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特開2024-117491エクステンダーガイドおよび脊椎固定術用キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117491
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】エクステンダーガイドおよび脊椎固定術用キット
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/90 20060101AFI20240822BHJP
   A61B 17/70 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61B17/90
A61B17/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023620
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】508282465
【氏名又は名称】帝人ナカシマメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宗介
(72)【発明者】
【氏名】藤田 圭生
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL44
4C160LL63
(57)【要約】
【課題】エクステンダーをペディクルスクリューに取り付けるときにエクステンダーの軸心をペディクルスクリューのヘッドの軸心に一致させることができるエクステンダーガイドを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る、筒状のエクステンダー内に挿通される棒状のエクステンダーガイド1は、前記エクステンダーが取り付けられるペディクルスクリューのヘッドに形成された雌ネジと螺合する雄ネジ72が形成された結合部71と、前記エクステンダーと嵌合する、当該エクステンダーガイド1の軸方向において結合部71から離れた位置にあるガイド部74を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のエクステンダー内に挿通される棒状のエクステンダーガイドであって、
前記エクステンダーが取り付けられるペディクルスクリューのヘッドに形成された雌ネジと螺合する雄ネジが形成された結合部と、
前記エクステンダーと嵌合する、当該エクステンダーガイドの軸方向において前記結合部から離れた位置にあるガイド部と、
を備える、エクステンダーガイド。
【請求項2】
前記結合部を一端部に有し、前記ガイド部を他端部に有するガイドスリーブと、
前記ガイドスリーブを貫通する、前記ガイドスリーブの軸方向に摺動可能かつ前記ガイドスリーブと相対回転可能なシャフトであって、前記結合部側の先端部に前記ペディクルスクリューのヘッドに設けられたチャンネルと係合する係合部が設けられ、前記ガイド部側の基端部にグリップが固定されたシャフトと、
を備える、請求項1に記載のエクステンダーガイド。
【請求項3】
前記ガイドスリーブ内に配置されるとともに前記シャフトに貫通され、前記シャフトを前記係合部へ向かう方向に付勢するとともに前記ガイドスリーブを前記結合部から前記ガイド部へ向かう方向に付勢するコイルスプリングを備え、
前記結合部が前記ヘッドに結合されたときに、前記シャフトが前記コイルスプリングの付勢力に抗して前進限界位置よりも後退する、請求項2に記載のエクステンダーガイド。
【請求項4】
前記ガイドスリーブの長さは前記エクステンダーの長さよりも長い、請求項2に記載のエクステンダーガイド。
【請求項5】
アウタースリーブ、前記アウタースリーブの軸方向に摺動可能となるように前記アウタースリーブに保持された一対のインナーアーム、および前記一対のインナーアームと連結されるとともに前記アウタースリーブの内周面に形成された雌ネジと螺合する雄ネジが形成されたアクチュエータを含む筒状のエクステンダーと、
前記エクステンダー内に挿通される、請求項1~4の何れか一項に記載のエクステンダーガイドと、を備え、
前記エクステンダーガイドの前記ガイド部は前記アクチュエータと嵌合する、脊椎固定術用キット。
