(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117429
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】脱酸素剤包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/26 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
B65D81/26 R ZAB
B65D81/26 S ZBP
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023536
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】717000414
【氏名又は名称】株式会社プレジール
(71)【出願人】
【識別番号】518110970
【氏名又は名称】株式会社モービー・ディック
(72)【発明者】
【氏名】梅村 俊和
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和富
(72)【発明者】
【氏名】城口 聡子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和俊
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 麟
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AB01
3E067BA12A
3E067BB01A
3E067BB06A
3E067BB14A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067CA03
3E067CA24
3E067EA06
3E067EE25
3E067EE28
3E067EE32
3E067FA01
3E067FC01
3E067GB03
3E067GB13
3E067GD01
3E067GD07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生分解性に優れていて、使用終了後にコンポストとして処理可能な脱酸素剤包装体を提供する。
【解決手段】酸化分解剤を含有するポリオレフィン系樹脂組成物から成形された、通気孔を有するプラスチックフィルムを折り曲げて重ね合わせて、もしくは2枚の前記プラスチックフィルムを互いに対向するように重ね合わせてその周縁を熱融着によりシールして形成された通気性包装体中に、又は一方の外層を形成する前記プラスチックフィルムと、他方の外層を形成する、紙もしくは生分解性不織布からなる基材とを互いに対向するように重ね合わせてその四方周縁を熱融着により、もしくは生分解性接着剤を用いた接着によりシールして形成された通気性包装体中に、環境負荷低減型の鉄系脱酸素剤又は有機系脱酸素剤からなる脱酸素剤が収納された脱酸素剤包装体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化分解剤(C)を含有するポリオレフィン系樹脂組成物から成形された、通気孔を有するプラスチックフィルム(A)を折り曲げて重ね合わせた三方周縁を熱融着によりシールして形成された、もしくは2枚の前記プラスチックフィルム(A)を互いに対向するように重ね合わせてその四方周縁を熱融着によりシールして形成された通気性包装体中に、
又は一方の外層を形成する前記プラスチックフィルム(A)と、他方の外層を形成する、紙(B1)もしくは生分解性不織布(B2)からなる基材(B)とを互いに対向するように重ね合わせてその四方周縁を熱融着によりシールして形成された、もしくは生分解性接着剤(E)を用いた接着によりシールして形成された通気性包装体中に、
環境負荷低減型の鉄系脱酸素剤(D1)又は有機系脱酸素剤(D2)からなる脱酸素剤(D)が収納されていることを特徴とする、脱酸素剤包装体。
【請求項2】
前記プラスチックフィルム(A)に酸化分解剤(C)として少なくとも遷移金属化合物と希土類金属化合物から選択される1種又は2種が含有されている、請求項1に記載の脱酸素剤包装体。
【請求項3】
前記プラスチックフィルム(A)に酸化分解剤(C)として少なくとも遷移金属化合物と希土類金属化合物から選択される1種又は2種に、更にヒドロキシカルボン酸、マグネシウム化合物、芳香族ケトン、及び合成ゴムよりなる群から選択される1種又は2種以上が含有されている、請求項1に記載の脱酸素剤包装体。
【請求項4】
前記プラスチックフィルム(A)に酸化分解剤(C)として含有される遷移金属化合物、又は遷移金属化合物と希土類金属化合物が炭素原子数14から24の飽和カルボン酸金属塩又は不飽和カルボン酸金属塩である、請求項1に記載の脱酸素剤包装体。
【請求項5】
前記鉄系脱酸素剤(D1)が、鉄紛、又は鉄粉を主成分としてその他に無機酸のアンモニウム塩、ハロゲン化アンモニウム塩、遷移金属、遷移金属化合物、水、保水剤、膨潤剤、金属塩、滑剤、及び多孔性担体から選択される1種又は2種以上の成分を含む混合物又は組成物である、請求項1に記載の脱酸素剤包装体。
【請求項6】
前記有機系脱酸素剤(D2)が易酸化性有機物としてアスコルビン酸、アスコルビン酸塩、エリソルビン酸、グリセリン、グリセリン酸、没食子酸、トコフェロール、不飽和基を有する有機化合物、及びカテキンから選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の脱酸素剤包装体。
【請求項7】
前記プラスチックフィルム(A)を形成するポリオレフィン系樹脂組成物中の樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、又はエチレン-プロピレン共重合体である、請求項1に記載の脱酸素剤包装体。
【請求項8】
前記紙(B1)が通気性を有する洋紙、中性紙、酸性紙、合成紙、和紙、もしくは上質紙、
又は生分解性不織布(B2)が通気性を有するポリ乳酸系不織布、もしくはセルロース系不織布である、請求項1に記載の脱酸素剤包装体。
【請求項9】
前記生分解性接着剤(E)が澱粉系、酢酸セルロース系、ポリカプロラクトン系、澱粉-脂肪族ポリエステル系、乳酸骨格・カプロラクトン骨格を有するポリオールとポリウレタン結合体、及びセルロース-キトサン-澱粉混合体から選択される生分解性接着剤の1種又は2種以上である、請求項1に記載の脱酸素剤包装体。
【請求項10】
請求項1に記載の脱酸素剤包装体を、被包装物と共に酸素バリア性を有する包装容器又は外袋に収納・密封して、保存期間中における該包装容器又は外袋内部の空間の酸素濃度を0.2容積%以下に保持することにより、該被包装物の品質を保持すると共に、該脱酸素剤包装体を形成する、酸化分解性プラスチックフィルム(A)の酸化分解を抑制することを特徴とする、脱酸素剤包装体の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性を有する脱酸素剤包装体に関する、より詳細には、生分解性に優れていて、使用終了後にコンポストとして処理可能な脱酸素剤包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックによる環境汚染が問題になっている。特に化石資源である石油を出発原料とする、ポリオレフィン等の合成樹脂は生分解性が極めて低いことから、再利用が困難な用途の包装材料、繊維、発泡材料は使用終了後に埋め立てや焼却によって廃棄処理されているのが実情である。しかし、種々のプラスチック製品をまとめて焼却処理すると有毒ガス発生等のおそれがあり、また、埋め立て処理した場合に土中で生分解されないので、河川や海洋への投棄と共に生態系への影響などが懸念されており、その減量は世界各国での課題となっている。
