(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117485
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】建物の基礎構造および基礎構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/48 20060101AFI20240822BHJP
E02D 27/08 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
E02D27/48
E02D27/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023612
(22)【出願日】2023-02-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔公開場所〕 東京都中央区明石町 〔公開時〕 令和4年6月
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(74)【復代理人】
【識別番号】100229091
【弁理士】
【氏名又は名称】山路 英洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
(72)【発明者】
【氏名】佐野 公俊
(72)【発明者】
【氏名】上野 泰永
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA41
(57)【要約】
【課題】既存地下躯体の内部を埋め戻して支持地盤とする場合に、支持地盤の強度や耐久性等を容易に確保できる建物の基礎構造等を提供する。
【解決手段】建物2の基礎構造1では、床体111とその外周部の壁体112とを有する既存地下躯体11の壁体112の内側が埋戻材13で充填される。埋戻材13は流動性を有する材料であり、埋戻材13の上方の建物2と、壁体112の上部とが補強床3で連結される。建物2は埋戻材13の上面に設けられ、補強床3は建物2と壁体112の間に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床体とその外周部の壁体とを有する既存地下躯体の前記壁体の内側が埋戻材で充填され、
前記埋戻材は流動性を有する材料であり、
前記埋戻材の上方の建物と、前記壁体の上部とが連結部で連結されたことを特徴とする建物の基礎構造。
【請求項2】
前記建物は前記埋戻材の上面に設けられ、
前記連結部である補強床が、前記建物と前記壁体の間に設けられたことを特徴とする請求項1記載の基礎構造。
【請求項3】
前記連結部である補強床が前記埋戻材の上面に設けられ、
前記建物は前記補強床の上面に設けられたことを特徴とする請求項1記載の基礎構造。
【請求項4】
前記壁体の外側に位置する地盤の地下水位以深の土層の細粒分含有率が35%以下であることを特徴とする請求項1記載の基礎構造。
【請求項5】
前記補強床は、版状部分の外周部の下面に、平面において前記壁体に沿って延びる梁状部分を一体化したものであり、
前記梁状部分が前記壁体の上部に接合されることを特徴とする請求項2または請求項3記載の基礎構造。
【請求項6】
前記補強床と前記建物が、接合材により一体化されることを特徴とする請求項2または請求項3記載の基礎構造。
【請求項7】
床体とその外周部の壁体とを有する既存地下躯体の前記壁体の内側が流動性を有する埋戻材で充填された状態で、前記埋戻材の上方に建物を構築する際に、前記建物と前記壁体の上部とを連結部で連結することを特徴とする基礎構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋戻しを行った既存地下躯体の内部を支持地盤とする建物の基礎構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
耐圧版や土圧壁などの既存地下躯体が壊されることなく地下に残されたまま、その内部に砕石や躯体ガラ等の埋戻材が充填され、地表面にアスファルト舗装等がなされて駐車場等の用途に用いられている埋戻箇所(土地)がある。
【0003】
