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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117400
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 6/027 20200101AFI20240822BHJP
【FI】
B62J6/027
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023478
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 歩佳
(57)【要約】
【課題】ヘッドライトの左右の向きを調整する作業およびヘッドライトの向きを固定する作業が容易な鞍乗型車両を提供すること。
【解決手段】ヘッドライト20の第1取付部21、ヘッドライト20の第2取付部22、第1取付部21を支持する第1ステー31、第2取付部22を支持する第2ステー32には、それぞれ第1ボルト孔51、第2ボルト孔52、第3ボルト孔53、第4ボルト孔54が形成されている。第1ボルト孔51および第3ボルト孔53には第1ボルト41が挿入され、第2ボルト孔52および第4ボルト孔54には第2ボルト42が挿入されている。第1ボルト孔51および第3ボルト孔53の少なくとも一方は、前後方向に細長い長孔からなっている。第2ボルト孔52および第4ボルト孔54の少なくとも一方は、弾性体であるグロメット70に囲まれた弾性孔からなっている。
【選択図】図8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を有する本体部と、前記本体部の左方および右方の一方に位置する第1取付部と、前記本体部の左方および右方の他方に位置する第2取付部と、を有するヘッドライトと、
前記ヘッドライトの前記第1取付部を支持する第1ステーと、
前記ヘッドライトの前記第2取付部を支持する第2ステーと、
前記ヘッドライトの前記第1取付部を前記第1ステーに固定する左右に延びる第1ボルトと、
前記ヘッドライトの前記第2取付部を前記第2ステーに固定する左右に延びる第2ボルトと、を備え、
前記ヘッドライトの前記第1取付部、前記ヘッドライトの前記第2取付部、前記第1ステー、前記第2ステーには、それぞれ第1ボルト孔、第2ボルト孔、第3ボルト孔、第4ボルト孔が形成され、
前記第1ボルトは、前記第1ボルト孔および前記第3ボルト孔に挿入されており、
前記第2ボルトは、前記第2ボルト孔および前記第4ボルト孔に挿入されており、
前記第1ボルト孔および前記第3ボルト孔の少なくとも一方は、前後方向に細長い第1長孔からなり、
前記第2ボルト孔および前記第4ボルト孔の少なくとも一方は、弾性体に囲まれた第1弾性孔からなっている、鞍乗型車両。
【請求項2】
前記第1弾性孔は円孔である、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記第1長孔と前記第1弾性孔とは、車両中心線を通る鉛直面に関して互いに対称の位置に形成されている、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記ヘッドライトの前記第2取付部には、前記第2ボルト孔よりも下方に位置する第5ボルト孔が形成され、
前記第2ステーには、前記第4ボルト孔よりも下方に位置する第6ボルト孔が形成され、
前記第5ボルト孔および前記第6ボルト孔に挿入された左右に延びる第3ボルトを備え、
前記第5ボルト孔および前記第6ボルト孔の少なくとも一方は、弾性体に囲まれた第2弾性孔からなっている、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記ヘッドライトの後方に配置されたヘッドパイプを備え、
前記ヘッドパイプは、前方かつ下方に延びており、
前記第3ボルトは、前記第2ボルトの前方かつ下方に位置している、請求項4に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記ヘッドライトの前記第1取付部には、前記第1ボルト孔よりも下方に位置する第7ボルト孔が形成され、
前記第1ステーには、前記第3ボルト孔よりも下方に位置する第8ボルト孔が形成され、
前記第7ボルト孔および前記第8ボルト孔に挿入された左右に延びる第4ボルトを備え、
前記第7ボルト孔および前記第8ボルト孔の少なくとも一方は、前後方向に細長い第2長孔からなっている、請求項4に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記ヘッドライトの前記第2取付部または前記第2ステーは、孔が形成された金属製の部材と、前記部材の前記孔に嵌め込まれたゴム製のグロメットと、を有し、
