(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117492
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】墨出し装置及び墨出しシステム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/18 20060101AFI20240822BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20240822BHJP
B25H 7/04 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
E04G21/18 B
G01C15/00 102Z
B25H7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023621
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】南川 達浩
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 浩之
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174DA41
(57)【要約】
【課題】コンパクトに設計可能な墨出し装置を提供する。
【解決手段】墨出し装置1は、装置本体部2と、装置本体部を水平方向に走行させる複数の車輪10aを有する走行部10と、マーキングを行うマーキング部20と、装置本体部に対してマーキング部を水平方向の一方向に可動させる可動部40と、を備えている。可動部40は、装置本体部2に収納させた収納位置と、装置本体部から外側に突出させた突出位置との間でマーキング部20を可動させる。マーキング部20が収納位置に位置するとき、マーキング部20及び可動部40が、平面視において装置本体部2の外縁よりも外側に配置された車輪10aの外縁よりも内側に配置される。また、マーキング部20が突出位置に位置するときに、マーキング部が、平面視において車輪10aの外縁よりも外側に配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の施工現場内を走行し、前記施工現場内においてマーキングを行う墨出し装置であって、
前記墨出し装置の本体となる装置本体部と、
前記装置本体部を水平方向に走行させる複数の車輪を有する走行部と、
前記装置本体部に取り付けられ、マーキングを行うマーキング部と、
前記装置本体部に取り付けられ、前記装置本体部に対して前記マーキング部を水平方向の一方向に可動させる可動部と、を備え、
前記可動部は、前記装置本体部に前記マーキング部を収納させた収納位置と、前記装置本体部から水平方向の外側に前記マーキング部を突出させた突出位置との間で前記マーキング部を可動させ、
前記マーキング部が前記収納位置に位置するとき、前記マーキング部及び前記可動部が、平面視において前記装置本体部の外縁よりも内側に配置され、又は前記装置本体部の外縁よりも水平方向の外側に配置された前記車輪の外縁よりも内側に配置され、
前記マーキング部が前記突出位置に位置するときに、前記マーキング部が、平面視において前記装置本体部の外縁よりも外側に配置され、又は前記装置本体部の外縁よりも水平方向の外側に配置された前記車輪の外縁よりも外側に配置されることを特徴とする墨出し装置。
【請求項2】
前記走行部は、前記装置本体部を水平方向の全方向に走行させる複数の前記車輪を有し、
前記車輪は、前記装置本体部の外縁よりも水平方向の外側に配置され、
前記マーキング部が前記収納位置に位置するとき、前記マーキング部及び前記可動部が平面視において前記車輪の外縁よりも内側に配置され、
前記マーキング部が前記突出位置に位置するときに、前記マーキング部が平面視において前記車輪の外縁よりも外側に配置され、かつ、前記マーキング部の印字ヘッドが平面視において前記可動部の外縁よりも外側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の墨出し装置。
【請求項3】
前記装置本体部に取り付けられ、前記走行部、前記マーキング部及び前記可動部に電気を供給するバッテリを備え、
前記マーキング部は、前記マーキング部の突出方向において前記装置本体部の一方側に配置され、
前記バッテリは、前記マーキング部の突出方向において前記装置本体部の他方側に配置され、
