(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117486
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】耐力壁
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20240822BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20240822BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20240822BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
E04B2/56 622H
E04G23/02 E
E04B2/56 643A
E04B2/56 642H
E04B1/24 F
E04H9/02 311
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023613
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】塚田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 守
(72)【発明者】
【氏名】本田 理奈
(72)【発明者】
【氏名】杉田 朋哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 礼奈
(72)【発明者】
【氏名】大軒 健太
(72)【発明者】
【氏名】中林 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】白波瀬 真司
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 勲
【テーマコード(参考)】
2E002
2E139
2E176
【Fターム(参考)】
2E002FA02
2E002FB15
2E002FB22
2E002GA01
2E002HB16
2E002MA09
2E002MA12
2E139AB03
2E139AC33
2E139AD03
2E139AD04
2E139BA23
2E139BA24
2E139BD03
2E176AA07
2E176BB29
(57)【要約】
【課題】より強度を有する耐力壁を提供すること。
【解決手段】複数の横綴孔17を有する2本の縦フレーム材12と、2本の横フレーム材22と、が矩形に組まれ形成されるフレーム9を備える耐力壁であって、縦フレーム材12は複数の横綴孔17のうち最も下方及び上方に位置する第一横綴孔18が設けられる位置に外側に向かって突出する当接部21を有し、フレーム9は複数の固定孔58を有する被固定縦材5、57に当接部21が当接するように配置され、貫通孔41を有するスペーサー40が、縦フレーム材12の複数の横綴孔17のうち第一横綴孔18の次に下方及び上方に位置する第二横綴孔19に貫通孔41が重なるように、縦フレーム材12と、被固定縦材5、57と、の間に配置され、横綴孔17と、固定孔58と、に挿入される固定具69、70によって被固定縦材5、57に固定されることを特徴とする耐力壁。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に長尺で上端付近から下端付近までに互いに間隔を空けて水平方向に貫通する複数の横綴孔を有する2本の縦フレーム材と、水平方向に長尺な2本の横フレーム材と、が矩形に組まれ形成されるフレームを内部に備える耐力壁であって、
前記縦フレーム材は複数の前記横綴孔のうち最も下方及び上方に位置する前記横綴孔である第一横綴孔が設けられる位置に前記フレームの外側に向かって突出する当接部を有し、
前記フレームは複数の前記横綴孔に対応する複数の固定孔を有する鉛直方向に長尺な被固定縦材に前記当接部が当接するように配置され、
板状で貫通孔を有するスペーサーが、前記縦フレーム材の複数の前記横綴孔のうち前記第一横綴孔の次に下方及び上方に位置する前記横綴孔である第二横綴孔に当該スペーサーの前記貫通孔が重なるように、前記縦フレーム材と、前記被固定縦材と、の間に配置され、
