(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011741
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】時刻補正装置、時刻補正方法及び時刻補正システム
(51)【国際特許分類】
H04L 7/00 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
H04L7/00 990
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113986
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 健一
(72)【発明者】
【氏名】露梨 真史
(72)【発明者】
【氏名】栃尾 篤志
(72)【発明者】
【氏名】村上 純一
(72)【発明者】
【氏名】島田 行隆
(72)【発明者】
【氏名】山岡 大雅
【テーマコード(参考)】
5K047
【Fターム(参考)】
5K047AA15
5K047AA18
(57)【要約】
【課題】基準時刻を提供する高精度なクロックを用いることなく、かつ低頻度で機器の時刻補正を行うこと。
【解決手段】実施形態に係る時刻補正装置は、機器に関する情報と、機器に備えられたクロックの時刻(現在時刻)の、基準時刻からの偏差(時刻の差)と、の関係を補正モジュールに学習させる。時刻補正装置は、学習済みの補正モジュールを用いて、機器に備えられたクロックの時刻の補正を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に備えられたクロックの時刻を補正する時刻補正装置であって、コントローラを有し、
前記コントローラは、
機器に関する情報と、前記機器に備えられたクロックの時刻の基準時刻からの偏差と、の関係をモジュールに学習させ、
学習済みの前記モジュールを用いて、前記機器に備えられたクロックの時刻の補正を行う
時刻補正装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記機器の動作の開始及び停止の頻度、前記機器の稼働時間、及び前記機器に備えられたセンサによって測定されたセンサ値を含む入力情報と、前記機器に備えられたクロックの時刻の基準時刻からの偏差と、の関係を前記モジュールに学習させ、
前記モジュールの学習後に取得された前記入力情報を、学習済みの前記モジュールに入力して得られた前記偏差の予測値を基に、前記機器に備えられたクロックの時刻の補正を行う
請求項1に記載の時刻補正装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記機器の動作環境に基づく劣化度合いと、前記機器に備えられたクロックの時刻の基準時刻からの偏差と、の関係をモジュールに学習させる
請求項1に記載の時刻補正装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
学習済みの前記モジュールから得られた前記偏差の予測値が閾値を超えている場合、他の装置から取得した基準時刻を基に、前記機器に備えられたクロックの時刻の補正を行う
請求項2に記載の時刻補正装置。
【請求項5】
機器に備えられたクロックの時刻を補正する時刻補正装置のコントローラによって実行される時刻補正方法であって、
前記コントローラは、
機器に関する情報を説明変数とし、クロックの時刻の基準時刻からの偏差を目的変数とするモジュールの学習を、機器に関する情報及び前記機器に備えられたクロックの時刻の基準時刻からの偏差を教師データとして行い、
学習済みの前記モジュールに、前記機器に関する情報を説明変数として入力し得られる目的変数である偏差を基に、前記機器に備えられたクロックの時刻の補正を行う
時刻補正方法。
【請求項6】
サーバと、前記サーバと接続された複数の機器と、を有する時刻補正システムであって、
前記機器は、クロックと、第1のコントローラとを備え、
前記第1のコントローラは、前記機器に関する情報を前記サーバに提供し、
前記サーバは、第2のコントローラを備え、
前記第2のコントローラは、前記複数の機器から提供された情報と、前記複数の機器に備えられたクロックの時刻の基準時刻からの偏差と、の関係をモジュールに学習させ、
学習済みの前記モジュールを用いて、前記複数の機器に備えられたクロックの時刻の補正を行う
時刻補正システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻補正装置、時刻補正方法及び時刻補正システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機器に備えられたクロックの時刻を補正する精度を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術には、基準時刻を提供する高精度なクロックを用いることなく、かつ低頻度で機器の時刻補正を行うことができない場合があるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、基準時刻を提供する高精度なクロックを用いることなく、かつ低頻度で機器の時刻補正を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る時刻補正装置は、機器に備えられたクロックの時刻を補正する時刻補正装置であって、コントローラを有する。