IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミツミ電機株式会社の特許一覧

特開2024-117466基板実装部品、および基板実装部品の製造方法
<>
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図1
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図2
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図3
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図4
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図5
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図6
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図7
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図8
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図9
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図10
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図11
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図12
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図13
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図14
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図15
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図16
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図17
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図18
  • 特開-基板実装部品、および基板実装部品の製造方法 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117466
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】基板実装部品、および基板実装部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/28 20060101AFI20240822BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240822BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20240822BHJP
   H01F 41/10 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01F27/28 128
H01F27/29 S
H01F30/10 F
H01F41/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023585
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】大休寺 新
【テーマコード(参考)】
5E043
5E062
【Fターム(参考)】
5E043AB01
5E043EA01
5E043EA05
5E043EA06
5E043EB03
5E043EB05
5E062FG02
5E062FG04
5E062FG12
(57)【要約】
【課題】導電不良に起因する基板実装部品の性能低下を抑制する。
【解決手段】コイル用端子161は、回路基板に形成されている接点と電気的に接続される。コイルの導電線12は、コイル用端子161に溶接されて被溶接部Wを形成している。導電線12は、複数の第一層ターン121を形成するように第一方向に巻き回され、続いて複数の第一層ターン121が並ぶ方向と交差するように延びる凸部161aにおいて巻き回し方向が反転され、かつ複数の第一層ターン121の少なくとも一部を覆うように当該第一方向と反対の第二方向に巻き回されることにより複数の第二層ターンを形成している。複数の第二層ターン122に含まれる少なくとも最終ターン122aは、被溶接部Wから離れている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に実装される基板実装部品であって、
前記回路基板に形成されている接点と電気的に接続される複数の導電端子と、
導電線と、
を備えており、
前記導電線は、前記複数の導電端子の各々に接合されて被接合部を形成しており、
前記複数の導電端子の少なくとも一つにおいて、前記導電線は、
複数の第一層ターンを形成するように第一方向に巻き回され、
続いて当該導電端子における当該複数の第一層ターンが並ぶ方向と交差するように延びる面において巻き回し方向が反転され、
