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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117404
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】磁気センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20240822BHJP
   G01R 33/06 20060101ALI20240822BHJP
   G01R 15/20 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G01R33/02 U
G01R33/06
G01R15/20
G01R15/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023483
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100127177
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 貴子
(72)【発明者】
【氏名】山脇 和真
【テーマコード(参考)】
2G017
2G025
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AC06
2G017AD53
2G017AD55
2G017CB02
2G017CB18
2G017CB20
2G025AB01
2G025EA02
2G025EB02
(57)【要約】
【課題】出力特性が安定した磁気センサ装置を提供する。
【解決手段】磁気センサ装置1は、第1面2Aを有する支持基板2と、磁気検出素子30と、第1面2A側に配され、アルミナを主成分とする第1層21及びシリカを主成分とする第2層22を有する積層膜である保護膜20と、第1面2A側に配され、かつ積層膜よりも支持基板2から遠位にあり、第1面2Aに沿って延在する配線層4と、を含んでいる。磁気検出素子30は、積層膜の内部に配されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する支持基板と、
磁気検出素子と、
前記第1面側に配され、アルミナを主成分とする第1層及びシリカを主成分とする第2層を有する積層膜と、
前記第1面側に配され、かつ前記積層膜よりも前記支持基板から遠位にあり、前記第1面に沿って延在する配線層と、を含み、
前記磁気検出素子は、前記積層膜の内部に配されている、
磁気センサ装置。
【請求項2】
前記磁気検出素子は、前記第1層と前記第2層との境界に接していない、
請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項3】
前記磁気検出素子は、前記第1層の内部に配されている、
請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項4】
前記磁気検出素子は、前記第2層の内部に配されている、
請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
前記配線層は、前記第1面の面直方向において前記磁気検出素子に重ならないように配されている、
請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
前記配線層は、前記第1面の面直方向において前記磁気検出素子に部分的に重なるように配されている、
請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項7】
前記第1面と前記積層膜との間に配され、前記第1面に固定されたセンサ基板を更に含む、
請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項8】
前記配線層は、前記第1面の面直方向において前記センサ基板に部分的に重なるように配されている、
請求項7に記載の磁気センサ装置。
【請求項9】
請求項1に記載の磁気センサ装置を備えた、
角度センサ。
【請求項10】
請求項1に記載の磁気センサ装置を備えた、
磁気コンパス。
【請求項11】
請求項1に記載の磁気センサ装置を備えた、
電流センサ。
【請求項12】
請求項1に記載の磁気センサ装置を備えたオートフォーカス機構及び/又は光学式手振れ補正機構を含む、
カメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサ装置は、磁性材料で構成された磁気検出素子を備えている(例えば、特許文献1参照)。磁性材料に外力を加えると逆磁歪効果によって磁場に対する応答が変動してしまう。とりわけ、トンネル磁気抵抗効果素子は、MR比が大きい優れた出力特性を有する反面、外力によって出力特性が変動しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-081293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気検出素子を囲む保護膜はシリカ等の材料で構成されている。磁気センサ装置において、撓みのあるボンディングワイヤではなく撓みのない配線層により磁気検出素子と外部とを導通するものも存在するが、この配線層を構成する金属とシリカとは線膨張係数が大きく異なる。このため、温度変化によって配線層とシリカに囲まれた磁気検出素子との間に熱応力が生じると、磁気検出素子の出力特性が変動して磁気センサ装置の測定精度が低下するおそれがある。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、出力特性が安定した磁気センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る磁気センサ装置は、第1面を有する支持基板と、磁気検出素子と、第1面側に配され、アルミナを主成分とする第1層及びシリカを主成分とする第2層を有する積層膜と、第1面側に配され、かつ積層膜よりも支持基板から遠位にあり、第1面に沿って延在する配線層と、を含み、磁気検出素子は、積層膜の内部に配されている。
【0007】
アルミナは、配線層を構成する金属とシリカとの間の線膨張係数を有している。このため、磁気検出素子が内部に配される積層膜にアルミナを主成分とする第1層を設けることにより、配線層とシリカを主成分とする第2層との線膨張係数の差を緩和することができ、温度変化によって生じる配線層と磁気検出素子との間の熱応力を低減できる。これにより、磁気検出素子の出力特性が安定して磁気センサ装置の測定精度が向上する。アルミナのように金属とシリカとの間の線膨張係数を有していれば、他の材料を用いて第1層を設けてもよい。
【0008】
上記態様において、磁気検出素子は、第1層と第2層との境界に接していないことが好ましい。
【0009】
この態様によれば、第1層と第2層との境界に接している場合と比べて、磁気検出素子が熱応力の影響を受けにくい。
【0010】
上記態様において、磁気検出素子は、第1層の内部に配されていてもよいし、第2層の内部に配されていてもよい。
【0011】
これらの態様によれば、第1層と第2層との境界に接しないように磁気検出素子を配することができる。
【0012】
上記態様において、配線層は、第1面の面直方向において磁気検出素子に重ならないように配されていてもよい。
【0013】
この態様によれば、磁気検出素子に重ならないように配線層を配するため、この配線層と磁気検出素子との間に熱応力が生じにくい。
【0014】
上記態様において、配線層は、第1面の面直方向において磁気検出素子に部分的に重なるように配されていてもよい。
【0015】
この態様によれば、磁気検出素子に部分的に重なるように配線層を配しても、この配線層と磁気検出素子との間の熱応力を低減できる。
【0016】
上記態様において、第1面と積層膜との間に配され、第1面に固定されたセンサ基板を更に含んでいてもよい。
【0017】
この態様によれば、靭性に優れたアルミナを主成分とする第1層を含むため、センサ基板を支持基板に固定する際に衝撃があっても磁気検出素子にクラックが生じにくい。
【0018】
上記態様において、配線層は、第1面の面直方向においてセンサ基板に部分的に重なるように配されていてもよい。
【0019】
この態様によれば、別々に用意したセンサ基板と支持基板とを電気的に接続できる。
【0020】
上記態様において、角度センサが磁気センサ装置を備えていてもよいし、磁気コンパスが磁気センサ装置を備えていてもよいし、電流センサが磁気センサ装置を備えていてもよいし、カメラモジュールのオートフォーカス機構及び/又は光学式手振れ補正機構が磁気センサ装置を備えていてもよい。
【0021】
これらの態様によれば、磁気センサ装置を種々の目的に応用できる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、出力特性が安定した磁気センサ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、一実施形態に係る磁気センサ装置を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示された磁気センサ装置の内部構造の一例を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図1に示された磁気センサ装置の内部構造の他の一例を示す断面図である。
図4図4は、図1に示された磁気センサ装置の製造プロセスを説明する斜視図である。
