(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117428
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ろ過装置及びろ過方法
(51)【国際特許分類】
B01D 24/16 20060101AFI20240822BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20240822BHJP
【FI】
B01D23/10 C
C02F1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023535
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】國谷 正
(72)【発明者】
【氏名】奥田 健介
(72)【発明者】
【氏名】池坂 武樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA01
4D116BA06
4D116BA07
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4D116FF01A
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4D116QC02
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4D116RR01
4D116RR04
4D116RR14
4D116VV08
4D116VV09
(57)【要約】
【課題】スクリーンが目詰まりすることを抑制するろ過装置及びろ過方法を提供すること。
【解決手段】
ろ過装置10は、被処理水が上昇方向に流れる流路11と、流路11内に設けられた、複数のろ過部材14を有するろ材層と、流路11内であってろ材層よりも上流側に設けられ流路11に対して交差するろ過面を有するスクリーン13と、流路11内であってスクリーン13よりも上流側に設けられた空気供給手段15と、を備え、空気供給手段15は、スクリーン13を流路方向からみてスクリーン13の目幅Lよりも大きな気泡がスクリーン13の下面の全域に分散して滞留し続けるように、空気を連続的又は断続的に供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水が上昇方向に流れる流路と、
前記流路内に設けられた、複数のろ過部材を有するろ材層と、
前記流路内であって前記ろ材層よりも上流側に設けられ前記流路に対して交差するろ過面を有するスクリーンと、
前記流路内であって前記スクリーンよりも上流側に設けられた空気供給手段と、を備え、
前記空気供給手段は、前記スクリーンを流路方向からみて前記スクリーンの目幅よりも大きな気泡が前記スクリーンの下面の全域に分散して滞留し続けるように、空気を連続的又は断続的に供給することを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
前記被処理水の流速は、0.012m/sec以下となるように調整される、請求項1に記載のろ過装置。
【請求項3】
前記空気供給手段は、前記スクリーンの1m2当たりの流量が14.0~142.0L/minとなるように空気を連続的に供給する、または、前記スクリーンの1m2当たりの流量が140.0L/min以上となるように空気を間欠的に供給する請求項1に記載のろ過装置。
【請求項4】
前記流路内であって前記スクリーンより上流側かつ前記空気供給手段よりも下流側に、前記空気供給手段から供給される気泡を衝突させて周囲に分散させる気泡先行衝突部材が配置されている請求項1に記載のろ過装置。
【請求項5】
前記スクリーンの目幅が4mm以下である請求項1に記載のろ過装置。
【請求項6】
前記スクリーンは水平方向に対して傾斜するように配置されている請求項1に記載のろ過装置。
【請求項7】
前記スクリーンの下面に滞留する気泡を画像認識可能な画像認識装置と、
前記画像認識装置により認識された画像データに基づいて前記空気供給手段の空気供給量を制御する制御装置とを備える請求項1に記載のろ過装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のろ過装置を用いて、前記スクリーンを流路方向からみて前記スクリーンの目幅よりも大きな気泡が前記スクリーンの下面の全域に分散して滞留し続けるように、前記空気供給手段から空気を連続的又は断続的に供給しつつ、前記被処理水を前記流路の下方から上方に向けて、前記スクリーン及び前記ろ材層を通過するようにろ過処理し、所定運転間隔でろ過処理を中断して逆洗浄処理を行うことを特徴とする被処理水のろ過方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、上水及び下水等における被処理水のろ過処理を行うことが可能なろ過装置及びろ過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水に対して浮遊性を有するろ材を用いてろ材層を形成し、被処理水のろ過処理を行うろ過装置が知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、上部及び下部にろ材流失防止用のスクリーンが設けられ、上部及び下部のスクリーン間に浮遊性のろ材が充填されたろ材層を備えるろ過装置が開示されている。