(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117452
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
F25D 9/00 20060101AFI20240822BHJP
A23L 3/12 20060101ALI20240822BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20240822BHJP
F25D 23/12 20060101ALI20240822BHJP
F25D 17/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
F25D9/00 B
A23L3/12
A23L3/36 Z
F25D23/12 M
F25D17/02 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023564
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】櫛部 光央
(72)【発明者】
【氏名】蔵野 雅夫
【テーマコード(参考)】
3L044
4B021
4B022
【Fターム(参考)】
3L044AA04
3L044BA01
3L044CA11
3L044DB01
3L044KA05
4B021LA01
4B021LT09
4B021MC10
4B022LF06
4B022LP05
4B022LT01
(57)【要約】
【課題】熱量及び給水量を削減することの可能な処理装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、被処理物Xを処理する処理装置100であって、処理槽1と、加熱手段3と、冷却手段3と、熱水回収槽5と、高温水回収槽6と、低温水回収槽7と、を備え、処理槽1は、被処理物Xを収容するよう構成され、加熱手段3は、処理槽1内の処理水を加熱するよう構成され、冷却手段3は、処理槽1内の処理水を冷却するよう構成され、熱水回収槽5は、加熱手段3による加熱後の処理水を熱水として処理槽1から回収するとともに、熱水を処理槽1に供給するよう構成され、高温水回収槽6は、熱水よりも低温である高温水を処理槽1から回収するとともに、高温水を処理槽1に供給して被処理物Xの予熱を行うよう構成され、低温水回収槽7は、高温水よりも低温である低温水を処理槽1から回収するとともに、低温水を処理槽1に供給して被処理物Xの粗熱取りを行うよう構成される、処理装置100が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を処理する処理装置であって、
処理槽と、加熱手段と、冷却手段と、熱水回収槽と、高温水回収槽と、低温水回収槽と、を備え、
前記処理槽は、前記被処理物を収容するよう構成され、
前記加熱手段は、前記処理槽内の処理水を加熱するよう構成され、
前記冷却手段は、前記処理槽内の処理水を冷却するよう構成され、
前記熱水回収槽は、前記加熱手段による加熱後の処理水を熱水として前記処理槽から回収するとともに、当該熱水を前記処理槽に供給するよう構成され、
前記高温水回収槽は、前記熱水よりも低温である高温水を前記処理槽から回収するとともに、当該高温水を前記処理槽に供給して前記被処理物の予熱を行うよう構成され、
前記低温水回収槽は、前記高温水よりも低温である低温水を前記処理槽から回収するとともに、当該低温水を前記処理槽に供給して前記被処理物の粗熱取りを行うよう構成される、処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の処理装置であって、
冷水回収槽をさらに備え、
前記冷水回収槽は、前記冷却手段による冷却後の処理水を冷水として前記処理槽から回収するとともに、当該冷水を前記処理槽に供給するよう構成される、処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の処理装置であって、
制御手段をさらに備え、
前記制御手段は、予熱工程と、低温水回収工程と、熱水供給工程と、加熱工程と、熱水回収工程と、粗熱取り工程と、高温水回収工程と、冷水供給工程と、冷却工程と、冷水回収工程とを順次実行するよう構成され、
前記予熱工程では、前記高温水回収槽に貯留された前記高温水を前記処理槽に供給して前記予熱を行い、
前記低温水回収工程では、前記予熱後の前記処理槽内の処理水を前記低温水として前記低温水回収槽に回収し、
前記熱水供給工程では、前記熱水回収槽に貯留された前記熱水を前記処理槽に供給し、
前記加熱工程では、前記加熱手段により前記処理槽内の処理水を加熱し、
前記熱水回収工程では、前記加熱手段により加熱された前記処理槽内の処理水を前記熱水として前記熱水回収槽に回収し、
前記粗熱取り工程では、前記低温水回収槽に貯留された前記低温水を前記処理槽に供給して前記粗熱取りを行い、
前記高温水回収工程では、前記粗熱取り後の前記処理槽内の処理水を前記高温水として前記高温水回収槽に回収し、
前記冷水供給工程では、前記冷水回収槽に貯留された前記冷水を前記処理槽に供給し、
前記冷却工程では、前記冷却手段により前記処理槽内の処理水を冷却し、
前記冷水回収工程では、前記冷却手段により冷却された前記処理槽内の処理水を前記冷水として前記冷水回収槽に回収する、処理装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れかに記載の処理装置であって、
循環手段をさらに備え、
前記循環手段は、循環ポンプ及び循環ラインを備えるとともに、前記循環ポンプにより、前記処理槽内の処理水を循環させるよう構成される、処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の処理装置であって、
前記循環ラインに熱交換器をさらに備え、
前記加熱手段は、前記熱交換器に蒸気を供給し、前記熱交換器を介して前記処理水を加熱するよう構成され、
前記冷却手段は、前記熱交換器に冷却水を供給し、前記熱交換器を介して前記処理水を冷却するよう構成される、処理装置。
