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特開2024-117464トランス、およびトランスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117464
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】トランス、およびトランスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/36 20060101AFI20240822BHJP
   H01F 27/26 20060101ALI20240822BHJP
   H01F 41/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01F27/36 101
H01F27/26 130Q
H01F41/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023583
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】大休寺 新
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA11
5E070AB02
5E070AB04
5E070BA06
5E070BA08
5E070DA17
(57)【要約】
【課題】一対のコアの位置ずれに起因するトランスのインダクタンスの安定性の低下を抑制する。
【解決手段】芯部11は、前後方向に延びる中空部11aを有している。導電線12は、芯部11に巻き回されている。第一コア131と第二コア132は、磁性体を含む材料により形成されている。シールドケース14は、導電性を有する材料により形成されており、トランス10の前後方向、上方向、および左右方向から第一コア131と第二コア132を包囲する箱型形状を有している。前凸部181と後凸部182は、シールドケース14の内壁面に設けられており、前後方向に沿って第一コア131と第二コア132を挟持する。左凸部183と右凸部184は、シールドケース14の内壁面に設けられており、左右方向に沿って第一コア131と第二コア132の各々を挟持する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に延びる中空部を有する芯部と、
前記芯部に巻き回されている導電線と、
前記芯部の前記第一方向における一端部から前記中空部内に延びる第一内側部分と、少なくとも前記第一方向と直交する第二方向、および前記第一方向ならびに前記第二方向と直交する第三方向から前記導電線に対向する第一外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第一コアと、
前記芯部の前記第一方向における他端部から前記中空部内に延びる第二内側部分と、前記第二方向および前記第三方向から前記導電線に対向する第二外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第二コアと、
前記第一方向、前記第二方向および前記第三方向から前記第一コアと前記第二コアを包囲する箱型形状を有しており、導電性を有する材料により形成されているシールドケースと、
前記シールドケースの内壁面に設けられており、前記第一方向に沿って前記第一コアと前記第二コアを挟持する第一挟持部材と、
前記内壁面に設けられており、前記第二方向に沿って前記第一コアと前記第二コアの各々を挟持する第二挟持部材と、
を備えている、
トランス。
【請求項2】
第一方向に延びる中空部を有する芯部と、
前記芯部に巻き回されている導電線と、
前記芯部の前記第一方向における一端部から前記中空部内に延びる第一内側部分と、少なくとも前記第一方向と直交する第二方向、および前記第一方向ならびに前記第二方向と直交する第三方向から前記導電線に対向する第一外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第一コアと、
前記芯部の前記第一方向における他端部から前記中空部内に延びる第二内側部分と、前記第二方向および前記第三方向から前記導電線に対向する第二外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第二コアと、
前記第一方向、前記第二方向および前記第三方向から前記第一コアと前記第二コアを包囲する箱型形状を有しており、導電性を有する材料により形成されているシールドケースと、
前記シールドケースの内壁面に設けられており、前記第一方向に沿って前記第一コアと前記第二コアを挟持する挟持部材と、
を備えている、
トランス。
【請求項3】
第一方向に延びる中空部を有する芯部と、
前記芯部に巻き回されている導電線と、
前記芯部の前記第一方向における一端部から前記中空部内に延びる第一内側部分と、少なくとも前記第一方向と直交する第二方向、および前記第一方向ならびに前記第二方向と直交する第三方向から前記導電線に対向する第一外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第一コアと、
前記芯部の前記第一方向における他端部から前記中空部内に延びる第二内側部分と、前記第二方向および前記第三方向から前記導電線に対向する第二外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第二コアと、
前記第一方向、前記第二方向および前記第三方向から前記第一コアと前記第二コアを包囲する箱型形状を有しており、導電性を有する材料により形成されているシールドケースと、
前記シールドケースの内壁面に設けられており、前記第二方向に沿って前記第一コアと前記第二コアの各々を挟持する挟持部材と、
を備えている、
トランス。
【請求項4】
前記挟持部材は、前記第一方向または前記第二方向から見て同じ高さ位置で前記第一コアと前記第二コアを挟持している、
請求項2または3に記載のトランス。
【請求項5】
前記第一コアの前記第一外側部分と前記第二コアの前記第二外側部分の各々は、前記内壁面に対向する丸角部を有している、
請求項1から3のいずれか一項に記載のトランス。
【請求項6】
前記シールドケースは、絞り加工によりスリットレスに形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のトランス。
【請求項7】
前記シールドケースは、アルミニウムにより形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のトランス。
【請求項8】
第一方向に延びる中空部を有し、導電線が巻き回された芯部を用意する工程と、
第一内側部分および第一外側部分を有する第一コアを用意する工程と、
第二内側部分および第二外側部分を有する第二コアを用意する工程と、
