(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117439
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】アニメーションモデル特徴量算出装置、モデル検索装置、アニメーションモデル特徴量算出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/56 20190101AFI20240822BHJP
【FI】
G06F16/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023550
(22)【出願日】2023-02-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1) 発行日(公開日) 令和4年2月18日 刊行物 DEIM2022最終論文集 Webリンクダウンロードにより公開(公開アドレス https://proceedings-of-deim.github.io/DEIM2022/papers/A43-3.pdf )<資 料> DEIM2022最終論文集 公開ページ<資 料> DEIM2022最終論文集 掲載発表論文<資 料> DEIM2022開催概要 (2) 公開日 令和4年3月2日 集会名、開催場所 第14回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2022)(会期:令和4年2月27日~3月2日)オンラインのみによる開催。<資 料> DEUM2022 プログラム
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】片山 薫
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175DA02
5B175FA01
(57)【要約】
【課題】アニメーションモデルの検索を補助することができる。
【解決手段】アニメーションモデルから切り出される複数の静止モデルのうち1つの静止モデルである基準モデルの特徴量を算出する基準モデル特徴量算出部と、前記静止モデルのうち、前記基準モデルを除く非基準モデルの特徴量を、前記基準モデルから算出される前記アニメーションモデルの部品に固有の部品固有値及び前記基準モデルに対する前記非基準モデルの動作情報に基づいて算出する非基準モデル特徴量算出部と、を備えるアニメーションモデル特徴量算出装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニメーションモデルから切り出される複数の静止モデルのうち1つの静止モデルである基準モデルの特徴量を算出する基準モデル特徴量算出部と、
前記静止モデルのうち、前記基準モデルを除く非基準モデルの特徴量を、前記基準モデルから算出される前記アニメーションモデルの部品に固有の部品固有値及び前記基準モデルに対する前記非基準モデルの動作情報に基づいて算出する非基準モデル特徴量算出部と、
を備えるアニメーションモデル特徴量算出装置。
【請求項2】
前記部品固有値は、前記基準モデルを構成する各部品についてラドン変換し、フーリエ変換することで取得される、
請求項1に記載のアニメーションモデル特徴量算出装置。
【請求項3】
前記動作情報は、前記基準モデルに対する前記非基準モデルの平行移動量及び回転移動量を示す情報であって、
前記非基準モデル特徴量算出部は、前記非基準モデルの前記平行移動量及び前記回転移動量に基づいて、前記部品固有値から平行移動及び回転移動を再現することで前記非基準モデルの特徴量を算出する、
請求項1又は2に記載のアニメーションモデル特徴量算出装置。
【請求項4】
前記アニメーションモデルの複数の部品の前記部品固有値、又は前記部品固有値と前記動作情報に基づいて、前記複数の部品の非基準モデル部品値を算出し、
前記複数の部品のうち、形状およびラベルが同一のものをサブアセンブリモデルとしてまとめ、
前記部品の前記部品固有値又は非基準モデル部品値に基づいて、前記部品が属する前記サブアセンブリモデルのサブアセンブリ値を算出する、
請求項1又は2に記載のアニメーションモデル特徴量算出装置。
【請求項5】
静止モデルである検索モデルの特徴量を算出する検索モデル特徴量算出部と、
前記検索モデルの特徴量と、アニメーションモデルを構成する複数の静止モデルそれぞれの特徴量とから相違度を算出し、前記検索モデルとの相違度が最も小さい静止モデルを含むアニメーションモデルを算出結果とする相違度算出部と、
を備えるモデル検索装置。
【請求項6】
アニメーションモデルから切り出される複数の静止モデルのうち1つの静止モデルである基準モデルの特徴量を算出する基準モデル特徴量算出部と、
前記静止モデルのうち、前記基準モデルを除く非基準モデルの特徴量を、前記基準モデルから算出される前記アニメーションモデルの部品に固有の部品固有値及び前記基準モデルに対する前記非基準モデルの動作情報に基づいて算出する非基準モデル特徴量算出部と、
を有するアニメーションモデル特徴量算出方法。
【請求項7】
コンピュータを請求項1に記載のアニメーションモデル特徴量算出装置として動作させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニメーションモデル特徴量算出装置、モデル検索装置、アニメーションモデル特徴量算出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製造業をはじめとする様々な分野で3DCADモデルなどのCADモデルが活用されている。また、モデルの構造解析や動作イメージの確認のためにCADモデルにアニメーション情報が付加されることもある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Pengjie Wang, Rynson W.H. Lau, Zhigeng Pan, Jiang Wang, Haiyu Song, ``An eigen-based motion retrieval method for real-time animation'', Computers & Graphics, Vol.38, pp.255-267, 2014.