当該ろ過装置には、下部のスクリーンよりも下方に原水流入口が設けられており、原水流入口から供給された原水は、下部のスクリーン、ろ材層、上部のスクリーンの順に通過することにより、ろ過処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のろ過装置では、被処理水に含まれるし渣類の繊維状物及びオイルボール等の粘性体等からなる汚れ物質が下部のスクリーンに付着して、下部のスクリーンを目詰まりさせるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、スクリーンが目詰まりすることを抑制するろ過装置及びろ過方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のろ過装置は、
被処理水が上昇方向に流れる流路と、
前記流路内に設けられた、複数のろ過部材を有するろ材層と、
前記流路内であって前記ろ材層よりも上流側に設けられ前記流路に対して交差するろ過面を有するスクリーンと、
前記流路内であって前記スクリーンよりも上流側に設けられた空気供給手段と、を備え、
前記空気供給手段は、前記スクリーンを流路方向からみて前記スクリーンの目幅よりも大きな気泡が前記スクリーンの下面の全域に分散して滞留し続けるように、空気を連続的又は断続的に供給することを特徴とする。
【0008】
本発明のろ過装置によれば、スクリーンの目幅よりも大きな気泡がスクリーンの下面の全域に分散して滞留し続けることにより、ろ過性能を維持しながら、し渣類の繊維状物やオイルボール等の粘性体等からなる汚れ物質が、スクリーンに付着するのを防止し、逆洗浄時に上記汚れ物質をその他の固形物と共に系外へ排出することができる。これにより、スクリーンの目詰まりを抑制して、スクリーンの洗浄などのメンテナンスを行う回数を減らすことができる。
【0009】
本発明のろ過装置において、前記被処理水の流速は、0.012m/sec以下となるように調整されることが好ましい。
【0010】
被処理水の流速が0.012m/sec以下であることにより、空気供給手段から供給された気泡がスクリーンを通過しにくくなり、スクリーンの下面に気泡が滞留しやすくすることができる。
【0011】
本発明のろ過装置において、前記空気供給手段は、スクリーンの1m2当たりの流量が14.0~142.0L/minとなるように空気を連続的に供給する、または、前記スクリーンの1m2当たりの流量が140.0L/min以上となるように空気を間欠的に供給することが好ましい。
【0012】
上記流量で気泡を供給することにより、気泡がスクリーンの下面の全域に分散して滞留し続きやすくすることができる。
【0013】
本発明のろ過装置において、前記流路内であって前記スクリーンより上流側かつ前記空気供給手段よりも下流側に、前記空気供給手段から供給される気泡を衝突させて周囲に分散させる気泡先行衝突部材が配置されていることが好ましい。
【0014】
空気供給手段から供給される気泡が気泡先行衝突部材に衝突して周囲に分散するので、気泡をスクリーンの下面の全域に分散させて供給することができる。
【0015】
本発明のろ過装置において、前記スクリーンの目幅は4mm以下であることが好ましい。
【0016】
これによれば、被処理水に混在する固形物や汚れ物質を効果的にろ過できるとともに、スクリーンの下面に気泡が滞留しやすくすることができる。
【0017】
本発明のろ過装置において、前記スクリーンは水平方向に対して傾斜するように配置されていることが好ましい。
【0018】
被処理水に混在する固形物や汚れ物質を効果的にろ過できるとともに、スクリーンの下面に気泡が滞留しやすくすることができる。
【0019】
本発明のろ過装置において、前記スクリーンの下面に滞留する気泡を画像認識可能な画像認識装置と、前記画像認識装置により認識された画像データに基づいて前記空気供給手段の空気供給量を制御する制御装置とを備えることが好ましい。
【0020】
画像認識装置によって、スクリーンの下面に滞留する気泡を画像認識し、スクリーン面積に対する気泡で覆われた面積の割合が適切な比率で存在するように、空気供給手段の空気供給量を制御することができる。
【0021】
