IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-電力変換装置 図1
  • 特開-電力変換装置 図2
  • 特開-電力変換装置 図3
  • 特開-電力変換装置 図4
  • 特開-電力変換装置 図5
  • 特開-電力変換装置 図6
  • 特開-電力変換装置 図7
  • 特開-電力変換装置 図8
  • 特開-電力変換装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117421
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240822BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023516
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】本村 和也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄太
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA07Z
5H770JA10X
5H770PA15
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA05
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA12
5H770QA22
5H770QA28
(57)【要約】
【課題】インダクタンスを低減できる電力変換装置を提供すること。
【解決手段】電力変換装置4は、第1冷却器21、半導体モジュール30、および第2冷却器40を備える。Z方向において、第1冷却器、半導体モジュール、第2冷却器の順に積層されている。半導体モジュールが有する外部接続端子は、コンデンサ50に電気的に接続される主端子と、屈曲端子である信号端子32Sを有する。信号端子は、主端子と同じ側に延びる第1延設部321と、第1延設部に対して屈曲してZ方向に延び、Y方向において第2冷却器と対向する第2延設部322を有する。Y方向において、第2冷却器の長さL2は、第1冷却器の長さL1よりも短い。Y方向において、第2延設部と第2冷却器との間隔D2は、第2延設部と第1冷却器との間隔D1よりも短い。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1冷却器(21)と、
前記第1冷却器に対向する一面に第1主電極が形成され、前記一面とは反対の裏面に第2主電極および信号用のパッドが形成された半導体素子(33)を含む本体部(31)と、前記半導体素子に電気的に接続された複数の外部接続端子(32)と、を有し、前記第1冷却器に積層配置された半導体モジュール(30)と、
前記裏面に対向するように、前記第1冷却器とは反対側で前記半導体モジュールに対して積層配置された第2冷却器(40)と、
を備え、
前記半導体モジュール、前記第1冷却器、および前記第2冷却器の積層方向に直交する一方向において、前記第2冷却器の長さは、前記第1冷却器の長さよりも短く、
複数の前記外部接続端子は、前記一方向に延びる部分を有し、平滑コンデンサに電気的に接続される主端子(32P,32N)と、前記一方向であって前記半導体素子に対して前記主端子と同じ側に延びる第1延設部(321)、および、前記第1延設部に対して屈曲して前記積層方向に延び、前記一方向において前記第2冷却器と対向する第2延設部(322)を有する屈曲端子(32S,32O)と、を含み、
前記一方向において、前記第2延設部と前記第2冷却器との間隔が、前記第2延設部と前記第1冷却器との間隔よりも短い、電力変換装置。
【請求項2】
前記屈曲端子は、信号端子(32S)である、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記本体部は、前記半導体素子を封止する封止体(34)を含み、
前記主端子および前記屈曲端子は、前記封止体の互いに共通する側面から前記封止体の外に突出している、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記本体部は、前記半導体素子を封止する封止体(34)を含み、
前記屈曲端子は、前記封止体における前記第2冷却器との対向面から前記封止体の外に突出している、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記一方向において、前記第1冷却器は前記本体部よりも長く、
前記主端子は、前記積層方向において前記第1冷却器を構成するベース(20)と対向している、請求項3または請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記主端子とは別の前記外部接続端子である出力端子(32O)を備え、
前記主端子は、前記平滑コンデンサに正極に電気的に接続される正極端子(32P)と、前記平滑コンデンサの負極に電気的に接続される負極端子(32N)と、を含み、
前記正極端子および前記負極端子は、前記封止体の互いに共通する側面から前記封止体の外に突出し、前記出力端子は前記正極端子および前記負極端子とは異なる面から前記封止体の外に突出している、請求項3または請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第2延設部と前記第2冷却器との間に配置された絶縁部材(90)を備える、請求項3または請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1冷却器を構成するベース(20)に、直接的または熱伝導部材を介して間接的に接触する発熱部品(50,80)を備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記発熱部品は、前記一方向において前記半導体モジュールと並んで配置され、前記平滑コンデンサを提供するコンデンサ部品(50)である、請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記発熱部品は、前記ベースとの接触面に凹凸を有する、請求項8または請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記半導体素子は、前記積層方向において前記第2冷却器よりも前記第1冷却器に近い、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電力変換装置を開示している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-97101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の電力変換装置は、パワー半導体素子を樹脂封止してなる本体部と、パワー半導体素子のコレクタ側に設けられた第1の冷却器と、エミッタ側に設けられた第2の冷却器を備えている。パワー半導体素子に電気的に接続された複数の外部接続端子のうち、平滑コンデンサに電気的に接続される主端子である正極側端子および負極側端子は、一方向に延び、封止樹脂の互いに共通する側面から突出している。信号端子の一部も、一方向に延び、正極側端子および負極側端子と共通の側面から突出している。信号端子は、封止樹脂の外で屈曲して積層方向に延び、一方向において第2冷却器に対向している。
【0005】
信号端子のような屈曲端子を備えるため、パワー半導体素子と平滑コンデンサとの距離を短くすることが困難である。つまり、パワー半導体素子と平滑コンデンサとをつなぐ配線のインダクタンスを低減することが困難である。上記した観点において、または言及されていない他の観点において、電力変換装置にはさらなる改良が求められている。
【0006】
開示されるひとつの目的は、インダクタンスを低減できる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された電力変換装置は、
第1冷却器(21)と、
第1冷却器に対向する一面に第1主電極が形成され、一面とは反対の裏面に第2主電極および信号用のパッドが形成された半導体素子(33)を含む本体部(31)と、半導体素子に電気的に接続された複数の外部接続端子(32)と、を有し、第1冷却器に積層配置された半導体モジュール(30)と、
裏面に対向するように、第1冷却器とは反対側で半導体モジュールに対して積層配置された第2冷却器(40)と、
を備え、
半導体モジュール、第1冷却器、および第2冷却器の積層方向に直交する一方向において、第2冷却器の長さは第1冷却器の長さよりも短く、
複数の外部接続端子は、一方向に延びる部分を有し、平滑コンデンサに電気的に接続される主端子(32P,32N)と、一方向であって半導体素子に対して主端子と同じ側に延びる第1延設部(321)、および、第1延設部に対して屈曲して積層方向に延び、一方向において第2冷却器と対向する第2延設部(322)を有する屈曲端子(32S,32O)と、を含み、