かつ当該複数の第一層ターンの少なくとも一部を覆うように当該第一方向と反対の第二方向に巻き回されることにより複数の第二層ターンを形成しており、
前記複数の第二層ターンに含まれる少なくとも最終ターンは、前記被接合部から離れている、
基板実装部品。
【請求項2】
前記複数の第二層ターンの少なくとも一つを形成する巻線は、前記複数の第一層ターンのうち隣接する二つを形成する巻線の間に沿って巻き回されている、
請求項1に記載の基板実装部品。
【請求項3】
前記導電線の巻き回し方向は、前記導電端子に形成された凸部と凹部の少なくとも一方を用いて反転されている、
請求項1に記載の基板実装部品。
【請求項4】
前記凸部と前記凹部の少なくとも一方は、前記導電端子の先端面とは異なる側面に形成されている、
請求項3に記載の基板実装部品。
【請求項5】
前記導電線は、トランスの一部である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の基板実装部品。
【請求項6】
回路基板に実装される基板実装部品の製造方法であって、
各々が前記回路基板に形成されている接点と電気的に接続される複数の導電端子を用意する工程と、
前記複数の導電端子の各々に導電線を巻き付ける工程と、
前記複数の導電端子の各々に導電線を接合する工程と、
を含んでおり、
前記複数の導電端子の少なくとも一つにおいて、前記導電線は、
複数の第一層ターンを形成するように第一方向に巻き回され、
続いて当該導電端子における当該複数の第一層ターンが並ぶ方向と交差するように延びる面において巻き回し方向が反転され、
かつ当該複数の第一層ターンの少なくとも一部を覆うように当該第一方向と反対の第二方向に巻き回されることにより複数の第二層ターンを形成し、
前記接合する工程により形成される被接合部は、前記複数の第二層ターンに含まれる少なくとも最終ターンから離れている、
基板実装部品の製造方法。
【請求項7】
前記導電線は、前記複数の導電端子の各々に溶接される、
請求項6に記載の基板実装部品の製造方法。
【請求項8】
前記複数の第二層ターンの少なくとも一つを形成する巻線は、前記複数の第一層ターンのうち隣接する二つを形成する巻線の間に沿って巻き回される、
請求項6に記載の基板実装部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路基板に実装される基板実装部品に関連する。本開示は、基板実装部品の製造方法にも関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基板実装部品の一例としてのトランスを開示している。当該トランスは、基台を備えている。基台は、導電端子を支持している。導電端子は、第一部分と第二部分を有している。第一部分は、回路基板に形成された接点と電気的に接続される。トランスに用いられている導電線は、第二部分に巻き回される。はんだ付けやレーザ溶接を通じて導電線と第二部分との電気的接続がなされることにより、導電線と接点との電気的接続が確立される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-102703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電不良に起因する基板実装部品の性能低下を抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示により提供される態様例の一つは回路基板に実装される基板実装部品であって、
前記回路基板に形成されている接点と電気的に接続される複数の導電端子と、
導電線と、
を備えており、
前記導電線は、前記複数の導電端子の各々に接合されて被接合部を形成しており、
前記複数の導電端子の少なくとも一つにおいて、前記導電線は、
複数の第一層ターンを形成するように第一方向に巻き回され、
続いて当該導電端子における当該複数の第一層ターンが並ぶ方向と交差するように延びる面において巻き回し方向が反転され、
かつ当該複数の第一層ターンの少なくとも一部を覆うように当該第一方向と反対の第二方向に巻き回されることにより複数の第二層ターンを形成しており、
前記複数の第二層ターンに含まれる少なくとも最終ターンは、前記被接合部から離れている。
【0006】
本開示により提供される態様例の一つは、回路基板に実装される基板実装部品の製造方法であって、
各々が前記回路基板に形成されている接点と電気的に接続される複数の導電端子を用意する工程と、
前記複数の導電端子の各々に導電線を巻き付ける工程と、
前記複数の導電端子の各々に導電線を接合する工程と、
を含んでおり、
前記複数の導電端子の少なくとも一つにおいて、前記導電線は、
複数の第一層ターンを形成するように第一方向に巻き回され、
続いて当該導電端子における当該複数の第一層ターンが並ぶ方向と交差するように延びる面において巻き回し方向が反転され、
かつ当該複数の第一層ターンの少なくとも一部を覆うように当該第一方向と反対の第二方向に巻き回されることにより複数の第二層ターンを形成し、
前記接合する工程により形成される被接合部は、前記複数の第二層ターンに含まれる少なくとも最終ターンから離れている。
【0007】
上記の各態様例に係る構成によれば、第二層ターンを形成する導電線が延びる方向を第一層ターンを形成する導電線が延びる方向に一致させることができる。これにより、隣接する二つの第一層ターンの間に沿って第二層ターンを巻き回すことができ、導電性の幅方向への横滑りを抑制できる。結果として、巻線状態の安定性を維持しやすくなる。