前記バッテリは、前記装置本体部の他方側において前記可動部とは上下方向において異なる位置に配置され、前記可動部と上下方向で重なる位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の墨出し装置。
【請求項4】
前記可動部は、
前記装置本体部に対して前記マーキング部を水平方向のうち第1方向に可動させる第1可動ユニットと、
前記第1可動ユニットに対して前記マーキング部を前記第1方向とは交差する第2方向に可動させる第2可動ユニットと、を備え、
前記第2可動ユニットは、前記マーキング部を前記収納位置と前記突出位置の間で可動させ、
前記マーキング部が前記収納位置に位置するとき、
前記マーキング部、前記第1可動ユニット及び前記第2可動ユニットが、平面視において前記装置本体部の外縁よりも水平方向の外側に配置された前記車輪の外縁よりも内側に配置され、かつ、
前記第2可動ユニットのうち、前記第2方向において前記マーキング部が配置された側とは反対側の端部が、平面視において前記装置本体部の外縁よりも外側に配置され、前記車輪の外縁よりも内側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の墨出し装置。
【請求項5】
前記装置本体部に取り付けられ、測量装置によって検出される検出対象物を備え、
前記検出対象物は、前記マーキング部又は前記マーキング部の周辺に取り付けられ、前記可動部によって前記マーキング部とともに前記収納位置と前記突出位置の間で可動することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の墨出し装置。
【請求項6】
前記可動部は、前記装置本体部に対して前記マーキング部を水平方向のうち第1方向と、前記第1方向とは交差する第2方向と、上下方向とにそれぞれ可動させ、
前記検出対象物は、平面視において前記マーキング部と重なる位置に配置され、前記マーキング部と重なる位置を保持しながら前記マーキング部とともに前記第1方向、前記第2方向及び上下方向に可動することを特徴とする請求項5に記載の墨出し装置。
【請求項7】
請求項1に記載の墨出し装置と、前記施工現場内において所定位置に設置される測量装置と、を備えた墨出しシステムであって、
前記墨出し装置は、前記装置本体部に取り付けられ、前記測量装置によって検出される検出対象物をさらに備え、
前記測量装置は、前記墨出し装置に搭載された前記検出対象物を検出し、検出結果に基づいて前記墨出し装置の相対位置情報を測量し、
前記墨出しシステムは、
前記建物の設計情報を記憶し、
前記建物の設計情報と、前記墨出し装置の相対位置情報とに基づいて、前記施工現場内における前記墨出し装置の位置を推定し、
前記設計情報に基づいてマーキング位置を特定し、
前記墨出し装置の位置の情報と、前記マーキング位置の情報とに基づいて前記墨出し装置を走行させてマーキングさせることを特徴とする墨出しシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、墨出し装置及び墨出しシステムに係り、特に、建物の施工現場内においてマーキングを行う墨出し装置及び墨出しシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の施工現場内を走行し、施工現場内において各種施工作業の基準位置を示す基準線(墨出し線)を床面または壁面等にマーキングする墨出し装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1、2に記載の墨出し装置は、予め設定された走行経路に沿って自動走行する墨出しロボットであって、墨出し装置の本体部と、本体部にそれぞれ設けられ、本体部を水平方向に走行させる走行部と、墨出し線をマーキングするマーキング部(スタンパ)と、マーキング部をステージ上で動作させるXYステージと、を備えている。
墨出し装置は、走行部によって車輪走行し、墨出し線のマーキング位置においてスタンパをXYステージ上で動作させることで墨出し線をマーキングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-39709号公報
【特許文献2】特開2017-15523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2のような墨出し装置では、本体部の内部に搭載されたXYステージ上でスタンパを動作させることで、墨出し線をマーキングする構成となっている。そのため、スタンパによってマーキング可能な面積(印字可能面積)を広げようとすると、上記XYステージを大きくする必要があり、墨出し装置が大型化する虞があった。
