(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117398
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20240822BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B60R16/02 650J
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023475
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 凌真
(72)【発明者】
【氏名】福原 康平
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA24
2G036BA12
2G036BA36
(57)【要約】
【課題】使用環境に応じた電子制御装置の寿命を高精度に予測可能な電子制御装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載された電子制御装置10は、基板15と、電子部品51と、第1温度測定部品31と、記憶部53bと、判定部53aと、を備える。第1温度測定部品は、基板上において、電子部品の部品周辺温度を測定する。判定部は、基板の外部又は内部からの信号に基づいて、車両の状態を判定する。判定部は、判定された車両の状態に基づいて、部品周辺温度に対応する温度係数を決定する。また、判定部は、測定された部品周辺温度と、決定された温度係数とに基づいて、電子制御装置及び/又は電子部品の現時点までの劣化度し、記憶部に保存する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された電子制御装置(10,11)であって、
基板(15)と、
前記基板上に配置される電子部品(51,52,53)と、
前記基板上において、前記電子部品の近傍に配置され、前記電子部品の部品周辺温度を測定するように構成された第1温度測定部品(31,32,33)と、
前記基板上に配置された記憶部(53b)と、
前記基板の外部又は内部からの信号に基づいて、前記車両の状態を判定するように構成された判定部(53a)と、を備え、
前記判定部は、
判定された前記車両の状態に基づいて、前記部品周辺温度に対応する温度係数を決定し、
測定された前記部品周辺温度と、前記温度係数とに基づいて、前記電子制御装置及び/又は前記電子部品の現時点までの劣化度を算出し、
算出された現時点までの劣化度を前記記憶部に保存する、ように構成されている、
電子制御装置。
【請求項2】
前記電子部品(51,52,53)は、複数の電子部品を含み、
前記第1温度測定部品(31,32,33)は、複数の第1温度測定部品を含み、
前記複数の第1温度測定部品(31,32,33)は、前記複数の電子部品の各々の部品周辺温度を測定するように構成されており、
前記判定部は、
判定された前記車両の状態に基づいて、測定された複数の部品周辺温度の各々に対応する温度係数を決定し、
前記複数の部品周辺温度と、決定された複数の温度係数とに基づいて、前記劣化度を算出する、ように構成されている、
請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記判定部(53a)は、前記複数の温度係数を加重平均の重み係数として用いて、測定された複数の部品周辺温度の平均値を算出し、算出された前記平均値に基づいて、前記電子制御装置の現時点までの劣化度を算出するように構成されている、
請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記複数の第1温度測定部品により測定された前記複数の部品周辺温度を所定周期で取得するように構成されている、
請求項3に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記判定部(53a)は、判定された前記車両の状態に基づいて、前記所定周期を決定するように構成されている、
請求項4に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記車両の状態は、前記車両の停止を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子制御装置。
【請求項7】
前記判定部は、
前記基板の周辺における基板周辺温度を更に取得し、
