(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117457
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】食器洗浄機
(51)【国際特許分類】
A47L 15/48 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
A47L15/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023573
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】武藤 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】佐橋 敏男
【テーマコード(参考)】
3B082
【Fターム(参考)】
3B082EE00
(57)【要約】
【課題】機外に洗浄槽内の湿度の高い空気を出すことなく、食器類を乾燥させることを可能とする食器洗浄機を提供する。
【解決手段】食器洗浄機1の乾燥機構は、洗浄槽3に連通する通風路24と、洗浄槽3内の空気を通風路24に送風するファン25と、通風路24上に設けられ洗浄槽3内の空気から水分を収集する水収集ユニット26とを備える。水収集ユニット26は、通風路24内の所定の位置に第1の電極32と第2の電極33とを対向させて配置し、第1の電極32と第2の電極33との間で電界を発生させて空気中の水分を収集する水収集部35を形成し、通風路24内を通る洗浄槽3内の空気を前記電界に通過させる構成を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する洗浄槽と、前記開口部を覆う蓋体と、前記洗浄槽において洗浄された食器類を乾燥する乾燥機構とを備える食器洗浄機であって、
前記乾燥機構は、前記洗浄槽に連通する通風路と、前記洗浄槽内の空気を通風路に送風するファンと、前記通風路上に設けられ前記洗浄槽内の空気から水分を収集する水収集ユニットとを備え、
前記水収集ユニットは、前記通風路内の所定の位置に第1の電極と第2の電極とを対向させて配置し、前記第1の電極と前記第2の電極との間で電界を発生させて空気中の水分を収集する水収集部を形成し、前記通風路内を通る前記洗浄槽内の空気を前記電界に通過させる構成を有する、食器洗浄機。
【請求項2】
請求項1に記載の食器洗浄機において、
前記通風路は循環経路であり、前記ファンは前記洗浄槽内の空気を循環経路を介して循環させる循環ファンであり、
前記循環経路内を循環する前記洗浄槽内の空気を前記電界に通過させる構成を有する、食器洗浄機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の食器洗浄機において、
前記第1の電極と前記第2の電極の少なくともどちらか一方は、前記通風路の外に張り出した放熱部を備える、食器洗浄機。
【請求項4】
請求項3に記載の食器洗浄機において、
前記放熱部を冷却する冷却ファンをさらに備える、食器洗浄機。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の食器洗浄機において、
前記洗浄槽内の空気を冷却するペルチェ素子をさらに備える、食器洗浄機。
【請求項6】
請求項2に記載の食器洗浄機において、
前記循環経路には、前記水収集部を通過した空気を加熱する乾燥用ヒータをさらに備える、食器洗浄機。
【請求項7】
請求項2に記載の食器洗浄機において、
前記循環経路の少なくとも一端側には、前記洗浄槽との連通口の開口面よりも上方に洗浄水流入防止手段を有する、食器洗浄機。
【請求項8】
請求項2に記載の食器洗浄機において、
前記循環経路は、前記洗浄槽内の空気が縦方向から横方向に流れる流路下端を有し、
前記水収集部は、前記流路下端よりも高い位置に設けられ、
前記流路下端は、前記洗浄槽内の洗浄水の水位よりも高い位置に配設されている、食器洗浄機。
【請求項9】
請求項2に記載の食器洗浄機において、
前記循環経路は、縦方向に延設される第1循環経路部と、横方向に延設される第2循環経路部とを有し、
前記水収集部は、前記第1循環経路部に設けられ、
前記第1循環経路部の下端部には、前記第2循環経路部と連通して接続される空気流通口と、ドレン回収通路と連通して接続され、前記水収集部で収集したドレン水を回収するドレン回収口とが設けられ、
前記ドレン回収口の下端位置は、前記空気流通口の下端位置よりも低い位置に設けられている、食器洗浄機。
【請求項10】
請求項1、2、6、7、8又は9のいずれか1項に記載の食器洗浄機において、
前記洗浄槽内の温度を測定する温度センサと、前記洗浄槽内の湿度を測定する湿度センサと、前記温度センサと前記湿度センサが測定する前記洗浄槽内の温度及び相対湿度から水蒸気量を算出し、算出した水蒸気量に基づいて前記洗浄槽内が乾燥したか否かを判定する乾燥判定部とをさらに備える、食器洗浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器類の乾燥機能を備える食器洗浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の食器洗浄機には、食器類の洗浄後に食器類の乾燥を行う乾燥機構を有しているものがある(特許文献1等)。この乾燥機構による乾燥方法として、乾燥ヒータで洗浄槽内の空気を加熱するとともに、乾燥ファンで洗浄槽外から空気を洗浄槽内に取り込んで洗浄槽内の水分を多量に含んだ空気を洗浄槽外へ強制的に排気する強制乾燥が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記強制乾燥は、洗浄槽内の空気を強制的に加熱して空気に含ませる飽和水蒸気量を増しつつ、洗浄槽内の空気を入れ替えるため、湿度の高い気候や蓄熱性の低い食器類であっても乾燥させることができるが、洗浄槽内の高温多湿の空気を強制的に食器洗浄機外に排気するため、キッチン空間の温度及び湿度が上昇して不快な環境となったり、湿度の高い排気が直接触れることによって不快な思いをしたりする場合がある。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、食器洗浄機外に洗浄槽内の湿度の高い空気を排気することなく、食器類を乾燥させることを可能とする食器洗浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る食器洗浄機は、