図5図5は、磁気コンパスとして構成された磁気センサ装置の一例を示す平面図である。
図6図6は、カメラモジュールのオートフォーカス機構及び光学式手振れ補正機構の一部として用いられた磁気センサ装置の一例を示す斜視図である。
図7図7は、図6に示されたカメラモジュールの内部構造を示す断面図である。
図8図8は、角度センサとして構成された磁気センサ装置の一例を示す図である。
図9図9は、電流センサの一部として用いられた磁気センサ装置の一例を示す図である。
図10図10は、図9に示された電流センサの回路構成を示す図である。
図11図11は、図2に示された保護膜の構成の第1の例を示す断面図である。
図12図12は、図2に示された保護膜の構成の第2の例を示す断面図である。
図13図13は、図2に示された保護膜の構成の第3の例を示す断面図である。
図14図14は、図2に示された保護膜の構成の第4の例を示す断面図である。
図15図15は、図11図14との対比のために示す、本開示の積層膜ではない保護膜の構成を示す断面図である。
図16図16は、図11図13図14及び図15に示された保護膜の構成と角度誤差との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面を参照して、好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。図1は、一実施形態に係る磁気センサ装置1を示す斜視図である。図示した例では、磁気センサ装置1が、支持基板2、センサチップ3、配線層4、封止樹脂5、電極6等を備えている。
【0025】
図1に示すように、支持基板2は、第1面2Aと該第1面2Aとは反対側の第2面2Bを有する平板状に形成されている。以下の説明において、支持基板2の厚さ方向を面直方向Zあるいは上下方向Zと称し、第2面2Bから第1面2Aへの向きを上向きと称し、第1面2Aから第2面2Bへの向きを下向きと称する。第1面2Aは、面直方向Zに直交するXY平面に沿って平行に延在している。
【0026】
図2は、図1に示された磁気センサ装置1の内部構造の一例を模式的に示す断面図である。図示した例では、支持基板2がASIC(Application Specific Integrated Circuit,特定用途向け集積回路)であり、配線層4と電気的に接続された電極2Eが第1面2Aに設けられている。支持基板2はASICに限定されず、シリコン基板やサファイア基板であってもよい。それらの基板に集積回路を含まない配線のみが形成された中継基板(インターポーザ)であってもよい。
【0027】
図2に示すように、センサチップ3は、支持基板2の第1面2Aに接着剤で固定されている。センサチップ3は、センサ基板10、該センサ基板10に設けられた磁気検出素子30、磁気検出素子30を囲む保護膜20等を備えている。センサ基板10は、例えばシリコン基板であり、支持基板2の第1面2Aと保護膜20との間に配されている。磁気センサ装置1の構成は図示した例に限定されず、センサ基板10を省略し、支持基板2と磁気検出素子30とをフォトリソグラフィにより一体的構造物として構成したモノリシック構造であってもよい。
【0028】
配線層4は、支持基板2の第1面2A側に配され、支持基板2の第1面2Aに沿って平行に延在している。配線層4は、保護膜20よりも支持基板2から遠位にあり、面直方向Zに延在する複数のビア40を介して支持基板2の電極2Eとセンサチップ3の上面3Aに設けられた電極3Eとを電気的に接続している。
【0029】
封止樹脂5は、支持基板2の第1面2A側に配され、センサチップ3及び配線層4を被覆している。電極6は、例えばはんだボールや銅ピラーであり、配線層4と電気的に接続され、封止樹脂5から露出している。
【0030】
図3は、図1に示された磁気センサ装置1の内部構造の他の一例を示す断面図である。図示した例では、磁気センサ装置1が複数のセンサチップ3(第1センサチップ31及び第2センサチップ32)を備え、各々のセンサチップ3が複数の磁気検出素子30を備えている。
【0031】
磁気検出素子30の一例は、TMR(トンネル磁気抵抗効果 Tunnel magnetoresistance effect)素子である。磁気検出素子30は、TMR素子に限定されず、GMR(巨大磁気抵抗効果 Giant magnetoresistance effect)素子であってもよいし、AMR(異方性磁気抵抗 Anisotropic magnetoresistance effect)素子であってもよいし、ホール素子であってもよいし、他種の磁気検出素子であってもよい。TMR素子は、他種のMR素子と比べて接合面積が小さくセンサチップ3を小型化でき、MR比が大きくセンサチップ3の出力を大きくできるため、磁気検出素子30に特に好適である。
【0032】