判定された前記車両の状態に基づいて、前記複数の部品周辺温度及び前記基板周辺温度の各々に対応する温度係数を決定し、
前記複数の部品周辺温度及び前記基板周辺温度と、決定された複数の温度係数とに基づいて、前記劣化度を算出するように構成されている、
請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項8】
前記判定部(53a)は、前記基板(15)の外部に配置された第2温度測定部品(400)から、前記第2温度測定部品により測定された前記基板周辺温度を取得するように構成されている、
請求項7に記載の電子制御装置。
【請求項9】
前記基板(15)上において前記複数の電子部品(52,53)の遠方に配置され、前記基板周辺温度を測定するように構成された第2温度測定部品(34)を更に備え、
前記判定部(53a)は、前記第2温度測定部品から前記基板周辺温度を取得するように構成されている、
請求項7に記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電子制御装置は、マイクロコンピュータ内の温度検出部により検出した温度の変化量に基づいて、マイクロコンピュータの寿命、及びマイクロコンピュータと基板との間の接続部の寿命を予測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子制御装置は、マイクロコンピュータ以外にも複数の電子部品を備えている。複数の電子部品は、均等に使用されるわけではなく、電子制御装置の使用環境に応じて、複数の電子部品の使用度合は異なる。したがって、マイクロコンピュータと接続部の寿命を予測するだけでは、使用環境に応じた電子制御装置の寿命を高精度に予測することができない。
【0005】
本開示は、使用環境に応じた電子制御装置の寿命を高精度に予測可能な電子制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、車両に搭載された電子制御装置(10,11)であって、基板(15)と、電子部品(51,52,53)と、第1温度測定部品(31,32,33)と、記憶部(53b)と、判定部(53a)と、を備える。電子部品は、基板上に配置されている。第1温度測定部品は、基板上おいて、電子部品の近傍に配置され、電子部品の部品周辺温度を測定する。記憶部は、基板上に配置される。判定部は、基板の外部又は内部からの信号に基づいて、車両の状態を判定する。また、判定部は、判定された車両の状態に基づいて、部品周辺温度に対応する温度係数を決定する。また、判定部は、測定された部品周辺温度と、決定された温度係数とに基づいて、電子制御装置及び/又は電子部品の現時点までの劣化度を算出する。また、判定部は、算出された現時点までの劣化度を記憶部に保存する。
【0007】
本開示の電子制御装置では、車両の状態が判定され、判定された車両の状態に基づいて、部品周辺温度に対する温度係数が決定される。車両の状態によって、電子制御装置の劣化度に対する部品周辺温度の影響度合いが異なる。判定された車両の状態に基づいて、部品周辺温度に対する温度係数が決定されることにより、電子制御装置及び電子部品の少なくとも一方の現時点までの劣化度を高精度に算出することができる。ひいては、使用環境に応じた電子制御装置の寿命を高精度に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る電子制御装置の電子部品の配置を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る電子制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係るマイコンが実行する劣化度算出処理を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態に係るECU駆動中における電子部品の温度変化を示すタイムチャートである。
【
図5】第1実施形態に係るECU非駆動中における電子部品の温度変化を示すタイムチャートである。
【
図6】第1実施形態に係る車両状態に応じた温度係数及びサンプリング周期を示す表である。
【
図7】第1実施形態に係る車両状態とサンプリング周期と温度係数のタイムチャートである。
【
図8】第2実施形態に係る電子制御装置の電子部品の配置を示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る電子制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
