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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117460
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20240822BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240822BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20240822BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01F27/29 P
H01F17/04 F
H01F27/255
H01F27/28 128
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023576
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 洋史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 亮介
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043EA01
5E070AB07
5E070BA06
5E070EA06
(57)【要約】
【課題】高周波帯において、インピーダンスの周波数特性の広帯域化を可能とするコイル装置を提供すること。
【解決手段】コイル装置1は、巻回部20と、巻回部20から引き出された引出部21とを有する導体2と、巻回部20の径方向の内側に配置された中芯部30と、巻回部20を径方向の外側から囲む側壁部32とを有する第1コア3と、側壁部32の軸方向の一端に取り付けられた板状の第2コア4とを有する。側壁部32の軸方向の一端には、側壁部32の軸方向の他端に向かって切り欠かれ、引出部21が通過する切り欠き部6aが形成されている。引出部21の少なくとも一部は、引出部21の延在方向と側壁部32の軸方向とに垂直な方向から見て、切り欠き部6aを通じて外部に露出している。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回部と、前記巻回部から引き出された引出部とを有する導体と、
前記巻回部の径方向の内側に配置された中芯部と、前記巻回部を前記径方向の外側から囲む側壁部とを有する第1コアと、
前記側壁部の軸方向の一端に取り付けられた板状の第2コアと、を有し、
前記側壁部の軸方向の一端には、前記側壁部の軸方向の他端に向かって切り欠かれ、前記引出部が通過する切り欠き部が形成されており、
前記引出部の少なくとも一部は、前記引出部の延在方向と前記側壁部の軸方向とに垂直な方向から見て、前記切り欠き部を通じて外部に露出しているコイル装置。
【請求項2】
前記巻回部の少なくとも一部は、前記引出部の延在方向と前記側壁部の軸方向とに垂直な方向から見て、前記切り欠き部を通じて外部に露出している請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記切り欠き部は、前記側壁部の周方向に沿って延在しており、
前記切り欠き部の延在方向の一端は、前記巻回部における前記引出部の引出位置から、前記径方向に沿って離間した位置に位置する請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記引出部は、第1引出部と、第2引出部とを有し、
前記切り欠き部は、前記第1引出部が通過する第1切り欠き部と、前記側壁部の周方向に沿って前記第1切り欠き部とは離間し、前記第2引出部が通過する第2切り欠き部とを有する請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記側壁部は、前記側壁部の外周面から、前記径方向の外側に突出する凸部を有し、
前記凸部の少なくとも一部は、前記周方向に沿って、前記第1切り欠き部と前記第2切り欠き部との間に位置する請求項4に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記凸部の一部は、前記第1切り欠き部または前記第2切り欠き部の底から、前記側壁部の軸方向に沿って突出している請求項5に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記第1引出部と前記第2引出部とは、同一方向に引き出されている請求項4に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記側壁部の外周面には、第1端子と、第2端子とが取り付けられており、
前記第1端子は、前記第1引出部に接続された第1継線部を有し、
前記第2端子は、前記第2引出部に接続された第2継線部を有し、
前記第1継線部と前記第2継線部とは、前記第1引出部および前記第2引出部の延在方向に沿って、それぞれ前記側壁部の同一側に配置されている請求項7に記載のコイル装置。
【請求項9】
前記側壁部は、前記側壁部の外周面から前記径方向の外側に突出する凸部と、前記側壁部の周方向に沿って前記凸部に隣接する凹部とを有し、
前記凹部は、前記側壁部の外周面と前記凸部の外面とで画定されており、
前記側壁部の軸方向から見て、前記第1継線部または前記第2継線部は、前記凹部の範囲内に配置されている請求項8に記載のコイル装置。
【請求項10】
前記側壁部の軸方向に沿って、前記巻回部の一端は、前記中芯部の一端よりも、前記側壁部の底に向けて位置ずれしている請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項11】
前記第1コアは、金属磁性体粒子を含み、
前記第2コアは、フェライト粒子を含み、
前記第2コアの透磁率は、前記第1コアの透磁率の5倍以上である請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項12】
前記第2コアの板厚は、前記側壁部の軸方向の高さの15%以上である請求項1または2に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示されるように、ポットコアを備えたコイル装置が知られている。ポットコアは、コイルの径方向の内側に配置される中芯部と、コイルを径方向の外側から囲む側壁部とを有する。側壁部の軸方向の一端には、側壁部の軸方向の他端に向かって切り欠かれた切り欠き部が形成されている。この切り欠き部を介して、コイルから引き出された引出部を、側壁部の径方向の外側へさらに引き出すことが可能となっている。
