(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117461
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20240822BHJP
H01F 27/08 20060101ALI20240822BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20240822BHJP
H01F 27/22 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F27/08 101
H01F27/24 E
H01F27/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023577
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 洋史
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 亮介
【テーマコード(参考)】
5E050
5E070
【Fターム(参考)】
5E050JA03
5E070BA06
5E070DA18
(57)【要約】
【課題】放熱性に優れたコイル装置を提供すること。
【解決手段】巻回部20を有する導体2と、巻回部20を貫通する中芯部30を有するコア2と、を有するコイル装置1である。
中芯部30には、導体2に接触可能な外周面30cと、外周面30cに対して内側に凹んでいる中芯溝部311,312,313と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回部を有する導体と、
前記巻回部を貫通する中芯部を有するコアと、を有するコイル装置であって、
前記中芯部には、前記導体に接触可能な外周面と、前記外周面に対して内側に凹んでいる中芯溝部と、を有するコイル装置。
【請求項2】
前記コアは、前記中芯部の基端となる底壁部を有し、
前記底壁部は、前記導体に接触可能な底面と、前記底面に対して凹んでいる底溝部と、を有する請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記中芯溝部と前記底溝部は、繋がっている請求項2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記中芯溝部は、複数の中芯溝部を有する請求項1に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記コアは、前記中芯部を所定の間隔の凹状隙間で取り囲む側壁部を有するポットコアである請求項1に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記側壁部には、第2のコアが取り付けられており、
前記側壁部には、切り欠き部が形成してあり、
前記巻回部は、前記中芯部の接線に沿って略直線的に延びる一対の引出部で、前記切り欠き部に向かって引き出されている請求項5に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記中芯溝部は、前記切り欠き部の近傍に配置してある請求項6に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記中芯溝部には、空気よりも熱伝導率の高い伝熱材が配置してある請求項1~7のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項9】
前記伝熱材は、前記巻回部と接触している請求項8に記載のコイル装置。
【請求項10】
前記伝熱材は、フィラーを含んだ樹脂を有する請求項9に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、たとえばインダクタなどとして好適に用いることができるコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
面実装型インダクタとして、特許文献1に示すようなコイル装置が知られている。特許文献1のようなコイル装置では、コイルは、ポットコアに収容されている。
【0003】
このようなコイル装置は、コイルの発熱がポットコアに伝わりづらく、コイルに電流が流れるとコイルが高温になりやすい。特にコイル装置の大電流化と共に、コイル装置の放熱性が課題になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記の実情を鑑みてなされ、その目的は、放熱性に優れたコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示に係るコイル装置は、
巻回部を有する導体と、
前記巻回部を貫通する中芯部を有するコアと、を有するコイル装置であって、
前記中芯部には、前記導体に接触可能な外周面と、前記外周面に対して内側に凹んでいる中芯溝部と、を有する。
【0007】
このように構成することで、中芯溝部には、熱伝導率の高い伝熱材を配置することも可能になる。導体の巻回部が中芯溝部に配置される伝熱材を介して巻回部の熱をコアに逃がすことができ、コイル装置の放熱性が向上する。
【0008】
前記中芯溝部には、空気よりも熱伝導率の高い伝熱材が配置してあってもよい。空気よりも伝熱性の高い伝熱材によって、より効果的に巻回部での熱がコアに伝わりやすくなる。
【0009】
前記伝熱材は、前記巻回部と接触していることが好ましい。また、伝熱材が導体の間に入り込んでいることが好ましい。伝熱材と巻回部が接触することでより効率的に巻回部の熱が伝熱材を介して放熱される。
【0010】
前記伝熱材は、フィラーを含んだ樹脂を有してもよい。このような伝熱材は、熱伝導性が空気よりも高くなり、伝熱材が存在しない場合よりも、コイル装置の放熱性が向上し得る。
【0011】
前記コアは、前記中芯部の基端となる底壁部を有し、
前記底壁部は、前記導体に接触可能な底面と、前記底面に対して凹んでいる底溝部と、を有してもよい。
【0012】
このように構成することで、底溝部にも伝熱材を容易に行き渡らせることが可能になり、より効果的にコイル装置の放熱性を向上させることができる。
【0013】
好ましくは、前記中芯溝部と前記底溝部は、繋がっている。このように構成することで、伝熱材を中芯溝部に塗布することで、底溝部にまで伝熱材を行き渡らせることができる。