【請求項6】
処理槽内に収容された被処理物を処理する処理方法であって、
予熱工程と、低温水回収工程と、熱水供給工程と、加熱工程と、熱水回収工程と、粗熱取り工程と、高温水回収工程と、冷却工程とを順次実行し、
前記予熱工程では、高温水回収槽に貯留された高温水を前記処理槽に供給して前記被処理物の予熱を行い、
前記低温水回収工程では、前記予熱後の前記処理槽内の処理水を前記高温水よりも低温である低温水として低温水回収槽に回収し、
前記熱水供給工程では、熱水回収槽に貯留された前記高温水よりも高温である熱水を前記処理槽に供給し、
前記加熱工程では、加熱手段により前記処理槽内の処理水を加熱し、
前記熱水回収工程では、前記加熱手段により加熱された前記処理槽内の処理水を前記熱水として前記熱水回収槽に回収し、
前記粗熱取り工程では、前記低温水回収槽に貯留された前記低温水を前記処理槽に供給して前記被処理物の粗熱取りを行い、
前記高温水回収工程では、前記粗熱取り後の前記処理槽内の処理水を前記高温水として前記高温水回収槽に回収し、
前記冷却工程では、冷却手段により前記処理槽内の処理水を冷却する、処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、被処理物の加熱処理や冷却処理等に用いられる処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、処理槽内に被処理物を収容し、処理水を循環させて、処理水を蒸気や冷水等により間接的に加熱又は冷却することで被処理物の処理を行う処理装置がある。例えば、特許文献1には、加熱手段により熱交換器に蒸気を供給することで処理水を加熱して被処理物を間接的に加熱処理するとともに、冷却手段により熱交換器に冷却水を供給することで処理水を冷却して被処理物を間接的に冷却処理することが可能な処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような処理装置では、処理槽内に供給される加熱された処理水や冷却された処理水をその後排水することになるため、加熱手段が供給する熱量及び給水量が無駄になっていた。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、熱量及び給水量を削減することの可能な処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]被処理物を処理する処理装置であって、処理槽と、加熱手段と、冷却手段と、熱水回収槽と、高温水回収槽と、低温水回収槽と、を備え、前記処理槽は、前記被処理物を収容するよう構成され、前記加熱手段は、前記処理槽内の処理水を加熱するよう構成され、前記冷却手段は、前記処理槽内の処理水を冷却するよう構成され、前記熱水回収槽は、前記加熱手段による加熱後の処理水を熱水として前記処理槽から回収するとともに、当該熱水を前記処理槽に供給するよう構成され、前記高温水回収槽は、前記熱水よりも低温である高温水を前記処理槽から回収するとともに、当該高温水を前記処理槽に供給して前記被処理物の予熱を行うよう構成され、前記低温水回収槽は、前記高温水よりも低温である低温水を前記処理槽から回収するとともに、当該低温水を前記処理槽に供給して前記被処理物の粗熱取りを行うよう構成される、処理装置。
[2][1]に記載の処理装置であって、冷水回収槽をさらに備え、前記冷水回収槽は、前記冷却手段による冷却後の処理水を冷水として前記処理槽から回収するとともに、当該冷水を前記処理槽に供給するよう構成される、処理装置。
[3][2]に記載の処理装置であって、制御手段をさらに備え、前記制御手段は、予熱工程と、低温水回収工程と、熱水供給工程と、加熱工程と、熱水回収工程と、粗熱取り工程と、高温水回収工程と、冷水供給工程と、冷却工程と、冷水回収工程とを順次実行するよう構成され、前記予熱工程では、前記高温水回収槽に貯留された前記高温水を前記処理槽に供給して前記予熱を行い、前記低温水回収工程では、前記予熱後の前記処理槽内の処理水を前記低温水として前記低温水回収槽に回収し、前記熱水供給工程では、前記熱水回収槽に貯留された前記熱水を前記処理槽に供給し、前記加熱工程では、前記加熱手段により前記処理槽内の処理水を加熱し、前記熱水回収工程では、前記加熱手段により加熱された前記処理槽内の処理水を前記熱水として前記熱水回収槽に回収し、前記粗熱取り工程では、前記低温水回収槽に貯留された前記低温水を前記処理槽に供給して前記粗熱取りを行い、前記高温水回収工程では、前記粗熱取り後の前記処理槽内の処理水を前記高温水として前記高温水回収槽に回収し、前記冷水供給工程では、前記冷水回収槽に貯留された前記冷水を前記処理槽に供給し、前記冷却工程では、前記冷却手段により前記処理槽内の処理水を冷却し、前記冷水回収工程では、前記冷却手段により冷却された前記処理槽内の処理水を前記冷水として前記冷水回収槽に回収する、処理装置。
[4][1]~[3]の何れかに記載の処理装置であって、循環手段をさらに備え、前記循環手段は、循環ポンプ及び循環ラインを備えるとともに、前記循環ポンプにより、前記処理槽内の処理水を循環させるよう構成される、処理装置。
[5][4]に記載の処理装置であって、前記循環ラインに熱交換器をさらに備え、前記加熱手段は、前記熱交換器に蒸気を供給し、前記熱交換器を介して前記処理水を加熱するよう構成され、前記冷却手段は、前記熱交換器に冷却水を供給し、前記熱交換器を介して前記処理水を冷却するよう構成される、処理装置。
[6]処理槽内に収容された被処理物を処理する処理方法であって、予熱工程と、低温水回収工程と、熱水供給工程と、加熱工程と、熱水回収工程と、粗熱取り工程と、高温水回収工程と、冷却工程とを順次実行し、前記予熱工程では、高温水回収槽に貯留された高温水を前記処理槽に供給して前記被処理物の予熱を行い、前記低温水回収工程では、前記予熱後の前記処理槽内の処理水を前記高温水よりも低温である低温水として低温水回収槽に回収し、前記熱水供給工程では、熱水回収槽に貯留された前記高温水よりも高温である熱水を前記処理槽に供給し、前記加熱工程では、加熱手段により前記処理槽内の処理水を加熱し、前記熱水回収工程では、前記加熱手段により加熱された前記処理槽内の処理水を前記熱水として前記熱水回収槽に回収し、前記粗熱取り工程では、前記低温水回収槽に貯留された前記低温水を前記処理槽に供給して前記被処理物の粗熱取りを行い、前記高温水回収工程では、前記粗熱取り後の前記処理槽内の処理水を前記高温水として前記高温水回収槽に回収し、前記冷却工程では、冷却手段により前記処理槽内の処理水を冷却する、処理方法。