コントローラは、機器に関する情報と、機器に備えられたクロックの時刻の基準時刻からの偏差と、の関係をモジュールに学習させ、学習済みのモジュールを用いて、機器に備えられたクロックの時刻の補正を行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基準時刻を提供する高精度なクロックを用いることなく、かつ低頻度で機器の時刻補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、補正モジュールについて説明する図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態の時刻補正装置の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、学習処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、補正処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の効果を説明する図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態の時刻補正システムの構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、従来の時刻の補正方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、時刻補正装置、時刻補正方法及び時刻補正システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
ここで、複数の機器が記録する画像、音声、その他のデータ(時系列のセンサログ等)を、合成、判断、選択といった処理に利用するシステムがある。例えば、交通事故の分析を行うシステムは、車両に搭載された車載カメラの画像と、道路に備えられた監視カメラの画像との間で同期を取り、同じ時刻の状況を複数の視点から分析することができる。
【0011】
画像のタイムスタンプには、当該機器に備えられたクロックが示す時刻が用いられる。このため、車載カメラの画像と監視カメラの画像との間で正確に同期を取るためには、車載カメラのクロックの時刻と画像と監視カメラのクロックの時刻が合っている必要がある。
【0012】
従来は、
図7に示すように、各機器に基準時刻を提供することで、各機器のクロックが合わせられていた。
図7の例では、提供装置50が機器51a及び機器51bに基準時刻を提供する。
【0013】
機器51a及び機器52aに備えられたクロックの時刻は、提供装置50から提供される基準時刻に合わせて補正される。
【0014】
機器51aは、例えば車載カメラである。また、機器51bは、例えば監視カメラである。また、提供装置50は、機器51a及び機器51bとインターネットを介して接続されたサーバである。
【0015】
ここで、従来の技術により精度良く時刻の補正を行うためには、高頻度で基準時刻の提供を受ける必要がある。一方で、通信コスト等の面から高頻度で基準時刻の提供を受けることは現実的でない場合がある。
【0016】
また、基準時刻の提供を高頻度化しない場合、基準時刻の受信タイミング、及び機器の特性、動作環境が異なる複数の機器の間でクロックの時刻を合わせることは困難である。
【0017】
例えば、機器の使用環境が異なれば、部品の劣化速度が異なる。大きく劣化した機器のクロックの時刻は、基準時刻からの偏差が大きくなることが考えられる。
【0018】
これに対し、本実施形態によれば、基準時刻を提供する高精度なクロックを用いることなく、かつ低頻度で機器の時刻補正を行うことができる。
【0019】
本実施形態では、補正モジュールを用いて予測した時刻補正によりクロックが補正される。
【0020】
図1を用いて補正モジュールについて説明する。
図1は、補正モジュールについて説明する図である。
【0021】
補正モジュールは、入力された情報を基に、時刻補正値を出力する。時刻補正値は正又は負の時間である。クロックが示す現在時刻に時刻補正値を足した時刻を、クロックの現在時刻に設定することで、クロックが補正される。
【0022】
例えば、クロックが示す現在時刻が「10:29:31」であり、時刻補正値が「00:03:10」であるとする(いずれもhh:mm:ss形式)。この場合、「10:29:31+00:03:10=10:42:41」なので、クロックの時刻に「10:42:41」が設定されることで補正が行われる。
【0023】
補正モジュールは、関数及びモデル等と言い換えられてもよい。補正モジュールは、機械学習の手法により、機器に関する情報と、機器に備えられたクロックの時刻の基準時刻からの偏差と、の関係を学習する(訓練される)。
【0024】
入力情報は補正モジュールの説明変数に相当する。また、時刻補正値は、補正モジュールの目的変数に相当する。なお、現在時刻と基準時刻の偏差(目的変数に相当)と、当該偏差が既知の場合の入力情報(説明変数に相当)は、補正モジュールの学習のための教師データということができる。
【0025】
ここで、本実施形態の機器は、クロックを備えた機器であればよく、例えば車載カメラ、監視カメラ、収音装置等である。
【0026】
図1に示す入力情報は、機器に関する情報の一例である。入力情報には、センサ情報、機器動作状態、累積稼働時間が含まれる。
