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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117462
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】スイッチング素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240822BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240822BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01L29/78 658A
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 658E
H01L29/78 652T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023578
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 直輝
(72)【発明者】
【氏名】金原 啓道
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 洋平
(57)【要約】
【課題】 電界緩和領域の厚さのばらつきを抑制する。
【解決手段】 スイッチング素子の製造方法であって、n型の第1半導体層を有する半導体基板を準備する工程と、前記第1半導体層の表面の一部にp型不純物を注入することによって前記第1半導体層内に第1p型領域を形成する第1注入工程と、前記第1半導体層上にn型の第2半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、前記第2半導体層の表面の一部にp型不純物を注入することによって前記第2半導体層内に前記第1p型領域に繋がる第2p型領域を形成する第2注入工程と、前記第2半導体層上に第3半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、 前記第3半導体層の表面にトレンチの底面が前記第2p型領域内に位置するように前記トレンチを形成する工程、を有する。前記第1p型領域と前記第2p型領域によって前記電界緩和領域が形成される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子の製造方法であって、
前記スイッチング素子が、
トレンチ内に配置されているゲート電極と、
前記トレンチの側面に接するn型のソース領域と、
前記ソース領域の下側で前記トレンチの前記側面に接するp型のボディ領域と、
前記ボディ領域の下側で前記トレンチの前記側面に接しており、前記トレンチの底面よりも下側まで伸びるn型のドリフト領域と、
前記トレンチの前記底面に接しており、前記ドリフト領域に接するp型の電界緩和領域、
を有し、
前記製造方法が、
n型の第1半導体層を有する半導体基板を準備する工程と、
前記第1半導体層の表面の一部にp型不純物を注入することによって、前記第1半導体層内に第1p型領域を形成する第1注入工程と、
前記第1半導体層上にn型の第2半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記第2半導体層の表面の一部にp型不純物を注入することによって、前記第2半導体層内に前記第1p型領域に繋がる第2p型領域を形成する第2注入工程であって、前記第1p型領域と前記第2p型領域によって前記電界緩和領域が形成される前記第2注入工程と、
前記第2半導体層上に第3半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記第3半導体層の表面に、前記トレンチの前記底面が前記第2p型領域内に位置するように前記トレンチを形成する工程、
を有する製造方法。
【請求項2】
前記第1注入工程におけるp型不純物の注入エネルギーが、前記第2注入工程におけるp型不純物の注入エネルギーよりも低い、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1注入工程におけるp型不純物の注入範囲の下端が、前記第2注入工程におけるp型不純物の注入範囲の下端よりも下側に位置する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記スイッチング素子が、
