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特開2024-117446電解コンデンサ素子及び電解コンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117446
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】電解コンデンサ素子及び電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/028 20060101AFI20240822BHJP
   H01G 9/02 20060101ALI20240822BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20240822BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20240822BHJP
   H01G 9/145 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01G9/028 F
H01G9/02
H01G9/15
H01G9/00 290H
H01G9/145
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023557
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000103220
【氏名又は名称】エルナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】天羽 薫
(72)【発明者】
【氏名】山田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】染井 秀徳
(57)【要約】
【課題】 ESRを低減することができる電解コンデンサ素子及び電解コンデンサを提供する。
【解決手段】 本発明の電解コンデンサ素子は、導電性高分子が含浸されたセパレータと、前記セパレータを介して互いに対向する陽極箔及び陰極箔とを有し、前記セパレータの端部には、3(mm)以下の幅を有する前記導電性高分子の帯状の集塊が、前記端部に沿って形成されていることを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子が含浸されたセパレータと、
前記セパレータを介して互いに対向する陽極箔及び陰極箔とを有し、
前記セパレータの端部には、3(mm)以下の幅を有する前記導電性高分子の帯状の集塊が、前記端部に沿って形成されていることを特徴とする電解コンデンサ素子。
【請求項2】
前記セパレータ、前記陽極箔、及び前記陰極箔は所定方向に巻き回されており、
前記所定方向に対する略直交方向における前記端部の反対側の他の端部には、3(mm)以下の幅を有する前記導電性高分子の他の帯状の集塊が、前記他の端部に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ素子。
【請求項3】
前記セパレータに形成された前記導電性高分子の集塊の幅は、2(mm)以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサ素子。
【請求項4】
前記セパレータに形成された前記導電性高分子の集塊の幅は、1(mm)以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサ素子。
【請求項5】
前記陽極箔には、前記導電性高分子の帯状の集塊が前記端部に沿って付着していることを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサ素子。
【請求項6】
前記陰極箔には、前記導電性高分子の帯状の集塊が前記端部に沿って付着していることを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサ素子。
【請求項7】
請求項1または2に記載の電解コンデンサ素子を備えることを特徴とする電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ素子及び電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
陽極箔、陰極箔、及びセパレータを備え、誘電体層が形成された陽極箔の表面に導電性高分子膜を形成した巻回体を電解液に浸漬することにより製造される電解コンデンサが知られている。この種の電解コンデンサはハイブリット電解コンデンサなどと呼称され、小型かつ大容量でESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)が低く、例えば車載品用電子部品として広く用いられている。
【0003】
例えば特許文献1及び2には、ハイブリッド電解コンデンサの製造において、セパレータに導電性高分子が含浸されるように、導電性高分子の分散液または溶液(以下、導電性高分子液と表記)に電解コンデンサ素子を浸漬する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2019-516241号公報
【特許文献2】米国特許第8462484号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、セパレータに導電性高分子を十分に含浸させることは難しく、導電性高分子膜がセパレータに一様に形成されず、高さ方向の両端部に偏ることがある。この場合、セパレータの中央部に近い領域ほど、導電性高分子が少なく、電気抵抗が高くなる。このため、電解コンデンサのESRを十分に低減することが難しい。
