(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117447
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】プラント運転訓練システム
(51)【国際特許分類】
G09B 9/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
G09B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023558
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100200218
【弁理士】
【氏名又は名称】沼尾 吉照
(72)【発明者】
【氏名】桶谷 健
(57)【要約】
【課題】中央監視画面と現場設備とを連動させて訓練を行うことで、中央監視画面と現場設備とを同時に視認できることで中央監視画面と現場設備との繋がりを直感的に学び、プラント設備全体の理解を深めることができるプラント運転訓練システムを提供すること。
【解決手段】プラント設備の運転状況を示す中央監視画面を表示する第1の表示部と、前記第1の表示部に表示された中央監視画面を操作するための第1の操作部と、前記プラント設備における現場設備を模擬的に表示する第2の表示部と、前記模擬的に表示される現場設備を操作する第2の操作部と、前記第1の表示部に表示された中央監視画面の表示と、前記第2の表示部に表示された現場設備の表示とを連動して変化させる制御部と、前記第2の表示部を介して前記第1の表示部を視認することによって、前記第2の表示部と前記第1の表示部とを同一の視界で視認できる特徴を有するプラント運転訓練システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント設備の運転状態を示す中央監視画面を表示する第1の表示部と、
前記第1の表示部に表示された中央監視画面を操作するための第1の操作部と、
前記プラント設備における現場設備を模擬的に表示する第2の表示部と、
前記模擬的に表示される現場設備を操作する第2の操作部と、
前記第1の操作部を操作することによって、前記第1の表示部に表示された中央監視画面の表示を変化させるとともに、前記第2の表示部に表示された現場設備の表示を連動して変化させ、かつ、前記第2の操作部を操作することによって、前記模擬的に表示される現場設備の表示を変化させるとともに、前記第1の表示部に表示された中央監視画面の表示を連動して変化させる制御部と、
前記第2の表示部を介して前記第1の表示部を視認することによって、前記第2の表示部と前記第1の表示部とを同一の視界で視認できるようにした、
ことを特徴とするプラント運転訓練システム。
【請求項2】
前記第2の表示部が複合現実表示装置である請求項1に記載のプラント運転訓練システム。
【請求項3】
前記第2の表示部が拡張現実表示装置である請求項1に記載のプラント運転訓練システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラント運転訓練システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水処理プラント等のプラント運転員は、中央監視室からのプラント設備の監視・制御、現場設備の操作・点検といった業務を行っている。例えば、浄水場では、24時間安定的に水を供給することが求められ、運転員には相応の技術が必要となる。運転員の育成には、プラント設備の運転操作や異常発生時の対応といったプラント運用訓練が有効である。
【0003】
現在流通しているプラント訓練装置には、プラント設備を監視・制御する中央監視画面を模擬し、各種設備の運転・停止といった基本操作訓練、異常発生時の対応訓練を行う装置が存在する。また、VR(Virtual Reality;仮想現実)デバイスを使用して現場にある設備を仮想現実の空間上に再現し、基本操作やトラブル対応訓練を行う装置も存在する。
【0004】
特許文献1には、中央制御室の制御盤や現場設備を対象として、AR(Augmented Reality;拡張現実)を用いた運転支援や、運転訓練シミュレータへの適用が記載されている。
【0005】
特許文献2には、システムや設備、機器について保守作業を行う作業者への訓練用のコンテンツ作成システムであって、作業情報収集端末からの保守作業領域や必要な支援情報などを、透過型のスクリーン上に仮想の3DCGにて重畳表示することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-119299号公報
【特許文献2】特開2020-3707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実際のプラントでは現場にあるプラント設備を操作した場合、中央監視画面にも操作内容が反映されるように、中央監視設備と現場設備は連動している。プラント運用技術を向上させるためには、運転員は個別の設備だけでなく、プラント全体の仕組みや繋がりを包括的に理解することが求められる。
【0008】