また、特許文献1、2のような墨出し装置では、スタンパが平面視において本体部の内部に配置されている。そのため、建物の壁際に位置する箇所において墨出し線を好適にマーキングできない虞があった。つまりは、建物の壁に本体部や走行部が意図せず接触してしまい、墨出し線のマーキングに影響してしまう虞があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、建物の施工現場内においてマーキングを行うために用いられ、従来よりもコンパクトに設計することが可能な墨出し装置及び墨出しシステムを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、建物の壁際に位置する箇所において好適にマーキングを行うことが可能な墨出し装置及び墨出しシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の墨出し装置によれば、建物の施工現場内を走行し、前記施工現場内においてマーキングを行う墨出し装置であって、前記墨出し装置の本体となる装置本体部と、前記装置本体部を水平方向に走行させる複数の車輪を有する走行部と、前記装置本体部に取り付けられ、マーキングを行うマーキング部と、前記装置本体部に取り付けられ、前記装置本体部に対して前記マーキング部を水平方向の一方向に可動させる可動部と、を備え、前記可動部は、前記装置本体部に前記マーキング部を収納させた収納位置と、前記装置本体部から水平方向の外側に前記マーキング部を突出させた突出位置との間で前記マーキング部を可動させ、前記マーキング部が前記収納位置に位置するとき、前記マーキング部及び前記可動部が、平面視において前記装置本体部の外縁よりも内側に配置され、又は前記装置本体部の外縁よりも水平方向の外側に配置された前記車輪の外縁よりも内側に配置され、前記マーキング部が前記突出位置に位置するときに、前記マーキング部が、平面視において前記装置本体部の外縁よりも外側に配置され、又は前記装置本体部の外縁よりも水平方向の外側に配置された前記車輪の外縁よりも外側に配置されること、により解決される。
上記構成により、従来よりもコンパクトに設計可能な墨出し装置を実現できる。
詳しく述べると、墨出し装置が、装置本体部に収納させた「収納位置」と、装置本体部から水平方向の外側に突出させた「突出位置」との間でマーキング部を可動させる可動部を備えている。そのため、不使用時にはマーキング部を「収納位置」に配置し、使用時にマーキング部を「突出位置」に配置できる。つまりは、不使用時には墨出し装置をコンパクトにできる。
また、使用時にはマーキング部を「突出位置」に配置することで、建物の壁際に位置する箇所において好適にマーキングを行うことができる。つまりは、建物の壁に装置本体部や走行部が意図せず接触してしまい、マーキング作業に影響することを抑制できる。
【0008】
このとき、前記走行部は、前記装置本体部を水平方向の全方向に走行させる複数の前記車輪を有し、前記車輪は、前記装置本体部の外縁よりも水平方向の外側に配置され、前記マーキング部が前記収納位置に位置するとき、前記マーキング部及び前記可動部が平面視において前記車輪の外縁よりも内側に配置され、前記マーキング部が前記突出位置に位置するときに、前記マーキング部が平面視において前記車輪の外縁よりも外側に配置され、かつ、前記マーキング部の印字ヘッドが平面視において前記可動部の外縁よりも外側に配置されると良い。
上記のように、マーキング部が「突出位置」に位置するときに、印字ヘッドが平面視において車輪の外縁よりも外側に配置され、かつ、可動部の外縁よりも外側に配置されることで、建物の壁際において好適にマーキングを行うことができる。
【0009】
このとき、前記装置本体部に取り付けられ、前記走行部、前記マーキング部及び前記可動部に電気を供給するバッテリを備え、前記マーキング部は、前記マーキング部の突出方向において前記装置本体部の一方側に配置され、前記バッテリは、前記マーキング部の突出方向において前記装置本体部の他方側に配置され、前記バッテリは、前記装置本体部の他方側において前記可動部とは上下方向において異なる位置に配置され、前記可動部と上下方向で重なる位置に配置されると良い。
上記構成により、墨出し装置の各構成部品を全体としてバランスよく配置できる。