【0006】
そこで本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ESRを低減することができる電解コンデンサ素子及び電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電解コンデンサ素子は、導電性高分子が含浸されたセパレータと、前記セパレータを介して互いに対向する陽極箔及び陰極箔とを有し、前記セパレータの端部には、3(mm)以下の幅を有する前記導電性高分子の帯状の集塊が、前記端部に沿って形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記の電解コンデンサ素子において、前記セパレータ、前記陽極箔、及び前記陰極箔は所定方向に巻き回されており、前記所定方向に対する略直交方向における前記端部の反対側の他の端部には、3(mm)以下の幅を有する前記導電性高分子の他の帯状の集塊が、前記他の端部に沿って形成されてもよい。
【0009】
上記の電解コンデンサ素子において、前記セパレータに形成された前記導電性高分子の集塊の幅は、2(mm)以下であってもよい。
【0010】
上記の電解コンデンサ素子において、前記セパレータに形成された前記導電性高分子の集塊の幅は、1(mm)以下であってもよい。
【0011】
上記の電解コンデンサ素子において、前記陽極箔には、前記導電性高分子の帯状の集塊が前記端部に沿って付着していてもよい。
【0012】
上記の電解コンデンサ素子において、前記陰極箔には、前記導電性高分子の帯状の集塊が前記端部に沿って付着していてもよい。
【0013】
本発明の電解コンデンサは、上記の電解コンデンサ素子を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、電解コンデンサのESRを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、アルミ電解コンデンサの一例を示す側面図である。
図2図2は、電解コンデンサ素子の一例を示す斜視図である。
図3図3は、図2のA-A線に沿った断面の一部を示す断面図である。
図4図4は、導電性高分子層の形成が不十分である場合の図2のA-A線に沿った断面の一部を示す断面図である。
図5図5は、ESRが高い場合及びESRが低い場合のセパレータの表面を示す平面図である。
図6図6は、巻回体から分解した陽極箔及び陰極箔を示す平面図である。
図7図7は、アルミ電解コンデンサの製造工程の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、電解コンデンサ素子の浸漬方法を示す図である。
図9図9は、減圧保持工程において導電性高分子の分散液がセパレータに含浸される様子の一例を示す巻回体の断面図である。
図10図10は、セパレータに分散液が十分に含浸されていない巻回体の一例を示す断面図である。
図11図11は、ナノ粒子の蓄積領域の形成が抑制された状態で大気開放工程が開始された場合の分散液の含浸状態の一例を示す巻回体の断面図である。
図12図12は、セパレータに分散液が理想的に含浸された巻回体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態]
(アルミ電解コンデンサの構成)
図1は、アルミ電解コンデンサ1の一例を示す側面図である。図1の紙面において、アルミ電解コンデンサ1の中心線Lcを挟んだ右半分には、その内部の断面が示されている。
【0017】
アルミ電解コンデンサ1は、電解コンデンサの一例であり、具体的には導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサである。アルミ電解コンデンサ1は、電子回路基板に実装され、例えばカップリング、デカップリング、及び平滑化などに用いられる。
【0018】
アルミ電解コンデンサ1は、電解コンデンサ素子10、ケース11、封口体12、座板13、一対の丸棒部111、及び一対のリード部110を有する。丸棒部111及びリード部110は電解コンデンサ素子10の引き出し電極であり、リード部110は丸棒部111の先端から延びている。なお、図1には一方の丸棒部111のみが示されているが、中心線Lを挟んだ対称な位置に他方の丸棒部111が設けられている。
【0019】
ケース11は、アルミニウムにより形成され、上部の開口が塞がった円筒形状を有する。ケース11は、電解コンデンサ素子10及び封口体12を覆い、アルミ電解コンデンサ1の外装として機能する。なお、ケース11の形状は円筒形状に限定されず、角筒形状であってもよい。
【0020】
封口体12は、例えばブチルゴムなどの弾性部材により形成された略円柱形状の部材である。封口体12は、電解コンデンサ素子10に隣接し、ケース11下部の開口を封口する。
【0021】
電解コンデンサ素子10は、後述するように、陽極箔、陰極箔、及びセパレータ(電解紙)を重ねて所定方向に巻回した構成を有する。電解コンデンサ素子10の底部からは一対の丸棒部111が延びている。
【0022】
丸棒部111及びリード部110はアルミニウムなどから形成された棒状部材である。一対の丸棒部111は、陽極箔及び陰極箔に対し、かしめなどの接合手段によりそれぞれ接合されており、アルミ電解コンデンサ1の陽極端子及び陰極端子として機能する。各丸棒部111は、封口体12に形成された一対の貫通孔120にそれぞれ挿通されている。なお、図1には一方の貫通孔120のみが示されているが、中心線Lを挟んだ対称な位置に他方の貫通孔120が設けられている。