【請求項6】
前記エクステンダーガイドは、前記結合部と前記ガイド部との間に、前記アウタースリーブに設けられたスリットの幅よりも大きな直径の少なくとも1つの拡径部を含む、請求項5に記載の脊椎固定術用キット。
【請求項7】
前記アクチュエータを回転させる、前記エクステンダーガイドに挿通される中空のハンドルをさらに備える、請求項5に記載の脊椎固定術用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎固定術においてエクステンダーをペディクルスクリューに取り付ける際に使用されるエクステンダーガイド、ならびにそのエクステンダーガイドおよびエクステンダーを含む脊椎固定術用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎固定術の一つの手技では、連続して並ぶ椎弓根にペディクルスクリューがねじ込まれ、それらのペディクルスクリュー同士が脊椎ロッドにより連結される。ペディクルスクリューは、雄ネジが形成されたアンカーと、アンカーよりも太いヘッドを含む。ヘッドには当該ヘッドを横断するチャンネルが設けられ、このチャンネルに脊椎ロッドが挿入される。チャンネルに挿入された脊椎ロッドは止めネジによってヘッドに固定される。
【0003】
より詳しくは、ペディクルスクリューのヘッドは、脊椎ロッド挿入用のチャンネルを挟んで互いに対向する一対の対向壁を含み、これらの対向壁の内側面には、脊椎ロッド固定用の止めネジと螺合する雌ネジが形成されている。
【0004】
ペディクルスクリュー同士が脊椎ロッドにより連結される際、椎体間隔や脊椎の湾曲具合を調整するためにペディクルスクリューの向きや位置が調整される。このペディクルスクリューの向きや位置の調整には、ペディクルスクリューのヘッドに取り付けられてヘッドの長さを延長するエクステンダーが用いられることがある。例えば、特許文献1には、筒状のエクステンダーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第10426527号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
筒状のエクステンダーをペディクルスクリューのヘッドに取り付ける際には、棒状のエクステンダーガイドが用いられ、このエクステンダーガイドに沿ってエクステンダーをペディクルスクリューのヘッドへ近づけることがある。体内に設置されたペディクルスクリューのヘッドが確認し難いためである。
【0007】
エクステンダーガイドの使用方法としては、まずエクステンダーガイドの先端をペディクルスクリューのヘッドに設けられた脊椎ロッド挿入用のチャンネルに押し当て、その後にエクステンダーガイドにエクステンダーを挿通しながらエクステンダーをペディクルスクリューのヘッドに取り付ける。
【0008】
しかしながら、従来のエクステンダーガイドはペディクルスクリューのチャンネルに押し当てるだけのものであるので、エクステンダーガイドを使用してエクステンダーをペディクルスクリューに取り付けたときに、エクステンダーの軸心がペディクルスクリューのヘッドの軸心からずれることがある。
【0009】
そこで、本発明は、エクステンダーをペディクルスクリューに取り付けるときにエクステンダーの軸心をペディクルスクリューのヘッドの軸心に一致させることができるエクステンダーガイドを提供することを目的とする。また、本発明は、そのエクステンダーガイドとエクステンダーを含む脊椎固定術用キットを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一つの側面から、筒状のエクステンダー内に挿通される棒状のエクステンダーガイドであって、前記エクステンダーが取り付けられるペディクルスクリューのヘッドに形成された雌ネジと螺合する雄ネジが形成された結合部と、前記エクステンダーと嵌合する、当該エクステンダーガイドの軸方向において前記結合部から離れた位置にあるガイド部と、を備える、エクステンダーガイドを提供する。
【0011】