<1-1.構成>
図1及び
図2を参照して、第1実施形態に係る第1電子制御装置(以下、第1ECU)10の構成について説明する。第1ECU10は、車両に搭載されている複数のECUのうちの1つであり、車両の特定の制御を実行する。例えば、第1ECU10は、エンジン自動車やHV自動車に搭載されたエンジンECUでもよいし、EV自動車に搭載されたEVECUでもよい。また、第1ECU10は、自動運転車両に搭載された自動運転ECUでもよいし、エアコンを制御するエアコンECUでもよい。本実施形態では、第1ECU10が、プラグインハイブリッド自動車に搭載されるエンジンECUである例を示す。
【0010】
第1ECU10は、プリント基板15と、第1電子部品51と、第2電子部品52と、第3電子部品53と、第4電子部品54と、第1サーミスタ31と、第2サーミスタ32と、第3サーミスタ33と、第4サーミスタ34と、コネクタ20と、を備える。
【0011】
第1電子部品51、第2電子部品52、第3電子部品53及び第4電子部品54は、プリント基板15に電気的に接続されている部品である。第1電子部品51、第2電子部品52及び第3電子部品53は、外部からの熱又は自身が発生した熱を受けて劣化する部品である。外部からの熱を受けて劣化する部品は、アルミ電解コンデンサなどである。自身が発生した熱を受けて劣化する部品、すなわち発熱部品は、マイコン、電源IC、MOSトランジスタなどである。第4電子部品54は、熱の影響を受けない部品である。
【0012】
本実施形態では、第1電子部品51及び第2電子部品52が、アルミ電解コンデンサ及び電源ICである例を示す。また、本実施形態では、第3電子部品53が、マイコン53aと、メモリ53bとを含む例を示す。メモリ53bは、非遷移的実体的記録媒体である。
【0013】
第1サーミスタ31、第2サーミスタ32、第3サーミスタ33及び第4サーミスタ34の各々は、プリント基板15に搭載されて内部電源60に接続されており、搭載場所近傍の温度を測定して、測定温度をマイコン53aへ出力する。測定温度は、部品周辺温度と基板周辺温度とを含む。
【0014】
第1サーミスタ31は、プリント基板15上において、第1電子部品51の近傍に配置されており、第1電子部品51の第1部品周辺温度th1を測定して、測定した第1部品周辺温度th1をマイコン53aへ出力する。第2サーミスタ32は、プリント基板15上において、第2電子部品52の近傍に配置されており、第2電子部品52の第2部品周辺温度th2を測定して、測定した第2部品周辺温度th2をマイコン53aへ出力する。第3サーミスタ33は、プリント基板15上において、第3電子部品53の近傍に配置されており、第3電子部品53の第3部品周辺温度th3を測定して、測定した第3部品周辺温度th3をマイコン53aへ出力する。
【0015】
第4サーミスタ34は、プリント基板15上において、発熱部品である第2電子部品52及び第3電子部品53の遠方、すなわち、第2電子部品52及び第3電子部品53が発生する熱の影響を受けない位置に配置されている。第4サーミスタ34は、発熱部品の影響を受けない位置で、周辺温度th4を測定し、測定した周辺温度th4をマイコン53aへ出力する。発熱部品の影響を受けない位置は、第1ECU10の駆動停止時に、その位置における温度が、第1~第3部品周辺温度th1,th2,th3と比べて早期に、プリント基板15の外部の温度と一致する位置に相当する。本実施形態では、第1,第2,第3サーミスタ31,32,33が、第1温度測定部品に相当し、第4サーミスタ34が第2温度測定部品に相当する。
【0016】
ここで、第1ECU10の寿命が尽きた場合に、ユーザに交換を提言することが考えらえる。ユーザに第1ECU10の交換を提言するためには、第1ECU10の寿命を高精度に予測し、寿命が十分に残っていないことを確認する必要がある。第1ECU10の寿命は、第1ECU10の経年劣化による劣化度に対応する。第1ECU10の経年劣化の主要因は熱であり、第1ECU10の劣化度は、第1ECU10の使用開始から現時点までに晒された、その時々の温度における劣化度(すなわち劣化量)の蓄積として算出される。
【0017】