【0023】
リード部110は平板形状を有し、L字形状に屈曲し、その先端側の部分は座板13の板面に沿って延びている。リード部110の丸棒部111側の部分は座板13の貫通孔130に挿通されている。リード部110は、電子回路基板のリフロー工程において、電子回路基板上のパッドにはんだ付けされる。
【0024】
座板13は、樹脂などにより形成された板状部材であり、ケース11及び封口体12の下部に設けられている。座板13は、実装対象の電子回路基板に対してケース11及び封口体12を支持する。座板13には、リード部110の貫通孔130、及びリード部110の屈曲した先端部分を収容する溝部131が設けられている。溝部131は座板13の底面に沿って中央近傍から外側へ延びている。座板13の底面は、電子回路基板に対するアルミ電解コンデンサ1の実装面となるため、板状のリード部110を電子回路基板上のパッドにはんだ付けすることが可能となる。なお、本実施形態では表面実装タイプのアルミ電解コンデンサ1を挙げるが、後述する実施例は、座板13がないリードタイプにも適用することができる。
【0025】
(電解コンデンサ素子の構成)
図2は、電解コンデンサ素子10の一例を示す斜視図である。図2において、図1と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。電解コンデンサ素子10は、陽極箔101、陰極箔102、及びセパレータ(電解紙)103を巻回した巻回体100と、陽極箔101及び陰極箔102に接続された一対の引き出し電極19とを有する。
【0026】
一対の引き出し電極19は、アルミ電解コンデンサ1の高さ方向において巻回体100の下方に延びる。各引き出し電極19の丸棒部111は陽極箔101及び陰極箔102にそれぞれ接続されている。なお、図2では、リード部110の屈曲前の状態が示されている。
【0027】
陽極箔101及び陰極箔102は、例えばアルミニウム、タンタル、チタン、及びニオブ等の弁金属およびその合金箔並びに蒸着箔等により形成されている。陽極箔101の表面には、電極面積が増加するようにエッチング処理が施されている。これにより、電解コンデンサ素子10は所定の静電容量を確保する。さらに陽極箔101の表面には極薄の酸化被膜が形成されている。このため、陽極箔101は、他の部材から絶縁されている。酸化被膜が誘電体として機能することで、電解コンデンサ素子10がコンデンサとして機能する。陽極箔101の厚みは、例えば5~200(μm)である。この厚み範囲によると、陽極箔101の強度と容量の発現量の間に適切なバランス関係が実現できるため、好ましい。
【0028】
一方、陰極箔102の表面には酸化被膜が形成されていない。なお、陰極箔102の表面にもエッチング処理が施されてもよい。また、陰極箔102の表面には、酸化被膜が形成されてもよいし、無機層またはカーボン層が形成されていてもよい。
【0029】
セパレータ103は陽極箔101及び陰極箔102の間に挟まれた状態で巻回される。セパレータ103はセルロース、レーヨン、及びガラス繊維などから選択される少なくとも1種類以上を材料とする。巻回体100は、陽極箔101、陰極箔102、及びセパレータ103を所定の巻回方向に巻回すことにより形成された略円柱状の素子である。本実施形態では、この略円柱形状の高さに沿って電解コンデンサ素子10の高さ方向を規定する。高さ方向は、巻回体100が巻き回された方向に対して略直交する略直交方向の一例であり、各引き出し電極19の丸棒部111が延びる方向に実質的に一致する。
【0030】
巻回体100は、アルミ電解コンデンサ1の製造工程において電解液及び導電性高分子の分散液または溶液(以下、導電性高分子液と表記)に浸漬される。導電性高分子液は、導電性高分子を含有する液体の一例である。セパレータ103の厚みは、例えば1~100(μm)である。この厚み範囲によると、セパレータ103の強度、絶縁性、空隙率、及び導電性物質のバランスが良好に保たれるため、好ましい。
【0031】
電解液は、多価アルコール、スルホン化合物、ラクトン化合物、カーボネート化合物、多価アルコールのジエーテル化合物、1価のアルコールなどを含むことができる。これらは単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリアルキレングリコール、グリセリン、の少なくとも一つを含むことが望ましい。ポリアルキレングリコールとしては、平均分子量が200~1000のポリエチレングリコール、平均分子量が200~5000のポリプロピレングリコールを用いることが好ましい。
【0033】
ラクトン化合物としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどを用いることができる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなどを溶媒として含むことができる。特に、エチレングリコール、ポリアルキレングリコール、γ-ブチロラクトン、スルホランを用いることが望ましい。
【0034】
電解液は、溶質を含んでいてもよい。溶質として、酸成分、塩基成分、酸成分および塩基成分からなる塩、ニトロ化合物、フェノール化合物等を用いることができる。
【0035】
酸成分は、有機酸、無機酸、有機酸と無機酸との複合化合物を用いることができる。有機酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、1,6-デカンジカルボン酸、1,7-オクタンジカルボン酸、アゼライン酸などのカルボン酸などを用いることができる。無機酸としては、硼酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸エステル、リン酸ジエステルなどを用いることができる。
