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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117442
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】シート搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 20/10 20060101AFI20240822BHJP
   B65H 23/10 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B65H20/10 A
B65H23/10
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023553
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】三上 正晃
(72)【発明者】
【氏名】松下 貴博
【テーマコード(参考)】
3F103
3F104
【Fターム(参考)】
3F103AA05
3F103BC01
3F103BC08
3F103BC10
3F103BC11
3F103BC13
3F103EA15
3F103EA17
3F104AA05
3F104FA14
3F104FA19
3F104GA06
3F104JA08
3F104KA11
(57)【要約】
【課題】シートを裏返すターン部においてシートを浮かせる力を確保する。
【解決手段】シート搬送装置10は、第1面1Aと第2面1Bとを有する帯状のシート1が第1面1Aを下にして搬送される第1搬送部20と、第1搬送部20の下流に設けられ、第2面1Bが下になるように、第1面1Aを内側に向けてシート1を裏返すターン部30とを備える。ターン部30は、シート1が裏返される際に沿う凸曲面31を備える。凸曲面31には、上流側の端部領域31Uに設けられシート1の第1面1Aに向けてエアを噴射する第1エア噴射部32と、上流側の端部領域31Uよりも下流領域31Dに設けられシート1の第1面1Aに向けてエアを噴射する第2エア噴射部33と、が形成されている。第1エア噴射部32は、第2エア噴射部33よりも大きい浮揚力を発生させるようにエアを噴射する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面の裏面の第2面とを有する帯状のシートが前記第1面を下にして搬送される第1搬送部と、
前記第1搬送部の下流に設けられ、前記第2面が下になるように、前記第1面を内側に向けて前記シートを裏返すターン部と、
前記ターン部の下流に設けられ、前記第2面を下にして前記シートが搬送される第2搬送部と、を備え、
前記第1搬送部は、前記シートの前記第1面に向けてエアを噴射するエアノズルを備え、噴射するエアによって前記シートを浮かせることが可能に構成され、
前記ターン部は、前記シートが裏返される際に沿う凸曲面を備え、
前記凸曲面には、上流側の端部領域に設けられ前記シートの前記第1面に向けてエアを噴射する第1エア噴射部と、前記上流側の端部領域よりも下流領域に設けられ前記シートの前記第1面に向けてエアを噴射する第2エア噴射部と、が形成され、
前記第1エア噴射部は、前記第2エア噴射部よりも大きい浮揚力を発生させるようにエアを噴射する、
シート搬送装置。
【請求項2】
前記第1エア噴射部は、前記凸曲面に開口し前記シートの幅方向に延びるスリットから構成され、
前記第2エア噴射部は、前記凸曲面に開口した複数のエア噴射孔から構成されている、
請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記スリットの前記幅方向の長さは、前記シートの前記幅方向の長さよりも長い、
請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記ターン部は、
前記スリットおよび前記複数のエア噴射孔に連通した内部空間と、
前記内部空間にエアを導入するエア導入口と、
前記内部空間に設けられ、前記スリットに向かうようにエアを誘導する整流板と、を備えている、
請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記整流板の前記スリット側の端部は、鉛直方向よりも前記シートの搬送方向の下流側に傾いている、