前記フレームは前記横綴孔と、前記固定孔と、に挿入される固定具によって前記被固定縦材に固定されることを特徴とする耐力壁。
【請求項2】
水平せん断力を緩和するダンパーが、前記縦フレーム材の前記第一横綴孔及び前記第二横綴孔以外の複数の前記横綴孔である第三横綴孔が設けられる位置と、前記被固定縦材の前記第三横綴孔に対応する前記固定孔が設けられる位置と、の間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の耐力壁。
【請求項3】
前記縦フレーム材の下端には前記フレームを当該フレームの下方に位置する構造躯体に固定するための板状で貫通孔を有するベースプレートが配置され、
前記ベースプレートは、その上面と、前記耐力壁の厚み方向に面する前記縦フレーム材の二つの側面の下端及び前記フレームの外側に面する前記縦フレーム材の一つの側面の下端の三つの辺と、が溶接され、前記縦フレーム材に固定されることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の耐力壁。
【請求項4】
前記フレームの内側に斜めに架かる長尺なブレースを有し、
前記縦フレーム材と下方の前記横フレーム材とが成す入隅に固定されるブレースは、前記ベースプレートの上面と同じ高さ且つ前記縦フレーム材と前記被固定縦材との間の中心の位置が当該ブレースの延長線上に位置するように固定されることを特徴とする請求項3に記載の耐力壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁の一部として配置される耐力壁において、より強度を増すことを目的とした耐力壁に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、既存の建築物においてリフォームを行うことが盛んであり、壁に大開口窓などの開口部を新たに設けることや、屋内の間仕切り壁を撤去して既存の室内空間を広げることを要望する顧客がいる。しかし、開口部を新たに設けたい壁又は撤去したい壁が耐力壁である場合、その耐力壁が担っていた強度を他で補う必要があり、建築物の構造によっては上記内容のリフォームに対して制限が掛かり顧客の要望に対して十分な対応ができないことがある。
【0003】
そこで、開口部を新たに設けたい壁又は撤去したい壁が耐力壁であっても、他の既存の耐力壁の強度を向上させることで開口部を新たに設ける壁又は撤去する壁が担っていた強度を補い、建築物の構造による制限を受けることなく顧客の要望に対して十分な対応を行うことが考えられる。
【0004】
従来、耐力壁の強度を向上させる技術として特許文献1に記載されるように、土台上に基端を固定した離間する一対の柱の上端に、梁を横架して四角形の壁枠を形成し、この壁枠に四角形の面材の各辺部を複数の釘にて固定した耐力壁の構造であって、金属帯板の長手方向に複数の固定穴を穿設して補強プレートを形成し、一対の補強プレートを、面材の平行な二辺部の長手方向一部分に、釘頭部の少なくとも一部分に重ね、固定穴に挿通して面材を貫通し柱に到達させた木ねじにて固定することで既存の耐力壁の強度を向上させることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載される耐力壁の構造は、補強プレートを面材に重ねて固定するため、耐力壁の補強によって厚みが増加するため、既存の耐力壁に当該耐力壁の構造を適応すると、当該耐力壁以外の壁を含めて壁内部の納まりについて調整が必要となる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、既存の他の壁の調整や加工を必要とせずに既存の耐力壁に容易に適応可能であり、強度を向上させることができる耐力壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に掛かる耐力壁は、鉛直方向に長尺で上端付近から下端付近までに互いに間隔を空けて水平方向に貫通する複数の横綴孔を有する2本の縦フレーム材と、水平方向に長尺な2本の横フレーム材と、が矩形に組まれ形成されるフレームを内部に備える耐力壁であって、前記縦フレーム材は複数の前記横綴孔のうち最も下方及び上方に位置する前記横綴孔である第一横綴孔が設けられる位置に前記フレームの外側に向かって突出する当接部を有し、前記フレームは複数の前記横綴孔に対応する複数の固定孔を有する鉛直方向に長尺な被固定縦材に前記当接部が当接するように配置され、板状で貫通孔を有するスペーサーが、前記縦フレーム材の複数の前記横綴孔のうち前記第一横綴孔の次に下方及び上方に位置する前記横綴孔である第二横綴孔に当該スペーサーの前記貫通孔が重なるように、前記縦フレーム材と、前記被固定縦材と、の間に配置され、前記フレームは前記横綴孔と、前記固定孔と、に挿入される固定具によって前記被固定縦材に固定されることを特徴とする。