【0014】
前記中芯溝部は、複数の中芯溝部を有していてもよい。このように構成することで、伝熱材を介して、巻回部と中芯部とが、より広い面積で接触することができ、より放熱性が向上する。
【0015】
前記コアは、前記中芯部を所定の間隔の凹状隙間で取り囲む側壁部を有するポットコアであってもよい。このような構成のコイル装置は、特に熱がこもりやすいが、このような構成であっても、巻回部の熱を十分に放熱することが可能である。
【0016】
前記側壁部には、第2のコアが取り付けられていてもよい。前記側壁部には、切り欠き部が形成してあり、前記巻回部は、前記中芯部の接線に沿って略直線的に延びる一対の引出部で、前記切り欠き部に向かって引き出されてもよい。前記中芯溝部は、前記切り欠き部の近傍に配置してあってもよい。このように構成することで、コイル装置の製造を容易に行うことができ、コイル装置は、放熱性にも優れ、特に高周波において好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は本開示の第1実施形態のコイル装置の斜視図である。
【
図2】
図2は第1コアの内部構成を示す斜視図である。
【
図6】
図6は第2実施形態に係るコイル装置の第1コアの内部構成を示す部分斜視図である。
【
図7】
図7は第3実施形態に係るコイル装置の第1コアの内部構成を示す部分斜視図である。
【
図8】
図8は第4実施形態に係るコイル装置の第1コアの内部構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態について説明する。なお、図示する内容は、本開示の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。また、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
(第1実施形態)
図1に示す本開示の第1実施形態のコイル装置1は、例えばインダクタとして機能し、各種の電子機器のフィルタ回路等に搭載される。
図2に示すように、コイル装置1は、導体で構成されるワイヤ2が螺旋状に巻回されてなる巻回部20を有する。コイル装置1は、第1コア3と、第2コア4と、端子5aおよび5bとをさらに有していてもよい。
【0020】
ワイヤ2は、例えば銅などで構成された丸線あるいは平角線などの導電性芯線を有する。ワイヤ2は、これらの導電性芯線を絶縁性の被膜で被覆した絶縁被覆ワイヤでもよい。また、ワイヤ2は、融着層が形成された自己融着線でもよい。ワイヤ2の線径は、例えば10~400μmである。巻回部20は、例えば空芯コイルであり、第1コア3に設けられている。巻回部20の巻軸は、コイル装置1の設置面(コイル装置1が設置される基板と対向する面)に対して垂直に配置される。巻回部20の径方向の層数は、複数であり、巻回部20の少なくとも一部において、ワイヤ2は、巻軸に沿って、往復するように巻回されている。
【0021】
図4に示すように、ワイヤ2は、巻回部20に加えて、巻回部20から引き出された引出部21および22をさらに有する。引出部21は巻回部20からワイヤ2の一端まで延在しており、引出部22は巻回部20からワイヤ2の他端まで延在している。引出部21および22は、同一方向に引き出されている。そのため、ワイヤ2のフォーミングを抑えつつ、引出部21および22を巻回部20から引き出すことができる。また、巻回部20において、ワイヤ2のターン数を増大させ、インダクタンスの調整を図ることができる。なお、引出部21および22は、異なる方向に引き出されていてもよい。また、引出部21および22は、平行に引き出されているが、非平行に引き出されていてもよい。
【0022】
引出部21および22の延在方向(引出方向)は、X軸に平行な方向である。あるいは、引出部21および22の延在方向は、X軸に対して、XY面に沿って所定角度で傾斜した方向である。ここで、所定角度とは、特に限定されないが、20度未満である。
【0023】
以下では、巻回部20の巻軸方向の一端を第1端20aと呼び、巻回部20の巻軸方向の他端を第2端20bと呼ぶ。引出部21は巻回部20から切り欠き部に向かって引き出されている。引出部21は、中芯部30の外周面30cの接線に沿って略直線的に延びている。引出部22は巻回部20から切り欠き部に向かって引き出されている。引出部22は、中芯部30の外周面30aの接線に沿って略直線的に延びている。引出部21は、巻回部20の第2端20bから引き出されている。ただし、引出部21は、巻回部20の第1端20aと第2端20bとの間の位置から引き出されていてもよい。例えば、引出部21は、巻回部20の巻軸方向の中心よりも、第1端20aまたは第2端20bに近接する位置から引き出されていてもよい。あるいは、引出部21は、巻回部20の巻軸方向の中心から引き出されていてもよい。引出部22は、巻回部20の第1端20aから引き出されている。ただし、引出部22は、巻回部20の第1端20aと第2端20bとの間の位置から引き出されていてもよい。例えば、引出部22は、巻回部20の巻軸方向の中心よりも、第1端20aまたは第2端20bに近接する位置から引き出されていてもよい。あるいは、引出部21は、巻回部20の巻軸方向の中心から引き出されていてもよい。
【0024】
図3に示すように、第1コア3は、ポットコアであり、磁性体と樹脂とを含む材料で形成されている。本実施形態では、第1コア3は、主として、金属磁性体粒子を含んでいる。金属磁性体粒子としては、Fe-Ni合金粉、Fe-Si合金粉、Fe-Si-Cr合金粉、Fe-Co合金粉、Fe-Si-Al合金粉、アモルファス鉄等が例示される。ただし、第1コア3は、金属磁性粒子に代えて、フェライト粒子等を含んでいてもよい。フェライト粒子としては、Ni-Zn系フェライトやMn-Zn系フェライト等が例示される。第1コア3を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、その他の合成樹脂、あるいはその他の非磁性材料等が例示される。第1コア3は、上述した磁性体と樹脂とを含む材料を圧粉成形あるいは射出成形することにより形成されている。なお、第1コア3は、金属磁性体粒子に代えて、フェライト粒子を主として含んでいてもよい。あるいは、第1コア3は、金属磁性体の焼結体でもよい。
【0025】