請求項4に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記シートの搬送方向に関する前記スリットの幅は、前記幅方向の端部よりも中央部において広い、
請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記シートの搬送方向に関する前記スリットの幅は、2mm以下である、
請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記凸曲面は、断面円弧状に形成され、上方の頂点からさらに前記シートの搬送方向の上流側に延びており、
前記第1エア噴射部は、前記凸曲面の上方の頂点よりも前記搬送方向の上流側に配置されている、
請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
前記第1エア噴射部は、前記凸曲面の上方の頂点から前記搬送方向の上流側に15度以内の位置に配置されている、
請求項8に記載のシート搬送装置。
【請求項10】
前記シートは、電池の電極シートであり、
前記第1面には、活物質を含む塗工材が塗工されている、
請求項1に記載のシート搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、塗工装置によって塗工膜が形成されたウェブを搬送して、乾燥装置内を通過させるウェブの搬送装置が開示されている。特許文献1に記載の搬送装置において、ウェブの搬送経路は、ウェブが上方向きに走行した後、2本のターンロールを回って下方向きに折り返して走行するように設定されている。ターンロールには、ウェブを浮上させるエアを吹き付けるための多数の開孔が設けられている。特許文献1によれば、ターンロールの開孔からエアを噴射することによりウェブがターンロールから浮上し、ウェブをフローティング状態に支持して搬送できる、とされている。これにより、ウェブの未乾燥状態の塗工面が損傷することを防止できる、とされている。
【0003】
また、例えば特許文献2には、塗工層が形成された帯状の電極箔が搬送される複数の電極搬送区間を有する電極製造装置が開示されている。複数の電極搬送区間は上下方向に並んでおり、それぞれ略水平に延びている。複数の電極搬送区間の間には、上下一対の折り返し用ローラが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-149963号公報
【特許文献2】特開2010-182621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されたシート搬送装置は、シートを略水平方向に搬送した後、折り返しローラが設けられたターン部を縦方向に巻くようにしてシートを裏返す。例えば、このようなシート搬送装置では、ターン部の入口においてシートを浮かせるための十分な浮揚力が得られないと、シートがターン部に接触してしまうおそれがある。ここでは、シートを裏返すターン部にシートが接触しにくいシート搬送装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで提案されるシート搬送装置は、第1搬送部と、ターン部と、第2搬送部と、を備える。前記第1搬送部では、第1面と前記第1面の裏面の第2面とを有する帯状のシートが前記第1面を下にして搬送される。前記ターン部は、前記第1搬送部の下流に設けられ、前記第2面が下になるように、前記第1面を内側に向けて前記シートを裏返す。前記第2搬送部は、前記ターン部の下流に設けられ、前記第2面を下にして前記シートが搬送される。前記第1搬送部は、前記シートの前記第1面に向けてエアを噴射するエアノズルを備え、噴射するエアによって前記シートを浮かせることが可能に構成されている。前記ターン部は、前記シートが裏返される際に沿う凸曲面を備えている。前記凸曲面には、上流側の端部領域に設けられ前記シートの前記第1面に向けてエアを噴射する第1エア噴射部と、前記上流側の端部領域よりも下流領域に設けられ前記シートの前記第1面に向けてエアを噴射する第2エア噴射部と、が形成されている。前記第1エア噴射部は、前記第2エア噴射部よりも大きい浮揚力を発生させるようにエアを噴射する。
【0007】
上記シート搬送装置によれば、凸曲面の上流側の端部領域に設けられた第1エア噴射部から噴射されるエアの浮揚力は、下流領域に設けられた第2エア噴射部よりも大きい。これにより、凸曲面の上流側の端部領域にシートを接触しにくくすることができる。その結果、シートをターン部に接触しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】シート搬送装置の模式的な断面図である。