本発明は、別の側面から、アウタースリーブ、前記アウタースリーブの軸方向に摺動可能となるように前記アウタースリーブに保持された一対のインナーアーム、および前記一対のインナーアームと連結されるとともに前記アウタースリーブの内周面に形成された雌ネジと螺合する雄ネジが形成されたアクチュエータを含む筒状のエクステンダーと、前記エクステンダー内に挿通される、上記のエクステンダーガイドと、を備え、前記エクステンダーガイドの前記ガイド部は前記アクチュエータと嵌合する、脊椎固定術用キットを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エクステンダーをペディクルスクリューに取り付けるときにエクステンダーの軸心をペディクルスクリューのヘッドの軸心に一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るエクステンダーガイドの斜視図である。
図2】エクステンダーの使用状態の一例を示す図である。
図3】ペディクルスクリューの斜視図である。
図4】エクステンダーの斜視図である。
図5】エクステンダーの分解斜視図である。
図6】(a)はハンドルの斜視図、(b)はハンドルの断面図である。
図7】ペディクルスクリューに取り付けられたときのエクステンダーの断面図である。
図8図7の一部であるエクステンダーの近位部の拡大断面図である。
図9図7の他の一部であるエクステンダーの遠位部およびペディクルスクリューの断面図である。
図10】エクステンダーガイドの断面図である。
図11】エクステンダーガイドの中間部の拡大断面図である。
図12】エクステンダーガイドをペディクルスクリューに結合した状態の側面図である。
図13図12の一部の断面図である。
図14】エクステンダーガイドにエクステンダーを挿通してペディクルスクリューのヘッドに当接させた状態の側面図である。
図15図14の一部の断面図である。
図16】エクステンダーガイド、エクステンダーおよびハンドルを含む脊椎固定術用キットの使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、本発明の一実施形態に係るエクステンダーガイド1を示す。このエクステンダーガイド1は、図16に示すように、エクステンダー3およびハンドル9と共に脊椎固定術用キット10を構成する。
【0015】
図2は、エクステンダー3の使用状態の一例を示す。図2では、3つのペディクルスクリュー2が連続して並ぶ椎弓根にねじ込まれ、それらのペディクルスクリュー2に3つのエクステンダー3がそれぞれ取り付けられている。ペディクルスクリュー2同士は脊椎ロッド20により連結される。
【0016】
図3に示すように、ペディクルスクリュー2は、雄ネジが形成されたアンカー21と、アンカー21よりも太い略円柱状のヘッド22を含む。本実施形態では、ヘッド22がアンカー21を回転可能に保持する。ヘッド22には当該ヘッド22を軸方向と直交する方向に横断するチャンネル25が設けられている。チャンネル25には、脊椎ロッド20が挿入される。
【0017】
より詳しくは、ヘッド22は、アンカー21に貫通される円盤部23と、円盤部23から立ち上がる、チャンネル25を挟んで互いに対向する一対の対向壁24を含む。対向壁24の内側面には、脊椎ロッド20の固定用の止めネジと螺合する雌ネジ26が形成されている。
【0018】
さらに、双方の対向壁24の外側面には、エクステンダー3との係合用の係合溝27がそれぞれ設けられている。各係合溝27は、略円柱状のヘッド22の径方向外向きに開口するとともに、ヘッド22の周方向に延びている。
【0019】
本実施形態では、ヘッド22がアンカー21に対して回転だけでなくそれらの軸方向を異ならせるような揺動も可能である。より詳しくは、図9に示すように、アンカー21の根元部が球状であり、ヘッド22の内部には、アンカー21の根元部と当接する球状の凹面を有するアダプタ28が配置されている。アダプタ28が脊椎ロッド20によりアンカー21の根元部に押し付けられることで、ヘッド22のアンカー21に対する揺動が拘束される。ただし、アダプタ28が省略されてアンカー21の根元部が脊椎ロッド20と直接的に接触してもよい。また、ヘッド22はアンカー21に対して揺動不能であってもよい。あるいは、ヘッド22は必ずしもアンカー21を回転可能に保持する必要はなく、ヘッド22とアンカー21とが一体となってもよい。
【0020】