【非特許文献2】Mubbasir Kapadia, I-kao Chiang, Tiju Thomas, Norman Badler, Jr Kider, ``Efficient motion retrieval in large motion databases'', Proceedings of the ACM SIGGRAPH Symposium on Interactive 3D Graphics and Games (I3D '13), pp. 19-28, 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、データベースの中のアニメーション付きモデルを、検索対象である静止モデルなどから検索する方法は存在しない。
本発明の目的は、アニメーションモデルの検索を補助するアニメーションモデル特徴量算出装置、モデル検索装置、アニメーションモデル特徴量算出方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、アニメーションモデルから切り出される複数の静止モデルのうち1つの静止モデルである基準モデルの特徴量を算出する基準モデル特徴量算出部と、前記静止モデルのうち、前記基準モデルを除く非基準モデルの特徴量を、前記基準モデルから算出される前記アニメーションモデルの部品に固有の部品固有値及び前記基準モデルに対する前記非基準モデルの動作情報に基づいて算出する非基準モデル特徴量算出部と、を備えるアニメーションモデル特徴量算出装置である。
【0006】
本発明の一態様は、静止モデルである検索モデルの特徴量を算出する検索モデル特徴量算出部と、前記検索モデルの特徴量と、アニメーションモデルを構成する複数の静止モデルそれぞれの特徴量とから相違度を算出し、前記検索モデルとの相違度が最も小さい静止モデルを含むアニメーションモデルを算出結果とする相違度算出部と、を備えるモデル検索装置である。
【0007】
本発明の一態様は、アニメーションモデルから切り出される複数の静止モデルのうち1つの静止モデルである基準モデルの特徴量を算出する基準モデル特徴量算出部と、前記静止モデルのうち、前記基準モデルを除く非基準モデルの特徴量を、前記基準モデルから算出される前記アニメーションモデルの部品に固有の部品固有値及び前記基準モデルに対する前記非基準モデルの動作情報に基づいて算出する非基準モデル特徴量算出部と、を有するアニメーションモデル特徴量算出方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アニメーションモデルの検索を補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るアニメーションモデル特徴量算出装置1の構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係るアニメーションモデル110の一例を示す図である。
【
図3】基準モデル特徴量算出部121及び非基準モデル特徴量算出部122の特徴量の算出方法を示した模式図である。
【
図4】本実施形態に係るアニメーションモデル特徴量算出装置1の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係るモデル検索装置2の構成例を示す図である。
【
図6】本実施形態の相違度算出方法の一例を示す模式図である。
【
図7】それぞれのアセンブリモデルにおける、5つのアニメーションモデルにおける静止モデルを示す図である。
【
図8】それぞれのアセンブリモデルにおける、5つのアニメーションモデルにおける静止モデルを示す図である。
【
図9】それぞれのアセンブリモデルにおける、5つのアニメーションモデルにおける静止モデルを示す図である。
【
図10】1つのアニメーションモデルの特徴量計算時間を示す図である。
【
図11】モデル検索装置2の正答率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係るアニメーションモデル特徴量算出装置1の構成例を示す図である。アニメーションモデル特徴量算出装置1は、アニメーションモデル取得部11、特徴量算出部12、特徴量出力部13を備える。
【0011】
アニメーションモデル取得部11は、アニメーションモデル110を取得する。アニメーションモデル110は、アニメーションがついたCADモデルである。
図2は本実施形態に係るアニメーションモデル110の一例を示す図である。アニメーションモデル110は、複数の静止モデル111を含む。静止モデル111は、アニメーションモデル110をあるフレームで切り出したモデルである。アニメーションモデル110は、静止モデル111の集合として扱われる。