【0009】
さらに、水平せん断力を緩和するダンパーが、前記縦フレーム材の前記第一横綴孔及び前記第二横綴孔以外の複数の前記横綴孔である第三横綴孔が設けられる位置と、前記被固定縦材の前記第三横綴孔に対応する前記固定孔が設けられる位置と、の間に配置されることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記縦フレーム材の下端には前記フレームを建築物の構造躯体に固定するための板状のベースプレートが配置され、前記ベースプレートは、その上面と、前記耐力壁の厚み方向に面する前記縦フレーム材の二つの側面の下端及び前記フレームの外側に面する前記縦フレーム材の一つの側面の下端の三つの辺と、が溶接され、前記縦フレーム材に固定されることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記フレームの内側に斜めに架かる長尺なブレースを有し、前記縦フレーム材と下方の前記横フレーム材とが成す入隅に固定されるブレースは、前記ベースプレートの上面と同じ高さ且つ前記縦フレーム材と前記被固定縦材との間の中心の位置が当該ブレースの延長線上に位置するように固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る耐力壁によると、縦フレーム材はその上端付近及び下端付近から長尺方向の中央に向かって順に、縦フレーム材が当接部によって被固定縦材に当接した状態、縦フレーム材と被固定縦材との間に板状のスペーサーを備えた状態、縦フレーム材と被固定縦材との間に隙間が生じた状態、で被固定縦材に固定される。つまり、縦フレーム材は当該縦フレーム材の長尺方向の中間から上端付近及び下端付近に向かって徐々に強固に被固定縦材に固定されることになる。従って、耐力壁のフレームに外力が掛かり水平せん断力が作用した際に、縦フレーム材の下端付近及び上端付近から中間に向かうにしたがって徐々に水平せん断力を吸収するように撓むことになり、縦フレーム材が必要以上に強固に被固定縦材に固定され水平せん断力を受けきることができずに破損することがなく、耐力壁の強度を効果的に増すことができる。また、縦フレーム材の被固定縦材への固定手段によって成される本発明の耐力壁は、既存の耐力壁を本発明の耐力壁を適応することが可能であり、その際には、当該耐力壁及び当該耐力壁の縦フレーム材が固定される被固定縦材にのみ加工が必要となるが、その他の壁については加工や調整を必要とせず、容易に適応することが可能である。
【0013】
さらに、縦フレーム材の第三横綴孔が設けられる位置と、被固定縦材の第三横綴孔に対応する固定孔が設けられる位置と、の間に水平せん断力を緩和するダンパーを備えることで、被固定縦材と隙間を空けて固定される縦フレーム材の位置において、外力によって水平せん断力が作用した際に、その水平せん断力を緩和することができる。従って、縦フレーム材が必要以上に撓むことを抑制し、耐力壁の強度を向上させることができる。
【0014】
さらに、耐力壁のフレームを当該フレームの下方に位置する構造躯体に固定するためのベースプレートが縦フレーム材に強固に固定される、つまり、耐力壁のフレームに強固に固定されるため、耐力壁のフレームと当該フレームの下方に位置する構造躯体とが一体となり耐力壁のフレームの強度が増す。また、ベースプレートの上面と、耐力壁の厚み方向に面する縦フレーム材の二つの側面の下端及び耐力壁のフレームの外側に面する縦フレーム材の一つの側面の下端の三つの辺と、を溶接するだけであるため、特殊な形状のベースプレートや特殊な形状の固定具を必要とせず容易に強度を増すことができる。
【0015】