前記ボディ領域から下側に突出しており、前記電界緩和領域の下端よりも下側まで伸びるp型のディープ領域をさらに有し、
前記製造方法が、
前記第1半導体層の表面の一部にp型不純物を注入することによって、前記第1半導体層内に第3p型領域を形成する第3注入工程と、
前記第2半導体層の表面の一部にp型不純物を注入することによって、前記第2半導体層内に前記第3p型領域に繋がる第4p型領域を形成する第4注入工程であって、前記第3p型領域と前記第4p型領域によって前記ディープ領域が形成される前記第4注入工程、
をさらに有する、
請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、スイッチング素子の製造方法に関する。
【0002】
特許文献1には、トレンチ型のゲート電極を有するスイッチング素子が開示されている。このスイッチング素子は、トレンチの底面に接するp型の電界緩和領域を有している。電界緩和領域により、トレンチの底面周辺における電界集中を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-044298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、n型の半導体層にp型不純物を注入することによって電界緩和領域を形成する。しかしながら、p型不純物の注入距離を正確に制御することが困難であり、スイッチング素子の量産時には電界緩和領域の厚さにばらつきが生じる。その結果、スイッチング素子の耐圧にばらつきが生じる。本明細書では、電界緩和領域の厚さのばらつきを抑制する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する製造方法により製造されるスイッチング素子は、トレンチ内に配置されているゲート電極と、前記トレンチの側面に接するn型のソース領域と、前記ソース領域の下側で前記トレンチの前記側面に接するp型のボディ領域と、前記ボディ領域の下側で前記トレンチの前記側面に接しているとともに前記トレンチの底面よりも下側まで伸びるn型のドリフト領域と、前記トレンチの前記底面に接しているとともに前記ドリフト領域に接するp型の電界緩和領域、を有する。前記製造方法が、n型の第1半導体層を有する半導体基板を準備する工程と、前記第1半導体層の表面の一部にp型不純物を注入することによって前記第1半導体層内に第1p型領域を形成する第1注入工程と、前記第1半導体層上にn型の第2半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、前記第2半導体層の表面の一部にp型不純物を注入することによって前記第2半導体層内に前記第1p型領域に繋がる第2p型領域を形成する第2注入工程であって前記第1p型領域と前記第2p型領域によって前記電界緩和領域が形成される前記第2注入工程と、前記第2半導体層上に第3半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、前記第3半導体層の表面に、前記トレンチの前記底面が前記第2p型領域内に位置するように前記トレンチを形成する工程、を有する。
【0006】
本明細書が開示する上記製造方法では、2段階に分けてp型不純物の注入を行うことによって電界緩和領域を形成する。すなわち、第1注入工程によって第1半導体層内に第1p型領域を形成し、次に第1p型領域が形成された第1半導体層上に第2半導体層を形成し、次に第2注入工程によって第2半導体層内に第2p型領域を形成する。形成された第1p型領域と第2p型領域が互いに繋がることで、電界緩和領域となる。第1p型領域と第2p型領域の厚さは電界緩和領域の厚さよりも薄いので、第1p型領域と第2p型領域は比較的低い注入エネルギーで形成することができる。すなわち、第1注入工程と第2注入工程では、低い注入エネルギーで第1p型領域と第2p型領域を形成できる。p型不純物の注入エネルギーが低い場合、p型不純物の注入深さのばらつきが生じ難い。したがって、第1注入工程と第2注入工程では、第1p型領域と第2p型領域の厚さのばらつきを抑制できる。したがって、この製造方法によれば、電界緩和領域の厚さのばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】スイッチング素子の断面を含む斜視図。