第1コア3は、例えば、中芯部30と、側壁部32と、底壁部34とを有する。中芯部30は、円柱形状を有し、底壁部34の中心部から突出している。中芯部30は、底壁部34の中心部から、その径方向にオフセットした位置で突出していてもよい。中芯部30の形状は、
図3に示す形状に限定されず、例えば、四角柱、八角柱、あるいはその他の多角柱でもよい。
図2および
図3に示すように、中芯部30の外周面30cには、巻回部20が設けられている。中芯部30は、巻回部20の径方向の内側に配置されており、その巻軸に沿って巻回部20を貫通している。
【0026】
中芯部30の軸方向の長さは、巻回部20の巻軸方向の長さよりも長くてもよい。以下では、中芯部30の軸方向の一端を第1端30aと呼び、中芯部30の軸方向の他端を第2端30bと呼ぶ。
【0027】
図2および
図3に示すように、中芯部30の外周面30cには、外周面30cに対して内側に凹んでいる中芯溝部311,312,313が形成してある。中芯溝部311,312,313は、Z軸方向に沿って中芯部30の第1端30aから第2端30bまで延在している。中芯溝部311,312,313は、中芯部30の第1端30aから第2端30bまで連続的かつ直線状に延在している。そのため、中芯溝部311,312,313のZ軸方向に沿う長さは、中芯部30のZ軸方向に沿う長さと等しくなっている。中芯部30の第1端30aにおいて、中芯部30の上面の外周は中芯溝部311,312,313によって切り欠かれている。
【0028】
中芯溝部311,312,313の表面は、外周面30cと滑らかに繋がっている。中芯溝部311,312,313の配置は、特に限定されないが、それぞれ中芯部30の外周面30cに均等な距離で配置してある。
【0029】
中芯溝部311,312,313の横断面形状(XY平面に平行な面で切ったときの断面形状)は略半円形状となっており、中芯溝部311,312,313の内壁は滑らかに湾曲している。ただし、中芯溝部311,312,313の横断面形状は、これに限定されるものではない。
【0030】
図5に示すように、中芯部30の軸方向に沿って、巻回部20の第1端20aは、中芯部30の第1端30aよりも、コイル装置1の設置面側に位置ずれしている。そのため、第1端20aの位置ずれ幅に応じて、中芯部30の軸方向に沿って、引出部21(
図2)の引出位置を調整することができる。これにより、ワイヤ2のフォーミングを抑えつつ、引出部21を巻回部20から引き出すことができる。
【0031】
図2および
図3に示すように、側壁部32は、底壁部34の外縁部から、中芯部30と同一方向に向かって突出している。側壁部32は、中芯部30の径方向の外側に位置し、中芯部30を径方向の外側から囲んでいる。また、側壁部32は、巻回部20の径方向の外側に位置し、巻回部20を径方向の外側から囲んでいる。側壁部32の外周面は、巻回部20の巻軸方向から見て、実質的に四角形である。ただし、側壁部32の外周面の形状は四角形に限定されず、六角形、八角形、その他の多角形、円形、楕円形あるいはその他の形状でもよい。
【0032】
側壁部32は、第1面32aと、第1面32aと対向する第2面32bと、第3面32cと、第3面32cと対向する第4面32dとを有する。
図2および
図3等において、X軸は、第1面32aと第2面32bとが対向する方向に平行な軸である。Y軸は、第3面32cと第4面32dとが対向する方向に平行な軸である。Z軸は、X軸およびY軸に垂直な軸である。また、Z軸は、上述した巻回部20の巻軸方向、中芯部30の軸方向および側壁部32の軸方向に平行な軸である。
【0033】
第1面32aと第3面32cとの間に位置する稜線部は、面取りされている。同様に、第1面32aと第4面32dとの間に位置する稜線部は、面取りされている。また、第2面32bと第3面32cとの間に位置する稜線部は、側壁部32の横断面において湾曲している。同様に、第2面32bと第4面32dとの間に位置する稜線部は、側壁部32の横断面において湾曲している。ただし、これらの面取り部および湾曲部は、必須ではなく、省略されてもよい。
【0034】
側壁部32は、端面32eと、内周面32fとをさらに有する。端面32eは、側壁部32の軸方向の一端を構成する面である。端面32eは、中芯部30と側壁部32との間の凹状隙間36の開口縁に形成されており、側壁部32の軸方向に垂直な方向に沿って延在している。端面32eは、巻回部20の第1端20aよりも、Z軸に沿って一方側(Z軸正方向側)に位置する。そのため、例えば、側壁部32の第2面32b側から、側壁部32をX軸に沿って見たとき、第1端20aは、側壁部32(第2面32b)で隠れており、第2面32b側に露出していない。
【0035】
内周面32fは、中芯部30の外周面30cに沿って延在している。内周面32fをZ軸方向から見た形状は、円形であるが、例えば、四角形、八角形、あるいはその他の多角形でもよい。
【0036】
図5に示すように、底壁部34は、底面34aと、設置面34bとを有する。底面34aは、凹状隙間36の底に形成されており、中芯部30の周方向に沿って延在している。底面34aには、巻回部20の第2端20bが配置される。
【0037】
設置面34bは、Z軸に沿って、底面34aとは反対側に位置する。設置面34bは、中芯部30または側壁部32の軸方向に垂直な面である。また、設置面34bは、コイル装置1が設置される基板(図示略)と対向する面である。本実施形態では、設置面34bを、コイル装置1の設置面と呼ぶ場合がある。
【0038】
図2および
図3に示すように、凹状隙間36は、中芯部30の外周面30cと側壁部32の内周面32fとで挟まれた隙間であり、中芯部30の周方向に沿って延在している。凹状隙間36には、巻回部20が収容されている。
【0039】
図2および
図3に示すように、側壁部32の軸方向の一端(端面32e)には、側壁部32の軸方向の他端に向かって切り欠かれた切り欠き部6aおよび6bが形成されている。切り欠き部6aおよび6bは、側壁部32の周方向に沿って延在している。また、切り欠き部6aおよび6bは、側壁部32の径方向に沿って、側壁部32の内周面32fから外周面(第1面32a、第3面32c、第4面32d)にかけて延在している。切り欠き部6aまたは6bによって切り欠かれた側壁部32の内周面32fの周方向の長さは、ワイヤ2の線径の2倍以上、4倍以上、6倍以上、8倍以上あるいは10倍以上でもよい。
【0040】