【0007】
本発明によれば、熱水回収槽、高温水回収槽及び低温水回収槽がそれぞれ熱水、高温水、低温水を回収し、高温水による被処理物の予熱と低温水による被処理物の粗熱取りを行うことが可能となっている。これにより、これまで排水していた熱水、高温水及び低温水を再利用することができ、熱量及び給水量を削減することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る殺菌装置100を示す概略図である。
【
図2】
図1の殺菌装置100の動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図1の殺菌装置100の待機中の状態を示す説明図である。
【
図4】
図1の殺菌装置100の高温水供給工程S1aにおける処理水の流路を示す説明図である。
【
図5】
図1の殺菌装置100の高温水循環工程S1bにおける処理水の流路を示す説明図である。
【
図6】
図1の殺菌装置100の低温水回収工程S2における処理水の流路を示す説明図である。
【
図7】
図1の殺菌装置100の熱水供給工程S3における処理水の流路を示す説明図である。
【
図8】
図1の殺菌装置100の加熱工程S4における処理水の流路を示す説明図である。
【
図9】
図1の殺菌装置100の熱水回収工程S5における処理水の流路を示す説明図である。
【
図10】
図1の殺菌装置100の低温水供給工程S6aにおける処理水の流路を示す説明図である。
【
図11】
図1の殺菌装置100の低温水循環工程S6bにおける処理水の流路を示す説明図である。
【
図12】
図1の殺菌装置100の高温水回収工程S7における水の流路を示す説明図である。
【
図13】
図1の殺菌装置100の冷水供給工程S8における処理水の流路を示す説明図である。
【
図14】
図1の殺菌装置100の冷却工程S9における処理水の流路を示す説明図である。
【
図15】
図1の殺菌装置100の冷水回収工程S10における処理水の流路を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0010】
1.殺菌装置100の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る処理装置としての殺菌装置100を示す概略図である。本実施形態の殺菌装置100は、被処理物Xを加熱殺菌し、その後冷却するための装置である。被処理物Xの種類は特に問わないが、食品、特にレトルト食品に好適に用いられる。
【0011】
本実施形態の殺菌装置100は、
図1に示すように、処理槽1と、循環手段2と、加熱手段及び冷却手段としての熱交換器3と、熱水回収槽5と、高温水回収槽6と、低温水回収槽7と、冷水回収槽8と、制御手段9とを備える。また、これらの構成を接続する管路として、殺菌装置100は、循環ラインL1と、熱水回収ラインL2と、熱水供給ラインL3と、高温水回収ラインL4と、高温水供給ラインL5と、低温水回収ラインL6と、低温水供給ラインL7と、冷水回収ラインL8と、冷水供給ラインL9とを備える。以下、各構成を具体的に説明する。
【0012】
処理槽1は、被処理物Xを収容する中空容器(圧力容器)である。処理槽1は、その形状を特に問わないが、図示例では水平に配置された円筒材を備え、この円筒材は、一方の開口部が閉塞されており、他方の開口部が扉で開閉可能とされている。したがって、扉を開けることで、処理槽1に対し被処理物Xを出し入れすることができ、扉を閉じることで、処理槽1の開口部を気密に閉じることができる。本実施形態において、被処理物Xは、処理槽1内において台車上に複数段に亘って収容されたトレー10に載置され、処理槽1内の底面よりも上方において加熱殺菌処理及びその後の冷却処理がなされる。
【0013】
処理槽1には、処理槽1内の温度を検出する温度センサ(図示省略)が設けられるとともに、処理槽1内の水位を検出する水位検出器(図示せず)が設けられている。水位検出器は、その構成を特に問わないが、例えば電極式水位検出器とされる。
【0014】
また、処理槽1には、排水手段11と、加圧手段12と、排気手段13とが接続されている。排水手段11は、排水路11aを介して処理槽1内から水を排出する。排水路11aは、処理槽1の底部に接続され、排水弁11b及び逆止弁11cが設けられている。排水弁11bを開くことで、処理槽1内の水を外部へ排出することができる。
【0015】
加圧手段12は、加圧路12aを介して処理槽1内へ加圧空気(圧縮空気)を供給する。加圧路12aに設けた加圧弁12bを開くことで、加圧空気源からの加圧空気を処理槽1内に供給して、大気圧を超える圧力に処理槽1内を加圧することができる。
【0016】
排気手段13は、大気圧を超える圧力下の処理槽1内から排気路13aを介して気体を排出する。排気路13aは、処理槽1の上部に接続され、処理槽1の側から順に、排気弁13bと逆止弁13cとが設けられている。処理槽1内が大気圧を超える圧力にある状態で排気弁13bを開くと、処理槽1内の気体は排気路13aを介して外部へ排出され、処理槽1内の圧力を下げることができる。
【0017】
循環手段2は、循環ラインL1及び循環ポンプP1を備え、循環ポンプP1により処理槽1内の処理水を循環させるよう構成される。ここで、循環ラインL1は、一端部が処理槽1の底部に接続され、循環ポンプP1と熱交換器3とを順に介して、他端部が処理槽1内の噴出ノズル20に接続されている。噴出ノズル20は、循環ラインL1からの処理水を被処理物Xへ向けて噴射する。図示例では、噴出ノズル20は、被処理物Xの側方及び上方から処理水を噴出するようになっている。ただし、噴出ノズル20を被処理物Xの側方のみに設ける構成や、上方のみに設ける構成(シャワー式)とすることも可能である。また、噴出ノズル20の形状及び数は任意であるが、処理槽1に収容された被処理物Xに満遍なく処理水が噴出されるよう構成することが好ましい。また、循環ラインL1には、循環ポンプP1と熱交換器3の間に、循環弁V1も設けられている。