図2】シート搬送装置の模式的な平面図である。
図3】エアの流れを示すターン部の模式的な断面図である。
図4】第1エア噴射部を備えない場合のエアの流れを示すターン部の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、シート搬送装置の一実施形態を説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、各図は、模式図であり、必ずしも実際の実施品が忠実に反映されたものではない。以下では、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0010】
[シート搬送装置の構成]
図1は、シート搬送装置10の模式的な断面図である。シート搬送装置10は、電池の電極シート1を搬送する装置である。本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを含むとともに、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のような化学電池と電気二重層キャパシタ等のような物理電池とを含む概念である。
【0011】
図1に示すように、シート搬送装置10は、電極シート1を搬送途中で裏返すように構成されている。電極シート1は、電極箔2の一方の表面に塗工材3が塗工されたものであり、帯状に形成されている。電極シート1は、活物質を含む塗工材3が塗工された塗工面1Aと、塗工面1Aの裏面の非塗工面1Bとを有する。シート搬送装置10の図示部分は、ここでは、塗工材3が未乾燥の状態の電極シート1を搬送するものである。ただし、シート搬送装置10の図示部分は、塗工材3を乾燥させた後の電極シート1を搬送するものであってもよい。
【0012】
図1に示すように、シート搬送装置10は、電極シート1が搬送される第1搬送部20と、第1搬送部20の下流に設けられたターン部30と、ターン部30の下流に設けられた第2搬送部40と、を備えている。第1搬送部20および第2搬送部40は、ここでは、それぞれ略水平に設けられている。第1搬送部20では、電極シート1は、塗工面1Aを下にして搬送される。ターン部30では、非塗工面1Bが下になるように、塗工面1Aを内側に向けて電極シート1が裏返される。ターン部30における電極シート1の搬送経路は、上下方向を含む方向に延びている。第2搬送部40では、非塗工面1Bを下にして電極シート1が搬送される。第2搬送部40は、第1搬送部20よりも下方に配置されている。
【0013】
第1搬送部20は、電極シート1の塗工面1Aに向けてエアを噴射する上流側エアノズル21を備えている。第1搬送部20は、噴射するエアによって電極シート1を浮かせることが可能に構成されている。これにより、未乾燥(または乾燥後)の塗工材3がシート搬送装置10に触れ、塗工材3が剥離等することが防止されている。上流側エアノズル21は、第1搬送部20における電極シート1の搬送経路よりも下方に配置され、上方に向かってエアを噴射する。第1搬送部20における電極シート1の搬送経路よりも上方には、上流側搬送ローラ22が設けられている。上流側搬送ローラ22は、電極シート1の非塗工面1Bに接触し、電極シート1を下流に搬送する。
【0014】
本実施形態では、上流側エアノズル21は、塗工材3を乾燥させるためのエアを噴射するノズルでもある。本実施形態では、電極シート1は、シート搬送装置10によって搬送されながら乾燥される。ただし、シート搬送装置10は、塗工材3が未乾燥状態の電極シート1を、別に設けられた乾燥装置に搬送するものであってもよい。
【0015】
ターン部30は、電極シート1が裏返される際に沿う凸曲面31を備えている。裏返すとは、ここでは、上面と下面とが入れ替わるように電極シート1を旋回させることを意味する。図1に示すように、凸曲面31は、ここでは、断面円弧状に形成されている。ただし、凸曲面31は、電極シート1が沿うことができる他の曲面形状を有していてもよい。凸曲面31には、上流側の端部領域31Uに設けられ電極シート1の塗工面1Aに向けてエアを噴射する第1エア噴射部32と、上流側の端部領域31Uよりも下流領域31Dに設けられ電極シート1の塗工面1Aに向けてエアを噴射する第2エア噴射部33と、が形成されている。第1エア噴射部32および第2エア噴射部33から噴射されるエアにより、電極シート1は、凸曲面31から浮く。電極シート1は、凸曲面31から離間した状態で搬送され、凸曲面31に沿って搬送されることにより裏返される。本実施形態では、第1エア噴射部32は、第2エア噴射部33よりも大きい浮揚力を発生させるようにエアを噴射する。ターン部30の詳細については後述する。