前記第1弾性孔は前記グロメットに形成されている、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記グロメットを構成するゴムの硬度は40~70度である、請求項7に記載の鞍乗型車両。
【請求項9】
前記第1弾性孔の内径は15~18mmである、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドライトを備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特開2005-199793号公報に開示されているように、ヘッドライトの左右の向きを調整可能な鞍乗型車両が知られている。
【0003】
特開2005-199793号公報に開示された鞍乗型車両は、ヘッドライトと、ヘッドライトを支持する左右のステーと、を備えている。ヘッドライトの左右の側部には、円孔からなるボルト挿通孔が形成されている。左右のステーには、前後方向に細長い長孔からなるボルト挿通孔が形成されている。ステーのボルト挿通孔およびヘッドライトのボルト挿通孔に挿入されるボルトによって、ヘッドライトはステーに固定されている。
【0004】
ステーのボルト挿通孔は長孔であるため、左右のボルトを締める前は、ヘッドライトの左側部を左のステーに対して前後に移動させることができ、ヘッドライトの右側部を右のステーに対して前後に移動させることができる。ヘッドライトの左側部および右側部の前後方向の位置を調整することにより、ヘッドライトの左右の向きを調整することができる。ヘッドライトの左右の向きを調整した後、左右のボルトを締結することにより、ヘッドライトの向きを固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-199793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記鞍乗型車両では、ヘッドライトの向きを調整した後、ヘッドライトの向きがずれないように注意しながら左右の両ボルトを締結しなければならない。ヘッドライトの向きを調整する作業は比較的容易であるが、ヘッドライトの向きを固定する作業が比較的面倒であった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヘッドライトの左右の向きを調整する作業およびヘッドライトの向きを固定する作業が容易な鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示される鞍乗型車両は、光源を有する本体部と、前記本体部の左方および右方の一方に位置する第1取付部と、前記本体部の左方および右方の他方に位置する第2取付部と、を有するヘッドライトを備える。前記鞍乗型車両は、前記ヘッドライトの前記第1取付部を支持する第1ステーと、前記ヘッドライトの前記第2取付部を支持する第2ステーと、前記ヘッドライトの前記第1取付部を前記第1ステーに固定する左右に延びる第1ボルトと、前記ヘッドライトの前記第2取付部を前記第2ステーに固定する左右に延びる第2ボルトと、を備える。前記ヘッドライトの前記第1取付部、前記ヘッドライトの前記第2取付部、前記第1ステー、前記第2ステーには、それぞれ第1ボルト孔、第2ボルト孔、第3ボルト孔、第4ボルト孔が形成されている。前記第1ボルトは、前記第1ボルト孔および前記第3ボルト孔に挿入されている。前記第2ボルトは、前記第2ボルト孔および前記第4ボルト孔に挿入されている。前記第1ボルト孔および前記第3ボルト孔の少なくとも一方は、前後方向に細長い第1長孔からなっている。前記第2ボルト孔および前記第4ボルト孔の少なくとも一方は、弾性体に囲まれた第1弾性孔からなっている。
【0009】
上記鞍乗型車両によれば、第1ボルト孔および第3ボルト孔の少なくとも一方は前後方向に細長い第1長孔からなっているので、第1ボルト孔および第3ボルト孔に第1ボルトを挿入した状態のまま、ヘッドライトの第1取付部を第1ステーに対して前後に移動させることができる。第2ボルト孔および第4ボルト孔の少なくとも一方は弾性体に囲まれた第1弾性孔からなっているので、弾性変形可能である。第2ボルトを締結した後であっても、第1弾性孔の弾性変形可能な範囲内において、第2ボルトは第1弾性孔の内部で前後に微小移動することができる。第2ボルトがヘッドライトの第1取付部の前後移動を阻害しないので、第2ボルトを締結した後であっても、ヘッドライトの左右の向きを調整することができる。ヘッドライトの向きを調整した後、第1ボルトを締結することにより、ヘッドライトの向きを固定することができる。上記鞍乗型車両によれば、ヘッドライトの向きを調整した後に、第1ボルトおよび第2ボルトの両方を締結する必要は無い。したがって、ヘッドライトの左右の向きを調整する作業およびヘッドライトの向きを固定する作業が容易となる。