また、本発明のろ過方法は、上記に記載のろ過装置を用いて、前記スクリーンを流路方向からみて前記スクリーンの目幅よりも大きな気泡が前記スクリーンの下面の全域に分散して滞留し続けるように、前記空気供給手段から空気を連続的又は断続的に供給しつつ、前記被処理水を前記流路の下方から上方に向けて、前記スクリーン及び前記ろ材層を通過するようにろ過処理し、所定運転間隔でろ過処理を中断して逆洗浄処理を行うことを特徴とする。
【0022】
上記ろ過方法によれば、スクリーンの目幅よりも大きな気泡がスクリーンの下面の全域に分散して滞留し続けることにより、ろ過性能は維持しながら、し渣類の繊維状物やオイルボール等の粘性体等からなる汚れ物質が、スクリーンに付着するのを防止し、逆洗浄時に上記汚れ物質をその他の固形物と共に系外へ排出することができる。これにより、スクリーンの目詰まりを抑制して、スクリーンの洗浄などのメンテナンスを行う回数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明によるろ過装置の一実施形態を示す側面図である。
【
図2】下部スクリーンの一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】本発明によるろ過装置の他の実施形態を示す側面図である。
【
図4】同実施形態における画像認識装置から撮像された画像の一例である。
【
図5】同実施形態における画像認識装置、制御装置及び空気供給手段の概略構成を示す説明図である。
【
図6】同制御装置による空気供給手段が供給する空気供給量の制御方法を示すフロー図である。
【
図7】本発明の実施例で用いた試験装置の全体構成を示す説明図である。
【
図8】同実施例で用いた下部スクリーンの一例を示す斜視図である。
【
図9】
図8に示す下部スクリーンの破線枠内の拡大図である。
【
図10】同実施例で用いた下部スクリーンの他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明によるろ過装置の第1実施形態を説明する。
【0025】
図1には、本発明によるろ過装置の一実施形態が示されている。このろ過装置10は、被処理水の導入路51と、隔壁52を介して、該導入路51に隣接して設置された流路11とを有している。導入路51と流路11とは、ろ過装置10の底部で連通しており、被処理水の供給管53を通して導入路51に導入された被処理水は、導入路51の下端部から流路11に流入し、流路11内を下方から上方に流れて、処理水となって排出口54から取出されるようになっている。導入路51の水面W1は、流路11の水面W2より高くなっており、それによって生じる水圧により、流路11内を下方から上方に向けて被処理水が流れるようになっている。なお、流路11の水面W2の高さは、排出口54の高さによって定まることになる。
【0026】
流路11内の上方(下流側、以下同じ)には、上部スクリーン12が設けられ、流路11内の下方(上流側、以下同じ)には、下部スクリーン13が設けられている。この上部スクリーン12と下部スクリーン13との間の空間には、多数の浮遊性のろ過部材14が積層されて、ろ材層が形成されている。また、下部スクリーン13よりも下方には、空気供給手段15と洗浄排水排出部33とが設けられている。
【0027】
空気供給手段15から供給された気泡は、下部スクリーン13の下面に滞留し、下部スクリーン13の下面の全域に分散して滞留し続けるように空気層を形成する。空気層により、し渣類の繊維状物やオイルボール等の粘性体等からなる汚れ物質が、下部スクリーン13に接触しないようにして、当該汚れ物質が下部スクリーン13に付着することを抑制する。
【0028】
図1に示すように、流路11は、下方から上方に被処理水を通水させるための通路であり、本実施形態では、鉛直方向に形成されている。
【0029】
なお、本実施形態では、流路11を鉛直方向に形成したが、流路11は、被処理水が上昇方向に流れるものであればよく、鉛直方向に限定されるものではない。すなわち、水平方向以外の方向であればよく、例えば水平に対して斜め方向に形成されていてもよい。また、流路11は、その一部および/または全体が湾曲形状または屈曲形状に形成されていてもよい。
【0030】
上部スクリーン12は、格子状に形成されており、ろ過部材14よりも小さな複数の角孔を有している。ただし、本発明においては、被処理水をろ過処理する稼働時において、処理水の通過を許容しつつ、ろ過部材14の上方への流出を防止できれば、格子状に形成された孔でもステンレス等の金属板に開けた孔でもよく、角孔以外の丸孔、長孔等でもよい。
【0031】
また、上部スクリーン12は、流路11の断面方向である水平方向で、流路11の全域にわたって形成されている。上部スクリーン12に水平方向に形成されることを要求するのは、被処理水をろ過処理する稼働時において、ろ材層が流路11の断面方向において略均等な厚さ寸法に維持されるようにするためである。従って、このような役割を果たすものであれば、本発明において、上部スクリーン12は水平方向に対して傾斜する方向に形成されたものとしてもよい。