【0016】
第2搬送部40は、電極シート1の塗工面1Aに向けてエアを噴射する下流側エアノズル41を備えている。下流側エアノズル41は、第2搬送部40における電極シート1の搬送経路よりも上方に配置され、下方に向かってエアを噴射する。第2搬送部40では、電極シート1は塗工面1Aが上を向くように搬送される。第2搬送部40における電極シート1の搬送経路よりも下方には、下流側搬送ローラ42が設けられている。下流側搬送ローラ42は、電極シート1の下面となった非塗工面1Bに接触し、電極シート1を下流に搬送する。
【0017】
[ターン部の構成]
図1に示すように、ターン部30は、中空に構成されており、内部空間31Aを備えている。図2は、シート搬送装置10の模式的な平面図である。図2に示すように、第1エア噴射部32は、凸曲面31に開口し電極シート1の幅方向に延びるスリット32Aから構成されている。図1に示すように、内部空間31Aとスリット32Aとは連通している。第2エア噴射部33は、凸曲面31に開口した複数のエア噴射孔33Aから構成されている。内部空間31Aと複数のエア噴射孔33Aとは連通している。スリット32Aによって構成された第1エア噴射部32の開口率は、複数のエア噴射孔33Aにより構成された第2エア噴射部33の開口率よりも大きい。本実施形態では、開口率を大きくすることにより、第1エア噴射部32から噴射されるエアによる浮揚力を第2エア噴射部33よりも大きくしている。
【0018】
図1に示すように、ターン部30は、内部空間31Aにエアを導入するエア導入口34を備えている。エア導入口34は、図示しない送風ファンに接続されている。送風ファンによりエア導入口34から内部空間31Aに供給されたエアは、第1エア噴射部32のスリット32Aおよび第2エア噴射部33の複数のエア噴射孔33Aから噴射される。なお、エアは送風ファンではなく、例えば、圧縮エアを生成するエアコンプレッサにより供給されてもよい。
【0019】
図1に示すように、ターン部30は、内部空間31Aに設けられ、スリット32Aに向かうようにエアを誘導する整流板35を備えている。整流板35により、スリット32A付近のエア圧が上昇し、その結果、スリット32Aから噴射されるエアの流量および圧力が上昇する。整流板35によっても、第1エア噴射部32から噴射されるエアによる浮揚力を第2エア噴射部33よりも大きくすることができる。整流板35の下端はエア導入口34側の端部であり、側面視においてエア導入口34の上部を覆うように構成されている。これにより、エア導入口34に供給されたエアの一部がスリット32Aに誘導され、スリット32Aから噴射されるエアの流量および圧力が上昇する。ここでは、整流板35の下端は、側面視においてエア導入口34の半分よりも下方まで延びている。ただし、整流板35の下端の位置は特に限定されず、エア導入口34の半分よりも上方に配置されていてもよい。整流板35の上端部はスリット32A側の端部であり、鉛直方向よりも電極シート1の搬送方向の下流側に傾いている。鉛直方向は、ここでは、電極シート1の搬送方向および幅方向に直交する方向である。これにより、スリット32Aから噴射されるエアは、電極シート1の搬送方向の下流側に傾いた斜め上方に向かって噴射される。整流板35の上端部の鉛直方向に対する角度は、好ましくは、10度以上45度以下である。さらに好ましくは、整流板35の上端部の鉛直方向に対する角度は、10度以上20度以下である。
【0020】
図2に示すように、スリット32Aの電極シート1の幅方向の長さは、電極シート1の幅方向の長さよりも長く構成されている。また、電極シート1の搬送方向に関するスリット32Aの幅は、幅方向の端部よりも中央部において広く構成されている。ここでは、スリット32Aは、平面視において電極シート1の幅方向に長い扁平な八角形の形状を有している。ただし、スリット32Aの形状は特に限定されず、例えば、六角形、菱形、長方形、電極シート1の幅方向の端部が略円形の長孔、あるいは楕円形等であってもよい。電極シート1の搬送方向に関するスリット32Aの幅は、電極シート1の幅方向の位置によらず同じであってもよい。電極シート1の搬送方向に関するスリット32Aの幅は、好ましくは、0.2mm以上2mm以下である。電極シート1の搬送方向に関するスリット32Aの幅は、幅方向の端部において0.4mm以上1mm以下(図2にL1で示す)であると好ましく、幅方向の中央部において0.6mm以上2mm以下(図2にL2で示す)であると好ましい。