【0036】
有機酸と無機酸との複合化合物としては、ボロジサリチル酸、ボロジシュウ酸、ボロジグリコール酸等を用いることができる。
【0037】
塩基成分は、1級~3級アミン、4級アンモニウム、4級化アミジニウム等を用いることができる。1級~3級アミンとしては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アニリンなどを用いることができる。4級アンモニウムとしては、例えば、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムなどを用いることができる。4級化アミジニウムとしては、例えば、エチルジメチルイミダゾリニウム、テトラメチルイミダゾリニウムなどを用いることができる。
【0038】
導電性高分子は、導電性を有する高分子であれば特に限定されるものではない。例えば、導電性高分子として、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンおよびこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の高分子を用いる。導電性高分子として、一般的に、p-トルエンスルホン酸およびポリスチレンスルホン酸(PSS)等からなる群より選択される少なくとも1種の酸をドーパントとするポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)が用いられる。
【0039】
図3は、図2のA-A線に沿った断面の一部を示す断面図である。セパレータ103は陽極箔101及び陰極箔102の間に挟まれている。陽極箔101は、両側のセパレータ103に隣接するエッチング層31、及び各エッチング層31の間のアルミニウム層30を有する。
【0040】
セパレータ103側のエッチング層31の表面には、酸化被膜である誘電体層が形成されている。誘電体層は、ピットなどと称される多数の小孔がエッチング処理により形成されている。アルミ電解コンデンサ1の製造工程において、電解コンデンサ素子10が電解液に浸漬されると、セパレータ103内だけでなくピット内にも電解液が満たされる。
【0041】
電解液の浸漬より先に、導電性高分子の浸漬処理が行われる。電解コンデンサ素子10が導電性高分子散液に浸漬されることで、セパレータ103には導電性高分子散液が含浸され、導電性高分子の多数のナノ粒子4が保持されている。セパレータ103の高さ方向の上部と下部には多数のナノ粒子4が保持されている。電解コンデンサ素子10を導電性高分子の分散液または溶液に浸漬した後、電解コンデンサ素子10を乾燥させることにより、拡大図Mに示されるように、ナノ粒子4は凝集して導電性高分子層40を形成する。
【0042】
しかし、セパレータ103へ導電性高分子液が十分に含浸されず、導電性高分子層40の形成が不十分となるおそれがある。
【0043】
図4は、導電性高分子層40の形成が不十分である場合の図2のA-A線に沿った断面の一部を示す断面図である。図4において、図3と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0044】
セパレータ103の高さ方向の中央部103mには、導電性高分子液が十分に含浸されていないため、ナノ粒子4がほとんど到達せず、セパレータ103の乾燥後、導電性高分子層40は形成されない。導電性高分子層40はセパレータ103の高さ方向の両端部のみに、図3の場合よりナノ粒子4の密度が高い状態で形成されている。導電性高分子層40は、セパレータ103の高さ方向の上部及び下部から中央部103mに向かって薄くなっていく。
【0045】
このため、セパレータ103の高さ方向の中央部103mは、その両端部よりも高抵抗となり、発熱量も高くなる。これに対し、図3に示されるように、セパレータ103の高さ方向全体にわたって導電性高分子層40が形成された場合、高さ方向において抵抗は実質的に一様となる。したがって、アルミ電解コンデンサ1のESRは、導電性高分子層40の形成領域が大きいほど、低下する。なお、セパレータ103の高さ方向の中央部103mには、導電性高分子層40が存在しない場合でも電解液は存在する。このため、アルミ電解コンデンサ1の静電容量は、図3の場合と実質的に差分がない。
【0046】
図5は、ESRが高い場合(符号G1a参照)及びESRが低い場合(符号G1b参照)のセパレータ103の表面を示す平面図である。図5においてセパレータ103は、略矩形形状であり、巻回体100から分解され長手方向に展開された状態で示されている。セパレータ103の中央部103mにおいて、網目が狭い領域には多くの導電性高分子のナノ粒子4が存在する。逆に網目が広い領域には導電性高分子のナノ粒子4が少ない。
【0047】
何れの場合も、セパレータ103の高さ方向の両端部103u,103dには、導電性高分子の帯状の集塊41u,41dが、端部103u,103dに沿って形成されている。集塊41u,41dは、セパレータ103の他の部分より多くのナノ粒子4が密集して形成されている。また、集塊41u,41dは、セパレータ103の端部103u,103dから一定の距離を保って線状に形成されている。
【0048】
ESRが高い場合の集塊41u,41dの高さ方向の幅はDa(mm)とし、ESRが低い場合の集塊41u,41dの高さ方向の幅はDb(mm)とすると、Da>Dbの関係が成立する。つまり、ESRが低いほうが、集塊41u,41dの高さ方向の幅が狭い。