【0008】
加えて、複数の第二層ターンに含まれる少なくとも最終ターンの一部が被接合部から離れているので、他の導電端子への中継に供されている導電線の一部を変位させるような応力が相対的に剛性が高い被接合部との接続部に伝わることを抑制できる。結果として、当該応力に起因して導電線が破断する事態の発生を抑制できる。
【0009】
したがって、導電不良に起因する基板実装部品の性能低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るトランスの構成を例示する分解斜視図である。
図2図1のトランスを上右前方向から見た外観を例示している。
図3図1のトランスを下左後方向から見た外観を例示している。
図4図1のトランスを下方から見た外観を例示している。
図5図4における線V-Vに沿って矢印方向から見た断面を例示している。
図6図1のトランスの製造方法を説明するための図である。
図7図1のトランスの製造方法を説明するための図である。
図8図1のトランスの製造方法を説明するための図である。
図9図1のトランスの製造方法を説明するための図である。
図10】比較例に係る製造方法を示している。
図11図1のトランスにおけるコイル用端子の形状の別例を示している。
図12図1のトランスにおけるコイル用端子の形状の別例を示している。
図13図1から図9に係るトランスの意匠を例示する斜視図である。
図14図13のトランスの意匠を例示する正面図である。
図15図13のトランスの意匠を例示する背面図である。
図16図13のトランスの意匠を例示する平面図である。
図17図13のトランスの意匠を例示する底面図である。
図18図13のトランスの意匠を例示する左側面図である。
図19図13のトランスの意匠を例示する右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例について以下詳細に説明する。添付の図面において、矢印Fは、図示された構造の前方向を示している。矢印Bは、図示された構造の後方向を示している。矢印Uは、図示された構造の上方向を示している。矢印Dは、図示された構造の下方向を示している。矢印Rは、図示された構造の右方向を示している。矢印Lは、図示された構造の左方向を示している。これらの方向に係る表現は、説明の便宜のために用いるものであり、図示された構造の実際の使用状態における姿勢や方向を限定するものではない。
【0012】
本明細書で用いられる「前後方向」という語は、上記の前方向と後方向に沿う方向を意味している。本明細書で用いられる「上下方向」という語は、上記の上方向と下方向に沿う方向を意味している。本明細書で用いられる「左右方向」という語は、上記の左方向と右方向に沿う方向を意味している。
【0013】
本明細書で用いられる「前後方向に延びる」という表現は、前後方向に対して傾いて延びることを含み、上下方向および左右方向と比較して前後方向に近い傾きで延びることを意味する。
【0014】
本明細書で用いられる「上下方向に延びる」という表現は、上下方向に対して傾いて延びることを含み、前後方向および左右方向と比較して上下方向に近い傾きで延びることを意味する。
【0015】
本明細書で用いられる「左右方向に延びる」という表現は、左右方向に対して傾いて延びることを含み、前後方向および上下方向と比較して左右方向に近い傾きで延びることを意味する。
【0016】
図1は、一実施形態に係るトランス10の外観を例示する分解斜視図である。図2は、トランス10を上右前方向から見た外観を例示している。図3は、トランス10を下左後方向から見た外観を例示している。図4は、トランス10を下方から見た外観を例示している。図5は、図4における線V-Vに沿って矢印方向から見たトランス10の断面を例示している。トランス10は、回路基板に実装される基板実装部品の一例である。
【0017】
図1図5に例示されるように、トランス10は、芯部11と導電線12を備えている。芯部11は、前後方向に延びる中空部11aを有している。導電線12は、芯部11に巻き回されてコイルを形成している。
【0018】
トランス10は、第一コア131を備えている。第一コア131は、磁性体を含む材料により形成されている。当該材料の例としては、フェライトが挙げられる。
【0019】
第一コア131は、第一内側部分131aと第一外側部分131bを有している。第一内側部分131aは、芯部11の前端部から中空部11a内に延びている。第一外側部分131bは、上方向と左右方向から導電線12に対向している。
【0020】
トランス10は、第二コア132を備えている。第二コア132は、磁性体を含む材料により形成されている。当該材料の例としては、フェライトが挙げられる。
【0021】
第二コア132は、第二内側部分132aと第二外側部分132bを有している。第二内側部分132aは、芯部11の後端部から中空部11a内に延びている。第二外側部分132bは、上方向と左右方向から導電線12に対向している。
【0022】
図1から図5に例示されるように、トランス10は、シールドケース14を備えている。シールドケース14は、導電性を有する材料により形成されている。導電性材料の例としては、アルミニウム、銅などが挙げられる。シールドケース14は、トランス10の外部から到来するノイズとしての磁場によって導電線12に生じうる起電力を抑制するために設けられている。シールドケース14は、下方向に開口する箱型形状を有することにより、前後方向、上方向、および左右方向から第一コア131と第二コア132を包囲している。
