(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117405
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】表示装置の製造装置及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 71/16 20230101AFI20240822BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240822BHJP
H10K 50/844 20230101ALI20240822BHJP
H10K 59/122 20230101ALI20240822BHJP
H10K 71/20 20230101ALI20240822BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H10K71/16
H10K50/10
H10K50/844
H10K59/122
H10K71/20
C23C14/24 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023486
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 健
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB08
3K107CC23
3K107CC45
3K107DD22
3K107DD28
3K107DD89
3K107EE48
3K107EE49
3K107EE50
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG12
3K107GG28
3K107GG34
3K107GG42
3K107GG56
4K029BA62
4K029CA01
4K029DA03
4K029DB06
(57)【要約】
【課題】生産効率の低下を抑制する。
【解決手段】一実施形態によれば、下電極、リブ、及び、隔壁を形成した処理基板を用意し、下電極の上に有機層を形成し、有機層の上に上電極を形成し、上電極の上に第1透明層を形成し、第1透明層の上に第2透明層を形成し、有機層、上電極、第1透明層、及び、第2透明層を形成する工程は、隔壁をマスクとした蒸着工程であり、有機層、上電極、第1透明層、及び、第2透明層の少なくとも1つを形成する蒸着工程において、蒸着源は、処理基板及び膜厚測定器に向けて材料を放射し、膜厚測定器は、水晶振動子の周波数に応じて異なる音響インピーダンス補正値を適用し、水晶振動子の周波数の変化量に基づいて蒸着レートを測定し、制御部は、蒸着レートが一定となるように蒸着源を制御する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上方に下電極を形成し、前記下電極と重なる開口を有するリブを形成し、前記リブの上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁を形成した処理基板を用意し、
前記開口において前記下電極の上に有機層を形成し、
前記有機層の上に上電極を形成し、
前記上電極の上に第1透明層を形成し、
前記第1透明層の上に、前記第1透明層の屈折率よりも低い屈折率を有する第2透明層を形成し、
前記有機層、前記上電極、前記第1透明層、及び、前記第2透明層を形成する工程は、前記隔壁をマスクとした蒸着工程であり、
前記有機層、前記上電極、前記第1透明層、及び、前記第2透明層の少なくとも1つを形成する前記蒸着工程において、
蒸着源は、前記処理基板及び膜厚測定器に向けて材料を放射し、
前記膜厚測定器は、水晶振動子の周波数に応じて異なる音響インピーダンス補正値を適用し、前記水晶振動子の周波数の変化量に基づいて蒸着レートを測定し、
制御部は、前記蒸着レートが一定となるように前記蒸着源を制御する、表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記蒸着源は、前記第2透明層を形成するための有機材料を放射する、請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2透明層は、前記第1透明層を形成した前記処理基板を、前記蒸着源を挟んで前記膜厚測定器とは反対側の搬送経路に沿って搬送しながら、前記有機材料を蒸着することで形成する、請求項2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記隔壁の前記上部の直上に形成された前記有機層、前記上電極、前記第1透明層、及び、前記第2透明層は、前記開口において前記下電極の直上に形成された前記有機層、前記上電極、前記第1透明層、及び、前記第2透明層から離間している、請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
さらに、前記第2透明層を形成した後に、前記第2透明層の屈折率よりも高い屈折率を有する無機絶縁材料で封止層を形成し、
前記封止層は、前記隔壁の上の前記第2透明層を覆うとともに前記下電極の直上の前記第2透明層を覆い、且つ、前記隔壁に接している、請求項4に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
さらに、前記封止層を形成した後に、前記封止層の上にパターニングしたレジストを形成し、
前記レジストから露出した前記封止層、前記第2透明層、前記第1透明層、前記上電極、及び、前記有機層を順次エッチングにより除去する、請求項5に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
基板の上方に位置する下電極と、前記下電極と重なる開口を有するリブと、前記リブの上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁と、を備えた処理基板を搬送しながら、前記開口において前記下電極の上に有機層を形成する第1蒸着部と、
前記有機層の上に上電極を形成する第2蒸着部と、
前記上電極の上に第1透明層を形成する第3蒸着部と、
前記第1透明層の上に、前記第1透明層の屈折率よりも低い屈折率を有する第2透明層を形成する第4蒸着部と、を備え、
前記第1蒸着部、前記第2蒸着部、前記第3蒸着部、及び、前記第4蒸着部の少なくとも1つは、
前記処理基板の搬送経路に対向する第1ノズルと、前記第1ノズルとは反対側に設けられた第2ノズルと、を備える蒸着源と、
前記第2ノズルに対向する水晶振動子を備え、前記水晶振動子の周波数に応じて異なる音響インピーダンス補正値のテーブルを保持し、前記水晶振動子の周波数の変化量に基づいて蒸着レートを測定するように構成された膜厚測定器と、
前記蒸着レートが一定となるように前記蒸着源を制御する制御部と、を備える、表示装置の製造装置。
【請求項8】
前記蒸着源は、前記第2透明層を形成するための有機材料を放射するように構成されている、請求項7に記載の表示装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置の製造装置及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、薄膜トランジスタを含む画素回路と、画素回路に接続された下電極と、下電極を覆う有機層と、有機層を覆う上電極と、を備えている。有機層は、発光層の他に、正孔輸送層や電子輸送層などの機能層を含んでいる。