図2】ソース電極を省略したスイッチング素子の斜視図。
図3】実施例1の製造方法を示すフローチャート。
図4】実施例1の製造方法の説明図。
図5】実施例1の製造方法の説明図。
図6】実施例1の製造方法の説明図。
図7】実施例1の製造方法の説明図。
図8】実施例1の製造方法の説明図。
図9】実施例1の製造方法の説明図。
図10】実施例1の製造方法の説明図。
図11】実施例1の製造方法の説明図。
図12】実施例1の製造方法の説明図。
図13】実施例1の製造方法により形成された電界緩和領域内のp型不純物濃度分布を示すグラフ。
図14】比較例の製造方法により形成された電界緩和領域内のp型不純物濃度分布を示すグラフ。
図15】変形例の製造方法により形成された電界緩和領域内のp型不純物濃度分布を示すグラフ。
図16】実施例2の製造方法の説明図。
図17】実施例2の製造方法の説明図。
図18】実施例2の製造方法の説明図。
図19】実施例2の製造方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記第1注入工程におけるp型不純物の注入エネルギーが、前記第2注入工程におけるp型不純物の注入エネルギーよりも低くてもよい。
【0009】
この構成によれば、電界緩和領域の厚さのばらつきをより効果的に抑制できる。
【0010】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記第1注入工程におけるp型不純物の注入範囲の下端が、前記第2注入工程におけるp型不純物の注入範囲の下端よりも下側に位置していてもよい。
【0011】
この構成によれば、電界緩和領域の厚さのばらつきをより効果的に抑制できる。
【0012】
本明細書が開示する一例の構成では、前記スイッチング素子が、前記ボディ領域から下側に突出しており、前記電界緩和領域の下端よりも下側まで伸びるp型のディープ領域をさらに有していてもよい。前記製造方法が、前記第1半導体層の表面の一部にp型不純物を注入することによって前記第1半導体層内に第3p型領域を形成する第3注入工程と、
前記第2半導体層の表面の一部にp型不純物を注入することによって、前記第2半導体層内に前記第3p型領域に繋がる第4p型領域を形成する第4注入工程であって、前記第3p型領域と前記第4p型領域によって前記ディープ領域が形成される前記第4注入工程、をさらに有していてもよい。
【0013】
この構成によれば、ディープ領域の厚さのばらつきを抑制できる。
【実施例0014】
図1、2は、実施例1の製造方法によって製造されるスイッチング素子10を示している。スイッチング素子10は、半導体基板12を有している。半導体基板12は、SiCにより構成されている。但し、半導体基板12が、SiやGaN等の他の半導体により構成されていてもよい。以下では、半導体基板12の上面12aに平行な一方向をx方向といい、上面12aに平行かつx方向に直交する方向をy方向といい、半導体基板12の厚さ方向をz方向という。半導体基板12の上面12aには、複数のトレンチ14が設けられている。各トレンチ14は、上面12aにおいてy方向に直線状に伸びている。各トレンチ14は、上面12aにおいてx方向に間隔を空けて配置されている。各トレンチ14の内面は、ゲート絶縁膜16によって覆われている。各トレンチ14内にゲート電極18が配置されている。各ゲート電極18は、ゲート絶縁膜16によって半導体基板12から絶縁されている。各トレンチ14内に、層間絶縁膜20が配置されている。各層間絶縁膜20は、ゲート電極18の上面を覆っている。
【0015】
図1に示すように、半導体基板12の上部に、ソース電極22が設けられている。ソース電極22は、層間絶縁膜20の上面と半導体基板12の上面12aを覆っている。ソース電極22は、層間絶縁膜20によってゲート電極18から絶縁されている。半導体基板12の下部に、ドレイン電極24が設けられている。ドレイン電極24は、半導体基板12の下面12bを覆っている。
【0016】