また特許文献1には、建築費のコストダウン化を目的に、旧建物の地下構造部を旧建物の解体コンクリートガラで埋め戻し、これをモルタル等で固結させて支持地盤とし、その上に新築の建物を建て上げる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の埋戻箇所に加わる鉛直荷重は、流動性を有する砕石や躯体ガラ等を通じて、既存地下躯体の土圧壁に内側からの側圧として作用する。当該側圧は、通常、土圧壁の外部の地盤から加わる側圧によって抵抗(キャンセル)される。しかしながら、土圧壁の外部が、液状化する恐れのある地盤や河川等の水域であったり、掘削等により空洞となっていたりすると、外部からの側圧が期待できない。
【0006】
埋戻箇所の用途が駐車場等である場合はともかく、特許文献1のように埋戻箇所を支持地盤として建物を新築する場合には、外部からの側圧を期待できないことが、支持地盤の強度や耐久性等における課題となる。
【0007】
上記の課題を解決し得る技術としては、砕石や破砕ガラ等の空隙を特許文献1のようにモルタル等で充填し、砕石や破砕ガラ等を固結し一体化することが考えられる。しかしながら、モルタル等の充填確認は難しく、品質の確保が困難である。
【0008】
また砕石や破砕ガラ等を撤去した後、コンクリート等で再度充填を行い、固化したコンクリート等を支持地盤として利用することも考えられる。しかしながらこの場合、支持地盤を形成するための工期が長くなる。また、砕石や破砕ガラ等の撤去、搬出(扱いとしては産業廃棄物処理等となる)が必要となるため、手間とコストがかかる。また地下にある砕石や破砕ガラ等を撤去するため、大型重機、作業構台等も必要となる。
【0009】
一方、既存地下躯体を貫通するように地上から杭を打設し、その支持力で新築の建物を支持することも考えられる。しかしながらこの場合、杭打ち工程を要する分、工期が長くなる。また既存地下躯体内部の躯体残置状況によっては躯体の撤去作業も発生し、その作業範囲も不明確で工程の予測がしづらい。さらに、狭い敷地での大型重機作業(杭打ち機による杭打ち作業等)も必要となる。
【0010】
本発明は前記の課題に鑑みてなされたものであり、既存地下躯体の内部を埋め戻して支持地盤とする場合に、支持地盤の強度や耐久性等を容易に確保できる建物の基礎構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した課題を解決するための第1の発明は、床体とその外周部の壁体とを有する既存地下躯体の前記壁体の内側が埋戻材で充填され、前記埋戻材は流動性を有する材料であり、前記埋戻材の上方の建物と、前記壁体の上部とが連結部で連結されたことを特徴とする建物の基礎構造である。
【0012】
本発明では、既存地下躯体の壁体の内側を埋戻材で充填して新築の建物の支持地盤とする場合において、既存地下躯体の壁体の上部を建物と連結することで、壁体の上部の固定度を確保することができる。これにより、既存地下躯体の壁体が片持ち架構の状態となるのを防止し、内側の埋戻材からの側圧により壁体に生じる応力を低減できる。本発明では、既存地下躯体の壁体の上部に対する補強のみ行えばよいので、埋戻材を大量に掘り返す必要はなく、既存地下躯体の内部をそのままの状態としながら地上から工事を行うことも可能であり、施工が容易になる。
【0013】
例えば、前記建物が前記埋戻材の上面に設けられ、前記連結部である補強床が、前記建物と前記壁体の間に設けられる。あるいは、前記連結部である補強床が前記埋戻材の上面に設けられ、前記建物は前記補強床の上面に設けられてもよい。
連結部としては、上記の補強床を用いることができる。前者の場合、補強床を建物と既存地下躯体の壁体との間に設けることで、建物の構築後に補強床の施工を行うことが可能になり、後者の場合、建物を補強床上に設けることで建物の構築が容易になる。
【0014】
本発明では、例えば、前記壁体の外側に位置する地盤の地下水位以深の土層の細粒分含有率が35%以下である。
本発明は、既存地下躯体の外部の地盤による側圧が一時的にあるいは長期にわたって期待できない条件下で適用することが特に有効であり、その代表的なものは、外部の地盤が上記した構成であり、液状化の恐れがある時である。
【0015】
前記補強床は、例えば版状部分の外周部の下面に、平面において前記壁体に沿って延びる梁状部分を一体化したものであり、前記梁状部分が前記壁体の上部に接合される。