前記第一内側部分が前記芯部の前記第一方向における一端部から前記中空部内に延びるように、かつ前記第一外側部分が少なくとも前記第一方向と直交する第二方向、および前記第一方向ならびに前記第二方向と直交する第三方向から前記導電線に対向するように前記第一コアを配置する工程と、
前記第二内側部分が前記芯部の前記第一方向における他端部から前記中空部内に延びるように、かつ前記第二外側部分が前記第二方向および前記第三方向から前記導電線に対向するように前記第二コアを配置する工程と、
前記第一方向、前記第二方向および前記第三方向から前記第一コアと前記第二コアを包囲可能な箱型形状を有しており、導電性を有する材料により形成されているシールドケースを用意する工程と、
前記シールドケースの内壁面に第一挟持部材と第二挟持部材を設ける工程と、
前記第一コアと前記第二コアの間に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤が固化する前に前記第一コアと前記第二コアが前記第一方向に沿って前記第一挟持部材に挟持され、かつ前記第一コアと前記第二コアの各々が前記第二方向に沿って前記第二挟持部材に挟持されるように、前記芯部、前記第一コア、および前記第二コアを前記シールドケース内に収容する工程と、
を含んでいる、
トランスの製造方法。
【請求項9】
第一方向に延びる中空部を有し、導電線が巻き回された芯部を用意する工程と、
第一内側部分および第一外側部分を有する第一コアを用意する工程と、
第二内側部分および第二外側部分を有する第二コアを用意する工程と、
前記第一内側部分が前記芯部の前記第一方向における一端部から前記中空部内に延びるように、かつ前記第一外側部分が少なくとも前記第一方向と直交する第二方向、および前記第一方向ならびに前記第二方向と直交する第三方向から前記導電線に対向するように前記第一コアを配置する工程と、
前記第二内側部分が前記芯部の前記第一方向における他端部から前記中空部内に延びるように、かつ前記第二外側部分が前記第二方向および前記第三方向から前記導電線に対向するように前記第二コアを配置する工程と、
前記第一方向、前記第二方向および前記第三方向から前記第一コアと前記第二コアを包囲可能な箱型形状を有しており、導電性を有する材料により形成されているシールドケースを用意する工程と、
前記シールドケースの内壁面に挟持部材を設ける工程と、
前記第一コアと前記第二コアの間に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤が固化する前に前記第一コアと前記第二コアが前記第一方向に沿って前記挟持部材に挟持されるように、前記芯部、前記第一コア、および前記第二コアを前記シールドケース内に収容する工程と、
を含んでいる、
トランスの製造方法。
【請求項10】
第一方向に延びる中空部を有し、導電線が巻き回された芯部を用意する工程と、
第一内側部分および第一外側部分を有する第一コアを用意する工程と、
第二内側部分および第二外側部分を有する第二コアを用意する工程と、
前記第一内側部分が前記芯部の前記第一方向における一端部から前記中空部内に延びるように、かつ前記第一外側部分が少なくとも前記第一方向と直交する第二方向、および前記第一方向ならびに前記第二方向と直交する第三方向から前記導電線に対向するように前記第一コアを配置する工程と、
前記第二内側部分が前記芯部の前記第一方向における他端部から前記中空部内に延びるように、かつ前記第二外側部分が前記第二方向および前記第三方向から前記導電線に対向するように前記第二コアを配置する工程と、
前記第一方向、前記第二方向および前記第三方向から前記第一コアと前記第二コアを包囲可能な箱型形状を有しており、導電性を有する材料により形成されているシールドケースを用意する工程と、
前記シールドケースの内壁面に挟持部材を設ける工程と、
前記第一コアと前記第二コアの間に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤が固化する前に前記第一コアと前記第二コアの各々が前記第二方向に沿って前記挟持部材に挟持されるように、前記芯部、前記第一コア、および前記第二コアを前記シールドケース内に収容する工程と、
を含んでいる、
トランスの製造方法。
【請求項11】
前記シールドケースは、絞り加工によりスリットレスに形成される、
請求項8から10のいずれか一項に記載のトランスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トランスに関連する。本開示は、トランスの製造方法にも関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、芯部、導電線、および一対のコアを備えたトランスを開示している。芯部は、第一方向に延びる中空部を有している。導電線は、芯部に巻き回されている。各コアは、磁性体を含む材料により形成されている。各コアは、芯部の第一方向における一端部から中空部内に延びる内側部分と、第一方向に直交する第二方向から導電線に対向する外側部分とを有している。一対のコアは、内側部分同士と外側部分同士が対向するように第一方向に配列されている。一対のコアは、テープにより固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-153757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対のコアの位置ずれに起因するトランスのインダクタンスの安定性の低下を抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示により提供される第一の態様例は、トランスであって、
第一方向に延びる中空部を有する芯部と、
前記芯部に巻き回されている導電線と、
前記芯部の前記第一方向における一端部から前記中空部内に延びる第一内側部分と、少なくとも前記第一方向と直交する第二方向、および前記第一方向ならびに前記第二方向と直交する第三方向から前記導電線に対向する第一外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第一コアと、
前記芯部の前記第一方向における他端部から前記中空部内に延びる第二内側部分と、前記第二方向および前記第三方向から前記導電線に対向する第二外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第二コアと、
前記第一方向、前記第二方向および前記第三方向から前記第一コアと前記第二コアを包囲する箱型形状を有しており、導電性を有する材料により形成されているシールドケースと、
前記シールドケースの内壁面に設けられており、前記第一方向に沿って前記第一コアと前記第二コアを挟持する挟持部材と、
を備えている。
【0006】
第一コアと第二コアの間に形成される間隙(エアギャップ)は、トランスのインダクタンスの安定性の低下をもたらす。したがって、第一コアと第二コアを強く密着させ、トランスの第一方向における両コアの位置ずれを防ぐ必要がある。
【0007】