また上記のように、バッテリが、装置本体部の他方側において可動部とは上下方向において異なる位置に配置され、可動部と上下方向で重なる位置に配置されることで、墨出し装置の全体の大きさを小型化できる。
【0010】
このとき、前記可動部は、前記装置本体部に対して前記マーキング部を水平方向のうち第1方向に可動させる第1可動ユニットと、前記第1可動ユニットに対して前記マーキング部を前記第1方向とは交差する第2方向に可動させる第2可動ユニットと、を備え、前記第2可動ユニットは、前記マーキング部を前記収納位置と前記突出位置の間で可動させ、前記マーキング部が前記収納位置に位置するとき、前記マーキング部、前記第1可動ユニット及び前記第2可動ユニットが、平面視において前記装置本体部の外縁よりも水平方向の外側に配置された前記車輪の外縁よりも内側に配置され、かつ、前記第2可動ユニットのうち、前記第2方向において前記マーキング部が配置された側とは反対側の端部が、平面視において前記装置本体部の外縁よりも外側に配置され、前記車輪の外縁よりも内側に配置されると良い。
上記構成により、マーキング部を例えば前後方向、左右方向及び上下方向に可動させることができる。
また上記のように、マーキング部が「収納位置」に位置するときに、第2可動ユニットのうち、第2方向においてマーキング部が配置された側とは反対側の端部が、装置本体部の外縁よりも外側に配置され、車輪の外縁よりも内側に配置されている。そのため、第2可動ユニットのサイズを極力大きくしてマーキング部の可動領域を確保しつつ、第2可動ユニットをコンパクトに収納できる。
【0011】
このとき、前記装置本体部に取り付けられ、測量装置によって検出される検出対象物を備え、前記検出対象物は、前記マーキング部又は前記マーキング部の周辺に取り付けられ、前記可動部によって前記マーキング部とともに前記収納位置と前記突出位置の間で可動すると良い。
上記のように、検出対象物がマーキング部(マーキング部の周辺)に取り付けられ、マーキング部とともに可動するため、測量装置が墨出し装置のマーキング部の位置を精度よく推定できる。
【0012】
このとき、前記可動部は、前記装置本体部に対して前記マーキング部を水平方向のうち第1方向と、前記第1方向とは交差する第2方向と、上下方向とにそれぞれ可動させ、前記検出対象物は、平面視において前記マーキング部と重なる位置に配置され、前記マーキング部と重なる位置を保持しながら前記マーキング部とともに前記第1方向、前記第2方向及び上下方向に可動すると良い。
上記のように、検出対象物が平面視においてマーキング部と重なる位置に保持されながら、マーキング部とともに可動するため、測量装置が墨出し装置のマーキング部の位置をより精度よく推定できる。
【0013】
また前記課題は、本発明の墨出しステムによれば、上記墨出し装置と、前記施工現場内において所定位置に設置される測量装置と、を備えた墨出しシステムであって、前記墨出し装置は、前記装置本体部に取り付けられ、前記測量装置によって検出される検出対象物をさらに備え、前記測量装置は、前記墨出し装置に搭載された前記検出対象物を検出し、検出結果に基づいて前記墨出し装置の相対位置情報を測量し、前記墨出しシステムは、前記建物の設計情報を記憶し、前記建物の設計情報と、前記墨出し装置の相対位置情報とに基づいて、前記施工現場内における前記墨出し装置の位置を推定し、前記設計情報に基づいてマーキング位置を特定し、前記墨出し装置の位置の情報と、前記マーキング位置の情報とに基づいて前記墨出し装置を走行させてマーキングさせること、により解決される。
上記構成により、墨出しシステムが、建物の設計情報と、測量装置によって測量された墨出し装置の相対位置情報とを用いて墨出し装置の位置を推定し、墨出し装置によってマーキングさせることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の墨出し装置及び墨出しシステムによれば、建物の施工現場内においてマーキングを行うにあたって、従来よりもコンパクトに設計することが可能となる。
また、建物の壁際に位置する箇所において好適にマーキングを行うことが可能な墨出し装置及び墨出しシステムとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の墨出しシステムの構成図である。
【
図3】墨出し装置の平面図であって、マーキング部が「収納位置」にいる状態を示す図である。
【
図4】墨出し装置の平面図であって、マーキング部が「突出位置」にいる状態を示す図である。