【0003】
一方、食品分野では長期間の「おいしさ」や「鮮度」の保持と「安全性」を担保する為に脱酸素剤が広く使用されている。また、脱酸素剤は食品のみならず、更に医薬、衣料品、化粧品等の劣化防止、また衣類や寝具の防ダニ、防カビにも幅広く用いられている。脱酸素剤は真空包装やガス置換包装では実現できない脱酸素効果をもたらすので、被包装物と共に酸素ガスバリア性の包装容器に封入・密封するだけで大きな効果を発揮する。被包装物の大きさにもよるが、典型的な例としては、食品に使用する場合に、縦横のサイズがそれぞれ2~5cm、厚み5mm以下の化石資源由来の合成樹脂シートを用いた小袋に脱酸素剤を収納したものが広く用いられている。
【0004】
脱酸素剤は、例えば鉄粉を使用した場合には鉄が錆びる際に酸素と結合して酸化物となる反応が進行して密閉容器内の酸素を吸収する作用を発揮する。このように酸素を吸収する作用を発揮する脱酸素剤として、鉄粉、第一鉄塩、その他、マンガン、テクネチウム等のマンガン族、コバルト、ニッケル等の鉄族、及び銅族等の無機物、多価フェノール等の易酸化性有機物等が挙げられており、これらの中でも鉄粉が最も広く使用されている。
【0005】
これらの脱酸素剤が収納された包装体は、使用により酸素吸収能力を消失した場合、一般ゴミとして焼却されるか埋設処理されるが、例えば、脱酸素剤が食品保存用として用いられた場合に、屋外で残存食品と一緒に投棄されると投棄後に土壌中に残存するおそれがある。
【0006】
下記特許文献1には、(a)熱可塑性ポリマー成分、(b)紫外線、熱等の作用により分解される直接的生分解性成分、(c)前記熱可塑性ポリマー成分を分解するための、脂肪酸、合成ゴム等から選ばれた酸化可能な成分、(d)酸化可能成分の酸化反応を開始させる遷移金属成分、及び(e)熱可塑性ポリマー成分の分解の開始を遅延させるヒンダードフェノールからなる、無害の生成物に分解可能な重合体組成物が開示されている。下記特許文献2には、ポリオレフィン系樹脂に、有機物等の直接的な分解成分と、不飽和脂肪酸等の自動酸化剤からなる酸化分解剤を添加した自然分解性樹脂が用いられた、新聞紙包装袋が開示されている。
【0007】
下記特許文献3には、アルカリ金属の塩化物塩、又はアルカリ土類金属の塩化物塩を有効成分とする光要求性酸化分解剤を含む生分解性樹脂成型体の分解促進剤が開示されている。下記特許文献4には、使用終了後の生分解性を向上するために、塩化カリウム又は塩化ナトリウムを含む発熱性組成物が、光要求性の酸化分解剤を含む内袋に収納された、生分解性使い捨てカイロが開示されている。
【0008】
下記特許文献5には、A層/B層/A層の三層からなる農業用積層フィルムであって、A層が特定のメルトフローレート(MFR)と密度を有するポリエチレン系樹脂中に光又は熱により活性を示す酸化分解剤が含有されていて、B層が脂肪族ポリエステル系樹脂を含む組成物からなり、廃棄時には十分な光分解性及び微生物分解性が発揮される農業用積層フィルムが開示されている。また、酸化分解の進行は酸化分解剤の配合量で調節可能なことが記載されている。下記特許文献6には、包装材料を構成する外層が酸化分解剤を使用する必要のないバイオマス由来の熱可塑性樹脂層(A)、紙層(B)、バイオマス由来のヒートシール性熱可塑性樹脂層(C)の少なくとも3層を積層してなる脱酸素剤包装材料が開示されている。
【0009】
下記特許文献7には、ポリマー組成物においてポリオレフィンの分解速度を向上するために、2種以上の遷移金属化合物、モノ-またはポリ-不飽和C14-C24カルボン酸、合成ゴムを配合した分解性ポリマー組成物が開示されている。熱および光への予想される暴露に応じて分解速度を調整するために遷移金属が選択されることが記載されている。
下記特許文献8には、再利用を可能にするために、上記特許文献7に開示の分解性ポリマー組成物に、加工しやすくするために炭酸カルシウムを更に配合した、シート材料用の樹脂組成物が開示されている。炭酸カルシウムを添加することにより、最終的に得られる材料が、高強度となり、分解開始後に容易に砕け、低コストであり、環境に及ぼす影響が少ないと記載されている。また、特許文献8には上記特許文献7と同様に、熱および光への予想される暴露に応じて分解速度を調整するために遷移金属が選択されることが記載されている。
【0010】
下記特許文献9には、熱可塑性樹脂を主原料とする樹脂成型体を分解処理する際に、酸化数が異なる複数の脂肪酸金属塩としてオレイン酸マンガン及びオレイン酸セリウムを含む分解処理液を塗布、散布、噴霧、又は浸漬の何れかの手法により付着させることで樹脂成型体を分解処理することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2961138号公報
【特許文献2】特開2004-099160号公報
【特許文献3】特許第5733904号公報
【特許文献4】特許第5484161号公報
【特許文献5】特許第5586490号公報
【特許文献6】特開2012-218411号公報
【特許文献7】特許第7105242号公報
【特許文献8】特許第6843249号公報
【特許文献9】特許第6777343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1に開示された重合体組成物については、熱可塑性ポリマー成分の分解開始を遅延させるためにヒンダードフェノール等の酸化防止剤を配合することが記載されているが、使用目的等により酸化防止剤の配合量を調整して分解の開始を制御することには困難性を伴う。上記特許文献2に開示の自然分解性樹脂については樹脂の分解開始時期を制御する記載はされていない。
上記特許文献3、4に開示された生分解性樹脂成型体に配合されるのは主として光の暴露で酸化分解作用を発揮する光要求性酸化分解剤であるので、製造時、流通時、保存時等の使用前段階では遮光雰囲気(遮光空間、遮光容器、遮光袋等)で保管しなければならない。
【0013】
上記特許文献5に開示の農業用積層フィルムは、使用終了後は比較的容易に光分解され更には耕運機等で土中に鋤き(スキ)込まれ微生物分解されると記載されているが、使用中における光分解の抑制についての検討が必要とされる。上記特許文献6には、包装材料にバイオマス由来のフィルムを使用した脱酸素剤包装体が開示されているが、該フィルムに要求される物理的特性、加工の困難性、低い生産性ついて検討が必要である
【0014】
上記特許文献7、8には、使用終了後にポリマー組成物中のポリオレフィンの分解を促進する手段は記載されていない。上記特許文献9には、使用終了後に樹脂成型体に酸化数が異なる複数の脂肪酸金属塩を含む分解処理液を塗布等の手段により分解処理する方法が開示されているが、該方法では使用中の酸化分解を促進させず、使用終了後に分解処理液を塗布して酸化分解を促進させる点で優れているが、使用終了後に樹脂成型体に分解処理液を塗布する作業は煩雑になる。
前記特許文献1~5、7~8のいずれにも使用中に包装体の酸化分解を抑制すると共に、使用終了後に包装体の酸化分解を促進する手段は開示されていない。
【0015】
脱酸素剤包装体は使用により酸素吸収能力を消失した場合、再利用(リサイクル)することは殆ど困難であるので、一般ゴミとして焼却されるか、埋設処理されるが、脱酸素剤の包装体に化石資源由来の樹脂フィルムが使用されている場合、屋外に投棄されると、土壌汚染の発生原因になるおそれがある。