上記の態様例に係る構成によれば、芯部、第一コア、および第二コアをシールドケースに収容すれば、挟持部材によって第一コアと第二コアが挟持され、両コアの密着状態を形成できる。これにより、トランスの第一方向における第一コアと第二コアの位置ずれに起因するインダクタンスの安定性の低下を抑制できる。
【0008】
加えて、例えば第一コアと第二コアを接着剤で固定する場合、トランスの一部品であるシールドケースに設けられた挟持部材に第一コアと第二コアの密着状態を形成する役割を担わせるので、接着剤が硬化するまで第一コアと第二コアを挟持しておく専用の治具を不要にできる。よって、トランスの製造工程と製造設備の複雑化を抑制できる。
【0009】
したがって、本開示により提供される第二の態様例は、トランスの製造方法であって、
第一方向に延びる中空部を有し、導電線が巻き回された芯部を用意する工程と、
第一内側部分および第一外側部分を有する第一コアを用意する工程と、
第二内側部分および第二外側部分を有する第二コアを用意する工程と、
前記第一内側部分が前記芯部の前記第一方向における一端部から前記中空部内に延びるように、かつ前記第一外側部分が少なくとも前記第一方向と直交する第二方向、および前記第一方向ならびに前記第二方向と直交する第三方向から前記導電線に対向するように前記第一コアを配置する工程と、
前記第二内側部分が前記芯部の前記第一方向における他端部から前記中空部内に延びるように、かつ前記第二外側部分が前記第二方向および前記第三方向から前記導電線に対向するように前記第二コアを配置する工程と、
前記第一方向、前記第二方向および前記第三方向から前記第一コアと前記第二コアを包囲可能な箱型形状を有しており、導電性を有する材料により形成されているシールドケースを用意する工程と、
前記シールドケースの内壁面に挟持部材を設ける工程と、
前記第一コアと前記第二コアの間に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤が固化する前に前記第一コアと前記第二コアが前記第一方向に沿って前記挟持部材に挟持されるように、前記芯部、前記第一コア、および前記第二コアを前記シールドケース内に収容する工程と、
を含んでいる。
【0010】
本開示により提供される第三の態様例は、トランスであって、
第一方向に延びる中空部を有する芯部と、
前記芯部に巻き回されている導電線と、
前記芯部の前記第一方向における一端部から前記中空部内に延びる第一内側部分と、少なくとも前記第一方向と直交する第二方向、および前記第一方向ならびに前記第二方向と直交する第三方向から前記導電線に対向する第一外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第一コアと、
前記芯部の前記第一方向における他端部から前記中空部内に延びる第二内側部分と、前記第二方向および前記第三方向から前記導電線に対向する第二外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第二コアと、
前記第一方向、前記第二方向および前記第三方向から前記第一コアと前記第二コアを包囲する箱型形状を有しており、導電性を有する材料により形成されているシールドケースと、
前記シールドケースの内壁面に設けられており、前記第二方向に沿って前記第一コアと前記第二コアの各々を挟持する挟持部材と、
を備えている。
【0011】
トランスの第二方向における第一コアと第二コアの軸ずれは、トランスのインダクタンスの安定性の低下をもたらす。上記の態様例に係る構成によれば、芯部、第一コア、および第二コアをシールドケースに収容すれば、挟持部材によって第一コアと第二コアが挟持され、トランスの第二方向における第一コアと第二コアの軸ずれを解消するように位置決めがなされる。これにより、トランスの第二方向における第一コアと第二コアの位置ずれに起因するインダクタンスの安定性の低下を抑制できる。
【0012】
加えて、例えば第一コアと第二コアを接着剤で固定する場合、トランスの一部品であるシールドケースに設けられた挟持部材に第一コアと第二コアの軸ずれを解消する役割を担わせるので、接着剤が硬化するまで第一コアと第二コアを挟持しておく専用の治具を不要にできる。よって、トランスの製造工程と製造設備の複雑化を抑制できる。
【0013】
したがって、本開示により提供される第四の態様例は、トランスの製造方法であって、
第一方向に延びる中空部を有し、導電線が巻き回された芯部を用意する工程と、
第一内側部分および第一外側部分を有する第一コアを用意する工程と、
第二内側部分および第二外側部分を有する第二コアを用意する工程と、
前記第一内側部分が前記芯部の前記第一方向における一端部から前記中空部内に延びるように、かつ前記第一外側部分が少なくとも前記第一方向と直交する第二方向、および前記第一方向ならびに前記第二方向と直交する第三方向から前記導電線に対向するように前記第一コアを配置する工程と、
前記第二内側部分が前記芯部の前記第一方向における他端部から前記中空部内に延びるように、かつ前記第二外側部分が前記第二方向および前記第三方向から前記導電線に対向するように前記第二コアを配置する工程と、
前記第一方向、前記第二方向および前記第三方向から前記第一コアと前記第二コアを包囲可能な箱型形状を有しており、導電性を有する材料により形成されているシールドケースを用意する工程と、
前記シールドケースの内壁面に挟持部材を設ける工程と、
前記第一コアと前記第二コアの間に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤が固化する前に前記第一コアと前記第二コアの各々が前記第二方向に沿って前記挟持部材に挟持されるように、前記芯部、前記第一コア、および前記第二コアを前記シールドケース内に収容する工程と、
を含んでいる。
【0014】
第一および第二の態様例に係る挟持部材と、第三および第四の態様例に係る挟持部材の双方が設けられる場合、例えば第一コアと第二コアを接着剤で固定する場合、当該接着剤が硬化するまでの間、トランスの第一方向における第一コアと第二コアの密着状態を形成しつつ、トランスの第二方向における第一コアと第二コアの軸ずれを解消させることができる。これにより、密着状態を形成するための専用の治具に第一コアと第二コアを保持させる際に両コアの間に軸ずれが生じる事態を回避できる。
【0015】
したがって、本開示により提供される第五の態様例は、トランスであって、
第一方向に延びる中空部を有する芯部と、
前記芯部に巻き回されている導電線と、
前記芯部の前記第一方向における一端部から前記中空部内に延びる第一内側部分と、少なくとも前記第一方向と直交する第二方向、および前記第一方向ならびに前記第二方向と直交する第三方向から前記導電線に対向する第一外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第一コアと、
前記芯部の前記第一方向における他端部から前記中空部内に延びる第二内側部分と、前記第二方向および前記第三方向から前記導電線に対向する第二外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第二コアと、