プリント基板15上の複数の電子部品は、均等に使用されるわけではなく、第1ECU10の使用環境すなわち車両の状態に応じて、使用度合が異なる。よって、車両の状態に応じて、第1ECU10の劣化度に影響する温度要因が異なる。車両の状態は、車両の挙動、車両に搭載されている各種機器の状態、室内環境等を含む。例えば、車両の状態に応じて、第2電子部品52が発熱し、第3電子部品53が発熱しない場合もあれば、第3電子部品53が発熱し、第2電子部品52が発熱しない場合もある。第2電子部品52が発熱し、第3電子部品53が発熱しない場合は、第2部品周辺温度th2は、第3部品周辺温度th3よりも、第1ECU10の劣化度に大きな影響を与える。また、第3電子部品53が発熱し、第2電子部品52が発熱しない場合は、第3部品周辺温度th3は、第2部品周辺温度th2よりも、第1ECU10の劣化度に大きな影響を与える。したがって、プリント基板15のどこか一か所だけで測定した温度を用いても、第1ECU10の劣化度を精度よく算出することが難しい。
【0018】
そこで、本実施形態では、プリント基板15上の熱を受けて劣化する電子部品の各々の近傍にサーミスタを配置して、各々の部品周辺温度を測定する。すなわち、第1,第2,第3電子部品51,52,53に対して、第1,第2,第3サーミスタ31,32,33を配置して、熱を受けて劣化する3つの電子部品の第1,第2,第3部品周辺温度th1,th2,th3を測定する。さらに、本実施形態では、プリント基板15上に、第4サーミスタ34を配置して、外気温や直射日光などの外的要因により変化する基板周辺温度th4を測定する。
【0019】
マイコン53aは、車両の状態を判定する。マイコン53aは、判定した車両の状態に応じて、第1~第4サーミスタ31~34により測定される4つの測定温度th1,th2,th3,th4に重み付けして加重平均し、加重平均して算出した平均温度Taに基づいて、第1ECU10の劣化度を算出する。本実施形態では、マイコン53aが、判定部に相当する。
【0020】
コネクタ20は、制御対象であるエンジン、他のECU及びセンサ等と接続される複数の端子を含む。本実施形態では、コネクタ20は、第2ECU200に接続される第1接続端子110と、第3ECU300に接続される第2接続端子120と、を含む。第2ECU200は、車両に搭載されて、エンジンの始動を制御する。第3ECU300は、車両に搭載されて、プラグインハイブリッド自動車のバッテリの充放電を制御する。マイコン53aは、コネクタ20を介して、第2ECU200及び第3ECU300に接続されている。
【0021】
<1-2.処理>
次に、
図3のフローチャートを参照して、マイコン53aが実行する劣化度算出処理について説明する。マイコン53aは、第1ECU10に初めて電力が供給された時点から本処理の実行を開始し、所定の処理周期で本処理を繰り返し実行する。
【0022】
まず、S10では、車両の状態を判定する。具体的には、マイコン53aは、コネクタ20を介して、第2ECU200からIG信号を取得し、第3ECU300から充電信号を取得する。IG信号は、ハイ又はローを示し、ハイはエンジン駆動、ローはエンジン停止に対応している。充電信号は、ハイ又はローを示し、ハイは充電中、ローは非充電中に対応している。また、本実施形態では、第1ECU10はエンジンECUであるため、エンジンの回転数、アクセル開度等のエンジンの状態を取得している。なお、車両が電気自動車である場合は、IG信号の代わりに、モータの始動信号を取得してもよい。
【0023】
マイコン53aは、取得したIG信号、充電信号に基づいて、車両の状態が、走行状態、停止状態、充電状態のいずれかであるか判定する。さらに、マイコン53aは、車両の状態が走行状態である場合、エンジンの回転数及びアクセル開度等に基づいて、車両の状態が、第1モード、第2モード、アイドリング状態のいずれであるか判定する。第1モードは、例えば、エンジンの回転数が高い加速モードである。第2モードは、例えば、エンジンの回転数が低い巡行モードである。走行モードは、第1モード、第2モードの2つに限らず、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0024】
続いて、S20では、S10で判定された車両の状態に応じて、4つの測定温度th1,th2,th3,th4のサンプリング周期と、4つの測定温度th1,th2,th3,th4の温度係数w1,w2,w3,w4と、を決定する。温度係数w1,w2,w3,w4は、加重平均の重みであり、w1+w2+w3+w4=1である。
【0025】
図4に、第1ECU10の駆動時(すなわち、エンジンの駆動時)における第1ECU10の温度変化を示し、
図5に、第1ECU10の非駆動時(すなわち、エンジンの非駆動時)における第1ECU10の温度変化を示す。第1ECU10の駆動時では、温度変化が比較的激しい。一方、第1ECU10の非駆動時にでは、温度変化が比較的緩やかである。そこで、