なお、アニメーションモデル取得部11がアニメーションモデル110を取得し、あるフレームで複数の静止モデル111を切り出してもよい。
【0012】
静止モデル111はアセンブリモデルである。アセンブリモデルは1つ以上のサブアセンブリモデルに分解される。サブアセンブリモデルは1つ以上の部品に分解される。つまり、静止モデル111は複数の部品により構成される。静止モデル111は、アセンブリモデル、サブアセンブリモデル、部品からなる階層構造で表すことができる。
【0013】
また、静止モデル111の部品にはラベルが付与されている。ラベルは、例えば部品の素材、色、生産者などである。ラベルの付与された部品の配置に関する情報をレイアウト情報と呼ぶ。部品が属するサブアセンブリモデルは、例えば部品の形状及びラベルにより決定される。例えば、1つのサブアセンブリモデルには形状及びラベルが同一である部品が所属する。
静止モデル111は、1つの基準モデルを含む。基準モデルではない静止モデル111を非基準モデルと呼ぶ。基準モデルには、モデルを構成する部品の形状と位置が記録されている。例えば、基準モデルには、部品が三次元空間において占める座標が記録されている。非基準モデルには、モデルを構成する各部品の基準モデルからの変化量(平行移動量と回転移動量)が記録されている。例えば
図2に示す例においては、静止モデル111-1を基準モデルとし、静止モデル111-2及び111-3を非基準モデルとする。
【0014】
特徴量算出部12は、アニメーションモデル110に含まれる各静止モデル111の特徴量を算出する。特徴量算出部12は、基準モデル特徴量算出部121及び非基準モデル特徴量算出部122とを備える。基準モデル特徴量算出部121は、基準モデルの特徴量を算出する。非基準モデル特徴量算出部122は、非基準モデルの特徴量を算出する。
【0015】
特徴量出力部13は、特徴量算出部12により算出された特徴量を出力する。出力された特徴量は例えば後述するモデル検索装置2の記憶部29に記憶される。
【0016】
(基準モデルの特徴量算出方法)
基準モデル特徴量算出部121は、基準モデルの特徴量を算出する。基準モデル特徴量算出部121は、基準モデルの部品の特徴量を算出し、当該特徴量に基づいてサブアセンブリモデルの特徴量を算出し、最終的にアセンブリモデルである基準モデルの特徴量を算出する。
【0017】
以下、部品の特徴量の算出方法について説明する。基準モデル特徴量算出部121は、部品に対して、3次元ラドン変換、フーリエ変換を行うことで、部品から部品固有値を算出する。フーリエ変換は、離散フーリエ変換(例えばFFT)によりなされる。部品固有値は、アニメーションモデル110に含まれる静止モデル111で共通する形状、部品やレイアウト情報に固有な値である。
【0018】
以下、3次元ラドン変換の方法について説明する。3次元ラドン変換において、各方向について、部品を予め指定された位置でスライスし、スライスされた部品それぞれの体積を計算する。
【0019】
方向の集合V内の各方向vについて3次元ラドン変換を行うとき、vがx軸の方向になるように部品を回転する。その後、予め指定された位置においてx軸に垂直な平面で部品をスライスし、スライスされた断片の体積を計算する。また、部品の体積が1になるように正規化する。
【0020】
3次元ラドン変換の結果にフーリエ変換をすることにより、基準モデル特徴量算出部121は基準モデルを構成する部品の部品固有値を算出する。非基準モデル特徴量算出部122は、基準モデルを構成する部品の部品固有値及び非基準モデルの動作情報に基づいて回転移動の再現及び平行移動の再現を行うことで、非基準モデルを構成する部品の非基準モデル部品値を算出する。部品固有値は、周波数成分ごとにフーリエ変換した結果で表される。
【0021】
以下、非基準モデル部品値の算出方法について説明する。非基準モデル特徴量算出部122は、部品固有値及び非基準モデルの動作情報に基づいて、初めに回転移動の再現を行う。回転移動の再現は球面調和関数展開により行うことができる。部品がθ回転したとき、回転した部品を三次元ラドン変換及びフーリエ変換した結果は、回転前の部品にとって視点がθ逆回転した状態における三次元ラドン変換及びフーリエ変換した結果と一致する。非基準モデル特徴量算出部122は、この性質を利用して、フーリエ変換した結果である部品固有値のそれぞれの周波数成分について部品の回転移動量に合わせて視点を逆回転することで回転移動の再現を行う。
【0022】
球面調和変換は、球面上で定義された関数g(λ、μ)を球面調和関数Y
n
m(λ、μ)と複素係数(展開係数)s
n
mを用いて式(1)のように展開するものである。
【数1】