前記第一方向、前記第二方向および前記第三方向から前記第一コアと前記第二コアを包囲する箱型形状を有しており、導電性を有する材料により形成されているシールドケースと、
前記シールドケースの内壁面に設けられており、前記第一方向に沿って前記第一コアと前記第二コアを挟持する第一挟持部材と、
前記内壁面に設けられており、前記第二方向に沿って前記第一コアと前記第二コアの各々を挟持する第二挟持部材と、
を備えている。
【0016】
本開示により提供される第六の態様例は、トランスの製造方法であって、
第一方向に延びる中空部を有し、導電線が巻き回された芯部を用意する工程と、
第一内側部分および第一外側部分を有する第一コアを用意する工程と、
第二内側部分および第二外側部分を有する第二コアを用意する工程と、
前記第一内側部分が前記芯部の前記第一方向における一端部から前記中空部内に延びるように、かつ前記第一外側部分が少なくとも前記第一方向と直交する第二方向、および前記第一方向ならびに前記第二方向と直交する第三方向から前記導電線に対向するように前記第一コアを配置する工程と、
前記第二内側部分が前記芯部の前記第一方向における他端部から前記中空部内に延びるように、かつ前記第二外側部分が前記第二方向および前記第三方向から前記導電線に対向するように前記第二コアを配置する工程と、
前記第一方向、前記第二方向および前記第三方向から前記第一コアと前記第二コアを包囲可能な箱型形状を有しており、導電性を有する材料により形成されているシールドケースを用意する工程と、
前記シールドケースの内壁面に第一挟持部材と第二挟持部材を設ける工程と、
前記第一コアと前記第二コアの間に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤が固化する前に前記第一コアと前記第二コアが前記第一方向に沿って前記第一挟持部材に挟持され、かつ前記第一コアと前記第二コアの各々が前記第二方向に沿って前記第二挟持部材に挟持されるように、前記芯部、前記第一コア、および前記第二コアを前記シールドケース内に収容する工程と、
を含んでいる、
トランスの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係るトランスの構成を例示する分解斜視図である。
図2図1のトランスを上右前方向から見た外観を例示している。
図3図1のトランスを下左後方向から見た外観を例示している。
図4図1のトランスを下方から見た外観を例示している。
図5図4における線V-Vに沿って矢印方向から見た断面を例示している。
図6図1のトランスを右方から見た外観を例示している。
図7図6における線VII-VIIに沿って矢印方向から見た断面を例示している。
図8図1のトランスの製造方法を説明するための図である。
図9図1のトランスの製造方法を説明するための図である。
図10図9のシールドケースに形成される凸部の形状の一例を示している。
図11図9のシールドケースに形成される凸部の形状の別例を示している。
図12図9のシールドケースに形成される凸部の形状の別例を示している。
図13図9のシールドケースに形成される凸部の形状の別例を示している。
図14図9のシールドケースに形成される凸部の形状の別例を示している。
図15図9のシールドケースに形成される凸部の形状の別例を示している。
図16図9のシールドケースに形成される凸部の形状の別例を示している。
図17図16の凸部の外観を例示している。
図18図1から図9に係るトランスの意匠を例示する斜視図である。
図19図18のトランスの意匠を例示する正面図である。
図20図18のトランスの意匠を例示する背面図である。
図21図18のトランスの意匠を例示する平面図である。
図22図18のトランスの意匠を例示する底面図である。
図23図18のトランスの意匠を例示する左側面図である。
図24図18のトランスの意匠を例示する右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例について以下詳細に説明する。添付の図面において、矢印Fは、図示された構造の前方向を示している。矢印Bは、図示された構造の後方向を示している。矢印Uは、図示された構造の上方向を示している。矢印Dは、図示された構造の下方向を示している。矢印Rは、図示された構造の右方向を示している。矢印Lは、図示された構造の左方向を示している。これらの方向に係る表現は、説明の便宜のために用いるものであり、図示された構造の実際の使用状態における姿勢や方向を限定するものではない。
【0019】
本明細書で用いられる「前後方向」という語は、上記の前方向と後方向に沿う方向を意味している。本明細書で用いられる「上下方向」という語は、上記の上方向と下方向に沿う方向を意味している。本明細書で用いられる「左右方向」という語は、上記の左方向と右方向に沿う方向を意味している。
【0020】
本明細書で用いられる「前後方向に延びる」という表現は、前後方向に対して傾いて延びることを含み、上下方向および左右方向と比較して前後方向に近い傾きで延びることを意味する。
【0021】
本明細書で用いられる「上下方向に延びる」という表現は、上下方向に対して傾いて延びることを含み、前後方向および左右方向と比較して上下方向に近い傾きで延びることを意味する。
【0022】
本明細書で用いられる「左右方向に延びる」という表現は、左右方向に対して傾いて延びることを含み、前後方向および上下方向と比較して左右方向に近い傾きで延びることを意味する。
【0023】
図1は、一実施形態に係るトランス10の外観を例示する分解斜視図である。図2は、トランス10を上右前方向から見た外観を例示している。図3は、トランス10を下左後方向から見た外観を例示している。図4は、トランス10を下方から見た外観を例示している。図5は、図4における線V-Vに沿って矢印方向から見たトランス10の断面を例示している。図6は、トランス10を右方から見た外観を例示している。図7は、図3における線VII-VIIに沿って矢印方向から見たトランス10の断面を例示している。
【0024】
図1図5、および図7に例示されるように、トランス10は、芯部11と導電線12を備えている。芯部11は、前後方向に延びる中空部11aを有するように電気的に絶縁性を有する材料により形成されている。導電線12は、芯部11に巻き回されてコイルを形成している。前後方向は、第一方向の一例である。
【0025】
トランス10は、第一コア131を備えている。第一コア131は、磁性体を含む材料により形成されている。当該材料の例としては、フェライトが挙げられる。
【0026】
第一コア131は、第一内側部分131aと第一外側部分131bを有している。第一内側部分131aは、芯部11の前端部から中空部11a内に延びている。第一外側部分131bは、上方向と左右方向から導電線12に対向している。前端部は、芯部11の第一方向における一端部の一例である。左右方向は、第二方向の一例である。上方向は、第三方向の一例である。
【0027】
トランス10は、第二コア132を備えている。第二コア132は、磁性体を含む材料により形成されている。当該材料の例としては、フェライトが挙げられる。