このような表示素子を形成するための製造装置において、生産効率の低下を抑制することが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【特許文献8】特開2016-181468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、生産効率の低下を抑制することが可能な表示装置の製造装置及び表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、表示装置の製造方法は、
基板の上方に下電極を形成し、前記下電極と重なる開口を有するリブを形成し、前記リブの上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁を形成した処理基板を用意し、前記開口において前記下電極の上に有機層を形成し、前記有機層の上に上電極を形成し、前記上電極の上に第1透明層を形成し、前記第1透明層の上に、前記第1透明層の屈折率よりも低い屈折率を有する第2透明層を形成し、前記有機層、前記上電極、前記第1透明層、及び、前記第2透明層を形成する工程は、前記隔壁をマスクとした蒸着工程であり、前記有機層、前記上電極、前記第1透明層、及び、前記第2透明層の少なくとも1つを形成する前記蒸着工程において、蒸着源は、前記処理基板及び膜厚測定器に向けて材料を放射し、前記膜厚測定器は、水晶振動子の周波数に応じて異なる音響インピーダンス補正値を適用し、前記水晶振動子の周波数の変化量に基づいて蒸着レートを測定し、制御部は、前記蒸着レートが一定となるように前記蒸着源を制御する。
【0006】
一実施形態によれば、表示装置の製造装置は、
基板の上方に位置する下電極と、前記下電極と重なる開口を有するリブと、前記リブの上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁と、を備えた処理基板を搬送しながら、前記開口において前記下電極の上に有機層を形成する第1蒸着部と、前記有機層の上に上電極を形成する第2蒸着部と、前記上電極の上に第1透明層を形成する第3蒸着部と、前記第1透明層の上に、前記第1透明層の屈折率よりも低い屈折率を有する第2透明層を形成する第4蒸着部と、を備え、前記第1蒸着部、前記第2蒸着部、前記第3蒸着部、及び、前記第4蒸着部の少なくとも1つは、前記処理基板の搬送経路に対向する第1ノズルと、前記第1ノズルとは反対側に設けられた第2ノズルと、を備える蒸着源と、前記第2ノズルに対向する水晶振動子を備え、前記水晶振動子の周波数に応じて異なる音響インピーダンス補正値のテーブルを保持し、前記水晶振動子の周波数の変化量に基づいて蒸着レートを測定するように構成された膜厚測定器と、前記蒸着レートが一定となるように前記蒸着源を制御する制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、表示装置DSPの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、副画素SP1、SP2、SP3のレイアウトの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2中のA-B線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、表示素子201乃至203の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図10】
図10は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図11】
図11は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図12】
図12は、製造装置100の一構成例を説明するための図である。
【
図13】
図13は、蒸着部300の主要部を模式的に示す斜視図である。
【
図14】
図14は、蒸着部300の主要部を模式的に示す上面図である。
【
図15】
図15は、音響インピーダンス補正値による補正の一例について説明する。
【
図16】
図16は、膜厚測定器320に保持されるテーブルTBの一例を示す図である。
【
図17】
図17は、音響インピーダンス補正値の適用例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向と称し、Y軸に沿った方向を第2方向と称し、Z軸に沿った方向を第3方向と称する。第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0010】
本実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末等に搭載され得る。
【0011】
図1は、表示装置DSPの構成例を示す図である。
表示装置DSPは、絶縁性の基板10の上に、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAの周辺の周辺領域SAと、を有している。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0012】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形である。ただし、基板10の平面視における形状は長方形に限らず、正方形、円形あるいは楕円形などの他の形状であってもよい。
【0013】
表示領域DAは、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、画素PXは、第1色の副画素SP1、第2色の副画素SP2、及び、第3色の副画素SP3を含む。第1色、第2色、及び、第3色は、互いに異なる色である。なお、画素PXは、副画素SP1、SP2、SP3とともに、あるいは副画素SP1、SP2、SP3のいずれかに代えて、白色などの他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0014】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子20と、を備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4と、を備えている。画素スイッチ2及び駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0015】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極及びドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極及びキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極及びドレイン電極の一方は電源線PL及びキャパシタ4に接続され、他方は表示素子20のアノードに接続されている。
【0016】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限らない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタ及びキャパシタを備えてもよい。
【0017】
表示素子20は、発光素子としての有機発光ダイオード(OLED)であり、有機EL素子と称する場合がある。
【0018】
周辺領域SAには、詳述しないが、ICチップやフレキシブルプリント回路基板を接続するための端子が設けられている。
【0019】
図2は、副画素SP1、SP2、SP3のレイアウトの一例を示す図である。