【0016】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、脱酸素剤包装体の包装体を形成するポリオレフィンフィルムに含有させる酸化分解剤中に酸化分解を抑制するフェノール系酸化防止安定剤を配合することなく、また使用開始までに遮光下に保存する必要もなく、使用後にコンポストとして処理可能であるので環境負荷の増加が少なく、かつ経済性にも優れた脱酸素剤包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、脱酸素剤包装体の包装体を形成するフィルムの層構成数を極力少なくすると共に、使用材料を紙又は生分解性不織布と、特定の酸化分解剤が配合されたプラスチックフィルムと、必要に応じて生分解性接着剤等を使用し、かつ脱酸素剤として環境負荷低減型の成分を使用することにより、
使用中の包装体のプラスチックフィルムの生分解性を抑制して、使用終了後にプラスチックフィルムの生分解性を向上することが可能であるので土壌汚染の発生原を防止することができ、経済性にも優れる脱酸素剤包装体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0018】
即ち、本発明は以下の(1)~(10)に記載する発明を要旨とする。
(1)酸化分解剤(C)を含有するポリオレフィン系樹脂組成物から成形された、通気孔を有するプラスチックフィルム(A)を折り曲げて重ね合わせた三方周縁を熱融着によりシールして形成された、もしくは2枚の前記プラスチックフィルム(A)を互いに対向するように重ね合わせてその四方周縁を熱融着によりシールして形成された通気性包装体中に、
又は一方の外層を形成する前記プラスチックフィルム(A)と、他方の外層を形成する、紙(B1)もしくは生分解性不織布(B2)からなる基材(B)とを互いに対向するように重ね合わせてその四方周縁を熱融着によりシールして形成された、もしくは生分解性接着剤(E)を用いた接着によりシールして形成された通気性包装体中に、
環境負荷低減型の鉄系脱酸素剤(D1)又は有機系脱酸素剤(D2)からなる脱酸素剤(D)が収納されていることを特徴とする、脱酸素剤包装体。
【0019】
(2)前記プラスチックフィルム(A)に酸化分解剤(C)として少なくとも遷移金属化合物と希土類金属化合物から選択される1種又は2種が含有されている、前記(1)に記載の脱酸素剤包装体。
(3)前記プラスチックフィルム(A)に酸化分解剤(C)として少なくとも遷移金属化合物と希土類金属化合物から選択される1種又は2種に、更にヒドロキシカルボン酸、マグネシウム化合物、芳香族ケトン、及び合成ゴムよりなる群から選択される1種又は2種以上が含有されている、前記(1)又は(2)に記載の脱酸素剤包装体。
(4)前記プラスチックフィルム(A)に酸化分解剤(C)として含有される遷移金属化合物、又は遷移金属化合物と希土類金属化合物が炭素原子数14から24の飽和カルボン酸金属塩又は不飽和カルボン酸金属塩である、前記(1)から(3)のいずれかに記載の脱酸素剤包装体。
【0020】
(5)前記鉄系脱酸素剤(D1)が、鉄紛、又は鉄粉を主成分としてその他に無機酸のアンモニウム塩、ハロゲン化アンモニウム塩、遷移金属、遷移金属化合物、水、保水剤、膨潤剤、金属塩、滑剤、及び多孔性担体から選択される1種又は2種以上の成分を含む混合物又は組成物である、前記(1)から(4)のいずれかに記載の脱酸素剤包装体。
(6)前記有機系脱酸素剤(D2)が易酸化性有機物としてアスコルビン酸、アスコルビン酸塩、エリソルビン酸、グリセリン、グリセリン酸、没食子酸、トコフェロール、不飽和基を有する有機化合物、及びカテキンから選択される1種又は2種以上である、前記(1)から(5)のいずれかに記載の脱酸素剤包装体。
(7)前記プラスチックフィルム(A)を形成するポリオレフィン系樹脂組成物中の樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、又はエチレン-プロピレン共重合体である、前記(1)から(6)のいずれかに記載の脱酸素剤包装体。
【0021】
(8)前記紙(B1)が通気性を有する洋紙、中性紙、酸性紙、合成紙、和紙、もしくは上質紙、
又は生分解性不織布(B2)が通気性を有するポリ乳酸系不織布、もしくはセルロース系不織布である、前記(1)から(7)のいずれかに記載の脱酸素剤包装体。
(9)前記生分解性接着剤(E)が澱粉系、酢酸セルロース系、ポリカプロラクトン系、澱粉-脂肪族ポリエステル系、乳酸骨格・カプロラクトン骨格を有するポリオールとポリウレタン結合体、及びセルロース-キトサン-澱粉混合体から選択される生分解性接着剤の1種又は2種以上である、前記(1)から(8)に記載のいずれかに記載の脱酸素剤包装体。
(10)前記(1)に記載の脱酸素剤包装体を、被包装物と共に酸素ガスバリア性を有する包装容器又は外袋に収納・密封して、保存期間中における該包装容器又は外袋内部の空間の酸素濃度を0.2容積%以下に保持することにより、該被包装物の品質を保持すると共に、該脱酸素剤包装体を形成する、酸化分解性プラスチックフィルム(A)の酸化分解を抑制することを特徴とする、脱酸素剤包装体の使用方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の脱酸素剤包装体は、通常、被包装物と共に酸素バリア性を有する外袋内に収納して使用されるので、該外袋内の酸素濃度は極めて低濃度に、例えば商業的使用態様では通常酸素濃度0.1容積%以下となる条件下で使用されることにより、食品等の非包装物が酸素による影響を殆ど受けることがなると共に、脱酸素剤が収納されている包装体を形成するポリオレフィン系樹脂の炭素-炭素結合の酸化分解も抑制されて、包装体の劣化が防止される。
一方、脱酸素剤包装体が収納されている外袋が切断されて、非包装物が外袋から取り出されると、脱酸素剤包装体の使用が終了された状態になると共に、大気中の酸素の影響を受けて、包装体を形成するポリオレフィン系樹脂の炭素-炭素結合の酸化分解反応が進行するようになる。
上記により、脱酸素剤包装体の使用終了までに、包装体を形成するポリオレフィンフィルム(A)における炭素-炭素結合の酸化分解反応を抑制するためにフェノール系酸化防止剤安定剤等を配合することは不要になる。
【0023】
本発明の脱酸素剤包装体における包装体は、包装体を構成する層数が比較的少なく、通気性を有していると共に、生分解性に優れているので、回収されずに自然界に廃棄されても一定時間で分解して、土壌汚染を防止することが可能である。また該包装体に収納される脱酸素剤は、自然界に存在するか、使用により酸化され自然界に存在する物質に変化するか、又は安全性・非蓄積性が確認後に市販され日常で使用されている、環境負荷低減型の無機物・有機物であるので土壌や海洋の汚染を防止することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の脱酸素剤包装体を詳細に説明する。
本発明の脱酸素剤包装体は、
酸化分解剤(C)を含有するポリオレフィン系樹脂組成物から成形された、通気孔を有するプラスチックフィルム(A)を折り曲げて重ね合わせた三方周縁を熱融着によりシールして形成された、もしくは2枚の前記プラスチックフィルム(A)を互いに対向するように重ね合わせてその四方周縁を熱融着によりシールして形成された通気性包装体中に、
又は一方の外層を形成する前記プラスチックフィルム(A)と、他方の外層を形成する、紙(B1)もしくは生分解性不織布(B2)からなる基材(B)とを互いに対向するように重ね合わせてその四方周縁を熱融着によりシールして形成された、もしくは生分解性接着剤(E)を用いた接着によりシールして形成された通気性包装体中に、