【0010】
前記第1弾性孔の形状は第2ボルトの形状に対応した形状であればよく、特に限定されないが、前記第1弾性孔は円孔であってもよい。
【0011】
前記第1長孔と前記第1弾性孔とは、車両中心線を通る鉛直面に関して互いに対称の位置に形成されていてもよい。
【0012】
このことにより、ヘッドライトの左右の向きの調整が容易となる。
【0013】
前記ヘッドライトの前記第2取付部には、前記第2ボルト孔よりも下方に位置する第5ボルト孔が形成されていてもよい。前記第2ステーには、前記第4ボルト孔よりも下方に位置する第6ボルト孔が形成されていてもよい。前記鞍乗型車両は、前記第5ボルト孔および前記第6ボルト孔に挿入された左右に延びる第3ボルトを備えていてもよい。前記第5ボルト孔および前記第6ボルト孔の少なくとも一方は、弾性体に囲まれた第2弾性孔からなっていてもよい。
【0014】
このことにより、弾性孔が少なくとも上下に2つ設けられているので、ヘッドライトを安定して支持することができる。また、ヘッドライトが第2ボルトを中心として上下に回転してしまうことが防止されるので、ヘッドライトの向きが上下にずれることを防止できる。
【0015】
前記鞍乗型車両は、前記ヘッドライトの後方に配置されたヘッドパイプを備えていてもよい。前記ヘッドパイプは、前方かつ下方に延びていてもよい。前記第3ボルトは、前記第2ボルトの前方かつ下方に位置していてもよい。
【0016】
このことにより、ヘッドパイプに沿ってヘッドライトを安定して支持することができる。
【0017】
前記ヘッドライトの前記第1取付部には、前記第1ボルト孔よりも下方に位置する第7ボルト孔が形成されていてもよい。前記第1ステーには、前記第3ボルト孔よりも下方に位置する第8ボルト孔が形成されていてもよい。前記鞍乗型車両は、前記第7ボルト孔および前記第8ボルト孔に挿入された左右に延びる第4ボルトを備えていてもよい。前記第7ボルト孔および前記第8ボルト孔の少なくとも一方は、前後方向に細長い第2長孔からなっていてもよい。
【0018】
このことにより、ヘッドライトを安定して支持することができる。
【0019】
前記ヘッドライトの前記第2取付部または前記第2ステーは、孔が形成された金属製の部材と、前記部材の前記孔に嵌め込まれたゴム製のグロメットと、を有していてもよい。前記第1弾性孔は前記グロメットに形成されていてもよい。
【0020】
このことにより、金属部材の孔にゴム製のグロメットを嵌め込むという簡易かつ安価な構成により、前述の効果を得ることができる。
【0021】
前記グロメットを構成するゴムの硬度は40~70度であってもよい。
【0022】
前記第1弾性孔の内径は15~18mmであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ヘッドライトの左右の向きを調整する作業およびヘッドライトの向きを固定する作業が容易な鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
図2】前記自動二輪車の正面図である。
図3】ヘッドライトの正面図である。
図4】ヘッドライトの右側面図である。
図5】第1取付部を省略したヘッドライトの右側面図である。
図6】ヘッドライトの左側面図である。
図7】第2取付部を省略したヘッドライトの左側面図である。
図8図3のVIII-VIII線断面図である。
図9図8のIX部分の拡大図である。
図10図8のX部分の拡大図である。
図11】グロメットの正面図である。
図12図11のXII-XII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、鞍乗型車両の実施形態について説明する。図1は、鞍乗型車両の一例である自動二輪車1の左側面図である。図2は自動二輪車1の正面図である。
【0026】
以下の説明では特に断らない限り、前、後、左、右、上、下とは、乗員が乗車せずかつ荷物が載せられていない自動二輪車1が水平面上に直立した状態で停止している場合に、シート2に着座した仮想的な乗員から見た前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図中のF、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。
【0027】