図2の例においては、副画素SP2及び副画素SP3が第2方向Yに並んでいる。副画素SP1及び副画素SP2が第1方向Xに並び、副画素SP1及び副画素SP3が第1方向Xに並んでいる。
【0020】
副画素SP1、SP2、SP3がこのようなレイアウトである場合、表示領域DAには、副画素SP2及び副画素SP3が第2方向Yに交互に配置された列と、複数の副画素SP1が第2方向Yに配置された列とが形成される。これらの列は、第1方向Xに交互に並ぶ。
【0021】
なお、副画素SP1、SP2、SP3のレイアウトは
図2の例に限られない。他の一例として、各画素PXにおける副画素SP1、SP2、SP3が第1方向Xに順に並んでいてもよい。
【0022】
表示領域DAには、リブ5及び隔壁6が配置されている。リブ5は、副画素SP1、SP2、SP3においてそれぞれ開口AP1、AP2、AP3を有している。
【0023】
隔壁6は、平面視においてリブ5と重なっている。隔壁6は、全体として開口AP1、AP2、AP3を囲う格子状に形成されている。隔壁6は、リブ5と同様に副画素SP1、SP2、SP3において開口を有するということもできる。
【0024】
副画素SP1、SP2、SP3は、表示素子20として、それぞれ表示素子201、202、203を備えている。
副画素SP1の表示素子201は、開口AP1とそれぞれ重なる下電極LE1、上電極UE1、及び、有機層OR1を備えている。下電極LE1の周縁部は、リブ5で覆われている。有機層OR1及び上電極UE1は、隔壁6で囲まれている。有機層OR1及び上電極UE1のそれぞれの周縁部は、平面視においてリブ5に重なっている。有機層OR1は、例えば青波長域の光を放つ発光層を含む。
副画素SP2の表示素子202は、開口AP2とそれぞれ重なる下電極LE2、上電極UE2、及び、有機層OR2を備えている。下電極LE2の周縁部は、リブ5で覆われている。有機層OR2及び上電極UE2は、隔壁6で囲まれている。有機層OR2及び上電極UE2のそれぞれの周縁部は、平面視においてリブ5に重なっている。有機層OR2は、例えば緑波長域の光を放つ発光層を含む。
副画素SP3の表示素子203は、開口AP3とそれぞれ重なる下電極LE3、上電極UE3、及び、有機層OR3を備えている。下電極LE3の周縁部は、リブ5で覆われている。有機層OR3及び上電極UE3は、隔壁6で囲まれている。有機層OR3及び上電極UE3のそれぞれの周縁部は、平面視においてリブ5に重なっている。有機層OR3は、例えば赤波長域の光を放つ発光層を含む。
【0025】
図2の例においては、下電極LE1、LE2、LE3の外形は点線で示し、有機層OR1、OR2、OR3、及び、上電極UE1、UE2、UE3の外形は一点鎖線で示している。なお、図示した下電極、有機層、上電極のそれぞれの外形は、正確な形状を反映したものとは限らない。
【0026】
下電極LE1、LE2、LE3は、例えば、表示素子のアノードに相当する。上電極UE1、UE2、UE3は、表示素子のカソード、あるいは、共通電極に相当する。
【0027】
下電極LE1は、コンタクトホールCH1を通じて副画素SP1の画素回路1(
図1参照)に接続されている。下電極LE2は、コンタクトホールCH2を通じて副画素SP2の画素回路1に接続されている。下電極LE3は、コンタクトホールCH3を通じて副画素SP3の画素回路1に接続されている。
【0028】
図2の例においては、開口AP1の面積、開口AP2の面積、及び、開口AP3の面積は、互いに異なる。開口AP1の面積が開口AP2の面積よりも大きく、開口AP2の面積が開口AP3の面積よりも大きい。換言すると、開口AP1から露出した下電極LE1の面積は開口AP2から露出した下電極LE2の面積よりも大きく、開口AP2から露出した下電極LE2の面積は開口AP3から露出した下電極LE3の面積よりも大きい。
【0029】
図3は、
図2中のA-B線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
回路層11は、基板10の上に配置されている。回路層11は、
図1に示した画素回路1などの各種回路や、走査線GL、信号線SL、電源線PLなどの各種配線を含む。回路層11は、絶縁層12により覆われている。絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。
【0030】
下電極LE1、LE2、LE3は、絶縁層12の上に配置され、互いに離間している。リブ5は、絶縁層12及び下電極LE1、LE2、LE3の上に配置されている。リブ5の開口AP1は下電極LE1に重なり、開口AP2は下電極LE2に重なり、開口AP3は下電極LE3に重なっている。下電極LE1、LE2、LE3の周縁部は、リブ5で覆われている。下電極LE1、LE2、LE3のうち、互いに隣接する下電極の間では、絶縁層12がリブ5により覆われている。下電極LE1、LE2、LE3は、絶縁層12に設けられたコンタクトホールを通じて副画素SP1、SP2、SP3のそれぞれの画素回路1に接続されている。なお、絶縁層12のコンタクトホールは、
図3では省略するが、
図2のCH1、CH2、CH3に相当する。
【0031】
隔壁6は、リブ5の上に配置された導電性を有する下部(茎)61と、下部61の上に配置された上部(笠)62と、を含む。図の左側に示した隔壁6の下部61は、開口AP1と開口AP2との間に位置している。図の右側に示した隔壁6の下部61は、開口AP2と開口AP3との間に位置している。上部62は、下部61よりも大きい幅を有している。上部62の両端部は、下部61の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状と呼ばれる。
【0032】
有機層OR1は、開口AP1を通じて下電極LE1に接触し、開口AP1から露出した下電極LE1を覆うとともに、その周縁部がリブ5の上に位置している。上電極UE1は、有機層OR1を覆い、下部61に接触している。
【0033】
有機層OR2は、開口AP2を通じて下電極LE2に接触し、開口AP2から露出した下電極LE2を覆うとともに、その周縁部がリブ5の上に位置している。上電極UE2は、有機層OR2を覆い、下部61に接触している。
【0034】
有機層OR3は、開口AP3を通じて下電極LE3に接触し、開口AP3から露出した下電極LE3を覆うとともに、その周縁部がリブ5の上に位置している。上電極UE3は、有機層OR3を覆い、下部61に接触している。
【0035】
図3の例においては、副画素SP1はキャップ層CP1及び封止層SE1を有し、副画素SP2はキャップ層CP2及び封止層SE2を有し、副画素SP3はキャップ層CP3及び封止層SE3を有している。キャップ層CP1、CP2、CP3は、それぞれ有機層OR1、OR2、OR3から放たれた光の取り出し効率を向上させる光学調整層としての役割を有している。
【0036】
キャップ層CP1は、上電極UE1の上に配置されている。
キャップ層CP2は、上電極UE2の上に配置されている。
キャップ層CP3は、上電極UE3の上に配置されている。
【0037】
封止層SE1は、キャップ層CP1の上に配置され、隔壁6に接触し、副画素SP1の各部材を連続的に覆っている。
封止層SE2は、キャップ層CP2の上に配置され、隔壁6に接触し、副画素SP2の各部材を連続的に覆っている。
封止層SE3は、キャップ層CP3の上に配置され、隔壁6に接触し、副画素SP3の各部材を連続的に覆っている。
【0038】
図3の例においては、有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1のそれぞれの一部は、副画素SP1の周囲の隔壁6の上に位置している。これらの部分は、有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1のうち開口AP1に位置する部分(表示素子201を構成する部分)から離間している。
