2を吹き込むことが予定されたバーナである。可燃性廃棄物R2としては、第二実施施形態で上述した可燃性廃棄物R1と同様の材料が利用できる。
【0095】
図7は、
図6に示すバーナ20のロータリーキルン2側の先端部分を、
図2にならって模式的に示す平面図である。
図7に示すように、バーナ20は単一のポート21を備えている。ただし、本発明は、バーナ20が複数のポートを備える場合を排除しない。
【0096】
なお、
図6に示すバーナ10のロータリーキルン2側の先端部分については、
図2を参照して上述した第一実施形態と共通の構造とすることができる。
【0097】
図8は、バーナ20のポート21に連絡された流路を含むシステムの構成例を模式的に示すブロック図である。なお、
図8には、バーナ10のポート11に連絡された流路31についても図示されている。
【0098】
図8に示すように、本実施形態の燃料吹込装置は、ポート21に連絡された流路35と、流路35に対して固体の可燃性廃棄物R2を供給する可燃性廃棄物供給装置61と、流路35に対して可燃性ガスG1を供給する可燃性ガス供給装置42と、流路35に対して大気A3を供給するファン63とを備える。また、
図5を参照して上述した第二実施形態と同様に、本実施形態の燃料吹込装置は、バーナ10のポート11に連絡された流路31に対して粉末燃料C1を供給する粉末燃料供給装置41と、流路31に対して大気A1を供給するファン43とを備える。
【0099】
本実施形態では、可燃性廃棄物R2が「第一燃料」に対応し、粉末燃料C1が「第二燃料」に対応する。
本実施形態では、可燃性廃棄物R2を吹き込むバーナ20が「第一バーナ」に対応し、粉末燃料C1を吹き込むバーナ10が「第二バーナ」に対応する。
【0100】
本実施形態では、可燃性廃棄物R2が通流可能な流路35が「第一流路」に対応し、この流路35に連絡されたバーナ20のポート21が「第一ポート」に対応する。
本実施形態では、粉末燃料C1が通流可能な流路31が「第二流路」に対応し、この流路31に連絡されたポート11が「第二ポート」に対応する。
【0101】
可燃性ガス供給装置42は、流路35に対して可燃性ガスG1を供給可能な構成である。ファン63は、大気A3を取り込んで流路35に対して供給する。
【0102】
本実施形態では、流路35に対して供給される可燃性ガスG1と大気A3との流量比を調整するための三方弁65が設けられている。三方弁65の開度が調整されることで、流路35に対して大気A3を供給せずに可燃性ガスG1を供給する状態を実現しても構わないし、逆に、流路35に対して可燃性ガスG1を供給せずに大気A3を供給する状態を実現しても構わない。三方弁65は、「第一調整弁」に対応する。
【0103】
三方弁65を制御して、流路35に対して可燃性ガスG1を供給せず大気A3を供給する状態を実現した場合について説明する。この場合、可燃性廃棄物供給装置61から供給された可燃性廃棄物R2が大気A3の気流と共に流路35を通じて搬送され、流路35に連絡されたバーナ20から可燃性廃棄物流としてロータリーキルン2に吹き込まれる。この状態は、燃料吹込装置が、主燃料を吹き込むバーナ10とは別に可燃性廃棄物を吹き込むためのバーナ20を備える構成において、ロータリーキルン2に対して可燃性廃棄物を吹き込む従来の方法と共通である。
【0104】
本実施形態の燃料吹込装置では、三方弁65を制御することで、流路35に対して可燃性ガスG1を供給することが可能である。この場合、可燃性廃棄物供給装置61から供給された可燃性廃棄物R2は、可燃性ガスG1の気流と共に流路35を通じて搬送され、流路35に連絡されたバーナ20のポート21から可燃性廃棄物R2と可燃性ガスG1とを含む気流(燃料流)としてロータリーキルン2に吹き込まれる。
【0105】