さらに、耐力壁のフレームに外力が掛かり当該フレームが歪もうとするとき、ブレースは、ベースプレートによって構造躯体に固定され、当接部によって被固定縦材に当接した状態で被固定縦材に固定される下方の隅に向かって引張又は圧縮することになる。つまり、耐力壁のフレームのうち最も頑丈である位置に向かって引張又は圧縮することになる。従って、ブレースが引張又は圧縮しようとするときに、耐力壁のフレームのうち最も頑丈である位置が当該ブレースを支持することで、耐力壁のフレームは強度を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る耐力壁を含む壁を示す正面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るブレースの固定の様子を示す斜視図である。
【
図5】リフォーム前の既存の壁を示す正面図である。
【
図8】リフォーム前のブレースの固定の様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態として以下、図面を参照しつつ説明する。ただし、以下はあくまで本発明の実施形態を例示的に示すものであり、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0018】
本実施形態では、
図5に示す既存の建築物の既存の壁1に含まれる既存の耐力壁6の強度を向上させることを目的として、既存の耐力壁6を本発明の耐力壁へ変更するものである。
【0019】
まず、既存の耐力壁6について説明する。建築物が有する壁1は、
図5に示すように、二つの耐力壁6と、その二つの耐力壁6に挟まれる開口部43と、から成り、耐力壁6はフレーム9を備え、開口部43はフレーム44を備える。
【0020】
耐力壁6のフレーム9は、
図5に示すように、鉛直方向に長尺なリップ溝形鋼である二本の縦フレーム材12と、水平方向に長尺なリップ溝形鋼である二本の横フレーム材22と、が夫々のリップ面が互いに向かい合い内側を向くようにして矩形に組まれることで形成されている。
【0021】
そして、耐力壁6のフレーム9は、
図5に示すように、当該フレーム9の内側で水平方向に架空されるようにその長尺方向の両端が二本の縦フレーム材12の夫々の長尺方向の中央に固定される長尺なリップ溝形鋼である中桟23と、その中桟23によって上下に分割された当該フレーム9の内側の夫々にX字状に交差して固定される計四本のブレース29と、そのブレース29を当該フレーム9に固定するための入隅プレート24及びブレース取付板25と、
図6に示すように縦フレーム材12の下端に固定されるベースプレート32と、
図7に示すように縦フレーム材12の上端に固定される上端プレート36と、を備えている。
【0022】
入隅プレート24は、
図5乃至
図8に示すように、板状の部材であり、縦フレーム材12と横フレーム材22とによって及び縦フレーム材12と中桟23とによって形成される入隅67の夫々に二枚の当該入隅プレート24が互いに平行となるように溶接によって固定され、
図8に示すようにその一対の入隅プレート24の互いに向かい合う面72に略板状のブレース取付板25が溶接によって固定されている。
【0023】
ブレース29は、
図5乃至
図8に示すように、長尺な棒状の部材であり、その長尺方向の中間に張力を調整可能とするターンバックル31を備え、ブレース29の長尺方向の端部がブレース取付板25に溶接によって固定されることで、耐力壁6のフレーム9の各入隅67に固定されている。
【0024】
尚、ブレース取付板25は、
図8に示すように、当該ブレース取付板25とブレース29の端部との当接面積を広くするようにブレース29の側面に嵌合する凹みである溝部27を有しており、二本のブレース29を耐力壁6のフレーム9の内側でX字状に交差させて固定するために溝部27はブレース取付板25の中央ではなく耐力壁6の厚み方向73に偏心した位置に設けられている。
【0025】
ベースプレート32は、
図6に示すように、貫通孔33を有する板状の部材であり、縦フレーム材12の下端に当該ベースプレート32の上面が当接するように配置され、縦フレーム材12の耐力壁6の厚み方向73の二つの側面15(