同様に、有機層OR2、上電極UE2、及び、キャップ層CP2のそれぞれの一部は、副画素SP2の周囲の隔壁6の上に位置し、これらの部分は、有機層OR2、上電極UE2、及び、キャップ層CP2のうち開口AP2に位置する部分(表示素子202を構成する部分)から離間している。
同様に、有機層OR3、上電極UE3、及び、キャップ層CP3のそれぞれの一部は、副画素SP3の周囲の隔壁6の上に位置し、これらの部分は、有機層OR3、上電極UE3、及び、キャップ層CP3のうち開口AP3に位置する部分(表示素子203を構成する部分)から離間している。
【0039】
封止層SE1、SE2、SE3の端部は、隔壁6の上に位置している。
図3の例においては、副画素SP1、SP2間の隔壁6の上に位置する封止層SE1、SE2の端部同士が離間し、副画素SP2、SP3間の隔壁6の上に位置する封止層SE2、SE3の端部同士が離間している。
【0040】
封止層SE1、SE2、SE3は、樹脂層13によって覆われている。樹脂層13は、封止層14によって覆われている。封止層14は、樹脂層15によって覆われている。
【0041】
リブ5は、例えば、シリコン窒化物(SiNx)、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)、または、酸化アルミニウム(Al2O3)などの無機絶縁材料で形成されている。
【0042】
封止層SE1、SE2、SE3、及び、封止層14は、例えばシリコン窒化物(SiNx)で形成されている。なお、封止層SE1、SE2、SE3、及び、封止層14は、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)または酸化アルミニウム(Al2O3)などの他の無機絶縁材料で形成されてもよい。
【0043】
一例では、リブ5は、封止層SE1、SE2、SE3とは異なる材料で形成されている。なお、リブ5が封止層SE1、SE2、SE3と同一材料で形成されている場合がありうる。
【0044】
隔壁6の下部61は、導電材料で形成され、上電極UE1、UE2、UE3と電気的に接続されている。隔壁6の上部62は、例えば導電材料によって形成されているが、絶縁材料で形成されもよい。下部61は、上部62とは異なる材料で形成されている。
【0045】
下電極LE1、LE2、LE3は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)などの酸化物導電材料で形成された透明電極と、銀などの金属材料で形成された金属電極とを含む多層体である。
【0046】
有機層OR1は、発光層EM1を含む。有機層OR2は、発光層EM2を含む。有機層OR3は、発光層EM3を含む。発光層EM1、発光層EM2、及び、発光層EM3は、互いに異なる材料で形成されている。一例では、発光層EM1は、青波長域の光を放つ材料によって形成され、発光層EM2は、緑波長域の光を放つ材料によって形成され、発光層EM3は、赤波長域の光を放つ材料によって形成されている。
また、有機層OR1、OR2、OR3の各々は、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層などの複数の機能層を含む。
【0047】
上電極UE1、UE2、UE3は、例えば、マグネシウム及び銀の合金(MgAg)などの金属材料で形成されている。
【0048】
キャップ層CP1、CP2、CP3は、複数の薄膜の多層体である。複数の薄膜は、いずれも透明であり、しかも、互いに異なる屈折率を有している。
【0049】
図4は、表示素子201乃至203の構成の一例を示す図である。
なお、ここでは、下電極がアノードに相当し、上電極がカソードに相当する場合を例について説明する。
【0050】
表示素子201は、下電極LE1と上電極UE1との間に有機層OR1を含む。
有機層OR1において、正孔注入層HIL1、正孔輸送層HTL1、電子ブロック層EBL1、発光層EM1、正孔ブロック層HBL1、電子輸送層ETL1、及び、電子注入層EIL1は、この順に積層されている。
キャップ層CP1は、第1透明層TL11及び第2透明層TL12を含む。第1透明層TL11は、上電極UE1の上に配置されている。第2透明層TL12は、第1透明層TL11の上に配置されている。封止層SE1は、第2透明層TL12の上に配置されている。
【0051】
表示素子202は、下電極LE2と上電極UE2との間に有機層OR2を含む。
有機層OR2において、正孔注入層HIL2、正孔輸送層HTL2、電子ブロック層EBL2、発光層EM2、正孔ブロック層HBL2、電子輸送層ETL2、及び、電子注入層EIL2は、この順に積層されている。一例では、正孔輸送層HTL2の厚さT2は、正孔輸送層HTL1の厚さT1より大きい。
キャップ層CP2は、第1透明層TL21及び第2透明層TL22を含む。第1透明層TL21は、上電極UE2の上に配置されている。第2透明層TL22は、第1透明層TL21の上に配置されている。封止層SE2は、第2透明層TL22の上に配置されている。
【0052】
表示素子203は、下電極LE3と上電極UE3との間に有機層OR3を含む。
有機層OR3において、正孔注入層HIL3、正孔輸送層HTL3、電子ブロック層EBL3、発光層EM3、正孔ブロック層HBL3、電子輸送層ETL3、及び、電子注入層EIL3は、この順に積層されている。一例では、正孔輸送層HTL3の厚さT3は、正孔輸送層HTL2の厚さT2より大きい。
キャップ層CP3は、第1透明層TL31及び第2透明層TL32を含む。第1透明層TL31は、上電極UE3の上に配置されている。第2透明層TL32は、第1透明層TL31の上に配置されている。封止層SE3は、第2透明層TL32の上に配置されている。
【0053】
第1透明層TL11、TL21、TL31は、例えば有機材料によって形成された透明な有機層であり、また、上電極UE1、UE2、UE3よりも大きい屈折率を有する高屈折率層である。一例では、第1透明層TL11、TL21、TL31の屈折率は、1.7以上であり、2.0以下である。
【0054】
第2透明層TL12、TL22、TL32は、例えば有機材料によって形成された透明な有機層であり、第1透明層TL11、TL21、TL31よりも小さい屈折率を有する低屈折率層である。一例では、第2透明層TL12、TL22、TL32の屈折率は、1.3以上であり、1.6以下である。
【0055】
なお、第2透明層TL12、TL22、TL32に接する封止層SE1、SE2、SE3の屈折率は、第2透明層TL12、TL22、TL32の屈折率よりも大きい。一例では、封止層SE1、SE2、SE3の屈折率は、1.7以上であり、2.0以下である。
【0056】
第2透明層TL12、TL22、TL32を形成するため有機材料としては、主鎖が炭素によって構成され、置換基にフッ素を含むフッ素系樹脂が好適である。一例では、第2透明層TL12、TL22、TL32は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及び、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートの少なくとも1つの有機材料で形成することができる。ポリテトラフルオロエチレンの屈折率は、1.35である。ポリフッ化ビニリデンの屈折率は、1.42である。2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートの屈折率は、1.35である。