【0027】
センサ情報は、機器に備えられたセンサによって測定されたセンサ値である。センサ情報には、温度、湿度及び電圧が含まれる。機器動作状態は、例えば機器の動作の開始及び停止の頻度である。累積稼働時間は、ある時点からの機器が動作した時間である。
【0028】
現在時刻及び基準時刻は、補正モジュール1211の学習に用いられる。補正モジュール1211は、学習済みであってもよいし、未学習であってもよい。
【0029】
現在時刻は、機器のクロックの時刻である。クロックは、例えば水晶振動子及び発振回路を用いた回路であり、日時を出力する。基準時刻は、機器とは別の高精度なクロックによって提供される時刻である。
【0030】
現在時刻が推定値であり、基準時刻は真の値ということができる。現在時刻が基準時刻と一致するのが理想的な状態である。このため、学習は、補正モジュール1211が出力する時刻補正値が、基準時刻と現在時刻との差に近付くように行われる。
【0031】
そして、学習済みの補正モジュール1212に入力情報を入力することで、時刻補正値が得らえる。
【0032】
[第1の実施形態の構成]
図2は、第1の実施形態の時刻補正装置の構成例を示す図である。時刻補正装置は、機器の一例である。時刻補正装置は、クロックを備えた機器であればよく、例えば車載カメラ、監視カメラ、収音装置等である。
【0033】
図1に示すように、時刻補正装置10は、通信部11、記憶部12、クロック部13、センサ部14及び制御部15を有する。また、時刻補正装置10は、図示しないカメラ及びマイクロホン等を有し、車載カメラ、監視カメラ、収音装置等として機能する。
【0034】
通信部11は、他の装置との間でデータの通信を行うためのインタフェースである。通信部11は、例えばNIC(Network Interface Card)である。また、通信部11は、例えばマウス、キーボード等の入力装置と接続されるインタフェースである。また、通信部11は、例えばディスプレイ及びスピーカ等の出力装置と接続されるインタフェースである。
【0035】
記憶部12は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部12には、補正モジュール情報121及び機器情報122が記憶される。
【0036】
補正モジュール情報121は、補正モジュールを構築するためのパラメータである。例えば、補正モジュールが回帰関数である場合、補正モジュール情報121は回帰係数である。また、例えば、補正モジュールがニューラルネットワークである場合、補正モジュール情報121は重み及びバイアス等である。
【0037】
機器情報122は、機器(時刻補正装置10)に関する情報である。例えば、機器情報122は、機器の動作開始及び停止の履歴、稼働時間等が含まれる。
【0038】
クロック部13は、現在時刻を出力するクロックである。クロック部13が出力する時刻は、設定により補正可能であるものとする。
【0039】
センサ部14は、1つ又は複数のセンサである。例えば、センサ部14は、温度センサ、湿度センサ及び電圧センサを含む。
【0040】
制御部15は、コントローラ(controller)であり、例えばCPU(Central Processing Unit)及びMPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部12に記憶されている図示略の各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部15は、たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現することができる。
【0041】
制御部15は、取得部151、計算部152、更新部153及び補正部154を有する。
【0042】
取得部151は、補正モジュールの学習及び時刻の補正に用いられるデータを取得する。取得部151は、クロック部13から現在時刻を取得する。また、取得部151は、センサ部14からセンサ値を取得する。また、取得部151は、機器情報122から機器に関する情報を取得する。また、取得部151は、通信部11を介して外部の装置から基準時刻を取得する。
【0043】
計算部152は、入力情報を補正モジュールに入力し、時刻補正値を計算する。計算部152は、補正モジュール情報121を基に補正モジュールを構築する。
【0044】
更新部153は、計算部152による計算結果を基に、補正モジュール情報121を更新する。更新部153によるパラメータの更新により補正モジュールの学習が行われる。
【0045】
更新部153は、補正モジュールに応じた方法でパラメータを更新する。例えば、補正モジュールが回帰関数である場合、更新部153は最小二乗法により補正モジュール情報121を更新する。また、例えば、補正モジュールがニューラルネットワークである場合、更新部153は誤差逆伝播法により補正モジュール情報121を更新する。
【0046】
補正部154は、クロックを補正する。補正部154は、クロックが示す現在時刻に、計算部152によって計算された時刻補正値を足した時刻を、クロックの現在時刻に設定する。
【0047】
制御部15は、計算部152と更新部153の処理により、補正モジュールの学習を行う。また、制御部15は、計算部152と補正部154の処理により、クロックの補正を行う。学習及び補正における時刻補正値の計算方法は