【0003】
ところで、この種のコイル装置を高周波帯で使用する場合、高周波帯において、インピーダンスの周波数特性を広帯域で確保しにくいことが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-286658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、高周波帯において、インピーダンスの周波数特性の広帯域化を可能とするコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示のコイル装置は、
巻回部と、前記巻回部から引き出された引出部とを有する導体と、
前記巻回部の径方向の内側に配置された中芯部と、前記巻回部を前記径方向の外側から囲む側壁部とを有する第1コアと、
前記側壁部の軸方向の一端に取り付けられた板状の第2コアと、を有し、
前記側壁部の軸方向の一端には、前記側壁部の軸方向の他端に向かって切り欠かれ、前記引出部が通過する切り欠き部が形成されており、
前記引出部の少なくとも一部は、前記引出部の延在方向と前記側壁部の軸方向とに垂直な方向から見て、前記切り欠き部を通じて外部に露出している。
【0007】
本開示のコイル装置では、引出部の少なくとも一部が、引出部の延在方向と側壁部の軸方向とに垂直な方向から見て、切り欠き部を通じて外部に露出している。すなわち、引出部の少なくとも一部は、引出部の延在方向と側壁部の軸方向とに垂直な方向から見て、側壁部で隠れていない(ただし、引出部の少なくとも一部は、非磁性体などのコア以外の部材で隠れいてもよい)。このような態様で側壁部の軸方向の一端に切り欠き部を形成することにより、側壁部の周方向に沿って、従来よりも広い範囲に切り欠き部を形成することが可能となり、インピーダンスの周波数特性を高周波側に延ばすことができる。そのため、高周波帯において、インピーダンスの周波数特性の広帯域化を図ることができる。なお、このような効果が得られる理由として、切り欠き部が、側壁部の周方向に沿って、、従来よりも広い範囲に形成されることにより、インダクタンスの調整が可能になるためであると考えられる。
【0008】
また、本開示のコイル装置では、切り欠き部が、側壁部の周方向に沿って、従来よりも広い範囲に形成されるため、側壁部との接触を防止しつつ、側壁部の径方向の外側に向けて引出部を引き出しやすくなり、コイル装置の製造容易化を図ることができる。
【0009】
前記巻回部の少なくとも一部は、前記引出部の延在方向と前記側壁部の軸方向とに垂直な方向から見て、前記切り欠き部を通じて外部に露出していてもよい。
【0010】
前記切り欠き部は、前記側壁部の周方向に沿って延在しており、前記切り欠き部の延在方向の一端は、前記巻回部における前記引出部の引出位置から、前記径方向に沿って離間した位置に位置してもよい。
【0011】
前記引出部は、第1引出部と、第2引出部とを有し、前記切り欠き部は、前記第1引出部が通過する第1切り欠き部と、前記側壁部の周方向に沿って前記第1切り欠き部とは離間し、前記第2引出部が通過する第2切り欠き部とを有してもよい。
【0012】
前記側壁部は、前記側壁部の外周面から、前記径方向の外側に突出する凸部を有し、前記凸部の少なくとも一部は、前記周方向に沿って、前記第1切り欠き部と前記第2切り欠き部との間に位置してもよい。
【0013】
前記凸部の一部は、前記第1切り欠き部または前記第2切り欠き部の底から、前記側壁部の軸方向に沿って突出していてもよい。
【0014】
前記第1引出部と前記第2引出部とは、同一方向に引き出されていてもよい。
【0015】
前記側壁部の外周面には、第1端子と、第2端子とが取り付けられており、前記第1端子は、前記第1引出部に接続された第1継線部を有し、前記第2端子は、前記第2引出部に接続された第2継線部を有し、前記第1引出部および前記第2引出部の延在方向に沿って、前記第1継線部と前記第2継線部とは、前記第1引出部および前記第2引出部の延在方向に沿って、それぞれ前記側壁部の同一側に配置されていてもよい。
【0016】
前記側壁部は、前記側壁部の外周面から前記径方向の外側に突出する凸部と、前記側壁部の周方向に沿って前記凸部に隣接する凹部とを有し、前記凹部は、前記側壁部の外周面と前記凸部の外面とで画定されており、前記側壁部の軸方向から見て、前記第1継線部または前記第2継線部は、前記凹部の範囲内に配置されていてもよい。
【0017】
前記側壁部の軸方向に沿って、前記巻回部の一端は、前記中芯部の一端よりも、前記側壁部の底に向けて位置ずれしていてもよい。
【0018】
前記第1コアは、金属磁性体粒子を含み、前記第2コアは、フェライト粒子を含み、前記第2コアの透磁率は、前記第1コアの透磁率の5倍以上でもよい。
【0019】
前記第2コアの板厚は、前記側壁部の軸方向の高さの15%以上でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は本開示の一実施形態のコイル装置の斜視図である。
図2A図2Aは第1コアの内部構成を示す斜視図である。
図2B図2B図2Aに示す第1コアの平面図である。
図2C図2C図2Aに示す第1コアをY軸に沿って見た側面図である。
図2D図2D図2Aに示す第1コアをX軸に沿って見た側面図である。
図3図3は第1コアの斜視図である。
図4図4は巻回部および端子の斜視図である。
図5図5図2Aに示すV-V線に沿う断面図である。
図6図6はインピーダンスの周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態について説明する。なお、図示する内容は、本開示の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。また、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
図1に示す本開示の一実施形態のコイル装置1は、例えばインダクタとして機能し、各種の電子機器のフィルタ回路等に搭載される。図2Aに示すように、コイル装置1は、ワイヤ2が螺旋状に巻回されてなる巻回部20と、第1コア3とを有する。コイル装置1は、第2コア4と、端子5aおよび5bとをさらに有していてもよい。
【0023】
ワイヤ2は、例えば銅などで構成された丸線あるいは平角線などの導電性芯線を有する。ワイヤ2は、これらの導電性芯線を絶縁性の被膜で被覆した絶縁被覆ワイヤでもよい。また、ワイヤ2は、融着層が形成された自己融着線でもよい。ワイヤ2の線径は、例えば10~400μmである。巻回部20は、例えば空芯コイルであり、第1コア3に設けられている。巻回部20の巻軸は、コイル装置1の設置面(コイル装置1が設置される基板と対向する面)に対して垂直に配置される。巻回部20の径方向の層数は、複数であり、巻回部20の少なくとも一部において、ワイヤ2は、巻軸に沿って、往復するように巻回されている。