図3に示すように、封止樹脂5は、支持基板2の第1面2Aに沿って平行に延在する複数の樹脂層51,52,53が積層されて構成されている。配線層4は、例えば、樹脂層51,52の上面に設けられた銅めっきであり、支持基板2の第1面2Aに沿って延在している。図示した例では、配線層4は、樹脂層51の上面に設けられた第1配線層41、樹脂層52の上面に設けられた第2配線層42等を含んでいる。
【0033】
配線層4は、面直方向Zにおいてセンサ基板10に部分的に重なるように配され、センサチップ3と電気的に接続されている。図示した例では、配線層4の一部を構成する第1配線層41が、樹脂層51を貫通するビア40を介して第1センサチップ31の電極3Eと電気的に接続されている。
【0034】
配線層4は、面直方向Zにおいて磁気検出素子に部分的に重なるように配されていてもよいし、面直方向Zにおいて磁気検出素子に重ならないように配されていてもよい。図示した例では、第1配線層41が、第1センサチップ31の磁気検出素子30と部分的に重なるように左右方向Xに延在している。他方、第2配線層42は、第2センサチップ32の磁気検出素子30と重ならないように前後方向Yに延在している。
【0035】
図4は、図1に示された磁気センサ装置1の製造プロセスを説明する斜視図である。図4(A)に示すように、支持基板2の第1面2Aにセンサチップ3を接着剤等で固定する。図4(B)に示すように、センサチップ3及び支持基板2の第1面2Aを覆うように樹脂層(第1樹脂層)51を形成し、電極2E,3E(図3参照)の位置にビア40(図3参照)のための貫通孔40Pを開口させる。
【0036】
図4(C)に示すように、スパッタリング等によりシード層を成膜し、めっきによりビア40及び第1配線層41を形成する。これらのプロセスは、サブトラクティブ法であってもよいし、アディティブ法であってもよい。図4(D)に示すように、ビア40、第1配線層41及び樹脂層51を覆うように樹脂層(第2樹脂層)52を形成し、ビア40のための貫通孔40Pを開口させる。
【0037】
図4(E)に示すように、図4(C)と同様のプロセスによってビア40及び第2配線層42を形成する。図4(F)に示すように、ビア40、第2配線層42及び樹脂層52を覆うように樹脂層(第3樹脂層)53を形成し、電極6のための貫通孔6Pを開口させる。図4(G)に示すように、貫通孔6Pにはんだ等を充填して電極6を形成する。図4(A)~(G)に示された手順により、別々に用意した支持基板2とセンサチップ3とを電気的に接続して図1に示された磁気センサ装置1を得ることができる。
【0038】
本開示の磁気センサ装置1は、情報機器等の電子機器に搭載されて地磁気を検出する磁気コンパスとして用いてもよいし、カメラモジュールのオートフォーカス機構や光学式手振れ補正機構の一部として用いてもよいし、磁石から発生する磁界が基準方向に対してなす角度を検出する角度センサとして構用いてもよいし、バスバーを流れる電流の値を検出する電流センサの一部として用いてもよい。
【0039】
図5は、地磁気の角度に対応した検出値を生成する磁気コンパスとして構成された磁気センサ装置1の一例を示す図である。図5に示すように、磁気センサ装置1は、三つのセンサチップ3(第1~第3センサチップ31,32,33)を備え、外部磁界の互いに直交する三方向の成分を第1~第3センサチップ31,32,33がそれぞれ検出するように構成されている。
【0040】
図6は、カメラモジュール200のオートフォーカス機構及び光学式手振れ補正機構の一部として用いられた磁気センサ装置1の一例を示す斜視図である。図7は、図6に示されたカメラモジュール200の内部構造を示す断面図である。カメラモジュール200のオートフォーカス機構及び光学式手振れ補正機構は、レンズ220を移動させる駆動装置230を備え、複数の磁気センサ装置1が検出したレンズ220の位置情報に基づいて駆動装置230を制御する。
【0041】
詳しく述べると、オートフォーカス機構は、イメージセンサやオートフォーカスセンサ等によって被写体に焦点が合った状態を検出し、レンズをイメージセンサに対してZ方向に移動させる。光学式手振れ補正機構は、ジャイロセンサ等によって手振れを検出し、レンズをイメージセンサに対してU方向及び/又はV方向に移動させる。
【0042】
図6に示されたカメラモジュール200は、CMOS等のイメージセンサ210、イメージセンサ210に対して位置合わせされるレンズ220、イメージセンサ210に対してU方向及びV方向に移動可能な第1保持部材241、第1保持部材241に対してZ方向に移動可能な第2保持部材242、第1保持部材241及び第2保持部材242を支持する弾性変形可能な複数のワイヤ244、第1保持部材241及び第2保持部材242を移動させる駆動装置230、それらを収容する筐体250等を備えている。
【0043】