切り欠き部6aには、引出部21が通過しており、切り欠き部6bには、引出部22が通過している。引出部21は、切り欠き部6aを介して、側壁部32の径方向の内側から外側へ向けて引き出されている。また、引出部22は、切り欠き部6bを介して、側壁部32の径方向の内側から外側へ向けて引き出されている。
【0041】
切り欠き部6aと切り欠き部6bとは、側壁部32の周方向に沿って離間している。切り欠き部6aおよび6bは、全体として、側壁部32のX軸方向の中央よりも、第1面32a側に位置している。切り欠き部6aは、全体として、側壁部32のY軸方向の中央よりも、第3面32c側に位置している。また、切り欠き部6bは、全体として、側壁部32のY軸方向の中央よりも、第4面32d側に位置している。
【0042】
例えば、側壁部32の端面32eの1/8以上が、切り欠き部6aまたは6bによって、切り欠かれていてもよい。あるいは、側壁部32の端面32eの1/6以上が、切り欠き部6aまたは6bによって、切り欠かれていてもよい。あるいは、側壁部32の端面32eの1/5以上が、切り欠き部6aまたは6bによって、切り欠かれていてもよい。
【0043】
また、例えば、側壁部32の端面32eの1/4以上が、切り欠き部6aおよび6bによって、切り欠かれていてもよい。あるいは、側壁部32の端面32eの1/3以上が、切り欠き部6aおよび6bによって、切り欠かれていてもよい。
【0044】
切り欠き部6aと切り欠き部6bとは、同一形状を有するが、異なる形状を有していてもよい。例えば、切り欠き部6aおよび6bの一方が、他方よりも、側壁部32の周方向に沿って、より長い距離で延在していてもよい。
【0045】
切り欠き部6aは、側壁部32の周方向に沿って、第1面32aから第3面32cにかけて連続的に形成されている。切り欠き部6aは、側壁部32の複数の面に跨って形成されており、第1面32aと第3面32cとの間の稜線部は、切り欠き部6aによって切り欠かれている。切り欠き部6aの延在方向の一端である第1端61は、第3面32cのX軸方向の中央部に位置する。ここで、第3面32cのX軸方向の中央部には、第3面32cのX軸方向の中央から、第3面32cのX軸方向の長さの5~10%ほど、X軸正方向側またはX軸負方向側に位置ずれした位置が含まれる。なお、第1端61は、X軸に沿って、第3面32cの中央部よりも第1面32a側に位置していてもよく、あるいは第2面32b側に位置していてもよい。
【0046】
切り欠き部6aの延在方向の他端である第2端62は、第1面32aのY軸方向の中央よりも、第3面32c側に、Y軸に沿って所定距離だけ離間した位置に位置する。ここで、所定距離とは、例えば、第1面32aのY軸方向の長さの5~30%に相当する距離である。
【0047】
切り欠き部6aの第1端61は、巻回部20における引出部21の引出位置23から、巻回部20の径方向に沿って離間した位置(当該位置の近傍も含む)に位置していてもよい。ここで、上記位置の近傍には、上記位置から、X軸に沿って、第3面32cのX軸方向の長さの5~10%ほど位置ずれした位置が含まれる。
【0048】
切り欠き部6bは、側壁部32の周方向に沿って、第1面32aから第4面32dにかけて連続的に形成されている。切り欠き部6bは、側壁部32の複数の面に跨って形成されており、第1面32aと第4面32dとの間の稜線部は、切り欠き部6bによって切り欠かれている。切り欠き部6bの延在方向の一端である第1端61は、第4面32dのX軸方向の中央部に位置する。ここで、第4面32dのX軸方向の中央部には、第4面32dのX軸方向の中央から、第4面32dのX軸方向の長さの5~10%ほど、X軸正方向側またはX軸負方向側に位置ずれした位置が含まれる。なお、第1端61は、X軸に沿って、第4面32dの中央部よりも第1面32a側に位置していてもよく、あるいは第2面32b側に位置していてもよい。
【0049】
切り欠き部6bの延在方向の他端である第2端62は、第1面32aのY軸方向の中央よりも、第4面32d側に、Y軸に沿って所定距離だけ離間した位置に位置する。ここで、所定距離とは、例えば、第1面32aのY軸方向の長さの5~30%に相当する距離である。
【0050】
切り欠き部6bの第1端61は、巻回部20における引出部22の引出位置23から、巻回部20の径方向に沿って離間した位置(当該位置の近傍も含む)に位置していてもよい。ここで、上記位置の近傍には、上記位置から、X軸に沿って、第4面32dのX軸方向の長さの5~10%ほど位置ずれした位置が含まれる。
【0051】
図2および
図3に示すように、引出部21の少なくとも一部は、切り欠き部6aを通じて、
図2中のD1方向に向けて露出している。ここで、D1方向は、引出部21の延在方向および側壁部32の軸方向(Z軸方向)に垂直な方向である。そのため、D1方向から見て、引出部21の少なくとも一部は、側壁部32(第3面32c)で隠れておらず、切り欠き部6aを通じて外部に(第3面32c側に)露出している。なお、引出部21の延在方向が、X軸方向である場合、引出部21の少なくとも一部は、切り欠き部6aを通じて、Y軸方向に向けて露出する。また、Y軸方向から見て、引出部21の少なくとも一部は、側壁部32(第3面32c)で隠れることなく、切り欠き部6aを通じて外部に(第3面32c側に)露出する。
【0052】
本実施形態では、切り欠き部6aの第1端61と第2端62との間の側壁部32の周方向に沿った区間(あるいは、切り欠き部6aの第1端61と側壁部32の第1面32aとの間のX軸に沿った区間)において、引出部21の一部が、D1方向(Y軸方向、あるいはY軸に対してXY面に沿って傾斜した方向)から見て、切り欠き部6aを通じて外部に露出している。しかしながら、当該区間において、引出部21の全部が、D1方向から見て、切り欠き部6aを通じて外部に露出していてもよい。この場合、D1方向から見て、引出部21の全部が、側壁部32(第3面32c)で隠れることになる。
【0053】
引出部21の少なくとも一部は、切り欠き部6aを通じて、引出部21の延在方向(X軸方向、あるいはX軸に対してXY面に沿って傾斜した方向)に向けて露出している。そのため、引出部21の延在方向から見て、引出部21の少なくとも一部は、側壁部32(第1面32a)で隠れておらず、切り欠き部6aを通じて外部に(第1面32a側に)露出している。
【0054】
切り欠き部6aの少なくとも一部は、引出部21よりもD1方向の外側において、引出部21に対して並列に配置されている。また、切り欠き部6aは、引出部21と交差するように、側壁部32の周方向に沿って延在している。