【0018】
熱交換器3は、循環ラインL1に設けられており、循環ラインL1により処理槽1と接続される。熱交換器3は、循環ラインL1を介して処理槽1との間を循環する水(以下、処理水と呼ぶ)を加熱及び冷却するよう構成される。具体的には、本実施形態の熱交換器3には、給蒸手段30及び冷却水供給手段40が接続されており、熱交換器3は、給蒸手段30から供給される蒸気により処理水を加熱し、冷却水供給手段40から供給される冷却水により処理水を冷却する。なお、以下の説明において、給蒸手段30から供給される蒸気及び冷却水供給手段40から供給される冷却水が流通する側を熱交換器3の一次側、循環ラインL1と接続されて処理水が流通する側を熱交換器3の二次側と呼ぶ。
【0019】
給蒸手段30は、熱交換器3の一次側に蒸気を供給して、循環ラインL1を流通する処理水を加熱する。給蒸手段30は、ボイラからの蒸気を熱交換器3へ供給する給蒸路31を備え、この給蒸路31には給蒸弁32が設けられている。給蒸弁32の開度を調整することで、循環ラインL1を循環する処理水の温度、したがって処理槽1内の温度を所望に調整することができる。具体的には、処理槽1の温度センサ(図示せず)の検出温度に基づき、給蒸弁32の開度が調整される。
【0020】
また、給蒸手段30は、熱交換器3の下流側にドレン排出路33を備えており、熱交換器3へ供給された蒸気の凝縮水をドレン排出路33を介して外部へ排出するようになっている。なお、ドレン排出路33には、ドレン排出弁34、スチームトラップ35及び逆止弁36が順に設けられており、熱交換器3への蒸気供給時、ドレン排出弁34を開くことで、蒸気の凝縮水を下方へ脱落させて外部へ排出することができる。
【0021】
冷却水供給手段40は、熱交換器3の一次側に冷却水を供給して、循環ラインL1を流通する処理水を冷却する。本実施形態の冷却水供給手段40は、具体的には、クーリングタワー41と、冷却水送水ポンプ42と、冷却水送り路43と、冷却水戻し路44とを備える。クーリングタワー41にて冷却された水は、冷却水として、冷却水送水ポンプ42により冷却水送り路43を介して熱交換器3へ供給され、熱交換器3を通過後の水は冷却水戻し路44を介してクーリングタワー41へ戻される。冷却水により間接的に循環ラインL1を循環する処理水を冷却することで、処理槽1内の温度を低下させ、被処理物Xを冷却することができる。
【0022】
また、冷却水送り路43には冷却水送り弁45が設けられる一方、冷却水戻し路44には冷却水戻し弁46が設けられている。そして、冷却水送り弁45及び冷却水戻し弁46を開いた状態で冷却水送水ポンプ42を駆動させると、クーリングタワー41と熱交換器3の一次側との間で冷却水を循環させることができる。一方、冷却水送り弁45及び冷却水戻し弁46を閉じれば、熱交換器3への冷水の通水を停止することができる。
【0023】
なお、本実施形態において、冷却水送り路43は、給蒸弁32と熱交換器3の間の位置において給蒸路31と接続され、冷却水送り弁45よりも下流側において給蒸路31と管路の一部を共有している。また、冷却水戻し路44は、熱交換器3とドレン排出弁34の間の位置においてドレン排出路33と接続され、冷却水戻し弁46よりも上流側においてドレン排出路33と管路の一部を共有している。
【0024】
なお、給蒸手段30及び冷却水供給手段40は、本実施形態における殺菌装置100の構成要素として含んでいてもよく、殺菌装置100の外部構成として、設置段階で殺菌装置100と接続するようにしても良い。
【0025】
熱水回収槽5は、熱交換器3による加熱後の処理水を熱水として処理槽1から回収して貯留するとともに、貯留していた熱水を処理槽1に供給するよう構成される。熱水回収槽5は、具体的には、処理水を貯留可能な中空容器であり、後述する加熱工程S4において用いられる処理水を貯留可能な容量とされる。また、熱水回収槽5は、加熱工程S4において用いられた熱水(例えば、100℃以上に加熱された高温高圧の熱水)を貯留するため、圧力容器とされる。ただし、加熱工程S4において用いる処理水(熱水)が100℃以下の場合は、圧力容器(密閉容器)でなくても良い。なお、図示しないが、熱水回収槽5には、槽内部に給気する給気手段と、槽内部の圧力を逃がす排気手段とを設けることが好ましい。
【0026】
熱水回収槽5には、処理槽1から熱水を回収するため、熱水回収ラインL2が接続され、また、処理槽1に熱水を供給するため、熱水供給ラインL3が接続される。熱水回収ラインL2には、熱水回収弁50が設けられ、熱水供給ラインL3には、熱水供給弁51が設けられる。なお、本実施形態において、熱水回収ラインL2は、循環ポンプP1と循環弁V1との間の位置において循環ラインL1と接続され、熱水回収弁50よりも上流側において循環ラインL1と管路の一部を共有している。そして、循環ポンプP1の駆動により、処理槽1内の処理水(熱水)を熱水回収槽5に回収することが可能となっている。また、熱水供給ラインL3は、高温高圧の熱水を流通させるため、後述する高温水供給ラインL5、低温水供給ラインL7及び冷水供給ラインL9とは別の管路となっている。
【0027】
高温水回収槽6は、熱水よりも低温である高温水を処理槽1から回収して貯留するとともに、貯留していた高温水を処理槽1に供給して被処理物Xの予熱を行うよう構成される。高温水回収槽6は、具体的には、処理水を貯留可能な中空容器であり、後述する予熱工程S1において用いられる処理水を貯留可能な容量とされる。高温水回収槽6は、密閉容器でなくても良いが、高温水を貯留するため断熱性の高い容器とすることが好ましい。
【0028】