【0032】
下部スクリーン13は、
図2に示すような、適宜間隔で並列配置された複数の線材からなるろ過面を有しており、隣り合う線材同士の間において、ろ過部材14よりも小さな隙間を有している。ただし、本発明においては、上部スクリーン12の上方に貯留された処理水の下向流によりろ材層のろ過部材14を展開させて洗浄するとともに洗浄排水を洗浄排水排出部33から排出する逆洗浄処理時において、洗浄排水の通過を許容しつつ、ろ過部材14の下方への流出を防止できれば、格子状に形成された孔でもステンレス等の金属板に開けた孔でもよく、角孔以外の丸孔、長孔等でもよい。
【0033】
また、下部スクリーン13は、流路11の断面方向である水平方向で、流路11を交差するように流路11の全域にわたって形成されている。下部スクリーン13を水平方向に形成するのは、空気供給手段15から連続的又は断続的に供給された気泡により下部スクリーン13の下面の全域に亘って汚れ物質を接触させない空気層が継続的に形成されるようにするためである。従って、このような役割を果たすものであれば、本発明において、下部スクリーン13は、35度以下の範囲で水平方向に対して傾斜する方向に形成することが可能である。
【0034】
なお、下部スクリーン13の線材の断面は、
図2に示すような三角形状をなしており、底辺を下方に向けて配置されている。このような線材からなるスクリーンを用いることにより、気泡が下部スクリーン13の下面に滞留しやすくすることができると共に、逆洗浄時には洗浄後の排水が下部スクリーン13を上方から下方に通過しやすくすることができる。
【0035】
ろ過部材14は、水より比重の軽い部材であることが好ましい。例えばポリウレタンやポリプロピレン等の樹脂、セラミックス、軽石などで形成されたものを採用することができる。なお、ろ過部材14は、水の比重と同等もしくは重いものであってもよい。
【0036】
また、ろ過部材14の形状としては、十字形状または多角形状等に形成された樹脂を採用することが好ましい。
【0037】
空気供給手段15は、エアポンプ(不図示)から供給された空気を通す空洗管15bを1本有し、空洗管15bに形成された排気口15aから空気を流路11内に供給する。排気口15aから供給された空気は気泡となり、下部スクリーン13の下面に滞留し、空気層を形成するとともに、気泡の一部は被処理水とともに上流へ流れる。
また、排気口15aは、本実施形態では、上方に向かって開口しており、流路11の軸線を中心にして複数個、横に並ぶように形成されている。このことにより、下部スクリーン13の下面全体に均一に気泡を供給することができる。
【0038】
本実施形態では、空洗管15bを1本設けたが、空洗管15bは複数本設けてもよい。また、本実施形態では、排気口15aを上方に向かって開口させたが、下方に向かって開口してもよく、斜め上方または斜め下方に向かって開口してもよい。また、本実施形態では、排気口15aを複数設けたが、排気口15aは1つであってもよい。さらに、排気口15aを流路11の軸線を中心にして横に並ぶように配置したが、下部スクリーン13が水平方向に対して傾斜している場合には、排気口15aの配列の中心が、下部スクリーン13の最も下方に位置する方向に偏位するように配置してもよい。
【0039】
なお、空気供給手段15から供給された気泡は、下部スクリーン13の下面で小径のままその大きさを維持している場合、小径の気泡が下部スクリーン13の全面にわたって分散して滞留し続ける必要がある。空気供給手段15から気泡を連続供給する場合、小径の気泡同士が結合して、気泡の形成→気泡の巨大化→巨大化した気泡の破壊→気泡の形成を繰り返すため、気泡が下部スクリーン13における被処理水の通過を邪魔しないように空気の供給量を調整する必要がある。気泡を間欠供給するようにすれば、気泡は巨大化しなくなり、下部スクリーン13の下面に衝突した気泡は、全方位に拡散、移動しながら下部スクリーン13の全面にわたって分散して滞留し続けることが可能である。下部スクリーン13を傾斜して設ける場合には、その傾斜の最下部付近に空気供給手段15の排気口15aの配列の中心を配するようにすれば、空気供給手段15から供給され下部スクリーン13の下面下部に衝突した気泡は、両側方向及び斜め上方向に拡散、移動しながら下部スクリーン13の全面にわたって分散して滞留し続ける事が可能である。
【0040】
下部スクリーン13の下面での気泡の滞留状態は、気泡の大きさ、下部スクリーン13の目幅L(
図2参照)、空気の供給量、被処理水の流速により制御することができる。スクリーンの目幅Lとは、スクリーンの開口部における最小目開き寸法である。
【0041】
気泡の大きさは、空気供給手段15から供給された気泡が下部スクリーン13に到達した時点で、流路11の軸線方向(流路方向)から見て、スクリーンの目幅Lよりも大きな大きさになるように、制御される。
【0042】