【0021】
図1に示すように、断面円弧状に形成された凸曲面31は、上方の頂点からさらに電極シート1の搬送方向の上流側に延びている。第1エア噴射部32は、凸曲面31の上方の頂点よりも搬送方向の上流側に配置されている。好ましくは、第1エア噴射部32は、凸曲面31の上方の頂点から搬送方向の上流側に15度以内の位置に配置されているとよい。凸曲面31の上方の頂点に対するスリット32Aの角度は、さらに好ましくは、10度以上15度以下である。
【0022】
[実施形態の作用効果]
以下では、本実施形態に係るシート搬送装置10によって生まれるエアの流れと、それによって奏される効果について説明する。図3は、エアの流れを示すターン部30の模式的な断面図である。図4は、第1エア噴射部32を備えない場合のエアの流れを示すターン部130の模式的な断面図である。図4に示すように、第1エア噴射部32を備えないターン部130においては、エアは第2エア噴射部133の複数のエア噴射孔133Aからのみ噴射される。本願発明者の知見によれば、図4に示すように、第2エア噴射部133から噴射されたエアの一部は、電極シート1とターン部130との隙間に沿って、ターン部130よりも上流の第1搬送部120上に排出される。このようなエアの流れにより、第1搬送部120に近いターン部130の入口付近でエアの圧力が低下する。本願発明者の知見によれば、ターン部130に沿ったポイントP1ではエア圧が高く、ポイントP1よりも上流側のポイントP2ではポイントP1よりもエア圧が低く、ポイントP2よりもさらに上流側のポイントP3ではポイントP2よりもエア圧がさらに低い。そのため、電極シート1を浮上させる力は、ターン部130の入口に近いほど弱くなり、ターン部130の入口に近い位置では電極シート1がターン部130に接触しやすくなる。
【0023】
さらに、本願発明者の知見によれば、ターン部130の上方の頂点よりも搬送方向の上流部分P4では、電極シート1とターン部130との間が負圧になることもある。これにより、ターン部130の入口付近では電極シート1がターン部130にさらに接触しやすくなる。
【0024】
それに対して、図3に示すように、本実施形態では、凸曲面31には、上流側の端部領域31Uに設けられた第1エア噴射部32と、上流側の端部領域31Uよりも下流領域31Dに設けられた第2エア噴射部33と、が形成されており、第1エア噴射部32は、第2エア噴射部33よりも大きい浮揚力を発生させるようにエアを噴射する。第1エア噴射部32から噴射されるエアの浮揚力を第2エア噴射部33よりも大きくすることにより、従来であればターン部30の入口に近いほど弱くなる浮揚力をターン部30の入口付近で大きくすることができる。これにより、凸曲面31の上流側の端部領域31Uに電極シート1が接触しにくくなる。その結果、電極シート1をターン部30に接触しにくくすることができる。
【0025】
また、第1エア噴射部32から噴射されるエアは、第2エア噴射部33から噴射されたエアが第1搬送部20上に排出されるのを阻害する。これにより、電極シート1とターン部30との間の圧力の低下が抑制される。このことによっても、電極シート1をターン部30に接触しにくくすることができる。
【0026】
本実施形態では、第1エア噴射部32は、凸曲面31に開口し電極シート1の幅方向に延びるスリット32Aから構成されている。一方、第2エア噴射部33は、凸曲面31に開口した複数のエア噴射孔33Aから構成されている。かかる構成によれば、第1エア噴射部32の開口率を第2エア噴射部33の開口率よりも大きくすることができる。これにより、第1エア噴射部32から噴射されるエアによる浮揚力を、第2エア噴射部33から噴射されるエアによる浮揚力よりも大きくすることができる。また、第1エア噴射部32をスリット32Aで構成することにより、第1エア噴射部32からエアを切れ目なく噴射することができる。そのため、第2エア噴射部33からのエアが第1搬送部20上に排出されるのを阻害する効果を高めることができる。
【0027】