開口部を有する洗浄槽と、前記開口部を覆う蓋体と、前記洗浄槽において洗浄された食器類を乾燥する乾燥機構とを備える食器洗浄機であって、
前記乾燥機構は、前記洗浄槽に連通する通風路と、前記洗浄槽内の空気を通風路に送風するファンと、前記通風路上に設けられ前記洗浄槽内の空気から水分を収集する水収集ユニットとを備え、
前記水収集ユニットは、前記通風路内の所定の位置に第1の電極と第2の電極とを対向させて配置し、前記第1の電極と前記第2の電極との間で電界を発生させて空気中の水分を収集する水収集部を形成し、前記通風路内を通る前記洗浄槽内の空気を前記電界に通過させる構成を有するものである。
【0007】
この構成により、第1の電極と第2の電極の間には電界によりコロナ放電が発生する。これにより、前記電界を通過する洗浄槽内の空気に含まれる水分(水滴や水分子)が帯電し水収集部で収集されることにより洗浄槽内の空気を乾燥させることができる。従って、洗浄槽内の湿度の高い空気を食器洗浄機の外へ排出することなく、食器類を乾燥させることができる。よって、食器洗浄機の外には乾燥した空気を排出することが可能となるため、例えば、キッチンカウンター内に乾燥した洗浄槽内の空気を排出する構成とすれば、キッチン空間を不快な環境とすることがなく、また、湿度の高い排気に触れて不快な思いをすることもない。
【0008】
(2)前記(1)に記載の食器洗浄機において、
前記通風路は循環経路であり、前記ファンは前記洗浄槽内の空気を循環経路を介して循環させる循環ファンであり、
前記循環経路内を循環する前記洗浄槽内の空気を前記電界に通過させる構成を有するものである。
【0009】
この構成により、洗浄槽内の空気を食器洗浄機の外へ排出することなく、食器類を乾燥させることができる。よって、キッチン空間を不快な環境とすることがなく、また、湿度の高い排気に触れて不快な思いをすることもない。
【0010】
(3)前記(1)又は(2)に記載の食器洗浄機において、
前記第1の電極と前記第2の電極の少なくともどちらか一方は、前記通風路の外に張り出した放熱部を備えるものとすることができる。
【0011】
放熱部を備えることにより、放熱部を設けた電極に触れた水分が水蒸気から水滴に変化する際の凝結熱を放熱部によって放熱することができる。従って、前記電極に洗浄槽内の空気が触れるとその空気中の水分を水滴にして収集することができ、洗浄槽内の空気をさらに乾燥させることができる。
【0012】
(4)前記(3)に記載の食器洗浄機において、
前記放熱部を冷却する冷却ファンをさらに備えるものとすることができる。
【0013】
冷却ファンにより放熱部を冷却することで放熱部での前記凝結熱の放熱が促進されるため、前記電極に触れた洗浄槽内の空気から多くの水分を水滴にして収集することができ、洗浄槽内の空気をさらに乾燥させることができる。
【0014】
(5)前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の食器洗浄機において、
前記洗浄槽内の空気を冷却するペルチェ素子をさらに備えるものとすることができる。
【0015】
ペルチェ素子で洗浄槽内の空気を冷却して水分を凝結し収集することができるため、洗浄槽内の空気をより一層乾燥させることができる。
【0016】
(6)前記(2)~(5)のいずれか1つに記載の食器洗浄機において、
前記循環経路には、前記水収集部を通過した空気を加熱する乾燥用ヒータをさらに備えるものとすることができる。
【0017】
前記構成により、水収集部を通過して水分が収集された空気を乾燥用ヒータで加熱して温度を高くすることで相対湿度を低下させて循環経路から洗浄槽内に流出させることができる。この加熱された空気により洗浄槽内の食器類に付着した水分を多く吸収することができる。この水分を多く含んだ洗浄槽内の空気は、循環経路に流入して水収集部によって水分が収集される。従って、洗浄槽内の食器類の乾燥を促進することができ、乾燥性能を向上することができる。
【0018】
(7)前記(2)~(6)のいずれか1つに記載の食器洗浄機において、
前記循環経路の少なくとも一端側には、前記洗浄槽との連通口の開口面よりも上方に洗浄水流入防止手段を有するものとすることができる。
【0019】
前記洗浄水流入防止手段によって、洗浄工程、すすぎ工程等の洗浄運転時に洗浄槽内の洗浄水が前記連通口から循環経路内に浸入して流れ込むことを防止できる。従って、循環経路に設けられた水収集部の電極に洗浄水が触れないようにすることができる。また、水収集部で乾燥された空気が循環経路内に浸入した洗浄水に触れて水分を吸収し、洗浄槽内の水分が吸収できなくなることを防止できる。よって、乾燥工程の際に水収集部の水収集性能を低下させることもない。
【0020】
(8)前記(2)~(7)のいずれか1つに記載の食器洗浄機において、
前記循環経路は、前記洗浄槽内の空気が縦方向から横方向に流れる流路下端を有し、
前記水収集部は、前記流路下端よりも高い位置に設けられ、
前記流路下端は、前記洗浄槽内の洗浄水の水位よりも高い位置に配設されているものとすることができる。
【0021】
前記構成により、洗浄槽内の洗浄水が循環経路に逆流しないようにすることができる。従って、循環経路の流路下端よりも高い位置に設けられた水収集部の電極に洗浄水が触れないようにすることができ、また、水収集部で乾燥された空気が循環経路内に浸入した洗浄水に触れて水分を吸収し、洗浄槽内の水分が吸収できなくなることを防止できる。よって、乾燥工程の際に水収集部の水収集性能を低下させることもない。