【0028】
第二コア132は、第二内側部分132aと第二外側部分132bを有している。第二内側部分132aは、芯部11の後端部から中空部11a内に延びている。第二外側部分132bは、上方向と左右方向から導電線12に対向している。後端部は、芯部11の第一方向における他端部の一例である。
【0029】
図1から図7に例示されるように、トランス10は、シールドケース14を備えている。シールドケース14は、導電性を有する材料により形成されている。導電性材料の例としては、アルミニウム、銅などが挙げられる。シールドケース14は、トランス10の外部から到来するノイズとしての磁場によって導電線12に生じうる起電力を抑制するために設けられている。シールドケース14は、前後方向、上方向、および左右方向から第一コア131と第二コア132を包囲する箱型形状を有している。
【0030】
図1から図3に例示されるように、トランス10は、基台15と複数の端子16を備えている。基台15は、電気的に絶縁性を有する材料により形成されている。基台15は、芯部11と一体に成形されている。複数の端子16の各々は、導電性を有する材料により形成されている。
【0031】
複数の端子16の各々は、基台15と一体に成形されている。複数の端子16の各々は、コイル用端子161と実装用端子162を有している。芯部11に巻き回された導電線12の端部(不図示)は、コイル用端子161と電気的に接続される。実装用端子162は、トランス10が回路基板に実装される際に、当該回路基板に形成された回路要素と電気的に接続される。これにより、導電線12と回路基板上の回路要素とが電気的に接続される。
【0032】
図1に例示されるように、トランス10は、シールド板17を備えている。シールド板17は、導電性を有する材料により形成されている。好ましくは、シールド板17は、シールドケース14と同じ材料により形成されている。
【0033】
シールド板17は、第一部分17aを有している。図5に例示されるように、第一部分17aは、下方向から導電線12に対向するように配置されている。トランス10が回路基板に実装されると、第一部分17aは、導電線12と回路基板の間に配置される。
【0034】
図1図3、および図4に例示されるように、シールド板17は、左右方向に長尺な形状を有している。シールド板17は、第二部分17bと第三部分17cを有している。第二部分17bは、第一部分17aの左端から連続して延びており、シールドケース14の左側壁14aと不可分に結合されている。第三部分17cは、第一部分17aの右端から連続して延びており、シールドケース14の右側壁14bと不可分に結合されている。
【0035】
他方、基台15は、空間15aを区画する形状を有している。空間15aは、シールドケース14に結合されたシールド板17を受容可能な形状を有している。
【0036】
シールドケース14は、下方向に開口する箱型形状を有している。したがって、シールドケース14は、導電線12を下方向から覆うことができない。しかしながら、シールド板17が設けられることにより、トランス10において芯部11の径方向外側から導電線12が包囲される部分を確保できる。すなわち、シールド板17は、トランス10の下方から到来するノイズとしての磁場によって導電線12に生じうる起電力を抑制できる。
【0037】
図7に例示されるように、シールドケース14の前側壁14cの内壁面には、一対の前凸部181が設けられている。各前凸部181は、第一コア131に接している。他方、シールドケース14の後側壁14dの内壁面には、一対の後凸部182が設けられている。各後凸部182は、第二コア132に接している。
【0038】
結果として、第一コア131と第二コア132は、一対の前凸部181と一対の後凸部182により、前後方向に沿って挟持されている。一対の前凸部181と一対の後凸部182は、第一挟持部材の一例である。
【0039】
一対の前凸部181は、例えばシールドケース14の前側壁14cの外側からパンチング加工を施すことにより形成されうる。これにより、図2に例示されるように、前側壁14cには一対の凹部が形成される。
【0040】
同様に、一対の後凸部182は、例えばシールドケース14の後側壁14dの外側からパンチング加工を施すことにより形成されうる。これにより、図3に例示されるように、後側壁14dには一対の凹部が形成される。
【0041】
図8は、第一コア131と第二コア132が芯部11に装着された組立体Aを、図7から抽出して例示している。第一コア131の第一内側部分131aと第二コア132の第二内側部分132aは、芯部11の中空部11a内において前後方向に対向している。第一コア131の第一外側部分131bと第二コア132の第二外側部分132bは、芯部11の外側において前後方向に対向している。
【0042】
少なくとも第一内側部分131aと第二内側部分132aの間に接着剤が塗布された上で、組立体Aの形成がなされる。
【0043】
図9は、前凸部181と後凸部182が形成された直後のシールドケース14における図7に対応する位置の断面を例示している。トランス10の前後方向における前凸部181と後凸部182の間隔D3は、同方向における組立体Aの寸法D1よりも小さい。
【0044】
第一コア131と第二コア132の間に塗布された接着剤が硬化する前に、シールドケース14が上方から組立体Aに装着される。これにより、芯部11、第一コア131、および第二コア132がシールドケース14内に収容される。
【0045】
トランス10の前後方向における前凸部181と後凸部182の間隔D3が同方向における組立体Aの寸法D1よりも小さいので、前凸部181は、前方へ潰れるように変形しつつ、後方へ第一コア131を押圧する。同様に、後凸部182は、後方へ潰れるように変形しつつ、前方へ第二コア132を押圧する。結果として、前凸部181と後凸部182は、第一コア131と第二コア132をトランス10の前後方向に沿って挟持する。
【0046】
第一コア131と第二コア132の間に形成される間隙(エアギャップ)は、トランス10のインダクタンスの安定性の低下をもたらす。したがって、第一コア131と第二コア132を強く密着させ、トランス10の前後方向における両コアの位置ずれを防ぐ必要がある。
【0047】
本実施形態例に係る構成によれば、芯部11、第一コア131、および第二コア132をシールドケース14に収容すれば、前凸部181と後凸部182によって第一コア131と第二コア132が挟持され、両コアの密着状態を形成できる。これにより、トランス10の前後方向における第一コア131と第二コア132の位置ずれに起因するインダクタンスの安定性の低下を抑制できる。
【0048】
加えて、例えば第一コア131と第二コア132を接着剤で固定する場合、トランス10の一部品であるシールドケース14に設けられた前凸部181と後凸部182に第一コア131と第二コア132の密着状態を形成する役割を担わせるので、接着剤が硬化するまで第一コア131と第二コア132を挟持しておく専用の治具を不要にできる。したがって、トランス10の製造工程と製造設備の複雑化を抑制できる。