環境負荷低減型の鉄系脱酸素剤(D1)又は有機系脱酸素剤(D2)からなる脱酸素剤(D)が収納されていることを特徴とする。
【0025】
以下、本発明の脱酸素剤包装体について詳述する。
1.包装体
本発明の脱酸素剤包装体における包装体は、1枚のプラスチックフィルム(A)を折り曲げて重ね合わせて形成された、未シールの三方周縁を熱融着によりシールして形成された、もしくは2枚のプラスチックフィルム(A)を互いに対向するように重ね合わせてその四方周縁を熱融着によりシールして形成された通気性包装体、
又は一方の外層を形成するプラスチックフィルム(A)と、他方の外層を形成する、紙(B1)もしくは生分解性不織布(B2)からなる基材(B)とを互いに対向するように重ね合わせてその四方周縁を熱融着もしくは接着によりシールして形成された通気性包装体である。
【0026】
(1)プラスチックフィルム(A)
プラスチックフィルム(A)は、酸化分解剤(C)を含有するポリオレフィン系樹脂組成物から形成されていて、その表面には脱酸素剤の機能を発揮させるために、空気を通す通気孔が設けられている。プラスチックフィルム(A)の成形材料であるポリオレフィン系樹脂は、炭素-炭素結合を有しているので酸化分解剤(C)の作用により酸化分解を受け易くなる。
プラスチックフィルム(A)の形成に使用されるポリオレフィン系樹脂としては、使用時における物理的強度の維持と、使用後の酸化分解性と生分解性を考慮すると、ポリエチレン(単独重合体)とポリプロピレン(単独重合体)の他にエチレン・プロピレン共重合体、エチレンと炭素原子数4、5、6のオレフィンモノマーとのそれぞれの共重合体が挙げられる。
【0027】
また本発明におけるポリオレフィン系樹脂には、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体も含まれるが、この場合、酸化分解性を考慮すると共重合体原料中のエチレン単位濃度は50モル%以上が好ましい。更にポリオレフィン系樹脂には、オレフィンと、官能基を有するモノマーである不飽和カルボン酸モノマーでグラフト重合した重合体も含まれる。
【0028】
前記包装体を形成する際に、三方シール又は四方シールする手段としてフィルムの熱融着と、接着剤を用いた接着が採用されるが、該熱融着性のフィルムには、ヒートシール(熱溶着)、高周波シール、及び超音波シールのいずれかの方法でシールが可能なフィルムが含まれる。
本発明及び本明細書において、「三方周縁、三方周縁面、及び三方シール」における三方とはフィルムが折り重ねられている方向以外、又は一方向以外のすべての周囲方向を意味し、「四方周縁及び四方シール」における四方とは全ての周囲方向を意味する。
プラスチックフィルム(A)に熱融着性フィルムを使用する場合には、上記ポリオレフィン系樹脂の中で、比較的融点の低いポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等から選択するのが好ましい。これらの中で、ポリエチレンは融点が低く成形性も良好なことから最も好ましく、ポリプロピレンは熱加工性の点から未延伸フィルム(CPP)が好ましく、ポリ塩化ビニルは薄いフィルムへの加工が困難であるので高周波シールを使用することにより融着が可能である。また、エチレン・酢酸ビニル共重合体は高周波シールが可能である。ポリオレフィン系樹脂の中で熱融着が困難な場合には、生分解性接着剤(E)を用いた接着手段により包装体を形成することが可能である。
【0029】
通気性を有するプラスチックフィルム(B)では、空気を通すために細孔である通気孔が設けられていて、該通気孔は、下記の方法等により設けることができる。
通気孔のサイズ(直径)は、特に制限はないが、酸素ガスの透過性を考慮すると5~500μm程度が好ましく、その穴の形状は円形、楕円形状等が好ましい。このような微細な通気孔は、フィルムを多数の針が付けられた針ロールとゴムロールで挟み込む手段、電子線照射等の手段を使用して形成することができる。通気孔を形成する工程はフィルム成形直後、製袋直前、製袋後等脱酸素の機能を発揮するのに支障が生じなければ特に制限されない。
また通気孔が設けられた生分解性プラスチックフィルム(B)の外面にエンボス加工を施すことによって、該フィルム(B)の外面が被包装物を収容する外袋の内面に密着した場合でも、該フィルム(B)の外面に沿った方向での空気の移動が可能になるので、脱酸素剤の脱酸素効果をより効果的に発揮することができる。
【0030】
(2)基材(B)
基材(B)は、紙(B1)又は生分解性不織布(B2)から形成されていて、紙(B1)としては通気孔を有する洋紙、中性紙、酸性紙、合成紙、和紙、上質紙等が挙げられるが、洋紙が好ましい。紙(B1)の通気性を向上するために、前記方法により通気孔を設けることができる。また、紙(B1)の耐水性、撥水性等を向上するために、該紙に生分解性を有する食用油、糊、樹脂の水性エマルジョン等を塗布することもできる。
生分解性不織布(B2)は、本質的に生分解性を有する熱可塑性樹脂、又はポリオレフィン系樹脂に酸化分解剤を含有させた樹脂組成物を利用して製造することが可能である。生分解性不織布(B2)の通気性を向上するために、前記方法により通気孔を設けることができる。尚、該不織布の製造工程は基本的に、フリース(繊維の集積層)を形成する工程と、形成したフリースを結合する工程に分けられ、それぞれの工程において様々な製法が知られているが、本発明で使用される生分解性不織布(B2)の製造工程は特に限定されるものではない。
【0031】
本発明で使用可能な生分解性不織布(B2)の製造方法として、例えば前記遷移金属化合物及び/または希土類金属化合物を含有するポリエチレン、ポリプロピレン、又はエチレン-プロピレン共重合体樹脂組成物を溶融紡糸して不織布を作成する方法が挙げられる。
具体的には前記生分解性を有する樹脂組成物を溶融紡糸して、繊維の直径が1~50μmの繊維を製造し、これを2~5cmにカットして捲縮し、繊維を引きそろえる為にカード機にかけ、繊維同士を絡ませるためにニードルパンチ処理して不織布を作製する方法が挙げられる。
【0032】
(3)生分解性接着剤(E)
本発明の脱酸素剤包装体の一態様において、包装体は基材(B)の内面側の少なくとも周縁に塗布された生分解性接着剤(E)により、一方の外層を構成するプラスチックフィルム(A)と、他方の外層を構成する基材(B)との周縁を接着により貼り合わせてシールすることができる。
生分解性接着剤(E)をプラスチックフィルム(A)又は基材(B)に塗布する部分は、全面、又は少なくともいずれかの接着部分に相当する周縁に塗布することができる。
生分解性接着剤(E)は、特に限定されるものではないが、澱粉系、酢酸セルロース系、ポリカプロラクトン系、澱粉-脂肪族ポリエステル系、乳酸骨格・カプロラクトン骨格を有するポリオールとポリウレタン結合体、及びセルロース-キトサン-澱粉混合体から選択される生分解性接着剤の1種又は2種以上が好ましい。
【0033】
市販されている生分解性の接着剤としては、例えばトーヨーケム(株)製の乳酸骨格・カプロラクトン骨格を有するポリオール EXK20-143、東洋モートン(株)製のポリ乳酸系接着剤 EA-2800、トーヨーケム(株)製の生分解性ウレタン粘着剤EXK20-143、BiologiQ社(本社:米国アイダホ州)製の変性でんぷん接着剤BioBlend BC27130、日本コ―ンスターチ(株)製の変性でんぷん接着剤コーンポール等を用いることが出来る。