【0022】
(9)前記(2)~(8)のいずれか1つに記載の食器洗浄機において、
前記循環経路は、縦方向に延設される第1循環経路部と、横方向に延設される第2循環経路部とを有し、
前記水収集部は、前記第1循環経路部に設けられ、
前記第1循環経路部の下端部には、前記第2循環経路部と連通して接続される空気流通口と、ドレン回収通路と連通して接続され、前記水収集部で収集したドレン水を回収するドレン回収口とが設けられ、
前記ドレン回収口の下端位置は、前記空気流通口の下端位置よりも低い位置に設けられているものとすることができる。
【0023】
前記構成により、水収集部で収集された水分がドレン水となり、縦方向に延設された第1循環経路部の下端部に流下する。第1循環経路部の下端部において、ドレン回収口の下端位置が空気流通口の下端位置よりも低い位置に設けられているため、第1循環経路部の下端部に流下したドレン水は、空気流通口に流れ込むことなく、低い位置のドレン回収口に流れ込んで回収することができる。
【0024】
(10)前記(1)~(9)のいずれか1つに記載の食器洗浄機において、
前記洗浄槽内の温度を測定する温度センサと、前記洗浄槽内の湿度を測定する湿度センサと、前記温度センサと前記湿度センサが測定する前記洗浄槽内の温度及び相対湿度から水蒸気量を算出し、算出した水蒸気量に基づいて前記洗浄槽内が乾燥したか否かを判定する乾燥判定部とをさらに備えるものとすることができる。
【0025】
この構成により、洗浄槽内の温度と相対湿度から水蒸気量を算出し、この算出した水蒸気量が、例えば洗浄槽内が50℃のときにおける相対湿度40%に相当する水蒸気量まで減少したとき洗浄槽内が乾燥したと判定し、乾燥工程を終了することができる。従って、長時間の無駄な乾燥工程を行うことなく適切に乾燥工程を終了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態による食器洗浄機の構成を示す模式図である。
【
図2】実施形態による食器洗浄機の洗浄槽を示す斜視図である。
【
図5】水収集ユニットにおける第1の電極と第2の電極を示す斜視図である。
【
図7】他の形態1、2、6の構成を説明するための模式図である。
【
図8】他の形態2として、ドレン回収通路を水溜め部に接続した構成を示す模式図である。
【
図9】他の形態3として、電極に放熱部を設けた例を示す模式図である。
【
図10】他の形態4として、冷却ファンを設けた例を示す斜視図である。
【
図11】他の形態5として、ペルチェ素子を設けた例を示す斜視図である。
【
図12】他の形態8として、排気経路を備える場合の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1、
図2に示すように、実施形態の食器洗浄機1は、前面が開放された箱状の外箱2と、外箱2内に配設され、前面に開口部3aを有する箱状の洗浄槽3と、洗浄槽3の開口部3aを開閉可能に覆う扉(蓋体)4と、洗浄槽3において洗浄された食器類5を乾燥する乾燥機構とを備えている。本実施形態の食器洗浄機1は、システムキッチンのカウンタートップの下方空間に設置されたものであるが、本発明は、卓上型の食器洗浄機にも同様に適用可能である。
【0028】
扉4は、洗浄槽3の前面の開口部3aを開閉するフロントオープン式であるが、これに限らず、洗浄槽3を引き出すスライドオープン式、洗浄槽3の上面の開口部を開閉するトップオープン式等であってもよい。扉4の上部外面には、操作部や表示部を有する操作パネル6が設けられている。操作部には、食器洗浄機1の電源をオン/オフする電源スイッチ、食器洗浄運転を開始させるスタートスイッチ、洗浄モード(標準、スピーディ、念入り等)を設定するモードスイッチ等が設けられている。扉4の内面には、洗剤やリンス剤(撥水性を上げ、乾燥性能を良くする仕上げ剤)を洗浄槽3内に自動投入する洗剤投入部7aとリンス剤投入部7bとが設けられている。
【0029】
洗浄槽3内には、被洗浄物である食器類5を収納する食器カゴ8a,8b,8cが上段、中段、下段に3つ配設されている。これら食器カゴ8a,8b,8cは、支持レール9a,9b,9cにて引き出し可能に支持されている。洗浄槽3内には、食器カゴ8a,8b,8cに収納した食器類5に洗浄水を噴射する回転ノズル10a,10b,10cが上段、中段、下段に3つ設けられている。
【0030】
洗浄槽3内の底部には、洗浄水を溜める水溜め部11が設けられている。水溜め部11の上部には、洗浄水に含まれる残菜等の汚れを分離するフィルタ12が取り外し可能に配設されている。洗浄槽3の底部には、洗浄水を加熱するヒータ13が設けられている。洗浄槽3の底部より下の空間には、水溜め部11に接続する洗浄ポンプ14及び排水ポンプ15が配設されている。洗浄ポンプ14は、回転ノズル10a,10b,10cに洗浄水を供給する送水管16に接続されている。送水管16には、上段、中段、下段のどの回転ノズル10a,10b,10cから洗浄水を噴射させるかを決定する切替弁17a,17bが設けられている。排水ポンプ15は、水溜め部11に溜まった洗浄水を機外に排水する排水管18に接続されている。
【0031】
洗浄槽3の側壁には、水溜め部11に給水を行う給水管19が接続されており、給水管19には、流路を開閉する給水電磁弁20が設けられている。水溜め部11には、貯水水位を検知する水位センサ21が設けられており、給水電磁弁20を開弁して給水する際に水位センサ21によって貯水水位が設定水位になったことが検知されると給水電磁弁20を閉弁する。また、洗浄槽3内の側壁には、扉4を開けると点灯して洗浄槽3内を照らすLED照明22が設けられている。外箱2内の底部には、水漏れを検知するための電極センサ23が設けられている。
【0032】