【0024】
図4に示すように、ワイヤ2は、巻回部20に加えて、巻回部20から引き出された引出部21および22をさらに有する。引出部21は巻回部20からワイヤ2の一端まで延在しており、引出部22は巻回部20からワイヤ2の他端まで延在している。引出部21および22は、同一方向に引き出されている。そのため、ワイヤ2のフォーミングを抑えつつ、引出部21および22を巻回部20から引き出すことができる。また、巻回部20において、ワイヤ2のターン数を増大させ、インダクタンスの調整を図ることができる。なお、引出部21および22は、異なる方向に引き出されていてもよい。また、引出部21および22は、平行に引き出されているが、非平行に引き出されていてもよい。
【0025】
引出部21および22の延在方向(引出方向)は、X軸に平行な方向である。あるいは、引出部21および22の延在方向は、X軸に対して、XY面に沿って所定角度で傾斜した方向である。ここで、所定角度とは、特に限定されないが、20度未満である。
【0026】
以下では、巻回部20の巻軸方向の一端を第1端20aと呼び、巻回部20の巻軸方向の他端を第2端20bと呼ぶ。引出部21は、巻回部20の第2端20bから引き出されている。ただし、引出部21は、巻回部20の第1端20aと第2端20bとの間の位置から引き出されていてもよい。例えば、引出部21は、巻回部20の巻軸方向の中心よりも、第1端20aまたは第2端20bに近接する位置から引き出されていてもよい。あるいは、引出部21は、巻回部20の巻軸方向の中心から引き出されていてもよい。引出部22は、巻回部20の第1端20aから引き出されている。ただし、引出部22は、巻回部20の第1端20aと第2端20bとの間の位置から引き出されていてもよい。例えば、引出部22は、巻回部20の巻軸方向の中心よりも、第1端20aまたは第2端20bに近接する位置から引き出されていてもよい。あるいは、引出部21は、巻回部20の巻軸方向の中心から引き出されていてもよい。
【0027】
図3に示すように、第1コア3は、ポットコアであり、磁性体と樹脂とを含む材料で形成されている。本実施形態では、第1コア3は、主として、金属磁性体粒子を含んでいる。金属磁性体粒子としては、Fe-Ni合金粉、Fe-Si合金粉、Fe-Si-Cr合金粉、Fe-Co合金粉、Fe-Si-Al合金粉、アモルファス鉄等が例示される。ただし、第1コア3は、金属磁性粒子に代えて、フェライト粒子等を含んでいてもよい。フェライト粒子としては、Ni-Zn系フェライトやMn-Zn系フェライト等が例示される。第1コア3を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、その他の合成樹脂、あるいはその他の非磁性材料等が例示される。第1コア3は、上述した磁性体と樹脂とを含む材料を圧粉成形あるいは射出成形することにより形成されている。なお、第1コア3は、金属磁性体粒子に代えて、フェライト粒子を主として含んでいてもよい。あるいは、第1コア3は、金属磁性体の焼結体でもよい。
【0028】
第1コア3は、例えば、中芯部30と、側壁部32と、底壁部34とを有する。中芯部30は、円柱形状を有し、底壁部34の中心部から突出している。中芯部30は、底壁部34の中心部から、その径方向にオフセットした位置で突出していてもよい。中芯部30の形状は、図3に示す形状に限定されず、例えば、四角柱、八角柱、あるいはその他の多角柱でもよい。図2Aおよび図3に示すように、中芯部30の外周面30cには、巻回部20が設けられている。中芯部30は、巻回部20の径方向の内側に配置されており、その巻軸に沿って巻回部20を貫通している。
【0029】
中芯部30の軸方向の長さは、巻回部20の巻軸方向の長さよりも長くてもよい。以下では、中芯部30の軸方向の一端を第1端30aと呼び、中芯部30の軸方向の他端を第2端30bと呼ぶ。図5に示すように、中芯部30の軸方向に沿って、巻回部20の第1端20aは、中芯部30の第1端30aよりも、コイル装置1の設置面側に位置ずれしている。そのため、第1端20aの位置ずれ幅に応じて、中芯部30の軸方向に沿って、引出部22(図2A)の引出位置を調整することができる。これにより、ワイヤ2のフォーミングを抑えつつ、引出部22を巻回部20から引き出すことができる。
【0030】
図2Aおよび図3に示すように、側壁部32は、底壁部34の外縁部から、中芯部30と同一方向に向かって突出している。側壁部32は、中芯部30の径方向の外側に位置し、中芯部30を径方向の外側から囲んでいる。また、側壁部32は、巻回部20の径方向の外側に位置し、巻回部20を径方向の外側から囲んでいる。側壁部32の外周面は、巻回部20の巻軸方向から見て、実質的に四角形である。ただし、側壁部32の外周面の形状は四角形に限定されず、六角形、八角形、その他の多角形、円形、楕円形あるいはその他の形状でもよい。
【0031】
側壁部32は、第1面32aと、第1面32aと対向する第2面32bと、第3面32cと、第3面32cと対向する第4面32dとを有する。図2Aおよび図3等において、X軸は、第1面32aと第2面32bとが対向する方向に平行な軸である。Y軸は、第3面32cと第4面32dとが対向する方向に平行な軸である。Z軸は、X軸およびY軸に垂直な軸である。また、Z軸は、上述した巻回部20の巻軸方向、中芯部30の軸方向および側壁部32の軸方向に平行な軸である。
【0032】
第1面32aと第3面32cとの間に位置する稜線部は、面取りされている。同様に、第1面32aと第4面32dとの間に位置する稜線部は、面取りされている。また、第2面32bと第3面32cとの間に位置する稜線部は、側壁部32の横断面において湾曲している。同様に、第2面32bと第4面32dとの間に位置する稜線部は、側壁部32の横断面において湾曲している。ただし、これらの面取り部および湾曲部は、必須ではなく、省略されてもよい。
【0033】
側壁部32は、端面32eと、内周面32fとをさらに有する。端面32eは、側壁部32の軸方向の一端を構成する面である。端面32eは、中芯部30と側壁部32との間の凹状隙間36の開口縁に形成されており、側壁部32の軸方向に垂直な方向に沿って延在している。端面32eは、巻回部20の第1端20aよりも、Z軸に沿って一方側(Z軸正方向側)に位置する。そのため、例えば、側壁部32の第2面32b側から、側壁部32をX軸に沿って見たとき、第1端20aは、側壁部32(第2面32b)で隠れており、第2面32b側に露出していない。