【0049】
図7に例示されるように、シールドケース14の左側壁14aの内壁面には、一対の左凸部183が設けられている。前側壁14c寄りの左凸部183は、第一コア131に接している。後側壁14d寄りの左凸部183は、第二コア132に接している。
【0050】
他方、シールドケース14の右側壁14bの内壁面には、一対の右凸部184が設けられている。前側壁14c寄りの右凸部184は、第一コア131に接している。後側壁14d寄りの右凸部184は、第二コア132に接している。
【0051】
結果として、第一コア131と第二コア132の各々は、左凸部183と右凸部184により、左右方向に沿って挟持されている。一対の左凸部183と一対の右凸部184は、第二挟持部材の一例である。
【0052】
一対の左凸部183は、例えばシールドケース14の左側壁14aの外側からパンチング加工を施すことにより形成されうる。これにより、図3に例示されるように、左側壁14aには一対の凹部が形成される。
【0053】
同様に、一対の右凸部184は、例えばシールドケース14の右側壁14bの外側からパンチング加工を施すことにより形成されうる。これにより、図2に例示されるように、右側壁14bには一対の凹部が形成される。
【0054】
図9に例示されるように、左凸部183と右凸部184が形成された直後においては、トランス10の左右方向における左凸部183と右凸部184の方向における間隔D4は、同方向における組立体Aの寸法D2よりも小さい。
【0055】
したがって、第一コア131と第二コア132の間に塗布された接着剤が硬化する前に、シールドケース14が上方から組立体Aに装着されると、左凸部183は、左方へ潰れるように変形しつつ、右方へ第一コア131と第二コア132を押圧する。同様に、右凸部184は、右方へ潰れるように変形しつつ、左方へ第一コア131と第二コア132を押圧する。結果として、一対の左凸部183と一対の右凸部184は、第一コア131と第二コア132をトランス10の左右方向に沿って挟持する。
【0056】
トランス10の左右方向における第一コア131と第二コア132の軸ずれは、トランス10のインダクタンスの安定性の低下をもたらす。本実施形態例に係る構成によれば、芯部11、第一コア131、および第二コア132をシールドケース14に収容すれば、左凸部183と右凸部184によって第一コア131と第二コア132が挟持され、トランス10の左右方向における第一コア131と第二コア132の軸ずれを解消するように位置決めがなされる。これにより、トランス10の左右方向における第一コア131と第二コア132の位置ずれに起因するインダクタンスの安定性の低下を抑制できる。
【0057】
加えて、例えば第一コア131と第二コア132を接着剤で固定する場合、トランス10の一部品であるシールドケース14に設けられた左凸部183と右凸部184に第一コア131と第二コア132の軸ずれを解消する役割を担わせるので、接着剤が硬化するまで第一コア131と第二コア132を挟持しておく専用の治具を不要にできる。したがって、トランス10の製造工程と製造設備の複雑化を抑制できる。
【0058】
なお、トランス10の左右方向における第一コア131と第二コア132の軸ずれを解消する位置決めができるのであれば、トランス10の左右方向における左凸部183と右凸部184の方向における間隔D4は、同方向における組立体Aの寸法D2と等しくてもよい。
【0059】
前凸部181および後凸部182の組合せと、左凸部183および右凸部184の組合せのいずれか一方は、省略されうる。しかしながら、本実施形態例のように両者が設けられていることにより、例えば第一コア131と第二コア132を接着剤で固定する場合、当該接着剤が硬化するまでの間、トランス10の前後方向における第一コア131と第二コア132の密着状態を形成しつつ、トランス10の左右方向における第一コア131と第二コア132の軸ずれを解消させることができる。これにより、密着状態を形成するための専用の治具に第一コア131と第二コア132を保持させる際に両コアの間に軸ずれが生じる事態を回避できる。
【0060】
本実施形態例のように第一コア131と第二コア132が結合される芯部11と基台15の相対位置が不変である場合、芯部11、第一コア131、および第二コア132をシールドケース14に収容すれば、第一コア131と第二コア132が前凸部181と後凸部182に挟持されることにより、トランス10の前後方向におけるシールドケース14に対する基台15の位置が定まる。
【0061】
トランス10の前後方向におけるシールドケース14と基台15の相対位置が不安定である場合、少なくとも同方向においてシールドケース14との結合のために空間15aに受容されるシールド板17と基台15との間で干渉が生じる虞がある。この干渉を避けるために、トランス10の前後方向におけるシールド板17の幅寸法を小さくする必要が生じたり、基台15に対するシールド板17の位置決め工程が複雑化したりする。
【0062】
本実施形態例に係る構成によれば、トランス10の前後方向におけるシールド板17の幅寸法を小さくする必要がないので、シールド板17の面積減によるシールド機能の低下を抑制できる。加えて、基台15に対するシールド板17の位置決め工程の複雑化を抑制できるので、効率的にトランス10を製造できる。
【0063】
同様に、芯部11、第一コア131、および第二コア132をシールドケース14に収容すれば、第一コア131と第二コア132が左凸部183と右凸部184に挟持されることにより、トランス10の左右方向におけるシールドケース14に対する基台15の位置が定まる。
【0064】
トランス10の左右方向におけるシールドケース14と基台15の相対位置が不安定である場合、少なくとも同方向においてシールドケース14との結合のために空間15aに受容されるシールド板17と基台15との間で干渉が生じる虞がある。この干渉を避けるために、シールド板17の第一部分17aにおいてトランス10の前後方向に突出する一対の突起を省略したり、シールドケース14に対するシールド板17の位置決め工程が複雑化したりする。
【0065】
本実施形態例に係る構成によれば、シールド板17の第一部分17aに設けられた突起を省略する必要がないので、シールド板17の面積減によるシールド機能の低下を抑制できる。加えて、シールドケース14に対するシールド板17の位置決め工程の複雑化を抑制できるので、効率的にトランス10を製造できる。
【0066】
図10から図17を参照しつつ、前凸部181、後凸部182、左凸部183、および右凸部184の各々の形状の例について説明する。以降の説明においては、必要に応じて前凸部181、後凸部182、左凸部183、および右凸部184を「凸部180」と総称する。
【0067】
図10は、図1から図9を参照して説明した実施形態例における凸部180の形状を例示している。本例に係る凸部180は、上下方向と左右方向または前後方向とについて対称性を有するドーム形状を呈している。