これらのホットメルト接着剤等の接着剤は、通気性を有する紙又は生分解性不織布の全面又は周縁にあらかじめ塗布しておき、3方を熱接着して袋状とし、脱酸素剤を該袋状物に収納した後に未シール部分を熱接着することが好ましい。
【0034】
(4)包装体の形状
本発明の脱酸素剤(D)が収納される包装体の形状の一態様は、1枚の熱融着性を有するプラスチックフィルム(A)を折り曲げて重ね合わせて形成された、未シールの三方周縁を熱融着によりシールして形成された、又は2枚の熱融着性を有するプラスチックフィルム(A)を互いに対向するように重ね合わせてその四方周縁を熱融着によりシールして形成された形状である。
また、本発明の脱酸素剤(D)が収納される包装体の形状の他の態様は、一方の外層を形成するプラスチックフィルム(A)と、他方の外層を形成する、紙(B1)又は生分解性不織布(B2)からなる基材(B)とを互いに対向するように重ね合わせてその四方周縁を熱融着もしくは生分解性接着剤(E)を用いた接着によりシールして形成された形状である。
尚、上記で例示したプラスチックフィルム(A)、又はプラスチックフィルム(A)と基材(B)を使用して積層フィルムを成形し、これらの積層フィルムを使用して作成した包装体に、脱酸素剤(D)を収納した脱酸素剤包装体も本発明の本質的な作用効果が発揮されるので、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0035】
2.酸化分解剤(C)
本発明において、酸化分解剤(C)は、日光、紫外線、熱などの作用によりポリオレフィン系樹脂を酸化分解して、微生物分解が可能な程度に当該ポリマーを低分子に分解する作用を発揮する。ポリオレフィン系樹脂の酸化分解は光酸化性反応等によって開始されると、後述する遷移金属化合物等の酸化分解剤によって無害の生成物に分解可能であり、一旦光酸化性反応が開始されると遮光雰囲気下においても酸化反応は持続されると想定される。
【0036】
酸化分解剤(C)には少なくとも遷移金属化合物と希土類金属化合物から選択される1種又は2種が含有されている。
また、酸化分解剤(C)には少なくとも遷移金属化合物と希土類金属化合物から選択される1種又は2種に、更にヒドロキシカルボン酸、マグネシウム化合物、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、及び合成ゴムよりなる群から選択される1種又は2種以上が含有されていることが好ましい。
更に、酸化分解剤(C)に含有される遷移金属化合物、又は遷移金属化合物と希土類金属化合物が炭素原子数14から24の飽和カルボン酸金属塩又は不飽和カルボン酸金属塩であることが好ましい。
【0037】
(1)遷移金属化合物と希土類金属化合物
(1―1)遷移金属化合物と希土類金属化合物における金属元素
遷移金属化合物における遷移金属元素は、周期表で第3族元素から第12族元素の間に存在する元素の総称であるが、これらの金属元素の中でチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブテン、テクネチウム、ルテニウム、パラジウム、銀等の使用が好ましく、マンガン、鉄、及びコバルトがより好ましく、これらの遷移金属化合物は、1種、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
希土類金属化合物における希土類金属元素(レアアース)は、スカンジウム(21 Sc)とイットリウム(39 Y)の2元素と、ランタン(57 La)からルテチウム(71 Lu)までの15元素の計17元素の総称であり(前記カッコ内の数字は原子番号を示す。)、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等を挙げることができる。上記希土類金属化合物の中でも、セリウムは地殻中に最も豊富に存在しているので、入手の容易性等からセリウムを選択することがより好ましい。
【0039】
(1―2)遷移金属化合物と希土類金属化合物における配位子
遷移金属化合物と希土類金属化合物における配位子(リガンド)の選択は、これらの金属元素と共に、使用されるポリオレフィン系樹脂組成物における分散性を向上するため、及びポリオレフィン系樹脂の分解速度を促進するために重要であり、イオン性配位子としては脂肪酸陰イオン等が挙げられ、非イオン性配位子としてはアミン、イミン、アミド、及びカルベン(H2C-)等が挙げられる。
上記イオン性配位子を形成する好ましい脂肪酸として、炭素原子数12~24、より好ましくは炭素原子数16~20の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸を挙げることができる。これらのカルボン酸の炭素骨格は、直鎖状、又は分枝状であってもよい。
上記飽和脂肪酸としてはラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデジル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ヘンイコシル酸(C21)、ベヘン酸(22)、リグノセリン酸(C24)を挙げることができ、不飽和脂肪酸としてはミリストレイン酸(C14)、パルミトレイン酸(C16)、サピエン酸(C16)、オレイン酸(C18)、エライジン酸(C18)、バクセン酸(C18)、ガドレイン酸(C20)、エイコセン酸(C20)、エルカ酸(C22)、及びネルボン酸(C24)を挙げることができる(前記カッコ内の数字は分子内の炭素原子数を示す)。
上記飽和脂肪酸の中でステアリン酸がより好ましく、また不飽和脂肪酸の中ではオレイン酸がより好ましい。
【0040】
(2)ヒドロキシカルボン酸、マグネシウム化合物、芳香族ケトン、及び合成ゴム
酸化分解剤(C)として、少なくとも遷移金属化合物と希土類金属化合物から選択される1種又は2種に、更にヒドロキシカルボン酸、マグネシウム化合物、芳香族ケトン、及び合成ゴムよりなる群から選択される1種又は2種以上が有効成分として含有させることができる。これらの化合物は、いずれも酸化分解剤(C)中に含有されていると、ポリオレフィン系化合物の酸化分解を促進する作用を発揮する。
ヒドロキシカルボン酸として、酒石酸のジヒドロキシジカルボン酸、クエン酸のモノヒドロキシトリカルボン酸とトリヒドロキシグルタル酸、サッカリン酸のポリヒドロキシジカルボン酸、リンゴ酸のモノヒドロキシジカルボン酸、グリセリン酸のジヒドロキシモノカルボン酸、エリソルビン酸又はアラビン酸のポリヒドロキシモノカルボン酸等を挙げることができる。
【0041】
マグネシウム化合物は、本発明において遷移金属化合物と同様の作用を発揮するので、その配位子も上記遷移金属化合物において記載した配位子と同様である。
芳香族ケトンとして、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、アセチルベンゾフェノン等を挙げることができる。
酸化分解剤(C)に含有させるのに好ましい合成ゴムは、水素添加されていない不飽和結合を持ったゴムであり、ポリイソプレン、スチレン-イソプレン、スチレン-イソプレン-スチレンを挙げることができる。このような合成ゴムは、一般に化学的安定性は低いので、合成ゴムを酸化分解剤(C)に含有させると分解速度を向上させる。
【0042】
(3)酸化分解剤(C)の配合量等