上述したように、従来からプラント運用を訓練するにあたって、特許文献1や特許文献2に記載のような訓練支援システムは存在しているが、従来の訓練装置では中央監視画面と現場設備を連動させて訓練することはできず、現場設備も含めたプラント設備全体を理解するという点で、訓練効果が不十分であった。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、中央監視画面と現場設備とを連動させて訓練を行うことで、中央監視画面と現場設備とを同時に視認できることで中央監視画面と現場設備との繋がりを直感的に学び、プラント設備全体の理解を深めることができるプラント運転訓練システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、実施形態のプラント運転訓練システムは、プラント設備の運転状況を示す中央監視画面を表示する第1の表示部と、前記第1の表示部に表示された中央監視画面を操作するための第1の操作部と、前記プラント設備における現場設備を模擬的に表示する第2の表示部と、前記模擬的に表示される現場設備を操作する第2の操作部と、前記第1の操作部を操作することによって、前記第1の表示部に表示された中央監視画面の表示を変化させるとともに、前記第2の表示部に表示された現場設備の表示を変化させ、かつ、前記第2の操作部を操作することによって、前記模擬的に表示される現場設備の表示を変化させるとともに、前記第1の表示部に表示された中央監視画面の表示を変化させる制御部と、前記第2の表示部を介して前記第1の表示部を視認することによって、前記第2の表示部と前記第1の表示部とを同一の視界で視認できるようにした。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係るプラント運転訓練システム概略図
【
図2】第1の実施形態に係るプラント運転訓練システムフロー図
【
図5】第1の実施形態に係る第2の表示部に表示される表示例
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための実施形態について説明する。
【0013】
第1の実施形態に係るプラント運転訓練システム構成を
図1に示し、本実施形態に係るシステムフローを
図2に示す。
【0014】
本実施形態は、中央監視画面と現場設備とを同時に表示して訓練を行うことで、訓練効果向上を図るものである。中央監視訓練は、実際の監視制御システムと同様にディスプレイ上に中央監視画面を表示して行う。現場設備訓練は、仮想現実に係るデバイスを使用して、現実空間上に仮想現場設備を表示して行う。
【0015】
訓練内容は、設備の運転・停止といった操作を行う基本操作訓練、設備の異常・故障に対応する危機対応訓練を想定している。訓練の実施形態について図を参照しながら以下に説明する。
【0016】
本実施形態に係るシステムはコンピュータ10、第1の表示部11、第2の表示部12、第1の操作部13、第2の操作部14により構成される。
【0017】
コンピュータ10は演算制御部15と訓練情報記憶部16とインターフェース部17と制御部18とを備えている。制御部18は演算制御部15と訓練情報記憶部16とで構成されている。
【0018】
演算制御部15はCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサで構成され、訓練情報記憶部16に記憶された訓練プログラムを実行する。
【0019】
訓練情報記憶部16はRAM(Random Access Memory)などのメモリからなる主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置から構成される記憶装置であって、訓練プログラム、現場設備の三次元データ等を記憶する。インターフェース部17はコンピュータ10と第1の表示部11、第2の表示部12、第1の操作部13及び第2の操作部14とを有線若しくは無線接続する役割を持つ。本実施形態に係るコンピュータ10は訓練用として独立して存在しているが、プラント運用で実際に利用されている中央監視制御装置に組み込まれても良い。
【0020】
第1の表示部11は中央監視画面を用いた訓練に使用し、例えば、
図3に示すような中央監視画面を表示する。第1の表示部11は本実施形態のようにディスプレイのみが独立しているディスプレイであっても良いし、実際に設置されている中央監視制御装置のディスプレイであっても良いし、タブレットやスマートフォン等の情報端末機器であっても良い。
【0021】
第2の表示部12は、現場設備を仮想的に表示するもので、例えば拡張現実表示装置であるARグラスや複合現実表示装置であるMR(Mixed Reality;複合現実)グラス等であって、
図4に示すように現実に存在するものを違う場所においても仮想的に表示する機能を有すものである。また、第2の表示部12は、センサまたはカメラ若しくはその両方を有し、周辺環境の情報を取得することができるものであって、現実世界にある中央監視画面を認識することで、
図5に示すように中央監視画面を第1の表示部11に表示された仮想現場設備の画像と重なりあうこと無く同時に視認することができるように表示するものである。
【0022】
ここで、AR(Augmented Reality)とは、現実世界に仮想現実を表示するものであって、拡張現実と呼ばれるものである。
【0023】
また、MR(Mixed Reality)とは、ARを発展させたものであって、カメラやセンサを利用して入手した位置情報等から、目の前の空間にさまざまな情報を三次元(3D)で表示させたうえで、表示したものを自由な角度から視認可能とし、そこにタッチして入力等も出来るようになる複合現実と呼ばれるものである。