【0034】
内周面32fは、中芯部30の外周面30cに沿って延在している。内周面32fをZ軸方向から見た形状は、円形であるが、例えば、四角形、八角形、あるいはその他の多角形でもよい。
【0035】
図5に示すように、底壁部34は、底面34aと、設置面34bとを有する。底面34aは、凹状隙間36の底に形成されており、中芯部30の周方向に沿って延在している。底面34aには、巻回部20の第2端20bが配置される。ただし、底面34aと第2端20bとの間には、接着剤などの樹脂10が充填されていてもよい。
【0036】
設置面34bは、Z軸に沿って、底面34aとは反対側に位置する。設置面34bは、中芯部30または側壁部32の軸方向に垂直な面である。また、設置面34bは、コイル装置1が設置される基板(図示略)と対向する面である。本実施形態では、設置面34bを、コイル装置1の設置面と呼ぶ場合がある。
【0037】
図2Aおよび図3に示すように、凹状隙間36は、中芯部30の外周面30cと側壁部32の内周面32fとで挟まれた隙間であり、中芯部30の周方向に沿って延在している。凹状隙間36には、巻回部20が収容されている。凹状隙間36には、中芯部30の外周面30cに巻回部20の内周面20c(図4)を接着するための樹脂10が充填されてもよい(図5参照)。
【0038】
図2Aおよび図3に示すように、側壁部32の軸方向の一端(端面32e)には、側壁部32の軸方向の他端に向かって切り欠かれた切り欠き部6aおよび6bが形成されている。切り欠き部6aおよび6bは、側壁部32の周方向に沿って延在している。また、切り欠き部6aおよび6bは、側壁部32の径方向に沿って、側壁部32の内周面32fから外周面(第1面32a、第3面32c、第4面32d)にかけて延在している。切り欠き部6aまたは6bによって切り欠かれた側壁部32の内周面32fの周方向の長さは、ワイヤ2の線径の2倍以上、4倍以上、6倍以上、8倍以上あるいは10倍以上でもよい。
【0039】
切り欠き部6aには、引出部21が通過しており、切り欠き部6bには、引出部22が通過している。引出部21は、切り欠き部6aを介して、側壁部32の径方向の内側から外側へ向けて引き出されている。また、引出部22は、切り欠き部6bを介して、側壁部32の径方向の内側から外側へ向けて引き出されている。
【0040】
切り欠き部6aと切り欠き部6bとは、側壁部32の周方向に沿って離間している。切り欠き部6aおよび6bは、全体として、側壁部32のX軸方向の中央よりも、第1面32a側に位置している。切り欠き部6aは、全体として、側壁部32のY軸方向の中央よりも、第3面32c側に位置している。また、切り欠き部6bは、全体として、側壁部32のY軸方向の中央よりも、第4面32d側に位置している。
【0041】
例えば、側壁部32の端面32eの1/8以上が、切り欠き部6aまたは6bによって、切り欠かれていてもよい。あるいは、側壁部32の端面32eの1/6以上が、切り欠き部6aまたは6bによって、切り欠かれていてもよい。あるいは、側壁部32の端面32eの1/5以上が、切り欠き部6aまたは6bによって、切り欠かれていてもよい。
【0042】
また、例えば、側壁部32の端面32eの1/4以上が、切り欠き部6aおよび6bによって、切り欠かれていてもよい。あるいは、側壁部32の端面32eの1/3以上が、切り欠き部6aおよび6bによって、切り欠かれていてもよい。
【0043】
切り欠き部6aと切り欠き部6bとは、同一形状を有するが、異なる形状を有していてもよい。例えば、切り欠き部6aおよび6bの一方が、他方よりも、側壁部32の周方向に沿って、より長い距離で延在していてもよい。
【0044】
切り欠き部6aは、側壁部32の周方向に沿って、第1面32aから第3面32cにかけて連続的に形成されている。切り欠き部6aは、側壁部32の複数の面に跨って形成されており、第1面32aと第3面32cとの間の稜線部は、切り欠き部6aによって切り欠かれている。切り欠き部6aの延在方向の一端である第1端61は、第3面32cのX軸方向の中央部に位置する。ここで、第3面32cのX軸方向の中央部には、第3面32cのX軸方向の中央から、第3面32cのX軸方向の長さの5~10%ほど、X軸正方向側またはX軸負方向側に位置ずれした位置が含まれる。なお、第1端61は、X軸に沿って、第3面32cの中央部よりも第1面32a側に位置していてもよく、あるいは第2面32b側に位置していてもよい。
【0045】
切り欠き部6aの延在方向の他端である第2端62は、第1面32aのY軸方向の中央よりも、第3面32c側に、Y軸に沿って所定距離だけ離間した位置に位置する。ここで、所定距離とは、例えば、第1面32aのY軸方向の長さの5~30%に相当する距離である。
【0046】
切り欠き部6aの第1端61は、巻回部20における引出部21の引出位置23から、巻回部20の径方向に沿って離間した位置(当該位置の近傍も含む)に位置していてもよい。ここで、上記位置の近傍には、上記位置から、X軸に沿って、第3面32cのX軸方向の長さの5~10%ほど位置ずれした位置が含まれる。
【0047】
ここで、図2Bに示すように、切り欠き部6aの第1端61と側壁部32の第1面32aとの間のX軸に沿った長さをL1とする。また、側壁部32の第3面32cのX軸に沿った長さをL2とする。このとき、L1/L2≧1/8でもよく、L1/L2≧1/4でもよく、L1/L2≧1/3でもよい。また、L1/L2≦1/2でもよい。
【0048】
また、切り欠き部6aの第2端62と側壁部32の第3面32cとの間のY軸に沿った長さをL3とする。また、側壁部32の第1面32aのY軸に沿った長さをL4とする。このとき、L3/L4≧1/8でもよく、L3/L4≧1/4でもよく、L3/L4≧1/3でもよい。また、L3/L4<1/2でもよい。
【0049】
また、図2Cに示すように、切り欠き部6aの底部60と側壁部32の端面32eとの間のZ軸に沿った長さをL5とする。また、側壁部32の第2面32b(あるいは、第1面32a)のZ軸に沿った長さをL6とする。このとき、L5/L6≧1/16でもよく、L5/L6≧1/8でもよい。また、L5/L6<1/2でもよい。また、長さL5は、ワイヤ2の線径の1倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、あるいは8倍以上でもよい。
【0050】