図1に示すように、自動二輪車1は、ヘッドパイプ11を有する車体フレーム10と、車体フレーム10に支持されたシート2と、車体フレーム10に支持された内燃機関3と、前輪4と、後輪5と、ステアリングハンドル6と、ヘッドライト20と、を備えている。
【0028】
内燃機関3は、自動二輪車1の走行用の駆動源の一例である。ただし、走行用の駆動源は内燃機関3に限定されず、電動モータであってもよい。
【0029】
ヘッドパイプ11には、ステアリング軸(図示せず)が挿入されている、ステアリング軸は、ヘッドパイプ11により左右に回転可能に支持されている。ステアリングハンドル6は、ステアリング軸の上部に固定されている。ステアリング軸の下部にはフロントフォーク7が固定されている。前輪4はフロントフォーク7の下端部に回転可能に支持されている。フロントフォーク7には、フロントフェンダ8が固定されている。
【0030】
図3に示すように、ヘッドライト20は、本体部23と、第1取付部21と、第2取付部22とを有している。
【0031】
本体部23は、ケース24と、ケース24に取り付けられた光源25と、ケース24に取り付けられた透明のレンズ26とを有している。ここでは、光源25はバルブからなっている。ただし、光源25はバルブに限定されず、LEDであってもよい。光源25の種類は何ら限定されない。本実施形態では、ケース24は正面から見て円形に形成されている。ただし、ケース24の形状は特に限定されない。
【0032】
図4に示すように、第1取付部21は三角形状のプレート21Aを有している。第1取付部21は、ボルト65により本体部23の右側部に取り付けられている。図5に示すように、ケース24の右側部にはボルト孔27が形成されている。図示は省略するが、プレート21Aの前部にはボルト孔が形成されている。図4に示すように、プレート21Aのボルト孔とケース24のボルト孔27とにボルト65が締結されることにより、第1取付部21はケース24の右側部に固定されている。
【0033】
図6に示すように、第1取付部21と同様、第2取付部22は三角形状のプレート22Aを有している。第2取付部22は、ボルト66により本体部23の左側部に取り付けられている。図7に示すように、ケース24の左側部にはボルト孔28が形成されている。図示は省略するが、プレート22Aの前部にはボルト孔が形成されている。図6に示すように、プレート22Aのボルト孔とケース24のボルト孔28とにボルト66が締結されることにより、第2取付部22はケース24の左側部に固定されている。
【0034】
図5に示すように、ヘッドパイプ11には第1ステー31が固定されている。第1ステー31はヘッドライト20の第1取付部21を支持する。第1ステー31には、ボルト孔53およびボルト孔58が形成されている。ボルト孔58はボルト孔53よりも下方に位置している。また、ボルト孔58はボルト孔53よりも前方に位置している。なお、本明細書において、一のボルト孔が他の一のボルト孔よりも下方に位置しているとは、一のボルト孔の中心が他の一部のボルト孔の中心よりも下方に位置していることを言う。一のボルト孔が他の一のボルト孔よりも前方に位置しているとは、一のボルト孔の中心が他の一のボルト孔の中心よりも前方に位置していることを言う。ボルト孔53およびボルト孔58は円孔からなっている。
【0035】
図4に示すように、第1取付部21のプレート21Aの後部には、ボルト孔51およびボルト孔57が形成されている。ボルト孔57はボルト孔51よりも下方に位置している。ボルト孔57はボルト孔51よりも前方に位置している。ボルト孔51およびボルト孔57は、前後方向に細長い長孔からなっている。ボルト孔51およびボルト孔57の前後方向の寸法は、上下方向の寸法よりも大きい。プレート21Aを第1ステー31に重ねたときに、車両側面視において、ボルト孔51の一部はボルト孔53と重なり、ボルト孔57の一部はボルト孔58と重なる。ここでは、ボルト孔51の上下方向の寸法はボルト孔53の直径と等しく、ボルト孔57の上下方向の寸法はボルト孔58の直径と等しい。
【0036】
図7に示すように、ヘッドパイプ11には第2ステー32が固定されている。第2ステー32はヘッドライト20の第2取付部22を支持する。第2ステー32には、ボルト孔54およびボルト孔56が形成されている。ボルト孔56はボルト孔54よりも下方に位置している。また、ボルト孔56はボルト孔54よりも前方に位置している。ボルト孔54およびボルト孔56は円孔からなっている。
【0037】
図6に示すように、第2取付部22のプレート22Aの後部には、孔52Aおよび孔55Aが形成されている。詳細は後述するように、52Aにはグロメット70が嵌め込まれ、孔55Aにはグロメット70Bが嵌め込まれている。第2取付部22は、グロメット70およびグロメット70Bを有している。孔55Aは孔52Aよりも下方に位置している。また、孔55Aは孔52Aよりも前方に位置している。孔52Aおよび孔55Aは円孔からなっている。プレート22Aを第2ステー32に重ねたときに、車両側面視において、孔52Aはボルト孔54と重なり、孔55Aはボルト孔56と重なる。