エクステンダー3は、ペディクルスクリュー2のヘッド22に取り付けられる。図4および図5に示すように、エクステンダー3は、筒状であり、アウタースリーブ4と、アウタースリーブ4内に配置された一対のインナーアーム5およびアクチュエータ6を含む。
【0021】
アウタースリーブ4にはスリット44が設けられている。このスリット44は、図7に示すように、エクステンダー3がペディクルスクリュー2のヘッド22に取り付けられたときに、ヘッド22に設けられた脊椎ロッド挿入用のチャンネル25と連続する。すなわち、チャンネル25およびスリット44は、脊椎ロッド20の可動範囲を規定する。
【0022】
図5に戻って、アウタースリーブ4は、筒状の基部41と、基部41からアウタースリーブ4の軸方向に沿って突出する一対のアーム部42を含む。アーム部42はスリット44を挟んで互いに対向しており、各アーム部42の断面形状は円弧状である。
【0023】
各アーム部42の先端からアーム部全長の約1/4の範囲では、各アーム部42の幅が細くなっている。各アーム部42の先端には、ペディクルスクリュー2のヘッド22に設けられた係合溝27との係合用のリッジ43が設けられている。
【0024】
各インナーアーム5は、ほぼ一定の円弧状の断面形状で基端5aから末端5bまで延びている。換言すれば、双方のインナーアーム5は、アウタースリーブ4のアーム部42の内側面に当接するパイプが、スリット44と同じ幅でカットされたような形状を有する。
【0025】
各インナーアーム5は、対応するアーム部42の内側面に沿ってアウタースリーブ4の軸方向に摺動可能となるようにアウタースリーブ4に保持されている。本実施形態では、アウタースリーブ4の各アーム部42に、アウタースリーブ4の軸方向に延びる一対のスロット46が設けられている。一対のスロット46は、アウタースリーブ4の軸方向に並んでいる。
【0026】
一方、各インナーアーム5の外側面には、一対のスロット46にそれぞれ嵌まり込む一対の突起53が設けられている。突起53がスロット46でガイドされることで、インナーアーム5がアウタースリーブ4の軸方向に摺動可能である。
【0027】
また、突起53は先端に拡大部を有する一方、スロット46は基端(基部41側の端)に突起53の拡大部が挿通可能な幅広部を有し、スロット46の基端以外の部分の幅は突起53の拡大部よりも狭く設定されている。このため、突起53の拡大部がスロット46の基端以外の部分と係合することで、インナーアーム5が対応するアーム部42に保持される。
【0028】
アクチュエータ6は、回転操作を受けて双方のインナーアーム5を移動するものであり、アウタースリーブ4の基部41内に配置される。アクチュエータ6は管状であり、アクチュエータ6のインナーアーム5側の末端が双方のインナーアーム5のアクチュエータ6側の基端5aと連結される。
【0029】
より詳しくは、図5に示すように、各インナーアーム5の基端5aの外側面には、アウタースリーブ4の周方向に延びる連結溝52が設けられている。一方、アクチュエータ6の末端の内周面には、図8に示すように、連結溝52と係合する連結突起63が設けられている。
【0030】
また、アウタースリーブ4の基部41の内周面には雌ネジ45が形成されている。一方、アクチュエータ6の外周面には、雌ネジ45と螺合する雄ネジ61が形成されている。このため、アクチュエータ6が回転操作を受けると、双方のインナーアーム5がアクチュエータ6と共にアウタースリーブ4の軸方向に移動する。
【0031】
アクチュエータ6は、図6(a)および(b)に示す中空のハンドル9によって回転される。ハンドル9は、中央が膨らんだ筒状のグリップ部93と、グリップ部93と同軸上でグリップ部93から突出する管状部91を含む。管状部91の外径はアクチュエータ6の内径よりも僅かに小さく、管状部91がアクチュエータ6内に挿入される。
【0032】
管状部91の外側面には一対の凸部92が設けられている。一方、アクチュエータ6のインナーアーム5と反対側の基端には、図5に示すように、ハンドル9の凸部92との係合用の一対の切欠き62が設けられている。このような構造により、ハンドル9の凸部92をアクチュエータ6の切欠き62に係合させた状態でハンドル9を回転させればアクチュエータ6が回転する。
【0033】