【0055】
D1方向から見て、引出部21の少なくとも一部(本実施形態では、引出部21の一部)は、側壁部32の軸方向に沿って、切り欠き部6aの底部60よりも端面32e側に位置している。ただし、引出部21の全部が、側壁部32の軸方向に沿って、底部60よりも端面32e側に位置していてもよい。また、引出部21の一部が、底部60に接するように配置されていてもよい。
【0056】
引出部22の少なくとも一部は、切り欠き部6bを通じて、
図2中のD2方向に向けて露出している。ここで、D2方向は、引出部22の延在方向および側壁部32の軸方向(Z軸方向)に垂直な方向である。そのため、D2方向から見て、引出部22の少なくとも一部は、側壁部32(第4面32d)で隠れておらず、切り欠き部6bを通じて外部に(第4面32d側に)露出している。なお、引出部22の延在方向が、X軸方向である場合、引出部22の少なくとも一部は、切り欠き部6bを介して、Y軸方向に向けて露出する。また、Y軸方向から見て、引出部22の少なくとも一部は、側壁部32(第4面32d)で隠れることなく、切り欠き部6bを通じて外部に(第4面32d側に)露出する。
【0057】
本実施形態では、切り欠き部6bの第1端61と第2端62との間の側壁部32の周方向に沿った区間(あるいは、切り欠き部6bの第1端61と側壁部32の第1面32aとの間のX軸に沿った区間)において、引出部22の全部が、D2方向(Y軸方向、あるいはY軸に対してXY面に沿って傾斜した方向)から見て、切り欠き部6bを通じて外部に露出している。しかしながら、当該区間において、引出部22の一部が、D2方向から見て、切り欠き部6bを通じて外部に露出していてもよい。この場合、D2方向から見て、引出部22の一部が、側壁部32(第4面32d)で隠れることになる。
【0058】
引出部22の少なくとも一部は、切り欠き部6bを通じて、引出部22の延在方向(X軸方向、あるいはX軸に対してXY面に沿って傾斜した方向)に向けて露出している。そのため、引出部22の延在方向から見て、引出部22の少なくとも一部は、側壁部32(第1面32a)で隠れておらず、切り欠き部6bを通じて外部に(第1面32a側に)露出している。
【0059】
切り欠き部6bの少なくとも一部は、引出部22よりもD2方向の外側において、引出部22に対して並列に配置されている。また、切り欠き部6bは、引出部22と交差するように、側壁部32の周方向に沿って延在している。
【0060】
D2方向から見て、引出部22の少なくとも一部(本実施形態では、引出部21の全部)は、側壁部32の軸方向に沿って、切り欠き部6bの底部60よりも端面32e側に位置する。なお、引出部22の一部が、側壁部32の軸方向に沿って、底部60よりも端面32e側に位置していてもよい。また、引出部22の一部が、底部60に接するように配置されていてもよい。
【0061】
巻回部20の巻軸方向の少なくとも一部(例えば、巻回部20の第1端20a、あるいはその近傍)は、切り欠き部6aを通じて、D1方向(Y軸方向、Y軸に対してXY面に沿って傾斜した方向)に向けて露出している。そのため、D1方向から見て、巻回部20の少なくとも一部は、側壁部32(第3面32c)で隠れておらず、切り欠き部6aを通じて外部に(第3面32c側に)露出している。
【0062】
また、巻回部20の巻軸方向の少なくとも一部(例えば、巻回部20の第1端20a、あるいはその近傍)は、切り欠き部6bを通じて、D2方向(Y軸方向、あるいはY軸に対してXY面に沿って傾斜した方向)に向けて露出している。そのため、D2方向から見て、巻回部20の少なくとも一部は、側壁部32(第4面32d)で隠れておらず、切り欠き部6bを通じて外部に(第4面32d側に)露出している。
【0063】
巻回部20の巻軸方向の少なくとも一部は、切り欠き部6aおよび6bを介して、引出部21および22の延在方向(X軸方向、あるいはX軸に対してXY面に沿って傾斜した方向)に向けて露出している。そのため、引出部21および22の延在方向から見て、巻回部20の少なくとも一部は、側壁部32(第1面32a)で隠れておらず、切り欠き部6aおよび6bを通じて外部に(第1面32a側に)露出している。
【0064】
D1方向から見て、巻回部20の巻軸方向の少なくとも一部は、側壁部32の軸方向に沿って、切り欠き部6aの底部60よりも端面32e側に位置している。また、D2方向から見て、巻回部20の巻軸方向の少なくとも一部は、側壁部32の軸方向に沿って、切り欠き部6bの底部60よりも端面32e側に位置している。
【0065】
図2および
図3に示すように、側壁部32は、凸部7をさらに有していてもよい。凸部7は、側壁部32の外周面(第1面32a)から、その径方向の外側に突出している。凸部7の少なくとも一部は、側壁部32の周方向に沿って、切り欠き部6aと切り欠き部6bとの間に位置する。凸部7は、第1部分71を有する。凸部7は、第1部分71にZ軸に沿って連続する第2部分72をさらに有していてもよい。
【0066】
第1部分71は、側壁部32の外周面から、その径方向の外側に突出している。第1部分71は、第1面32aのY軸方向の中央部に形成されている。ただし、第1面32aのY軸方向の中央部は、側壁部32の周方向に沿った第1面32aの中央部に対応している。第1部分71は、側壁部32の軸方向に沿って、底壁部34の設置面34b(
図5)から切り欠き部6aおよび6bの底部60まで延在している。第1部分71のY軸方向の両側には、傾斜面73が形成されている。一方の傾斜面73と他方の傾斜面73との間の間隔は、側壁部32の径方向の外側に向かうにしたがって狭くなっている。そのため、第1部分71は、側壁部32の径方向の外側に向かうにしたがって先細となる先細形状を有する。
【0067】
第2部分72は、切り欠き部6aおよび6bの底部60から、側壁部32の軸方向の一方側(コイル装置1の設置面とは反対側)に向かって突出している。第2部分72のY軸方向の長さは、第1部分71(ただし、傾斜面73を含む)のY軸方向の長さよりも短い。第2部分72のZ軸に沿った突出長は、ワイヤ2の線径よりも大きく、ワイヤ2の線径の2倍以上、4倍以上、6倍以上、8倍以上、あるいは10倍以上でもよい。第2部分72の頂面は、側壁部32の端面32eの一部を構成している。そのため、後述するように、第2コア4を端面32eに配置(接着)する場合において、端面32eに対する第2コア4の安定性(接着強度)を確保することができる。