【0049】
また、セパレータ103の高さ方向の中央部103mを上記の2つの場合で比較すると、ESRが高い場合、中央部103mにナノ粒子4の粒子数が極めて少ない領域Wが形成されているが、ESRが低い場合、そのような領域Wは存在せず、実質的に一様にナノ粒子4が分布している。ESRが高い場合、セパレータ103の両端部103u,103dに幅の太い集塊41u,41dが形成されているため、多くのナノ粒子4が両端部103u,103dに集積されおり、中央部103mのナノ粒子4の粒子数が少なくなる。一方、ESRが低い場合、セパレータ103の両端部103u,103dに幅の細い集塊41u,41dが形成されているため、中央部103mのナノ粒子4の粒子数が多くなる。
【0050】
したがって、集塊41u,41dの幅(Da,Db)が狭いほど、セパレータ103の高さ方向において導電性高分子が一様に含浸され、ESRが低くなる。集塊41u,41dの幅は3(mm)以下であると、十分にESRが低減される。さらに好ましくは、集塊41u,41dの幅は2(mm)以下であってもよいし、1(mm)以下であってもよい。
【0051】
また、本例では、セパレータ103の高さ方向の両端部103u,103dに沿って集塊41u,41dが形成されている。このため、アルミ電解コンデンサ1の製造工程において、巻回体100を導電性高分子液に浸漬する場合、幅が狭くなるように集塊41u,41dを形成することによって、アルミ電解コンデンサ1のESRを低減することができる。
【0052】
セパレータ103は陽極箔101及び陰極箔102に重ねられているため、セパレータ103の集塊41u,41dは陽極箔101及び陰極箔102の対向する各々の表面に付着している。
【0053】
図6は、巻回体100から分解した陽極箔101及び陰極箔102を示す平面図である。ここで陽極箔101及び陰極箔102は、略矩形形状であり、セパレータ103(点線参照)に重ねられた状態で長手方向に展開されている。セパレータ103の高さ方向の幅は、陽極箔101及び陰極箔102の高さ方向の幅より広い。このため、高さ方向においてセパレータ103の両端部103u,103dは、陽極箔101及び陰極箔102の両端部101u,101d,102u,102dから外側にそれぞれ差分Δhだけずれている。
【0054】
陽極箔101及び陰極箔102には、セパレータ103に形成されたナノ粒子4の集塊41u,41dがセパレータ103の両端部103u,103dに沿ってそれぞれ付着している。このため、セパレータ103上の集塊41u,41dを介した陽極箔101と陰極箔102の電気的経路が短くなり、ESRが低減される。また、セパレータ103は、陽極箔101及び陰極箔102に強固に接続されるため、陽極箔101及び陰極箔102からの剥離が抑制される。
【0055】
陽極箔101及び陰極箔102はセパレータ103と略平行に重なった状態で巻回されている。このため、陽極箔101及び陰極箔102に付着した集塊41u,41dは、陽極箔101及び陰極箔102の両端部101u,101d,102u,102dに沿って延びている。
【0056】
陽極箔101に付着したナノ粒子4の集塊41u,41dの高さ方向の幅Dpと、陰極箔102に付着したナノ粒子4の集塊41u,41dの高さ方向の幅Dnとは、セパレータ103上の集塊41u,41dの幅と上記の差分Δhに応じて決定される。具体的には、陽極箔101及び陰極箔102上の集塊41u,41dの幅Dp,Dnは、それぞれ、セパレータ103上の集塊41u,41dの幅から差分Δhを減じた値となる。セパレータ103と同様に、集塊41u,41dの幅Dp,Dnが狭いほど、陽極箔101及び陰極箔102の高さ方向の中央部に付着する導電性高分子のナノ粒子4の粒子数が多い。
【0057】
(アルミ電解コンデンサの製造工程)
図7は、アルミ電解コンデンサ1の製造工程の一例を示すフローチャートである。アルミ電解コンデンサ1の製造にあたって、陽極箔101、陰極箔102、及びセパレータ103などを準備する。例えば、陽極箔101の厚みは5~200(μm)であり、セパレータの厚みは1~100(μm)である。陽極箔101及び陰極箔102の各表面には、エッチング処理によりピットが形成されてもよい。陽極箔101には化成処理が施され、エッチング処理された表面上に酸化被膜の誘電体層が形成されている。また、陽極箔101及び陰極箔102には、一対の引き出し電極19がそれぞれ接続されている。引き出し電極19を接続手段としては、一例としてかしめが挙げられるが、これに限定されない。
【0058】
まず、陽極箔101、セパレータ103、陰極箔102、及びセパレータ103をこの順に積層して巻回し、外側表面を巻止めテープで固定することで巻回体100を生成する(ステップSt1)。
【0059】
次に巻回体100を例えばリン酸アンモニウム水溶液に浸漬させて陽極箔101に対して所定電圧を印加しながら再化成処理を施して、酸化被膜を修復し、陽極箔101の切り口に表面に誘電体層を形成する(ステップSt2)。
【0060】
次に減圧雰囲気中で、導電性高分子の分散液に巻回体100を浸漬し、巻回体100に分散液を含浸させる(ステップSt3)。なお、導電性高分子の分散液に代えて、導電性高分子を含む溶液に巻回体100を浸漬してもよい。巻回体100を導電性高分子液に浸漬する方法については後述する。
【0061】
次に巻回体100を乾燥させる(ステップSt4)。このとき、巻回体100内のセパレータ103に含浸された導電性高分子液のうち、溶媒である水分は蒸発し、ナノ粒子4は導電性高分子層40を形成する。
【0062】