【0057】
これらの有機材料を適用した第2透明層TL12、TL22、TL32は、蒸着法により形成することができる。このような第2透明層TL12、TL22、TL32の厚さは、例えば、20nm~500nmである。
【0058】
第1透明層TL11、TL21、TL31は、互いに離間しており、それぞれ個別に形成される。このため、第1透明層TL11、TL21、TL31のすべてが同一材料で形成される場合があり得るし、互いに異なる材料で形成される場合があり得る。
【0059】
第2透明層TL12、TL22、TL32は、互いに離間しており、それぞれ個別に形成される。このため、第2透明層TL12、TL22、TL32のすべてが同一材料で形成される場合があり得るし、互いに異なる材料で形成される場合があり得る。
【0060】
第1透明層TL11、TL21、TL31の各々の厚さは、すべてが同一である場合があり得るし、互いに異なる場合があり得る。
また、第2透明層TL12、TL22、TL32の各々の厚さは、すべてが同一である場合があり得るし、互いに異なる場合があり得る。
【0061】
一例では、第2透明層TL12、TL22、TL32の各々の厚さはすべて同一であり、青用の表示素子201における第1透明層TL11の厚さは、赤用の表示素子203における第1透明層TL31の厚さより小さい。
また、表示素子201においては、第2透明層TL12の厚さは第1透明層TL11の厚さより大きい。また、表示素子203においては、第1透明層TL31の厚さは第2透明層TL32の厚さより小さい。
【0062】
キャップ層CP1乃至CP3のすべての層構成が同一である場合があり得るし、互いに異なる場合があり得る。
また、キャップ層CP1、CP2、CP3は、3層以上の積層体であってもよい。
【0063】
有機層OR1、OR2、OR3は、上記した機能層の他に、必要に応じてキャリア発生層などの他の機能層を含んでいてもよいし、上記した機能層の少なくとも1つが省略されてもよい。
【0064】
正孔輸送層HTL1、HTL2、HTL3の各々は、一例では、図中に点線で示すように、互いに異なる材料で形成した2つの薄膜の多層体であるが、単一材料で形成した単層体であってもよい。
【0065】
表示素子201乃至203は、図示したようなシングル構成に限らず、タンデム構成であってもよい。
【0066】
次に、
図5乃至
図11を参照して、表示装置DSPの製造方法について説明する。なお、
図5乃至
図11においては、絶縁層12よりも下方の図示を省略している。
【0067】
まず、
図5に示すように、処理基板SUBを用意する。処理基板SUBを用意する工程は、絶縁層12の上に、副画素SP1の下電極LE1、副画素SP2の下電極LE2、副画素SP3の下電極LE3を形成する工程と、下電極LE1、LE2、LE3の各々と重なる開口AP1、AP2、AP3を有するリブ5を形成する工程と、リブ5の上に配置された下部61及び下部61の上に配置され下部61の側面から突出した上部62を含む隔壁6を形成する工程と、を含む。リブ5は、例えばシリコン酸窒化物で形成する。隔壁6のうち、少なくとも下部61は、導電材料で形成する。なお、開口AP1、AP2、AP3を有するリブ5を形成した後に、隔壁6を形成してもよいし、隔壁6を形成した後に、開口AP1、AP2、AP3を形成してもよい。
【0068】
続いて、表示素子201を形成する。
【0069】
まず、
図6に示すように、隔壁6をマスクとして、下電極LE1の上に、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、発光層(EM1)、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層などの各層を形成するための材料を順次蒸着して、有機層OR1を形成する。
その後、隔壁6をマスクとして、有機層OR1の上に、マグネシウム及び銀の混合物を蒸着して、上電極UE1を形成する。上電極UE1は、有機層OR1を覆い、下部61に接触している。
その後、隔壁6をマスクとして、上電極UE1の上に、第1透明層TL11を形成するための高屈折率材料及び第2透明層TL12を形成するための低屈折率材料を順次蒸着して、キャップ層CP1を形成する。
その後、CVDにより無機絶縁材料を堆積して、キャップ層CP1及び隔壁6を連続的に覆うように、封止層SE1を形成する。ここでは、第2透明層TL12の屈折率よりも高い屈折率を有する無機絶縁材料として、例えば、シリコン窒化物(SiN)が適用される。
【0070】
有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1、及び、封止層SE1は、少なくとも表示領域DAの全体に形成され、副画素SP1だけでなく副画素SP2、SP3にも配置されている。有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。
【0071】
有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層(第1透明層TL11及び第2透明層TL12を含む)CP1がそれぞれ蒸着によって形成される際に、蒸着源から放たれた材料は、上部62によって遮られる。このため、上部62の上には、有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1のそれぞれの一部が積層される。上部62の上に位置する有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1の各々は、下電極LE1の直上に位置する有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1から離間している。
封止層SE1は、隔壁6のキャップ層CP1を覆うとともに、下電極LE1の直上のキャップ層CP1を覆い、かつ、隔壁6に接している。
【0072】
続いて、
図7に示すように、封止層SE1の上に、所定の形状にパターニングされたレジストR1を形成する。レジストR1は、副画素SP1とその周囲の隔壁6の一部に重なっている。
【0073】
続いて、
図8に示すように、レジストR1をマスクとしてエッチングを行うことにより、レジストR1から露出した封止層SE1、キャップ層CP1、上電極UE1、及び、有機層OR1を順次除去する。これにより、副画素SP2の下電極LE2及び副画素SP3の下電極LE3が露出する。
【0074】
続いて、
図9に示すように、レジストR1を除去する。これにより、副画素SP1に表示素子201が形成される。
【0075】
続いて、
図10に示すように、表示素子202を形成する。表示素子202を形成する手順は、表示素子201を形成する手順と同様である。すなわち、下電極LE2の上に、発光層EM2を含む有機層OR2、上電極UE2、第1透明層TL21及び第2透明層TL22を含むキャップ層CP2、及び、封止層SE2を順に形成する。その後、封止層SE2の上にレジストを形成し、このレジストをマスクとしてエッチングを行うことにより、封止層SE2、キャップ層CP2、上電極UE2、及び、有機層OR2が順次パターニングされる。このパターニングの後、レジストを除去する。これにより、副画素SP2に表示素子202が形成され、副画素SP3の下電極LE3が露出する。
【0076】
続いて、