図5に示すように、各インナーアーム5のアクチュエータ6と反対側の末端5bには、基端5aから末端5bに向かう方向に開口する切欠き51が設けられており、当該末端5bは略U字状となっている。上述したアウタースリーブ4のリッジ43は、その切欠き51内に位置する。
【0034】
図9に示すように、アウタースリーブ4のリッジ43がペディクルスクリュー2のヘッド22の対向壁24に設けられた係合溝27に係合した状態でインナーアーム5が前進すると、インナーアーム5の末端5bの上述したU字状の底に位置する支持面50が対向壁24の端面に当接し、これによりヘッド22にエクステンダー3が固定される。
【0035】
図1および図10に示すように、エクステンダーガイド1は、棒状である。エクステンダーガイド1は、筒状のエクステンダー3内に挿通される。本実施形態では、エクステンダーガイド1が、ガイドスリーブ7と、ガイドスリーブ7を貫通するシャフト8と、シャフト8に固定されたグリップ85を含む。
【0036】
ガイドスリーブ7は、一端部に結合部71を有し、他端部にガイド部74を有する。つまり、ガイド部74はエクステンダーガイド1の軸方向において結合部71から離れた位置にある。結合部71には、ペディクルスクリュー2のヘッド22に形成された雌ネジ26と螺合する雄ネジ72が形成されている。ガイド部74は、エクステンダー3と嵌合する部分である。
【0037】
より詳しくは、ガイド部74は、エクステンダー3のアクチュエータ6と嵌合する。ガイド部74の外径は、アクチュエータ6の内径よりも僅かに小さい(図15参照)。ガイド部74の長さは特に限定されるものではないが、例えば、アクチュエータ6の内径の二倍以上であることが望ましく、アクチュエータ6の内径の三倍以上であることがより望ましく、アクチュエータ6の内径の四倍以上であることがさらに望ましい。さらに、図14に示すように、結合部71の先端からガイド部74の基端までのガイドスリーブ7の長さはエクステンダー3の長さよりも長い。
【0038】
図1,10に戻って、ガイドスリーブ7は、結合部71とガイド部74との間にそれらを連結する小径部75も有する。小径部75には、アウタースリーブ4に設けられたスリット44の幅よりも大きな直径の2つの拡径部73が設けられている。ただし、拡径部73の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0039】
シャフト8は、ガイドスリーブ7の軸方向に摺動可能であるとともに、ガイドスリーブ7と相対回転可能である。シャフト8における結合部71側の先端部およびガイド部74側の基端部は、ガイドスリーブ7から張り出している。上述したグリップ85は、シャフト8の基端部に固定されている。
【0040】
本実施形態では、グリップ85が中空の棒状であり、当該グリップ85に、グリップ85内の洗浄が可能となるように、当該グリップ85を軸方向と直交する方向に貫通する複数の貫通穴が設けられている。
【0041】
シャフト8の先端部には、ペディクルスクリュー2のヘッド22に設けられたチャンネル25と係合する係合部81が設けられている。チャンネル25への係合部81の係合によって、シャフト8はヘッド22に対して相対回転不能となる。
【0042】
より詳しくは、図1に示すように、係合部81は、シャフト8におけるガイドスリーブ7を貫通する部分よりも大きな直径の円柱部と、ヘッド22の対向壁24の間に嵌まり込む、前記円柱部から互いに反対向きに突出する一対の係合片82と、係合片82の間の一対の円弧部83を含む。各係合片82の幅は、チャンネル25の幅よりも僅かに小さい。一対の円弧部83の外周面の直径は、ペディクルスクリュー2のヘッド22の雌ネジ26の内径とほぼ等しい(図13参照)。
【0043】
シャフト8の係合部81以外の直径は、ガイドスリーブ7の小径部75の内径とほぼ等しい。つまり、シャフト8は、ガイドスリーブ7の小径部75によって軸方向に摺動可能かつ周方向に回転可能に支持されている。
【0044】
図11に示すように、本実施形態では、ガイドスリーブ7のガイド部74の内径が小径部75の内径よりも大きく設定されており、ガイド部74内にコイルスプリング13が配置されている。コイルスプリング13はシャフト8に貫通されている。コイルスプリング13は、シャフト8を係合部81へ向かう方向に付勢するとともに、ガイドスリーブ7を結合部71からガイド部74へ向かう方向に付勢する。