酸化分解剤(C)の配合量は、上記ポリオレフィン系樹脂組成物中で、0.01~3質量%が好ましく、0.05~1質量%がより好ましい。配合量が前記0.01質量%未満では分解性の向上が期待できず、また3質量%を超えると樹脂層から酸化分解剤(C)が析出するおそれがある。酸化分解剤(C)は、そのままポリオレフィン系樹脂組成物中に配合して使用できるが、予め同等の樹脂中で5~15質量%程度の濃度になるように酸化分解剤(C)をブレンドしたマスターバッチとして用いることが好ましい。遷移金属化合物及び/又は希土類金属化合物を含有する酸化分解剤の市販品として、ピーライフ・ジャパン・インク(株)製のP-Life(登録商標)が知られている。
【0043】
ポリオレフィン系樹脂の自動酸化(Autoxidation)のメカニズムについては、例えば、ポリオレフィン系樹脂組成物における不飽和C12~C24カルボン酸は自動酸化して過酸化物(ペルオキシド)を生成し、この過酸化物がポリマー鎖中の炭素-炭素結合を攻撃し、これにより、ポリマオレフィンが分解を受け易くなる。該過酸化物は飽和カルボン酸よりも不飽和カルボン酸の方が形成され易いと考えられる。この酸化、分解反応が、遷移金属化合物等の酸化分解剤(C)の触媒作用により促進されて、ポリオレフィン系樹脂組成物の分解速度が増大すると考えられる。
【0044】
上記炭化水素類の自動酸化反応は、一般にラジカル連鎖反応で進行すると考えられており、その連鎖担体(chain carrier)は通常ペルオキシラジカルである。このペルオキシラジカルは反応が進行する系内に酸素が十分存在する場合に形成される。従って、酸素濃度極めて低い雰囲気下ではペルオキシラジカルは形成されづらいので、炭化水素類の自動酸化反応は抑制されると考えられる。
上記から、本発明の脱酸素包装体が被包装物と共に酸素バリア性の包装容器(外袋)に封入・密封されていると、該包装容器中の酸素ガス濃度は、低濃度(通常0.1容積%以下程度)に維持されるので、該包装体を形成しているポリオレフィンフィルム(A)は、脱酸素剤が脱酸素機能を発揮している使用期間中には酸化分解を受けづらくなる、と考えられる。
【0045】
3.脱酸素剤(D)
本発明で使用される脱酸素剤(D)は、環境負荷低減型の物質又は成分から構成されるのが特徴である。通常、小袋状等に収納して使用される、酸素吸収性を有する脱酸素剤(D)は、一般に主成分として鉄を用いた鉄系脱酸素剤(D1)と、非鉄系である有機系脱酸素剤(D2)に分けられている。
【0046】
(1)鉄系脱酸素剤(D1)
鉄系脱酸素剤(D1)は、鉄紛、又は鉄粉を主成分としてその他に遷移金属、無機酸のアンモニウム塩、ハロゲン化アンモニウム塩、遷移金属化合物、水、保水剤、膨潤剤、金属塩、滑剤、及び多孔性担体等から選択される1種又は2種以上の成分から選択された混合物又は組成物である。
鉄粉(鉄粒子)は、鉄の表面が露出したものであれば特に限定されず、還元鉄粉、電解鉄粉、噴霧鉄粉等を使用することができる。該鉄紛には、鉄以外に、マンガン、コバルト、ニッケル等の他の遷移金属を含有させることができる。鉄系脱酸素剤(D1)中の鉄粉の含有量は、40質量%以上が好ましく、40~90質量%程度がより好ましい。前記無機酸のアンモニウム塩、ハロゲン化アンモニウム塩等のアンモニウム塩は、鉄の酸化反応に触媒的に作用し、鉄の活性を向上させる機能を有している。
【0047】
前記遷移金属化合物は、酸素吸収反応を活発化する触媒として作用し、具体例として、遷移金属のハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩等が挙げられる。鉄系脱酸素剤には水が含有されているのが好ましく、混合物又は組成物中の水の含有量は特に限定されないが、15~30質量%程度が好ましい。前記保水剤としては、水を保持できるものであれば特に限定されないが、珪藻土、ゼオライト等の多孔性物質を使用できる。前記膨潤剤は、水分により膨潤し、造粒物の形状を保持するための粘結機能を有する物質であり、ナトリウムベントナイト、カルシウムベントナイト、ナトリウムモンモリロナイト等の粘土鉱物が挙げられるが、アラビアゴム、ゼラチン等の有機膨潤剤も使用することができる。
【0048】
前記金属塩は、鉄の酸化反応に触媒的に作用し、鉄の活性を向上させる物質であり、また、脱酸素剤組成物中の水が蒸散して脱酸素剤組成物から失われるのを防止する役割を果たす。金属塩としてはハロゲン化金属が好ましく、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、銅、亜鉛、アルミニウム、鉄等のハロゲン化金属が挙げられる。前記滑剤は、脱酸素剤混合物又は組成物の流動性を向上して、脱酸素剤混合物又は組成物を包装材料に充填包装し易くする。該滑剤としては、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。
脱酸素剤混合物又は組成物は、混合造粒物であってもよく、また前記混合造粒物の外側に多孔性担体を含む層を有するものであってもよい。多孔性担体は、多数の細孔を表面及び内部に有して多孔質の形状を有している担体であればよく、シリカ類が好ましい。
前記鉄系脱酸素剤(D1)に含まれる無機物は、自然界に存在する無機物、脱酸素作用を発揮して化学反応で変化して自然界に存在する無機物、又は安全性、非蓄積性等を考慮して日常生活で使用されている無機物から選択することが可能であるので、本発明の鉄系脱酸素剤(D1)は、環境負荷低減型の脱酸素剤である。
【0049】
(2)有機系脱酸素剤(D2)
有機系脱酸素剤(D2)は、酸素吸収性を有し、かつ環境負荷低減型の易酸化性有機物であれば特に限定されるものではないが、本発明で好ましい易酸化性有機物としてアスコルビン酸、アスコルビン酸塩、エリソルビン酸、グリセリン、グリセリン酸、トコフェロール、没食子酸、不飽和基を有する有機化合物、カテキン等から選択される1種又は2種以上を含む組成物が挙げられる。酸素吸収性能、入手しやすさ、価格などの点から、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、没食子酸を用いることが好ましい。
有機系脱酸素剤(D2)に用いられる有機化合物は、アルカリ性水溶液中で酸素吸収の反応が進行する場合が多いので、有機系脱酸素剤(D2)には、該有機物質をアルカリ性物質と共に水に溶解した水溶液を、活性炭等の多孔性の担体に含浸させて、粉粒体として用いることが好ましい。また、有機系脱酸素剤(D2)は、アルカリ水溶液中で、金属塩の存在下に、脱酸素剤としての機能をより発揮することができるので、例えば、有機系脱酸素剤(D2)、金属塩、水、及び多孔性担体を含む層と、アルカリ性物質を含む層とを有する多層の粉粒体を形成して脱酸素剤として使用することも可能である。
【0050】
アスコルビン酸は、自然界においてビタミンCとして動植物に広く分布して還元作用を有しており、そのナトリウム塩はサプリメントとして使用されている。エリソルビン酸はL-アスコルビン酸の立体異性体で、酸化防止剤として食品添加物に使用されており、還元作用はアスコルビン酸よりも強い。グリセリンは食品添加物として使用されている。グリセリン酸は天然に存在する三炭素の糖酸である。没食子酸は茶等のほとんどの植物に含まれる抗酸化剤で、還元性が強い。トコフェロール(ビタミンE)のうち特にD-α-トコフェロールは自然界に広く普遍的に存在し、酸化還元力は強い。
【0051】
不飽和基を有する有機化合物としては、不飽和脂肪酸化合物や不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物が挙げられる。不飽和脂肪酸化合物の具体例としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などが挙げられ、不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物の具体例としては、天然ゴム等の液状オリゴマーが挙げられる。カテキンは、ポリフェノールの一種で、特にお茶の苦み成分(タンニンとも呼ばれる)として知られている。