【0068】
第2部分72は、側壁部32の周方向に沿って、切り欠き部6aの第2端62と切り欠き部6bの第2端62との間に位置する。また、第2部分72は、側壁部32の周方向に沿って、引出部21と引出部22との間に位置する。そのため、第2部分72によって、引出部21と引出部22との間の絶縁を図りやすくなる。
【0069】
側壁部32は、側壁部32の周方向(すなわち、Y軸方向)に沿って凸部7に隣接する凹部74aおよび74bをさらに有していてもよい。凹部74aおよび74bの各々は、第1面32aと、第1面32aに対して交差(傾斜)する傾斜面73とによって画定されている。凹部74aは、凸部7よりも、Y軸方向の一方側に位置する。凹部74bは、凸部7よりも、Y軸方向の他方側に位置する。凹部74aおよび74bは、側壁部32の内周面32f側に凹んでいる。また、凹部74aおよび74bは、側壁部32の軸方向に沿って、底壁部34の設置面34b(
図5)から切り欠き部6aおよび6bの底部60まで延在している。
【0070】
図2および
図3に示すように、端子5aおよび5bは、金属などの板状の導体で形成されており、側壁部32の外周面に取り付けられている。端子5aは、側壁部32の第1面32aおよび第3面32cと、底壁部34の設置面34b(
図5)とに跨って取り付けられている。端子5bは、側壁部32の第1面32aおよび第4面32dと、底壁部34の設置面34bとに跨って取り付けられている。
【0071】
図4に示すように、端子5aは、引出部21に接続される継線部53を有する。端子5aは、例えば、設置部50と、第1側部51と、第2側部52と、かしめ部54とをさらに有していてもよい。端子5bは、引出部22に接続される継線部53を有する。端子5bは、例えば、設置部50と、第1側部51と、第2側部52と、かしめ部54とをさらに有していてもよい。
【0072】
図5(適宜、
図3も参照)に示すように、端子5aの設置部50は、第3面32c側で、底壁部34の設置面34bに配置されている。端子5bの設置部50は、第4面32d側で、底壁部34の設置面34bに配置されている。設置部50は、コイル装置1が設置される基板(図示略)に対して、ハンダや導電性接着剤などを介して接続される。
【0073】
図2および
図4(適宜、
図3も参照)に示すように、第1側部51は、設置部50に連続しており、設置部50に対して直交する方向に延在している。第1側部51は、他の部分よりも、Z軸に沿って幅が狭くなる幅狭部51aを有していてもよい。端子5aの第1側部51は、第3面32cに配置されており、端子5bの第1側部51は、端子5aの第1側部51とY軸に沿って対向するように、第4面32dに配置されている。第1側部51には、例えばハンダなどのフィレットが形成されてもよい。
【0074】
第2側部52は、第1側部51に連続しており、第1側部51に対して直交する方向に延在している。端子5aの第1側部51は、凸部7よりもY軸方向の一方側で、第1面32aに配置されている。端子5bの第1側部51は、凸部7よりもY軸方向の他方側で、第1面32aに配置されている。
【0075】
継線部53は、第2側部52に連続しており、第2側部52に対して直交する方向に延在している。端子5aの継線部53には、引出部21が溶接により接続されており、端子5bの継線部53には、引出部22が溶接により接続されている。継線部53には、溶融部(溶接玉)11が形成されている。なお、引出部21または22を、継線部53に対して、例えばレーザ溶接、ハンダ、導電性接着剤、熱圧着、超音波接合、抵抗ろう付けまたは紫外線硬化樹脂接合等によって接続してもよい。
【0076】
端子5aの継線部53と端子5bの継線部53とは、ともに、引出部21および22の延在方向(X軸方向、あるいはX軸に対してXY面に沿って傾斜した方向)に沿って、同一側(側壁部32の第1面32a側)に配置されている。そのため、ワイヤ2のフォーミングを抑えつつ、引出部21および22を巻回部20から引き出し、さらに、それぞれ端子5aの継線部53と端子5bの継線部53とに接続することができる。なお、端子5aおよび5bの各々の継線部53の位置は、
図2および
図4に示す位置に限定されない。
【0077】
側壁部32の軸方向から見て、端子5aの継線部53は、凹部74aの範囲内(凹部74aの内側)に配置されている。また、側壁部32の軸方向から見て、端子5bの継線部53は、凹部74bの範囲内(凹部74bの内側)に配置されている。そのため、側壁部32の径方向に沿って、端子5aおよび5bの各々の継線部53は、側壁部32の外周面から、その径方向に離間した位置に配置されにくくなる。そのため、コイル装置1の小型化を図ることができる。なお、継線部53の一部が、凹部54aまたは54bの範囲外(凹部54aまたは54bの外側)に配置されていてもよい。
【0078】
かしめ部54は、継線部53に連続しており、継線部53に対して折曲可能に形成されている。端子5aのかしめ部54は、引出部21をかしめており、引出部21は、端子5aのかしめ部54と継線部53との間に挟み込まれている。端子5bのかしめ部54は、引出部22をかしめており、引出部22は、端子5bのかしめ部54と継線部53との間に挟み込まれている。溶融部11は、継線部53に加えて、かしめ部54に形成されていてもよい。
【0079】
図1および
図2(適宜、
図3も参照)に示すように、第2コア4は、板状のコアであり、側壁部32の端面32eに取り付けられている。第2コア4は、磁性体と樹脂とを含む材料で形成されている。本実施形態では、第2コア4は、第1コア3とは異なる材料で構成されており、主として、フェライト粒子を含んでいる。第2コア4は、フェライトの焼結体であるが、フェライト粒子を含むものであればこれに限定されない。第2コア4は、フェライト粒子に代えて、金属磁性体粒子を主として含んでいてもよい。あるいは、第2コア4は、金属磁性体の焼結体でもよい。本実施形態では、第2コア4を構成する材料は、第1コア3を構成する材料とは異なっているが、同一でもよい。第2コア4の透磁率は、特に限定されないが、第1コア3の透磁率の5倍以上である。また、第2コア4の板厚は、特に限定されないが、側壁部32の軸方向の高さの15%以上である。第2コア4の透磁率および板厚を上記の範囲に設定することにより、磁気飽和の発生を防止することができる。