図1で説明した通りである。
【0048】
制御部15は、機器に関する情報と、機器に備えられたクロックの時刻(現在時刻)の、基準時刻からの偏差(時刻の差)と、の関係を補正モジュールに学習させる。機器に関する情報は、
図1の入力情報に相当し、例えば取得部151が機器情報122及びセンサ部14から取得した情報である。また、制御部15は、学習済みの補正モジュールを用いて、機器に備えられたクロックの時刻の補正を行う。
【0049】
さらに具体的には、制御部15は、機器の動作の開始及び停止の頻度、機器の稼働時間、及び機器に備えられたセンサによって測定されたセンサ値を含む入力情報と、機器に備えられたクロックの時刻の基準時刻からの偏差と、の関係を補正モジュールに学習させる。そして、制御部15は、補正モジュールの学習後に取得された入力情報を、学習済みの補正モジュールに入力して得られた偏差の予測値を基に、機器に備えられたクロックの時刻の補正を行う。
【0050】
なお、補正モジュールが関係を学習することは、補正モジュールの出力に応じて更新部153が補正モジュール情報121を更新することを意味する。
【0051】
これにより、機器は学習済みの補正モジュールを記憶しておくことにより、自身のクロックの補正を行うことができる。その結果、基準時刻を提供する高精度なクロックを用いることなく、かつ低頻度で機器の時刻補正を行うことができる。
【0052】
また、制御部15は、機器の動作環境に基づく劣化度合いと、機器に備えられたクロックの時刻の基準時刻からの偏差と、の関係を補正モジュールに学習させてもよい。このように、劣化度合いという各機器に共通する指標を補正モジュールの入力に用いることで、各機器で同様の構造の補正モジュールを利用することができる。
【0053】
この場合、計算部152は、取得部151が取得した情報を基に、機器の劣化度合いを計算する。劣化度合いの計算は、あらかじめ定められたモジュール等によって行われる。劣化度合いは、例えば累積稼働時間が長いほど大きくなる。
【0054】
そして、計算部152は、劣化度合いを補正モジュールに入力して時刻補正値を計算する。この場合、劣化度合いが入力情報に相当する。
【0055】
[第1の実施形態の処理]
図3を用いて学習処理の流れを説明する。
図3は、学習処理の流れを示すフローチャートである。
【0056】
図3に示すように、まず、時刻補正装置10は、入力情報を補正モジュールに入力し、時刻補正値を計算する(ステップS101)。時刻補正装置10は、機器情報122及びセンサ部14から入力情報を取得する。
【0057】
次に、時刻補正装置10は、現在時刻と基準時刻との差を計算する(ステップS102)。
【0058】
そして、時刻補正装置10は、時刻補正値が差に近づくように補正モジュールのパラメータを更新する(ステップS103)。時刻補正値は、入力情報に基づいて補正モジュールが出力した値である。
【0059】
図4を用いて、補正処理の流れを説明する。
図4は、補正処理の流れを示すフローチャートである。
【0060】
図4に示すように、まず、時刻補正装置10は、入力情報を取得する(ステップS201)。
【0061】
次に、時刻補正装置10は、入力情報を補正モジュールに入力し、時刻補正値を計算する(ステップS202)。そして、時刻補正装置10は、時刻補正値に基づきクロックの時刻を補正する(ステップS203)。
【0062】
ここで、時刻補正装置10は、補正モジュールから得られた時刻補正値(偏差の予測値)が閾値を超えている場合、他の装置から取得した基準時刻を基に、機器に備えられたクロックの時刻の補正を行うことができる。
【0063】
閾値としては、時刻補正値を使用可能な許容範囲として、例えば「5分」のような値があらかじめ設定される。この場合、時刻補正装置10は、補正モジュールから得られた時刻補正値の絶対値が「5分」を超えている場合、当該時刻補正値を使用せずに、基準時刻を用いてクロックを補正する。
【0064】
これは、機器自体の劣化、環境の変化等が原因で、補正モジュールによる時刻補正値の正確性が低下することがあるためである。上記の方法によれば、補正モジュールによる時刻補正値の正確性が低下した場合でも精度良くクロックを補正することができる。
【0065】
また、時刻補正装置10は、補正モジュールから得られた時刻補正値が許容範囲を超えている場合、補正モジュールの追加学習又は再学習を行ってもよい。追加学習は、新たに得られたデータを教師データとして用いて、現行の補正モジュールをさらに学習することを意味する。再学習は、現行の補正モジュールを初期化した上で学習を行うことを意味する。
【0066】
[第1の実施形態の効果]
時刻補正装置10は、機器に関する情報と、機器に備えられたクロックの時刻(現在時刻)の、基準時刻からの偏差(時刻の差)と、の関係を補正モジュールに学習させる。時刻補正装置10は、学習済みの補正モジュールを用いて、機器に備えられたクロックの時刻の補正を行う。
【0067】
これにより、機器(時刻補正装置10)は、学習済みの補正モジュールを用いて、基準時刻を提供する高精度なクロックを用いることなく、かつ低頻度で機器の時刻補正を行うことができる。
【0068】
図5は、第1の実施形態の効果を説明する図である。
図5には、従来の技術と本実施形態との基準時刻と現在時刻(機器のクロックが示す時刻)との差が示されている。
【0069】