前記アルカリ性物質としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物等を用いることができる。前記金属塩としては、必要に応じて例えば遷移金属のハロゲン化物、硫酸塩等から必要に応じて選択することができ、具体的には塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等を用いることができる。
上記の通り、有機系脱酸素剤(D2)に用いられる物質、成分は特に環境に負荷を与えない原料、成分から選択することが可能であるので、本発明の有機系脱酸素剤(D2)は、環境負荷低減型の脱酸素剤である。
【0052】
4.脱酸素剤包装体の製造方法
本発明の脱酸素剤包装体の製造方法は、特に限定されるものではないが、具体例を以下に記載する。
(1)熱融着性を有するプラスチックフィルム(A)を用いて製袋する場合
通気孔を有する、1枚のプラスチックフィルム(A)を折り曲げて対向するように重ね合わせた状態で、シールされていない三方向のうち、相対する二方向の周縁の貼り合せ部を熱融着によりシールして袋状物を形成し、次いで該袋状物内に脱酸素剤(D)を収納し、その後シールされていない残りの一方向の外層周縁の貼り合せ部を熱融着してシールすることにより、脱酸素剤(D)が収納された脱酸素剤包装体を作製することができる。
また、別法として、2枚のプラスチックフィルム(A)を互いに対向するように重ね合わせた状態で、三方周縁の貼り合せ部を熱融着によりシールして袋状物を形成し、次いで該袋状物内に脱酸素剤(D)を収納し、そのシールされていない残りの一方向の外層周縁の貼り合せ部を熱融着してシールすることにより、脱酸素剤(D)が収納された脱酸素剤包装体を作製することができる。
【0053】
(2)プラスチックフィルム(A)と基材(B)を用いて製袋する場合
一方の外層を形成する熱融着性を有するプラスチックフィルム(A)と、他方の外層を形成する基材(B)とを互いに対向するように重ね合わせてその三方周縁の貼り合せ部を熱融着して袋状物を形成し、次いで該袋状物内に脱酸素剤(D)を収納し、シールされていない残りの一方向の外層周縁の貼り合せ部を熱融着してシールすることにより、脱酸素剤(D)が収納された脱酸素剤包装体を作製することができる。
【0054】
また、別法として、一方の外層を形成するプラスチックフィルム(A)と、他方の外層を形成する基材(B)とを互いに対向するように重ね合わせてその三方周縁の貼り合せ部を生分解性接着剤(E)を用いて接着して袋状物を形成し、次いで該袋状物内に脱酸素剤(D)を収納し、シールされていない残りの一方向の外層周縁の貼り合せ部を生分解性接着剤(E)を用いて接着してシールすることにより、脱酸素剤(D)が収納された脱酸素剤包装体を作製することができる。
【0055】
5.脱酸素剤包装体の使用方法
本発明の「脱酸素剤包装体の使用方法」は、本発明の脱酸素剤包装体を、被包装物と共に酸素バリア性を有する包装容器又は外袋に収納・密封して、保存期間中における該包装容器又は外袋内部の空間の酸素濃度を0.2容積%以下に保持することにより、該被包装物の品質を保持すると共に、該脱酸素剤包装体を形成する、酸化分解性プラスチックフィルム(A)の酸化分解を抑制することを特徴とする。
前記被包装物としては食品、医薬品、機械部品等が挙げられる。また、前記被包装物の包装容器又は外袋内での保存期間終了後は前記包装容器又は外袋から被包装物と共に該脱酸素剤包装体を取り出して、該脱酸素剤包装体をコンポストとして処理することが可能である。
【0056】
環境汚染を防止するために、包装体等の材料に酸化分解性プラスチックフィルムを使用すると、使用中に太陽光、紫外線、熱等の影響を受けて包装体の材料が酸化分解を受けて劣化するのを防止するためには、遮光下、低温化での保存すること等が必要になるが、脱酸素剤包装体の包装材料に、酸化分解性のプラスチックフィルム(A)を使用しても、脱酸素剤の存在により使用期間中において、包装容器又は外袋内部の空間の酸素濃度は、極めて低濃度に維持されるので、プラスチックフィルム(A)の酸化分解を抑制することが可能になる。
酸素バリア性を有する包装容器又は外袋を形成する材料としては、公知の材料を使用することができ、例えば二層以上のプラスチックフィルム、紙とプラスチックフィルム、アルミ箔とプラスチックフィルム等が挙げられ、常温での酸素透過度は、100ml/cm2 24hrs bar 以下が好ましく、30ml/cm2 24hrs bar 以下がより好ましい。
被包装物と共に酸素バリア性を有する包装容器又は外袋に収納・密封して、保存期間中における該包装容器又は外袋内部の空間の酸素濃度は、0.2容積%以下であり、0.1容積%以下が好ましい。該空間の酸素濃度はガスクロマトグラフで測定することができる。
【実施例0057】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
酸化分解剤を含有させたポリエチレンフィルムと洋紙を用いて熱融着により袋状物を形成し、該袋状物に脱酸素剤である鉄粉を収納して脱酸素材包装体を作製した。作製した脱酸素材包装体について、酸素吸収性と生分解性の評価を行った。
(i)脱酸素材包装体の作製
[使用した原材料]
ポリエチレンフィルム成形用樹脂は、三菱ケミカル(株)製ポリエチレン(商品名:ノバテック(登録商標)LF405)を使用した。
洋紙は、坪量が50g/m2の市販品を使用した。
酸化分解剤は、ピーライフ・ジャパン・インク(株)製、商品名:P-Life(登録商標)を使用した。尚、ポリエチレンフィルム成形の際には、マスターバッチ(商品名:P-Lifeグリーン20(ベースレジン:ポリエチレン、MI:8)、マスターバッチ中のP-Life濃度:20質量%)を使用した。
上記P-Lifeの組成は、脂肪族モノカルボン酸金属塩50~70重量%、希土類金属化合物10~20重量%、潤滑剤10~20%である。
【0058】
[ポリエチレンフィルムの作製]
上記市販のポリエチレン樹脂に、樹脂組成物中でP-Lifeの濃度が2質量%になるように、P-Lifeグリーン20マスターバッチを添加し、軸径30mmφの単軸押出機を用いて、樹脂温度200℃で混練してペレットを得た。
得られたペレットを同じく軸径30mmφの単軸押出機に、直径13cmの円形ダイを有するインフレーションブロー装置を用いて、円筒内部に圧縮空気を送り、厚み40μmの酸化分解剤が含有されたポリエチレンフィルムを製造した。次に、得られたポリエチレンフィルムに該縦横1mm間隔で直径0.2mmの通気孔を設けた。
[脱酸素剤包装体の作製]
上記洋紙(サイズ:縦50mm、横50mm)に、上記で作製した、通気孔が設けられたポリエチレンフィルムを互いに対向するように重ね合わせて、三方周縁面の幅3mmを140℃の加熱下で加圧により熱融着して袋状とした。次に、該袋状物の中に脱酸素剤の鉄粉3gを収納し、残りの一方の未シールの周縁面を前記と同様に140℃で熱融着してシールし、脱酸素剤包装体を作製した。
(ii)脱酸素剤包装体の評価
得られた脱酸素剤包装体と水10mlを含浸させた綿を500ml容積のガラス瓶に投入して密栓した。25℃で20時間放置した後、前記ガラス瓶内の酸素濃度をガスクロマトグラフで測定した。尚、生分解性の評価は後述する。
【0059】
(実施例2)