本実施形態では、スリット32Aの幅方向の長さは、電極シート1の幅方向の長さよりも長い(図2参照)。そのため、第1エア噴射部32から噴射されるエアによって電極シート1の浮揚力を高める効果を、電極シート1の幅方向全幅にわたって発揮できる。
【0028】
さらに、本実施形態では、ターン部30は、スリット32Aおよび複数のエア噴射孔33Aに連通した内部空間31Aと、内部空間31Aにエアを導入するエア導入口34と、内部空間31Aに設けられスリット32Aに向かうようにエアを誘導する整流板35と、を備えている。前述したように、整流板35により、スリット32Aから噴射されるエアの流量および圧力を上昇させることができる。これにより、凸曲面31の上流側の端部領域31Uにおいて、電極シート1を浮かせる力をより大きくすることができる。
【0029】
さらに、本実施形態では、整流板35のスリット32A側の端部は、鉛直方向よりも電極シート1の搬送方向の下流側に傾いている。そのため、第1エア噴射部32からのエアは、電極シート1の搬送方向下流に傾いた方向に噴射される。これにより、第1エア噴射部32から第2エア噴射部33に向かうようにエアが噴射されるため、第2エア噴射部33から噴射されたエアが第1搬送部20上に排出されるのを阻害する効果が高まる。その結果、電極シート1がターン部30に接触するおそれをさらに低減できる。
【0030】
本実施形態では、電極シート1の搬送方向に関するスリット32Aの幅は、幅方向の端部よりも中央部において広く構成されている(図2参照)。これにより、スリット32Aの幅方向の中央部から噴射されるエアの量が多くなる。エアは、スリット32Aの幅方向の中央部よりも端部において外部に逃げやすい。かかるスリット32Aの形状によれば、エアが逃げにくい幅方向の中央部におけるエアの量を多くし、エアが逃げやすい幅方向の端部におけるエアの量を少なくすることができる。その結果、電極シート1を浮かせるためのエアの量を増やすことができる。
【0031】
電極シート1の搬送方向に関するスリット32Aの幅は、2mm以下であることが好ましい。スリット32Aの幅を2mm以下とすることにより、内部空間31Aのスリット32A付近のエアの圧力が高くなる。これにより、スリット32Aから噴射されるエアの圧力も大きくなり、電極シート1を浮かせる力を大きく保つことができる。
【0032】
本実施形態では、第1エア噴射部32は、凸曲面31の上方の頂点よりも搬送方向の上流側に配置されている。これにより、エア圧が特に低くなりやすく、負圧になることもあるターン部30の上方の頂点よりも上流部分(図4のP4に相当)に、第1エア噴射部32から噴射されたエアが供給される。そのため、当該上流部分のエア圧が高く保たれる。ターン部30の上方の頂点または頂点よりも下流に第1エア噴射部32を設けると、頂点よりも上流側に負圧が発生し、頂点よりも上流側に第1エア噴射部32を設ける場合よりも浮揚力が減少する。
【0033】
好適には、第1エア噴射部32は、凸曲面31の上方の頂点から搬送方向の上流側に15度以内の位置に配置されているとよい。第1エア噴射部32の凸曲面31の上方の頂点に対する角度が大きい方が頂点よりも上流側に負圧が発生しにくいが、第1エア噴射部32と電極シート1との距離が長くなる。そのため、第1エア噴射部32から噴射されるエアが電極シート1を浮かせる力は弱くなる。凸曲面31の上方の頂点から搬送方向の上流側に15度以内の位置に第1エア噴射部32が配置されていると、負圧の発生しにくさと、第1エア噴射部32から噴射されるエアが電極シート1を浮かせる力とのバランスが良好であり、電極シート1を浮上させる力を大きく保つことができる。
【0034】
以上、ここで提案されるシート搬送装置の一実施形態について説明した。しかし、上記実施形態は一例に過ぎず、他の態様で実施することもできる。上記した実施形態は、特に言及された場合を除いて本発明を限定しない。また、ここで開示される技術は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされ得る。
【0035】
例えば、シート搬送装置は、電池の電極シートを搬送するものには限定されず、他の帯状のシートを搬送するものであってもよい。例えば、第1エア噴射部が設けられる凸曲面は、半円または半円に満たない円弧状であってもよく、上流側の端部領域は円弧の上方の頂点よりも上流側には限定されない。第1エア噴射部の形状はスリット状には限定されない。第1エア噴射部は、例えば、複数の孔がシートの幅方向に並んで構成されていてもよい。第1搬送部は塗工部を下にしてシートを搬送するように構成されていればよく、シートを水平方向以外の方向に搬送してもよい。第2搬送部も塗工部を上にしてシートを搬送するように構成されていればよく、シートを水平方向以外の方向に搬送してもよい。