高温水回収槽6には、処理槽1から高温水を回収するため、高温水回収ラインL4が接続され、また、処理槽1に高温水を供給するため、高温水供給ラインL5が接続される。高温水回収ラインL4には、高温水回収弁60が設けられ、高温水供給ラインL5には、高温水供給弁61が設けられる。
【0029】
低温水回収槽7は、高温水よりも低温(ただし、常温よりは高温)である低温水を処理槽1から回収して貯留するとともに、貯留していた低温水を処理槽1に供給して被処理物Xの粗熱取りを行うよう構成される。低温水回収槽7は、処理水を貯留可能な中空容器であり、後述する粗熱取り工程S6において用いられる処理水の水量を貯留可能な容量とされる。低温水回収槽7は密閉容器でなくても良いが、常温よりは高温である低温水を貯留するため、断熱性の高い容器とすることが好ましい。なお、予熱工程S1と粗熱取り工程S6において用いられる処理水の水量は同一であり、高温水回収槽6と低温水回収槽7には、同一構成の容器を用いることができる。
【0030】
低温水回収槽7には、処理槽1から低温水を回収するため、低温水回収ラインL6が接続され、また、処理槽1に低温水を供給するため、低温水供給ラインL7が接続される。低温水回収ラインL6には、低温水回収弁70が設けられ、低温水供給ラインL7には、低温水供給弁71が設けられる。
【0031】
冷水回収槽8は、熱交換器3による冷却後の処理水を冷水として処理槽1から回収して貯留するとともに、貯留していた冷水を処理槽1に供給するよう構成される。冷水回収槽8は、具体的には、処理水を貯留可能な中空容器であり、後述する冷却工程S9において用いられる処理水の水量を貯留可能な容量とされる。なお、冷水回収槽8に貯留する冷水は、冷却水供給手段40にクーリングタワー41を用いる場合はほぼ常温であるため、密閉容器でなくても良く、断熱性の高い容器である必要もない。また、冷水回収槽8に貯留可能な容量は、熱水回収槽5、高温水回収槽6及び低温水回収槽7に貯留可能な容量と同一でなくても良い。
【0032】
冷水回収槽8には、処理槽1から冷水を回収するため、冷水回収ラインL8が接続され、また、処理槽1に冷水を供給するため、冷水供給ラインL9が接続される。冷水回収ラインL8には、冷水回収弁80が設けられ、冷水供給ラインL9には、冷水供給弁81が設けられる。加えて、冷水回収槽8には、新水供給ライン82が接続されており、冷水回収槽8に水道水を供給可能となっている。なお、新水供給ライン82には、新水供給弁83が設けられている。
【0033】
なお、本実施形態において、高温水回収ラインL4、低温水回収ラインL6及び冷水回収ラインL8は、それぞれ循環ポンプP1と循環弁V1との間の位置において循環ラインL1と接続され、熱水回収弁50よりも上流側において循環ラインL1と管路の一部を共有している。そして、循環ポンプP1の駆動により、処理槽1内の処理水を高温水回収槽6、低温水回収槽7及び冷水回収槽8にそれぞれ回収することが可能となっている。加えて、高温水供給ラインL5の高温水供給弁61よりも下流側、低温水供給ラインL7の低温水供給弁71よりも下流側、及び冷水供給ラインL9の冷水供給弁81よりも下流側は管路を共有しており、共通の管路である共通給水ラインL10となっている。そして、共通給水ラインL10には、高温水回収槽6、低温水回収槽7及び冷水回収槽8に貯留された高温水、低温水及び冷水を処理槽1に給水するための給水ポンプP2が設けられている。また、共通給水ラインL10には、給水ポンプP2と処理槽1の間に、給水弁V2も設けられている。
【0034】
また、図示はしないが、熱水回収槽5、高温水回収槽6、低温水回収槽7、冷水回収槽8には、それぞれ処理水の温度を検知する温度センサを設けることが好ましい。
【0035】
制御手段9は、温度センサや水位検出器(図示せず)の検出信号や経過時間などに基づき、上述した各構成を制御する。制御手段9は、具体的には、排水弁11b、加圧弁12b、排気弁13b、熱水回収弁50、熱水供給弁51、高温水回収弁60、高温水供給弁61、低温水回収弁70、低温水供給弁71、冷水回収弁80、冷水供給弁81、新水供給弁83、循環弁V1、給水弁V2、循環ポンプP1及び給水ポンプP2等を制御する。また、本実施形態の制御手段9は、給蒸手段30(給蒸弁32、ドレン排出弁34)及び冷却水供給手段40(クーリングタワー41、冷却水送水ポンプ42、冷却水送り弁45及び冷却水戻し弁46)の制御も行う。加えて、制御手段9には、温度センサ及び水位検出器などが接続されている。制御手段9は、後述するように、所定の手順(プログラム)に従い、処理槽1内の被処理物Xの加熱殺菌やその後の冷却を行う。
【0036】
なお、上記構成の制御手段9は、具体的には例えば、CPU、メモリ(例えばフラッシュメモリ)、入力部及び出力部を備えた情報処理装置により構成することができる。そして、情報処理装置により構成された制御手段9の上述した各構成要素による処理は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが読み出して実行することで行われる。情報処理装置としては、例えば、パーソナルコンピュータ、PLC(プログラマラブルロジックコントローラ)あるいはマイコンが用いられる。ただし、制御手段9の一部の機能を、任意の通信手段により接続されたクラウド上で実行されるよう構成しても良い。
【0037】
2.殺菌装置100の動作
制御手段9は、所定の手順(プログラム)に従い、各種の弁及びポンプを制御することによって処理槽1内の被処理物Xの加熱殺菌やその後の冷却を行う。具体的には、制御手段9は、
図2に示すように、処理槽1内に被処理物Xを収容した状態で、予熱工程S1と、低温水回収工程S2と、熱水供給工程S3と、加熱工程S4と、熱水回収工程S5と、粗熱取り工程S6と、高温水回収工程S7と、冷水供給工程S8と、冷却工程S9と、冷水回収工程S10とを順次実行する。ここで、本実施形態において、予熱工程S1は、高温水供給工程S1aと高温水循環工程S1bを備え、粗熱取り工程S6は、低温水供給工程S6aと低温水循環工程S6bを備える。以下、
図4~
図15の処理水の流路を示す説明図も参照しつつ、各工程をより詳細に説明する。