上記の補強床は、梁状部分により壁体の上部の固定度を確保でき、且つ壁体の上部の曲げ応力を、梁状部分だけでなく版状部分にも伝達し、耐力の高い構成となる。
【0016】
前記補強床と前記建物が、接合材により一体化されることも望ましい。
これにより、建物と既存地下躯体の壁体との連結状態を確実なものとできる。
【0017】
第2の発明は、床体とその外周部の壁体とを有する既存地下躯体の前記壁体の内側が流動性を有する埋戻材で充填された状態で、前記埋戻材の上方に建物を構築する際に、前記建物と前記壁体の上部とを連結部で連結することを特徴とする基礎構造の施工方法である。
第2の発明は、第1の発明の基礎構造の施工方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、既存地下躯体の内部を埋め戻して支持地盤とする場合に、支持地盤の強度や耐久性等を容易に確保できる建物の基礎構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】壁体112や建物2と補強床3との接合箇所を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る建物2の基礎構造1の概略を示す図である。この基礎構造1は、既存躯体10の地下部分である既存地下躯体11の内部を埋戻材13で充填し、且つ、埋戻材13の上面に補強床3を設け、建物2と既存地下躯体11の壁体112とを補強床3により連結したものである。
【0022】
既存躯体10は、建物2の施工箇所に従前設けられていた既存建物の躯体であり、その地下部分である既存地下躯体11は、例えば鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造など、コンクリート等によって形成される。既存地下躯体11は、上面が開放された函状の躯体であり、耐圧版などの床体111と、床体111の外周部に設けられた土圧壁などの壁体112を有する。
【0023】
埋戻材13は、既存躯体10の地上部分12の解体時の破砕ガラ、砕石、砂等であるが、流動性を有する材料であれば特に限定されず、例えば粒状体や塊状体等の流動可能な材料であればよい。また本実施形態では、前記したようなモルタル等による埋戻材13の固結は行われない。
【0024】
補強床3は、埋戻材13の上面に設けられる版状の部材であり、建物2と既存地下躯体11の壁体112とを連結する連結部として機能する。本実施形態では補強床3を鉄筋コンクリート造とするが、これに限ることはない。
【0025】
建物2は、埋戻材13の上面の一部で、既存躯体10の地上部分12を撤去した空間に新築される。既存地下躯体11およびその内部の埋戻材13は、建物2の支持地盤として機能する。前記の補強床3は、建物2と既存地下躯体11の壁体112との間のみで設けられる。
【0026】
建物2の構造形式、形状等は特に限定されない。ただし、建物2に要求される基礎下端レベルは、既存地下躯体11の下端よりも浅いことが必要であり、建物2の少なくとも一部は、平面において既存地下躯体11の範囲内に位置する。
【0027】
また補強床3を含む建物2の重量W1は、埋戻材13の重量W2、および既存躯体10の撤去部分(地上部分12等)の重量W3との間に下式(1)の関係があり、
W3≧W1+W2…(1)
既存躯体10の基礎下の地盤41の支持力Sは、上記の重量W1、W2、および撤去されていない既存地下躯体11の重量W4との間に下式(2)の関係がある。
S≧W1+W2+W4…(2)
【0028】
本実施形態では、既存地下躯体11の壁体112の内側が埋戻材13で充填された状態で、埋戻材13の上面に建物2を設け、その後、建物2と壁体112の間で埋戻材13の上面に補強床3を構築する。この際、建物2と既存地下躯体11の壁体112の上部とが補強床3で連結されることで、基礎構造1が形成される。
【0029】
既存地下躯体11の壁体112は、新築の建物2による上載荷重で生じる内側の埋戻材13からの側圧に耐えながら、埋戻材13の流出を防ぐ必要があるが、仮に建物2と壁体112が補強床3によって連結されていないと、壁体112は、
図2(a)に示すように下端のみ固定した片持ち架構の状態となり、上記の側圧によって壁体112に生じる曲げ応力(壁体112が外側へ孕みだす方向に生じる応力)は大きくなる。
【0030】
一方、本実施形態では、