可燃性廃棄物R2と可燃性ガスG1とを含む燃料流がロータリーキルン2の内部に吹き込まれることで、大気A3と可燃性廃棄物R2のみによって形成される可燃性廃棄物流が吹き込まれる場合と比較して、大気A3の少なくとも一部が可燃性ガスG1と置換される結果、バーナ20の先端の酸素濃度が低下する。これにより、可燃性ガスG1の燃焼速度が低下するため、NOxの発生を抑制することが可能となる。
【0106】
バーナ20の先端の酸素濃度が低下することは、バーナ20の先端の局所的な高温化を回避することにつながり、バーナ20の先端における熱損傷の発生を抑制できる。なお、バーナ20はバーナ10とは異なるバーナではあるが、いずれもキルンフッド4の下流側壁面4aに取り付けられており、両者の設置箇所は近い。このため、粉末燃料C1を吹き込むバーナ10の先端の局所的な温度上昇も抑制でき、バーナ10の先端における熱損傷の発生も抑制できる。
【0107】
特に、可燃性ガスG1を、粉末燃料C1を吹き込むバーナ10からは吹き込まずに、バーナ10とは別のバーナ20から吹き込む場合には、上記各実施形態と比較してバーナ10の先端における熱損傷の発生を抑制する効果が更に高い。
【0108】
本実施形態の場合、可燃性廃棄物R2を大気A3の気流によって吹き込むために利用されていたポート21と共通のポートを用いて、バーナ20から可燃性ガスG1を吹き込むことができる。このため、可燃性ガスG1を吹き込むための専用ポートを、バーナ10やバーナ20に別途設ける必要がない。
【0109】
流路35に供給する可燃性ガスG1の流量を調整する方法として三方弁65を用いる方法に限定されない点は、第一実施形態と同様である。例えば、第一実施形態の項で上述した
図4に示す流量調整方法を本実施形態においても利用することが可能である。
【0110】
本実施形態において、第一実施形態及び第二実施形態の態様を組み合わせることも可能である。例えば
図9に示すように、第一実施形態と同様に、バーナ10のポート11に連絡されて粉末燃料供給装置41から粉末燃料C1が供給される流路31に対しても、可燃性ガスG1が供給されるものとしても構わない。また
図10に示すように、第二実施形態と同様に、バーナ10のポート12に連絡されて可燃性廃棄物供給装置51から可燃性廃棄物R1が供給される流路32に対しても可燃性ガスG1が供給されるものとしても構わない。
【0111】
図9における三方弁45、
図10における三方弁55が、「第二調整弁」に対応する。しかし、流路31に供給する可燃性ガスG1の流量を調整する方法として三方弁45を用いる方法に限定されない点は、第一実施形態と同様である。同じく、流路32に供給する可燃性ガスG1の流量を調整する方法として三方弁55を用いる方法に限定されない点は、第二実施形態と同様である。
【0112】
図9では、バーナ20のポート21に連絡される流路35に対して可燃性ガスG1を供給する可燃性ガス供給装置42と、バーナ10のポート11に連絡される流路31に対して可燃性ガスG1を供給する可燃性ガス供給装置42aとが図示されている。しかし、可燃性ガス供給装置42が可燃性ガス供給装置42aを兼ねても構わない。
【0113】
同様に、
図10では、バーナ20のポート21に連絡される流路35に対して可燃性ガスG1を供給する可燃性ガス供給装置42と、バーナ10のポート12に連絡される流路32に対して可燃性ガスG1を供給する可燃性ガス供給装置42aとが図示されている。しかし、可燃性ガス供給装置42が可燃性ガス供給装置42aを兼ねても構わない。更には、
図10に示す可燃性廃棄物供給装置61が、可燃性廃棄物供給装置51を兼ねても構わない。
【実施例0114】
以下、本発明について更に詳細に説明するために具体的なシミュレーション例を示すが、本発明はシミュレーション例の態様に限定されるものではない。
【0115】