図1、2に示すように、半導体基板12は、複数のソース領域40、複数のコンタクト領域41、ボディ領域42、ドリフト領域44、バッファ領域45、ドレイン領域46、複数の電界緩和領域48、及び、複数のディープ領域49を有している。
【0017】
ソース領域40は、高いn型不純物濃度を有するn型領域である。コンタクト領域41は、高いp型不純物濃度を有するp型領域である。ソース領域40とコンタクト領域41は、2つのトレンチ14の間に位置する半導体層(以下、トレンチ間半導体層という)内に設けられている。各トレンチ間半導体層内において、ソース領域40とコンタクト領域41がy方向に沿って交互に配置されている。ソース領域40とコンタクト領域41は、ソース電極22に接している。各ソース領域40は、トレンチ間半導体層の両側に設けられたトレンチ14の側面においてゲート絶縁膜16に接している。各コンタクト領域41は、トレンチ間半導体層の両側に設けられたトレンチ14の側面においてゲート絶縁膜16に接している。
【0018】
ボディ領域42は、コンタクト領域41よりも低いp型不純物濃度を有するp型領域である。ボディ領域42は、トレンチ間半導体層内に配置されている。ボディ領域42は、ソース領域40及びコンタクト領域41の下側に配置されている。ボディ領域42は、ソース領域40及びコンタクト領域41に対して下側から接している。ボディ領域42は、ソース領域40の下側でゲート絶縁膜16に接している。すなわち、ボディ領域42は、トレンチ間半導体層の両側に設けられたトレンチ14の側面においてゲート絶縁膜16に接している。
【0019】
ドリフト領域44は、ソース領域40よりも低いn型不純物濃度を有するn型領域である。ドリフト領域44は、複数のトレンチ間半導体層の下部に跨って分布している。ドリフト領域44の上端部は、各トレンチ間半導体層内まで伸びている。ドリフト領域44は、各トレンチ間半導体層内において、ボディ領域42に対して下側から接している。ドリフト領域44は、ボディ領域42の下側でゲート絶縁膜16に接している。すなわち、ドリフト領域44は、各トレンチ間半導体層の両側に設けられたトレンチ14の側面においてゲート絶縁膜16に接している。
【0020】
バッファ領域45は、ドリフト領域44よりも高いn型不純物濃度を有するn型領域である。バッファ領域45は、ドリフト領域44に対して下側から接している。
【0021】
ドレイン領域46は、バッファ領域45よりも高いn型不純物濃度を有するn型領域である。ドレイン領域46は、バッファ領域45に対して下側から接している。ドレイン領域46は、半導体基板12の下面12bにおいてドレイン電極24に接している。
【0022】
各電界緩和領域48は、コンタクト領域41よりも低いp型不純物濃度を有するp型領域である。各電界緩和領域48は、対応するトレンチ14の下部に配置されている。各電界緩和領域48は、対応するトレンチ14の底面においてゲート絶縁膜16に接している。各電界緩和領域48は、対応するトレンチ14の底面に沿ってy方向に直線状に伸びている。各電界緩和領域48の間の間隔部及び各電界緩和領域48の下側の領域には、ドリフト領域44が分布している。各電界緩和領域48の側面及び底面には、ドリフト領域44が接している。
【0023】
各ディープ領域49は、電界緩和領域48よりも低いp型不純物濃度を有するp型領域である。各ディープ領域49は、ボディ領域42の下側に配置されている。各ディープ領域49は、y方向よりもz方向に長い形状を有しており、その上端はボディ領域42に接続されている。すなわち、各ディープ領域49は、ボディ領域42から下側に突出する凸形状を有している。各ディープ領域49は、ボディ領域42から各電界緩和領域48の下端よりも下側まで伸びている。各ディープ領域49は、x方向に直線状に伸びており、トレンチ14及び電界緩和領域48と交差している。各ディープ領域49は、y方向に間隔を空けて配置されている。各ディープ領域49の間の間隔部及び各ディープ領域49の下側の領域には、ドリフト領域44が分布している。各ディープ領域49の側面及び底面には、ドリフト領域44が接している。各ディープ領域49は、電界緩和領域48との交差部において、電界緩和領域48と繋がっている。したがって、各電界緩和領域48は、ディープ領域49を介してボディ領域42に接続されている。
【0024】