【0038】
なお、本実施形態の殺菌装置100は、運転開始前の待機中、
図3に示すように、熱水回収槽5、高温水回収槽6及び冷水回収槽8に前ロットにおける熱水回収工程S5、高温水回収工程S7及び冷水回収工程S10において回収された熱水、高温水及び冷水がそれぞれ貯留された状態となっている。ただし、初回運転の際(初回ロット時)においては、前ロットが存在しないため、高温水回収槽6に高温水は貯留されていない(熱水回収槽5には蒸気により加熱された熱水が別途貯留され、冷水回収槽8には冷水として水道水が供給される)。そこで、初回運転の際には、低温水回収槽7に別途低温水を供給した状態で運転を開始し、予熱工程S1、低温水回収工程S2を省略してその後の工程のみを実行するようになっている。なお、初回運転において各回収槽に予め水を貯留させるかどうかは、上記の例にかかわらず、それぞれ設備内において所定温度の水を容易に準備できるかどうか等により適宜決定することができる。
【0039】
また、運転開始前の待機中は、排水弁11b、加圧弁12b、排気弁13b、熱水回収弁50、熱水供給弁51、高温水回収弁60、高温水供給弁61、低温水回収弁70、低温水供給弁71、冷水回収弁80、冷水供給弁81、新水供給弁83、循環弁V1、給水弁V2の各弁は閉止状態とされ、循環ポンプP1及び給水ポンプP2は停止している。また、給蒸手段30の給蒸弁32及びドレン排出弁34、冷却水供給手段40の冷却水送り弁45及び冷却水戻し弁46も閉止状態とされ、クーリングタワー41及び冷却水送水ポンプ42も停止している。
【0040】
<予熱工程S1>
殺菌装置100が運転を開始すると、まず、予熱工程S1において、制御手段9は、高温水供給工程S1aと高温水循環工程S1bとを順次実行することで、高温水回収槽6に貯留された高温水を処理槽1に供給して予熱を行う。具体的には、まず、高温水供給工程S1aにおいて、制御手段9は、高温水供給弁61及び給水弁V2を開くとともに給水ポンプP2を駆動させる。これにより、
図4に示すように、高温水回収槽6に貯留された高温水が、処理水として高温水供給ラインL5(共通給水ラインL10)を介して処理槽1に供給される。そして、高温水回収槽6内の高温水が全て処理槽1に供給されると、制御手段9は、高温水供給弁61及び給水弁V2を閉じるとともに給水ポンプP2を停止させ、高温水供給工程S1aを終了する。
【0041】
次に、制御手段9は、高温水循環工程S1bにおいて、循環弁V1を開くとともに循環ポンプP1を駆動させる。これにより、
図5に示すように、処理水は循環ラインL1を循環し、噴出ノズル20から被処理物Xに向かって噴出され、処理水と被処理物Xの間の熱交換が促進される。そして、制御手段9は、高温水循環工程S1bを所定時間実行して被処理物Xの予熱を行った後、循環弁V1を閉じるとともに循環ポンプP1を停止させ、高温水循環工程S1b(予熱工程S1)を終了する。
【0042】
<低温水回収工程S2>
次に、制御手段9は、低温水回収工程S2において、処理槽1内の処理水を低温水として低温水回収槽7に回収する。具体的には、低温水回収工程S2において、制御手段9は、低温水回収弁70を開くとともに循環ポンプP1を駆動させる。これにより、
図6に示すように、処理水は低温水回収ラインL6を介して低温水回収槽7に回収される。そして、制御手段9は、処理槽1内の処理水が回収されると、低温水回収弁70を閉じるとともに循環ポンプP1を停止させ、低温水回収工程S2を終了する。
【0043】
<熱水供給工程S3>
次に、制御手段9は、熱水供給工程S3において、熱水回収槽5に貯留された熱水を処理槽1に供給する。具体的には、熱水供給工程S3において、制御手段9は、熱水供給弁51を開く。これにより、
図7に示すように、熱水回収槽5に貯留された熱水が、処理水として熱水供給ラインL3を介して処理槽1に供給される。ここで、熱水供給ラインL3にはポンプが設けられていないが、処理槽1に対して熱水回収槽5の圧力が高いため、圧力差により熱水の供給が可能である。ただし、熱水供給ラインL3にポンプを設けることも可能である。熱水回収槽5内の熱水が全て処理槽1に供給されると、制御手段9は、熱水供給弁51を閉じ、熱水供給工程S3を終了する。
【0044】
<加熱工程S4>
次に、制御手段9は、加熱工程S4において、熱交換器3により処理槽1内の処理水を加熱する。具体的には、加熱工程S4において、制御手段9は、給蒸手段30の給蒸弁32及びドレン排出弁34を開く。これにより、
図8に示すように、加熱蒸気が熱交換器3の一次側に供給される。また、制御手段9は、循環弁V1を開くとともに循環ポンプP1を駆動させる。これにより、処理水は循環ラインL1を循環するとともに、熱交換器3の二次側を流通し、加熱蒸気との熱交換により加熱される。そして、加熱された処理水は、噴出ノズル20から被処理物Xに向かって噴出され、被処理物Xを加熱して殺菌する。この際、制御手段9は、給蒸弁32の開度を調整することで、処理槽1の温度センサ(図示せず)の検出温度を所定の殺菌温度以上に維持する。また、制御手段9は、加圧手段12の加圧弁12b及び排気手段13の排気弁13bを制御して、処理槽1内を、大気圧を超える設定圧力に維持する。なお、熱交換器3において処理水に熱を供給した加熱蒸気は、凝縮水となり、ドレン排出路33を通って外部に排出される。そして、制御手段9は、加熱工程S4を所定時間実行した後、循環弁V1を閉じるとともに循環ポンプP1を停止させ、給蒸弁32及びドレン排出弁34を閉じることで、加熱工程S4を終了する。
【0045】
<熱水回収工程S5>
次に、制御手段9は、熱水回収工程S5において、熱交換器3により加熱された処理槽1内の処理水を熱水として熱水回収槽5に回収する。具体的には、熱水回収工程S5において、制御手段9は、熱水回収弁50を開くとともに循環ポンプP1を駆動させる。これにより、
図9に示すように、処理水は熱水回収ラインL2を介して熱水回収槽5に回収される。そして、制御手段9は、処理槽1内の処理水が回収されると、熱水回収弁50を閉じるとともに循環ポンプP1を停止させ、熱水回収工程S5を終了する。