【0045】
なお、本実施形態では、ガイド部74に、ガイド部74内の洗浄が可能となるように、当該ガイド部74をガイドスリーブ7の軸方向と直交する方向に貫通する複数の貫通穴が設けられている。
【0046】
具体的に、シャフト8には、ガイドスリーブ7の小径部75の近くに環状溝84が設けられており、この環状溝84にC形の止め輪11が固定されている。コイルスプリング13はリング12および止め輪11を介してシャフト8を図11で下向きに付勢する。
【0047】
一方、ガイドスリーブ7のガイド部74側の端部には、シャフト8に貫通される筒状のキャップ15が取り付けられている。ガイドスリーブ7の端部の内周面には雌ネジ76が形成されており、キャップ15の外周面には、雌ネジ76と螺合する雄ネジ16が形成されている。コイルスプリング13はリング14およびキャップ15を介してガイドスリーブ7を図11で上向きに付勢する。
【0048】
シャフト8は、コイルスプリング13の付勢力に抗して、係合部81からグリップ85へ向かう方向に後退可能である。つまり、グリップ85がキャップ15に当接する位置がシャフト8の前進限界位置である。
【0049】
エクステンダーガイド1を組み立てるには、まずシャフト8を結合部71側からガイドスリーブ7内に挿入し、ついでガイド部74側から、止め輪11をシャフト8に沿って環状溝84まで移動させる。その後、リング12、コイルスプリング13およびリング14をシャフト8に沿ってガイド部74内に挿入するとともに、キャップ15の雄ネジ16をガイドスリーブ7の雌ネジ76に螺合させる。最後に、シャフト8の基端部にグリップ85を固定する。
【0050】
次に、脊椎固定術用キット10の使用方法を説明する。まず、図12に示すように、シャフト8の係合部81をペディクルスクリュー2のヘッド22のチャンネル25に係合させる。その状態で、グリップ85を介してシャフト8の回転を拘束したまま、ガイドスリーブ7を回転させることにより、結合部71の雄ネジ72をヘッド22の雌ネジ26に螺合させて結合部71をヘッド22に結合する。
【0051】
ガイドスリーブ7の結合部71がペディクルスクリュー2のヘッド22に結合されたときには、シャフト8がコイルスプリング13の付勢力に抗して前進限界位置よりも後退し、図12に示すようにグリップ85がキャップ15から離間する。図13に示すように、ガイドスリーブ7は、結合部71の先端面がシャフト8の係合部81に当接するまで回転され、さらにその後もガイドスリーブ7に回転力を付与することにより、係合部81がアダプタ28に押し付けられる。これにより、アンカー21に対するヘッド22の揺動を抑制することができる。
【0052】
なお、係合部81は必ずしもアダプタ28に押し付けられる必要はない。例えば、係合部81の円柱部がアダプタ28と接触せずに、円弧部83が、ヘッド22内の雌ネジ26の下穴底面(図13では、ヘッド22の略中央にある径方向内側に張り出す部分の上面)に押し付けられてもよい。この場合、ヘッド22に結合部71が結合された後も、アンカー21に対するヘッド22の揺動が可能である。
【0053】
次に、図14に示すように、エクステンダーガイド1にエクステンダー3を挿通しながらエクステンダー3のアウタースリーブ4のリッジ43をペディクルスクリュー2のヘッド22の係合溝27に係合させる。このとき、図15に示すように、エクステンダーガイド1のガイドスリーブ7のガイド部74がエクステンダー3のアクチュエータ6に嵌合するため、エクステンダー3が当該エクステンダー3の軸心がヘッド22の軸心と一致するようにガイドされる。また、ガイドスリーブ7の小径部75には2つの拡径部73が設けられているので、エクステンダーガイド1がエクステンダー3のアウタースリーブ4のスリット44から飛び出すことが防止される。
【0054】
その後、図16に示すように、エクステンダーガイド1にハンドル9を挿通し、ハンドル9を介してエクステンダー3のアクチュエータ6を回転させ、インナーアーム5を前進させる。これにより、図9を参照して説明したように、インナーアーム5の支持面50がヘッド22の対向壁24の端面に当接し、ヘッド22にエクステンダー3が固定される。ハンドル9は中空であるので、エクステンダーガイド1をエクステンダー3に挿通したままで、ハンドル9によってアクチュエータ6を回転させることができる。