気泡の大きさは、空気供給手段15の排気口15aの大きさまたは空気供給手段15と下部スクリーン13との離間距離、空気供給手段15からの空気供給量によって制御できる。すなわち、排気口15aの大きさを大きくすることで気泡の大きさは大きくなり、排気口15aの大きさを小さくすることで気泡の大きさは小さくなる。また、空気供給手段15と下部スクリーン13との離間距離が長いほど気泡の大きさは大きくなり、空気供給手段15と下部スクリーン13との離間距離が短いほど気泡の大きさは小さくなる。さらに、空気供給手段15からの空気供給量が多いほど気泡の大きさは大きくなり、空気供給手段15からの空気供給量が少ないほど気泡の大きさは小さくなる。
【0043】
例えば、空気供給手段15から供給された気泡は、下部スクリーン13に到達した時点で、流路11の軸線方向から見て、気泡径が約φ10~20mmに調整することが可能である。より具体的には、空気供給手段15の排気口15aの口径φ2~4mm、空気供給手段15と下部スクリーン13との離間距離0~190mm、空気供給手段15からの空気供給量1~10L/minとすることで、気泡径を約φ10~20mmに制御することができる。
【0044】
下部スクリーン13の目幅Lは、4mm以下であることが好ましい。また、下部スクリーン13の目幅Lは3mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。
【0045】
より具体的には、空洗管15bの内径φ2~4mm、かつ、空気供給手段15の流量を10L/minとし連続的または間接的に空気を供給され、下部スクリーン13の直径がφ300mm、かつ、下部スクリーン13の線材が一方向に延在するスリットタイプである場合は、下部スクリーン13の目幅Lが4mm以下であることが好ましい。
【0046】
また、下部スクリーン13を水平方向に対して傾斜するように配置し、後述する気泡先行衝突部材16が下部スクリーン13の下方に配置されている場合は、下部スクリーン13の目幅Lが3mm以下であることが好ましい。
【0047】
さらに、空気供給手段15から供給された空気が下部スクリーン13に到達した時点で気泡径約φ10~20mmになるように空気供給手段15から空気が供給される場合は、下部スクリーン13の目幅Lが1mm以下であることが好ましい。
【0048】
これによれば、被処理水に混在する固形物や汚れ物質を効果的にろ過できるとともに、下部スクリーン13の下面に気泡が滞留しやすくすることができ、下部スクリーン13の下面により効率的に空気層を形成することができる。
【0049】
空気供給手段15から連続的に空気が供給される場合において、空気供給手段15の流量はスクリーン1m2当たり14.0L/min~142.0L/minであることが好ましい。例えば、下部スクリーン13の直径がφ300mmであり、かつ、空気供給手段15が空洗管15bを1本備えており、空洗管15bに開口径φ2~4mmの排気口15aが3~5個設けられている場合は、空気供給手段15から1.0~10.0L/minの空気が連続的に供給されることにより、下部スクリーン13の下面を気泡で覆うのに十分な気泡量を確保することができるとともに、下部スクリーン13の下面により効率的に空気層を形成することができる。
【0050】
空気供給手段15から間欠的に空気が供給される場合において、空気供給手段15の流量はスクリーン1m2当たり140.0L/min以上であることが好ましい。例えば、下部スクリーン13の直径がφ300mmであり、かつ、空気供給手段15が空洗管15bを1本備えており、空洗管15bに開口径φ2~4mmの排気口15aが3~5個設けられている場合は、空気供給手段15から10.0L/min以上の空気が間欠的に供給されることにより、下部スクリーン13の下面を気泡で覆うのに十分な気泡量を確保することができるとともに、下部スクリーン13の下面により効率的に空気層を形成することができる。
【0051】
被処理水の流速は、0.012m/sec以下に調整されることが好ましい。被処理水の流速がこれよりも高い場合には、気泡を下部スクリーン13の下面に滞留させにくくなり、気泡の大部分が被処理水とともに流出してしまう可能性がある。
【0052】
洗浄排水排出部33は、逆洗浄時に使用した洗浄排水を排出するものであり、洗浄排水排出部33には洗浄排水弁34が設けられている。洗浄排水弁34は、逆洗浄時における流路11からの洗浄排水の排出を制御する。洗浄排水弁34は、コントロールユニット(不図示)からの信号を受けて開閉可能となっている。洗浄排水排出部33は、配管35により図示しない洗浄排水槽に接続されている。
【0053】
次に、このろ過装置10を用いた、本発明による被処理水のろ過処理方法の一実施形態を説明する。
本発明において、被処理水としては、例えば上水、下水などが適用される。特に、下水の生物反応槽に至る前段階のろ過処理に好適である。
【0054】