カメラモジュール200のオートフォーカス機構及び光学式手振れ補正機構は、駆動装置230、複数の磁気センサ装置1に加え、駆動装置230を制御するプロセッサ、被写体に焦点が合った状態を検出するオートフォーカスセンサ、手振れを検出するジャイロセンサ等を備えている。図示しないプロセッサ、オートフォーカスセンサ、ジャイロセンサ等は、筐体の外部に配置されている。
【0044】
レンズ220は、筒状に形成された第2保持部材242の内部に固定されている。第2保持部材242は、箱状に形成された第1保持部材241にレンズ220ごと収容されている。第2保持部材242には、少なくとも一つの磁気センサ装置1が第2保持部材242の位置情報を検出するために、少なくとも一つの第2磁石243が固定されている。
【0045】
駆動装置230は、複数の第1コイル231、複数の第2コイル232、複数の第1磁石233等を備えている。筐体250には、複数の第1コイル231が固定されている。第2保持部材242には、複数の第2コイル232が固定されている。第1保持部材241には、複数の第1磁石233が固定されている。複数の第1コイル231の各々は、対応する第1磁石233に対向している。複数の第2コイル232の各々は、対応する第1磁石233に対向している。
【0046】
オートフォーカス機構の場合、プロセッサからの指令で任意の第2コイル232に電流が流れると、第1磁石233から発生する磁界と第2コイル232から発生する磁界との相互作用によって、第2コイル232に固定されている第2保持部材242が、Z方向に移動する。少なくとも一つの磁気センサ装置1は、第2保持部材242に固定された少なくとも一つの第2磁石243から発生する磁界と第1保持部材241に固定された第1磁石233から発生する磁界とが合成された合成磁界に基づいて検出信号を生成し、プロセッサに送信する。プロセッサは、検出信号からZ方向におけるレンズ220の位置情報を検出し、被写体に焦点が合うように駆動装置230を制御する。
【0047】
光学式手振れ補正機構の場合、プロセッサからの指令で任意の第1コイル231に電流が流れると、第1磁石233から発生する磁界と第1コイル231から発生する磁界との相互作用により、第1磁石233に固定されている第1保持部材241がU方向及び/又はV方向に移動する。複数の磁気センサ装置1の各々は、対応する第1磁石233の位置に基づいて検出信号を生成し、プロセッサに送信する。プロセッサは、検出信号からU方向及びV方向におけるレンズ220の位置情報を検出し、手振れを補正するように駆動装置230を制御する。
【0048】
図8は、検出対象の角度に対応した検出値を生成する角度センサとして構成された磁気センサ装置1の一例を示す図である。図示した例では、磁気センサ装置1が、円柱の中心軸Oを回転軸として回転可能な磁石300の角度を検出する角度センサとして構成されている。図示した例では、X方向、Y方向及びZ方向が互いに直交し、中心軸OがZ方向に平行である。
【0049】
磁気センサ装置1は、磁石300が発生する磁界であって磁気センサ装置1に印加される磁界成分MFのX方向に平行な方向の第1の成分を検出し、第1の成分の強度を表す第1の検出信号を生成するとともに、磁石300が発生する磁界のY方向に平行な方向の第2の成分を検出し、第2の成分の強度を表す第2の検出信号を生成する。図示しないプロセッサは、第1の検出信号と第2の検出信号との比のアークタンジェントを計算することにより、磁石300が発生する磁界が基準方向DRに対してなす角度θを算出する。
【0050】
図9は、検出対象の電流値に対応した検出値を生成する電流センサ400の一部として用いられた磁気センサ装置1の一例を示す図である。図示した例では、電流センサ400は、バスバー410を流れる電流Itgの値を検出するように構成されている。バスバー410の周囲には、電流Itgによって磁界MFが発生する。電流センサ400は、磁界MFが印加される位置であってバスバー410の近傍に配置されている。
【0051】
図10は、図9に示された電流センサ400の回路構成を示す図である。図示した例では、電流センサ400が、磁気平衡式電流センサとして構成されている。電流センサ400は、磁気センサ装置1に加え、コイル420を備えている。コイル420は、磁界MFの第1の磁界MF1を相殺する第2の磁界MF2を発生するためのものである。磁気センサ装置1は、第1の磁界MF1と第2の磁界MF2との残差の磁界を検出し、当該磁界の強度に応じた磁界検出値Sを生成する。
【0052】
電流センサ400は、フィードバック回路430、電流検出器440等を更に備えている。フィードバック回路430は、磁界検出値Sに基づいて第2の磁界MF2を発生させるためのフィードバック電流をコイル420に流す。電流検出器440は、コイル420に流れるフィードバック電流の値を検出する。電流検出器440は、例えば、フィードバック電流の電流路に挿入された抵抗器である。その場合、抵抗器の両端の電位差がフィードバック電流の検出値に相当する。フィードバック電流の検出値は、バスバー410の電流Itgの値と比例関係にあるため、フィードバック電流の検出値から電流Itgの値を検出することができる。