【0055】
エクステンダー3をヘッド22に取り付けた後は、ハンドル9を取り外して図14に示す状態に戻す。上述したように、ガイドスリーブ7の長さはエクステンダー3の長さよりも長いので、エクステンダーガイド1のガイドスリーブ7がエクステンダー3から露出する。このため、グリップ85を介してシャフト8の回転を拘束したままガイドスリーブ7を回転させて結合部71とヘッド22との結合を解除することができる。
【0056】
なお、ハンドル9のグリップ部93における管状部91に隣接する部分に、エクステンダーガイド1のガイドスリーブ7のガイド部74を露出させる開口が設けられる場合、ハンドル9をエクステンダー3に取り付けたままでガイドスリーブ7を回転させてもよい。
【0057】
結合部71とヘッド22との結合が解除されたときにはコイルスプリング13の付勢力によってガイドスリーブ7が後方へ押し戻される。従って、使用者に、結合部71とヘッド22との結合が解除されたことを感覚的に気付かせることができる。結合部71とヘッド22との結合が解除された後は、エクステンダーガイド1をエクステンダー3から引き抜く。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のエクステンダーガイド1では、エクステンダーガイド1のガイドスリーブ7の結合部71の雄ネジ72をペディクルスクリュー2のヘッド22の雌ネジ26に螺合させて結合部71をヘッド22に結合すれば、エクステンダーガイド1の軸心がヘッド22の軸心と一致する。従って、このエクステンダーガイド1を用いてエクステンダー3をペディクルスクリュー2のヘッド22に取り付ければ、エクステンダー3の軸心をヘッド22の軸心に一致させることができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、ガイドスリーブ7がシャフト8によって貫通され、シャフト8の先端部に係合部81が設けられ、基端部にグリップ85が固定されているので、シャフト8の係合部81によってペディクルスクリュー2のアンカー21に対するヘッド22の回転を拘束した状態で、ガイドスリーブ7を回転させて結合部71の雄ネジ72をヘッド22の雌ネジ26に螺合させることができる。
【0060】
<変形例>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0061】
例えば、ペディクルスクリュー2においてアダプタ28が省略される場合は、シャフト8の係合部81がアンカー21の根元部に直接的に押し付けられてもよい。また、ガイドスリーブ7の小径部75に設けられる拡径部73は省略されてもよい。
【0062】
さらには、エクステンダーガイド1がシャフト8を含まずにガイドスリーブ7のみを含んでもよい。このようなエクステンダーガイド1は、再手術などでペディクルスクリュー2のヘッド22の回転が脊椎ロッド20で拘束されている場合に用いることができる。
【0063】
<まとめ>
第1の態様として、本発明は、一つの側面から、筒状のエクステンダー内に挿通される棒状のエクステンダーガイドであって、前記エクステンダーが取り付けられるペディクルスクリューのヘッドに形成された雌ネジと螺合する雄ネジが形成された結合部と、前記エクステンダーと嵌合する、当該エクステンダーガイドの軸方向において前記結合部から離れた位置にあるガイド部と、を備える、エクステンダーガイドを提供する。すなわち、一端部に前記結合部を有し、他端部に前記ガイド部を有する前述のガイドスリープのみのシンプルな構造も本発明に含まれる。
【0064】
上記の構成によれば、エクステンダーガイドの結合部の雄ネジをペディクルスクリューのヘッドの雌ネジに螺合させて結合部をヘッドに結合すれば、エクステンダーガイドの軸心がペディクルスクリューのヘッドの軸心と一致する。従って、このエクステンダーガイドを用いてエクステンダーをペディクルスクリューのヘッドに取り付ければ、エクステンダーの軸心をペディクルスクリューのヘッドの軸心に一致させることができる。
【0065】