【
図5】墨出し装置の斜視図であって、第1可動ユニットを示す図である。
【
図6】墨出し装置の斜視図であって、第2可動ユニットを示す図である。
【
図7】第3可動ユニットの斜視図であって、マーキング部が「上方位置」にいる状態を示す図である。
【
図8】第3可動ユニットの斜視図であって、マーキング部が「下方位置」にいる状態を示す図である。
【
図9】墨出し装置、測量装置、オペレータ端末の機能を説明する図である。
【
図10】本実施形態の墨出し方法を示す処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について
図1~
図10を参照して説明する。
本実施形態は、建物の施工現場内を走行し、施工現場内においてマーキングを行う墨出し装置であって、従来よりもコンパクトに設計することを可能とし、建物の壁際において好適にマーキングを行うことを可能とする「墨出し装置」に関するものである。
また、墨出し装置を備えた「墨出しシステム」に関するものである。
【0017】
本実施形態の墨出しシステムSは、
図1に示すように、建物Bの所定空間における床を走行し、建物Bの墨出し処理を行う墨出し装置1と、建物内において所定の測量位置に設置され、墨出し装置1の相対位置情報を測量する測量装置100と、墨出し装置1及び測量装置100とネットワークを通じて接続され、墨出し装置1へ位置情報や所定の墨出し作業を実行させるオペレータ端末200と、から主に構成されている。
オペレータ端末200は、具体的には、測量装置100から墨出し装置1の相対位置情報を受信して墨出し装置1の位置情報(位置及び向き)を演算し、墨出し装置1へ位置情報や所定の墨出し作業を実行させるプログラムを送信する。
なお、「墨出し作業」とは、建物Bの施工現場において、各種施工作業の基準位置を示す基準線(墨出し線)を床面、壁面または天井面等にマーキングする作業を意味する。具体的には、基礎墨出しや躯体墨出し、仕上げ墨出し等がある。墨出し線は、建物Bの部材の取り付け作業や、空調・電気設備等の器具の取り付け作業を実施するために用いられる。
【0018】
<墨出しシステムのハードウェア構成>
墨出し装置1は、
図1~
図8に示すように、建物内を自動走行し、墨出し処理を行うロボットであって、オペレータ端末200と情報データ通信を行い、オペレータ端末200に記憶されている最新のプログラムやデータを読み込んで記憶しておくことができる。
墨出し装置1は、具体的には、墨出し作業を行う小型の無人搬送車(AGV)であって、装置本体部2と、走行ユニット10(走行部)と、マーキングユニット20(マーキング部)と、可動ユニット30、40、50(可動部)と、プリズム60と、バッテリ70と、制御コントローラ80(制御部)と、を備えている。
なお、上記可動ユニットは、第1可動ユニット30と、第2可動ユニット40と、第3可動ユニット50と、を有している。
【0019】
装置本体部2は、
図1~
図4に示すように、墨出し装置1の本体部(筐体部)である。
装置本体部2は、矩形状のフレーム(枠状のフレーム)の一部を切り欠くことで形成され、略コ字形状(略U字形状)のフレームから構成されている。
具体的には、装置本体部2は、前方フレーム2aと、後方フレーム2bと、左右の側方フレーム2cと、を有している。左側の側方フレーム2cの延出方向の中央部分には、逃げ部2dが切り欠き形成されている。
【0020】
図3に示すように、装置本体部2の内部には、可動ユニット30、40、50が取り付けられており、当該可動ユニットによってマーキングユニット20を装置本体部2の内側から外側に突出させることができる。このとき、逃げ部2dを利用することで、
図3、
図4に示すように、装置本体部2とマーキングユニット20の干渉を避けることができる。
なお、装置本体部2は、略矩形状のフレームから構成されているが、特に限定されるものではなく、略H字形状のフレーム等から構成されても良い。
【0021】
墨出し装置1は、その幅方向における中央位置に重心が位置するように設計されている。具体的には、平面視において装置本体部2の中央位置に重心が位置するように、装置本体部2の四隅に走行ユニット10が取り付けられている。また、装置本体部2の中央位置に可動ユニット30、40、50が取り付けられ、装置本体部2の左側位置にマーキングユニット20及びプリズム60が取り付けられ、装置本体部2の右側位置にバッテリ70及び制御コントローラ80が取り付けられている。
そうすることで、墨出し装置1の各構成部品をバランスよく配置できる。