【0023】
ここでλは球座標の経度、μはφを緯度としてμ=sinφと定義されるサイン緯度である。nは次数、mは位数であり、Mは展開の切断波数で次数nの最大値である。
回転移動の再現において、部品固有量を関数g
semifinished(λ、μ)として球面調和変換を行い、展開係数s
n
mと球面調和関数Y
n
m(λ、μ)を算出する。球面調和関数Y
n
m(λ、μ)は、任意の角度の値を計算可能である。そのため、展開係数s
n
mと視点の逆回転に対応する角度(λ’、μ’)を用いた逆球面調和変換を行うことで、回転移動した部品の非基準モデル部品値g
rotated(λ、μ)を算出することができる。g
rotated(λ、μ)は式(2)により表すことができる。
【数2】
【0024】
平行移動の再現は、フーリエ変換結果の位相成分をずらすことにより行うことができる。部品の平行移動量がTであるとき、ある視点方向vにはT
v=T・v移動している。周波数fにおける平行移動前のフーリエ変換結果Fa(f)と平行移動後のフーリエ変換結果f(b)には、時間シフトの性質により式(3)が成り立つ。
【数3】
【0025】
式(3)において、Dは三次元ラドン変換を行う範囲の直径である。Dを信号の周期とすると、Tv/Dが時間シフト量に相当する。非基準モデル特徴量算出部122は、回転移動した部品の非基準モデル部品値grotated(λ、μ)の位相成分をずらすことで、基準モデルを構成する部品の部品固有量から、回転移動及び平行移動を再現した非基準モデルを構成する部品の非基準モデル部品値を算出することができる。
【0026】
部品固有値及び非基準モデル部品値算出後は、基準モデル特徴量算出部121及び非基準モデル特徴量算出部122はそれぞれ部品固有値及び非基準モデル部品値に基づいてサブアセンブリ値を算出する。サブアセンブリ値は、サブアセンブリモデルごとの特徴量を算出する過程で中間値として算出される値である。基準モデル特徴量算出部121及び非基準モデル特徴量算出部122は、それぞれ部品固有値及び非基準モデル部品値の和をとることで、サブアセンブリ値を算出する。
【0027】
特徴量算出部12は、サブアセンブリ値を強調して算出する。特徴量算出部12は、強調したサブアセンブリ値を、当該サブアセンブリ値(注目サブアセンブリモデルのサブアセンブリ値)を当該サブアセンブリモデルの体積の和(注目サブアセンブリモデルの体積の和)で割った量と、その他のサブアセンブリモデルのサブアセンブリ値をその他のサブアセンブリモデルの体積の和で割った量を足し合わせることで算出する。強調したサブアセンブリモデルの特徴量Fweightedは、式(4)により表される。
【数4】
【0028】
サブアセンブリ値の強調により、アセンブリモデルの体積に占めるサブアセンブリモデルの体積が大きい場合であっても、当該サブアセンブリモデルのサブアセンブリ値が支配的になるのを防ぐことができる。
【0029】
特徴量算出部12はサブアセンブル値からパワースペクトルを算出し、球面調和関数展開を行い、ノルムを計算することで最終的にサブアセンブリモデルの特徴量を算出する。
【0030】
特徴量算出部12は、球面調和変換の結果の各次数において式(5)のようにノルムをとることで特徴量を算出する。
【数5】
【0031】
特徴量算出部12は、アセンブリモデルの特徴量を、サブアセンブリモデルの特徴量の集合として算出する。
【0032】
図3は、基準モデル特徴量算出部121及び非基準モデル特徴量算出部122の特徴量の算出方法を示した模式図である。基準モデル特徴量算出部121は、基準モデルに対してラドン変換及びフーリエ変換を行うことで部品固有値を算出する。基準モデル特徴量算出部121は、部品固有値からサブアセンブリ値を算出し、パワースペクトル算出、球面調和関数展開、ノルムの計算により最終的に基準モデルの特徴量を算出する。これに対して、非基準モデル特徴量算出部122は、基準モデルに対して計算された部品固有値から平行移動及び回転移動を再現し非基準モデル部品値を算出する。非基準モデル特徴量算出部122は、非基準モデル部品値からサブアセンブリ値を算出し、パワースペクトル算出、球面調和関数展開、ノルムの計算により非基準モデルの特徴量を算出する。非基準モデル特徴量算出部122は、非基準モデルの特徴量を3次元ラドン変換を行うことなく算出できることから、計算時間を抑制することができる。
【0033】