【0053】
続いて、図11図16を参照して本実施形態に係る磁気センサ装置1の保護膜20について説明する。本実施形態に係る磁気センサ装置1は、保護膜20が、アルミナを主成分とする第1層21及びシリカを主成分とする第2層22を有する積層膜であることが特徴の一つである。
【0054】
保護膜20を構成する第1層21及び第2層22は、面直方向Zに積層されている。詳細は後述するが、保護膜20は、複数の第1層21を含んでいてもよいし、複数の第2層22を含んでいてもよい。磁気検出素子30は、積層膜である保護膜20の内部に配されている。
【0055】
温度範囲や測定方法によって変化するが、アルミナ(酸化アルミニウム、Al23)の線膨張係数は例えば7.7ppm/Kであり、シリカ(二酸化ケイ素、SiO2)の線膨張係数は例えば0.7ppm/Kであり、銅(Cu)の線膨張係数は例えば17ppm/Kである。第1層21の主成分であるアルミナは、配線層4の構成する銅等の金属よりも小さく、第2層22の主成分であるシリカよりも大きい、金属とシリカとのほぼ中間の線膨張係数を有している。
【0056】
図11図14は、図2に示された保護膜20の複数の構成例を示す断面図である。図4に示す第1の例では、保護膜20が、支持基板2の第1面2Aに近い方から第2層22(シリカを主成分とする層)、第1層21(アルミナ主成分とする層)の順に積層された二層の積層膜として構成されている。第1の例では、磁気検出素子30が、第1層21の内部に配置されている。
【0057】
図12に示す第2の例では、保護膜20が、支持基板2の第1面2Aに近い方から第2層22(シリカを主成分とする層)、第1層21(アルミナ主成分とする層)の順に積層された二層の積層膜として構成されている。第2の例では、磁気検出素子30が、第2層22の内部に配置されている。
【0058】
図13に示す第3の例及び図14に示す第4の例では、保護膜20が、支持基板2の第1面2Aに近い方から第2層22A(シリカを主成分とする層)、第1層21(アルミナ主成分とする層)、第2層22B(シリカを主成分とする層)の順に積層された三層の積層膜として構成されている。第3の例では、磁気検出素子30が、第1層21の内部に配置されている。第4の例では、磁気検出素子30が、第1層21と第2層22との境界に接するように配置されている。
【0059】
図15は、図11図14との対比のために示す、積層膜でない保護膜120の構成を示す断面図である。図15に示す例では、保護膜120は、アルミナを主成分とする第1層21とシリカを主成分とする第2層22との積層膜ではなく、シリカを主成分とする第2層22のみにより構成されている。
【0060】
図11図13図14及び図15に示すように、面直方向Zにおける保護膜20の厚さをT0、第1層21の厚さをT1、センサ基板10の上面3Aに設けられた第2層22(22A)の厚さをT2、第1層21の上面に設けられた第2層22(22B)の厚さをT3とし、センサ基板10の上面3Aから磁気検出素子30までの距離をTm、保護膜20の上面から配線層4の下面までの距離(封止樹脂5の厚さ)をTrとする。T0=T1+T2+T3である。
【0061】
図16は、本開示の対象である保護膜20を有する磁気センサ装置1の角度誤差、及び、本開示の対象外であって比較例である保護膜120を有する磁気センサ装置101の角度誤差を示すグラフである。本開示の対象である保護膜20には、図11図13及び図14に示された構成例が含まれる。比較例である保護膜120には、図15に示す保護膜120の構成が含まれる。
【0062】
図16では、T0=15μm,Tm=7μm,T2=1μmとし、横軸にアルミナを主成分とする第1層21の厚さT1をとり、縦軸に本開示の対象の保護膜20を備えた磁気センサ装置1及び本開示の対象外の保護膜120を備えた磁気センサ装置101の角度誤差をとり、保護膜20,120の上面から配線層4の下面までの距離TrをTr=1μm,10μm,20μm,30μm,40μmの5パターンに変化させて磁気センサ装置1,101に所定の応力値を加えた場合のシミュレーション結果をプロットしている。
【0063】
横軸のT1=0μmのプロットは、比較例を示しており、シリカを主成分とする第2層22のみで保護膜120が構成されている。T1の他のプロット、すなわち、T1が1μm以上のプロットは、本開示の対象である保護膜20を用いた結果を示す。T1=1~5μmでは、シリカを主成分とする第2層22の内部に磁気検出素子30が配置されている。T1=6μmでは、第1層と第2層との境界に接するように磁気検出素子30が配置されている。T1=7~14μmでは、アルミナを主成分とする第1層21の内部に磁気検出素子30が配置されている。