【0023】
図2図3に例示されるように、トランス10は、基台15と複数の端子16を備えている。基台15は、電気的に絶縁性を有する材料により形成されている。複数の端子16の各々は、導電性を有する材料により形成されている。
【0024】
複数の端子16の各々は、基台15と一体に成形されている。複数の端子16の各々は、コイル用端子161と実装用端子162を有している。
【0025】
芯部11に巻き回された導電線12の端部(不図示)は、コイル用端子161と電気的に接続される。実装用端子162は、トランス10が回路基板に実装される際に、当該回路基板に形成された回路要素と電気的に接続される。これにより、導電線12と回路基板上の回路要素とが電気的に接続される。実装用端子162は、導電端子の第一部分の一例である。コイル用端子161は、導電端子の第二部分の一例である。
【0026】
図1に例示されるように、トランス10は、シールド板17を備えている。シールド板17は、導電性を有する材料により形成されている。好ましくは、シールド板17は、シールドケース14と同じ材料により形成されている。
【0027】
シールド板17は、第一部分17aを有している。図5に例示されるように、第一部分17aは、上方向に導電線12と対向するように配置されている。上方向は、第二方向の一例である。トランス10が回路基板に実装されると、第一部分17aは、導電線12と回路基板の間に配置される。
【0028】
図1図3、および図4に例示されるように、シールド板17は、左右方向に延びている。シールド板17は、第二部分17bと第三部分17cを有している。第二部分17bは、第一部分17aの左端から連続して延びており、シールドケース14の左側壁14aと不可分に結合されている。第三部分17cは、第一部分17aの右端から連続して延びており、シールドケース14の右側壁14bと不可分に結合されている。
【0029】
シールドケース14は、下方向に開口する箱型形状を有している。したがって、シールドケース14は、導電線12を下方向から覆うことができない。しかしながら、シールド板17が設けられることにより、トランス10において芯部11の径方向外側から導電線12が包囲される部分を確保できる。すなわち、シールド板17は、トランス10の下方から到来するノイズとしての磁場によって導電線12に生じうる起電力を抑制できる。
【0030】
図6から図9を参照しつつ、上記のように構成されたトランス10の製造方法について説明する。
【0031】
図6に例示されるように、導電線12がコイル用端子161に巻き回される。具体的には、導電線12は、第一層ターン121と第二層ターン122を含むように、コイル用端子161に巻き回される。
【0032】
第二層ターン122は、第一層ターン121よりも外周側に位置している。第一層ターン121は、コイル用端子161の先端側から見て時計回り方向に巻き回されている。第二層ターン122は、コイル用端子161の先端側から見て反時計回り方向に巻き回されている。すなわち、第一層ターン121の巻き回し方向と、第二層ターン122の巻き回し方向は逆である。時計回り方向は、第一方向の一例である。反時計回り方向は、第二方向の一例である。
【0033】
図7に例示されるように、導電線12は、まず複数の第一層ターン121を形成するように、コイル用端子161に巻き回される。複数の第一層ターン121は、コイル用端子161の長尺方向に沿って並ぶように形成される。
【0034】
図6図7に例示されるように、コイル用端子161は、凸部161aを備えている。凸部161aは、コイル用端子161の先端面161bとは異なる側面161cに形成されている。凸部161aは、複数の第一層ターン121が並ぶ方向と交差するように延びる面を有している。複数の第一層ターン121を形成し終えた導電線12は、凸部161aに掛けられることによって巻き回し方向の反転がなされる。
【0035】
続いて、図8に例示されるように、複数の第二層ターン122を形成するように導電線12がコイル用端子161に巻き回される。複数の第二層ターン122は、コイル用端子161の長尺方向に沿って並ぶように形成される。複数の第二層ターン122は、複数の第一層ターン121の少なくとも一部を覆うように形成される。
【0036】
複数の第一層ターン121を形成し終えた導電線12は、他のコイル用端子161へ中継される。導電線12の終端が位置するコイル用端子161を除いて、上記の巻き回し方法が採用される。
【0037】
続いて、図9に例示されるように、コイル用端子161に対する導電線12の接合がなされる。本実施形態例においては、レーザ溶接により接合がなされる。レーザ溶接に代えて、ティグ溶接により接合がなされてもよい。熱溶融したコイル用端子161と導電線12は、被溶接部Wを形成する。被溶接部Wは、被接合部の一例である。
【0038】
図2図3、および図5に例示されるように、被溶接部Wは、各コイル用端子161の先端部に位置している。図9に例示されるように、複数の第二層ターン122に含まれる少なくとも最終ターン122aは、被溶接部Wから離れている。
【0039】
図10は、比較例に係る導電線12の巻き回し方法を示している。本例においては、複数の第一層ターン121が形成された後、巻き回し方向が反転されることなく、複数の第二層ターン122が形成されている。
【0040】
この巻き回し方法によると、第二層ターン122を形成する導電線12が延びる方向が第一層ターン121を形成する導電線12が延びる方向と交差する。この場合、第一層ターン121に重なっている第二層ターン122が導電線12の幅方向へ横滑りしやすいので、巻線状態の安定性を維持しにくい。