図2(b)に示すように、補強床3によって壁体112の上部が建物2に連結されることで、壁体112の上部も固定端となり、片持ち架構の状態が解消されることで壁体112に生じる曲げ応力が小さくなる。本実施形態では、この曲げ応力を、壁体112の短期許容応力度を超えないものとする。壁体112の短期許容応力度は、壁体112の材料や断面構成等から定まる。
【0031】
本実施形態の基礎構造1は、既存地下躯体11の外部の地盤4による側圧が一時的にあるいは長期にわたって期待できない条件下で適用することが特に有効であり、その代表的なものは、外部の地盤4が液状化する恐れのある時である。液状化する恐れのある地盤4とは、より具体的には、例えば、地下水位以深での細粒分含有率が35%以下であるような、地表面から20m程度以浅の土層である。
【0032】
図3(a)は、補強床3と既存地下躯体11の壁体112との接合箇所を示す図である。この例では、既存地下躯体11の壁体112の上部が、地中梁1122を挟んで上下に土圧壁1121を設けた構成となっている。
【0033】
また補強床3は、版状部分31の外周部の下面に、梁状部分32を一体化した構成である。梁状部分32は、平面において壁体112に沿って延びるように水平方向に設けられる。平面における梁状部分32(および壁体112)の延伸方向は、
図3(a)の紙面法線方向に対応する。
【0034】
版状部分31の外周部は壁体112まで達し、版状部分31の外側の端部は土圧壁1121の内面に接する。梁状部分32は、地中梁1122の内周部の上に載置され、地中梁1122の上面および土圧壁1121の内面に接する。土圧壁1121および地中梁1122の版状部分31や梁状部分32との接触部分には、目荒らし等による凹凸が形成されている。
【0035】
梁状部分32は、壁体112の上部に固定度を持たせ、埋戻材13からの側圧による曲げ応力を壁体112の上部に生じさせる。前記したように補強床3は鉄筋コンクリート造のものであり、版状部分31と梁状部分32には補強用の鉄筋Rが配筋されるが、一部の鉄筋R1は、土圧壁1121や地中梁1122から突出して梁状部分32内に挿入されており、これにより梁状部分32が壁体112の上部に接合され、壁体112の上部の曲げ応力が梁状部分32内の配筋に伝達される。
【0036】
また別の鉄筋R2は、梁状部分32から突出して版状部分31内に挿入されており、これにより梁状部分32と版状部分31が一体化される。そのため、壁体112の上部の曲げ応力は、梁状部分32を介して版状部分31にも伝達され、補強床3が耐力の高い構成となる。なお
図3(a)の例では、土圧壁1121から突出して版状部分31内に挿入される鉄筋R3も設けられている。
【0037】
一方、
図3(b)は補強床3と建物2との接合箇所の例であり、この例では建物2から突出する鉄筋R4(接合材)が補強床3のコンクリート内に配筋されることで、建物2と補強床3が一体化され、補強床3を介した建物2と既存地下躯体11の壁体112との連結状態を確実なものとできる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、既存地下躯体11の壁体112の内側を埋戻材13で充填して新築の建物2の支持地盤とする場合において、既存地下躯体11の壁体112の上部を建物2と連結することで、壁体112の上部の固定度を確保することができる。これにより、既存地下躯体11の壁体112が片持ち架構の状態となるのを防止し、内側の埋戻材13からの側圧により壁体112に生じる応力を低減できる。
【0039】
本実施形態では、既存地下躯体11の壁体112の上部に対する補強のみ行えばよいので、埋戻材13を大量に掘り返す必要はなく、既存地下躯体11の内部をそのままの状態としながら地上から工事を行うことも可能であり、施工が容易になる。結果、施工にかかるコストや手間、工期を抑えることができる。
【0040】
また本実施形態では、建物2と既存地下躯体11の壁体112との連結部として、前記の補強床3を建物2と壁体112との間に設けることで、建物2の構築後に補強床3の施工を行うことが可能になる。
【0041】
また補強床3は、版状部分31の外周部の下面に梁状部分32を一体化したものであり、梁状部分32が既存地下躯体11の壁体112の上部に接合されることで、壁体112の上部の固定度を確保でき、且つ壁体112の上部の曲げ応力を、梁状部分32だけでなく版状部分31にも伝達し、耐力の高い構成となる。