【0024】
さらにMRであると、同じMR空間を複数の人間が同時に体験することも可能になる。
【0025】
第1の操作部13は、中央監視画面の訓練操作に用いられるマウス、キーボード、タッチパネル等であって、第1の表示部11に表示された中央監視画面を操作する。
【0026】
第2の操作部14は、現場設備訓練に用いられるコントローラ等であって、第2の表示部12に再現された仮想現場設備を操作する。第2の操作部14は訓練者が手に持って操作するものであっても良いし、MRグラス上で仮想的に表示されたものであても良い。
【0027】
制御部18は、上述した演算制御部15と訓練情報記憶部16にて構成され、第1の操作部13を操作することによって、第1の表示部11に表示された中央監視画面の表示を変化させるとともに、第2の表示部12に表示された現場設備の表示を連動して変化させ、かつ、第2の操作部14を操作することによって、模擬的に表示される現場設備の表示を変化させるとともに、第1の表示部11に表示された中央監視画面の表示を連動して変化させることができる。
【0028】
次に、本実施形態に係るプラント運転訓練システムのシステムフローを
図2に示すフローチャートに沿って説明する。
【0029】
まず第1の表示部11に中央監視画面を表示する(S100)。一例として
図3に示す中央監視画面では、配水池31やポンプ32、弁33といったプラント設備を示すシンボルと、各シンボルを結んだフロー図を表示する。シンボルを選択することによって設備の運転状態を変更することができ、故障は赤色、運転は黄色、停止は緑色等のようにシンボルは運転状態に合わせて色を変えて表示する。また、シンボル周辺に流量や水位等の計測値34を表示する。
【0030】
続いて第2の表示部12に仮想現場設備を表示する(S110)。表示される仮想現場設備は、例えば、
図4に示すような各設備を操作する現場盤40を表示する。
【0031】
現場盤40は、第2の操作部14である操作スイッチ41、計測値を表示するメータ42、ポンプ等の運転状態や故障状態を表示する表示灯43等を有している。
【0032】
訓練情報記憶部16には、現場盤40の操作スイッチ41を操作することによって、現場盤40内のメータ42、ポンプ等の運転状態を表示する表示灯43等があたかも制御されたように動作するためのプログラムが記憶されている。また、このプログラムは現場盤40の操作スイッチ41を操作することによって、第1の表示部に表示されている中央監視画面も連動して制御されたように表示が変化するようになっている。
【0033】
さらに、訓練情報記憶部16に記憶されているプログラムは、第1の操作部13を操作することによって、第1の表示部11に表示されている中央監視画面が制御されたように表示されるとともに、これに連動して第2の表示部12に表示されている現場盤(現場設備)の画面も変化する。
【0034】
そして、中央監視画面は、仮想的に表示された現場盤40と重ならないような態様で第2の表示部12を介して表示される。例えば
図5に示すように現実の中央監視画面と仮想的に表示された現場盤40とを同一の視界で並べて同時に視認することが可能である(S120)。現場盤と中央監視画面が並ぶことによってどちらか一方を操作した場合に、もう一方にその操作がどのように連動して反映されるのか即時に確認することが出来るため、プラント設備全体を把握することができるようになる。
【0035】
次のステップで中央監視画面または仮想現場設備を操作する(S130)。
【0036】
まず、仮想現場設備を操作する場合、第2の表示部12に表示される仮想現場設備で運転や停止といったスイッチを操作することによって、仮想現場設備の表示灯やメータにその操作内容が反映されて表示が変化する(S140)。この操作に連動して、中央監視画面でも該当機器のシンボルや計測値に操作内容が反映されて表示が変化する(S150)。
【0037】
また、中央監視画面を操作した場合、同様に中央監視画面の表示が変化するのに連動して仮想現場設備の表示が変化する。連動動作は基本操作訓練に限らず、故障やトラブルが発生した際の危機対応訓練でも同様である。危機対応訓練では、異常発生状態を知らせる故障表示やアラーム等を発生させ、中央または現場設備で対応する。
【0038】
中央監視画面および仮想現場設備の両方に操作内容が反映されて表示が変化したことを確認して訓練終了となる(S160)。
【0039】
以上より、本実施形態によれば、以下に示すような効果が得られる。
【0040】
仮想現場設備操作部である第2の操作部14によって、第2の表示部12に表示される仮想現場設備を操作した場合でも、中央監視画面を操作した場合であっても、操作を行わなかった方にも連動して操作内容が反映して表示が変化することで、中央と現場の相互の関連性を直感的に理解することができ、プラント設備全体の理解を深めることができる。
【0041】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
10…コンピュータ、11…第1の表示部、12…第2の表示部、13…第1の操作部、14…第2の操作部、15…演算制御部、16…訓練情報記憶部、17…インターフェース部、31…配水池、32…ポンプ、33…弁、34…計測値、40…現場盤、41…操作スイッチ、42…メータ、43…表示灯