【0080】
第2コア4は、取付面40を有する。取付面40は、側壁部32の端面32eに接着剤等によって取り付けられている。取付面40は、端面32eのうち、例えば
図2中の二点鎖線で示す領域に局所的に接着されている。ただし、取付面40は、端面32eの全域に接着されていてもよい。
【0081】
図5に示すように、中芯溝部311,312,313(
図3参照)には、巻回部20の内周面20cを接着するための樹脂10が充填されてもよい。樹脂10によって、巻回部20を中芯部30に固定することができる。また、巻回部20が中芯溝部311,312,313に配置される樹脂10を介して巻回部20の熱をコア3に逃がすことができ、コイル装置1の放熱性が向上する。複数の中芯溝部311,312,313があることで、巻回部20と中芯部30とが、より広い面積で接触することができ、より放熱性が向上する。樹脂10は、巻回部20と接触することで、巻回部20での熱がコア3に伝えやすくなる。
【0082】
中芯溝部311,312,313は、Z軸方向に沿って中芯部30の第1端30aから第2端30bまで延在している。このように構成することで、中芯部30の第1端30aから樹脂10を中芯溝部311,312,313に流し込んで、容易に樹脂10と巻回部20とを接触させることができる。
【0083】
巻回部20からの放熱性を向上させる観点から、樹脂10が巻回部20の間に入り込んでいてもよい。また、樹脂10は、空気よりも熱伝導率の高い伝熱材であってもよい。このような伝熱材は、フィラーを含んだ樹脂を有してもよい。このような伝熱材がフィラーを含むことで熱伝導率が向上し、巻回部20での熱を効率的にコア3に伝達することができる。また、伝熱材には、エポキシ樹脂が含まれていてもよい。
【0084】
なお、中芯溝部311,312,313が設けられていない中芯部30の外周面30cと巻回部20との間にも巻樹脂10が充填されてもよい。底面34aと第2端20bとの間には、接着剤などの樹脂10が充填されていてもよい。中芯溝部311,312,313の表面は、外周面30cと滑らかに繋がっているため、樹脂10は、中芯溝部311,312,313が設けられていない中芯部30の外周面30cと巻回部20との間にも流れ込みやすい。
【0085】
コア3は、中芯部30を所定の間隔の凹状隙間36で取り囲む側壁部32を有するポットコアであってもよい。このようなポットコアを有するコイル装置1は、特に熱がこもりやすいが、このような構成であっても、巻回部20の熱を十分に放熱することが可能である。
【0086】
次に、コイル装置1の製造方法について説明する。まず、
図2に示す第1コア3と、第2コア4と、端子5aおよび5bとを準備する。次に、接着剤等によって、端子5aおよび5bを、
図2に示す第1コア3の外周面の所定の位置に接着する。次に、巻回部20を有するワイヤ2を準備する。次に、
図2に示すように、巻回部20を第1コア3の中芯部30に配置する。次に、
図4に示すように、引出部21を端子5aのかしめ部54でかしめ、継線部53に溶接等によって接続する。また、引出部22を端子5bのかしめ部54でかしめ、継線部53に溶接等によって接続する。
【0087】
次に、
図5に示すように、中芯溝部311,312,313に樹脂10を充填する。例えば、巻回部20の第1端20aに樹脂10が付着するように、中芯部30の第1端30aが外周に沿って樹脂10を流す。これにより、中芯溝部311,312,313に樹脂10が充填されると共に、中芯溝部311,312,313が形成されていない中芯部30の外周面30cと巻回部20の内周面20cとの間にも樹脂10が充填されやすい。
【0088】
また、巻回部20の第2端20bと底壁部34の底面34aとの間に樹脂10が充填される。なお、樹脂10は、中芯溝部311,312,313に中芯部30の第1端30aから流して充填してもよい。このような方法であっても、中芯溝部311,312,313が形成されていない中芯部30の外周面30cと巻回部20の内周面20cとの間にも樹脂10を充填することができる。ただし、樹脂10の充填範囲は、これに限定されず、例えば、巻回部20の外周面20dと側壁部32の内周面32fとの間に樹脂10が充填されてもよい。
【0089】
次に、
図1および
図2に示すように、接着剤等によって、側壁部32の端面32eに第2コア4を接着する。以上のようにして、
図1に示すコイル装置1を製造することができる。なお、コイル装置1の寸法は特に限定されないが、X軸方向の長さは例えば2~20mmであり、Y軸方向の長さは例えば2~20mmであり、Z軸方向の長さは例えば1~10mmである。
【0090】
(第2実施形態)
第2実施形態のコイル装置1aは、以下に示す点を除いて、第1実施形態のコイル装置1と同様の構成を有する。第1実施形態のコイル装置1と重複する部分には、同一符号を付し、その詳細な説明については省略する。
図3は、第2実施形態のコイル装置1aのうち、第1コア3aの内部構成の一部分を図示している。
【0091】
図6に示すように、第1コア3aは、中芯部30の外周面30cに、外周面30cに対して内側に凹んでいる中芯溝部31a1,31a2を有する。また、第1コア3aは、底壁部34の底面34aに、底面34aに対して凹んでいる底溝部35a1,35a2と、を有する。
【0092】
中芯溝部31a1,31a2は、中芯部30の第1端30aから第2端30bに向かって、Z軸方向に沿って延在している。中芯溝部31a1,31a2は、それぞれ中芯部30の外周面30cに均等な距離で配置してある。
【0093】
中芯溝部31a1,31a2は、中芯部30の第1端30aから第2端30bまで連続的かつ直線状に延在している。そのため、中芯溝部31a1,31a2のZ軸方向に沿う長さは、中芯部30のZ軸方向に沿う長さと等しくなっている。中芯部30の第1端30aにおいて、中芯部30の上面の外周は中芯溝部31a1,31a2によって切り欠かれている。中芯溝部31a1,31a2の表面は、外周面30cと滑らかに繋がっている。
【0094】
図6に示すように、底溝部35a1,35a2は、底壁部34の底面34aに形成してある。底溝部35a1,35a2は、中芯部30の外周面30cから外側に向かって延在している。底溝部35a1,35a2は、底壁部34の底面34aと中芯部30の外周面30cとの交差部から、側壁部32の内周面32f(