図8に示す)の下端と、当該ベースプレート32の上面と、が溶接されることで縦フレーム材12に固定されている。
【0026】
上端プレート36は、
図7に示すように、貫通孔37を有する板状の部材であり、縦フレーム材12の上端に当該上端プレート36の下面が当接するように配置され、縦フレーム材12の耐力壁6の厚み方向73の二つの側面15(
図8に示す)の上端と、当該上端プレート12の下面と、が溶接されることで縦フレーム材12に固定されている。
【0027】
また、
図6及び
図7に示すように、耐力壁6のフレーム9の縦フレーム材12にはその上端付近から下端付近までに互いに間隔を空けて水平方向に貫通する複数の横綴孔17が設けられている。複数の横綴孔17は、最も下方及び上方に位置する横綴孔17である第一横綴孔18と、その他の複数の横綴孔17である第三横綴孔20とに区別され、縦フレーム材12の第一横綴孔18が設けられる位置にフレーム9の外側に向かって突出する当接部21がエンボス加工によって形成されている。
【0028】
耐力壁6のフレーム9は、
図5に示すように、二本の縦フレーム材12うち一方の縦フレーム材13の当接部21が建築物の構造躯体である柱5の側面に当接し、且つ他方の縦フレーム材14の当接部21が後述する開口部43のフレーム44の縦フレーム材45に当接した状態で建築物の構造躯体である土台2の上に載置されている。
【0029】
そして、耐力壁6のフレーム9は、
図6に示すように当該フレーム9のベースプレート32の貫通孔33を通り土台2に打ち込まれた固定具であるアンカーボルト68に上方から固定具であるナット70を螺嵌させ締め付けることで土台2に固定され、
図7に示すようにH形鋼である梁3の下フランジ4に設けられた貫通孔71と上端プレート36の貫通孔37とに挿入された固定具であるボルト69の先端から固定具であるナット70を螺嵌させ締め付けることで梁3に固定され、
図6及び
図7に示すようにフレーム9の他方の縦フレーム材14の横綴孔17と後述する開口部43のフレーム44の縦フレーム材45の横綴孔46とに挿入された固定具であるボルト69の先端から固定具であるナット70を螺嵌させ締め付けることで開口部43のフレーム44の縦フレーム材45に固定され、図示しないがフレーム9の一方の縦フレーム材13の横綴孔17と柱5に設けられた横綴孔とに挿入された固定具であるボルト69の先端から固定具であるナット70を螺嵌させ締め付けることで柱5に固定されている。
【0030】
尚、
図5に示すリフォーム前の耐力壁6において、耐力壁6のフレーム9の縦フレーム材12が固定される柱5及び開口部43のフレーム44の縦フレーム材45が被固定縦材であり、縦フレーム材12が固定される開口部43のフレーム44の縦フレーム材45の横綴孔46及び縦フレーム材12が固定される柱5の横綴孔が固定孔にあたる。
【0031】
開口部43のフレーム44は、
図5に示すように、鉛直方向に長尺なリップ溝形鋼である二本の縦フレーム材45と、水平方向に長尺なリップ溝形鋼である二本の横フレーム材48と、が夫々のリップ面が互いに向かい合い内側を向くようにして矩形に組まれることで形成され、
図6に示すように縦フレーム材45の下端に固定されるベースプレート49と、
図7に示すように縦フレーム材45の上端に固定される上端プレート51と、を備えている。
【0032】
ベースプレート49は、
図6に示すように、貫通孔50を有する板状の部材であり、縦フレーム材45の下端に当該ベースプレート49の上面が当接するように配置され、縦フレーム材45の壁の厚み方向の二つの側面の下端と、当該ベースプレート49の上面と、が溶接されることで縦フレーム材45に固定されている。
【0033】
上端プレート51は、
図7に示すように、貫通孔52を有する板状の部材であり、縦フレーム材45の上端に当該上端プレート51の下面が当接するように配置され、縦フレーム材45の壁の厚み方向の二つの側面の上端と、当該上端プレート51の下面と、が溶接されることで縦フレーム材45に固定されている。
【0034】
また、開口部43のフレーム44の縦フレーム材45には、
図6及び
図7に示すように、その上端付近から下端付近までに互いに間隔を空けて水平方向に貫通する複数の横綴孔46が設けられており、最も下方及び上方に位置する横綴孔46が設けられる縦フレーム材45の位置にフレーム44の外側に向かって突出する当接部47がエンボス加工によって形成されている。