一方向において、第2延設部と第2冷却器との間隔が、第2延設部と第1冷却器との間隔よりも短い。
【0008】
開示の電力変換装置によれば、一方向において第2冷却器を第1冷却器よりも短くし、その上で屈曲端子の第2延設部を第2冷却器に近づけている。これにより、平滑コンデンサを、屈曲端子との干渉を避けつつ半導体モジュールの本体部に近づけることができる。よって、半導体素子と平滑コンデンサとをつなぐ配線のインダクタンスを低減することができる。
【0009】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る電力変換装置の回路構成および駆動システムを示す図である。
図2】電力変換装置を示す平面図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4】信号端子、第1冷却器、および第2冷却器の位置関係を示す図である。
図5】変形例を示す断面図である。
図6】変形例を示す断面図である。
図7】第2実施形態に係る電力変換装置において、出力端子、第1冷却器、および第2冷却器の位置関係を示す図である。
図8】第3実施形態に係る電力変換装置において、信号端子、第1冷却器、および第2冷却器の位置関係を示す図である。
図9】第4実施形態に係る電力変換装置において、信号端子、第1冷却器、および第2冷却器の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0012】
本実施形態の電力変換装置は、たとえば、回転電機を駆動源とする移動体に適用される。移動体は、たとえば、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)などの電動車両、ドローンや電動垂直離着陸機(eVTOL)などの電動飛行体、船舶、建設機械、農業機械である。以下では、車両に適用される例について説明する。
【0013】
(第1実施形態)
まず、図1に基づき、車両の駆動システムの概略構成について説明する。
【0014】
<車両の駆動システム>
図1に示すように、車両の駆動システム1は、直流電源2と、モータジェネレータ3と、電力変換装置4を備えている。
【0015】
直流電源2は、充放電可能な二次電池で構成された直流電圧源である。二次電池は、たとえばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、有機ラジカル電池などである。モータジェネレータ3は、三相交流方式の回転電機である。モータジェネレータ3は、車両の走行駆動源、つまり電動機として機能する。モータジェネレータ3は、回生時に発電機として機能する。電力変換装置4は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で電力変換を行う。
【0016】
<電力変換装置の回路構成>
図1は、電力変換装置4の回路構成を示している。電力変換装置4は、少なくとも電力変換回路を備えている。本実施形態の電力変換回路は、インバータ5である。電力変換装置4は、平滑コンデンサ6、駆動回路7などをさらに備えてもよい。
【0017】
平滑コンデンサ6は、主として、直流電源2から供給される直流電圧を平滑化する。平滑コンデンサ6は、高電位側の電源ラインであるPライン8と低電位側の電源ラインであるNライン9とに接続されている。Pライン8は直流電源2の正極に接続され、Nライン9は直流電源2の負極に接続されている。平滑コンデンサ6の正極は、直流電源2とインバータ5との間において、Pライン8に接続されている。平滑コンデンサ6の負極は、直流電源2とインバータ5との間において、Nライン9に接続されている。平滑コンデンサ6は、直流電源2に並列に接続されている。
【0018】
インバータ5は、DC-AC変換回路である。インバータ5は、図示しない制御回路によるスイッチング制御にしたがって、直流電圧を三相交流電圧に変換し、モータジェネレータ3へ出力する。これにより、モータジェネレータ3は、所定のトルクを発生するように駆動する。インバータ5は、車両の回生制動時、車輪からの回転力を受けてモータジェネレータ3が発電した三相交流電圧を、制御回路によるスイッチング制御にしたがって直流電圧に変換し、Pライン8へ出力する。このように、インバータ5は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で双方向の電力変換を行う。
【0019】
インバータ5は、三相分の上下アーム回路10を備えて構成されている。上下アーム回路10は、レグと称されることがある。上下アーム回路10は、上アーム10Hと、下アーム10Lをそれぞれ有している。上アーム10Hおよび下アーム10Lは、上アーム10HをPライン8側として、Pライン8とNライン9との間で直列接続されている。
【0020】
上アーム10Hと下アーム10Lとの接続点、すなわち上下アーム回路10の中点は、出力ライン11を介して、モータジェネレータ3における対応する相の巻線3aに接続されている。上下アーム回路10のうち、U相の上下アーム回路10Uは、出力ライン11を介してU相の巻線3aに接続されている。V相の上下アーム回路10Vは、出力ライン11を介してV相の巻線3aに接続されている。W相の上下アーム回路10Wは、出力ライン11を介してW相の巻線3aに接続されている。
【0021】
上下アーム回路10(10U,10V,10W)は、直列回路12を有している。上下アーム回路10が有する直列回路12は、ひとつでもよいし、複数でもよい。複数の場合、直列回路12が互いに並列接続されて、一相分の上下アーム回路10が構成される。本実施形態において、上下アーム回路10のそれぞれは、ひとつの直列回路12を有している。直列回路12は、上アーム10H側のスイッチング素子と下アーム10L側のスイッチング素子とを、Pライン8とNライン9との間で直列接続して構成されている。
【0022】
直列回路12を構成するハイサイド側のスイッチング素子、ローサイド側のスイッチング素子それぞれの数は、特に限定されない。ひとつでもよいし、複数でもよい。本実施形態の直列回路12は、ハイサイド側に2つのスイッチング素子を有し、ローサイド側に2つのスイッチング素子を有している。ハイサイド側の2つのスイッチング素子が並列接続され、ローサイド側の2つのスイッチング素子が並列接続されて、ひとつの直列回路12を構成している。つまり、三相分の上下アーム回路10の6つのアーム10H,10Lのそれぞれが、互いに並列接続された2つのスイッチング素子により構成されている。
【0023】
本実施形態では、各スイッチング素子として、nチャネル型のMOSFET13を採用している。MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略称である。並列接続されるハイサイド側の2つのMOSFET13は、共通のゲート駆動信号(駆動電圧)により、互いに同じタイミングでオン駆動、オフ駆動する。並列接続されるローサイド側の2つのMOSFET13は、共通のゲート駆動信号(駆動電圧)により、互いに同じタイミングでオン駆動、オフ駆動する。
【0024】
MOSFET13のそれぞれには、還流用のダイオード14(以下、FWD14と示す)が逆並列に接続されている。MOSFET13の場合、FWD14は、寄生ダイオード(ボディダイオード)でもよいし、外付けのダイオードでもよい。上アーム10Hにおいて、MOSFET13のドレインが、Pライン8に接続されている。下アーム10Lにおいて、MOSFET13のソースが、Nライン9に接続されている。そして、上アーム10HにおけるMOSFET13のドレインと、下アーム10LにおけるMOSFET13のドレインが相互に接続されている。FWD14のアノードは対応するMOSFET13のソースに接続され、カソードはドレインに接続されている。
【0025】
なお、スイッチング素子は、MOSFET13に限定されない。たとえばIGBTを採用してもよい。IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略称である。IGBTの場合にも、FWD14が逆並列に接続される。
【0026】
駆動回路7は、インバータ5などの電力変換回路を構成するスイッチング素子を駆動する。駆動回路7は、制御回路の駆動指令に基づいて、対応するMOSFET13のゲートに駆動電圧を供給する。駆動回路は、駆動電圧の印加により、対応するMOSFET13を駆動、すなわちオン駆動、オフ駆動させる。駆動回路は、ドライバと称されることがある。
【0027】
電力変換装置4は、スイッチング素子の制御回路を備えてもよい。制御回路は、MOSFET13を動作させるための駆動指令を生成し、駆動回路7に出力する。制御回路は、たとえば図示しない上位ECUから入力されるトルク要求、各種センサにて検出された信号に基づいて、駆動指令を生成する。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。制御回路は、上位ECU内に設けてもよい。