図3に示すように、乾燥機構は、洗浄槽3に連通する循環経路(通風路)24と、洗浄槽3内の空気を循環経路24を介して循環させる循環ファン25と、循環経路24を流れる洗浄槽3内の空気から水分を収集する水収集ユニット26とを備えている。
【0033】
循環経路24は、洗浄槽3の側壁の外面に設けられた第1循環経路部27と、洗浄槽3の底部より下方の空間に設けられた第2循環経路部28とを有する。第1循環経路部27と第2循環経路部28とは連通して接続されている。なお、循環経路24は、洗浄槽3内の空気を循環することが可能であれば、洗浄槽3の上面や背面等の任意の壁面に設けるようにしてもよい。
【0034】
第1循環経路部27は、洗浄槽3の側壁の下部から上部にかけて上下方向(縦方向)に延設されている。第1循環経路部27は、偏平な長方形筒形状に形成されて洗浄槽3の側壁の外面に沿って設けることで食器洗浄機1の大サイズ化を回避することができる。第1循環経路部27は、上下方向に延びる直線部27aと、直線部27aの上端からC字状に湾曲した湾曲部27bとを有し、湾曲部27bの端部には洗浄槽3内と連通する導入口29が設けられている(
図4参照)。洗浄槽3内の空気は、この導入口29から第1循環経路部27内に導入される。湾曲部27bは、循環経路24の一端側となる導入口29側において、導入口29(洗浄槽3との連通口)の開口面よりも上方に設けられた洗浄水流入防止手段となる。
【0035】
第2循環経路部28は、洗浄槽3の下方の空間内で左右方向(横方向)に延設されている。第2循環経路部28は、円筒形状を有し、その一方の端部は、第1循環経路部27の下端部270と接続されており、第1循環経路部27内を流れる洗浄槽3内の空気が第2循環経路部28内に流れ込む。第2循環経路部28の他方の端部は、洗浄槽3の底面に接続して洗浄槽3内と連通する導出口30が設けられており、第2循環経路部28を流れる洗浄槽3内の空気は、この導出口30から洗浄槽3内に流出される。
【0036】
導出口30は、第2循環経路部28の端部を洗浄槽3の底面から洗浄槽3内に突出させた突部30aに形成されている。また、導出口30には、導出口30の開口面と間隔を有して対向させ、導出口30を覆う流入防止カバー300が設けられている。流入防止カバー300は、循環経路24の一端側となる導出口30側において、導出口30(洗浄槽3との連通口)の開口面よりも上方に設けられた洗浄水流入防止手段となる。
【0037】
第1循環経路部27の下端部270の下面は、傾斜面(
図4参照)となっている。この下端部270において、傾斜面の高位置側には、第2循環経路部28が接続される空気流通口27cが設けられ、傾斜面の低位置側には、水収集ユニット26の水収集部35で収集したドレン水を回収するドレン回収口27dが設けられている。ドレン回収口27dには、ドレン水を機外に排出させるドレン回収通路31が設けられている。
【0038】
循環ファン25は、循環経路24に設けられている。実施形態では、循環ファン25は、洗浄槽3の底部より下方の空間に配設されて第2循環経路部28に接続されている。循環ファン25を洗浄槽3の下方空間に配設することで食器洗浄機1の大サイズ化を回避することができる。循環ファン25の作動により、洗浄槽3内の空気は、導入口29から第1循環経路部27内に流入され、第1循環経路部27から第2循環経路部28に流れて導出口30から洗浄槽3内に流出される。これにより、洗浄槽3内の空気は、洗浄槽3と循環経路24との間で循環される。
【0039】
図4に示すように、水収集ユニット26は、循環経路24内の所定の位置で対向させて配置する第1の電極32及び第2の電極33と、第1の電極32と第2の電極33の間に高電圧を印加する高圧電源34とを備え、高電圧の印加により第1の電極32と第2の電極33との間で電界を発生させて空気中に含む水分を収集する水収集部35を形成し、循環ファン25により循環経路24に循環させる洗浄槽3内の空気を前記電界に通過させ、洗浄槽3内の空気から水分を収集する構成とする。
【0040】
図4と
図5に示すように、第1の電極32と第2の電極33とは、第1循環経路部27の直線部27a内に配設され、直線部27aの長さ方向に延ばして設けられている。第1の電極32と第2の電極33とは、断面が長方形の第1循環経路部27における一方の短辺側と他方の短辺側とにそれぞれ配設され(
図4中の一点鎖線の円で囲んだ部分図を参照。)、第1循環経路部27内の空間を介して対向されている。第1の電極32は、板状の電極板をコ字状に折り曲げて形成され、両端の各側片32L,32Rを第2の電極33に対向させている。第1の電極32の各側片32L,32Rは、矩形状の凸部32aを複数形成した凸状電極列を形成し、一方の側片32Rの凸部32aと他方の側片32Lの凸部32aとは、平面視で重なり合わないように配置されている。なお、凸部32aの形状は、矩形状以外に、
図6に示すような三角形形状、針状等のように先端に鋭利な形状を有するものであってもよい。一方、第2の電極33は、板状の電極板をZ字状に折り曲げて形成され、第1の電極32に対向させている。この第2の電極33は、第1の電極32の凸部32aと対向する平面部を有した形状とするのが好ましい。
【0041】
高圧電源34により第1の電極32及び第2の電極33に高電圧を印加することで、第1の電極32と第2の電極33との間に電界が形成されコロナ放電が生じる。複数の凸部32aを形成した第1の電極32が放電極となり、凸部32aの周辺にコロナ放電が生じる。このコロナ放電により放電空間内にイオンが生成され、このイオンによって空気中の水分(水分子や水滴)が帯電して第2の電極33に引き寄せられる。コロナ放電により帯電した水分は、多くが第2の電極33の平面部に接触することにより、また、第1の電極32の平面部にも接触することにより、凝結熱が放熱され水滴となって収集される。この第1の電極32及び第2の電極33が水収集部35を構成する。なお、水収集部35となる第1の電極32及び第2の電極33は、表面に撥水加工を施して水滴を離脱させやすくしてもよい。放電極となる第1の電極32は、正極、負極のいずれであってもよい。また、第1、第2の電極32,33に高電圧を短時間パルスで印加してもよい。