【0042】
しかしながら、本発明は以上の実施形態に限定されない。例えば本発明は、前記したように既存地下躯体11の外部の地盤4による側圧が一時的にあるいは長期にわたって期待できない条件下で適用することが特に有効であり、その代表的なものは、外部の地盤4に液状化の恐れがある時であるが、これに限ることはない。例えば既存地下躯体11の外部が河川等の水域であってもよく、掘削等により一時的にあるいは長期にわたって空洞となるものでもよい。
【0043】
また
図4に示すように、既存地下躯体11の内部に梁15や柱16、その他壁などの躯体が存在しても良く、いずれにせよ、既存地下躯体11の内部が埋戻材13で密実に充填された状態であれば良い。なお、充填のため、既存地下躯体11内では基本的にスラブは除去されている。
【0044】
また補強床3と既存地下躯体11の壁体112との接合箇所の構成も壁体112の形状等に応じて異なり、
図3(a)で説明したものに限ることはない。例えば建物2と壁体112の間の隙間が狭い場合は梁状部分32を省略し、版状部分31を直接壁体112に接合することもできる。また版状部分31や梁状部分32にプレストレスを導入し、耐力を向上させることも可能である
【0045】
また本実施形態では、埋戻材13の上面の一部に設けた補強床3により建物2と既存地下躯体11の壁体112とを連結しているが、連結方法はこれに限らない。例えば
図5の基礎構造1aに示すように、埋戻材13の上面全体に補強床3aを設け、建物2を、補強床3aの上面に新築してもよい。この場合、建物2の構築が容易になる。
【0046】
補強床3aと既存地下躯体11の壁体112との接合箇所については、
図3(a)と同様の構成とできる。建物2と補強床3aとは、建物2と補強床3aに亘って配筋されたせん断補強筋(不図示)等の接合材により一体化できる。
【0047】
また本実施形態では、
図6(a)に示すように、平面において、既存地下躯体11の範囲内に新築の建物2が収まっているが、
図6(b)、(c)に示すように、建物2の平面の一部が既存地下躯体11から外側にはみ出していてもよい。いずれの場合でも、建物2と既存地下躯体11の壁体112との間は、補強床3、3aによって全て覆われる。ただし、補強床3、3aを断続的に設け、その間に隙間が生じる構成とすることは可能である。
【0048】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0049】
1、1a:基礎構造
2:建物
3、3a:補強床
4:地盤
11:既存地下躯体
13:埋戻材
31:版状部分
32:梁状部分
111:床体
112:壁体
【手続補正書】
【提出日】2023-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床体とその外周部の壁体とを有する既存地下躯体の前記壁体の内側が埋戻材で充填され、
前記埋戻材は流動性を有する材料であり、
前記埋戻材の上方の建物と、前記壁体の上部とが連結部で連結された、建物の基礎構造であって、
前記基礎構造において、前記建物による上載荷重は、前記既存地下躯体と前記埋戻材によって構成された支持地盤のみで支持されることを特徴とする建物の基礎構造。
【請求項2】
前記連結部は補強床であり、
前記補強床は、版状部分のみにより構成されることを特徴とする請求項1記載の建物の基礎構造。
【請求項3】
前記連結部は補強床であり、
前記補強床は、版状部分と、前記建物と前記壁体の間に設けられた、平面において前記壁体に沿って延びる梁状部材と、を有することを特徴とする請求項1記載の建物の基礎構造。
【請求項4】
床体とその外周部の壁体とを有する既存地下躯体の前記壁体の内側が埋戻材で充填され、
前記埋戻材は流動性を有する材料であり、
前記埋戻材の上方の建物と、前記壁体の上部とが連結部で連結され、
前記建物は前記埋戻材の上面に設けられ、
前記連結部である補強床が、前記建物と前記壁体の間に設けられ、
前記補強床は、版状部分の外周部の下面に、平面において前記壁体に沿って延びる梁状部分を一体化したものであり、
前記梁状部分が前記壁体の上部に接合されることを特徴とする基礎構造。
【請求項5】
床体とその外周部の壁体とを有する既存地下躯体の前記壁体の内側が埋戻材で充填され、