図3参照)まで、連続的かつ直線状に延在している。底溝部35a1,35a2は、中芯部30の第2端31bにおいて、中芯溝部31a1,31a2に接続されている。底溝部35a1,35a2の内壁面の形状は、中芯溝部31a1,31a2の内壁面の形状と等しくなっているが、これらは異なっていてもよい。
【0095】
底壁部34に底溝部35a1,35a2が形成してあることで、底溝部35a1,35a2にも樹脂10を配置することができる。中芯溝部31a1,31a2と底溝部35a1,35a2は、繋がっていることで、樹脂10を中芯溝部31a1,31a2に塗布することで、底溝部35a1,35a2にまで樹脂10を行き渡らせることができる。底溝部35a1,35a2に樹脂10が行き渡ると、底面34aに樹脂10が溢れて、巻回部20の第2端20bと底壁部34の底面34aとの間に樹脂10が充填されやすくなる。そのため、より効果的にコイル装置の放熱性を向上させることができる。
【0096】
(第3実施形態)
第3実施形態のコイル装置1bは、以下に示す点を除いて、第2実施形態のコイル装置1aと同様の構成を有する。第2実施形態のコイル装置1aと重複する部分には、同一符号を付し、その詳細な説明については省略する。
図7は、第3実施形態のコイル装置1bのうち、第1コア3bの内部構成の一部分を図示している。
【0097】
図7に示すように、コイル装置1bは、第1コア3bを有する。第1コア3bは、中芯溝部31b1,31b2および底溝部35b1,35b2を有するという点において、第2実施形態の第1コア3aとは異なっている。中芯溝部31b1,31b2は、全体としてテーパ形状(逆三角形状)を有しており、中芯部30の第2端30bにおける中芯溝部31b1,31b2の幅W1は、中芯部30の第1端30aにおける中芯溝部31b1,31b2の幅W2よりも小さくなっている。すなわち、中芯溝部31b1,31b2の延在方向に直交する方向に沿った幅は、中芯部30の第2端30bに向かうにしたがって狭くなっている。底溝部35b1,35b2の幅は、中芯部30の第2端30bにおける中芯溝部31b1,31b2の幅W1に等しくなっている。
【0098】
本実施形態においても第2実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態では、中芯部30の第1端30a側(キャビティの開口側に対応)において、中芯溝部31b1,31b2の幅W2が広くなっているため、樹脂10をキャビティ内に充填したときに、樹脂10が中芯溝部31b1,31b2に入り込みやすくなり、十分な量の樹脂10を中芯溝部31b1,31b2および底溝部35b1,35b2に流し込むことが可能となる。そのため、巻回部20の第2端20bと底壁部34の底面34aとの間に樹脂10が充填されやすくなる。
【0099】
(第4実施形態)
第4実施形態のコイル装置1cは、以下に示す点を除いて、第1実施形態のコイル装置1と同様の構成を有する。第1実施形態のコイル装置1と重複する部分には、同一符号を付し、その詳細な説明については省略する。
図8は、第4実施形態のコイル装置1cのうち、第1コア3cの内部構成を図示している。
【0100】
図8に示すように、コイル装置1cは、第1コア3cを有する。第1コア3cは、中芯溝部31c1,31c2,31c3を有するという点において、第1実施形態の第1コア3cとは異なっている。第1コア3cは、中芯部30の中心を通るXZ面を対称面として対称になるように中芯溝部31c1,31c2,31c3が配置されている。中芯溝部31c1は、切り欠き部6aの近傍に配置してあり、中芯溝部31c2は、切り欠き部6bの近傍に配置してある。このように構成することで、コイル装置1cの製造を容易に行うことができ、コイル装置1cは、放熱性にも優れ、特に高周波において好ましく用いることができる。
【0101】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【0102】
図2に示すように、上記第1実施形態では、D1方向から見て、引出部21の少なくとも一部が、切り欠き部6aを通じて外部に露出していた。また、D2方向から見て、引出部22の少なくとも一部が、切り欠き部6bを通じて外部に露出していた。しかしながら、本開示において、これらの構成は必須ではない。D1方向から見て、引出部21は、側壁部32(第3面32c)で隠れていてもよい。また、D2方向から見て、引出部22は、側壁部32(第4面32d)で隠れていてもよい。
【0103】
図2に示すように、上記第1実施形態では、第1コア3に3つの中芯溝部311,312,313が形成してあるが、中芯溝部の数はこれに限られず、1つあるいは4つ以上形成してあってもよい。また、第1実施形態および第3のコアを、第2実施形態および第3実施形態のように中芯溝部に繋がる底溝部を有するコアとしてもよい。
【0104】
図2に示すように、上記第1実施形態では、第1コア3の中芯部30では、外周面30cは、巻回部20の内周面20cに面している部分が、中芯溝部311,312,313が形成してある部分よりも広いが、中芯溝部が形成してある部分の方を広くしてあってもよい。すなわち、外周面30cは、巻回部20の内周面20cに面している部分と中芯溝部311,312,313が形成してある部分を入れ替えた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1,1a,1b,1c…コイル装置
2…ワイヤ(導体)
20…巻回部
20a…第1端
20b…第2端
20c…内周面
20d…外周面
21,22…引出部
23…引出位置
24…連結部
3…第1コア
30…中芯部
30a…第1端
30b…第2端
30c…外周面
311,312,313.31a1,31a2,31b1,31b2,31c1,31c2,31c3…中芯溝部
32…側壁部
32a…第1側面
32b…第2側面
32c…第3側面
32d…第4側面
32e…端面
32f…内周面
34…底壁部
34a…底面
34b…設置面
35a1,35a2,35b1,35b2…底溝部
36…凹状隙間
4…第2コア
40…取付面
5a,5b…端子
50…設置部
51…第1側部
51a…幅狭部
52…第2側部
53…継線部
54…かしめ部
6a,6b…切り欠き部
60…底部
61…第1端
62…第2端
7…凸部
71…第1部分
72…第2部分
73…傾斜面
74a,74b…凹部
10…樹脂(伝熱材)
11…溶融部