まず、被処理水の供給管53を通して、被処理水を導入路51に導入する。導入路51の水面W1と、流路11の水面W2との水位差によって生じる水圧により、導入路51に導入された被処理水は、導入路51を下降し、その底部で流路11に流入して、流路11を上昇する。
【0055】
流路11には、下部スクリーン13と上部スクリーン12との間に積層された複数のろ過部材14からなるろ材層が設けられているので、被処理水は、上記ろ過層を下方から上方に向けて通過する。
【0056】
一方、空気供給手段15から供給された空気は、気泡となって下部スクリーン13の下面に滞留し、下部スクリーン13の下面の全域に分散して滞留し続けるように空気層を形成する。被処理水のろ過処理は、この状態を維持しつつ実施される。
【0057】
なお、本実施形態では空気供給手段15から連続的に空気を供給したが、下部スクリーン13の下面に気泡を滞留させることができれば、断続的に空気を供給してもよい。
【0058】
所定期間ろ過処理を実施した後、ろ過処理を中断して、洗浄水を流路11の上方から下方に向けて上部スクリーン12、複数のろ過部材14からなるろ材層及び下部スクリーン13を通過させる逆洗浄処理を実施する。
【0059】
なお、逆洗浄処理を行う前に、空気供給手段15から供給される空気量を増加させ、ろ過部材14を気泡で撹拌させる工程を備えてもよい。このことにより、ろ過部材14に付着した汚れ物質が剥離しやすくなり、ろ過部材14の洗浄効率が向上する。
逆洗浄処理は、洗浄排水弁34を開き、洗浄排水排出部33から配管35を通して洗浄排水を排出することによって行う。これによって、ろ過部材14から剥離した汚れ物質や、下部スクリーン13で通過を阻止されて溜まった汚れ物質が、洗浄排水とともに流出するので、ろ過部材14及び下部スクリーン13を清浄化することができる。
【0060】
本発明のろ過装置においては、空気供給手段15から供給された気泡により、汚れ物質が下部スクリーン13に付着することを抑制できる。また、所定運転間隔でろ過処理と逆洗浄処理を繰り返すことにより、下部スクリーン13の近傍に存在する汚れ物質を容易に取り除くことができる。
【0061】
従来のろ過装置では、下部スクリーン13に汚れ物質が付着し固着した場合には、ろ過性能が低下するため、定期的に水抜きしてスクリーン部を人手で洗浄するなどのメンテナンスが必要であった。
しかし、本発明のろ過装置においては、スクリーンの目詰まりを抑制できるため、スクリーンの洗浄などのメンテナンスを行う回数を減らすことができる。
【0062】
第2実施形態のろ過装置10について
図3~6を参照して説明する。なお、本発明の第1実施形態によるろ過装置10と同一の構成については適宜説明を省略する。また、
図3は、
図1における流路11だけを取り出して示す図面である。
図3及び5に示すように、第2実施形態のろ過装置10は、流路11内であって下部スクリーン13と空気供給手段15との間に気泡先行衝突部材16と、画像認識可能な画像認識装置17と、制御装置18(
図5参照)とを有する。
【0063】
気泡先行衝突部材16は、この実施形態では円板状に形成されており、流路11の軸線方向から見た場合において、気泡先行衝突部材16の中心が空気供給手段15の排気口15aの並びの中心と一致する位置に配置されている。そのため、空気供給手段15の排気口15aから排気された気泡は、下部スクリーン13より先行して気泡先行衝突部材16に衝突する。
【0064】
気泡先行衝突部材16に衝突した気泡は、一度、気泡先行衝突部材16の下面に滞留し、その後、気泡先行衝突部材16の外縁から周囲に分散するように、上方に流れていく。そのため、空気供給手段15から供給された気泡を下部スクリーン13の下面の全域に、より均一に分散させることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、気泡先行衝突部材16を円板状に形成したが、矩形状などの多角形状であってもよい。また、下部スクリーン13と空気供給手段15との間に設置可能であれば、流路11の軸線方向への厚みも特に限定されない。また、気泡先行衝突部材16としては、下面が中心部から周縁に向かって高くなるような傾斜面をなしていてもよい。さらに、気泡先行衝突部材16は、下部スクリーン13と離間されてもよく、下部スクリーン13に当接されていてもよい。
【0066】
このろ過装置10は、画像認識装置17と制御装置18とを有することにより空気供給手段15から供給される空気量を最適な数値に調整することができる。
【0067】
すなわち、画像認識装置17は、流路11内であって、下部スクリーン13と気泡先行衝突部材16との間に設けられている。画像認識装置17は、連続的または断続的に、画像または動画を下部スクリーン13の下方から下部スクリーン13に向かって撮像する。
【0068】
図4は撮像した画像の一例である。この画像から下部スクリーン13の下面全域の何%に気泡が存在しているかを把握することができる。