【0041】
加えて、複数の第二層ターン122に含まれる少なくとも最終ターン122aの一部が被溶接部Wに含まれている。この場合、他のコイル用端子161への中継に供されている導電線12の一部122bを変位させるような応力が加わった場合、相対的に剛性が高い被溶接部Wとの接続部において導電線12が破断する虞がある。
【0042】
他方、本実施形態例に係る巻き回し方法によると、第二層ターン122を形成する導電線12が延びる方向を第一層ターン121を形成する導電線12が延びる方向に一致させることができる。これにより、隣接する二つの第一層ターン121の間に沿って第二層ターン122を巻き回すことができ、導電線12の幅方向への横滑りを抑制できる。結果として、巻線状態の安定性を維持しやすくなる。
【0043】
加えて、複数の第二層ターン122に含まれる少なくとも最終ターン122aの一部が被溶接部Wから離れているので、他のコイル用端子161への中継に供されている導電線12の一部122bを変位させるような応力が相対的に剛性が高い被溶接部Wとの接続部に伝わることを抑制できる。結果として、当該応力に起因して導電線12が破断する事態の発生を抑制できる。
【0044】
したがって、導電不良に起因するトランス10の性能低下を抑制できる。
【0045】
図11は、コイル用端子161の形状の別例を示している。本例においては、コイル用端子161の先端面161bに凹部161dが形成されている。凹部161dは、複数の第一層ターン121が並ぶ方向と交差するように延びる面を有している。本例においても、当該面において導電線12の巻き回し方向の反転がなされている。
【0046】
すなわち、導電線12の巻き回し方向の反転を行なうために複数の第一層ターン121が並ぶ方向と交差するように延びる面を形成できるのであれば、凸部と凹部の少なくとも一方がコイル用端子161における適宜の位置に設けられうる。
【0047】
図12は、コイル用端子161の形状の別例を示している。本例においては、コイル用端子161の先端面161bにて導電線12の巻き回し方向の反転がなされている。先端面161bは、複数の第一層ターン121が並ぶ方向と交差するように延びる面の一例である。すなわち、導電線12の巻き回し方向の反転を行なうために、必ずしも凸部と凹部の少なくとも一方が設けられることを要しない。
【0048】
これまで参照した各構成は、本開示の理解を容易にするための例示にすぎない。各構成例は、本開示の趣旨の範囲内において適宜の変更や他の構成例との組合せがなされうる。
【0049】
上記の実施形態例においては、溶接によりコイル用端子161と導電線12の接合がなされている。しかしながら、はんだによりコイル用端子161と導電線12の接合がなされてもよい。この場合、固化したはんだフィレットが、上記の被溶接部Wに対応する。固化したはんだフィレットは、被接合部の一例である。
【0050】
回路基板に形成されている接点と電気的に接続される複数の導電端子を有しており、当該導電端子に導電線が巻き回される構成を有しているのであれば、適宜の基板実装部品に上記した導電線の巻き回し方法を適用可能である。そのような基板実装部品の例としては、モータやアクチュエータが挙げられる。
【0051】
図1から図9を参照して説明した実施形態例に係るトランスの意匠を、図13から図19に例示する。図13は斜視図である。図14は正面図である。図15は背面図である。図16は平面図である。図17は底面図である。図18は左側面図である。図19は右側面図である。
【0052】
以下に列挙される各構成もまた、本開示の一部を構成する。

項目1:
回路基板に実装される基板実装部品であって、
前記回路基板に形成されている接点と電気的に接続される複数の導電端子と、
導電線と、
を備えており、
前記導電線は、前記複数の導電端子の各々に接合されて被接合部を形成しており、
前記複数の導電端子の少なくとも一つにおいて、前記導電線は、
複数の第一層ターンを形成するように第一方向に巻き回され、
続いて当該導電端子における当該複数の第一層ターンが並ぶ方向と交差するように延びる面において巻き回し方向が反転され、
かつ当該複数の第一層ターンの少なくとも一部を覆うように当該第一方向と反対の第二方向に巻き回されることにより複数の第二層ターンを形成しており、
前記複数の第二層ターンに含まれる少なくとも最終ターンは、前記被接合部から離れている、
基板実装部品。

項目2:
前記複数の第二層ターンの少なくとも一つを形成する巻線は、前記複数の第一層ターンのうち隣接する二つを形成する巻線の間に沿って巻き回されている、
項目1に記載の基板実装部品。

項目3:
前記導電線の巻き回し方向は、前記導電端子に形成された凸部と凹部の少なくとも一方を用いて反転されている、
項目1または2に記載の基板実装部品。

項目4:
前記凸部と前記凹部の少なくとも一方は、前記導電端子の先端面とは異なる側面に形成されている、
項目3に記載の基板実装部品。

項目5:
前記導電線は、トランスの一部である、
項目1から4のいずれか一項に記載の基板実装部品。
【符号の説明】
【0053】
10:トランス、12:導電線、121:第一層ターン、122:第二層ターン、122a:最終ターン、161:コイル用端子、161a:凸部、161b:先端面、161c:側面、161d:凹部、W:被溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19