【0028】
各種センサとして、たとえば電流センサ、回転角センサ、電圧センサがある。電力変換装置4は、センサの少なくともひとつを備えてもよい。電流センサは、各相の巻線3aに流れる相電流を検出する。回転角センサは、モータジェネレータ3の回転子の回転角を検出する。電圧センサは、平滑コンデンサ6の両端電圧を検出する。制御回路は、たとえばプロセッサおよびメモリを備えて構成されている。制御回路は、駆動指令として、たとえばPWM信号を出力する。PWMは、Pulse Width Modulationの略称である。
【0029】
電力変換装置4は、電力変換回路として、コンバータを備えてもよい。コンバータは、直流電圧をたとえば異なる値の直流電圧に変換するDC-DC変換回路である。コンバータは、直流電源2と平滑コンデンサ6との間に設けられる。コンバータは、たとえばリアクトルと、上記した上下アーム回路10を備えて構成される。この構成によれば、昇降圧が可能である。電力変換装置4は、直流電源2からの電源ノイズを除去するフィルタコンデンサを備えてもよい。フィルタコンデンサは、直流電源2とコンバータとの間に設けられる。
【0030】
<電力変換装置の構造>
図2は、本実施形態の電力変換装置4を示す平面図である。図2では、半導体モジュールや冷却器の配置が分かるように、回路基板を省略している。図2の白抜き矢印は、冷媒の流れる方向を示している。図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。図3では、便宜上、本体部として半導体素子と封止体のみを示している。また、外部接続端子のうち、封止体に封止された部分を省略している。図4は、信号端子と冷却器との位置関係を示す図である。図4では、便宜上、外部接続端子のうち、上アーム側の信号端子のみを示している。
【0031】
本実施形態の電力変換装置4は、第1冷却器21を有するベース20、半導体モジュール30、および第2冷却器40を備えている。電力変換装置4は、コンデンサ50を備えてもよい。電力変換装置4は、回路基板60を備えてもよい。一例として本実施形態の電力変換装置4は、第1冷却器21を有するベース20、複数の半導体モジュール30、第2冷却器40、コンデンサ50、および回路基板60を備えている。
【0032】
以下において、複数の半導体モジュール30の並び方向をX方向とする。X方向に直交し、第1冷却器21、半導体モジュール30、および第2冷却器40の積層方向をZ方向とする。X方向およびZ方向の両方向に直交する方向をY方向とする。Y方向が、積層方向に直交する一方向に相当する。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交する位置関係にある。Z方向からの平面視を、単に平面視と示すことがある。2つの部材の相対位置を説明する際に、Z方向においてベース20に近い部材の位置を下方、ベース20に対して遠い部材の位置を上方と示すことがある。まず、各要素の概略構成について説明する。
【0033】
<ベースおよび第1冷却器>
ベース20は、その一面20aに半導体モジュール30を搭載する。ベース20は、半導体モジュール30を支持する支持部材である。一例として本実施形態では、ベース20の一面上に、半導体モジュール30とコンデンサ50が配置されている。ベース20は、アルミニウムなどの金属材料を用いて形成されている。
【0034】
ベース20は、第1冷却器21を有している。第1冷却器21は、ベース20を利用して構成されている。第1冷却器21は、ベース20における冷却部である。第1冷却器21は、冷媒が流れる流路を備えてもよいし、ヒートシンクや放熱フィンを備える放熱部材でもよい。一例として本実施形態の第1冷却器21は、図2および図3に示すように、ベース20の内部に形成された流路211と、ベース20における流路211の周囲部分を備えて構成されている。流路211には、冷媒212が流れる。冷媒212としては、たとえば水やアンモニアなどの相変化する冷媒や、エチレングリコール系などの相変化しない冷媒を用いることができる。第1冷却器21は、半導体モジュール30を裏面31b側から冷却する。
【0035】
流路211は、半導体モジュール30を効果的に冷却するように、平面視において半導体モジュール30それぞれの少なくとも一部と重なるように設けられている。一例として本実施形態の流路211は、平面視において半導体モジュール30それぞれの大部分を内包するように設けられている。流路211は、3つの半導体モジュール30の並び方向、つまりX方向に沿って延びている。流路211は、X方向に延設されている。
【0036】
第1冷却器21を有するベース20は、単一の部材により構成されてもよいし、複数の部材を組み合わせて構成されてもよい。ベース20は、たとえば2つの部材を組み合わせて構成されてもよいし、3つ以上の部材を組み合わせて構成されてもよい。ベース20は、その一部分において複数の部材を組み合わせ、他の部分において単一の部材により構成されてもよい。第1冷却器21は、たとえばダイカスト法などにより、単一の部材により構成されてもよいし、複数の部材を組み合わせて構成されてもよい。ベース20は、たとえば単一の部材に対して、2つの部材を組み合わせてなる第1冷却器21が局所的に配置された構造としてもよい。図3では、便宜上、ベース20を簡素化して図示している。
【0037】
ベース20の一面20aは平坦でもよいし、凹凸を有してもよい。一例として本実施形態では、一面20aのコンデンサ搭載部分が、半導体モジュール搭載部分に対して凹んでいる。
【0038】
ベース20は、ベース20単体で提供されてもよいし、電力変換装置4の他の要素を収容するケースの一部として提供されてもよい。一例として本実施形態のベース20は、ケース22の底壁として提供される。ケース22は、他の要素を収容すべく開口を有している。ケース22は、底壁をなすベース20と、ベース20に連なり、ベース20とともに収容空間22Sを規定する側壁23を有している。一例として本実施形態のケース22は、一面が開口する箱状をなしている。ケース22は、Z方向の平面視において略矩形状をなしている。ケース22の収容空間22Sには、半導体モジュール30、第2冷却器40、コンデンサ50、回路基板60などが配置されている。
【0039】
側壁23には、第1冷却器21および第2冷却器40に冷媒を供給するための導入管24と、第1冷却器21および第2冷却器40から冷媒を排出するための排出管25が取り付けられている。導入管24および排出管25は、対応する貫通孔(図示略)を挿通し、ケース22の内外にわたって配置されている。導入管24および排出管25のそれぞれは、Y方向に延びる部分を含んでいる。導入管24および排出管25は、たとえば共通の側壁23に取り付けられている。
【0040】
電力変換装置4は、ケース22の開口を閉塞する図示しないカバー(蓋)を備えてもよい。ケース22およびカバーは、筐体と称されることがある。
【0041】
<半導体モジュール>
半導体モジュール30は、上記した上下アーム回路10、つまりインバータ5を構成する。本実施形態の電力変換装置4は、3つの半導体モジュール30を備えている。ひとつの半導体モジュール30は、ひとつの直列回路12、つまり一相分の上下アーム回路10を提供する。複数の半導体モジュール30は、上下アーム回路10Uを構成する半導体モジュール30U、上下アーム回路10Vを構成する半導体モジュール30V、および上下アーム回路10Wを構成する半導体モジュール30Wを含んでいる。
【0042】
すべての半導体モジュール30は、互いに共通の構造を有している。各半導体モジュール30は、本体部31と、本体部31から突出する外部接続端子32を備えている。本体部31は、半導体素子33と、封止体34などを含んでいる。
【0043】
半導体素子33は、シリコン(Si)、シリコンよりもバンドギャップが広いワイドバンドギャップ半導体などを材料とする半導体基板に、スイッチング素子が形成されてなる。スイッチング素子は、半導体基板の板厚方向に主電流を流すように縦型構造をなしている。ワイドバンドギャップ半導体としては、たとえばシリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)、ダイヤモンドがある。半導体素子33は、パワー素子、半導体チップなどと称されることがある。
【0044】
一例として本実施形態の半導体素子33は、SiCを材料とする半導体基板に、上記したnチャネル型のMOSFET13およびFWD14が形成されてなる。MOSFET13は、半導体素子33(半導体基板)の板厚方向に主電流が流れるように縦型構造をなしている。半導体素子33は、自身の板厚方向の両面に、主電極を有している。具体的には、図4に示すように、半導体素子33のそれぞれは、一面にドレイン電極33Dを有し、裏面にソース電極33Sを有している。ドレイン電極33Dが第1主電極に相当し、ソース電極33Sが第2主電極に相当する。ドレイン電極33Dは、一面のほぼ全域に形成されている。ソース電極33Sは、裏面の一部分に形成されている。以下では、ドレイン電極33Dおよびソース電極33Sを、主電極33D,33Sと示すことがある。