【0068】
図11は、凸部180の形状の別例を示している。本例に係る凸部180は、上下方向と左右方向または前後方向とについて対称性を有する角錐形状を呈している。
【0069】
図12は、凸部180の形状の別例を示している。本例に係る凸部180は、三角形の断面形状を有するダイがシールドケース14の側壁の外側から打ち込まれることにより形成される。凸部180における当該三角形の底辺に対応する部分は、側壁から打ち抜かれてシールドケース14の内方へ突出している。凸部180における当該三角形の残り二辺に対応する部分は、シールドケース14の内壁面に連なった状態が維持されている。
【0070】
図13は、凸部180の形状の別例を示している。本例に係る凸部180は、上下方向に長尺なドーム形状を呈している。
【0071】
図14は、凸部180の形状の別例を示している。本例に係る凸部180は、上下方向を長手方向とする長方形の断面形状を有するダイがシールドケース14の側壁の外側から打ち込まれることにより、上下方向に長尺となるように形成される。凸部180における当該長方形の長辺に対応する部分は、側壁から打ち抜かれてシールドケース14の内方へ突出している。凸部180における当該長方形の短辺に対応する部分は、シールドケース14の内壁面に連なった状態が維持されている。
【0072】
本例に係る凸部180は、上下方向を長手方向とする長方形の断面形状を有するダイがシールドケース14の側壁の外側から打ち込まれることにより、上下方向に長尺な片持ち梁形状を呈するように形成される。凸部180における当該長方形の長辺に対応する部分および上側の短辺に対応する部分は、側壁から打ち抜かれてシールドケース14の内方へ突出している。凸部180における当該長方形の下側の短辺に対応する部分は、シールドケース14の内壁面に連なった状態が維持されている。
【0073】
図1から図9を参照して説明した実施形態例においては、シールドケース14の右側壁14bに一対の右凸部184が設けられている。一方の右凸部184は第一コア131に接触しており、他方の右凸部184は第二コア132に接触している。しかしながら、図16に例示されるように、トランス10の前後方向に長尺な形状を有する単一の右凸部184が右側壁14bに設けられてもよい。図17は、当該単一の右凸部184をシールドケース14の内方から見た外観を例示している。この場合、当該単一の右凸部184は、第一コア131と第二コア132の双方に接触している。図示を省略するが、トランス10の前後方向に長尺な形状を有する単一の左凸部183が左側壁14aに設けられうる。
【0074】
図1から図9を参照して説明した一対の左凸部183と一対の右凸部184の少なくとも一方を、上記のように第一コア131と第二コア132に跨るように前後方向に延びる単一の凸部として構成することにより、トランス10の左右方向における第一コア131と第二コア132の位置を一括して調節できる。これにより、同方向における第一コア131と第二コア132の軸ずれの解消を促しやすくできる。
【0075】
図1図5に例示されるように、第一コア131の第一外側部分131bにおけるシールドケース14の前側壁14cに対向する角部は、湾曲面を有する丸角部131cとして形成されている。同様に、第二コア132の第二外側部分132bにおけるシールドケース14の後側壁14dに対向する角部は、湾曲面を有する丸角部132cとして形成されている。
【0076】
このような構成によれば、シールドケース14が上方から装着される際に前凸部181と後凸部182がそれぞれ丸角部131cと丸角部132cの湾曲面に案内されうる。よって、トランス10の前後方向から第一コア131と第二コア132を挟持する位置へ前凸部181と後凸部182を円滑に導くことができる。加えて、第一コア131と第二コア132の少なくとも一方とシールドケース14の干渉に起因する前凸部181と後凸部182の少なくとも一方の不慮の変形を抑制できるので、第一コア131と第二コア132に対するトランス10の前後方向に係る位置規制能力の低下を抑制できる。
【0077】
図1に例示されるように、第一コア131の第一外側部分131bにおけるシールドケース14の左側壁14aに対向する角部は、湾曲面を有する丸角部131dとして形成されている。第一コア131の第一外側部分131bにおけるシールドケース14の右側壁14bに対向する角部は、湾曲面を有する丸角部131eとして形成されている。
【0078】
このような構成によれば、シールドケース14が上方から装着される際に左凸部183と右凸部184がそれぞれ丸角部131dと丸角部131eの湾曲面に案内されうる。よって、トランス10の左右方向から第一コア131を挟持する位置へ左凸部183と右凸部184を円滑に導くことができる。加えて、第一コア131とシールドケース14の干渉に起因する左凸部183と右凸部184の少なくとも一方の不慮の変形を抑制できるので、第一コア131に対するトランス10の左右方向に係る位置規制能力の低下を抑制できる。
【0079】
同様に、第二コア132の第二外側部分132bにおけるシールドケース14の左側壁14aに対向する角部は、湾曲面を有する丸角部132dとして形成されている。第二コア132の第二外側部分132bにおけるシールドケース14の右側壁14bに対向する角部は、湾曲面を有する丸角部132eとして形成されている。
【0080】
このような構成によれば、シールドケース14が上方から装着される際に左凸部183と右凸部184がそれぞれ丸角部132dと丸角部132eの湾曲面に案内されうる。よって、トランス10の左右方向から第二コア132を挟持する位置へ左凸部183と右凸部184を円滑に導くことができる。加えて、第二コア132とシールドケース14の干渉に起因する左凸部183と右凸部184の少なくとも一方の不慮の変形を抑制できるので、第二コア132に対するトランス10の左右方向に係る位置規制能力の低下を抑制できる。
【0081】
シールドケース14は、絞り加工によりスリットレスの箱型形状を有するように形成されうる。換言すると、シールドケース14は、板材を絞り加工することによって形成されたワンピース部品でありうる。本明細書で用いられる「ワンピース部品」という語は、モノリシックな構造を有する部品を意味している。「ワンピース部品」という語は、各種の手法により複数の部品が結合されることによって一体化されている部品と区別する意味で用いられる。各種の手法の例としては、接着、接合、溶着、溶接、係合、嵌合、螺合などが挙げられる。
【0082】
このような構成によれば、シールドケース14の剛性を高めることができるので、要求される第一コア131と第二コア132に対する挟持力の提供と維持を容易化できる。加えて、シールドケース14の凸部180に対する相対的な剛性と高めることができるので、シールドケース14を第一コア131と第二コア132に装着する際に、凸部180のみの変形が促される。結果として、芯部11、第一コア131、および第二コア132をシールドケース14内に収容する工程を円滑に遂行できる。