【0046】
<粗熱取り工程S6>
次に、制御手段9は、粗熱取り工程S6において、低温水供給工程S6aと低温水循環工程S6bとを順次実行することで、低温水回収槽7に貯留された低温水を処理槽1に供給して粗熱取りを行う。具体的には、まず、低温水供給工程S6aにおいて、制御手段9は、低温水供給弁71及び給水弁V2を開くとともに給水ポンプP2を駆動させる。これにより、
図10に示すように、低温水回収槽7に貯留された低温水が、処理水として低温水供給ラインL7(共通給水ラインL10)を介して処理槽1に供給される。そして、低温水回収槽7内の低温水が全て処理槽1に供給されると、制御手段9は、低温水供給弁71及び給水弁V2を閉じるとともに給水ポンプP2を停止させ、低温水供給工程S6aを終了する。
【0047】
次に、制御手段9は、低温水循環工程S6bにおいて、循環弁V1を開くとともに循環ポンプP1を駆動させる。これにより、
図11に示すように、処理水は循環ラインL1を循環し、噴出ノズル20から被処理物Xに向かって噴出され、処理水と被処理物Xの間の熱交換が促進される。そして、制御手段9は、低温水循環工程S6bを所定時間実行して被処理物Xの粗熱取りを行った後、循環弁V1を閉じるとともに循環ポンプP1を停止させ、低温水循環工程S6b(粗熱取り工程S6)を終了する。
【0048】
<高温水回収工程S7>
次に、制御手段9は、高温水回収工程S7において、処理槽1内の処理水を高温水として高温水回収槽6に回収する。具体的には、高温水回収工程S7において、制御手段9は、高温水回収弁60を開くとともに循環ポンプP1を駆動させる。これにより、
図12に示すように、処理水は高温水回収ラインL4を介して高温水回収槽6に回収される。そして、制御手段9は、処理槽1内の処理水が回収されると、高温水回収弁60を閉じるとともに循環ポンプP1を停止させ、高温水回収工程S7を終了する。
【0049】
<冷水供給工程S8>
次に、制御手段9は、冷水供給工程S8において、冷水回収槽8に貯留された冷水を処理槽1に供給する。具体的には、冷水供給工程S8において、制御手段9は、冷水供給弁81及び給水弁V2を開くとともに給水ポンプP2を駆動させる。これにより、
図13に示すように、冷水回収槽8に貯留された冷水が、処理水として冷水供給ラインL9(共通給水ラインL10)を介して処理槽1に供給される。冷水回収槽8内の冷水が全て処理槽1に供給されると、制御手段9は、冷水供給弁81及び給水弁V2を閉じるとともに、給水ポンプP2を停止させ、冷水供給工程S8を終了する。
【0050】
<冷却工程S9>
次に、制御手段9は、冷却工程S9において、熱交換器3により処理槽1内の処理水を冷却する。具体的には、冷却工程S9において、制御手段9は、冷却水供給手段40の冷却水送り弁45及び冷却水戻し弁46を開き、クーリングタワー41及び冷却水送水ポンプ42を駆動する。これにより、
図14に示すように、冷却水が熱交換器3の一次側に供給される。また、制御手段9は、循環弁V1を開くとともに循環ポンプP1を駆動させる。これにより、処理水は循環ラインL1を循環するとともに、熱交換器3の二次側を流通し、冷却水との熱交換により冷却される。そして、冷却された処理水は、噴出ノズル20から被処理物Xに向かって噴出され、被処理物Xを冷却する。なお、熱交換器3において処理水から熱を奪った冷却水は、冷却水戻し路44を介してクーリングタワー41へ戻される。そして、制御手段9は、冷却工程S9を所定時間実行した後、循環弁V1を閉じるとともに循環ポンプP1を停止させ、冷却水送り弁45及び冷却水戻し弁46を閉じ、クーリングタワー41及び冷却水送水ポンプ42を停止することで、冷却工程S9を終了する。
【0051】
<冷水回収工程S10>
次に、制御手段9は、冷水回収工程S10において、熱交換器3により冷却された処理槽1内の処理水を冷水として冷水回収槽8に回収する。具体的には、冷水回収工程S10において、制御手段9は、冷水回収弁80を開くとともに循環ポンプP1を駆動させる。これにより、
図15に示すように、処理水は冷水回収ラインL8を介して冷水回収槽8に回収される。そして、制御手段9は、処理槽1内の処理水が回収されると、冷水回収弁80を閉じるとともに循環ポンプP1を停止させ、冷水回収工程S10を終了する。
【0052】
なお、冷水回収工程S10において回収されず、処理槽1内にわずかに残った処理水は、排水弁11bを開くことにより排水することが好適である(排水工程)。
【0053】
そして、上記工程がすべて終了した後は、処理槽1の扉を開け、被処理物Xを取り出して、一連の工程を終了する。本実施形態の殺菌装置100は、このような予熱工程S1~冷水回収工程S10(
図2参照)を一連の処理(1ロット)として、被処理物Xの加熱殺菌及びその後の冷却を繰り返すようになっている。なお、各ロット間で、高温水回収槽6に回収される高温水及び低温水回収槽7に回収される低温水の温度はそれぞれ異なっていても良い。
【0054】
3.作用効果
本実施形態に係る殺菌装置100は、制御手段9の制御により熱水回収工程S5及び冷水回収工程S10を実行し、熱水回収槽5及び冷水回収槽8に熱水及び冷水を回収するよう構成されている。これにより、次ロットの熱水供給工程S3及び冷水供給工程S8において熱水及び冷水を再利用することができる。したがって、加熱工程S4において処理水の加熱に使用する給蒸手段30(図示しないボイラ)からの蒸気量(熱量)と冷却工程S9における冷却水供給手段40(クーリングタワー41)の負荷を削減するとともに、給水量も削減することが可能となっている。
【0055】
また、殺菌装置100は、高温水回収槽6及び低温水回収槽7をさらに備えており、制御手段9の制御により高温水回収工程S7及び低温水回収工程S2を実行し、高温水回収槽6及び低温水回収槽7に高温水及び低温水を回収するよう構成されている。これにより、次ロットの予熱工程S1(高温水供給工程S1a)及び粗熱取り工程S6(低温水供給工程S6a)において高温水及び低温水を再利用することができる。したがって、高温水による被処理物Xの予熱と低温水による被処理物Xの粗熱取りが可能となっており、処理水の加熱に使用する給蒸手段30(図示しないボイラ)からの蒸気量(熱量)と冷却水供給手段40(クーリングタワー41)の負荷をさらに削減することが可能となっている。