【0064】
図16に示すように、アルミナを主成分とする第1層21の厚さT1が大きくなるほど磁気センサ装置1の角度誤差が小さくなる傾向がある。また、保護膜20の上面から配線層4の下面までの距離Trが大きくなるほど磁気センサ装置1の角度誤差が小さくなる傾向がある。
【0065】
磁気検出素子30を囲む保護膜20にアルミナを主成分とする第1層21を設けると、そのような層を設けていないT1=0μmの場合よりも、多くの場合で角度誤差を小さくできる。T1=7~14μmのように、第1層21の内部に磁気検出素子30が配置されていてもよいし、T1=1~5μmのように、第2層22の内部に磁気検出素子30が配置されていてもよい。第1層21の内部に磁気検出素子30を配置する方が角度誤差をより小さくできる。
【0066】
より詳しく述べると、T1=1~5μmあるいはT1=12~14μmの場合、Tr=1μm,10μm,20μm,30μm,40μmの5パターンのいずれもT1=0μmの場合よりも角度誤差を小さくできる。T1=10μmの場合、Tr=40μmを除いたTr=1μm,10μm,20μm,30μmの4パターンでT1=0μmの場合よりも角度誤差を小さくできる。T1=5.5μmあるいはT1=6.5μm~8μmの場合、Tr=30μm,40μmを除いた1μm,10μm,20μmの3パターンでT1=0μmよりも角度誤差を小さくできる。
【0067】
T1=6μmのように、第1層21と第2層22との境界23に磁気検出素子30が接していると、第1層21と第2層22との境界23に磁気検出素子30が接していないT1=1~5μm,7~14μmよりも角度誤差が大きくなる。磁気検出素子30は、第1層21と第2層22との境界23に接していないことが好ましい。ただし、第1層21と第2層22との境界23に磁気検出素子30が接していても、Tr=1μm,10μmの2パターンではT1=0μmよりも角度誤差を小さくできる。
【0068】
以上のように構成された磁気センサ装置1によれば、磁気検出素子30を囲む保護膜20にアルミナを主成分とする第1層21を設けているため、配線層4とシリカを主成分とする第2層22との線膨張係数の差を緩和することができる。温度変化によって生じる配線層4と磁気検出素子30との間の熱応力を低減できるため、磁気センサ装置1の磁気検出素子30の出力特性が安定する。例えば、角度センサとして磁気センサ装置1を構成した場合、図14に示すように角度誤差を小さくできる。
【0069】
シリカよりも熱伝導率が高いアルミナを主成分とする第1層21を設けているため、磁気センサ装置1で生じた排熱を効率的に放熱できて温度変化しにくい。前述したように温度変化による熱応力も小さいため、広範な温度範囲で使用できる。
【0070】
シリカよりも靭性に優れたアルミナを主成分とする第1層21を設けているため、センサ基板10を支持基板2に固定する際に衝撃があっても磁気検出素子30にクラックが生じにくく、製品の歩留まりが向上する。このように、本開示によれば、出力特性をはじめとする種々の特性に優れた磁気センサ装置1を提供することができる。
【0071】
以上説明した実施形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本開示を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…磁気センサ装置、2…支持基板、2A…第1面、2B…第2面、2E…電極、3…センサチップ、3A…上面、3E…電極、4…配線層、5…封止樹脂、6…電極、6P…貫通孔、10…センサ基板、20…保護膜(積層膜の一例)、21…第1層(アルミナを主成分とする層)、22,22A,22B…第2層(シリカを主成分とする層)、23…境界、30…磁気検出素子、31…第1センサチップ、32…第2センサチップ、33…第3センサチップ、40…ビア、40P…貫通孔、41…第1配線層、42…第2配線層、51~53…樹脂層、101…比較例の磁気センサ装置、120…比較例の保護膜、200…カメラモジュール、210…イメージセンサ、220…レンズ、230…駆動装置、231…第1コイル、232…第2コイル、233…第1磁石、241…第1保持部材、242…第2保持部材、243…第2磁石、244…ワイヤ、250…筐体、300…磁石、400…電流センサ、410…バスバー、420…コイル、430…フィードバック回路、440…電流検出器440、DR…基準方向、Itg…電流、MF…磁界、MF1…第1の磁界、MF2…第2の磁界、O…中心軸、S…磁界検出値、U,V…手振れの方向、X…左右方向(第1面に沿う方向の一例)、Y…前後方向(第1面に沿う方向の他の一例)、Z…面直方向、θ…角度。
図1
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