次に減圧雰囲気中で電解液を電解コンデンサ素子10に含浸させる(ステップSt5)。次に電解コンデンサ素子10をケース11に収容して封口体12によって封口する(ステップSt6)。このとき、電解コンデンサ素子10から延びる引き出し電極19は封口体12の貫通孔120に挿通される。その後、アルミ電解コンデンサ1に定格電圧を印加しながらエージング処理を行なってもよい。このようにしてアルミ電解コンデンサ1の製造工程は行われる。
【0063】
(電解コンデンサ素子の浸漬方法)
上記のステップSt3において、巻回体100、つまり導電性高分子液及び電解液に浸漬する前段階の電解コンデンサ素子10(以下、電解コンデンサ素子10a)を導電性高分子液に浸漬する方法を述べる。なお、以下の実施形態では、導電性高分子の分散液を例示するが、導電性高分子の溶液の場合も浸漬方法は同様である。
【0064】
図8は、電解コンデンサ素子10aの浸漬方法を示す図である。図6には、真空チャンバ9に設置された貯留槽90の鉛直方向に沿った断面と、電解コンデンサ素子10aとが示されている。電解コンデンサ素子10aは、セパレータ103に導電性高分子が含浸されるように、貯留槽90に貯留された導電性高分子の分散液Lに浸漬される。
【0065】
圧力制御装置(CNT)91は、真空チャンバ9内の圧力を不図示の真空ポンプなどにより制御する。具体的には、圧力制御装置91は、符号Gで示されるように、時間の経過に応じて真空チャンバ9内の真空度(kPa)を制御する。真空度は、真空チャンバ9周囲の大気圧を0(kPa)としたときの相対的な圧力である。本実施形態では、一例として真空度が-93(kPa)であるとき、真空チャンバ9内は実質的に真空であると規定する。
【0066】
圧力制御装置91は、減圧引き工程St11、減圧保持工程St12、大気開放工程St13、及び大気保持工程St14をこの順で実行する。符号Gのグラフは、減圧引き工程St11、減圧保持工程St12、大気開放工程St13、及び大気保持工程St14の所要時間である減圧引き時間、減圧保持時間、大気開放時間、及び大気保持時間とともに真空度の時間変化を示す。また、貯留槽90に対する電解コンデンサ素子10aの位置も工程ごとに示されている。
【0067】
減圧引き工程St11は、真空チャンバ0内を減圧して実質的に真空状態とする工程の一例である。圧力制御装置91は、減圧引き工程St11において、真空チャンバ9内の真空度を所定の減圧引き時間で大気圧の0(kPa)から真空(-93(kPa))に減圧する。減圧引き時間は一例として60(秒)である。また、単位時間当たりの圧力の低下値は一定である。減圧引き工程St11により真空チャンバ9内は実質的に真空状態となる。
【0068】
減圧引き工程St11の実行中、電解コンデンサ素子10aは真空チャンバ9内の導電性高分子の分散液Lの外部に保持される。つまり、電解コンデンサ素子10aは分散液Lに浸漬されていない。このため、本工程によると、分散液Lに浸漬する前に電解コンデンサ素子10a内から空気を除去することができるため、後工程において分散液Lを電解コンデンサ素子10aにスムーズに導入することができる。
【0069】
これに対し、減圧引き工程St11の実行中、電解コンデンサ素子10aを分散液Lに浸漬した状態に維持した場合、電解コンデンサ素子10aから空気が抜けるときに分散液Lを泡立ててしまう。このため、電解コンデンサ素子10aに断続的に分散液Lが侵入することとなり、セパレータ103導電性高分子を十分に含浸させることができないおそれがある。
【0070】
減圧保持工程St12では、電解コンデンサ素子10aを分散液Lに浸漬し、減圧保持時間だけ、真空チャンバ9内を真空状態に維持する。本工程において、電解コンデンサ素子10aの巻回体100は完全に分散液Lに浸漬される。このとき、巻回体100は、下面100dを貯留槽90の底面90aに対向させ、上面100uを分散液Lの液面Lsに略平行に維持した姿勢に保持される。
【0071】
電解コンデンサ素子10aが分散液Lに浸漬される一方で、圧力制御装置91は、真空度を-93(kPa)に維持する。巻回体100内でセパレータ103は陽極箔101及び陰極箔102に挟まれているため、分散液Lは、毛細管現象によりセパレータ103の高さ方向の両端部から中央部に向かうように導入される。減圧保持時間は、例えば300(秒)以下である。
【0072】
大気開放工程St13では、電解コンデンサ素子10aを分散液Lに浸漬したまま、大気開放時間で真空チャンバ9内を、真空状態に減圧される前の大気圧まで戻す。本工程において、巻回体100は、減圧保持工程St12から連続して分散液Lに浸漬された状態に維持される。巻回体100が浸漬された状態のまま、圧力制御装置91は真空度を0(kPa)まで大気開放によって自然に増加させる。このとき、単位時間当たりの圧力の増加値は実質的に一定である。また、大気開放時間は、例えば40(秒)以下である。また、大気開放工程St13では、真空チャンバ9内をポンプなどで加圧することにより減圧前の大気圧に戻してもよい。
【0073】
大気保持工程St14では、電解コンデンサ素子10aを分散液Lに浸漬したまま、真空チャンバ9内を大気圧保持時間だけ大気圧に保持する。大気保持時間の経過後は、電解コンデンサ素子10aは分散液Lから引き上げられる。大気保持時間は、一例として6(秒)であるが、これに限定されない。以上の工程により電解コンデンサ素子10aのセパレータ103に導電性高分子が含浸される。
【0074】
上記の減圧保持時間及び大気開放時間の少なくとも一方を適切に調整することにより、導電性高分子の集塊41u,41dの幅(Da,Db)を狭くし、導電性高分子をセパレータ103の高さ方向の中央部またはその近傍まで含浸させることができる。以下に減圧保持工程St12及び大気開放工程St13における含浸のプロセスを説明する。