【0042】
このように、水収集ユニット26は、循環ファン25により洗浄槽3内の空気を循環経路24に循環させ、第1の電極32と第2の電極33との間に形成される電界に洗浄槽3内の空気を通過させることで、洗浄槽3内の空気に含まれる水分を水収集部35で収集する。これにより、洗浄槽3内の空気を乾燥させることができるため、洗浄槽3内の空気を食器洗浄機1外へ排出することなく循環経路24に循環させ、洗浄槽3内の食器類5を乾燥させることができる。
【0043】
水収集部35となる第1の電極32の表面及び第2の電極33の表面に付着した水分は、ドレン水となり第1循環経路部27内の直線部27aを伝って流下し第1循環経路部27の下端部270のドレン回収口27dに集められ、ドレン回収通路31を通して機外の排水経路に排水される。ドレン回収口27dは、水収集部35となる第1の電極32及び第2の電極33の下方位置となる第1循環経路部27の下端部270に設けられている。ドレン回収口27dは、第1循環経路部27の下端部270において、多くの水分が収集されるであろう第2の電極33の配置側に設けられている。また、第1循環経路部27の下端部270において、ドレン回収口27dの下端位置272は、空気流通口27cの下端位置271よりも低い位置に設けられている(
図4を参照)。従って、水収集部35から流下したドレン水は、空気流通口27cに流れ込むことなく低い位置のドレン回収口27dに集めて回収することができる。ドレン回収口27dに集まったドレン水は、ドレン回収通路31を通じて機外に排水される。
【0044】
再び
図2を参照して、実施形態の食器洗浄機1は、洗浄槽3内の温度を測定する温度センサ36と、洗浄槽3内の湿度を測定する湿度センサ37と、温度センサ36と湿度センサ37が測定する洗浄槽3内の温度及び相対湿度から水蒸気量を算出し、この算出した水蒸気量に基づいて洗浄槽3内が乾燥したか否かを判定する乾燥判定部38aとを備えている。
【0045】
温度センサ36は、洗浄槽3の側壁に配設され、湿度センサ37は、第1循環経路部27の導入口29付近に配設されている。湿度センサ37を第1循環経路部27内の導入口29付近に設置することで、湿度センサ37が測定する相対湿度は、洗浄槽3内から循環経路24へ流入した直後の空気の相対湿度、すなわち、洗浄槽3内の食器類5から水分を吸収した後の洗浄槽3内の空気の相対湿度となる。これにより、洗浄槽3内の最も湿った空気の相対湿度を測定することができる。また、湿度センサ37の取り付け位置は、導入口29から第1循環経路部27内に流入した洗浄槽3内の空気の流れが直接当たらない位置とするのが望ましく、これにより、空気流の影響を受けずに洗浄槽3内の相対湿度を測定することができる。実施形態では、湿度センサ37は、
図4に示すように、導入口29の外周範囲において洗浄槽3内の空気の流れ方向側に対して180度位置の所定範囲に設けられる。なお、導入口29の下部には、洗浄運転により洗浄槽3内の洗浄水が付着しているおそれがあるため、湿度センサ37は、導入口29の真下の位置からずれた位置に配設してもよい。
【0046】
乾燥判定部38aは、温度センサ36及び湿度センサ37の測定値から算出した洗浄槽3内の空気の水蒸気量が一定量以下まで減少したとき洗浄槽3内が乾燥したと判定する。水蒸気量の算出は、計算式又は関係表から求めることができる。前記一定量は、例えば、洗浄完了後の洗浄槽3内の温度が高いことを考慮して50℃±5℃における相対湿度40%に相当する水蒸気量とすることができる。一例として、前記算出した洗浄槽3内の空気の水蒸気量が33g/m3(温度50℃、相対湿度40%のときの水蒸気量)以下まで減少すれば洗浄槽3内が乾燥したと判定することができる。なお、乾燥判定部38aによる乾燥判定は、乾燥工程中、常時行ってもよいし、一定時間毎に行ってもよい。
【0047】
実施形態の食器洗浄機1は、マイクロコンピュータ等で構成された制御装置38(
図1参照)を備えており、この制御装置38の指令により食器洗浄機1の動作を制御する。乾燥判定部38aは、この制御装置38に備えられている。
【0048】
次に、実施形態の食器洗浄機1による食器洗浄運転の動作を説明する。
なお、食器洗浄運転の開始に先立って、使用者が扉4を開けて食器類5を食器カゴ8a,8b,8cに収納し、また、洗剤とリンス剤を洗剤投入部7aとリンス剤投入部7bに充填する。そして、扉4が閉じられるとスタートスイッチがON操作可能となり、使用者が操作パネル6にて、モードスイッチで所定の洗浄モードを選択し、スタートスイッチをON操作すると、食器洗浄運転が開始する。食器洗浄運転は、制御装置38の指令により、予備洗浄工程、本洗浄工程、すすぎ洗浄工程、乾燥工程を順に実行する。
【0049】
食器洗浄運転を開始すると、まず、予備洗浄工程が行われる。予備洗浄工程では、給水電磁弁20を開弁して洗浄槽3の水溜め部11に給水し、水溜め部11に所定量の水が溜まると給水電磁弁20を閉弁する(給水動作)。続いて、洗浄ポンプ14を所定の予備洗浄時間(例えば、5分間)作動させ、水溜め部11の洗浄水を回転ノズル10a,10b,10cから噴射して、食器類5のおおまかな汚れを洗い流す。洗浄ポンプ14を停止した後、排水ポンプ15を作動させて洗浄後の洗浄水を水溜め部11から排水管18を通して機外に排水し(排水動作)、予備洗浄工程を終了する。
【0050】
続いて、本洗浄工程が行われる。本洗浄工程では、前記給水動作により水溜め部11に水を溜めた後、ヒータ13に通電し、洗浄ポンプ14を所定の本洗浄時間(例えば、30分間)作動させ、また、洗剤投入部7aから洗剤を投入し、洗剤を含み且つ加熱された洗浄水を回転ノズル10a,10b,10cから噴射し、食器類5を洗浄する。洗浄ポンプ14を停止した後、前記排水動作により水溜め部11の洗浄後の洗浄水を排水し、本洗浄工程を終了する。