【0045】
主電流は、ドレイン電極33Dとソース電極33Sとの間に流れる。半導体素子33は、ソース電極33Sが形成された裏面に、信号用の電極であるパッド33Pを有している。半導体素子33は、その板厚方向がZ方向に略平行となるように配置されている。本実施形態の半導体素子33は、直列回路12のハイサイド側のスイッチング素子を提供する2つの半導体素子33Hと、直列回路12のローサイド側のスイッチング素子を提供する2つの半導体素子33Lを含んでいる。半導体素子33H,33Lは、Y方向に並んで配置されている。2つの半導体素子33Hは、X方向に並んで配置されている。同様に、2つの半導体素子33Lは、X方向に並んで配置されている。
【0046】
4つの半導体素子33は、ひとつの直列回路12の4つのスイッチング素子を提供する。半導体モジュール30は、ひとつの直列回路12を構成するスイッチング素子の数に応じた半導体素子33を備える。直列回路12を構成するスイッチング素子が2つの場合、半導体モジュール30は、半導体素子33H,33Lをそれぞれひとつ備える。
【0047】
封止体34は、半導体モジュール30を構成する他の要素の一部を封止している。他の要素の残りの部分は、封止体34の外に露出している。封止体34は、半導体素子33、外部接続端子32それぞれの一部などを封止している。外部接続端子32それぞれの他の一部は、封止体34の外に突出している。封止体34は、たとえば樹脂を材料とする。封止体34は、たとえばエポキシ系樹脂を材料としてトランスファモールド法により成形されている。封止体34は、たとえば平面略矩形状をなしている。封止体34は、本体部31の外郭をなしている。
【0048】
封止体34、つまり本体部31は、外郭をなす表面として、一面31aと、Z方向において一面31aとは反対の面である裏面31bを有している。一面31aおよび裏面31bは、たとえば平坦面である。また、一面31aと裏面31bとをつなぐ面である側面31c,31dを有している。側面31cは、Y方向において側面31dとは反対の面である。
【0049】
複数の外部接続端子32は、半導体素子33の主電極33D,33Sに電気的に接続された主端子32P,32N,32Oと、パッド33Pに電気的に接続された信号端子32Sを含んでいる。主端子32Pは、半導体素子33Hのドレイン電極33Dに電気的に接続されている。主端子32Nは、半導体素子33Lのソース電極33Sに電気的に接続されている。主端子32Pは、P端子、高電位電源端子、正極端子などと称されることがある。主端子32Nは、N端子、低電位電源端子、負極端子などと称されることがある。主端子32P,32Nは、コンデンサ50,つまり平滑コンデンサ6に電気的に接続される。主端子32P,32Nは、本体部31の側面31cから外部に突出している。主端子32P,32Nそれぞれの突出部分は、X方向に並んで配置されている。
【0050】
主端子32Oは、半導体素子33Hのソース電極33Sと半導体素子33Lのドレイン電極33Dとの接続点、つまり直列回路12の接続点(中点)に電気的に接続されている。主端子32Oは、本体部31の側面31dから外部に突出している。主端子32Oは、O端子、出力端子、交流端子などと称されることがある。主端子32Oは、たとえば図示しないバスバーを介して、モータジェネレータ3の対応する巻線3aに接続される。
【0051】
信号端子32Sは、本体部31(封止体34)から外部に突出している。たとえば半導体素子33Hのパッド33Pに接続された信号端子32Sは、本体部31の側面31cから突出している。図示を省略するが、半導体素子33Lのパッド33Pに接続された信号端子32Sは、側面31dから突出している。
【0052】
半導体モジュール30の本体部31は、上記した要素以外に、ボンディングワイヤ35、配線部材36,37、導電スペーサ38、および継手部材39を備えている。これらの要素は、半導体素子33と外部接続端子32とを電気的に接続する配線要素である。ボンディングワイヤ35は、信号端子32Sと対応するパッド33Pとを電気的に接続している。
【0053】
配線部材36,37は、半導体素子33の主電極33D,33Sと主端子32P,32N,32Oとを電気的に接続する配線機能を提供する。配線部材36には、半導体素子33H,33Lのドレイン電極33Dが電気的に接続されている。配線部材37には、導電スペーサ38を介して半導体素子33H,33Lのソース電極33Sが電気的に接続されている。配線部材36,37は、半導体素子33の熱を放熱する放熱機能を提供する。配線部材36,37は、Z方向において半導体素子33を挟むように配置される。
【0054】
配線部材36,37は、たとえば金属部材であるヒートシンクでもよいし、絶縁基材の両面に金属体が配置された基板でもよい。ヒートシンクは、リードフレームの一部として提供されてもよい。配線部材36は、半導体素子33Hと半導体素子33Lとを電気的に分離するようにパターニングされている。配線部材37は、半導体素子33Hと半導体素子33Lとを電気的に分離するようにパターニングされている。図示を省略するが、配線部材37のうち、半導体素子33Lのソース電極33Sに接続された配線部分は、図4とは異なる断面においてY方向であって側面31c側に延びている。これにより、主端子32Nが、側面31c側に配置されている。
【0055】
配線部材36,37は、その全体を封止体34により封止してもよいし、一部を本体部31の一面31aおよび裏面31bの少なくとも一方から露出させてもよい。一例として本実施形態では、配線部材36における半導体素子33とは反対側の面が一面31aから露出し、配線部材37における半導体素子33とは反対側の面が裏面31bから露出している。これにより、放熱性を高めることができる。
【0056】
導電スペーサ38は、ソース電極33Sと配線部材37との間に、所定のスペースを確保する。導電スペーサ38は、パッド33Pにボンディングワイヤ35を接続するためのスペースを確保するために、半導体素子33と配線部材37との間に介在している。導電スペーサ38は、半導体素子33のそれぞれに対して個別に配置されている。継手部材39は、配線部材37において半導体素子33Hのソース電極33Sに接続された配線部分と、配線部材37において半導体素子33Lのドレイン電極33Dに接続された配線部分を電気的に接続している。
【0057】
上記した半導体モジュール30は、本体部31の一面31a、つまり半導体素子33のドレイン電極33Dの形成面がベース20の一面20aと対向するように、第1冷却器21上に配置されている。半導体モジュール30と第1冷却器21との間には、熱伝導部材が配置されてもよい。一例として本実施形態では、熱伝導部材70が半導体モジュール30と第1冷却器21との間に介在している。熱伝導部材70は、半導体モジュール30の熱、たとえば半導体素子33の生じた熱を、第1冷却器21に伝達する。熱伝導部材70は、電気絶縁性を有する。一例として本実施形態の熱伝導部材70は、熱伝導グリスである。熱伝導グリスに代えて、熱伝導ゲルを用いてもよい。熱伝導部材70は、TIMと称されることがある。TIMは、Thermal Interface Materialの略称である。
【0058】
図2に示すように、3つの半導体モジュール30は、X方向に並んでいる。つまり、複数の半導体モジュール30は、X方向に沿って横並びで配置されている。一例として本実施形態では、3つの半導体モジュール30が、半導体モジュール30U、半導体モジュール30V、半導体モジュール30Wの順に並んでいる。そして、X方向において、隣り合う半導体モジュール30の側面同士が、所定の間隔を有して対向している。具体的には、半導体モジュール30Uの側面と、半導体モジュール30Vの側面とが対向している。半導体モジュール30Vの側面と、半導体モジュール30Wの側面とが対向している。
【0059】
<第2冷却器>
第2冷却器40は、ベース20(ケース22)を流用せずに設けられている。第2冷却器40は、半導体モジュール30の裏面31b上に配置されている。第2冷却器40は、半導体素子33のソース電極33Sの形成面に対向するように、第1冷却器21とは反対側で半導体モジュール30の本体部31に積層配置されている。第2冷却器40と半導体モジュール30との間には、上記した熱伝導部材70が配置されてもよい。第2冷却器40は、Z方向において第1冷却器21とは反対側から半導体モジュール30を冷却する。第2冷却器40と第1冷却器21とにより、半導体モジュール30をZ方向の両面側から冷却することができる。
【0060】
第2冷却器40は、その内部に流路41を有している。一例として本実施形態の流路41には、導入管24を介して冷媒42が供給される。流路41を流れた冷媒42は、排出管25を介して電力変換装置4の外に排出される。第2冷却器40は、ケース22の収容空間22Sに配置されている。冷媒42は、上記した冷媒212と共通である。