次に、スイッチング素子10の動作について説明する。スイッチング素子10は、いわゆるMOSFET(metal-oxide-semiconductor field effect transistor)である。通常時は、ドレイン電極24にソース電極22よりも高い電位が印加される。ゲート電極18にゲート閾値よりも高い電位を印加すると、ボディ領域42内のゲート絶縁膜16の近傍の部分にチャネルが形成され、チャネルによってソース領域40とドリフト領域44が接続される。これにより、スイッチング素子10がオンし、ドレイン電極24からソース電極22へ電流が流れる。
【0025】
ゲート電極18の電位をゲート閾値よりも低い電位に引き下げると、スイッチング素子10がオフし、電流が停止する。スイッチング素子10がオフすると、ボディ領域42、ディープ領域49、及び、電界緩和領域48からドリフト領域44に空乏層が伸び、ドリフト領域44の略全体が空乏化される。電界緩和領域48によって、トレンチ14の下端における電界集中が抑制される。また、ディープ領域49から伸びる空乏層は、ドリフト領域44を効率的に空乏化させる。これによって、スイッチング素子10の高い耐圧が実現される。
【0026】
電界緩和領域48の厚さ(すなわち、z方向における寸法)とディープ領域49の厚さ(すなわち、z方向における寸法)は、スイッチング素子10の耐圧に大きく影響する。電界緩和領域48の厚さとディープ領域49の厚さがばらつくと、スイッチング素子10の耐圧が大きくばらつく。例えば、厚さのばらつきによって電界緩和領域48の下端がディープ領域49の下端よりも下側に突出すると、電界緩和領域48の下端で電界集中が生じ易くなり、スイッチング素子10の耐圧が大きく低下する。以下に、電界緩和領域48の厚さとディープ領域49の厚さのばらつきを抑制可能なスイッチング素子10の製造方法について説明する。
【0027】
図3は、実施例1の製造方法を示している。この製造方法では、ステップS2において、図4に示す半導体基板を準備する。図4に示す半導体基板は、加工前の半導体基板12であり、ドレイン領域46、バッファ領域45及び第1半導体層44aを有している。第1半導体層44aは、バッファ領域45上に配置されている。第1半導体層44aは、バッファ領域45よりも低いn型不純物濃度を有するn型層である。第1半導体層44aは、半導体基板の上面に露出している。ステップS2では、図4に示す半導体基板を製造してもよいし購入してもよい。
【0028】
次に、ステップS4において、図5に示すように、第1半導体層44a内に複数のp型領域48aを形成する。より詳細には、まず、第1半導体層44aの上面に開口部を有するマスク50を形成する。次に、マスク50を介して第1半導体層44aの表面の一部にp型不純物を注入する。これによって、第1半導体層44a内に複数のp型領域48aを形成する。ここでは、第1半導体層44aの上面に露出する位置に、x方向に間隔を空けて複数のp型領域48aを形成する。各p型領域48aは、y方向に直線状に伸びている。p型領域48aの形成後に、マスク50を除去する。
【0029】
次に、ステップS6において、図6に示すように、第1半導体層44a内に複数のp型領域49aを形成する。より詳細には、まず、第1半導体層44aの上面に開口部を有するマスク52を形成する。次に、マスク52を介して第1半導体層44aの表面の一部にp型不純物を注入する。これによって、第1半導体層44a内に複数のp型領域49aを形成する。ここでは、第1半導体層44aの上面に露出する位置に、y方向に間隔を空けて複数のp型領域49aを形成する。各p型領域49aは、x方向に直線状に伸びている。したがって、各p型領域49aは、p型領域48aと交差している。ステップS6では、ステップS4よりも高いエネルギーでp型不純物を注入する。したがって、p型領域49aは、p型領域48aよりも深い位置まで形成される。このため、p型領域49aは、p型領域48aよりも厚い。p型領域49aの形成後に、マスク52を除去する。
【0030】
次に、ステップS8において、図7に示すように、第1半導体層44a上に第2半導体層44bをエピタキシャル成長させる。第2半導体層44bは、第1半導体層44aと略同じn型不純物濃度を有するn型層である。第2半導体層44bの厚さは、p型領域48aの厚さよりも厚い。
【0031】