【0036】
また、例えば、シート搬送装置は、第1エア噴射部の浮揚力を第2エア噴射部よりも大きくするように構成されていなくてもよい。第2エア噴射部から噴射されたエアの第1搬送部上への排出が第1エア噴射部から噴射されるエアにより阻害されれば、電極シートとターン部との間の圧力の低下は抑制される。このことにより、電極シートがターン部に接触するおそれを低減できる。
【0037】
本明細書は、以下の各項に記載の開示を含んでいる。
【0038】
項1:
第1面と前記第1面の裏面の第2面とを有する帯状のシートが前記第1面を下にして搬送される第1搬送部と、
前記第1搬送部の下流に設けられ、前記第2面が下になるように、前記第1面を内側に向けて前記シートを裏返すターン部と、
前記ターン部の下流に設けられ、前記第2面を下にして前記シートが搬送される第2搬送部と、を備え、
前記第1搬送部は、前記シートの前記第1面に向けてエアを噴射するエアノズルを備え、噴射するエアによって前記シートを浮かせることが可能に構成され、
前記ターン部は、前記シートが裏返される際に沿う凸曲面を備え、
前記凸曲面には、上流側の端部領域に設けられ前記シートの前記第1面に向けてエアを噴射する第1エア噴射部と、前記上流側の端部領域よりも下流領域に設けられ前記シートの前記第1面に向けてエアを噴射する第2エア噴射部と、が形成され、
前記第1エア噴射部は、前記第2エア噴射部よりも大きい浮揚力を発生させるようにエアを噴射する、
シート搬送装置。
【0039】
項2:
前記第1エア噴射部は、前記凸曲面に開口し前記シートの幅方向に延びるスリットから構成され、
前記第2エア噴射部は、前記凸曲面に開口した複数のエア噴射孔から構成されている、
項1に記載のシート搬送装置。
【0040】
項3:
前記スリットの前記幅方向の長さは、前記シートの前記幅方向の長さよりも長い、
項2に記載のシート搬送装置。
【0041】
項4:
前記ターン部は、
前記スリットおよび前記複数のエア噴射孔に連通した内部空間と、
前記内部空間にエアを導入するエア導入口と、
前記内部空間に設けられ、前記スリットに向かうようにエアを誘導する整流板と、を備えている、
項2または3に記載のシート搬送装置。
【0042】
項5:
前記整流板の前記スリット側の端部は、鉛直方向よりも前記シートの搬送方向の下流側に傾いている、
項4に記載のシート搬送装置。
【0043】
項6:
前記シートの搬送方向に関する前記スリットの幅は、前記幅方向の端部よりも中央部において広い、
項2~5のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【0044】
項7:
前記シートの搬送方向に関する前記スリットの幅は、2mm以下である、
項2~6のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【0045】
項8:
前記凸曲面は、断面円弧状に形成され、上方の頂点からさらに前記シートの搬送方向の上流側に延びており、
前記第1エア噴射部は、前記凸曲面の上方の頂点よりも前記搬送方向の上流側に配置されている、
項1~7のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【0046】
項9:
前記第1エア噴射部は、前記凸曲面の上方の頂点から前記搬送方向の上流側に15度以内の位置に配置されている、
項8に記載のシート搬送装置。
【0047】
項10:
前記シートは、電池の電極シートであり、
前記第1面には、活物質を含む塗工材が塗工されている、
項1~9のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【符号の説明】
【0048】
1 電極シート(シート)
1A 塗工面(第1面)
1B 非塗工面(第2面)
2 電極箔
3 塗工材
10 シート搬送装置
20 第1搬送部
21 上流側エアノズル(エアノズル)
22 上流側搬送ローラ
30 ターン部
31 凸曲面
31A 内部空間
31D 下流領域
31U 上流側の端部領域
32 第1エア噴射部
32A スリット
33 第2エア噴射部
33A エア噴射孔
34 エア導入口
35 整流板
40 第2搬送部
41 下流側エアノズル
42 下流側搬送ローラ
図1
図2
図3
図4