図4は、本実施形態に係るアニメーションモデル特徴量算出装置1の動作を示すフローチャートである。初めに、アニメーションモデル取得部11がアニメーションモデルを取得する(ステップS11)。その後、基準モデル特徴量算出部121がアニメーションモデルに含まれる静止モデルの1つである基準モデルの特徴量を算出する(ステップS12)。非基準モデル特徴量算出部122が、基準モデル特徴量算出部121により算出される部品固有値及び非基準モデルの動作情報に基づいて、非基準モデルの特徴量を算出する(ステップS13)。特徴量出力部13は、算出されたアニメーションモデルの特徴量を算出する(ステップS14)。
【0034】
(検索装置)
図5は、本実施形態に係るモデル検索装置2の構成例を示す図である。モデル検索装置2は、検索モデル取得部21、検索モデル特徴量算出部22、相違度算出部23、結果出力部24及び記憶部29を備える。
【0035】
検索モデル取得部21は、検索モデルを取得する。検索モデルは、静止モデルである。検索モデルは、アニメーションモデルのあるフレームにおいて切り出された静止モデルであってもよく、アニメーションが付されていないCADモデルであってもよい。
【0036】
検索モデル特徴量算出部22は、検索モデルの特徴量を算出する。検索モデル特徴量算出部22は、基準モデル特徴量算出部121と同様の手法で検索モデルの特徴量を算出する。
【0037】
相違度算出部23は、検索モデルの特徴量と、記憶部29に記憶されたアニメーションモデル110の静止モデル111の特徴量とから相違度を算出する。アニメーションモデル110の静止モデル111の特徴量は、アニメーションモデル特徴量算出装置1により算出されたものである。相違度算出部23は、検索モデルの特徴量と1つのアニメーションモデル110に含まれる全ての静止モデル111の特徴量との間の相違度を算出し、最も小さい相違度を当該アニメーションモデル110と検索モデルとの相違度と決定する。この計算を全てのアニメーションモデル110に対して行い、全てのアニメーションモデル110と検索モデルとの相違度を決定する。その後、検索モデルとの相違度が最も小さいアニメーションモデル110を算出結果とする。なお、相違度算出部23は、各アニメーションモデル110と検索モデルとの相違度を算出結果としてもよい。
【0038】
結果出力部24は、相違度算出部23による算出結果を出力する。
【0039】
相違度算出部23は、検索モデルのサブアセンブリモデルの数と異なる数のサブアセンブリモデルを有する静止モデル111に対しては、相違度を算出する対象としなくてもよい。また、相違度算出部23は、検索モデルの部品の数と異なる数の部品を有する静止モデル111に対しては、相違度を算出する対象としなくてもよい。サブアセンブリモデル又は部品の数が異なることは、検索モデルが静止モデル111とは異なるモデルであることを意味しているからである。
【0040】
図6は、本実施形態の相違度算出方法の一例を示す模式図である。
図6において、比較モデル30のサブアセンブリモデル31、32、33、34および検索モデル40のサブアセンブリモデル41、42、43、44の例を示す。比較モデル30は、検索モデル40との間の相違度が算出される静止モデル111である。
図6に示す例は、比較モデル30と検索モデル40のサブアセンブリモデルの数が同じ場合を示す。
【0041】
この例において、比較モデル30は、第1のサブアセンブリモデル31、第2のサブアセンブリモデル32、第3のサブアセンブリモデル33及び第4のサブアセンブリモデル34とを有する。
【0042】
この例において、検索モデル40は、第1のサブアセンブリモデル41、第2のサブアセンブリモデル42、第3のサブアセンブリモデル43及び第4のサブアセンブリモデル44とを有する。
【0043】
比較モデル30のサブアセンブリモデル31~34の特徴量D1~D4は、事前にアニメーションモデル特徴量算出装置1により算出されている。検索モデル40のサブアセンブリモデル41~44の特徴量Q1~Q4は、検索モデル特徴量算出部22により算出される。相違度算出部23は、比較モデル30のサブアセンブリモデルと検索モデル40のサブアセンブリモデルとの間の相違度を全通り算出する。その後、相違度算出部23は、比較モデル30のサブアセンブリモデルと検索モデル40のサブアセンブリモデルとの間の対応関係において対応付けられたサブアセンブリモデル間の相違度の和を算出する。相違度算出部23は、比較モデル30のサブアセンブリモデルと検索モデル40のサブアセンブリモデルとの間の考え得る対応関係全てにおいてサブアセンブリモデル間の相違度の和を算出し、最も小さい相違度の和を比較モデル30と検索モデル40間の相違度として算出する。サブアセンブリモデル間の相違度の和は、例えばQ1とD1との相違度、Q2とD2との相違度、Q3とD3との相違度、Q4とD4との相違度の和である。
【0044】
(実験結果)