画像認識装置17で認識された画像データは、制御装置18に出力される。
【0069】
図5に示すように、制御装置18は、主に演算処理装置(CPU、プロセッサまたはプロセッサコアにより構成されている)により構成されている。
図4に示すように、制御装置18は、受信部181と、判定部182と、記憶部183と、送信部184とを備える。制御装置18を構成する演算処理装置が、記憶部183から必要なプログラム(ソフトウェア)および/またはデータを読み取り、当該データを対象に当該プログラムにしたがった演算処理を実行することにより、受信部181、判定部182、送信部184のそれぞれの機能を発揮する。
【0070】
受信部181では、画像認識装置17から出力された画像データを受信して、当該画像データを判定部182に送る。
【0071】
記憶部183は、画像認識装置17が撮像した画像から下部スクリーン13の下面全域の何%に気泡が存在しているか判定することのできる判定データを有する。判定データは例えば、複数の画像からなる機械学習データである。
【0072】
判定部182は、画像認識装置17で撮像された画像データと、記憶部183に記憶された判定データから空気供給手段15の空気供給量を増加または減少されるか否かを判定する。
【0073】
図6を用いて、判定部182によって実施される空気供給手段15の空気供給量の調整工程の一例を説明する。
まず、画像データと判定データを比較して、下部スクリーン13の気泡で覆われる面積が下部スクリーンの底面積に対して所定%以上であるか否かを判定する。
【0074】
判定の結果、下部スクリーン13の気泡で覆われる面積が下部スクリーン13の底面積に対して所定%未満であると判定された場合には、送信部184から空気供給手段15に対して、空気供給量を所定量増加させるよう指示が出力され、所定期間後に再度画像データと判定データの比較が行われる。一方、判定の結果、下部スクリーン13の気泡で覆われる面積が下部スクリーン13の底面積に対して所定%以上であると判定された場合には、次のステップに移る。
【0075】
次に、画像データと判定データを比較して、下部スクリーン13の気泡で覆われる面積が下部スクリーン13の底面積に対して所定%以下であるか否かを判定する。
判定の結果、下部スクリーン13の気泡で覆われる面積が下部スクリーン13の底面積に対して所定%を超えると判定された場合には、送信部184から空気供給手段15に対して、空気供給量を所定量減少させるよう指示が出力され、所定期間後に再度画像データと判定データの比較が行われる。一方、判定の結果、下部スクリーン13の気泡で覆われる面積が下部スクリーン13の底面積に対して所定%以下であると判定された場合には、空気供給手段15から供給される空気量の調整工程が終了する。
【0076】
このように、画像認識装置17と制御装置18とを用いることにより、下部スクリーン13の下面に滞留する気泡を画像認識し、下部スクリーン13の底面積に対する気泡で覆われた面積の割合が適切な比率で存在するように、空気供給手段15の空気供給量を制御することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、気泡先行衝突部材16と画像認識装置17、制御装置18とを備えるろ過装置10について説明したが、すべての構成を備える必要はなく、気泡先行衝突部材16だけ、あるいは画像認識装置17及び制御装置18だけの、いずれか一方のみの構成を備えてもよい。
【実施例0078】
<試験例>
[試験装置]
図7に示されている原水槽20と、ろ過装置10と、洗浄排水槽30と、を備えたろ過設備を用いた。
【0079】
ろ過装置10は、直径φ300mm、断面積0.07m2、高さ800mmの槽を用いた。また、被処理水は水道水とし、ろ過装置10への流入速度は、0.012m/S、ろ過速度は1.000m/Dとした。
空気供給手段15は、コンプレッサ15Aから空気圧0.12MPa、流量1L/min~10L/minで流路11内に空気を供給するものを用いた。
【0080】
原水槽20は、給水管40と、洗浄排水槽30とから被処理水の供給を受ける槽であり、原水槽20の水位を測定するための第1レベルスイッチ21と、ろ過装置10に被処理水を供給する第1ポンプ22とを備える。
【0081】
洗浄排水槽30は、ろ過装置10にて処理された被処理水と、ろ過装置10の逆洗浄で使用された洗浄排水を受ける槽であり、洗浄排水槽30の水位を測定するための第2レベルスイッチ31と、原水槽20に被処理水を供給する第2ポンプ32とを備える。
【0082】
[試験例1]
3mm角の矩形状の孔が全面に形成された下部スクリーン13を流路11の軸線に直交する方向である水平方向から35度傾けて設置した。また、下部スクリーン13の下部には気泡先行衝突部材16を設けた。空気供給手段15の形成された排気口の大きさはφ3mmとし、流量1L/minで流路11内に空気を供給した。この条件で下部スクリーン13の下面での気泡の滞留状態を調べた。この結果を表1(後述)に示す。