図6に示すように、マイコン53aは、第1ECU10の駆動時では、劣化度の算出精度を高めるため、サンプリング周期として、比較的周期が短いαを設定する。また、マイコン53aは、第1ECU10の非駆動時では、第1ECU10に流れる暗電流を低減し、バッテリの残容量の低下を抑制するため、サンプリング周期として、比較的周期が長いβ(>α)を設定する。なお、第1ECU10の非駆動時であっても、充電用コンセントを用いたバッテリの充電中においては、バッテリの残容量の低下を抑制する必要がないため、マイコン53aは、サンプリング周期として、比較的長いαを設定する。
【0026】
図6に示すように、車両の状態が第1モードである場合には、第2電子部品52が発熱する。そこで、マイコン53aは、温度係数として、Aセットを設定する。Aセットは、第2部品周辺温度th2の温度係数w2が、他の温度係数w1,w3,w4よりも大きい。例えば、Aセットは、(w1,w2,w3,w4)=(0.2,0.4,0.3,0.1)である。この場合、第1ECU10の平均温度Taは、Ta=th1×0.2+th2×0.4+th3×0.3+th1×0.1として算出される。
【0027】
また、車両の状態が第2モードである場合には、第3電子部品53が発熱する。そこで、マイコン53aは、温度係数として、Bセットを設定する。Bセットは、第3部品周辺温度th3の温度係数w3が、他の温度係数w1,w2,w4よりも大きい。例えば、Bセットは、(w1,w2,w3,w4)=(0.2,0.3,0.4,0.1)である。この場合、平均温度Taは、Ta=th1×0.2+th2×0.3+th3×0.4+th4×0.1として算出される。
【0028】
また、車両の状態がアイドリング状態である場合には、特定の電子部品が発熱しない。そこで、マイコン53aは、温度係数として、Cセットを設定する。Cセットは、第1,第2,第3部品周辺温度th1,th2,th3の温度係数w1,w2,w3が同じ値である。例えば、Cセットは、(w1,w2,w3,w4)=(0.3,0.3,0.3,0.1)である。この場合、平均温度Taは、Ta=th1×0.3+th2×0.3+th3×0.3+th4×0.1として算出される。
【0029】
また、車両の状態が、停止状態又は充電状態である場合には、第1ECU10が非駆動であり、第1,第2,第3部品周辺温度th1,th2,th3は、時間の経過とともに基板周辺温度th4に収束する。そこで、マイコン53aは、温度係数として、Dセットを設定する。Dセットは、基板周辺温度th4の温度係数w1が、他の温度係数w1,w2,w3よりも大きい。例えば、Dセットは、(w1,w2,w3,w4)=(0.2,0.2,0.2,0.4)である。この場合、平均温度Taは、Ta=th1×0.2+th2×0.2+th3×0.2+th4×0.4として算出される。
【0030】
このように、マイコン53aが、車両の状態を監視し、車両の状態の変化に応じて、サンプリング周期及び温度係数を変えることにより、
図7に示すように、時間変化する車両状態に応じて、サンプリング周期と、温度係数が時間変化する。
【0031】
続いて、S30では、温度取得停止要求があるか判定する。整備工場などで車両がメンテナンスを受けるときに、第1ECU10の電源が落とされることがある。第1ECU10の電源が落とされるときに、第1ECU10へ温度取得停止要求が出される。S30において、温度取得停止要求がないと判定した場合は、S40の処理へ進み、温度取得停止要求があると判定した場合は、本処理を終了する。
【0032】
S40では、S20で決定したサンプリング周期に基づいて、現時点がサンプリング時刻か否か判定する。現時点がサンプリング時刻であると判定した場合は、S50の処理へ進み、現時点がサンプリング時刻でないと判定した場合は、S30の処理へ戻る。
【0033】
S50では、第1~第4サーミスタ31~34から、第1,第2,第3部品周辺温度th1,th2,th3及び基板周辺温度th4を取得する。そして、S20で決定した温度係数w1,w2,w3,w4と、取得した第1,第2,第3部品周辺温度th1,th2,th3及び基板周辺温度th4と、に基づいて、平均温度Taを算出する。
【0034】
続いて、S60では、S50で算出した平均温度Taに基づいて、前回のサンプリング時刻から今回のサンプリング時刻までの間の第1ECU10の劣化度(すなわち劣化量)を算出する。例えば、マイコン53aは、アレニウス則を用いて、第1ECU10の劣化度を算出する。