【0075】
図9は、減圧保持工程St12において導電性高分子の分散液がセパレータ103に含浸される様子の一例を示す巻回体100の断面図である。図9において、図3と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0076】
セパレータ103において、複数の直線でハッチングされた領域A1は分散液から分離した溶媒の水分が含浸した領域を示し、網掛けでハッチングされた領域A2は分散液が含浸した領域を示す。また、セパレータ103において、無色の領域は水分及び分散液の何れも含浸していない領域を示す。
【0077】
しかし、導電性高分子のナノ粒子4と溶媒のセパレータ103に対する含浸速度が異なるため、ある程度含浸が進むと、導電性高分子液から溶媒(例えば水)が先行してセパレータの高さ方向の中央部103mへ到達する。このため、先行した溶媒が充満したセパレータの中央部103mに導電性高分子が到達することが困難となり、結果として導電性高分子のナノ粒子4が大量に蓄積された蓄積領域80が両端部103u,103d側に形成されてしまう。符号Kは、蓄積領域80と他の領域の境界付近の拡大図を示す。蓄積領域80では、他の領域より高密度でナノ粒子4が存在する。
【0078】
このため、分散液から溶媒の水分だけが分離して蓄積領域80を超えてセパレータの高さ方向の中央部103mへ向かい、ナノ粒子4はセパレータの中央部103mに到達することが困難となる。この蓄積領域80は、ステップSt4の乾燥工程後に高さ方向の両端部103u,103dまで拡大して導電性高分子の集塊41u,41dとなる。
【0079】
図10は、セパレータ103に分散液が十分に含浸されていない巻回体100の一例を示す断面図である。図10において、図9と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。上述したように、セパレータ103にナノ粒子4の蓄積領域80が形成されると、分散液から分離した水分だけが蓄積領域80を超えてセパレータ103の高さ方向の中央部103mへ到達する。
【0080】
したがって、ナノ粒子4の分布がセパレータ103の高さ方向の両端部103u,103dに偏り、セパレータ103の中央部103mに近い領域ほど、ナノ粒子4が少なくなる。このため、図4に示されるように、セパレータ103の両端部103u,103dに分布が偏った導電性高分子層40が形成される。したがって、アルミ電解コンデンサ1のESRは、ナノ粒子4がセパレータ103の高さ方向に均一に分布する場合と比べると、高くなってしまう。
【0081】
これに対し、例えば減圧保持工程St12を図10の例より短縮することにより、ナノ粒子4の蓄積領域80の形成を抑制しておき、大気開放工程St13を開始すると、ナノ粒子4がセパレータ103の高さ方向に均一に分布させることができる。
【0082】
図11は、ナノ粒子4の蓄積領域80の形成が抑制された状態で大気開放工程St13が開始された場合の分散液の含浸状態の一例を示す巻回体100の断面図である。図11において、図9と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。本例において、分散液は、図10の例と比べると、分散液の含浸が進行しておらず、その含浸領域はセパレータ103の中央部103mから見て遠く、高さ方向の長さが短い。また、蓄積領域80の形成は、図10の例と比べると抑制されている。このため、蓄積領域80の高さ方向の幅が狭く、乾燥後の導電性高分子の集塊41u,41dの幅も狭くなる。
【0083】
大気開放工程St13では真空チャンバ9内が大気圧まで戻るため、セパレータ103において分散液が存在しない中央部103m側の領域には陰圧が生じ、分散液が含浸された両端部103u,103d側の領域には陽圧が生ずる。このため、中央部103m側の領域と両端部103u,103d側の領域の間の差圧(以下、領域間差圧と表記)により、分散液は、形成が抑制された蓄積領域80を超えて、矢印Dで示されるように中央部103mに向かって移動する。この領域間差圧を利用することにより、両端部103u,103dから中央部103mにわたって導電性高分子のナノ粒子4を分布させることができる。
【0084】
図12は、セパレータ103に分散液が理想的に含浸された巻回体100の一例を示す断面図である。図12において、図9と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。本例では、セパレータ103の両端部103u,103dから中央部103mにわたって分散液が含浸されている。このため、セパレータ103の高さ方向においてナノ粒子4が均一に分布することが可能となり、図3に示されるように、セパレータ103の高さ方向全体にわたって導電性高分子層40を形成することができる。
【0085】
このように、セパレータ103に分散液を含浸させる際、減圧保持時間及び大気開放時間を適切に調整することにより、セパレータ103内のナノ粒子4の蓄積領域80の形成を抑制しておき、領域間差圧を利用してナノ粒子4をセパレータ103の高さ方向の全体にわたって実質的に一様に分布させることができる。その後のステップSt4の乾燥工程が実行されると、セパレータ103には、図5に示されるように、蓄積領域80に導電性高分子の集塊41u,41dが形成される。このため、蓄積領域80の形成が抑制されることにより、集塊41u,41dの高さ方向の幅が狭まるため、アルミ電解コンデンサ1のESRが低減される。