図11に示すように、表示素子203を形成する。表示素子203を形成する手順は、表示素子201を形成する手順と同様である。すなわち、下電極LE3の上に、発光層EM3を含む有機層OR3、上電極UE3、第1透明層TL31及び第2透明層TL32を含むキャップ層CP3、及び、封止層SE3を順に形成する。その後、封止層SE3の上にレジストを形成し、このレジストをマスクとしてエッチングを行うことにより、封止層SE3、キャップ層CP3、上電極UE3、及び、有機層OR3が順次パターニングされる。このパターニングの後、レジストを除去する。これにより、副画素SP3に表示素子203が形成される。
【0077】
その後、
図3に示した樹脂層13、封止層14、及び、樹脂層15を順に形成する。これにより、表示装置DSPが完成する。
【0078】
なお、以上の製造工程においては、最初に表示素子201が形成され、次に表示素子202が形成され、最後に表示素子203が形成される場合を想定したが、表示素子201、202、203の形成順はこの例に限られない。
【0079】
次に、表示装置DSPの製造装置について説明する。ここでは、一例として、表示素子201の有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1を形成するための製造装置100について説明する。なお、表示素子202の有機層OR2、上電極UE2、及び、キャップ層CP2を形成するための製造装置、及び、表示素子203の有機層OR3、上電極UE3、及び、キャップ層CP3を形成するための製造装置は、ここに説明する製造装置100と同様に構成することができる。
【0080】
図12は、製造装置100の一構成例を説明するための図である。
製造装置100は、
図6を参照して説明した各種薄膜を形成する工程のうち、有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1を形成する工程に適用される。なお、表示素子201の構成は、
図4に示したシングル構成であることを想定している。
【0081】
製造装置100は、前処理部101と、方向転換部102と、後処理部103と、第1蒸着部110と、第2蒸着部120と、第3蒸着部130と、第4蒸着部140と、搬送経路Tに沿って処理基板SUBを搬送する搬送機構と、を備えている。このような製造装置100において、少なくとも第1蒸着部110から第4蒸着部140までは、所定の減圧状態に維持されている。
【0082】
前処理部101は、
図5を参照して説明した下電極、リブ、隔壁などを備えた処理基板SUBを形成する処理基板形成部や、処理基板SUBに対して、洗浄処理、乾燥処理、プラズマ処理などの各種処理を行う処理部などを備えている。また、前処理部101は、処理基板SUBを所定の搬送姿勢に設定する機構や、静電チャックにより処理基板SUBを専用のキャリアに固定する機構などを備えている。キャリアは、搬送機構により搬送経路Tに沿って搬送される。
【0083】
後処理部103は、静電チャックによる固定を解除してキャリアから処理基板SUBを取り外す機構や、処理基板SUBを所定の姿勢に設定する機構などを備えている。
【0084】
第1蒸着部110は、
図4に示した有機層OR1を形成するように構成され、複数の蒸着部を備えている。図示した例では、第1蒸着部110は、8個の蒸着部111乃至118を備えているが、9個以上の蒸着部を備えていてもよいし、7個以下の蒸着部を備えていてもよい。
【0085】
蒸着部111乃至115は、搬送経路Tに沿って一列に並んでいる。蒸着部116乃至118は、搬送経路Tに沿って一列に並んでいる。蒸着部115及び蒸着部116は、方向転換部102に接続されている。図示した例では、方向転換部102は、処理基板SUBの搬送方向を180°転換するように構成されている。
【0086】
蒸着部111は、下電極LE1の上に、正孔注入層HIL1を形成するように構成されている。
蒸着部112は、正孔注入層HIL1の上に、正孔輸送層HTL1の第1薄膜HTL1-1を形成するように構成されている。
蒸着部113は、第1薄膜HTL1-1の上に、正孔輸送層HTL1の第2薄膜HTL1-2を形成するように構成されている。ここでは、所定の厚さT1の正孔輸送層HTL1を形成するために2つの蒸着部112、113を適用している。なお、1つの蒸着部112で所定の厚さT1の正孔輸送層HTL1が形成可能な場合には、蒸着部113は省略される。
【0087】
蒸着部114は、第2薄膜HTL1-2の上に、電子ブロック層EBL1を形成するように構成されている。
蒸着部115は、電子ブロック層EBL1の上に、発光層EM1を形成するように構成されている。
【0088】
蒸着部116は、発光層EM1の上に、正孔ブロック層HBL1を形成するように構成されている。
蒸着部117は、正孔ブロック層HBL1の上に、電子輸送層ETL1を形成するように構成されている。
蒸着部118は、電子輸送層ETL1の上に、電子注入層EIL1を形成するように構成されている。
【0089】
第2蒸着部120は、電子注入層EIL1の上に、上電極UE1を形成するように構成されている。
第3蒸着部130は、上電極UE1の上に有機材料を蒸着して、第1透明層TL11を形成するように構成されている。
第4蒸着部140は、第1透明層TL11の上に有機材料を蒸着して、第2透明層TL12を形成するように構成されている。
【0090】
以下に、製造装置100における製造工程について説明する。
【0091】
製造装置100に搬入された処理基板SUBは、搬送経路Tに沿って搬送され、まず、前処理部101に搬入される。前処理部101においては、処理基板SUBに対して、所定の前処理が行われる。
【0092】
その後、処理基板SUBは、蒸着部111に搬入される。蒸着部111においては、処理基板SUBに対して、正孔注入層HIL1を形成するための有機材料が蒸着される。
その後、処理基板SUBは、蒸着部112に搬入される。蒸着部112においては、処理基板SUBに対して、正孔輸送層の第1薄膜HTL1-1を形成するための有機材料が蒸着される。
その後、処理基板SUBは、蒸着部113に搬入される。蒸着部113においては、処理基板SUBに対して、正孔輸送層の第2薄膜HTL1-2を形成するための有機材料が蒸着される。
【0093】
その後、処理基板SUBは、蒸着部114に搬入される。蒸着部114においては、処理基板SUBに対して、電子ブロック層EBL1を形成するための有機材料が蒸着される。
その後、処理基板SUBは、蒸着部115に搬入される。蒸着部115においては、処理基板SUBに対して、発光層EM1を形成するための有機材料が蒸着される。
【0094】
その後、処理基板SUBは、方向転換部102を経由して蒸着部116に搬入される。蒸着部116においては、処理基板SUBに対して、正孔ブロック層HBL1を形成するための有機材料が蒸着される。
その後、処理基板SUBは、蒸着部117に搬入される。蒸着部117においては、処理基板SUBに対して、電子輸送層ETL1を形成するための有機材料が蒸着される。
蒸着部111乃至117においては、処理基板SUBに対して、互い異なる有機材料が蒸着される。
【0095】
その後、処理基板SUBは、蒸着部118に搬入される。蒸着部118においては、処理基板SUBに対して、電子注入層EIL1を形成するための無機材料が蒸着される。
その後、処理基板SUBは、第2蒸着部120に搬入される。第2蒸着部120においては、処理基板SUBに対して、上電極UE1を形成するための導電材料が蒸着される。
【0096】
その後、処理基板SUBは、第3蒸着部130に搬入される。第3蒸着部130においては、処理基板SUBに対して、第1透明層TL11を形成するための有機材料が蒸着される。
その後、処理基板SUBは、第4蒸着部140に搬入される。第4蒸着部140においては、処理基板SUBに対して、第2透明層TL12を形成するための有機材料が蒸着される。