【0035】
続いて、S70では、メモリ53bから累積劣化度を取得する。累積劣化度は、第1ECU10に初めて電力が供給されてから前回のサンプリング時刻までの第1ECU10の劣化度に相当する。
【0036】
続いて、S80では、S70で取得した累積劣化度に、S60で算出した劣化度を加算して、累積劣化度を更新する。
続いて、S90では、S80で更新した累積劣化度をメモリ53bに保存する。
【0037】
続いて、S100では、S10と同様にして、車両の状態を判定する。
続いて、S110では、S100で判定した車両の状態が、S10で判定した車両の状態から変化しているか否か判定する。車両の状態が変化していると判定した場合は、S10の処理へ戻り、S20において、変化した車両の状態に応じた、サンプリング周期及び温度係数を再度決定する。車両の状態が変化していないと判定した場合は、S20の処理を飛ばして、S30の処理へ戻る。
【0038】
<1-3.効果>
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)第1ECU10では、車両の状態が判定され、判定された車両の状態に基づいて、温度係数w1,w2,w3,w4が決定される。車両の状態によって、第1ECU10の劣化度に対する第1,第2,第3部品周辺温度th1,th2,th3及び基板周辺温度th4の影響度合いが異なる。判定された車両の状態に基づいて、温度係数w1,w2,w3,w4が決定されることにより、第1ECU10に最初に電力が供給された時から現時点までの第1ECU10の劣化度を高精度に算出することができる。ひいては、第1ECU10の使用環境に応じた第1ECU10の寿命を高精度に予測することができる。
【0039】
(2)温度係数w1,w2,w3,w4が重み係数として用いられ、第1,第2,第3部品周辺温度th1,th2,th3及び基板周辺温度th4が加重平均されて、平均温度Taが算出される。そのため、第1,第2,第3部品周辺温度th1,th2,th3及び基板周辺温度th4のうち重点的に監視したい温度を選択して、他の温度よりも、平均温度Taに大きく反映させることができる。
【0040】
(3)車両の状態に基づいて、サンプリング周期が決定されることにより、車両が停止中には、サンプリング周期を長くして、第1ECU10へ流れる暗電流を低減することができる。
【0041】
(4)車両の停止中においても、第1,第2,第3部品周辺温度th1,th2,th3及び基板周辺温度th4を取得することにより、外気温や直射日光などの外的要因による温度の変化を第1ECU10の寿命に反映させることができる。
【0042】
(5)基板周辺温度th4を取得することにより、車両の駆動中においても、外気温や直射日光などの外的要因により変化する温度を、平均温度Taに反映させることができる。
(6)プリント基板15において、第2及び第3電子部品52,53の遠方に第4サーミスタ34が配置されていることにより、第2及び第3電子部品52,53の発熱の影響を受けない基板周辺温度th4を取得することができる。
【0043】
(第2実施形態)
<2-1.第1実施形態との相違点>
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0044】
前述した第1実施形態に係る第1ECU10は、プリント基板15上に第4サーミスタ34を備えていた。これに対し、
図8に示すように、第2実施形態に係る第1ECU11は、プリント基板15上に第4サーミスタ34を備えていない点で、第1実施形態と相違する。
【0045】
図9に示すように、第1ECU11は、コネクタ21を備える。コネクタ21は、第1接続端子110と第2接続端子120に加えて、第3接続端子130を備える。第3接続端子130は、第4ECU400又は測温装置400に接続されている。第4ECU400又は測温装置400は、車両内においてプリント基板15の外部に配置されている。第4ECU400又は測温装置400は、基板周辺温度th4を測定し、測定した基板周辺温度th4を示す温度信号を、第3接続端子130を介して、第1ECU10へ出力する。マイコン53aは、第3接続端子130を介して、基板周辺温度th4を取得する。すなわち、本実施形態では、マイコン53aは、プリント基板15の外部から、基板周辺温度th4を取得する。本実施形態では、第4ECU400又は測温装置400が第2温度測定部品に相当する。
【0046】
<2-2.効果>