【実施例0086】
上記の製造工程に従ってアルミ電解コンデンサ1のサンプルNo.1~16を100個ずつ作製した。ここで、セパレータ103の両端部103u,103dの位置と、陽極箔101及び陰極箔102の両端部101u,101d,102u,102dの位置との差分Δhは0.5(mm)とした。サンプルNo.1~8の定格電圧及び定格静電容量は、それぞれ、63(V)及び33(μF)とし、サンプルNo.9~16の定格電圧及び定格静電容量は、それぞれ、25(V)及び1000(μF)とした。サンプルNo.1~8のケースのサイズは直径8(mm)×長さ10(mm)とし、サンプルNo.9~18のケースのサイズは直径12.5(mm)×長さ16.5(mm)とした。
【0087】
作製したサンプルNo.1~18の各10個を解体して導電性高分子の集塊41u,41dの高さ方向の幅と、ESR(平均値)とを測定した。集塊41u,41dについて、レーザー顕微鏡により集塊41u,41dの幅を測定した。ESRについて、4端子測定用のLCRメータを用いて、アルミ電解コンデンサ1の周波数が100kHzであるときのESR(初期ESR)(mΩ)を測定した。
【0088】
(サンプルNo.1~8)
サンプルNo.1~8を用いて、セパレータ103、陽極箔101、及び陰極箔102に形成された導電性高分子の集塊41u,41dの幅と、ESRとを評価した。
【0089】
【表1】
【0090】
表1は、サンプルNo.1~8の評価結果を示す。表1は、サンプルNo.1~8のセパレータ103、陽極箔101、及び陰極箔102における集塊41u,41dの幅と、ESRと、ESR比と、判定結果とを示す。ESR比は、サンプルNo.7のESRである16.9(mΩ)に対する他のサンプルNo.1~6,8のESRの比である。ESR比が1未満であるサンプルNo.1~6の判定結果は「〇」とし、ESRが1以上のサンプルNo.7,8の判定結果は「×」とした。
【0091】
集塊41u,41dの幅が狭いほど、ESR及びESR比は小さくなった。セパレータ103の集塊41u,41dの幅が3(mm)以下のサンプルNo.1~6について、ESR比は1未満となった。セパレータ103の集塊41u,41dの幅が2(mm)以下のサンプルNo.1~4について、ESR比は0.84未満となったため、好ましい。セパレータ103の集塊41u,41dの幅が1.5(mm)以下のサンプルNo.1~3について、ESR比は0.83未満となったため、さらに好ましい。
【0092】
また、セパレータ103の集塊41u,41dの幅が3(mm)より広いサンプルNo.7,8について、ESR比は1以上となった。
【0093】
また、サンプルNo.1~8について、陽極箔101、及び陰極箔102に付着した導電性高分子の集塊41u,41dの幅は、セパレータ103の集塊41u,41dの幅より差分Δhの0.5(mm)だけ狭くなった。
【0094】
(サンプルNo.9~16)
サンプルNo.9~16を用いて、セパレータ103、陽極箔101、及び陰極箔102に形成された導電性高分子の集塊41u,41dの幅と、ESRとを評価した。
【0095】
【表2】
【0096】
表2は、サンプルNo.9~16の評価結果を示す。表2は、サンプルNo.9~16のセパレータ103、陽極箔101、及び陰極箔102における集塊41u,41dの幅と、ESRと、ESR比と、判定結果とを示す。ESR比は、サンプルNo.15のESRである5.6(mΩ)に対する他のサンプルNo.9~14,16のESRの比である。ESR比が1未満であるサンプルNo.9~14の判定結果は「〇」とし、ESRが1以上のサンプルNo.15,16の判定結果は「×」とした。
【0097】
集塊41u,41dの幅が狭いほど、ESR及びESR比は小さくなった。セパレータ103の集塊41u,41dの幅が3(mm)以下のサンプルNo.9~14について、ESR比は1未満となった。セパレータ103の集塊41u,41dの幅が2(mm)以下のサンプルNo.9~12について、ESR比は0.72未満となったため、好ましい。セパレータ103の集塊41u,41dの幅が1.0(mm)以下のサンプルNo.9,10について、ESR比は0.7未満となったため、さらに好ましい。
【0098】
また、セパレータ103の集塊41u,41dの幅が3(mm)より広いサンプルNo.15,16について、ESR比は1以上となった。
【0099】
また、サンプルNo.9~16について、陽極箔101、及び陰極箔102に付着した導電性高分子の集塊41u,41dの幅は、セパレータ103の集塊41u,41dの幅より差分Δhの0.5(mm)だけ狭くなった。
【0100】
このように、電解コンデンサ素子10において、セパレータ103の高さ方向の端部103u,103dには、3(mm)以下の幅を有する導電性高分子の帯状の集塊41u,41dが、端部103u,103dに沿って形成されている。このため、セパレータ103の中央部103mまで導電性高分子の分散液が含浸して、セパレータ103の高さ方向にわたって導電性高分子のナノ粒子4が実質的に一様に分布する。したがって、アルミ電解コンデンサ1のESRが低減される。
【0101】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 アルミ電解コンデンサ
10,10a 電解コンデンサ素子
11 ケース
12 封口体
13 座板
40 導電性高分子層
100 巻回体
101 陽極箔
102 陰極箔
103 セパレータ
103u,103d 端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12