【0035】
開口部43のフレーム44は、
図5に示すように、その二本の縦フレーム材45が各耐力壁6のフレーム9の他方の縦フレーム材14に当接した状態で、建築物の構造躯体である土台2の上に載置され、そして、
図6に示すように当該フレーム44のベースプレート49の貫通孔50を通り土台2に打ち込まれた固定具であるアンカーボルト68に上方から固定具であるナット70を螺嵌させ締め付けることで土台2に固定され、
図7に示すようにH形鋼である梁3の下フランジ4に設けられた貫通孔71と上端プレート51の貫通孔52とに挿入された固定具であるボルト69の先端から固定具であるナット70を螺嵌させ締め付けることで梁3に固定され、前述のように開口部43のフレーム44の縦フレーム材45に耐力壁6のフレーム9の他方の縦フレーム材14が固定されている。
【0036】
次に、本発明の耐力壁を説明する。本実施形態では、以上で説明した既設の壁1に大開口の開口部53を新たに設けるリフォームを行うにあたり、耐力壁6のうち他方の耐力壁8を撤去し、一方の耐力壁7を本発明の耐力壁に変更する。
【0037】
まず、二つの耐力壁6のフレーム9及び既存の開口部43のフレーム44を夫々固定する固定具を外し、二つの耐力壁6のフレーム9及び既存の開口部43のフレーム44を土台2、梁3及び柱5から取り外す。そして、
図1に示すように、他方の耐力壁8のフレーム11及び既存の開口部43のフレーム44が元々配置固定されていた位置に、大開口の開口部53のフレーム54を配置する。
【0038】
大開口の開口部53のフレーム54は、
図1に示すように、鉛直方向に長尺なリップ溝形鋼である2本の縦フレーム材55と、水平方向に長尺なリップ溝形鋼である2本の横フレーム材61と、が夫々のリップ面が互いに向かい合い内側を向くようにして矩形に組まれることで形成されており、既存の開口部43のフレーム44と同様に、
図2に示すように縦フレーム材55の下端にベースプレート62を備え、
図3に示すように縦フレーム材55の上端に上端プレート64を備える。
【0039】
また、大開口の開口部53のフレーム54の縦フレーム材55には、
図2及び
図3に示すように、その上端付近から下端付近までに互いに間隔を空けて水平方向に貫通する複数の横綴孔58が設けられており、縦フレーム材55の最も下方及び上方に位置する横綴孔58が設けられる位置にフレームの外側に向かって突出する当接部60がエンボス加工によって形成されている。
【0040】
そして、大開口の開口部53のフレーム54は、
図2に示すように当該フレーム54のベースプレート62の貫通孔63を通り土台2に打ち込まれた固定具であるアンカーボルト68に上方から固定具であるナット70を螺嵌させ締め付けることで土台2に固定し、
図3に示すようにH形鋼である梁3の下フランジ4に設けられた貫通孔71と上端プレート64の貫通孔65とに挿入された固定具であるボルト69の先端から固定具であるナット70を螺嵌させ締め付けることで梁3に固定し、図示しないが当該フレーム54の縦フレーム材55のうち一方の縦フレーム材56の横綴孔58と柱5に設けられた横綴孔とに挿入された固定具であるボルト69の先端から固定具であるナット70を螺嵌させ締め付けることで柱5に固定する。
【0041】
次に、一方の耐力壁7のフレーム10の縦フレーム材12からベースプレート32を切り離し、ベースプレート32と同形状で貫通孔35を有する新たなベースプレート34を一方の耐力壁7のフレーム10の縦フレーム材12の下端に当該ベースプレート34の上面が当接するように配置し、縦フレーム材12の耐力壁6の厚み方向73の二つの側面15(
図4に示す)及び縦フレーム材12のフレーム9の外側に面する側面16(
図4に示す)の下端と、当該ベースプレート34の上面と、を溶接することで新たなベースプレート34を縦フレーム材12の下端に固定する。
【0042】
また、一方の耐力壁7のフレーム10の縦フレーム材12から上端プレート36を切り離し、上端プレート36と同形状で貫通孔39を有する新たな上端プレート38を一方の耐力壁7のフレーム10の縦フレーム材12の上端に当該上端プレート38の下面が当接するように配置し、縦フレーム材12の耐力壁6の厚み方向73の二つの側面15(