【0083】
空気供給手段15から流路11内に供給された空気は、気泡となり、気泡先行衝突部材16に衝突した後に、気泡先行衝突部材16の外縁から周囲に分散するように上流側に流れて、下部スクリーン13の下面を覆うように滞留した。
【0084】
[試験例2]
2mm角の矩形状の孔が全面に形成された下部スクリーン13を流路11の軸線に直交する方向である水平方向から20度傾けて設置した。また、下部スクリーン13の下部には気泡先行衝突部材16を設けた。空気供給手段15の形成された排気口の大きさはφ3mmとし、流量1L/minで流路11内に空気を供給した。この条件で下部スクリーン13の下面での気泡の滞留状態を調べた。この結果を表1(後述)に示す。
【0085】
空気供給手段15から流路11内に供給された空気は、気泡となり、気泡先行衝突部材16に衝突した後に、気泡先行衝突部材16の外縁から周囲に分散するように上流側に流れて、下部スクリーン13の下面の全域に分散した。その後、気泡は下部スクリーン13の下面の全域の約50%を覆うように滞留した。
【0086】
[試験例3]
1mm角の矩形状の孔が全面に形成された下部スクリーン13を流路11の軸線に直交する方向に設置した。空気供給手段15の形成された排気口の大きさはφ3mmとし、流量1L/minで流路11内に空気を供給した。この条件で下部スクリーン13の下面での気泡の滞留状態を調べた。この結果を表1(後述)に示す。
【0087】
空気供給手段15から流路11内に供給された空気は、気泡となり、下部スクリーン13の下面の全域に分散した。その後、気泡は下部スクリーン13の下面の略全域を覆うように滞留した。
【0088】
[試験例4]
図10に示す通り、幅6mmの短冊状の平板を4mm間隔で設けた下部スクリーン13を流路11の軸線に直交する方向である水平方向に設置した。また、下部スクリーン13の下部には気泡先行衝突部材16を設けた。空気供給手段15の形成された排気口の大きさはφ3mmとし、流量10L/minで流路11内に空気を供給した。この条件で下部スクリーン13の下面での気泡の滞留状態を調べた。この結果を表1(後述)に示す。
【0089】
空気供給手段15から流路11内に供給された空気は、気泡となり、気泡先行衝突部材16に衝突した後に、気泡先行衝突部材16の外縁から周囲に分散するように上流側に流れて、下部スクリーン13の下面を覆うように滞留した。
【0090】
[試験例5]
図8及び
図9に示すように、幅6mmで切妻形状の板を3mm間隔で設けた下部スクリーン13を流路11に直交する方向に設置した。また、下部スクリーン13の下部には気泡先行衝突部材16を設けた。空気供給手段15の形成された排気口の大きさはφ3mmとし、流量10L/minで流路11内に空気を供給した。この条件で下部スクリーン13の下面での気泡の滞留状態を調べた。この結果を表1(後述)に示す。
【0091】
空気供給手段15から流路11内に供給された空気は、気泡となり、気泡先行衝突部材16に衝突した後に、気泡先行衝突部材16の外縁から周囲に分散するように上流側に流れて、下部スクリーン13の下面を覆うように滞留した。
【0092】
[試験例6]
図8及び
図9に示すように、幅16mmで切妻形状の板を3mm間隔で設けた下部スクリーン13を流路11に直交する方向に設置した。また、下部スクリーン13の下部には気泡先行衝突部材16を設けた。空気供給手段15の形成された排気口の大きさはφ3mmとし、流量10L/minで流路11内に空気を供給した。この条件で下部スクリーン13の下面での気泡の滞留状態を調べた。この結果を表1(後述)に示す。
【0093】
空気供給手段15から流路11内に供給された空気は、気泡となり、気泡先行衝突部材16に衝突した後に、気泡先行衝突部材16の外縁から周囲に分散するように上流側に流れて、下部スクリーン13の下面を覆うように滞留した。
【0094】
[試験例7]
φ3mmの複数の開口をマトリックス状に設けた下部スクリーン13を流路11に直交する方向である水平方向に設置した。空気供給手段15の形成された排気口の大きさはφ3mmとし、流量10L/minで流路11内に空気を供給した。この条件で下部スクリーン13の下面での気泡の滞留状態を調べた。この結果を下記表1に示す。
【0095】
空気供給手段15から流路11内に供給された空気は、気泡となり、下部スクリーン13の下面を覆うように滞留した。
【0096】
【0097】
以上、詳細に説明したように、空気供給手段15から供給された気泡が、下部スクリーン13の下面に分散して滞留させることで、空気層を形成し、し渣類の繊維状物やオイルボール等の粘性体等からなる汚れ物質が、下部スクリーン13に付着することを抑制するろ過装置及びろ過方法を提供することができる。