【0061】
一例として本実施形態の第2冷却器40は、第1冷却器21よりも薄い。第2冷却器40は、たとえば全体として扁平形状の管状体となっている。第2冷却器40は、たとえば一対のプレート(金属製薄板)を用いて内部に流路41を有するように構成されている。一対のプレートの少なくとも一方を、プレス加工によってZ方向に膨らんだ形状に加工する。その後、一対のプレートの外周縁部同士を、かしめなどによって固定するとともに、ろう付けなどによって全周で互いに接合する。これにより、一対のプレート間に冷媒42が流通可能な流路41が形成される。
【0062】
流路41は、半導体モジュール30を効果的に冷却するように、平面視において半導体モジュール30それぞれの少なくとも一部と重なるように設けられている。本実施形態の流路41は、平面視において半導体モジュール30それぞれの大部分と重なるように設けられている。流路41は、3つの半導体モジュール30の並び方向、つまりX方向に沿って延びている。流路41は、X方向に延設されている。流路41は、3つの半導体モジュール30をX方向に横切っている。平面視において、流路41は、流路211に内包されている。流路41の延設長さは、流路211の延設長さよりも短い。
【0063】
第2冷却器40は、半導体モジュール30を介して第1冷却器21に積層配置されている。第2冷却器40は、図示しない加圧部材によって、半導体モジュール30とは反対側の面からZ方向に押圧されてもよい。押圧により、第2冷却器40と半導体モジュール30、および、半導体モジュール30と第1冷却器21のそれぞれが、熱伝導良好に保持される。加圧部材は、たとえば加圧プレートと、弾性部材を含み得る。弾性部材は、たとえばゴムなどの弾性変形により加圧力を発生するものや金属製のばねである。弾性部材は、Z方向において加圧プレートと第2冷却器40との間に配置される。加圧プレートをケース22に対して所定位置に固定することにより弾性部材が弾性変形する。弾性変形の反力により、第2冷却器40および半導体モジュール30は、第1冷却器21(ベース20)に押し付けられる。
【0064】
第2冷却器40は、連結管45,46を介して、第1冷却器21に連結されている。連結管45は、第2冷却器40におけるX方向一端付近、具体的には導入管24に近い側の端部付近に連結されている。連結管46は、第2冷却器40における他端付近、具体的には排出管25に近い側の端部付近に連結されている。2つの連結管45,46は、X方向において、導入管24と第1冷却器21との連結位置と、排出管25と第1冷却器21との連結位置との間に配置されている。
【0065】
導入管24から供給される冷媒の一部は、冷媒212として流路211を流れ、排出管25から排出される。冷媒の他の一部は、流路211および連結管45の流路を通じて、流路41に供給される。流路41を流れた冷媒42は、連結管46の流路を通じて流路211に流れ込み、排出管25から排出される。流路211を流れる冷媒212の流量は、流路41を流れる冷媒42の流量よりも大きい。流路211は主流路であり、流路41は流路211から分岐された副流路である。
【0066】
<コンデンサ>
コンデンサ50は、上記した平滑コンデンサ6を提供する。コンデンサ50が、コンデンサ部品に相当する。コンデンサ50は、たとえば図示しないケースと、ケースに収容されたコンデンサ素子などを備えている。図2および図3では、コンデンサ50を簡素化して図示している。
【0067】
一例として本実施形態のコンデンサ素子は、フィルムコンデンサ素子である。コンデンサ素子は、たとえばZ方向を軸にしてフィルムを巻回してなる。コンデンサ素子は、Z方向の両端面に図示しない電極を有している。電極は、メタリコンと称されることがある。コンデンサ50は、正極側の電極に接続されたP端子51Pと、負極側の電極に接続されたN端子51Nを備えている。
【0068】
P端子51PおよびN端子51Nは、板状の金属部材である。P端子51PおよびN端子51Nは、はんだ接合、抵抗溶接、レーザ溶接などにより、対応する電極に接続されている。P端子51PおよびN端子51Nは、コンデンサバスバーなどと称されることがある。図2および図3では、P端子51PおよびN端子51Nのうち、対応する主端子32P,32Nとの接続部を図示している。P端子51PおよびN端子51Nは、平滑コンデンサ6と直流電源2とを電気的に接続するための図示しない接続部を有している。
【0069】
コンデンサ50は、第1冷却器21を構成するベース20の一面20a上に配置されている。本実施形態のコンデンサ50は、ケース22の収容空間22Sに配置されている。コンデンサ50は、半導体モジュール30に対してY方向に横並びで配置されている。コンデンサ50は、平面視においてX方向を長手方向とする平面略矩形状をなしている。
【0070】
P端子51Pの接続部およびN端子51Nの接続部は、Y方向において半導体モジュール30側に引き出されている。P端子51Pの接続部およびN端子51Nの接続部は、インダクタンスを低減すべく板面同士が対向するように配置されている。P端子51Pの接続部およびN端子51Nの接続部は、Pバスバー52PおよびNバスバー52Nとの接続が可能なように、Y方向の延設長さが異なっている。一例として本実施形態では、N端子51Nの接続部が、P端子51Pの接続部の下方に位置している。そして、N端子51Nの接続部は、P端子51Pの接続部よりもY方向に長い。
【0071】
一例として本実施形態では、熱伝導部材70がコンデンサ50とベース20の一面20aとの間に介在している。コンデンサ50は、平面視において第1冷却器21と重ならない位置に配置されている。上記したようにベース20におけるコンデンサ50の搭載位置は、半導体モジュール30の搭載位置に対して凹んでいる。一例として本実施形態のコンデンサ50の側面は、第1冷却器21の側面21aに、熱伝導部材70を介して間接的に接触している。また、コンデンサ50の底面は、ベース20において第1冷却器21に隣接する部分に、熱伝導部材70を介して間接的に接触している。コンデンサ50におけるベース20との接触面は、略平坦である。このように、コンデンサ50は、ベース20、特に第1冷却器21に、熱的に接続されている。
【0072】
コンデンサ50は、Pバスバー52Pと、Nバスバー52Nをさらに備えている。Pバスバー52PおよびNバスバー52Nは、板状の金属部材である。Pバスバー52PおよびNバスバー52Nは、所定の位置関係に保持されている。Pバスバー52PおよびNバスバー52Nは、たとえば図示しない絶縁部材により、所定の位置関係に保持されてもよい。Pバスバー52PとNバスバー52Nとは、インダクタンスを低減すべく、全長の大部分において板面同士が対向するように配置されている。Pバスバー52Pは、半導体モジュール30の主端子32Pとコンデンサ50のP端子51Pとを電気的に接続している。Nバスバー52Nは、半導体モジュール30の主端子32Nとコンデンサ50のN端子51Nとを電気的に接続している。
【0073】
一例として本実施形態のPバスバー52Pは、Z方向に延びる基部521Pと、基部521Pの両端からY方向に延びる延設部522P,523Pを有している。便宜上、延設部522Pの図示を省略しているが、後述の延設部522Nと同様の構成である。延設部522Pは、基部521Pの下端から半導体モジュール30に向けてY方向に延びている。延設部522Pは、主端子32Pに接続されている。延設部523Pは、基部521Pの上端からコンデンサ50に向けてY方向に延びている。延設部523Pは、P端子51Pに接続されている。
【0074】
同様に、Nバスバー52Nは、Z方向に延びる基部521Nと、基部521Nの両端からY方向に延びる延設部522N,523Nを有している。延設部522Nは、基部521Nの下端から半導体モジュール30に向けてY方向に延びている。延設部522Nは、主端子32Nに接続されている。延設部523Nは、基部521Nの上端からコンデンサ50に向けてY方向に延びている。延設部523Nは、N端子51Nに接続されている。
【0075】
Pバスバー52PおよびNバスバー52Nは、はんだ接合、抵抗溶接、レーザ溶接などにより、対応する主端子32P,32Nや端子51P,51Nへの接続が可能である。一例として本実施形態のPバスバー52PおよびNバスバー52Nは、レーザ溶接により、対応するP端子51PおよびN端子51Nに接続されている。レーザ溶接を可能とするために、上層である延設部523Pが貫通孔53を有している。貫通孔53は、下層である延設部523Nを、レーザ溶接するために設けられた開口部である。貫通孔53の数は、ひとつでもよいし、複数でもよい。一例として本実施形態のPバスバー52Pは、3つの貫通孔53を有している。3つの貫通孔53は、図2に示すようにX方向に所定のピッチで設けられている。
【0076】
<回路基板>
回路基板60は、図示を省略するが、樹脂などの絶縁基材に配線が配置された配線基板、配線基板に実装された電子部品、コネクタなどを備えている。実装された電子部品と配線により回路が構成されている。回路基板60には、上記した駆動回路7が構成されている。