図2Aおよび図3に示すように、切り欠き部6bは、側壁部32の周方向に沿って、第1面32aから第4面32dにかけて連続的に形成されている。切り欠き部6bは、側壁部32の複数の面に跨って形成されており、第1面32aと第4面32dとの間の稜線部は、切り欠き部6bによって切り欠かれている。切り欠き部6bの延在方向の一端である第1端61は、第4面32dのX軸方向の中央部に位置する。ここで、第4面32dのX軸方向の中央部には、第4面32dのX軸方向の中央から、第4面32dのX軸方向の長さの5~10%ほど、X軸正方向側またはX軸負方向側に位置ずれした位置が含まれる。なお、第1端61は、X軸に沿って、第4面32dの中央部よりも第1面32a側に位置していてもよく、あるいは第2面32b側に位置していてもよい。
【0051】
切り欠き部6bの延在方向の他端である第2端62は、第1面32aのY軸方向の中央よりも、第4面32d側に、Y軸に沿って所定距離だけ離間した位置に位置する。ここで、所定距離とは、例えば、第1面32aのY軸方向の長さの5~30%に相当する距離である。
【0052】
切り欠き部6bの第1端61は、巻回部20における引出部22の引出位置23から、巻回部20の径方向に沿って離間した位置(当該位置の近傍も含む)に位置していてもよい。ここで、上記位置の近傍には、上記位置から、X軸に沿って、第4面32dのX軸方向の長さの5~10%ほど位置ずれした位置が含まれる。
【0053】
図2Aおよび図3に示すように、引出部21の少なくとも一部は、切り欠き部6aを通じて、図2A中のD1方向に向けて露出している。ここで、D1方向は、引出部21の延在方向および側壁部32の軸方向(Z軸方向)に垂直な方向である。そのため、D1方向から見て、引出部21の少なくとも一部は、側壁部32(第3面32c)で隠れておらず、切り欠き部6aを通じて外部に(第3面32c側に)露出している。なお、引出部21の延在方向が、X軸方向である場合、引出部21の少なくとも一部は、切り欠き部6aを通じて、Y軸方向に向けて露出する。また、Y軸方向から見て、引出部21の少なくとも一部は、側壁部32(第3面32c)で隠れることなく、切り欠き部6aを通じて外部に(第3面32c側に)露出する。
【0054】
本実施形態では、切り欠き部6aの第1端61と第2端62との間の側壁部32の周方向に沿った区間(あるいは、切り欠き部6aの第1端61と側壁部32の第1面32aとの間のX軸に沿った区間)において、引出部21の一部が、D1方向(Y軸方向、あるいはY軸に対してXY面に沿って傾斜した方向)から見て、切り欠き部6aを通じて外部に露出している。しかしながら、当該区間において、引出部21の全部が、D1方向から見て、切り欠き部6aを通じて外部に露出していてもよい。この場合、D1方向から見て、引出部21の全部が、側壁部32(第3面32c)で隠れることになる。
【0055】
引出部21の少なくとも一部は、切り欠き部6aを通じて、引出部21の延在方向(X軸方向、あるいはX軸に対してXY面に沿って傾斜した方向)に向けて露出している。そのため、引出部21の延在方向から見て、引出部21の少なくとも一部は、側壁部32(第1面32a)で隠れておらず、切り欠き部6aを通じて外部に(第1面32a側に)露出している。
【0056】
切り欠き部6aの少なくとも一部は、引出部21よりもD1方向の外側において、引出部21に対して並列に配置されている。また、切り欠き部6aは、引出部21と交差するように、側壁部32の周方向に沿って延在している。
【0057】
D1方向から見て、引出部21の少なくとも一部(本実施形態では、引出部21の一部)は、側壁部32の軸方向に沿って、切り欠き部6aの底部60よりも端面32e側に位置している。ただし、引出部21の全部が、側壁部32の軸方向に沿って、底部60よりも端面32e側に位置していてもよい。また、引出部21の一部が、底部60に接するように配置されていてもよい。
【0058】
引出部22の少なくとも一部は、切り欠き部6bを通じて、図2A中のD2方向に向けて露出している。ここで、D2方向は、引出部22の延在方向および側壁部32の軸方向(Z軸方向)に垂直な方向である。そのため、D2方向から見て、引出部22の少なくとも一部は、側壁部32(第4面32d)で隠れておらず、切り欠き部6bを通じて外部に(第4面32d側に)露出している。なお、引出部22の延在方向が、X軸方向である場合、引出部22の少なくとも一部は、切り欠き部6bを介して、Y軸方向に向けて露出する。また、Y軸方向から見て、引出部22の少なくとも一部は、側壁部32(第4面32d)で隠れることなく、切り欠き部6bを通じて外部に(第4面32d側に)露出する。
【0059】
本実施形態では、切り欠き部6bの第1端61と第2端62との間の側壁部32の周方向に沿った区間(あるいは、切り欠き部6bの第1端61と側壁部32の第1面32aとの間のX軸に沿った区間)において、引出部22の全部が、D2方向(Y軸方向、あるいはY軸に対してXY面に沿って傾斜した方向)から見て、切り欠き部6bを通じて外部に露出している。しかしながら、当該区間において、引出部22の一部が、D2方向から見て、切り欠き部6bを通じて外部に露出していてもよい。この場合、D2方向から見て、引出部22の一部が、側壁部32(第4面32d)で隠れることになる。
【0060】
引出部22の少なくとも一部は、切り欠き部6bを通じて、引出部22の延在方向(X軸方向、あるいはX軸に対してXY面に沿って傾斜した方向)に向けて露出している。そのため、引出部22の延在方向から見て、引出部22の少なくとも一部は、側壁部32(第1面32a)で隠れておらず、切り欠き部6bを通じて外部に(第1面32a側に)露出している。
【0061】
切り欠き部6bの少なくとも一部は、引出部22よりもD2方向の外側において、引出部22に対して並列に配置されている。また、切り欠き部6bは、引出部22と交差するように、側壁部32の周方向に沿って延在している。
【0062】
D2方向から見て、引出部22の少なくとも一部(本実施形態では、引出部21の全部)は、側壁部32の軸方向に沿って、切り欠き部6bの底部60よりも端面32e側に位置する。なお、引出部22の一部が、側壁部32の軸方向に沿って、底部60よりも端面32e側に位置していてもよい。また、引出部22の一部が、底部60に接するように配置されていてもよい。
【0063】
巻回部20の巻軸方向の少なくとも一部(例えば、巻回部20の第1端20a、あるいはその近傍)は、切り欠き部6aを通じて、D1方向(Y軸方向、Y軸に対してXY面に沿って傾斜した方向)に向けて露出している。そのため、D1方向から見て、巻回部20の少なくとも一部は、側壁部32(第3面32c)で隠れておらず、切り欠き部6aを通じて外部に(第3面32c側に)露出している。
【0064】