【0056】
加えて、本実施形態に係る殺菌装置100は、循環手段2を備え、処理槽1内の処理水を循環させるよう構成されている。これにより、制御手段9の実行する予熱工程S1(高温水循環工程S1b)及び粗熱取り工程S6(低温水循環工程S6b)において、被処理物Xと高温水又は低温水との間の熱交換を促進することが可能となっている。
【0057】
4.変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0058】
上記実施形態において、予熱工程S1(高温水循環工程S1b)及び粗熱取り工程S6(低温水循環工程S6b)は、所定時間が経過したタイミングで終了していた。しかしながら、予熱工程S1及び粗熱取り工程S6を終了するタイミングは、処理槽1に設けられた温度センサ(図示せず)が検知する処理水の温度が所定温度になったタイミングとしても良い。また、加熱工程S4及び冷却工程S9を終了するタイミングも、処理槽1に設けられた温度センサ(図示せず)が検知する処理水の温度が所定温度になったタイミングとしても良い。
【0059】
上記実施形態の加熱手段は、加熱工程S4において熱交換器3に供給される加熱蒸気により処理水を加熱する構成であった。しかしながら、処理水を加熱する加熱手段として、他の構成を用いることも可能である。例えば、処理槽1や循環ラインL1に加熱蒸気を直接供給して処理水を加熱する構成や、処理槽1を直接加熱する構成とすることも可能である。なお、処理槽1を直接加熱する構成の場合、循環手段2は備えていなくても良い。
【0060】
上記実施形態において、殺菌装置100は冷水回収槽8を備えていたが、冷水回収槽8は必須ではない。すなわち、冷水については回収せず、冷水供給工程S8において、単に給水(水道水)を供給するようにしても良い。この場合、水の使用量は増加するものの、熱効率は上記実施形態の構成に準じた水準とすることができる。
【0061】
上記実施形態において、熱水回収槽5は圧力容器であったが、熱水の温度に応じて、密閉されていない容器(オープンタンク)とすることも可能である。
【0062】
上記実施形態において、冷却水供給手段40は、クーリングタワー41により冷却水を冷却するものであったが、チラーにより冷却水を冷却する構成とすることもできる。また、冷却水供給手段40として、クーリングタワーとチラーをともに備え、これらを切り替えて冷却水を冷却する構成とすることも可能である。
【0063】
上記実施形態において、殺菌装置100は、制御手段9を備え、熱水回収槽5、高温水回収槽6、低温水回収槽7、冷水回収槽8への熱水、高温水、低温水及び冷水の回収とこれらの処理槽1への供給の各工程を、所定の弁及びポンプの制御により自動で行っていた。しかしながら、制御手段9を設けず、各弁及びポンプの操作を手動で行うようにしても良い。
【0064】
上記実施形態の殺菌装置100は、循環手段2の噴出ノズル20を介して処理槽1内に処理水を供給することで、少量の処理水により被処理物Xを加熱及び冷却する構成(スプレー式)であった。しかしながら、処理槽1内に多量の処理水を供給し、処理槽1を満水として被処理物Xを処理水に浸すことで被処理物Xを加熱及び冷却する構成(貯湯式)とすることも可能である。
【0065】
上記実施形態の殺菌装置100は、高温水回収槽6と低温水回収槽7の組により、次ロットの予熱工程S1(高温水供給工程S1a)及び粗熱取り工程S6(低温水供給工程S6a)において高温水及び低温水を再利用する構成であった。しかしながら、一組の高温水回収槽6と低温水回収槽7に加え、もう一組以上の回収槽を追加し、さらにカスケード化して予熱及び粗熱取りを多段階で行うようにしても良い。
【0066】
上記実施形態では、被処理物Xを処理する処理装置として、食品等の被処理物Xを殺菌処理する殺菌装置100の例を説明した。しかしながら、処理装置は、殺菌装置100に限られず、他の目的で被処理物Xの加熱及び冷却を行う装置であっても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 :処理槽
2 :循環手段
3 :熱交換器(加熱手段、冷却手段)
5 :熱水回収槽
6 :高温水回収槽
7 :低温水回収槽
8 :冷水回収槽
9 :制御手段
10 :トレー
11 :排水手段
11a :排水路
11b :排水弁
11c :逆止弁
12 :加圧手段
12a :加圧路
12b :加圧弁
13 :排気手段
13a :排気路
13b :排気弁
13c :逆止弁
20 :噴出ノズル
30 :給蒸手段
31 :給蒸路
32 :給蒸弁
33 :ドレン排出路
34 :ドレン排出弁
35 :スチームトラップ
36 :逆止弁
40 :冷却水供給手段
41 :クーリングタワー
42 :冷却水送水ポンプ
43 :冷却水送り路
44 :冷却水戻し路
45 :冷却水送り弁
46 :冷却水戻し弁
50 :熱水回収弁
51 :熱水供給弁
60 :高温水回収弁
61 :高温水供給弁
70 :低温水回収弁
71 :低温水供給弁
80 :冷水回収弁
81 :冷水供給弁
82 :新水供給ライン
83 :新水供給弁
100 :殺菌装置(処理装置)
L1 :循環ライン
L10 :共通給水ライン
L2 :熱水回収ライン
L3 :熱水供給ライン
L4 :高温水回収ライン
L5 :高温水供給ライン
L6 :低温水回収ライン
L7 :低温水供給ライン
L8 :冷水回収ライン
L9 :冷水供給ライン
P1 :循環ポンプ
P2 :給水ポンプ
S1 :予熱工程
S1a :高温水供給工程
S1b :高温水循環工程
S2 :低温水回収工程
S3 :熱水供給工程
S4 :加熱工程
S5 :熱水回収工程
S6 :粗熱取り工程
S6a :低温水供給工程
S6b :低温水循環工程
S7 :高温水回収工程
S8 :冷水供給工程
S9 :冷却工程
S10 :冷水回収工程
V1 :循環弁
V2 :給水弁
X :被処理物