第2の態様として、第1の態様において、上記のエクステンダーガイドは、前記結合部を一端部に有し、前記ガイド部を他端部に有するガイドスリーブと、前記ガイドスリーブを貫通する、前記ガイドスリーブの軸方向に摺動可能かつ前記ガイドスリーブと相対回転可能なシャフトであって、前記結合部側の先端部に前記ペディクルスクリューのヘッドに設けられたチャンネルと係合する係合部が設けられ、前記ガイド部側の基端部にグリップが固定されたシャフトと、を備えてもよい。この構成によれば、シャフトの係合部によってペディクルスクリューのアンカーに対するヘッドの回転を拘束した状態で、ガイドスリーブを回転させて結合部の雄ネジをヘッドの雌ネジに螺合させることができる。しかも、ペディクルスクリューのヘッドがアンカーに対して回転だけでなくそれらの軸方向を異ならせるような揺動も可能である場合であって、係合部がアンカーの根元部に直接的にまたはアダプタを介して当接する場合は、係合部をアンカーの根元部またはアダプタに押し付けることで、アンカーに対するヘッドの揺動も抑制することができる。
【0066】
第3の態様として、第2の態様において、上記のエクステンダーガイドは、前記ガイドスリーブ内に配置されるとともに前記シャフトに貫通され、前記シャフトを前記係合部へ向かう方向に付勢するとともに前記ガイドスリーブを前記結合部から前記ガイド部へ向かう方向に付勢するコイルスプリングを備え、前記結合部が前記ヘッドに結合されたときに、前記シャフトが前記コイルスプリングの付勢力に抗して前進限界位置よりも後退してもよい。この構成によれば、エクステンダーガイドをペディクルスクリューのヘッドから取り外す際に、結合部とヘッドとの結合が解除されたときにコイルスプリングの付勢力によってガイドスリーブが後方へ押し戻される。従って、使用者に、結合部とヘッドとの結合が解除されたことを感覚的に気付かせることができる。
【0067】
第4の態様として、第2または第3の態様において、前記ガイドスリーブの長さは前記エクステンダーの長さよりも長くてもよい。この構成によれば、ペディクルスクリューのヘッドへのエクステンダーの取り付け後にエクステンダーガイドのガイドスリーブがエクステンダーから露出するため、ガイドスリーブを回転させて結合部とヘッドとの結合を解除することができる。
【0068】
第5の態様として、本発明は、別の側面から、アウタースリーブ、前記アウタースリーブの軸方向に摺動可能となるように前記アウタースリーブに保持された一対のインナーアーム、および前記一対のインナーアームと連結されるとともに前記アウタースリーブの内周面に形成された雌ネジと螺合する雄ネジが形成されたアクチュエータを含む筒状のエクステンダーと、前記エクステンダー内に挿通される、第1乃至第4の態様の何れかのエクステンダーガイドと、を備え、前記エクステンダーガイドの前記ガイド部は前記アクチュエータと嵌合する、脊椎固定術用キットを提供する。
【0069】
上記の構成によれば、エクステンダーをペディクルスクリューに取り付けるときにエクステンダーの軸心をペディクルスクリューのヘッドの軸心に一致させることができる。
【0070】
第6の態様として、第5の態様において、前記エクステンダーガイドは、前記結合部と前記ガイド部との間に、前記アウタースリーブに設けられたスリットの幅よりも大きな直径の少なくとも1つの拡径部を含んでもよい。この構成によれば、エクステンダーガイドがアウタースリーブのスリットから飛び出すことを防止することができる。
【0071】
第7の態様として、第5または第6の態様において、上記の脊椎固定術用キットは、前記アクチュエータを回転させる、前記エクステンダーガイドに挿通される中空のハンドルをさらに備えてもよい。この構成によれば、エクステンダーガイドをエクステンダーに挿通したままで、ハンドルによってアクチュエータを回転させることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 エクステンダーガイド
10 脊椎固定術用キット
13 コイルスプリング
2 ペディクルスクリュー
22 ヘッド
25 チャンネル
26 雌ネジ
3 エクステンダー
4 アウタースリーブ
45 雌ネジ
5 インナーアーム
6 アクチュエータ
7 ガイドスリーブ
71 結合部
72 雄ネジ
73 拡径部
74 ガイド部
8 シャフト
81 係合部
85 グリップ
9 ハンドル
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