また、巻回部20の巻軸方向の少なくとも一部(例えば、巻回部20の第1端20a、あるいはその近傍)は、切り欠き部6bを通じて、D2方向(Y軸方向、あるいはY軸に対してXY面に沿って傾斜した方向)に向けて露出している。そのため、D2方向から見て、巻回部20の少なくとも一部は、側壁部32(第4面32d)で隠れておらず、切り欠き部6bを通じて外部に(第4面32d側に)露出している。
【0065】
巻回部20の巻軸方向の少なくとも一部は、切り欠き部6aおよび6bを介して、引出部21および22の延在方向(X軸方向、あるいはX軸に対してXY面に沿って傾斜した方向)に向けて露出している。そのため、引出部21および22の延在方向から見て、巻回部20の少なくとも一部は、側壁部32(第1面32a)で隠れておらず、切り欠き部6aおよび6bを通じて外部に(第1面32a側に)露出している。
【0066】
D1方向から見て、巻回部20の巻軸方向の少なくとも一部は、側壁部32の軸方向に沿って、切り欠き部6aの底部60よりも端面32e側に位置している。また、D2方向から見て、巻回部20の巻軸方向の少なくとも一部は、側壁部32の軸方向に沿って、切り欠き部6bの底部60よりも端面32e側に位置している。
【0067】
図2Aおよび図3に示すように、側壁部32は、凸部7をさらに有していてもよい。凸部7は、側壁部32の外周面(第1面32a)から、その径方向の外側に突出している。凸部7の少なくとも一部は、側壁部32の周方向に沿って、切り欠き部6aと切り欠き部6bとの間に位置する。凸部7は、第1部分71を有する。凸部7は、第1部分71にZ軸に沿って連続する第2部分72をさらに有していてもよい。
【0068】
第1部分71は、側壁部32の外周面から、その径方向の外側に突出している。第1部分71は、第1面32aのY軸方向の中央部に形成されている。ただし、第1面32aのY軸方向の中央部は、側壁部32の周方向に沿った第1面32aの中央部に対応している。第1部分71は、側壁部32の軸方向に沿って、底壁部34の設置面34b(図5)から切り欠き部6aおよび6bの底部60まで延在している。第1部分71のY軸方向の両側には、傾斜面73が形成されている。一方の傾斜面73と他方の傾斜面73との間の間隔は、側壁部32の径方向の外側に向かうにしたがって狭くなっている。そのため、第1部分71は、側壁部32の径方向の外側に向かうにしたがって先細となる先細形状を有する。
【0069】
ここで、図2Bに示すように、第1部分71の第1面32aからのX軸に沿った突出長をL7とする。このとき、L7/L2≧1/8でもよい。また、L7/L2≦1/2でもよい。ただし、L2は、側壁部32の第3面32cのX軸に沿った長さである。
【0070】
また、図2Dに示すように、第1部分71のY軸に沿った長さをL8とする。このとき、L8/L4≧1/8でもよく、L8/L4≧1/4でもよい。また、L8/L4≦2/3でもよい。ただし、L4は、側壁部32の第1面32aのY軸に沿った長さである。
【0071】
図2Aおよび図3に示すように、第2部分72は、切り欠き部6aおよび6bの底部60から、側壁部32の軸方向の一方側(コイル装置1の設置面とは反対側)に向かって突出している。第2部分72のY軸方向の長さは、第1部分71(ただし、傾斜面73を含む)のY軸方向の長さよりも短い。第2部分72のZ軸に沿った突出長は、ワイヤ2の線径よりも大きく、ワイヤ2の線径の2倍以上、4倍以上、6倍以上、8倍以上、あるいは10倍以上でもよい。第2部分72の頂面は、側壁部32の端面32eの一部を構成している。そのため、後述するように、第2コア4を端面32eに配置(接着)する場合において、端面32eに対する第2コア4の安定性(接着強度)を確保することができる。
【0072】
なお、図2Cに示すように、底部60からの第2部分72のZ軸に沿った突出長L9は、切り欠き部6aのZ軸に沿った長さL5と等しくなっているが、これよりも小さくてもよく、あるいはこれよりも大きくてもよい。
【0073】
図2Aおよび図3に示すように、第2部分72は、側壁部32の周方向に沿って、切り欠き部6aの第2端62と切り欠き部6bの第2端62との間に位置する。また、第2部分72は、側壁部32の周方向に沿って、引出部21と引出部22との間に位置する。そのため、第2部分72によって、引出部21と引出部22との間の絶縁を図りやすくなる。
【0074】
側壁部32は、側壁部32の周方向(すなわち、Y軸方向)に沿って凸部7に隣接する凹部74aおよび74bをさらに有していてもよい。凹部74aおよび74bの各々は、第1面32aと、第1面32aに対して交差(傾斜)する傾斜面73とによって画定されている。凹部74aは、凸部7よりも、Y軸方向の一方側に位置する。凹部74bは、凸部7よりも、Y軸方向の他方側に位置する。凹部74aおよび74bは、側壁部32の内周面32f側に凹んでいる。また、凹部74aおよび74bは、側壁部32の軸方向に沿って、底壁部34の設置面34b(図5)から切り欠き部6aおよび6bの底部60まで延在している。
【0075】
図2Aおよび図3に示すように、端子5aおよび5bは、金属などの板状の導体で形成されており、側壁部32の外周面に取り付けられている。端子5aは、側壁部32の第1面32aおよび第3面32cと、底壁部34の設置面34b(図5)とに跨って取り付けられている。端子5bは、側壁部32の第1面32aおよび第4面32dと、底壁部34の設置面34bとに跨って取り付けられている。
【0076】
図4に示すように、端子5aは、引出部21に接続される継線部53を有する。端子5aは、例えば、設置部50と、第1側部51と、第2側部52と、かしめ部54とをさらに有していてもよい。端子5bは、引出部22に接続される継線部53を有する。端子5bは、例えば、設置部50と、第1側部51と、第2側部52と、かしめ部54とをさらに有していてもよい。
【0077】
図5(適宜、図3も参照)に示すように、端子5aの設置部50は、第3面32c側で、底壁部34の設置面34bに配置されている。端子5bの設置部50は、第4面32d側で、底壁部34の設置面34bに配置されている。設置部50は、コイル装置1が設置される基板(図示略)に対して、ハンダや導電性接着剤などを介して接続される。
【0078】
図2Aおよび図4(適宜、図3も参照)に示すように、第1側部51は、設置部50に連続しており、設置部50に対して直交する方向に延在している。第1側部51は、他の部分よりも、Z軸に沿って幅が狭くなる幅狭部51aを有していてもよい。端子5aの第1側部51は、第3面32cに配置されており、端子5bの第1側部51は、端子5aの第1側部51とY軸に沿って対向するように、第4面32dに配置されている。第1側部51には、例えばハンダなどのフィレットが形成されてもよい。
【0079】