次に、ステップS10において、図8に示すように、第2半導体層44b内に複数のp型領域48bを形成する。より詳細には、まず、第2半導体層44bの上面に開口部を有するマスク54を形成する。次に、マスク54を介して第2半導体層44bの表面の一部にp型不純物を注入する。これによって、第2半導体層44b内に複数のp型領域48bを形成する。ここでは、第2半導体層44bの上面に露出する位置に、x方向に間隔を空けて複数のp型領域48bを形成する。各p型領域48bは、y方向に直線状に伸びている。ステップS10では、ステップS4よりも加速電圧を高く設定することにより、ステップS4よりも高い注入エネルギーでp型不純物を注入する。これによって、第2半導体層44bの上面から下面まで伸びるp型領域48bを形成する。したがって、p型領域48bの厚さは、p型領域48aの厚さよりも厚い。ここでは、p型領域48aの上部にp型領域48bを形成する。したがって、p型領域48bの下端がp型領域48aの上端に繋がる。互いに繋がったp型領域48a、48bによって電界緩和領域48が形成される。p型領域48bの形成後に、マスク54を除去する。
【0032】
次に、ステップS12において、図9に示すように、第2半導体層44b内に複数のp型領域49bを形成する。より詳細には、まず、第2半導体層44bの上面に開口部を有するマスク56を形成する。次に、マスク56を介して第2半導体層44bの表面の一部にp型不純物を注入する。これによって、第2半導体層44b内に複数のp型領域49bを形成する。ここでは、第2半導体層44bの上面に露出する位置に、y方向に間隔を空けて複数のp型領域49bを形成する。各p型領域49bは、x方向に直線状に伸びている。したがって、各p型領域49bは、p型領域48bと交差している。ここでは、p型領域49aの上部にp型領域49bを形成する。したがって、p型領域49bの下端がp型領域49aの上端に繋がる。互いに繋がったp型領域49a、49bによってディープ領域49が形成される。p型領域49bの形成後に、マスク56を除去する。
【0033】
電界緩和領域48とディープ領域49の形成後に第1半導体層44aと第2半導体層44b内に残存しているn型領域が、ドリフト領域44である。
【0034】
次に、ステップS14において、図10に示すように、第2半導体層44b上にn型の第3半導体層60をエピタキシャル成長させる。
【0035】
次に、ステップS16において、図11に示すように、イオン注入によって第3半導体層60内にソース領域40及びボディ領域42を形成する。また、ステップS16では、第3半導体層60内にコンタクト領域41(図1、2参照)を形成する。
【0036】
次に、ステップS18において、図12に示すように、第3半導体層60の表面を選択的にエッチングすることによって複数のトレンチ14を形成する。ここでは、各電界緩和領域48の上部に、電界緩和領域48に沿って(すなわち、y方向に沿って)伸びるトレンチ14を形成する。また、ここでは、トレンチ14の底面がp型領域48b内に位置するようにトレンチ14を形成する。
【0037】
次に、ステップS20において、トレンチ14内に、ゲート絶縁膜16、ゲート電極18及び層間絶縁膜20を形成する。さらに、半導体基板12の上面にソース電極22を形成し、半導体基板12の下面にドレイン電極24を形成する。以上の工程により、図1、2に示すスイッチング素子10が完成する。
【0038】
図13は、実施例1の製造方法により製造されたスイッチング素子10の電界緩和領域48内の深さ方向(すなわち、z方向)におけるp型不純物濃度分布を示している。また、図14は、比較例の電界緩和領域48の深さ方向におけるp型不純物濃度を示している。図14は、注入エネルギーが高い一度のイオン注入で図13と同じ厚さの電界緩和領域48を形成した場合を示している。図13、14の注入距離Da、Db、Dcは、イオン注入時の半導体層の表面からp型不純物の濃度ピークの深さまでの距離を示している。
【0039】
図14に示すように、注入エネルギーが高い場合、注入距離Dcが長い。また、イオン注入されたp型不純物は、目標の深さの周辺に分散して分布するので、p型不純物は正規分布状に分布する。注入エネルギーが高い場合は、不純物が分散して分布し易い。このため、図14では、正規分布の裾が広い。
【0040】