【0077】
回路基板60は、Z方向の平面視において、半導体モジュール30と重なるように配置されている。回路基板60は、3つの半導体モジュール30の上方に配置されている。回路基板60には、3つの半導体モジュール30の信号端子32Sが実装されている。一例として本実施形態の回路基板60は、ケース22の収容空間22Sに配置されている。回路基板60は、第2冷却器40の上方に位置している。
【0078】
<信号端子および冷却器の配置>
図4では、便宜上、外部接続端子32のうち、本体部31の側面31c、つまり主端子32P,32Nと共通する側面から封止体34の外に引き出された信号端子32Sのみを示している。図4は、信号端子32S、第1冷却器21、および第2冷却器40の位置関係を示している。
【0079】
図4に示すように、信号端子32Sは屈曲端子である。信号端子32Sは、第1延設部321と、第2延設部322を有している。第1延設部321は、信号端子32Sのうち、ボンディングワイヤ35との接続部位を含む。第1延設部321は、Y方向に延びている。第1延設部321の一部は封止体34により封止され、他の一部は側面31cから外部に突出している。第1延設部321は、コンデンサ50に向けて延びている。
【0080】
第2延設部322は、第1延設部321に連なっている。第2延設部322は、第1延設部321に対して屈曲し、Z方向に延びている。第2延設部322は、第1延設部321の端部から上方に延びている。第2延設部322は、Y方向において第2冷却器40と対向している。
【0081】
ここで、第1冷却器21のY方向の長さをL1、第2冷却器40のY方向の長さをL2とする。また、Y方向において、信号端子32Sの第2延設部322と第1冷却器21のコンデンサ50側の端部との間隔をD1、第2延設部322と第2冷却器40のコンデンサ50側の端部との間隔をD2とする。電力変換装置4は、長さL1,L2、間隔D1,D2が、下記の関係を満たすように構成されている。
【0082】
図4に示すように、第2冷却器40の長さL2は、第1冷却器21の長さL1よりも短い。さらに、間隔D2は、間隔D1よりも短い。一例として本実施形態の第1冷却器21は、Y方向において半導体モジュール30の本体部31よりも長い。第1冷却器21は、側面31cよりも外側に張り出している。第2冷却器40は、Y方向において本体部31よりも短い。第2冷却器40は、側面31cに対して凹んでいる。
【0083】
<第1実施形態のまとめ>
本実施形態の電力変換装置4によれば、Y方向において、第2冷却器40の長さL2が、第1冷却器21の長さL1よりも短い。また、屈曲端子である信号端子32Sの第2延設部322と第2冷却器40との間隔D2が、第2延設部322と第1冷却器との間隔D1よりも短い。このように、Y方向において第2冷却器40を第1冷却器21よりも短くし、その上で信号端子32S(屈曲端子)の第2延設部322を第2冷却器40に近づけている。これにより、コンデンサ50(平滑コンデンサ6)を、信号端子32Sとの干渉を避けつつ半導体モジュール30の本体部31に近づけることができる。よって、半導体素子33とコンデンサ50とをつなぐ配線のインダクタンスを低減することができる。
【0084】
上記したように、信号端子32Sの第2延設部322を第2冷却器40に近づけるため、電力変換装置4のY方向の体格を小型化することができる。また、ドレイン電極33D側の第1冷却器21を長くし、ソース電極33S側の第2冷却器40を短くする。つまり電極面積が大きく、電極から冷却器までの伝熱経路も短い第1冷却器21側を長くする。よって、第2冷却器40を短くしながらも、放熱性を確保することができる。
【0085】
信号端子32Sは、少なくとも上記したD2<D1の関係を満たせばよい。一例として本実施形態の信号端子32Sは、主端子32P,32Nとともに、互いに共通する側面31cから封止体34の外に突出している。信号端子32Sは、封止体34の外で屈曲している。このような構成において、信号端子32Sは、上記したD2<D1の関係を満たしている。つまり、第2延設部322を、側面31cに近づけている。よって、コンデンサ50を、本体部31に近づけて配置することができる。
【0086】
第1冷却器21の長さL1は、少なくとも第2冷却器40の長さL2よりも長ければよい。Y方向において、第1冷却器21は、本体部31とほぼ等しい長さでもよいし、本体部31よりも短い長さとしてもよい。一例として本実施形態の第1冷却器21は、Y方向において本体部31よりも長い。第1冷却器21は、本体部31の側面31cに対して張り出している。そして、主端子32P,32Nは、Z方向において第1冷却器21を構成するベース20の部分に対向している。つまり、主端子32P,32Nと第1冷却器21とが対向している。ベース20に生じる渦電流による磁束打消し効果によって、インダクタンスをさらに低減することができる。また、半導体モジュール30の放熱性を高めることができる。
【0087】
特に主端子32P,32Nの板面がベース20に対向しているため、インダクタンス低減の効果を高めることができる。また、Pバスバー52PおよびNバスバー52Nも、Z方向において第1冷却器21を構成するベース20の部分に対向している。よって、インダクタンスをさらに低減することができる。Pバスバー52PおよびNバスバー52Nの板面がベース20に対向しているため、インダクタンス低減の効果を高めることができる。
【0088】
主端子32P,32N,32Oの配置は、特に限定されない。たとえば主端子32P,32N,32Oが、本体部31の互いの共通する面から突出する構成としてもよい。一例として本実施形態では、コンデンサ50に接続される主端子32P,32Nが本体部31の側面31cから突出し、モータジェネレータ3に接続される主端子32Oが側面31dから突出している。このように、主端子32Oが、主端子32P,32Nとは異なる面から突出している。よって、主端子32P,32Nとコンデンサ50とをつなぐ配線の引き回しを簡素化し、インダクタンスを低減することができる。また、正極端子である主端子32Pと負極端子である主端子32Nとの並設により、インダクタンスを低減することができる。
【0089】
電力変換装置4は、コンデンサ50を備えない構成としてもよい。たとえばベース20は、第1冷却器21を構成する部分のみを有してもよい。一例として本実施形態の電力変換装置4は、平滑コンデンサ6を提供するコンデンサ50を備えている。よって、コンデンサ50を備えた構成において、上記した効果を奏することができる。また、コンデンサ50は、通電により発熱する発熱部品である。コンデンサ50は、Y方向において半導体モジュール30と並んでいる。コンデンサ50は、熱伝導部材70を介してベース20に接触している。このように、コンデンサ50がベース20に熱的に接続されているため、コンデンサ50の熱をベース20に逃がすことができる。よって、コンデンサ50の体格を小型化、ひいては電力変換装置4の体格を小型化することができる。
【0090】
特に本実施形態では、コンデンサ50の側面が、熱伝導部材70を介して第1冷却器21の側面21aに接触している。よって、コンデンサ50の生じた熱を効果的に逃がす、つまりコンデンサ50を効果的に冷却することができる。ベース20においてコンデンサ50の搭載部分を凹ませているため、電力変換装置4のZ方向の体格を小型化、つまり低背化することができる。また、コンデンサ50の底面が、熱伝導部材70を介して第1冷却器21に隣接するベース20の部分に接触している。これによっても、コンデンサ50の生じた熱を効果的に逃がすことができる。
【0091】
半導体素子33の配置は、特に限定されない。Z方向において、半導体素子33を、本体部31の中央付近に配置してもよいし、第2冷却器40側に偏って配置してもよい。一例として本実施形態の半導体素子33は、Z方向において第2冷却器40よりも第1冷却器21に近い位置に配置されている。半導体素子33は、第1冷却器21側に偏って配置されている。これにより、長さL1の長い第1冷却器21と半導体素子33との間の熱抵抗を小さくすることができる。よって、放熱性を高めることができる。
【0092】
<変形例>
発熱部品であるコンデンサ50が、間接的にベース20に接触する例を示したが、これに限定されない。コンデンサ50が、熱伝導部材70を介さずに、直接的にベース20に接触する構成としてもよい。コンデンサ50の一部が、第1冷却器21上に配置されてもよい。
【0093】
コンデンサ50におけるベース20との接触面が略平坦である例を示したが、これに限定されない。たとえば図5に示すように、コンデンサ50の側面50aが、凹凸を有してもよい。このように接触面に凹凸を設けることで、接触面積を増加させ、放熱性を高めることができる。図5では、第1冷却器21の側面21aを側面50aに倣う凹凸形状としている。これにより、熱伝導部材70が局所的に厚くなるのを抑制することができる。なお、凹凸を有する側面50aに対して、側面21aを略平坦な面としてもよい。コンデンサ50の底面に凹凸を設けてもよい。