図4に示す)及びフレーム9の外側に面する側面16(
図4に示す)の上端と、当該上端プレート38の下面と、を溶接することで新たな上端プレート38を縦フレーム材12の上端に固定する。
【0043】
尚、交換前のベースプレート32及び上端プレート36の材質は鋼材規格(JIS規格)に定められる一般構造用圧延鋼材SS400であり、新たなベースプレート34及び上端プレート38の材質は鋼材規格(JIS規格)に定められる溶接構造用圧延鋼材SM490である。
【0044】
また、一方の耐力壁7のフレーム10の縦フレーム材10には、
図2に示すように下方の第一横綴孔18と、最も下方に位置する第三横綴孔20と、の間及び
図3に示すように上方の第一横綴孔18と、最も上方に位置する第三横綴孔20と、の間の夫々に水平方向に貫通する横綴孔17である第二横綴孔19を新たに設ける。さらに、当該フレーム10の縦フレーム12が固定される被固定縦材である柱5及び大開口の開口部53のフレーム54の他方の縦フレーム材57に第二横綴孔19に対応する横綴孔58を新たに設ける。
【0045】
また、一方の耐力壁7のフレーム10のブレース取付板25からブレース29を切り離し、一方の耐力壁7のフレーム10の入隅プレート24からブレース取付板25を切り離し、一方の耐力壁7のフレーム10から入隅プレート24を切り離す。そして、
図1乃至
図4に示すように、高さが150mmで横幅が90mmの略三角形状の新たな入隅プレート28を変更前の入隅プレート24と同様に一方の耐力壁7のフレーム10の各入隅67に溶接によって固定し、
図4に示すように夫々の一対の新たな入隅プレート28の互いに向かい合う面74にブレース取付板25を溶接によって固定し、そのブレース取付板25にブレース29の長尺方向の端部を溶接によって固定する。
【0046】
尚、ブレース取付板25は、
図2及び
図3に示すように、当該ブレース取付板25のブレース29が固定される反対側の端部26の位置が縦フレーム材12の上下に並ぶ第一横綴孔18と第二横綴孔19との間の高さとなるように、且つ、当該ブレース取付板25の端部26が縦フレーム材12の横綴孔17が設けられる面から少なくとも60mm離れるように、且つ、
図2に示すように、縦フレーム材12と下方の横フレーム材22との入隅67の入隅プレート28に固定されるブレース取付板25が、後述する縦フレーム12の当接部21が被固定縦材5、57に当接し配置された状態で、当該ブレース取付板25に固定されたブレース29の中心軸の延長線上Eに、ベースプレート34の上面と同じ高さ且つ縦フレーム材12と被固定縦材5、57との間の中心の位置Fが位置する角度となるように入隅プレート28に固定される。
【0047】
ここで、ブレース取付板25をその端部26の位置が縦フレーム材12の上下に並ぶ第一横綴孔18と第二横綴孔19との間の高さとなるように、且つ、縦フレーム材12の横綴孔17が設けられる面から少なくとも60mm離れるように、固定するのは、後述する縦フレーム材12を被固定縦材5、57に固定する作業において、使用する工具が横綴孔17にアクセスできるようにするためである。
【0048】
そして、一方の耐力壁7のフレーム10を、
図1に示すように、当該フレーム10の一方の縦フレーム材13の当接部21が被固定縦材である柱5に当接し、他方の縦フレーム材14の当接部21が被固定縦材である大開口の開口部53のフレーム54の他方の縦フレーム材57の当接部60に当接するように元の位置に再度配置する。
【0049】
次に、一方の耐力壁7のフレーム10を土台2、梁3に固定する。尚、一方の耐力壁7のフレーム10を土台2及び梁3に固定する方法は既に説明したリフォーム前の一方の耐力壁7のフレーム10を土台2及び梁3に固定する方法と同じであるため説明は省略する。
【0050】
一方の耐力壁7のフレーム10が元の位置に再度配置された状態であるとき、当該フレーム10の縦フレーム材12は被固定縦材5、57に当接部21が当接しているため、
図2及び
図3に示すように縦フレーム材12の当接部21が設けられる位置以外の部分と、被固定縦材5、57と、の間には隙間66が生じる。そして、その隙間に二枚の板状のスペーサー40と、複数のダンパー42と、を配置した状態で一方の耐力壁7のフレーム10の縦フレーム材12を被固定縦材5、57に固定する。