なお、
図3に示すように、マーキングユニット20が装置本体部2の内部に収納されているときに、墨出し装置1が、その前後方向及び幅方向における中央位置に重心が位置するように設計されていると好ましい。
【0022】
走行ユニット10は、
図1~
図4に示すように、装置本体部2を水平方向(2次元方向)の全方位に走行させるタイヤ式の走行部である。
具体的には、走行ユニット10は、上面視において装置本体部2の四隅にそれぞれ配置され、装置本体部2を走行させるために回転する複数の車輪10aと、各車輪10aの回転軸を構成し、墨出し装置1の幅方向に延びる車輪軸10bと、各車輪10a及び車輪軸10bを回転させる駆動モータ10c(パルスモータ)と、を有している。
車輪10aは、装置本体部2の幅方向の外縁部(最外縁部)よりも水平方向の外側に配置されている。
【0023】
車輪10aは、例えばメカナムホイールであって、車輪10aの表面が車輪軸10bに対して約45度傾けた複数のローラ(バレル)によって覆われている。なお、車輪10aは、メカナムホイールのほか、オムニホイールであっても良い。通常の車輪であっても良い。
走行ユニット10は、4つの駆動モータ10cによって車輪10a(車輪軸10b)の回転方向と回転速度を制御することで、墨出し装置1を旋回させずに水平方向に自由に走行させることができる。
【0024】
なお、走行ユニット10は、複数の車輪10aによって走行しているときに床面に常に接触し、装置本体部2の走行を補助する補助車輪を有していても良い。
一般にメカナムホイールのような車輪10aは、側面視において円形状を有するものの、各ローラ間には溝が形成されるため、車輪10aの表面が段差形状となっている。
そのため、車輪10aが回転するときに、床面と車輪10aの段差表面との関係で床との接地面積が小さくなることがあり、通常の車輪と比較して振動が発生し易くなる。
そこで、墨出し装置1が、車輪10aの外形と同じ径を有する補助車輪をさらに有することで、走行中に発生する振動を抑制し、精度の高い走行制御を行うことが可能となる。
【0025】
マーキングユニット20は、
図1~
図4に示すように、インクジェット方式によって墨出し線をマーキングするマーキング部である。例えば、マーキングユニット20は、不図示のインクカートリッジを有し、インクを下方に向かって噴霧することで床面に対し墨出し線を印字する。なお、マーキングユニット20は、墨出し線の代わりに、墨出し位置(墨出しポイント)に所定のマーク(点マーク、十字マーク、〇マーク、×マーク、□マーク等)を印字しても良い。
マーキングユニット20(印字ヘッド21)は、装置本体部2の側方位置(左側方位置)に配置されている。
なお、マーキングユニット20は、インクジェット方式に限定されることなく、ペンの先端を床面に接触させて水平方向に走行することで床面にマーキングを行っても良い。あるいは、インクを滴下する方式でマーキングを行っても良い。
【0026】
マーキングユニット20は、
図5に示すように、第1可動ユニット30によって装置本体部2に対して前後方向に移動する。
また、マーキングユニット20は、
図3、
図4、
図6に示すように、第2可動ユニット40によって装置本体部2に対して左右方向に移動する。
また、マーキングユニット20は、
図7、
図8に示すように、第3可動ユニット50によって装置本体部2に対して上下方向に移動する。
特に、マーキングユニット20は、第2可動ユニット40の可動に伴って、
図3に示す「収納位置」と、
図4に示す「突出位置」との間で移動できる。
【0027】
「収納位置」とは、平面視において装置本体部2の内部にマーキングユニット20を収納させた位置である。マーキングユニット20が
図3に示す「収納位置」に位置するとき、マーキングユニット20及び可動ユニット30、40、50が、平面視において装置本体部2の四隅に位置する車輪10aの外縁よりも内側に配置されている。
そうすることで、例えば墨出し装置1の梱包時のサイズを小さくでき、輸送時に破損するリスクを低減できる。
【0028】
「突出位置」とは、平面視において装置本体部2から水平方向の外側にマーキングユニット20を突出させた位置である。マーキングユニット20が「突出位置」に位置するとき、マーキングユニット20(印字ヘッド21)が、平面視において装置本体部2の四隅に位置する車輪10aの外縁よりも外側に配置されている。
そうすることで、例えば建物Bの柱B1に装置本体部2や走行ユニット10が意図せず接触し、墨出し線のマーキングに影響することを抑制できる。