【0051】
続いて、すすぎ工程が行われる。すすぎ工程では、前記給水動作により水溜め部11に水を溜めた後、洗浄ポンプ14を所定の設定時間(例えば、3分間)作動させ、洗浄水を回転ノズル10a,10b,10cから噴射して食器類5をすすぎ洗浄し、洗浄ポンプ14を停止した後、前記排水動作により水溜め部11のすすぎ洗い後の洗浄水を排水するというすすぎ動作を数回繰り返し実行する。最後のすすぎ動作を行う際は、リンス剤投入部7bからリンス剤が洗浄槽3内に投入される。そして、最後に前記排水動作により水溜め部11のすすぎ洗い後の洗浄水を排水し、すすぎ工程を終了する。
【0052】
続いて、乾燥工程が行われる。乾燥工程では、循環ファン25を作動させ、また、第1、第2の電極32,33間に高圧電源34により高電圧を印加し電界を形成させる。循環ファン25の作動により、洗浄槽3内の空気は、導入口29から循環経路24内に流入され、第1循環経路部27及び第2循環経路部28を流れ、導出口30から洗浄槽3内に流出されるように流れる。すなわち、本実施形態では、洗浄槽3内の空気は、機外に排出されることなく洗浄槽3から循環経路24に循環させる。第1、第2の電極32,33間には、電界の形成によりコロナ放電が起こり放電空間内にイオンが生成される。循環経路24において、洗浄槽3内の空気が第1、第2の電極32,33間を通過するとき、この空気に含まれる水分が前記イオンにより帯電して第2の電極33に引き寄せられる。この帯電により浮遊した水分は、第1の電極32及び第2の電極33と接触することで凝結熱が放熱され、水収集部35となる第1の電極32及び第2の電極33で収集される。これにより、循環経路24を流れる洗浄槽3内の空気は、絶対湿度が低下し乾燥される。この乾燥された空気が導出口30から洗浄槽3内に流出されることで、食器類5に付着した水分を吸収し乾燥させる。食器類5から水分を吸収した洗浄槽3内の空気は、再び循環経路24を流れることで乾燥される。このようにして洗浄槽3内の乾燥が進行する。
【0053】
乾燥終了の判定は、乾燥判定部38aにより行われる。乾燥判定部38aによる乾燥終了の判定は、温度センサ36で測定する温度と湿度センサ37で測定する相対湿度とから洗浄槽3内の空気に含まれる水蒸気量を算出し、この算出した水蒸気量に基づいて洗浄槽3内が乾燥したか否かを判定する。そして、乾燥判定部38aは、前記算出した水蒸気量が一定量(例えば、50℃±5℃における相対湿度40%に相当する水蒸気量)以下まで減少したと判断したとき、洗浄槽3内の乾燥が終了したと判定する。乾燥判定部38aで乾燥終了が判定されると、循環ファン25及び高圧電源34の作動を停止し、乾燥工程を終了する。この乾燥工程の終了により、食器洗浄運転を終了する。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、乾燥工程において、洗浄槽3内の空気を循環経路24を介して循環させることにより、水収集部35で洗浄槽3内の空気に含まれる水分を収集し洗浄槽3内の空気を乾燥させるため、洗浄槽3内の空気を機外へ排出することなく食器類5を乾燥させることができる。従って、キッチン空間を不快な環境とすることがなく、また、使用者が排気に触れて不快な思いをすることもない。また、洗浄槽3には排気口を有しないため、洗浄中の騒音を外部に漏れ難くすることができる。さらに、乾燥判定部38aで洗浄槽3内の空気の水蒸気量を算出して乾燥終了を判定することにより、長時間の無駄な乾燥工程を行うことなく適切に乾燥工程を終了させることができる。
【0055】
第1循環経路部27において、湾曲部27bのように導入口29から一旦上方に持ち上げた洗浄水流入防止手段を構成することにより、洗浄工程、すすぎ工程等の洗浄運転時に洗浄槽3内の洗浄水が導入口29から第1循環経路部27内に浸入して循環経路24に流れ込むことを防止することができる。従って、第1循環経路部27に設けられた水収集部35の電極32,33に洗浄水が触れないようにすることができ、乾燥工程の際に水収集部35の水収集性能を低下させることもない。
【0056】
また、導出口30に設けた流入防止カバー300は、導出口30の開口面よりも上方に設けられた洗浄水流入防止手段となる。導出口30は、第2循環経路部28の端部を洗浄槽3の底面から洗浄槽3内に突出させた突部30aに形成されている。このように、流入防止カバー300及び導出口30の突部30aにより、洗浄工程、すすぎ工程等の洗浄運転時に洗浄槽3内の洗浄水が導出口30から第2循環経路部28内に浸入して循環経路24に流れ込むことを防止することができる。従って、第2循環経路部28側でも洗浄水の流れ込みが防止されるため、乾燥工程の際に水収集部35を通過して乾燥した空気が、流れ込んだ洗浄水に触れて水分を吸収し、洗浄槽3内の水分が吸収できなくなることを防止し、乾燥性能を低下させることもない。
【0057】
(他の形態)
本発明の食器洗浄機においては、以下の構成を備える形態とすることができる。
【0058】
(1)形態1は、
図7に示すように、第1循環経路部27の下端部270において、空気流通口27cの下端位置271は、洗浄槽3内の洗浄水の水位Hよりも高い位置に配設した構成とする。ここで、空気流通口27cの下端位置271は、循環経路24において洗浄槽3内の空気が、縦方向の第1循環経路部27から横方向の第2循環経路部28に流れる流路下端となる。洗浄槽3内の洗浄水の水位Hは、洗浄ポンプ14の停止時の水位であり、洗浄槽3内の洗浄水の全部が洗浄槽3の底に溜まった状態のときの最大水位である。形態1では、
図7に示すように、洗浄水の全部が洗浄槽3の底に溜まった状態では、水溜め部11に洗浄水の全部が溜まるので、洗浄槽3内の洗浄水の水位Hは、洗浄ポンプ14停止時に水溜め部11に溜まった洗浄水の水位となる。この水溜め部11の洗浄水の水位Hは、循環経路24の流路下端となる空気流通口27cの下端位置271よりも低い位置にある。
【0059】