【0038】
図8図3のVIII-VIII線断面図である。図9図8のIX部分の拡大図である。図10図8のX部分の拡大図である。
【0039】
図9に示すように、第1取付部21のボルト孔51および第1ステー31のボルト孔53には、第1ボルト41が挿入されている。第1ボルト41は、第1取付部21を第1ステー31に固定するボルトである。第1取付部21と第1ステー31とは左右に重ねられるので、第1ボルト41は左右に延びている。なお、符号61はワッシャを表し、符号62は、第1ボルト41と係合するナットを表している。第1ボルト41をナット62に締め付けることにより、第1取付部21が第1ステー31に固定される。
【0040】
第1取付部21のボルト孔57および第1ステー31のボルト孔58には、第4ボルト44(図3参照)が挿入されている。第4ボルト44は、第1ボルト41と同様、第1取付部21を第1ステー31に固定するボルトであり、左右に延びている。第4ボルト44を締結する構成は、第1ボルト41を締結する構成(図9参照)と同様である。第4ボルト44をナット(図示せず)に締め付けることにより、第1取付部21が第1ステー31に固定される。なお、第4ボルト44は、第1ボルト41よりも前方かつ下方に位置している。
【0041】
図10に示すように、第2取付部22の孔52Aには、ゴム製のグロメット70が嵌め込まれている。図11はグロメット70の正面図であり、図12図11のXII-XII線断面図である。グロメット70は円筒状に形成されており、グロメット70の外周面には溝71が形成されている。この溝71に、第2取付部22の孔52Aの縁部が差し込まれる(図10参照)。グロメット70には、円孔からなるボルト孔52が形成されている。グロメット70は弾性体であるので、ボルト孔52は弾性変形可能に構成されている。ボルト孔52は、弾性体に囲まれた第1弾性孔の一例である。グロメット70を構成するゴムの硬度は特に限定されないが、例えば40~70度である。ボルト孔52の内径は特に限定されないが、例えば15~18mmである。
【0042】
図10に示すように、グロメット70のボルト孔52および第2ステー32のボルト孔54には、金属製のカラー75が挿入されている。カラー75は、円筒部75aと、円筒部75aの一端に設けられたフランジ部75bとを有している。ボルト孔52およびボルト孔54には、円筒部75aが挿入されている。図示は省略するが、円筒部75aの内周壁には、螺旋溝が形成されている。カラー75には第2ボルト42が挿入されている。第2ボルト42は、第2取付部22を第2ステー32に固定するボルトである。第2取付部22と第2ステー32とは左右に重ねられるので、第2ボルト42は左右に延びている。なお、符号63はワッシャを表している。第2ボルト42は、カラー75の円筒部75aの螺旋溝と係合する。第2ボルト42をカラー75に締め付けることにより、第2取付部22が第2ステー32に固定される。
【0043】
図6に示すように、第2取付部22の孔55Aには、グロメット70Bが嵌め込まれている。グロメット70Bの形状、寸法、および材料は、グロメット70の形状、寸法、および材料と同様である。グロメット70Bには、円孔からなるボルト孔55が形成されている。グロメット70Bは弾性体であるので、ボルト孔55は弾性変形可能である。ボルト孔55は、弾性体に囲まれた第2弾性孔の一例である。グロメット70Bのボルト孔55および第2ステー32のボルト孔56には、カラー75と同様のカラー75Bが挿入されている。カラー75Bには第3ボルト43(図3参照)が挿入されている。第3ボルト43は、第2ボルト42と同様、第2取付部22を第2ステー32に固定するボルトであり、左右に延びている。第3ボルト43をカラー75Bに締め付けることにより、第2取付部22が第2ステー32に固定される。第3ボルト43は、第2ボルト42の前方かつ下方に位置している。
【0044】
図8に示すように、ボルト孔51とボルト孔52とは、車両中心線CLを通る鉛直面に関して、互いに対称の位置に形成されている。また、ボルト孔55とボルト孔57とは、車両中心線CLを通る鉛直面に関して、互いに対称の位置に形成されている。言い換えると、ボルト孔51とボルト孔52とは左右対称の位置に形成され、ボルト孔55とボルト孔57とは左右対称の位置に形成されている。
【0045】