第3蒸着部130及び第4蒸着部140においては、処理基板SUBに対して、互い異なる有機材料が蒸着される。
【0097】
その後、処理基板SUBは、後処理部103に搬入される。後処理部103においては、処理基板SUBに対して、所定の後処理が行われる。その後、処理基板SUBは、製造装置100から搬出される。
【0098】
次に、蒸着部の代表的な構成について説明する。
【0099】
図13は、蒸着部300の主要部を模式的に示す斜視図である。
蒸着部300は、蒸着源310と、膜厚測定器320と、を備えている。
【0100】
蒸着源310は、材料を加熱する坩堝311と、坩堝311に接続された複数の蒸着ヘッド312と、蒸着ヘッド312の各々から気化した材料を放射する第1ノズル313及び第2ノズル314(
図13では図示していない)と、を備えている。蒸着ヘッド312の各々に設けられた複数の第1ノズル313は、処理基板SUBの搬送経路Tに対して直交する方向に並んでいる。
【0101】
膜厚測定器320は、蒸着源310に対向している。搬送経路Tは、蒸着源310を挟んで膜厚測定器320とは反対側に設けられている。
【0102】
図13に示した蒸着部300の構成は、
図12に示した各蒸着部のいずれにも適用することができる。
【0103】
図14は、蒸着部300の主要部を模式的に示す上面図である。ここでは、複数の蒸着ヘッドのうち1つの蒸着ヘッド312を図示している。
【0104】
蒸着源310及び膜厚測定器320は、チャンバー301の内部に収容されている。
【0105】
蒸着源310において、第1ノズル313は、破線で示す処理基板SUB、あるいは、二点鎖線で示す搬送経路Tに対向している。第2ノズル314は、膜厚測定器320に対向している。つまり、処理基板SUBに向けて材料を放射するノズル(第1ノズル313)と、膜厚測定器320に向けて材料を放射するノズル(第2ノズル314)とは、別個のものである。
【0106】
膜厚測定器320は、開孔321Aを有するシャッター321と、開孔322Aを有するカバー322と、回転軸323Aを中心として回転可能に構成されたホルダ323と、ホルダ323の同一面上に配置された複数の水晶振動子Cと、を備えている。カバー322は、シャッター321と水晶振動子Cとの間に位置している。第2ノズル314から放射された材料を水晶振動子Cに蒸着する場合、シャッター321は、開孔321Aが開孔322Aと同軸上に位置するように駆動される。
【0107】
水晶振動子Cは、例えば、一対の金属電極の間に水晶板を挟持した構造を有している。第2ノズル314から放射された材料が金属電極に蒸着されると、水晶振動子Cの周波数が変化する。水晶振動子Cの周波数は、材料の蒸着に伴って減衰する。このため、膜厚測定器320では、水晶振動子Cの周波数の変化量(減衰量)に基づいて材料の蒸着レートが測定され、さらに、水晶振動子Cの上に形成された薄膜の厚さ、及び、処理基板SUBの上に形成された薄膜の厚さが測定される。蒸着レートや厚さを測定するに際して、膜厚測定器320は、水晶振動子Cの周波数に応じて異なる音響インピーダンス補正値を適用する。この点については、後に詳述する。ここでの蒸着レートとは、単位時間当たりに蒸着された材料の厚さである。
【0108】
例えば、図示した蒸着部300が
図12に示した第4蒸着部140に相当する場合、蒸着源310の坩堝311は、第2透明層TL12を形成するための有機材料を収容している。蒸着源310は、坩堝311に収容した有機材料を加熱し、気化した有機材料を第1ノズル313及び第2ノズル314から放射する。
第1ノズル313から放射された有機材料は、搬送経路Tに沿って搬送される処理基板SUBの第1透明層TL11の上に蒸着される。同時に、第2ノズル314から放射された有機材料は、開孔321A及び開孔322Aを介して少なくとも1つの水晶振動子Cに蒸着される。膜厚測定器320は、水晶振動子Cの周波数の変化量に基づいて、有機材料の蒸着レートを測定することができる。
尚、第2ノズル314の配置については、
図14に示した例のように、第1ノズル313の反対側に設けられる例に限定されない。第2ノズル314は、第1ノズル313と同様に、処理基板SUBまたは搬送経路Tに対向するように設けられてもよい。別の観点では、蒸着ヘッド312の搬送経路Tと対向する側に設けられた複数のノズルは、第1ノズル313及び第2ノズル314を含んでいてもよい。この場合、膜厚測定器320は、蒸着ヘッド312の搬送経路Tと対向する側で、処理基板SUBへの蒸着及び処理基板SUBの搬送に影響を与えない場所に配置され、第2ノズル314と対向している。
【0109】
制御部330は、膜厚測定器320によって測定された蒸着レートに基づき、蒸着レートが一定となるように、蒸着源310を制御する。一例では、制御部330は、蒸着源310において、坩堝311を加熱する温度を制御し、第1ノズル313及び第2ノズル314から放射される材料の放射量を調整する。また、制御部330は、蒸着レートを一定の設定値に維持するために、第1ノズル313と対向する処理基板SUBの搬送速度を調整してもよい。
尚、制御部330は、ケーブルで膜厚測定器320と接続されている。この場合、制御部330は、膜厚測定器320とともにチャンバー301の内部に配置されていてもよいし、チャンバー301の外側に配置されていてもよい。
【0110】
ところで、蒸着レートは、減衰する周波数の傾きを厚さに換算して算出される。水晶振動子Cにおいては、蒸着される材料によって振動の伝わりやすさが異なるため、周波数の減衰が進行していくと、算出された蒸着レートと、実際の蒸着レートとの乖離が大きくなる傾向にある。このような乖離を補正するためのパラメータとして、音響インピーダンス補正値(Zレシオ)が知られている。
【0111】
図15は、音響インピーダンス補正値による補正の一例について説明する。
図の横軸は水晶振動子の周波数(Hz)であり、図の縦軸は蒸着レートの相対値である。
【0112】
図中のAは、音響インピーダンス補正値を適用する前の実際の蒸着レートを示している。この場合、膜厚測定器320は、音響インピーダンス補正値を適用することなく、周波数の変化量に基づいて蒸着レートを測定する。そして、制御部330は、膜厚測定器320によって測定された蒸着レートが一定となるように蒸着源310を制御している。このとき、一定に維持される蒸着レートの設定値は、図の蒸着レート「1」に相当する。
このように、蒸着レートを一定に維持するように制御したとしても、実際の蒸着レートは時間の経過とともに次第に低下している。図示した例では、周波数が約0.05MHzだけ減衰した時点で、実際の蒸着レートは、設定値に対して、約10%乖離している。
【0113】
図中のBは、音響インピーダンス補正値を適用した後の実際の蒸着レートを示している。この場合、膜厚測定器320は、蒸着する材料に固有の音響インピーダンス補正値を適用し、周波数の変化量に基づいて蒸着レートを測定する。そして、制御部330は、膜厚測定器320によって測定された蒸着レートが一定となるように蒸着源310を制御している。
図示した例では、音響インピーダンス補正値を適用する前と比較して、実際の蒸着レートと設定値との乖離が緩和されることがわかる。しかしながら、水晶振動子の使用を開始してから周波数が約0.1MHz以上減衰すると、設定値に対する実際の蒸着レートの乖離が大きくなる傾向がわかる。
【0114】
つまり、材料固有の音響インピーダンス補正値を適用したとしても、補正できる範囲は高周波数のごくわずかな範囲である。このため、水晶振動子を頻繁に交換する必要がある。
【0115】