以上の形態1によれば、洗浄槽3内の洗浄水が循環経路24を流入しないようにすることができる。つまり、循環経路24の空気流通口27cは、洗浄槽3内の洗浄水の最大水位Hよりも高い位置にあるので、洗浄水が循環経路24に浸入することがなく、乾燥工程の際に水収集部35を通過して乾燥した空気が、流れ込んだ洗浄水に触れて水分を吸収し、洗浄槽3内の水分が吸収できなくなることを防止し、乾燥性能を低下させることもない。
【0060】
(2)形態2は、
図7、
図8に示すように、ドレン回収口27dに接続するドレン回収通路31を洗浄槽3の底部に配設する水溜め部11に接続した構成とする。例えば、ドレン回収通路31を洗浄槽3の低い位置に接続したり排水管18に接続したりする場合は、洗浄運転時の洗浄槽3内の洗浄水や排水時の洗浄水の排水がドレン回収通路31を通って循環経路24に流れ込むおそれがある。しかし、形態2の前記構成のように、ドレン回収通路31を水溜め部11に接続することにより、洗浄槽3内の洗浄水や排水時の洗浄水の排水がドレン回収通路31を逆流して循環経路24内に流れ込むことがない。従って、乾燥工程の際に水収集部35を通過して乾燥した空気が、流れ込んだ洗浄水に触れて水分を吸収し、洗浄槽3内の水分が吸収できなくなることを防止し、乾燥性能を低下させることもない。なお、ドレン回収通路31の水溜め部11の接続位置は、洗浄ポンプ14や排水ポンプ15の水溜め部11の接続位置よりも高い位置とする。これにより、これらポンプ14,15の作動時に水溜め部11の洗浄水がドレン回収通路31を逆流して循環経路24に流れ込むことが防止される。
【0061】
(3)形態3は、
図9(a)(b)(c)に示すように、水収集ユニット26において、第1の電極32と第2の電極33のどちらか一方又は両方には、循環経路24の外に張り出した放熱部39を備える構成とする。放熱部39を備える第1の電極32及び/又は第2の電極33に触れた水分が水蒸気から水滴に変化する際の凝結熱を放熱部39で放熱することができる。また、放熱部39を備える第1の電極32及び/又は第2の電極33を低温に保つことができる。これにより、第1の電極32及び/又は第2の電極33に洗浄槽3内の空気が触れるとその空気中の水分を水滴にして収集することができ、洗浄槽3内の空気をさらに乾燥させることができる。従って、洗浄槽3内の乾燥が早くなり、乾燥工程を早く終了することができる。なお、放熱部39は、第1、第2の電極32,33を形成する電極板の一部で構成してもよいし、電極板に別に取り付ける部材(例えば、放熱性に優れた金属板)で構成してもよい。また、放熱部39は、第1、第2の電極32,33の全長にわたって設けてもよいし、第1、第2の電極32,33に部分的に設けてもよい。
【0062】
(4)形態4は、
図10に示すように、前記形態3において、放熱部39を冷却する冷却ファン40を備える構成とする。冷却ファン40で放熱部39を冷却することにより、放熱部39での前記凝結熱の放熱を促進することができる。従って、放熱部39を備える第1の電極32及び/又は第2の電極33に触れた洗浄槽3内の空気から多くの水分を水滴にして収集することができ、洗浄槽3内の空気をさらに乾燥させることができる。
【0063】
冷却ファン40は、例えば、シロッコファンを使用することができる。この冷却ファン40は、第1循環経路部27を設けた洗浄槽3の側壁における下部の側壁外面に取り付けて、第1循環経路部27の直線部27aに対して下から上に向かって空気(冷風)を流して放熱部39に吹き付けるように吹出口40aを向ける。これにより、第1循環経路部27も冷却されるため、第1循環経路部27を流れる洗浄槽3内の空気を冷却して水分を凝結させて収集することができ、洗浄槽3内の空気をさらに乾燥させることができる。なお、冷却ファン40は、洗浄槽3自体も冷却するように構成してもよい。この場合、洗浄槽3の冷えた壁面の内側面に洗浄槽3内の空気が接触することで空気中の水分を凝結させて収集することができ、洗浄槽3内の空気をさらに乾燥させることができる。
【0064】
(5)形態5は、
図11に示すように、洗浄槽3内の空気を冷却するペルチェ素子41を備える構成とする。すなわち、ペルチェ素子41の冷却面側を洗浄槽3の側壁に貼り付けることでこの側壁及び壁面を介して洗浄槽3内の空気を冷却する。これにより、洗浄槽3内を流動する空気に含む水分を凝結させて収集することができ、洗浄槽3内の空気をより一層乾燥させることができる。なお、ペルチェ素子41は、第1循環経路部27の導入口29付近に設置するようにしてもよい。この場合、洗浄槽3内において食器類5から水分を吸収した後に導入口29に向う湿った空気を冷却して水分を収集することができ、洗浄槽3内の空気を効率よく乾燥させることができる。また、ペルチェ素子41は、発熱面側により水収集後の洗浄槽3内の空気を再加熱させるように配置してもよい。例えば、ペルチェ素子41の発熱面側を第1、第2の電極32,33よりも下流位置の第1循環経路部27又は第2循環経路部28に配設して、水収集された後の第1循環経路部27又は第2循環経路部28を流れる洗浄槽3内の空気を加熱し相対湿度を下げるようにしてもよい。
【0065】
(6)形態6は、
図7に示すように、循環経路24において、水収集部35を通過した洗浄槽3内の空気を加熱する乾燥用ヒータ42を備える構成とする。具体的には、乾燥用ヒータ42は、第2循環経路部28の経路中で循環ファン25の下流位置に設け、乾燥工程時に乾燥用ヒータ42を作動させることにより導出口30から洗浄槽3内に流出する空気を加熱する。これにより、水収集部35を通過して水分が収集された空気を乾燥用ヒータ42で加熱して温度を高くし相対湿度を低下させて第2循環経路部28の導出口30から洗浄槽3内に流出させる。乾燥用ヒータ42を循環ファン25の下流位置に設けることにより洗浄槽3に流出する直前で第2循環経路部28を流れる空気を加熱でき、温度低下していない状態で洗浄槽3内に流出させることができる。この加熱された空気により洗浄槽3内の食器類5に付着した水分を多く吸収することができる。この水分を多く含んだ洗浄槽3内の空気は、第1循環経路部27に流入して水収集部35によって水分が収集される。従って、洗浄槽3内の食器類5の乾燥を促進することができ、乾燥性能を向上することができる。なお、乾燥用ヒータ42は、循環ファン25の下流位置に限らず、循環経路24の経路中において水収集部35の下流の任意の位置に設けるようにしてもよい。