以下、行った実験結果を説明する。実験において、3種類のアセンブリモデルを用いた。それぞれのアセンブリモデルにおいて、レイアウト情報が異なる5つのアニメーションモデルに含まれる静止モデルの特徴量を算出した。
図7~9は、それぞれのアセンブリモデルにおける、5つのアニメーションモデルにおける静止モデルを示す図である。5つのアニメーションモデルにおいて静止モデルは、形状、部品の数、付与された動作情報は同じであるが、レイアウト情報が異なる。
【0045】
第1の手法(手法1)と第2の手法(手法2)の2つの手法によりアニメーションモデルに含まれる静止モデルの特徴量を算出した。手法1においては、部品固有値を用いずにアニメーションモデルに含まれる非基準モデルの特徴量を算出した。つまり、手法1においては、同じアニメーションモデルに含まれる静止モデル各々から独立に特徴量を算出した。手法2においては、本実施形態と同様に、部品固有値を用いてアニメーションモデルに含まれる非基準モデルの特徴量を算出した。
【0046】
図10は、1つのアニメーションモデルの特徴量計算時間を示す図である。
図7に示すアセンブリモデルをRadial Engineと呼び、
図8に示すアセンブリモデルをV6 Engineと呼び、
図9に示すアセンブリモデルをLiftと呼ぶ。フレーム数は、アニメーションモデルから切り出す静止モデルの数を示し、アニメーションモデルに含まれる静止モデルの数を示す。他のパラメータは、3次元ラドン変換の断面数が150、視点数が緯度方向に8、経度方向に8の計64である。球面調和変換の切断波数は4、フーリエ変換結果の最大次数を4とした。
図10に示す特徴量計算時間は、10回の試行の平均値である。手法1においては、いずれのアセンブリモデルにおいてもフレーム数とほぼ比例して計算時間が増加しているのに対し、手法2においては、いずれのアセンブリモデルにおいても計算時間の増加を抑制することができた。
【0047】
図11は、モデル検索装置2の正答率を示す図である。ここでは比較モデル及び検索モデルの特徴量の算出における3次元ラドン変換における視点数vを変化させて、検索精度の変化を確認した。他のパラメータは、3次元ラドン変換の断面数が50、球面調和変換の切断波数が経度方向の視点数の半分未満の最大の整数、フーリエ変換結果の最大次数が3、フレーム数が15である。各3次元ラドン変換における視点数vごとに手法1及び手法2で異なる比較モデルを作成した。モデル検索装置2は、検索モデルとの間の相違度が最も小さいアニメーションモデルを出力する。検索モデルは、特徴量が算出されるアニメーションモデルのうちの1つのアニメーションモデルから切り出された静止モデルである。モデル検索装置2は、視点数vごと、手法ごとに20回検索を行い、正しいアニメーションモデルを出力することができた割合を正答率とした。
【0048】
手法1における正答率と比較して、手法2における正答率は視点数を増やすと概ね同じである。以上より、手法2により計算時間の増加を抑制した場合であっても、手法1と同様の精度でアニメーションモデルを検索することができた。
【0049】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、上述した実施形態では3次元のモデルを使用したが、これに限られない。例えば、アニメーションモデルはアニメーションがついた2次元のモデルであってもよい。このとき、特徴量の算出においては、3次元ラドン変換ではなく2次元ラドン変換をすればよく、また、球面調和変換をしなくてもよい。
【0050】
検索モデルとして、1つのアニメーションモデルをサンプリングした静止モデルの集合を使用してもよい。このとき、検索モデルと同じく比較モデルの集合からなるアニメーションモデルとの間の類似度は、各々のアニメーションに含まれる静止モデルの総当たりを算出し、その最小値である。
【0051】
上述した実施形態では、モデル検索装置2の記憶部29に記憶されるアニメーションモデル110の静止モデル111の特徴量は、
図3に示す手法で算出されたものであるが、上述の手法1(部品固有値を用いずにアニメーションモデルに含まれる非基準モデルの特徴量を算出する手法)により算出されたものであってもよい。
【0052】
アニメーションモデル特徴量算出装置1及びモデル検索装置2の構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 アニメーションモデル特徴量算出装置、11 アニメーションモデル取得部、110 アニメーションモデル、111 静止モデル、12 特徴量算出部、121 基準モデル特徴量算出部、122 非基準モデル特徴量算出部、13 特徴量出力部、2 モデル検索装置、21 検索モデル取得部、22 検索モデル特徴量算出部、23 相違度算出部、24 結果出力部、29 記憶部