図13、14に示すように、p型領域48bに対する注入距離Db(すなわち、ステップS10における注入距離)は、注入距離Dcよりも短い。したがって、ステップS10で注入されたp型不純物の濃度分布では、図14のp型不純物濃度分布よりも、裾が狭く分布範囲の幅が狭い。また、上述したように、ステップS4のp型領域48aに対するイオン注入はステップS10のp型領域48bに対するイオン注入よりも低い注入エネルギーで実施される。したがって、図13に示すように、p型領域48aに対する注入距離Daはp型領域48bに対する注入距離Dbよりも短い。このため、ステップS4で注入されたp型不純物の濃度分布では、ステップS10で注入されたp型不純物の濃度分布よりも、裾が狭く分布範囲の幅が狭い。図13、14から明らかなように、実施例1の製造方法によれば、電界緩和領域48の下端において裾が狭いp型不純物濃度分布を得ることができる。
【0041】
イオン注入によって図14のように裾が広いp型不純物濃度分布を形成する場合には、p型不純物の分布範囲の制御が難しく、電界緩和領域48の厚さにばらつきが生じ易い。これに対し、実施例1の製造方法では、図13に示すように、電界緩和領域48の下端において裾が狭いp型不純物濃度分布を得ることができる。したがって、電界緩和領域48の下端においてp型不純物の分布範囲を正確に制御することができ、電界緩和領域48の厚さのばらつきを抑制できる。したがって、実施例1の製造方法によれば、量産されたスイッチング素子10において耐圧等の特性のばらつきを抑制できる。
【0042】
また、実施例1の製造方法では、p型領域48aよりも上側のp型領域48bに対するイオン注入を、p型領域48aに対するイオン注入よりも高い注入エネルギーで実施する。したがって、電界緩和領域48のうちの下端以外の部分を一度のイオン注入で形成することができる。このため、電界緩和領域48の厚さのばらつきを抑制しながら、電界緩和領域48を効率的に形成することができる。
【0043】
また、実施例1の製造方法では、電界緩和領域48と同様にして、ディープ領域49を1回目のイオン注入(すなわち、ステップS6)、エピタキシャル成長(すなわち、ステップS8)及び2回目のイオン注入(すなわち、ステップS12)を実施することにより形成する。したがって、ディープ領域49の厚さのばらつきを抑制できる。このため、スイッチング素子10の耐圧のばらつきをより効果的に抑制できる。
【0044】
なお、実施例1では、図13に示すように、p型領域48aに対する注入範囲の下端の位置Pa(すなわち、ステップS4で注入されたp型不純物の濃度が検出限界値となる位置)が、p型領域48bに対する注入範囲の下端の位置Pb(すなわち、ステップS10で注入されたp型不純物の濃度が検出限界値となる位置)よりも下側に位置する。この場合、p型領域48bに対するイオン注入が電界緩和領域48の厚さに影響しないので、電界緩和領域48の厚さのばらつきをより効果的に抑制することができる。ただし、他の実施例では、図15のように、p型領域48bに対する注入範囲の下端の位置Pbが、p型領域48aに対する注入範囲の下端の位置Paよりも下側に位置してもよい。図15の場合であっても、図14に示す比較例に比べれば、電界緩和領域48の厚さのばらつきを抑制できる。
【実施例0045】
次に、実施例2の製造方法について説明する。なお、実施例2では、ディープ領域49についての説明は省略する。実施例2の製造方法では、実施例1の製造方法と同様にして、図5に示す状態になるまで加工を実施する。実施例2では、次に、図16に示すように、第1半導体層44a上にn型の半導体層44b-1をエピタキシャル成長させる。半導体層44b-1の厚さは、実施例1の第2半導体層44b(図7参照)よりも薄い。次に、図17に示すように、イオン注入によって半導体層44b-1内に複数のp型領域48b-1を形成する。各p型領域48b-1は、その下部のp型領域48aと繋がるように形成される。次に、図18に示すように、半導体層44b-1上にn型の半導体層44b-2をエピタキシャル成長させる。半導体層44b-2の厚さは、半導体層44b-1の厚さと略等しい。次に、図19に示すように、イオン注入によって半導体層44b-2内に複数のp型領域48b-2を形成する。各p型領域48b-2は、その下部のp型領域48b-1と繋がるように形成される。p型領域48a、48b-1、48b-2によって、電界緩和領域48が形成される。その後、実施例1と同様にして、トレンチ14、ゲート絶縁膜16、ゲート電極18、層間絶縁膜20、ソース電極22及びドレイン電極24を形成する。これによって、スイッチング素子10が完成する。