【0083】
これまで参照した各構成は、本開示の理解を容易にするための例示にすぎない。各構成例は、本開示の趣旨の範囲内において適宜の変更や他の構成例との組合せがなされうる。
【0084】
上記の実施形態において、一対の前凸部181と一対の後凸部182は、トランス10の前後方向または左右方向から見て同じ高さ位置で第一コア131と第二コア132を挟持している。しかしながら、トランス10の前後方向から第一コア131と第二コア132に対して対称的な挟持力を加えることができるのであれば、各凸部の位置は適宜に変更されうる。
【0085】
上記の実施形態において、一対の左凸部183と一対の右凸部184は、トランス10の前後方向または左右方向から見て同じ高さ位置で第一コア131と第二コア132を挟持している。しかしながら、トランス10の左右方向から第一コア131と第二コア132に対して対称的な挟持力を加えることができるのであれば、各凸部の位置は適宜に変更されうる。
【0086】
上記の実施形態例において、前凸部181、後凸部182、左凸部183、および右凸部184の各々は、シールドケース14に機械的加工を施すことによりその一部として形成されている。しかしながら、第一コア131と第二コア132に対して所望の挟持能力を提供できるのであれば、別体として提供された前凸部181、後凸部182、左凸部183、および右凸部184の少なくとも一つがシールドケース14に装着されてもよい。
【0087】
スリットレスな箱型形状を有するシールドケース14を提供できるのであれば、絞り加工以外の製法も採用されうる。一例として、板材を折り曲げ加工して端面同士を接合することによってシールドケース14が形成されてもよい。別例として、ダイキャスト製法により、銅合金やアルミニウム合金等のシールドケース14が形成されてもよい。この製法は生産性に優れているので、絞り加工により形成されたシールドケース14と同様の形状に形成することにより所望の特性を確保しつつ、製造コストの上昇を抑制できる。
【0088】
図1から図9を参照して説明した実施形態例に係るトランスの意匠を、図18から図24に例示する。図18は斜視図である。図19は正面図である。図20は背面図である。図21は平面図である。図22は底面図である。図23は左側面図である。図24は右側面図である。
【0089】
以下に列挙される各構成もまた、本開示の一部を構成する。

項目1:
第一方向に延びる中空部を有する芯部と、
前記芯部に巻き回されている導電線と、
前記芯部の前記第一方向における一端部から前記中空部内に延びる第一内側部分と、少なくとも前記第一方向と直交する第二方向、および前記第一方向ならびに前記第二方向と直交する第三方向から前記導電線に対向する第一外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第一コアと、
前記芯部の前記第一方向における他端部から前記中空部内に延びる第二内側部分と、前記第二方向および前記第三方向から前記導電線に対向する第二外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第二コアと、
前記第一方向、前記第二方向および前記第三方向から前記第一コアと前記第二コアを包囲する箱型形状を有しており、導電性を有する材料により形成されているシールドケースと、
前記シールドケースの内壁面に設けられており、前記第一方向に沿って前記第一コアと前記第二コアを挟持する第一挟持部材と、
前記内壁面に設けられており、前記第二方向に沿って前記第一コアと前記第二コアの各々を挟持する第二挟持部材と、
を備えている、
トランス。

項目2:
第一方向に延びる中空部を有する芯部と、
前記芯部に巻き回されている導電線と、
前記芯部の前記第一方向における一端部から前記中空部内に延びる第一内側部分と、少なくとも前記第一方向と直交する第二方向、および前記第一方向ならびに前記第二方向と直交する第三方向から前記導電線に対向する第一外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第一コアと、
前記芯部の前記第一方向における他端部から前記中空部内に延びる第二内側部分と、前記第二方向および前記第三方向から前記導電線に対向する第二外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第二コアと、
前記第一方向、前記第二方向および前記第三方向から前記第一コアと前記第二コアを包囲する箱型形状を有しており、導電性を有する材料により形成されているシールドケースと、
前記シールドケースの内壁面に設けられており、前記第一方向に沿って前記第一コアと前記第二コアを挟持する挟持部材と、
を備えている、
トランス。

項目3:
第一方向に延びる中空部を有する芯部と、
前記芯部に巻き回されている導電線と、
前記芯部の前記第一方向における一端部から前記中空部内に延びる第一内側部分と、少なくとも前記第一方向と直交する第二方向、および前記第一方向ならびに前記第二方向と直交する第三方向から前記導電線に対向する第一外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第一コアと、
前記芯部の前記第一方向における他端部から前記中空部内に延びる第二内側部分と、前記第二方向および前記第三方向から前記導電線に対向する第二外側部分とを有しており、磁性体を含む材料により形成されている第二コアと、
前記第一方向、前記第二方向および前記第三方向から前記第一コアと前記第二コアを包囲する箱型形状を有しており、導電性を有する材料により形成されているシールドケースと、
前記シールドケースの内壁面に設けられており、前記第二方向に沿って前記第一コアと前記第二コアの各々を挟持する挟持部材と、
を備えている、
トランス。

項目4:
前記挟持部材は、前記第一方向または前記第二方向から見て同じ高さ位置で前記第一コアと前記第二コアを挟持している、
項目2または3に記載のトランス。

項目5:
前記第一コアの前記第一外側部分と前記第二コアの前記第二外側部分の各々は、前記内壁面に対向する丸角部を有している、
項目1から4のいずれか一項に記載のトランス。

項目6:
前記シールドケースは、絞り加工によりスリットレスに形成されている、
項目1から5のいずれか一項に記載のトランス。

項目7:
前記シールドケースは、アルミニウムにより形成されている、
項目1から6のいずれか一項に記載のトランス。
【符号の説明】
【0090】
10:トランス、11:芯部、11a:中空部、12:導電線、131:第一コア、131a:第一内側部分、131b:第一外側部分、131c:丸角部、131d:丸角部、131e:丸角部、132:第二コア、132a:第二内側部分、132b:第二外側部分、132c:丸角部、132d:丸角部、132e:丸角部、14:シールドケース、181:前凸部、182:後凸部、183:左凸部、184:右凸部
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