バーナ(10,20)の各流路から吹き込む気流を構成する気体の混合条件を変化させたときの、バーナ先端温度に与える影響、及びロータリーキルン2の出口(
図11におけるキルン出口9)で得られる気体内のNO
xの濃度に与える影響を評価すべく、シミュレーションを行った。以下にシミュレーション条件を説明する。なお、シミュレーションに際しては、ANSYS社製のソフトウェア FLUENT ver.2019R3が利用された。
【0116】
図11は、シミュレーションに用いたロータリーキルン2及びバーナ(10,20)を含むセメント製造設備1のモデルを模式的に示す図面である。
図12は、シミュレーションに用いたバーナ10のモデルを模式的に示す先端の断面図である。
【0117】
図11に示す、ロータリーキルン2のモデルは、長手方向(X方向)の長さが65m、内径が3.5mとされた。
【0118】
図12に示す、バーナ10のモデルは、
図2を参照して上述したポート(11,12,14,15)に加えて、比較例を検証するためのポート71を備えるものとされた。
【0119】
ポート11は、粉末燃料C1をロータリーキルン2に対して吹き込むことが予定されたポートである。粉末燃料C1は、石炭によって模擬された。後述されるように、実施例1~3は、このポート11から、可燃性ガスG1が、粉末燃料C1と共に又は単独で吹き込まれるケースに対応する。可燃性ガスG1としては、都市ガスの主成分であるメタンガスによって模擬された。
【0120】
ポート12は、可燃性廃棄物R1をロータリーキルン2に対して吹き込むことが予定されたポートである。可燃性廃棄物R1は、直径30mm、厚さ1mmのシート状の廃プラスチックによって模擬された。実施例及び比較例に共通して、ポート12から吹き込まれる気流の流量は20Nm3/分で一定とされた。
【0121】
ポート14は、粉末燃料C1を含む燃料流の内側において、旋回空気流をロータリーキルン2に対して吹き込むポートである。実施例及び比較例に共通して、ポート14から吹き込まれる気流の流量は10Nm3/分で一定とされた。
【0122】
ポート15は、粉末燃料C1を含む燃料流の外側において、直進空気流をロータリーキルン2に対して吹き込むポートである。実施例及び比較例に共通して、ポート15から吹き込まれる気流の流量は50Nm3/分で一定とされた。
【0123】
ポート71は、粉末燃料C1を含む燃料流の外側に設けられ、可燃性ガスG1をロータリーキルン2に対して吹き込む専用のポートである。このポート71は、比較例2のケースを模擬する目的で設けられたものである。一方、後述する比較例1及び実施例1~3のケースを模擬する場合には、このポート71からの気流の流量を0Nm3/分とすることで、バーナ10がポート71を備えていないものとした。
【0124】
ロータリーキルン2内に供給される二次空気AA2(
図1、
図11参照)は、900℃で一定とされた。
【0125】
図11において、バーナ20は、バーナ10の1.5m鉛直上方に配置された、直径0.1mの単管で模擬された。
【0126】
検証に際しては、実施例、比較例共に、バーナ10及びバーナ20から投入される熱量が一定となるように、粉末燃料C1(石炭)の流量と、可燃性ガスG1(メタンガス)の流量が調整された。
【0127】
シミュレーション条件を表1の上段に示す。また、シミュレーション結果を、表1の下段、
図13~
図14に示す。
図13は、それぞれの比較例及び実施例において、バーナ10及びバーナ20の先端の温度を比較したグラフである。
図14は、それぞれの比較例及び実施例において、キルン出口9(
図11参照)で得られる気体に含まれるサーマルNO
xの濃度を比較したグラフである。
【0128】
図13~