特に、高い膜厚再現性が要求されるレイヤを製造する工程、あるいは、厚い膜厚を必要とするレイヤを製造する工程では、測定される蒸着レートと設定値との差分が表示素子の性能に悪影響を及ぼす恐れがある。上記の例では、第2透明層TL12、TL22、TL32や、正孔輸送層HTL1、HTL2、HTL3などがこのレイヤに該当する。
そこで、発明者は、水晶振動子に蒸着された材料の実際の厚さと、水晶振動子の周波数とを測定する実験を繰り返し行い、水晶振動子の周波数毎に最適な音響インピーダンス補正値を求めた。例えば、周波数に基づいて算出した厚さが実際の厚さよりも大きい場合には、材料固有の音響インピーダンス補正値よりも大きな値の音響インピーダンス補正値に設定する。また、算出した厚さが実際の厚さよりも小さい場合には、材料固有の音響インピーダンス補正値よりも小さな値の音響インピーダンス補正値に設定する。
このようにして求めた周波数毎の音響インピーダンス補正値は、テーブル化され、膜厚測定器320に保持される。
【0116】
図16は、膜厚測定器320に保持されるテーブルTBの一例を示す図である。
テーブルTBは、水晶振動子の各周波数Fに最適な音響インピーダンス補正値Zratioを有している。例えば、周波数F0の場合の音響インピーダンス補正値をZ0とし、周波数F1の場合の音響インピーダンス補正値をZ1とし、周波数Fnの場合の音響インピーダンス補正値をZnとしている。nは整数である。nが多いほど、より厳密な補正が可能となる。特に、発明者が検討したところでは、周波数が低くなるほど、蒸着レートの計算値と実測値との乖離が大きくなる傾向にある。このため、低周波領域を細分化して、各周波数に対応する音響インピーダンス補正値を設定することが望ましい。
【0117】
なお、水晶振動子Cに多量の材料が蒸着されると、周波数の減衰率を正確に検出することができず、また、蒸着した材料の厚さを正確に検出することができない。このため、厚さを正確に検出可能な範囲で、水晶振動子Cの周波数の下限値を設定している。つまり、水晶振動子Cの周波数Fが下限値Fminに到達した場合、水晶振動子Cの使用限度に到達したと判断することができる。この場合、膜厚測定器320は、水晶振動子Cを交換する。
【0118】
このようなテーブルTBは、例えば、第2透明層を形成するための蒸着部や、正孔輸送層を形成するための蒸着部などで個別に用意される。
【0119】
図17は、音響インピーダンス補正値の適用例を説明するためのフローチャートである。
【0120】
まず、膜厚測定器320において、水晶振動子Cの使用を開始する際、水晶振動子Cの周波数Fが初期値F0である場合に、音響インピーダンス補正値をZ0に設定する(ステップS11)。そして、シャッター321が駆動され、開孔321Aが第2ノズル314及びカバー322の開孔322Aと同軸上に配置される。このとき、少なくとも1つの水晶振動子Cが第2ノズル314に対向する。
【0121】
一方で、蒸着源310において、坩堝311に収容した材料が加熱され、第1ノズル313及び第2ノズル314から材料の放射が開始される。ここでの材料は、例えば、正孔輸送層を形成するための材料、あるいは、第2透明層を形成するための材料である。これにより、材料の水晶振動子Cへの蒸着が開始される。また、第1ノズル313から放射された材料の処理基板SUBへの蒸着が開始される。
【0122】
膜厚測定器320では、音響インピーダンス補正値Z0を適用し、周波数の変化量に基づいて蒸着レートを測定する。そして、制御部330は、膜厚測定器320によって測定された蒸着レートが一定となるように蒸着源310を制御する。
【0123】
そして、膜厚測定器320は、水晶振動子Cの周波数Fが周波数F1まで減衰したか否かを判断する(ステップS12)。膜厚測定器320は、周波数F1に達した場合に(ステップS12、YES)、音響インピーダンス補正値をZ1に設定する(ステップS13)。周波数F1に到達する以前は、音響インピーダンス補正値Z0が適用される。
【0124】
そして、膜厚測定器320は、水晶振動子Cの周波数Fが周波数F2まで減衰したか否かを判断する(ステップS14)。膜厚測定器320は、周波数F2に達した場合に(ステップS14、YES)、音響インピーダンス補正値をZ2に設定する(ステップS15)。周波数F2に到達する以前は、音響インピーダンス補正値Z1が適用される。
【0125】
同様の制御が繰り返し行われる(ステップS16、ステップS17)。
【0126】
そして、膜厚測定器320は、水晶振動子Cの周波数Fが周波数Fminまで減衰したか否かを判断する(ステップS18)。膜厚測定器320は、周波数Fminに達した場合に(ステップS18、YES)、ホルダ323が回転し、水晶振動子Cを交換する(ステップS19)。これにより、他の水晶振動子Cが第2ノズル314に対向し、上記のステップS11に戻る。
【0127】
このように、本実施形態によれば、材料を蒸着する蒸着部では、水晶振動子Cを備えた膜厚測定器320により蒸着レートをモニタリングし、一定の蒸着レートに維持するように材料の加熱温度などを制御している。
【0128】
膜厚測定器320は、蒸着レートを算出するに際して、水晶振動子Cの周波数に応じた最適な音響インピーダンス補正値を適用している。このため、膜厚測定器320で算出された厚さは、実際に蒸着された材料の厚さとほぼ同等なる。これにより、蒸着部で制御される蒸着レートの設定値は、実際の蒸着レートとほぼ一致するようになる。
【0129】
しかも、水晶振動子Cの使用時間の経過に伴い、周波数が減衰していても、その周波数で最適な音響インピーダンス補正値が適用されるため、低周波領域でも、水晶振動子Cの使用が可能となる。このため、水晶振動子Cを長期にわたって使用することが可能となり、水晶振動子Cの交換頻度が減少する。したがって、生産効率の低下が抑制される。
【0130】
なお、表示素子201、202、203を製造するに際して、特別に調整された材料を蒸着する場合や、複数種類の材料を蒸着する場合には、実験を繰り返し行うことで、水晶振動子の周波数毎に最適な音響インピーダンス補正値を求めることができる。
【0131】
以上説明したように、本実施形態によれば、生産効率の低下を抑制することが可能な表示装置の製造装置及び表示装置の製造方法を提供することができる。
【0132】
以上、本発明の実施形態として説明した製造装置及び製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての製造装置及び製造方法も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に属する。
【0133】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0134】
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0135】
DSP…表示装置
10…基板 SUB…処理基板
5…リブ AP1、AP2、AP3…開口
6…隔壁 61…下部 62…上部
SP1、SP2、SP3…副画素
20、201、202、203…表示素子(有機EL素子)
LE1、LE2、LE3…下電極
UE1、UE2、UE3…上電極
OR1、OR2、OR3…有機層
CP1、CP2、CP3…キャップ層
TL11、TL21、TL31…第1透明層
TL12、TL22、TL32…第2透明層
SE1、SE2、SE3…封止層
100…製造装置 110…第1蒸着部 120…第2蒸着部 130…第3蒸着部 140…第4蒸着部
300…蒸着部 310…蒸着源 313…第1ノズル 314…第2ノズル
320…膜厚測定器 322…カバー 323…ホルダ C…水晶振動子
330…制御部 TB…テーブル