【0046】
実施例2のように、電界緩和領域48の下端を構成するp型領域48aを形成した後に、n層のエピタキシャル成長とp型不純物のイオン注入を繰り返し実施することで電界緩和領域48を形成してもよい。実施例2の製造方法でも、電界緩和領域48の厚さのばらつきを抑制できる。
【0047】
なお、上述した実施例では、p型領域49aの形成、第2半導体層44bの形成、及び、p型領域49bの形成を実施することでディープ領域49を形成した。しかしながら、ディープ領域49は他の形成方法によって形成されてもよい。例えば、一度のイオン注入によってディープ領域49が形成されてもよい。また、上述した実施例では、ディープ領域49が電界緩和領域48に対して交差していた。しかしながら、ディープ領域49が電界緩和領域48に対して平行に伸びていてもよい。また、ディープ領域を有さないスイッチング素子において、本明細書に開示の技術により電界緩和領域を形成してもよい。
【0048】
p型領域48aは、第1p型領域の一例である。p型領域48bは、第2p型領域の一例である。p型領域49aは、第3p型領域の一例である。p型領域49aは、第4p型領域の一例である。
【0049】
以下に、本明細書に開示の技術の構成を列記する。
(構成1)
スイッチング素子の製造方法であって、
前記スイッチング素子が、
トレンチ内に配置されているゲート電極と、
前記トレンチの側面に接するn型のソース領域と、
前記ソース領域の下側で前記トレンチの前記側面に接するp型のボディ領域と、
前記ボディ領域の下側で前記トレンチの前記側面に接しており、前記トレンチの底面よりも下側まで伸びるn型のドリフト領域と、
前記トレンチの前記底面に接しており、前記ドリフト領域に接するp型の電界緩和領域、
を有し、
前記製造方法が、
n型の第1半導体層を有する半導体基板を準備する工程と、
前記第1半導体層の表面の一部にp型不純物を注入することによって、前記第1半導体層内に第1p型領域を形成する第1注入工程と、
前記第1半導体層上にn型の第2半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記第2半導体層の表面の一部にp型不純物を注入することによって、前記第2半導体層内に前記第1p型領域に繋がる第2p型領域を形成する第2注入工程であって、前記第1p型領域と前記第2p型領域によって前記電界緩和領域が形成される前記第2注入工程と、
前記第2半導体層上に第3半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記第3半導体層の表面に、前記トレンチの前記底面が前記第2p型領域内に位置するように前記トレンチを形成する工程、
を有する製造方法。
(構成2)
前記第1注入工程におけるp型不純物の注入エネルギーが、前記第2注入工程におけるp型不純物の注入エネルギーよりも低い、構成1に記載の製造方法。
(構成3)
前記第1注入工程におけるp型不純物の注入範囲の下端が、前記第2注入工程におけるp型不純物の注入範囲の下端よりも下側に位置する、構成1または2に記載の製造方法。
(構成4)
前記スイッチング素子が、
前記ボディ領域から下側に突出しており、前記電界緩和領域の下端よりも下側まで伸びるp型のディープ領域をさらに有し、
前記製造方法が、
前記第1半導体層の表面の一部にp型不純物を注入することによって、前記第1半導体層内に第3p型領域を形成する第3注入工程と、
前記第2半導体層の表面の一部にp型不純物を注入することによって、前記第2半導体層内に前記第3p型領域に繋がる第4p型領域を形成する第4注入工程であって、前記第3p型領域と前記第4p型領域によって前記ディープ領域が形成される前記第4注入工程、
をさらに有する、
構成1~3のいずれかに記載の製造方法。
【0050】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0051】
14:トレンチ、44:ドリフト領域、44a:第1半導体層、44b:第2半導体層、48:電界緩和領域、49:ディープ領域
図1
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