【0094】
ベース20に直接的または間接的に接触する発熱部品は、コンデンサ50に限定されない。たとえば図6に示すように、相電流を検出する電流センサ80でもよい。電流センサ80は、主端子32Oと巻線3aとをつなぐ配線であるOバスバー81に流れる電流を検出する。一例として図6では、電流センサ80の側面が、熱伝導部材70を介して第1冷却器21の側面21bに接触している。よって、電流センサ80の生じた熱を効果的に逃がすことができる。また、電流センサ80の底面が、熱伝導部材70を介して第1冷却器21に隣接するベース20の部分に接触している。これによっても、電流センサ80の生じた熱を効果的に逃がすことができる。電流センサ80が、熱伝導部材70を介さずに、直接的にベース20に接触する構成としてもよい。電力変換装置4が、発熱部品として、コンデンサ50と電流センサ80の両方を備えてもよい。
【0095】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、屈曲端子として信号端子を備えていた。これに代えて、屈曲端子として出力端子を備えてもよい。
【0096】
図7は、本実施形態に係る電力変換装置4において、主端子32O(出力端子)、第1冷却器21、および第2冷却器40の位置関係を示している。図7は、図4に対応している。図7では、便宜上、半導体モジュール30の本体部31を簡素化して図示している。また、外部接続端子32のうち、主端子32Oのみを示している。
【0097】
図7に示すように、主端子32Oは屈曲端子である。主端子32Oは、先行実施形態に示した信号端子32S同様、第1延設部321と、第2延設部322を有している。第1延設部321は、主端子32Oのうち、半導体素子33Hのソース電極33Sと半導体素子33Lのドレイン電極33Dとの接続点との接続部位を含む。第1延設部321は、たとえば半導体素子33Hのソース電極33Sが電気的に接続された配線部材37に接続されている。第1延設部321は、Y方向に延びている。第1延設部321の一部は封止体34により封止され、他の一部は側面31cから外部に突出している。主端子32Oは、図示しない主端子32P,32Oとともに、側面231cから突出している。第1延設部321は、コンデンサ50に向けて延びている。
【0098】
第2延設部322は、第1延設部321に連なっている。第2延設部322は、第1延設部321に対して屈曲し、Z方向に延びている。第2延設部322は、第1延設部321の端部から上方に延びている。第2延設部322は、Y方向において第2冷却器40と対向している。
【0099】
図7に示すように、第2冷却器40の長さL2は、第1冷却器21の長さL1よりも短い。さらに、第2延設部322と第2冷却器40との間隔D2は、第2延設部322と第1冷却器21との間隔D1よりも短い。一例として本実施形態の第1冷却器21は、Y方向において半導体モジュール30の本体部31よりも長い。第1冷却器21は、側面31cよりも外側に張り出している。第2冷却器40は、Y方向において本体部31よりも短い。第2冷却器40は、側面31cに対して凹んでいる。
【0100】
<第2実施形態のまとめ>
本実施形態の電力変換装置4によれば、Y方向において第2冷却器40を第1冷却器21よりも短くし、その上で主端子32O(屈曲端子)の第2延設部322を第2冷却器40に近づけている。これにより、コンデンサ50(平滑コンデンサ6)を、主端子32Oとの干渉を避けつつ半導体モジュール30の本体部31に近づけることができる。よって、半導体素子33とコンデンサ50とをつなぐ配線のインダクタンスを低減することができる。また、電力変換装置4のY方向の体格を小型化することができる。第2冷却器40を短くしながらも、放熱性を確保することができる。
【0101】
側面31cから突出する主端子32O(屈曲端子)は、先行実施形態に示した構成のうち、主端子32P,32Nとは反対の面から突出する主端子32Oを前提とする構成を除いた、残りの構成との組み合わせが可能である。屈曲端子として、本実施形態に示した主端子32Oと先行実施形態に示した信号端子32Sの両方を備える構成としてもよい。
【0102】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、屈曲端子および主端子32P,32Nが共通の側面31cから突出していた。これに代えて、屈曲端子が第2冷却器40側の裏面31bから突出する構成としてもよい。
【0103】
図8は、本実施形態に係る電力変換装置4において、信号端子32S、第1冷却器21、および第2冷却器40の位置関係を示している。図8は、図4に対応している。図8では、図7同様、半導体モジュール30の本体部31を簡素化して図示している。また、外部接続端子32のうち、上アーム側の信号端子32Sのみを示している。
【0104】
図示しない半導体素子33Hのパッド33Pに接続された信号端子32Sは、側面31cではなく、裏面31bから突出している。第1延設部321は、封止体34によって封止されている。第2延設部322の一部は封止体34によって封止され、他の一部は裏面31bから封止体34の外に突出している。第2延設部322は、図示しない配線部材37(図4参照)におけるコンデンサ50側の端面と本体部31の側面31cとの間を通って、裏面31bから突出している。その他の構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0105】
<第3実施形態のまとめ>
本実施形態の電力変換装置4も、先行実施形態に記載した構成同様、L2<L1、且つ、D2<D1の関係を満たしている。つまり、Y方向において第2冷却器40を第1冷却器21よりも短くし、その上で信号端子32S(屈曲端子)の第2延設部322を第2冷却器40に近づけている。よって、半導体素子33とコンデンサ50とをつなぐ配線のインダクタンスを低減することができる。また、電力変換装置4のY方向の体格を小型化することができる。第2冷却器40を短くしながらも、放熱性を確保することができる。特に、

裏面31bから突出する信号端子32Sは、先行実施形態に示した構成のうち、主端子32P,32Nと共通する側面31cから突出する信号端子32S(屈曲端子)を前提とする構成を除いた、残りの構成との組み合わせが可能である。
【0106】
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、屈曲端子の第2延設部322と第2冷却器40との間には他の部材が配置されず、空気が存在していた。これに代えて、屈曲端子の第2延設部322と第2冷却器40との間に、絶縁部材が配置されてもよい。
【0107】
図9は、本実施形態に係る電力変換装置4において、信号端子32S、第1冷却器21、および第2冷却器40の位置関係を示している。図9は、図4に対応している。図9では、図7同様、半導体モジュール30の本体部31を簡素化して図示している。また、外部接続端子32のうち、上アーム側の信号端子32Sのみを示している。
【0108】
信号端子32Sは、絶縁部材90によって被覆されている。絶縁部材90は、被覆樹脂である。絶縁部材90は、信号端子32Sのうち、少なくとも第2延設部322における第2冷却器40との対向部分およびその近傍部分を被覆している。一例として本実施形態の絶縁部材90は、信号端子32Sのうち、ボンディングワイヤ35や回路基板60との接続部分を除く部分を覆っている。絶縁部材90は、Y方向において第2延設部322と第2冷却器40との間に配置されている。その他の構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0109】
<第4実施形態のまとめ>
本実施形態の電力変換装置4によれば、第2延設部322と第2冷却器40との間に絶縁部材90が介在するため、第2延設部322と第2冷却器40との間隔D2をさらに狭めることができる。つまりコンデンサ50を、半導体モジュール30の本体部31に対してさらに近づけることができる。よって、インダクタンスをさらに低減することが可能である。また、電力変換装置4のY方向の体格を小型化することが可能である。
【0110】
<変形例>
絶縁部材90として被覆樹脂の例を示したが、これに限定されない。ポッティングなどによって、第2延設部322と第2冷却器40との間に絶縁部材90を設けてもよい。電気絶縁性の材料を用いて所定形状に成形した絶縁部材90を、本体部31の裏面31b上に固定(たとえば接着固定)してもよい。屈曲端子として主端子32Oを備える構成において、第2延設部322と第2冷却器40との間に絶縁部材90を設けてもよい。屈曲端子が裏面31bから突出する構成において、第2延設部322と第2冷却器40との間に絶縁部材90を設けてもよい。
【0111】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0112】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0113】