図14のグラフでは、可燃性ガスG1が粉末燃料C1又は可燃性廃棄物R1と共に吹き込まれている状況が模擬されている例(実施例/比較例)の結果が、黒塗りの印で表記されている。また、可燃性ガスG1が単独で吹き込まれる状況又は可燃性ガスG1が吹き込まれない状況が模擬されている例(実施例/比較例)の結果が、白抜きの印で表記されている。
【0129】
表1において、フューエルNOxは、投入された燃料に含まれるN(窒素)由来のNOxに対応する。一方、サーマルNOxは、空気が高温になったことで空気中に含まれるN(窒素)が酸化して生成されたNOxに対応する。表1に示すように、キルン出口9で得られる気体に含まれるNOxは、サーマルNOxが支配的である。よって、キルン排ガスに含まれるNOxを低下させるためには、サーマルNOxを減少させることが重要である。
【0130】
【0131】
比較例1は、可燃性ガスG1をバーナ10から吹き込まない場合に対応する。比較例2は、比較例1に対して、可燃性ガスG1専用のポート71を設け、このポート71から可燃性ガスG1を吹き込む場合に対応する。
【0132】
比較例1と比較例2を対比すると、バーナ10の先端温度及びキルン出口9のNOx濃度に関して、比較例2は比較例1よりも大幅に増加した。この結果より、比較例2においては、バーナ10から投入される空気量が一定で燃料近傍の酸素濃度の変化がほぼない状態で、粉末燃料C1(ここでは石炭)より燃焼速度が速い可燃性ガスG1(ここではメタンガス)が投入された結果、燃焼反応が急速に進行したものと考えられる。
【0133】
なお、比較例2が比較例1よりもフューエルNOxが低下している理由は、石炭には窒素が含まれるが、メタンガスには窒素が含まれないためである。しかし、表1によれば、窒素含有量が少ない燃料を用いた比較例2では、石炭を燃料に用いた比較例1よりもキルン出口9におけるNOx濃度が上昇しており、このことは、上述したように、キルン排ガスに含まれるNOxを低下させるためにサーマルNOxを減少させる必要があることを示すものである。
【0134】
実施例1は、比較例1においてポート11から吹き込む気流の一部を、空気から可燃性ガスG1に置換した場合に対応する。実施例2は、比較例1においてポート11から吹き込む気流のすべてを空気から可燃性ガスG1に置換した場合に対応する。
【0135】
比較例1と実施例1~2とを対比すると、バーナ10の先端温度及びキルン出口9のNOx濃度に関して、実施例1~2はいずれも比較例1よりも低下した。この理由としては、粉末燃料C1を吹き込むポートと共通のポート(バーナ10のポート11)から可燃性ガスG1を吹き込むことで、吹き込まれる気流の酸素濃度が低下し、ロータリーキルン2内での燃焼が緩慢になり、ポート11の先端温度が低下したためと考えられる。
【0136】
実施例3は、バーナ10に加えてバーナ20からも可燃性ガスG1を吹き込む場合に対応する。実施例3では、バーナ10からは可燃性ガスG1のみを吹き込み、バーナ20からは可燃性廃棄物R1と共に可燃性ガスG1を吹き込む態様が模擬されている。
【0137】
実施例2と実施例3とを対比すると、バーナ20の先端温度及びキルン出口9のNOx濃度に関して、実施例3は実施例2よりも更に低下した。この結果より、可燃性ガスG1を吹き込むことによって燃焼速度を低下させる作用は、粉末燃料C1を吹き込むバーナ10のみならず、バーナ10とは別に設けられた可燃性廃棄物R1を吹き込むバーナ20に対しても得られることが示される。
【0138】
更に、表1によれば、比較例1と実施例1~3とを対比すると、実施例1~3で導入された二次空気量が、比較例1よりも上昇していることが確認される。このことは、ポート11から導入される低温の空気の一部が、高温の二次空気AA2(
図1参照)に置換されることを意味する。つまり、実施例1~3によれば比較例1と比べてセメント焼成時の燃費を改善する効果も奏される。