プレート21Aおよびプレート22Aの材料は特に限定されないが、本実施形態では、プレート21Aおよびプレート22Aは金属製である。第1~第4ボルト41~44、カラー75、およびカラー75Bも金属製である。
【0046】
本実施形態に係る自動二輪車1では、ヘッドライト20の左右の向きが調整可能である。次に、ヘッドライト20の向きの調整方法について説明する。
【0047】
前述したように、ヘッドライト20の第2取付部22は、第2ステー32に対して、第2ボルト42および第3ボルト43によって固定されている。第2ボルト42は、第2取付部22のボルト孔52と第2ステー32のボルト孔54とに挿入されている(図10参照)。第3ボルト43は、第2取付部22のボルト孔55と第2ステー32のボルト孔56とに挿入されている。ここで、ボルト孔52はゴム製のグロメット70によって形成され、ボルト孔55はゴム製のグロメット70Bによって形成されている。第2ボルト42および第3ボルト43を締結した後に、ボルト孔52およびボルト孔55は微小変形が可能である。よって、第2取付部22は第2ステー32に対して、左右に微小変位可能である。第2取付部22は第2ステー32に対して、鉛直線周りに微小に回転可能である。
【0048】
ヘッドライト20の第1取付部21は、第1ステー31に対して、第1ボルト41および第4ボルト44によって固定される。第1ボルト41は、第1取付部21のボルト孔51と第1ステー31のボルト孔53とに挿入されている(図9参照)。第4ボルト44は、第1取付部21のボルト孔57と第1ステー31のボルト孔58とに挿入されている。ここで、ボルト孔51およびボルト孔57は、前後に細長い長孔からなっている(図4参照)。第1ボルト41を締結する前に、ボルト孔51の内部で第1ボルト41を前後に移動させることができる。第4ボルト44を締結する前に、ボルト孔57の内部で第4ボルト44を前後に移動させることができる。そのため、第1ボルト41および第4ボルト44を締結する前に、第1ボルト41をボルト孔51およびボルト孔53に挿入した状態、かつ、第4ボルト44をボルト孔57およびボルト孔58に挿入した状態のまま、第1取付部21を第1ステー31に対して前後に移動させることができる。
【0049】
図8に示すように、ヘッドライト20は、車両中心線CLの右方に位置する第1ステー31と、車両中心線CLの左方に位置する第2ステー32とによって支持されている。第2ボルト42および第3ボルト43を締結した後、ボルト孔51およびボルト孔53に挿入された第1ボルト41とボルト孔57およびボルト孔58に挿入された第4ボルト44とを締結する前に、作業者が第1取付部21を第1ステー31に対して前方または後方に移動させると、第2ステー32に支持された第2取付部22に力が加えられる。この力により、グロメット70およびグロメット70Bが変形する。そのため、第2取付部22が第2ボルト42および第3ボルト43により第2ステー32に固定されているにも拘わらず、第1取付部21の前方または後方への移動は阻害されない。作業者は、第1取付部21を前後に移動させることにより、ヘッドライト20の左右の向きを所望の向きに調整することができる。
【0050】
作業者は、ヘッドライト20の左右の向きを調整した後、第1ボルト41および第4ボルト44を締結する。これにより、第1取付部21は第1ステー31に対して移動不能に固定される。その結果、ヘッドライト20の左右の向きが固定される。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る自動二輪車1によれば、第2ボルト42および第3ボルト43を締結した後に、ヘッドライト20の左右の向きを調整することができる。本実施形態によれば、第1~第4ボルト41~44の全てを、ヘッドライト20の向きを調整した後に締結する必要は無い。ヘッドライト20の向きを調整した後、第1ボルト41および第4ボルト44を締結するだけでヘッドライト20の向きを固定することができる。したがって、ヘッドライト20の左右の向きを調整する作業およびヘッドライト20の向きを固定する作業が容易となる。
【0052】
本実施形態によれば、第1取付部21のボルト孔51と第2取付部22のボルト孔52とは、車両中心線CLを通る鉛直面に関して、互いに対称の位置に形成されている。また、第1取付部21のボルト孔57と第2取付部22のボルト孔55とは、車両中心線CLを通る鉛直面に関して、互いに対称の位置に形成されている。このことにより、ヘッドライト20の左右の向きの調整が容易となる。
【0053】
本実施形態によれば、ヘッドライト20の第2取付部22は、上下に配置された2つのグロメット70,70Bを有している。第2取付部22には、弾性変形可能なボルト孔が上下に2つ設けられている。よって、ヘッドライト20を安定して支持することができる。また、第1ボルト41および第4ボルト44を締結する前に、ヘッドライト20がボルト41を中心として上下に回転してしまうことが防止される。よって、ヘッドライト20の向きが上下にずれることを防止できる。