ある要素または相が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の相に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在相が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または相に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在相は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0114】
空間的に相対的な用語「内」、「外」、「裏」、「下」、「低」、「上」、「高」などは、図示されているような、ひとつの要素または特徴の他の要素または特徴に対する関係を説明する記載を容易にするためにここでは利用されている。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用または操作中の装置の異なる向きを包含することを意図することができる。例えば、図中の装置をひっくり返すと、他の要素または特徴の「下」または「真下」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、用語「下」は、上と下の両方の向きを包含することができる。この装置は、他の方向に向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、この明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【0115】
車両の駆動システム1は、上記した構成に限定されない。たとえば、モータジェネレータ3をひとつ備える例を示したが、これに限定されない。複数のモータジェネレータを備えてもよい。
【0116】
電力変換装置4が、電力変換回路としてインバータ5を備える例を示したが、これに限定されない。たとえば、複数のインバータを備える構成としてもよい。少なくともひとつのインバータと、コンバータを備える構成としてもよい。
【0117】
半導体モジュール30の数は、上記した例に限定されない。たとえば、ひとつの半導体モジュール30が6つのアーム10H,10Lを提供してもよい。ひとつの半導体モジュール30がひとつのアーム、つまりひとつの上アーム10Hまたはひとつの下アーム10Lを提供してもよい。
【0118】
たとえば半導体モジュール30は、ひとつのアームを構成するひとつの半導体素子33を備えた構成としてもよい。上アーム10Hを構成する半導体モジュール30のドレイン電極33Dに接続された主端子が、Pバスバー52Pに接続される。下アーム10Lを構成する半導体モジュール30のソース電極33Sに接続された主端子が、Nバスバー52Nに接続される。上アーム10Hを構成する半導体モジュール30のソース電極33Sに接続された主端子と、下アーム10Lを構成する半導体モジュール30のドレイン電極33Dに接続された主端子が、Oバスバー81に接続される。
【0119】
電力変換装置4は、少なくとも、第1冷却器21を有するベース20と、半導体モジュール30と、第2冷却器40を備えればよい。上記した電力変換装置4からコンデンサ50を排除した構成としてもよい。電力変換装置4から回路基板60を排除した構成としてもよい。
【0120】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0121】
<技術的思想1>
第1冷却器(21)と、
前記第1冷却器に対向する一面に第1主電極が形成され、前記一面とは反対の裏面に第2主電極および信号用のパッドが形成された半導体素子(33)を含む本体部(31)と、前記半導体素子に電気的に接続された複数の外部接続端子(32)と、を有し、前記第1冷却器に積層配置された半導体モジュール(30)と、
前記裏面に対向するように、前記第1冷却器とは反対側で前記半導体モジュールに対して積層配置された第2冷却器(40)と、
を備え、
前記半導体モジュール、前記第1冷却器、および前記第2冷却器の積層方向に直交する一方向において、前記第2冷却器の長さは、前記第1冷却器の長さよりも短く、
複数の前記外部接続端子は、前記一方向に延びる部分を有し、平滑コンデンサに電気的に接続される主端子(32P,32N)と、前記一方向であって前記半導体素子に対して前記主端子と同じ側に延びる第1延設部(321)、および、前記第1延設部に対して屈曲して前記積層方向に延び、前記一方向において前記第2冷却器と対向する第2延設部(322)を有する屈曲端子(32S,32O)と、を含み、
前記一方向において、前記第2延設部と前記第2冷却器との間隔が、前記第2延設部と前記第1冷却器との間隔よりも短い、電力変換装置。
【0122】
<技術的思想2>
前記屈曲端子は、信号端子(32S)である、技術的思想1に記載の電力変換装置。
【0123】
<技術的思想3>
前記本体部は、前記半導体素子を封止する封止体(34)を含み、
前記主端子および前記屈曲端子は、前記封止体の互いに共通する側面から前記封止体の外に突出している、技術的思想1または技術的思想2に記載の電力変換装置。
【0124】
<技術的思想4>
前記本体部は、前記半導体素子を封止する封止体(34)を含み、
前記屈曲端子は、前記封止体における前記第2冷却器との対向面から前記封止体の外に突出している、技術的思想1または技術的思想2に記載の電力変換装置。
【0125】
<技術的思想5>
前記一方向において、前記第1冷却器は前記本体部よりも長く、
前記主端子は、前記積層方向において前記第1冷却器を構成するベース(20)と対向している、技術的思想3または技術的思想4に記載の電力変換装置。
【0126】
<技術的思想6>
前記主端子とは別の前記外部接続端子である出力端子(32O)を備え、
前記主端子は、前記平滑コンデンサに正極に電気的に接続される正極端子(32P)と、前記平滑コンデンサの負極に電気的に接続される負極端子(32N)と、を含み、
前記正極端子および前記負極端子は、前記封止体の互いに共通する側面から前記封止体の外に突出し、前記出力端子は前記正極端子および前記負極端子とは異なる面から前記封止体の外に突出している、技術的思想3~5いずれかひとつに記載の電力変換装置。
【0127】
<技術的思想7>
前記第2延設部と前記第2冷却器との間に配置された絶縁部材(90)を備える、技術的思想3~6いずれかひとつに記載の電力変換装置。
【0128】
<技術的思想8>
前記第1冷却器を構成するベース(20)に、直接的または熱伝導部材を介して間接的に接触する発熱部品(50,80)を備える、技術的思想1~7いずれかひとつに記載の電力変換装置。
【0129】
<技術的思想9>
前記発熱部品は、前記一方向において前記半導体モジュールと並んで配置され、前記平滑コンデンサを提供するコンデンサ部品(50)である、技術的思想8に記載の電力変換装置。
【0130】
<技術的思想10>
前記発熱部品は、前記ベースとの接触面に凹凸を有する、技術的思想8または技術的思想9に記載の電力変換装置。
【0131】
<技術的思想11>
前記半導体素子は、前記積層方向において前記第2冷却器よりも前記第1冷却器に近い、技術的思想1~10いずれかひとつに記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0132】
1…駆動システム、2…直流電源、3…モータジェネレータ、4…電力変換装置、5…平滑コンデンサ、6…インバータ、7…駆動回路、8…Pライン、9…Nライン、10…上下アーム回路、10H…上アーム、10L…下アーム、11…出力ライン、12…直列回路、13…MOSFET、14…FWD、20…ベース、20a…一面、21…第1冷却器、21a,21b…側面、211…流路、212…冷媒、22…ケース、22S…収容空間、23…側壁、24…導入管、25…排出管、30,30U,30V,30W…半導体モジュール、31…本体部、31a…一面、31b…裏面、31c,31d…側面、311…中央領域、312…端領域、32…外部接続端子、32N,32P,32O…主端子、32S…信号端子、321…第1延設部、322…第2延設部、33,33H,33L…半導体素子、33D…ドレイン電極、33S…ソース電極、33P…パッド、34…封止体、35…ボンディングワイヤ、36,37…配線部材、38…導電スペーサ、39…継手部材、40……第2冷却器、41…流路、42…冷媒、45,46…連結管、50…コンデンサ、50a…側面、51P…P端子、52P…Pバスバー、52N…Nバスバー、521P,521N…基部、522P,522N…延設部、523P,523N…延設部、53…貫通孔、60…回路基板、70…熱伝導部材、80…電流センサ、81…Oバスバー、90…絶縁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9