【0066】
(7)形態7は、乾燥工程の実行中は、ヒータ13を作動させて、第2循環経路部28の下流端の導出口30から洗浄槽3内に流出した空気を加熱する構成とする。これにより、導出口30から洗浄槽3内に流出した空気は、温度が高くなることで相対湿度が低下し、食器類5に付着した水分を多く吸収することができ、これに伴って水収集部35で水分を多く含む洗浄槽3内の空気から水分を収集することで乾燥性能を向上することができる。
【0067】
(8)形態8は、
図12に示すように、通風路は、下流端に洗浄槽3内の空気を食器洗浄機1外に排出する排気口830を設けた排気経路824を構成する。すなわち、この形態8は、乾燥機構として、洗浄槽3に連通する排気経路(通風路)824と、洗浄槽3内の空気を排気経路824に送風するファン825と、排気経路824上に設けられて洗浄槽3内の空気から水分を収集する水収集ユニット826とを備える構成とする。排気経路824は、水収集ユニット826が設置され、縦方向に延びる第1排気経路部827と、ファン825が設置され、横方向に延びる第2排気経路部828とを有する。ファン825は、実施形態の循環ファン25と同じ性能のファンを使用でき、ファン825の作動により、洗浄槽3内の空気を導入口29から排気経路824内に取り込み、水収集ユニット826で水分を収集し乾燥させた洗浄槽3内の空気を排気経路824の排気口830から食器洗浄機1外に排出させる。水収集ユニット826は、実施形態の水収集ユニット26と同じく電界を発生させてコロナ放電を起こす第1の電極32と第2の電極33とで形成する水収集部35を第1排気経路部827内に配設した構成を有する。
【0068】
本発明では、水収集ユニット826により洗浄槽3内の空気に含む水分を収集することができる。形態8の構成によれば、排気経路824の排気口830からは、水収集ユニット826により水分を収集した洗浄槽3内の空気が排出されるため、洗浄槽3内の湿度の高い空気が食器洗浄機1外に排出されることなく、洗浄槽3内の食器類5を乾燥させることができる。従って、食器洗浄機1外には、乾燥した空気が排出されるため、キッチン空間を湿度の高い不快な環境とすることがなく、また、ユーザが湿度の高い排気に触れて不快な思いをすることもない。例えば、排気経路824の排気口830は、乾燥した洗浄槽3内の空気をキッチンカウンター内に排出する構成とすれば、キッチン空間には食器洗浄機1から空気が直接排出されることがない。従って、食器洗浄機1からの排気によりキッチン空間を不快な環境とすることを防止でき、また、ユーザが食器洗浄機1からの排気に触れて不快な思いをすることを防止できる。なお、ファン825は、実施形態の循環ファン25よりも風量を少なくするように作動させたり、また、水収集ユニット826の水収集部35は、実施形態の水収集ユニット26よりも排気経路824の長さ方向に沿って長く形成するようにしてもよい。これにより、水収集ユニット826による水収集性能を向上することができ、排気経路824を流れる洗浄槽3内の空気は、水収集ユニット826を通過することで確実に相対湿度を一定以下に低下させることができる。
【0069】
なお、本発明は、前記実施形態及び他の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で様々な変更を行うことが可能である。
例えば、水収集ユニット26,826は洗浄槽3の上部または下部に横方向に置かれてもよい。
更には、ドレン回収通路31は、U字管等の水トラップ部を設けたり排水後に残水が残る位置に設ける等のように水シールできる構成としてもよい。これにより、乾燥運転時に、洗浄槽3内の空気の一部が水収集部35を設けた第1循環経路部27(第1排気経路部827)を通らずドレン回収通路31と循環ファン25(ファン825)を設けた第2循環経路部28(第2排気経路部828)との間で流通するショートカットを防止できる。
また、給水動作により水溜め部11に溜める水は、熱源機等で加熱したお湯を使用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 食器洗浄機
2 外箱
3 洗浄槽
3a 開口部
4 扉(蓋体)
5 食器類
6 操作パネル
7a 洗剤投入部
7b リンス剤投入部
8a,8b,8c 食器カゴ
9a,9b,9c 支持レール
10a,10b,10c 回転ノズル
11 水溜め部
12 フィルタ
13 ヒータ
14 洗浄ポンプ
15 排水ポンプ
16 送水管
17a,17b 切替弁
18 排水管
19 給水管
20 給水電磁弁
21 水位センサ
22 LED照明
23 電極センサ
24 循環経路(通風路)
25 循環ファン
26 水収集ユニット
27 第1循環経路部
27a 直線部
27b 湾曲部(洗浄水流入防止手段)
27c 空気流通口
27d ドレン回収口
28 第2循環経路部
29 導入口
30 導出口
30a 突部
31 ドレン回収通路
32 第1の電極
32a 凸部
32L,32R 側片
33 第2の電極
34 高圧電源
35 水収集部
36 温度センサ
37 湿度センサ
38 制御装置
38a 乾燥判定部
39 放熱部
40 冷却ファン
40a 吹出口
41 ペルチェ素子
42 乾燥用ヒータ
270 第2循環経路部の下端部(流路下端)
271 空気流通口の下端位置
272 ドレン回収口の下端位置
300 流入防止カバー(洗浄水流入防止手段)
824 排気経路(通風路)
825 ファン
826 水収集ユニット
830 排気口