第2側部52は、第1側部51に連続しており、第1側部51に対して直交する方向に延在している。端子5aの第1側部51は、凸部7よりもY軸方向の一方側で、第1面32aに配置されている。端子5bの第1側部51は、凸部7よりもY軸方向の他方側で、第1面32aに配置されている。
【0080】
継線部53は、第2側部52に連続しており、第2側部52に対して直交する方向に延在している。端子5aの継線部53には、引出部21が溶接により接続されており、端子5bの継線部53には、引出部22が溶接により接続されている。継線部53には、溶融部(溶接玉)11が形成されている。なお、引出部21または22を、継線部53に対して、例えばレーザ溶接、ハンダ、導電性接着剤、熱圧着、超音波接合、抵抗ろう付けまたは紫外線硬化樹脂接合等によって接続してもよい。
【0081】
端子5aの継線部53と端子5bの継線部53とは、ともに、引出部21および22の延在方向(X軸方向、あるいはX軸に対してXY面に沿って傾斜した方向)に沿って、同一側(側壁部32の第1面32a側)に配置されている。そのため、ワイヤ2のフォーミングを抑えつつ、引出部21および22を巻回部20から引き出し、さらに、それぞれ端子5aの継線部53と端子5bの継線部53とに接続することができる。なお、端子5aおよび5bの各々の継線部53の位置は、図2Aおよび図4に示す位置に限定されない。
【0082】
側壁部32の軸方向から見て、端子5aの継線部53は、凹部74aの範囲内(凹部74aの内側)に配置されている。また、側壁部32の軸方向から見て、端子5bの継線部53は、凹部74bの範囲内(凹部74bの内側)に配置されている。そのため、側壁部32の径方向に沿って、端子5aおよび5bの各々の継線部53は、側壁部32の外周面から、その径方向に離間した位置に配置されにくくなる。そのため、コイル装置1の小型化を図ることができる。なお、継線部53の一部が、凹部54aまたは54bの範囲外(凹部54aまたは54bの外側)に配置されていてもよい。
【0083】
かしめ部54は、継線部53に連続しており、継線部53に対して折曲可能に形成されている。端子5aのかしめ部54は、引出部21をかしめており、引出部21は、端子5aのかしめ部54と継線部53との間に挟み込まれている。端子5bのかしめ部54は、引出部22をかしめており、引出部22は、端子5bのかしめ部54と継線部53との間に挟み込まれている。溶融部11は、継線部53に加えて、かしめ部54に形成されていてもよい。
【0084】
図1および図2A(適宜、図3も参照)に示すように、第2コア4は、板状のコアであり、側壁部32の端面32eに取り付けられている。第2コア4は、磁性体と樹脂とを含む材料で形成されている。本実施形態では、第2コア4は、第1コア3とは異なる材料で構成されており、主として、フェライト粒子を含んでいる。第2コア4は、フェライトの焼結体であるが、フェライト粒子を含むものであればこれに限定されない。第2コア4は、フェライト粒子に代えて、金属磁性体粒子を主として含んでいてもよい。あるいは、第2コア4は、金属磁性体の焼結体でもよい。本実施形態では、第2コア4を構成する材料は、第1コア3を構成する材料とは異なっているが、同一でもよい。第2コア4の透磁率は、特に限定されないが、第1コア3の透磁率の5倍以上である。また、第2コア4の板厚は、特に限定されないが、側壁部32の軸方向の高さの15%以上である。第2コア4の透磁率および板厚を上記の範囲に設定することにより、磁気飽和の発生を防止することができる。
【0085】
第2コア4は、取付面40を有する。取付面40は、側壁部32の端面32eに接着剤等によって取り付けられている。取付面40は、端面32eのうち、例えば図2A中の二点鎖線で示す領域に局所的に接着されている。ただし、取付面40は、端面32eの全域に接着されていてもよい。
【0086】
次に、コイル装置1の製造方法について説明する。まず、図2Aに示す第1コア3と、第2コア4と、端子5aおよび5bとを準備する。次に、接着剤等によって、端子5aおよび5bを、図2Aに示す第1コア3の外周面の所定の位置に接着する。次に、巻回部20を有するワイヤ2を準備し、図2Aに示すように、巻回部20を第1コア3の中芯部30に配置する。次に、図4に示すように、引出部21を端子5aのかしめ部54でかしめ、継線部53に溶接等によって接続する。また、引出部22を端子5bのかしめ部54でかしめ、継線部53に溶接等によって接続する。
【0087】
次に、図5に示すように、凹状隙間36に樹脂10を充填する。例えば、巻回部20の第1端20aに樹脂10が付着するように、凹状隙間36に樹脂10を流し込む。これにより、中芯部30の外周面30cと巻回部20の内周面20cとの間に樹脂10が充填される。また、巻回部20の第2端20bと底壁部34の底面34aとの間に樹脂10が充填される。ただし、樹脂10の充填範囲は、これに限定されず、例えば、巻回部20の外周面20dと側壁部32の内周面32fとの間に樹脂10が充填されてもよい。
【0088】
次に、図1および図2Aに示すように、接着剤等によって、側壁部32の端面32eに第2コア4を接着する。以上のようにして、図1に示すコイル装置1を製造することができる。なお、コイル装置1の寸法は特に限定されないが、X軸方向の長さは例えば2~20mmであり、Y軸方向の長さは例えば2~20mmであり、Z軸方向の長さは例えば1~10mmである。
【0089】
図2Aに示すように、本実施形態のコイル装置1では、引出部21の少なくとも一部が、引出部21の延在方向と側壁部32の軸方向とに垂直な方向(図2A中のD1方向)から見て、切り欠き部6aを通じて外部に露出している。すなわち、引出部21の少なくとも一部は、D1方向から見て、側壁部32で隠れていない(ただし、引出部21の少なくとも一部は、非磁性体などのコア以外の部材で隠れていてもよい)。このような態様で側壁部32の軸方向の一端に切り欠き部6aを形成することにより、側壁部32の周方向に沿って、従来よりも広い範囲に切り欠き部6aを形成することが可能となり、インピーダンスの周波数特性を高周波側に延ばすことができる。そのため、高周波帯において、インピーダンスの周波数特性の広帯域化を図ることができる。なお、このような効果が得られる理由として、切り欠き部6aが、側壁部32の周方向に沿って、従来よりも広い範囲に形成されることにより、インダクタンスの調整が可能になるためであると考えられる。
【0090】
また、本実施形態のコイル装置1では、切り欠き部6aが、側壁部32の周方向に沿って、従来よりも広い範囲に形成されるため、側壁部32との接触を防止しつつ、側壁部32の径方向の外側に向けて引出部21を引き出しやすくなり、コイル装置1の製造容易化を図ることができる。
【0091】