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)~(5)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0047】
(7)第1ECU1010が基板周辺温度th4を測定するサーミスタを備えていない場合であっても、マイコン53aは、プリント基板15の外部から基板周辺温度th4を取得することができる。
【0048】
(他の実施形態)
(a)上記各実施形態では、第1ECU10,11がエンジンECUの例を示したが、第1ECU10,11は、エンジンECU以外であってもよい。例えば、第1ECU10,11は、自動運転ECUでもよい。第1ECU10,11が自動運転ECUである場合、マイコン53aは、車両の状態が自動運転走行中か手動運転走行中か判定し、自動運転走行中と手動運転走行中とで、サンプリング周期及び温度係数を変えてもよい。例えば、自動運転走行中では、外部カメラ及びレーダの処理回路(例えば、マイコン、ASICIC、専用回路)が発熱するため、マイコン53aは、外部カメラ及びレーダの処理回路の部品周辺温度の温度係数を他よりも大きくしてもよい。手動運転走行中では、周辺監視レーダの処理回路が発熱するので、マイコン53aは、周辺監視レーダの処理回路の部品周辺温度の温度係数を他よりも大きくしてもよい。
【0049】
また、第1ECU10,11は、電気自動車に搭載されたEVECUでもよい。第1ECU10,11がEVECUである場合、マイコン53aは、車両の状態が、加速走行中、減速発電中、及び充電ステーションでの充電中のいずであるか判定し、判定した車両の状態に応じて、サンプリング周期及び温度係数を変えてもよい。例えば、加速走行中では、モータ制御部品が発熱するので、マイコン53aは、モータ制御部品の部品周辺温度の温度係数を他よりも大きくしてもよい。減速発電中では、モータ制御部品及びバッテリ制御部品が発熱するので、マイコン53aは、モータ制御部品及びバッテリ制御部品の部品周辺温度の温度係数を他よりも大きくしてもよい。充電ステーションでの充電中では、バッテリ制御部品が発熱するので、マイコン53aは、バッテリ制御部品の部品周辺温度の温度係数を他よりも大きくしてもよい。
【0050】
また、第1ECU10,11は、エアコンを制御するエアコンECUでもよい。第1ECU10,11がエアコンECUである場合、マイコン53aは、車両の状態が、冷房状態、暖房状態、及び送風状態のいずれであるか判定し、判定した車両の状態に応じて、サンプリング周期及び温度係数を変えてもよい。例えば、冷房状態では、ファン用モータの制御部品及び熱交換器制御部品が発熱するので、マイコン53aは、ファン用モータの制御部品及び熱交換機制御部品の部品周辺温度の温度係数を他よりも大きくしてもよい。暖房状態及び送風状態では、ファン用モータの制御部品が発熱するので、ファン用モータの制御部品の部品周辺温度の温度係数を他よりも大きくしてもよい。
【0051】
(b)上記各実施形態では、第1ECU10,11の平均温度Taから第1ECU10,11の累積劣化度を算出したが、熱を受けて劣化する複数の電子部品の各々の部品周辺温度から、複数の電子部品の各々の累積劣化度を算出してもよい。例えば、第1部品周辺温度th1と温度係数w1とを乗算した第1温度を算出し、第1温度に基づいて第1電子部品51の累積劣化度を算出してもよい。また、第2部品周辺温度th2と温度係数w2とを乗算した第2温度を算出し、第2温度に基づいて第2電子部品52の累積劣化度を算出してもよい。また、第3部品周辺温度th3と温度係数w3とを乗算した第3温度を算出し、第3温度に基づいて第3電子部品53の累積劣化度を算出してもよい。すなわち、そして、算出した複数の累積劣化度のうち最も大きい累積劣化度に基づいて、第1ECU10,11の寿命を予測してもよい。
【0052】
(c)上記各実施形態では、第1ECU10,11は、プリント基板15上に4つ又は3つのサーミスタを備えていたが、サーミスタは2つでもよいし、5つ以上そなえていてもよい。サーミスタの数は、プリント基板15上に搭載された熱を受けて劣化する電子部品の数に対応していればよい。
【0053】
(d)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0054】
15…プリント基板、20,21…コネクタ、31…第1サーミスタ、32…第2サーミスタ、33…第3サーミスタ、34…第4サーミスタ、51…第1電子部品、52…第2電子部品、52…第3電子部品、53…第3電子部品、53a…マイコン、53b…メモリ、54…第4電子部品。