実施例2において、酸化分解剤を含有させたポリエチレンフィルムと洋紙を用いて生分解性接着剤を使用した接着により袋状物を形成し、該袋状物に脱酸素剤である鉄粉を収納して脱酸素材包装体を作製した。作製した脱酸素材包装体について、酸素吸収性と生分解性の評価を行った。
(i)脱酸素材包装体の作製
[使用した原材料]
ポリエチレンフィルム成形用樹脂、洋紙、及び酸化分解剤は、実施例1で使用したのと同じものを使用した。接着剤は、ポリ乳酸系生分解性接着剤(東洋モートン(株)製、商品名:EA-H4770)を使用した。
【0060】
[ポリエチレンフィルムの作製]
実施例1と同様にして、酸化分解剤が含有されたポリエチレンフィルムを作製し、得られたフィルムに実施例1に記載したと同様に通気孔を設けた。
[脱酸素剤包装体の作製]
上記洋紙(サイズ:縦50mm、横50mm)の内面側の周縁に、上記ポリ乳酸系生分解性接着剤を水に分散させて25g/m2の割合で塗布後乾燥してホットメルト接着剤として、改質洋紙を得た。
上記改質洋紙に、上記通気孔が設けられたリエチレンフィルムを互いに対向するように重ね合わせて、三方周縁面の幅3mmを140℃に加熱して熱接着して袋状とした。次に、該袋状物の中に脱酸素剤の鉄粉3gを収納し、残りの一方の未シールの周縁内面側を上記と同様に140℃で熱接着してシールし、脱酸素剤包装体を作製した。
(ii)脱酸素剤包装体の評価
実施例1と同様に、得られた脱酸素剤包装体と水10mlを含浸させた綿を500ml容積のガラス瓶に投入して密栓した。25℃で20時間放置した後、前記ガラス瓶内の酸素濃度をガスクロマトグラフで測定した。尚、生分解性の評価は後述する。
【0061】
(実施例3、4)
実施例3、4において、上記実施例2において改質洋紙を作製する際に使用したポリ乳酸系生分解性接着剤の代わりに、実施例3では生分解性ウレタン接着剤、実施例4では化工澱粉コーンポールを使用して、実施例2と同様に袋状物を形成し、該袋状物に脱酸素剤である鉄粉を収納して脱酸素材包装体を作製した。作製した脱酸素材包装体について、酸素吸収性と生分解性の評価を行った。
(i)脱酸素材包装体の作製
[使用した原材料]
ポリエチレンフィルム作製用樹脂、洋紙、及び酸化分解剤は、実施例1で使用したのと同じものを使用した。接着剤は、実施例3では生分解性ウレタン接着剤(トーヨーケム(株)製、商品名:EKK20-143)を使用し、実施例4では化工澱粉コーンポール(日本コーンスターチ(株)製、でん粉を変性して得られる生分解性バイオマスプラスチック)をそれぞれ使用した。
【0062】
[ポリエチレンフィルムの作製]
実施例1と同様にして、酸化分解剤が含有されたポリエチレンフィルムを作製し、得られたフィルムに実施例1で行ったと同様の通気孔を設けた。
[脱酸素剤包装体の作製]
上記洋紙(サイズ:縦50mm、横50mm)の内面側の周縁に、実施例3では上記生分解性ウレタン接着剤を使用し、実施例4では上記化工澱粉コーンポールを使用してそれぞれ水に分散させて上記と同濃度25g/m2の割合で塗布して乾燥させてホットメルト接着剤として改質洋紙を得た以外は実施例1と同様にして脱酸素剤包装体を作製した。
(ii)脱酸素剤包装体の評価
実施例1と同様に、得られた脱酸素剤包装体と水10mlを含浸させた綿を500ml容積のガラス瓶に投入して密栓した。25℃で20時間放置した後、前記ガラス瓶内の酸素濃度をガスクロマトグラフで測定した。尚、生分解性の評価は後述する。
【0063】
(参考例1)
参考例1において、有機系脱酸素剤(D2)の脱酸素作用を確認するために、実施例1で使用した脱酸素剤(鉄粉)3gの代わりに、有機系脱酸素剤(D2)に属するアスコルビン酸ソーダ粉末5gを使用し、また実施例1で使用した酸化分解剤(P-Life)の代わりに、プラスチックの生分解性機能を有する生分解性促進添加剤(市販品)をポリエチレン樹脂組成物中の濃度が2質量%となるよう配合した以外は、実施例1に記載した方法と同様に脱酸素剤包装体を作製した。
得られた脱酸素剤包装体について、実施例1に記載したのと同様に酸素濃度の評価を行った。その結果、25℃で20時間放置した後、ガラス瓶内の酸素濃度は、1/42に減少しており、脱酸素性を有しているいることが確認された。
【0064】
(比較例1)
坪量50g/m2の洋紙の内面側の周縁にホットメルト接着剤(東洋モートン(株)製ヒートシール剤、商品名:AD-33G1A)を塗布して乾燥した後、該洋紙を縦50mm、横50mmに切り取り、縦横1mm間隔で直径0.2mmの通気孔を設けて改質洋紙を得た。該改質洋紙に、縦横1mm間隔で直径0.2mmの通気孔を有する厚さが40μmで同サイズのポリエチレンフィルム(日本ポリエチレン(株)製、商品名:ノバッテック(登録商標)LD LF405)を互いに対向するように重ね合わせて、三方周縁面の幅3mmを140℃に加熱して熱接着して袋状とした。その後、該袋状物内に脱酸素剤の鉄粉3gを収納し、残りの一方の未シールの周縁面を同様に140℃で熱接着してシールして脱酸素剤包装体を作製した。
実施例1と同様に、上記で得られた脱酸素剤包装体と、水10mlを含浸させた綿を500ml容積のガラス瓶に投入して密栓した。25℃で20時間放置した後のガラス瓶内の酸素濃度をガスクロマトグラフで測定した。
【0065】
(比較例2)
坪量50g/m2の洋紙の内面側の周縁にホットメルト接着剤(東洋モートン(株)製ヒートシール剤、商品名:AD-33G1A)を塗布後乾燥し、次に該接着剤が塗布された洋紙を縦50mm、横50mmに切り取り、その後縦横1mm間隔で直径0.2mmの通気孔を設けて改質洋紙を作製した。
該改質洋紙に、縦横1mm間隔で直径0.2mmの通気孔を有する厚さが25μmで同サイズのPET製フィルム(日榮新化(株)製、商品名:白コート25-SN)を互いに対向するように重ね合わせて、三方周縁面の幅3mmを140℃で熱接着して袋状とした。その後、該袋状物内に脱酸素剤の鉄粉3gを収納し、残った未シールの周縁面を同様に140℃で熱接着してシールして脱酸素剤包装体を作製した。
実施例1と同様に、上記で得られた脱酸素剤包装体と、水10mlを含浸させた綿を500ml容積のガラス瓶に投入して密栓した。25℃で20時間放置した後のガラス瓶内の酸素濃度をガスクロマトグラフで測定した。
上記実施例1~4、及び比較例1~2で測定したガラス瓶内の酸素濃度測定結果を表1にまとめて示す。
尚、表1中、「包装体を形成する2つの外層」の欄において、PEは外層ポリオレフィンフィルムの材質はポリエチレンであることを示し、PETは外層フィルムの材質がポリエチレンテレフタレートであることを示す。
【0066】
(コンポスト試験)
上記実施例1~4、及び比較例1~2で作製した脱酸素剤包装体についてコンポスト試験により生分解性を評価した。
825μm(30メッシュ)の篩を通過し、かつ425μm(20メッシュ)の篩を不通過の海砂を105℃で3時間乾燥させた。前記乾燥して得られた海砂320g、105℃で3時間乾燥させた牛糞堆肥60g、および純水166gを混合してコンポストを作製した。得られたコンポスト中に上記実施例1~4で作製した、包装材が生分解性を有する脱酸素剤包装体、及び比較例1~2で作製した包装材が非生分解性である脱酸素剤包装体それぞれを埋め、58℃100%RHの雰囲気下で保存した。
保管開始10週間後、20週間後にそれぞれ取り出して生分解性を評価した。
評価基準は下記の通りである。
〇:脱酸素剤包装体に穴が開くなどの生分解の進行と黄変が観察された。
△:脱酸素剤包装体に穴が開くなどの生分解の進行は認められたが、黄変は観察されなかった。
×:脱酸素剤包装体に穴が開くなどの分解の進行も黄変も観察されなかった。
評価結果をまとめて表1に示す。
【0067】