また、巻回部20の少なくとも一部は、引出部21の延在方向と側壁部32の軸方向とに垂直な方向(D1方向)から見て、切り欠き部6aを通じて外部に露出している。そのため、巻回部20の露出範囲に応じて、側壁部32の周方向に沿って、切り欠き部6aの長さを調整することが可能である。そのため、インダクタンスの調整が容易になり、高周波帯において、インピーダンスの周波数特性の広帯域化を有効に図ることができる。
【0092】
また、切り欠き部6aまたは6bは、側壁部32の周方向に沿って延在しており、切り欠き部6aまたは6bの延在方向の一端(第1端61)は、巻回部20における引出部21または22の引出位置23から、径方向に沿って離間した位置に位置している。そのため、切り欠き部6aまたは6bの延在方向の他端(第2端62)の位置によっては、切り欠き部6aまたは6bの延在方向の長さを、引出部21または22の延在方向の長さと同等、あるいはそれ以上にすることができる。そのため、側壁部32の周方向に沿って、切り欠き部6aまたは6bの長さを確保しやすくなり、引出部21または22の延在方向と側壁部32の軸方向とに垂直な方向(D1またはD2方向)から見て、より広い範囲に切り欠き部6aまたは6bを形成することができる。
【0093】
また、ワイヤ2は、引出部21と、引出部22とを有する。また、第1コア3は、引出部21が通過する切り欠き部6aと、側壁部32の周方向に沿って切り欠き部6aとは離間し、引出部22が通過する切り欠き部6bとを有する。側壁部32の軸方向の一端に、2つの切り欠き部6aおよび6bを形成することにより、インダクタンスの調整が容易になり、高周波帯において、インピーダンスの周波数特性の広帯域化を有効に図ることができる。
【0094】
また、側壁部32は、側壁部32の外周面から、その径方向の外側に突出する凸部7を有し、凸部7の少なくとも一部は、側壁部32の周方向に沿って、切り欠き部6aと切り欠き部6bとの間に位置する。そのため、側壁部32の径方向の外側への凸部7の突出長に応じて、コイル装置1のインダクタンスを調整し、高周波帯におけるインピーダンスの周波数特性を最適化することができる。
【0095】
また、凸部7の第2部分72は、切り欠き部6aまたは切り欠き部6bの底から、側壁部32の軸方向に沿って突出している。そのため、側壁部32の周方向に沿って、引出部21と引出部22との間に凸部7が配置される。これにより、凸部7によって、引出部21と引出部22との間の絶縁を図りやすくなる。
【0096】
また、引出部21と引出部22とは、同一方向に引き出されている。そのため、ワイヤ2のフォーミングを抑えつつ、引出部21と引出部22とを巻回部20から引き出すことができる。これにより、フォーミング精度のばらつきが抑制され、インピーダンスの周波数特性を向上させることができる。また、巻回部20において、ワイヤ2のターン数を増大させ、インダクタンスの調整を図ることができる。また、巻回部20の形成が容易であり、コイル装置1の製造容易化を図ることができる。
【0097】
また、側壁部32の軸方向の一端には、板状の第2コア4が取り付けられている。そして、第1コア3は、金属磁性体粒子を含み、第2コア4は、フェライト粒子を含む。さらに、第2コア4の透磁率は、第1コア3の透磁率の5倍以上である。そのため、磁気飽和の発生を防止しつつ、高周波帯におけるインピーダンスの周波数特性の広帯域化を図ることができる。
【0098】
図6において、グラフiは、図1に示すコイル装置1において、第1コア3を主として金属磁性体粒子で構成し、第2コア4を主としてフェライト粒子で構成した場合のインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。また、グラフiiは、図1に示すコイル装置1において、第1コア3および第2コア4のいずれも、主として金属磁性体粒子で構成した場合のインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【0099】
図6のグラフiとグラフiiとを対比すれば明らかなように、第1コア3を主として金属磁性体粒子で構成し、第2コア4を主としてフェライト粒子で構成した場合、第1コア3および第2コア4のいずれも、主として金属磁性体粒子で構成した場合に比べて、インピーダンスの周波数特性が高周波帯まで延びており、高周波帯(例えば、1MHz以上)において、インピーダンスの周波数特性の広帯域化を図ることができる。
【0100】
また、第2コア4の板厚は、側壁部32の軸方向の高さの15%以上である。そのため、磁気飽和の発生を有効に防止し、巻回部20に流れる電流値の増大に伴って、インダクタンスが急激に低下することを回避することができる。なお、本開示者らの実験によれば、第2コア4の板厚が側壁部32の軸方向の高さの15%以上である場合、第2コア4の板厚が側壁部32の軸方向の高さの15%未満である場合とは異なり、5mm×5mm×5mmサイズのコイル装置1において、2.0A通電時に、15μH以上のインダクタンス値を確保することができることが確認された。
【0101】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【0102】
図2Aに示すように、上記実施形態では、D1方向から見て、引出部21の少なくとも一部が、切り欠き部6aを通じて外部に露出していた。さらに、D2方向から見て、引出部22の少なくとも一部が、切り欠き部6bを通じて外部に露出していた。しかしながら、切り欠き部6aおよび6bのいずれか一方においてのみ、引出部21または22の少なくとも一部が、切り欠き部6aまたは6bを通じて外部に露出していてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…コイル装置
2…ワイヤ
20…巻回部
20a…第1端
20b…第2端
20c…内周面
20d…外周面
21,22…引出部
23…引出位置
3…第1コア
30…中芯部
30a…第1端
30b…第2端
30c…外周面
32…側壁部
32a…第1側面
32b…第2側面
32c…第3側面
32d…第4側面
32e…端面
32f…内周面
34…底壁部
34a…底面
34b…設置面
36…凹状隙間
4…第2コア
40…取付面
5a,5b…端子
50…設置部
51…第1側部
51a…幅狭部
52…第2側部
53…継線部
54…かしめ部
6a,6b…切り欠き部
60…底部
61…第1端
62…第2端
7…凸部
71…第1部分
72…第2部分
73…傾斜面
74a,74b…凹部
10…樹脂
11…溶接部
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6