線200Aは、従来の技術の現在時刻を表している。また、線200Bは、本実施形態の現在時刻を表している。いずれの場合も、現在時刻は、基準時刻受信のタイミングで基準時刻を基に補正されるものとする。また、本実施形態では、基準時刻受信のタイミング以外でも、学習済みの補正モジュールを用いて随時現在時刻が補正されるものとする。
【0070】
図5に示すように、本実施形態では、基準時刻からの現在時刻の偏差は従来の技術に比べて小さい。このため、本実施形態では、基準時刻の受信を省略したとしても、精度良く現在時刻を補正することができる。
【0071】
[第2の実施形態]
図6を用いて、第2の実施形態について説明する。
図6は、第2の実施形態の時刻補正システムの構成例を示す図である。
【0072】
第2の実施形態では、サーバが、クロックを備えた複数の機器について時刻補正値を計算し、クロックの補正を行う。
【0073】
図6に示すように、時刻補正システム2は、サーバ30及び機器40a、機器40b及び機器40cを有する。
【0074】
サーバ30は、各機器とインターネット等のネットワークを介して接続される。
【0075】
機器40aは、車載カメラである。機器40bは、住宅に設置された監視カメラである。機器40cは、工場に設置された監視カメラである。第2の実施形態の機器は、ここで例示したものに限られない。
【0076】
機器40a、機器40b及び機器40cは、いずれもクロック及びセンサを有する。すなわち、機器40a、機器40b及び機器40cは、第1の実施形態の時刻補正装置10のクロック部13及びセンサ部14と同等の機能を有する。
【0077】
サーバ30は、各機器に関する情報を用いて、補正モジュールの学習及び各機器の時刻の補正を行う。サーバ30は、時刻補正装置10の取得部151、計算部152、更新部153及び補正部154と同等の機能を有する。また、サーバ30は、学習済み又は未学習の補正モジュールのパラメータを記憶する。
【0078】
機器40a、機器40b及び機器40cは、カメラによって取得した画像を記録し、記録した画像のデータをサーバ30に送信する。
【0079】
その際、機器40a、機器40b及び機器40cは、サーバに送信するデータに各機器に関する情報を付与して送信する。これにより、機器40a、機器40b及び機器40cは、各機器に関する情報をサーバ30に提供する。
【0080】
例えば、機器40a、機器40b及び機器40cは、各機器の使用環境、製造年、電源ON(動作開始)の頻度を付与する。また、第1の実施形態と同様に、機器40a、機器40b及び機器40cは、センサ情報、機器動作状態、累積稼働時間を付与してもよい。
【0081】
また、機器40a、機器40b及び機器40cは、付与する情報を、データの送信と同時ではなく、あらかじめサーバ30に送信しておいてもよい。
【0082】
例えば、機器40aは、使用環境として「車内、日本(北海道)」を付与し、製造年として「2017年」を付与し、電源ONの頻度として「週1回 2時間」を付与する。
【0083】
例えば、機器40bは、使用環境として「家屋内、日本(北海道)」を付与し、製造年として「2012年」を付与し、電源ONの頻度として「毎日 10時間」を付与する。
【0084】
例えば、機器40cは、使用環境として「屋外、日本(北海道)」を付与し、製造年として「2015年」を付与し、電源ONの頻度として「毎日 24時間」を付与する。
【0085】
サーバ30は、機器40a、機器40b及び機器40cからさらに現在時刻を取得する。そして、サーバ30は、取得した情報を用いて補正モジュールの学習を行う。
【0086】
サーバ30は、機器ごとに補正モジュールを用意してもよいし、全機器共通の補正モジュールを用意してもよい。
【0087】
そして、サーバ30は、学習済みの補正モジュールを用いて、各機器のクロックを補正する。
【0088】
また、サーバ30は、前述の複数の機器が記録する画像、音声、その他のデータ(時系列のセンサログ等)を、合成、判断、選択といった処理に利用するシステムとしても機能する。
【0089】
例えば、サーバ30は、各機器のクロックを補正するだけでなく、各機器から取得した画像のタイムスタンプを修正して同期を取り、分析に利用することができる。
【0090】
さらに、サーバ30は、各機器について計算した時刻補正値から、機器の故障時期を予測することができる。
【0091】
例えば、サーバ30は、各機器についての時刻補正値の変化を、線形又は非線形の関数に近似し、時刻補正値が閾値を超える時期を故障時期として予測する。
【0092】
第2の実施形態によれば、サーバ30がクロック補正に関する機能を持つため、各機器のソフトのアップデートを行う必要がなく、また、アップデートができていない機器の影響を受けずにデータの分析等を行うことができる。
【0093】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細及び代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0094】
10 時刻補正装置
11 通信部
12 記憶部
13 クロック部
14 センサ部
15 制御部
30 サーバ
40a、40b、40c、51a、51b 機器
50 提供装置
121 補正モジュール情報
122 機器情報
151 取得部
152 計算部
153 更新部
200A、200B 線
1211、1212 補正モジュール