【0054】
本実施形態によれば、ヘッドライト20の第1取付部21には、ボルト孔51に加えてボルト孔57が形成されている。このことにより、ヘッドライト20を安定して支持することができる。また、第1ボルト41および第4ボルト44を締結する前に、ヘッドライト20の向きが上下にずれることを防止することができる。
【0055】
本実施形態によれば、ヘッドパイプ11は前方かつ下方に延びている。第3ボルト43は第2ボルト42の前方かつ下方に位置している。第4ボルト44は第1ボルト41の前方かつ下方に位置している。第2ボルト42および第3ボルト43は、ヘッドパイプ11に沿って配置されている。また、第1ボルト41および第4ボルト44は、ヘッドパイプ11に沿って配置されている。このことにより、ヘッドライト20をヘッドパイプ11により安定して支持することができる。
【0056】
本実施形態によれば、第2取付部22の弾性孔(ボルト孔52,53)は、金属製のプレート22Aの孔52A,53Aに嵌め込まれたゴム製のグロメット70,70Bによって形成されている。金属製のプレート22Aの孔52A,53Aにグロメット70,70Bを嵌め込むという簡易かつ安価な構成により、弾性孔を得ることができる。比較的簡易かつ安価な構成により、前述の効果を得ることができる。
【0057】
以上、一実施形態について説明したが、前記実施形態は一例に過ぎない。他にも様々な実施形態が可能である。以下、他の実施形態の例について簡単に説明する。
【0058】
前記実施形態では、ヘッドライト20の第1取付部21は三角形状のプレート21Aを有し、第2取付部22は三角形状のプレート22Aを有しているが、第1取付部21および第2取付部22の形状および構成は特に限定されない。前記実施形態では、第1取付部21および第2取付部22は本体部23とは別体に形成されているが、第1取付部21および第2取付部22の一方または両方の一部または全部が本体部23と一体化されていてもよい。
【0059】
前記実施形態では、第1取付部21、第2取付部22は、それぞれ車両中心線CLの右方、左方に配置されているが、それぞれ車両中心線CLの左方、右方に配置されていてもよい。例えば、ヘッドライト20の構成は、前記実施形態の構成を左右反転させた構成であってもよい。
【0060】
前記実施形態では、グロメット70,70Bは第2取付部22に備えられているが、第2取付部22のグロメット70,70Bに代えて、または、第2取付部22のグロメット70,70Bと共に、第2ステー32にグロメットを設けることも可能である。この場合、第2ステー32に弾性孔が設けられることとなる。第2取付部22のボルト孔52および第2ステー32のボルト孔54のうち、いずれか一方または両方が弾性孔であってもよい。第2取付部22のボルト孔55および第2ステー32のボルト孔56のうち、いずれか一方または両方が弾性孔であってもよい。
【0061】
前記実施形態では、第1取付部21のボルト孔51およびボルト孔57が前後方向に細長い長孔であり、第1ステー31のボルト孔53およびボルト孔58が円孔であるが、第1取付部21のボルト孔51およびボルト孔57が円孔であり、第1ステー31のボルト孔53およびボルト孔58が前後方向に細長い長孔であってもよい。ボルト孔51、ボルト孔57、ボルト孔53、およびボルト孔58の全てが前後方向に細長い長孔であってもよい。
【0062】
鞍乗型車両とは、乗員が跨がって乗車する車両のことである。鞍乗型車両は自動二輪車1に限定されない。鞍乗型車両は、例えば、自動三輪車、ATV(All Terrain vehicle)、スノーモービルであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…自動二輪車(鞍乗型車両)、11…ヘッドパイプ、20…ヘッドライト、21…第1取付部、22…第2取付部、22A…プレート(部材)、23…本体部、25…光源、31…第1ステー、32…第2ステー、41…第1ボルト、42…第2ボルト、43…第3ボルト、44…第4ボルト、51…ボルト孔(第1ボルト孔)、52…ボルト孔(第2ボルト孔)、52A…孔、53…ボルト孔(第3ボルト孔)、54…ボルト孔(第4ボルト孔)、55…ボルト孔(第5ボルト孔)、56…ボルト孔(第6ボルト孔)、57…ボルト孔(第7ボルト孔)、58…ボルト孔(第8ボルト孔)、70…グロメット
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