前記埋戻材は流動性を有する材料であり、
前記埋戻材の上方の建物と、前記壁体の上部とが連結部で連結され、
前記連結部である補強床が前記埋戻材の上面に設けられ、
前記建物は前記補強床の上面に設けられ、
前記補強床は、版状部分の外周部の下面に、平面において前記壁体に沿って延びる梁状部分を一体化したものであり、
前記梁状部分が前記壁体の上部に接合されることを特徴とする基礎構造。
【請求項6】
床体とその外周部の壁体とを有する既存地下躯体の前記壁体の内側が流動性を有する埋戻材で充填された状態で、前記埋戻材の上方に建物を構築する際に、前記建物と前記壁体の上部とを連結部で連結する基礎構造の施工方法であって、
前記埋戻材の上面に前記建物を設ける工程と、
前記建物と前記壁体の上部とを連結するように前記連結部を構築する工程と、
を含み、
前記基礎構造において、前記建物による上載荷重は、前記既存地下躯体と前記埋戻材によって構成された支持地盤のみで支持されることを特徴とする基礎構造の施工方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
前述した課題を解決するための第1の発明は、床体とその外周部の壁体とを有する既存地下躯体の前記壁体の内側が埋戻材で充填され、前記埋戻材は流動性を有する材料であり、前記埋戻材の上方の建物と、前記壁体の上部とが連結部で連結された、建物の基礎構造であって、前記基礎構造において、前記建物による上載荷重は、前記既存地下躯体と前記埋戻材によって構成された支持地盤のみで支持されることを特徴とする建物の基礎構造である。
前記連結部は例えば補強床であり、前記補強床は、版状部分のみにより構成される。あるいは、前記補強床は、版状部分と、前記建物と前記壁体の間に設けられた、平面において前記壁体に沿って延びる梁状部材と、を有してもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
第2の発明は、床体とその外周部の壁体とを有する既存地下躯体の前記壁体の内側が埋戻材で充填され、前記埋戻材は流動性を有する材料であり、前記埋戻材の上方の建物と、前記壁体の上部とが連結部で連結され、前記建物は前記埋戻材の上面に設けられ、前記連結部である補強床が、前記建物と前記壁体の間に設けられ、前記補強床は、版状部分の外周部の下面に、平面において前記壁体に沿って延びる梁状部分を一体化したものであり、前記梁状部分が前記壁体の上部に接合されることを特徴とする基礎構造である。
第3の発明は、床体とその外周部の壁体とを有する既存地下躯体の前記壁体の内側が埋戻材で充填され、前記埋戻材は流動性を有する材料であり、前記埋戻材の上方の建物と、前記壁体の上部とが連結部で連結され、前記連結部である補強床が前記埋戻材の上面に設けられ、前記建物は前記補強床の上面に設けられ、前記補強床は、版状部分の外周部の下面に、平面において前記壁体に沿って延びる梁状部分を一体化したものであり、前記梁状部分が前記壁体の上部に接合されることを特徴とする基礎構造である。
連結部としては、上記の補強床を用いることができる。前者の場合、補強床を建物と既存地下躯体の壁体との間に設けることで、建物の構築後に補強床の施工を行うことが可能になり、後者の場合、建物を補強床上に設けることで建物の構築が容易になる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
第2、第3の発明の補強床は、梁状部分により壁体の上部の固定度を確保でき、且つ壁体の上部の曲げ応力を、梁状部分だけでなく版状部分にも伝達し、耐力の高い構成となる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
第4の発明は、床体とその外周部の壁体とを有する既存地下躯体の前記壁体の内側が流動性を有する埋戻材で充填された状態で、前記埋戻材の上方に建物を構築する際に、前記建物と前記壁体の上部とを連結部で連結する基礎構造の施工方法であって、前記埋戻材の上面に前記建物を設ける工程と、前記建物と前記壁体の上部とを連結するように前記連結部を構築する工程と、を含み、前記基礎構造において、前記建物による上載荷重は、前記既存地下躯体と前記埋戻材によって構成された支持地盤のみで支持されることを特徴とする基礎構造の施工方法である。
第4の発明は、第1の発明の基礎構造の施工方法である。