【0051】
スペーサー40は、
図2及び
図3に示すように、貫通孔41を有し隙間66の幅と同じ厚みの板状の部材であり、一方のスペーサー40をその貫通孔41が縦フレーム材12の上方の第二横綴孔19と重なるように隙間66に配置し、他方のスペーサー40をその貫通孔41が縦フレーム材12の下方の第二横綴孔19と重なるように隙間66に配置する。
【0052】
ダンパー42は、
図2及び
図3に示すように、長尺な鉄鋼材が螺旋状に巻かれたスプリングスペーサーであり、複数のダンパー42を水平せん断力を緩和できるように縦フレーム材12及び被固定縦材5、57に向かって伸縮可能となるように、且つその螺旋状の中心と縦フレーム材12の各第三横綴孔20とが重なるように隙間66に配置する。
【0053】
そして、
図2及び
図3に示すように一方の耐力壁7のフレーム10の他方の縦フレーム材14の横綴孔17と、大開口の開口部53のフレーム54の他方の縦フレーム材57の横綴孔58とに挿入された固定具であるボルト69の先端から固定具であるナット70を螺嵌させ締め付けることで他方の縦フレーム材14を大開口の開口部53のフレーム54の他方の縦フレーム材57に固定し、図示しないがフレーム10の一方の縦フレーム材13の横綴孔17と柱5に設けられた横綴孔とに挿入された固定具であるボルト69の先端から固定具であるナット70を螺嵌させ締め付けることで他方の縦フレーム材14を柱5に固定する。
【0054】
尚、
図1に示す本実施形態の耐力壁7において、耐力壁7のフレーム10の縦フレーム材12が固定される柱5及び大開口の開口部53のフレーム54の他方の縦フレーム材57が被固定縦材であり、縦フレーム材12が固定される大開口の開口部53のフレーム54の他方の縦フレーム材57の横綴孔58及び柱5の横綴孔が固定孔である。
【0055】
以上のように、既存の一方の耐力壁7を本発明の耐力壁に変更することで、撤去された他方の耐力壁8が担っていた強度を一方の耐力壁7が補い、既存の壁1に大開口の開口部53を設けることができる。
【0056】
尚、本実施形態において本発明の耐力壁7の縦フレーム材12が固定される被固定縦材は大開口の開口部53のフレーム54の縦フレーム材55及び柱5であったが、本発明の被固定縦材はこれに限定されるものではなく、例えば間柱や通し柱のように鉛直方向に長尺で強度の有る部材であっても良い。
【0057】
また、本実施形態のダンパー42はバネ状のスプリングスペーサーであったが、例えばゴム製の部材等のように、水平せん断力を緩和できる部材であれば良い。
【0058】
また、本実施形態では、既存の壁1に大開口の開口部53を設けるために既存の耐力壁7を本発明の耐力壁へと変更したものであったが、例えば、建築物の室内空間の間取りを変更するリフォームにおいて室内空間を区画するための間仕切り壁である耐力壁を撤去し、間仕切り壁又は外壁である他の耐力壁を本発明の耐力壁とすることで新たに耐力壁を設けることなく、撤去対象である間仕切り壁を撤去する等にも用いることが可能であり、リフォームの自由度を高くすることができる。
【0059】
また、本実施形態では、既存の壁1のリフォームを行うにあたり既存の耐力壁7を本発明の耐力壁へと変更したものであるが、本発明の耐力壁はこれに限定されるものではなく、新設の建築物に適応されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0060】
2 土台(構造躯体)
5 柱(被固定縦材)
7 耐力壁
10 フレーム
12 縦フレーム材
22 横フレーム材
17 横綴孔
18 第一横綴孔
19 第二横綴孔
20 第三横綴孔
21 当接部
29 ブレース
E ブレースの延長線上
40 スペーサー
41 貫通孔
42 ダンパー
34 ベースプレート
35 貫通孔
15 耐力壁の厚み方向に面する縦フレーム材の面
16 フレームの外側に面する縦フレーム材の面
67 入隅
57 縦フレーム材(被固定縦材)
58 横綴孔(固定孔)
F ベースプレートの上面と同じ高さ且つ縦フレーム材と被固定縦材との間の中心の位置
68 アンカーボルト(固定具)
69 ボルト(固定具)