なお、マーキングユニット20を装置本体部2よりも外側に移動させることで、マーキングユニット20の周辺に作業スペースを確保し易くなり、メンテナンスを行い易くなる。
【0029】
第1可動ユニット30は、
図2~
図5に示すように、装置本体部2に対してマーキングユニット20、第2可動ユニット40、第3可動ユニット50及びプリズム60を前後方向に可動させる可動部であって、例えばベルト駆動の電動アクチュエータ(リニアアクチュエータ)である。
第1可動ユニット30は、装置本体部2の前方フレーム2a及び後方フレーム2bに架け渡されている。
【0030】
第1可動ユニット30は、
図5に示すように、装置本体部2に架け渡され、前後方向に長尺に延びている固定レール31と、固定レール31に沿って摺動可能に支持され、マーキングユニット20とともに前後移動するキャリア32と、キャリア32に固定されるベルトクリップ33と、ベルトクリップ33に接続され、前後方向に長尺に延びている駆動ベルト34と、駆動ベルト34を駆動させる駆動モータ35と、を備えている。
【0031】
キャリア32は、装置本体部2の幅方向の中央位置に配置され、一対の固定レール31に摺動可能に架け渡されている。
ベルトクリップ33、駆動ベルト34、駆動モータ35は、一対の固定レール31の間に配置されており、またキャリア32よりも下方位置に配置されている。
駆動モータ35は、駆動プーリ、従動プーリ及びベルトを用いたサーボモータであって、連結軸36を介して一対の固定レール31に連結されている。
【0032】
上記構成において、駆動モータ35を駆動させてキャリア32を移動させることで、キャリア32上に組み付けられたマーキングユニット20、第2可動ユニット40、第3可動ユニット50及びプリズム60が前後方向に移動する。
なお、固定レール31の長尺方向の両端部には、キャリア32の移動を規制する移動規制部材37が取り付けられている。
【0033】
第2可動ユニット40は、
図2~
図4、
図6に示すように、第1可動ユニット30に対してマーキングユニット20、第3可動ユニット50及びプリズム60を左右方向に可動させる可動部であって、例えばベルト駆動の電動アクチュエータである。
第2可動ユニット40は、装置本体部2及び第1可動ユニット30よりも上方に配置されており、バッテリ70及び制御コントローラよりも下方位置に配置されている。
【0034】
第2可動ユニット40は、
図6に示すように、キャリア32上に固定され、左右方向に延びている固定レール41と、固定レール41に沿って摺動可能に支持され、マーキングユニット20とともに左右移動する可動レール42と、キャリア32上に固定されるベルトクリップ43と、ベルトクリップ43に接続され、左右方向に長尺に延びている駆動ベルト44と、駆動ベルト44を駆動させる第2駆動モータ45と、を備えている。
【0035】
ベルトクリップ43、駆動ベルト44、第2駆動モータ45は、一対の可動レール42の間に配置されている。
第2駆動モータ45は、駆動プーリ、従動プーリ及びベルトを用いたサーボモータであって、連結軸46を介して一対の可動レール42に連結されている。
【0036】
上記構成において、第2駆動モータ45を駆動させて可動レール42を移動させることで、可動レール42の先端部に組み付けられたマーキングユニット20、第3可動ユニット50及びプリズム60が左右方向に移動する。
つまりは、第2可動ユニット40は、
図3に示す「収納位置」と、
図4に示す「突出位置」との間でマーキングユニット20を可動させることができる。
なお、可動レール42の長尺方向の両端部には、可動レール42の移動を規制する移動規制部材47が取り付けられている。
【0037】
第3可動ユニット50は、
図7、
図8に示すように、第2可動ユニット40に対してマーキングユニット20及びプリズム60を上下方向に可動させる可動部であって、例えばベルト駆動の電動アクチュエータである。
第3可動ユニット50は、第1可動ユニット30及び第2可動ユニット40よりも左右方向の外側に配置されており、第2可動ユニット40の一端部(左側端部)に片持ち構造で取り付けられている。
【0038】
第3可動ユニット50は、可動レール42の一端部に固定されるブラケット51と、ブラケット51の外側面に固定され、上下方向に延びている固定レール52と、固定レール52に沿って摺動可能に支持され、マーキングユニット20とともに上下移動するキャリア53と、キャリア53に設けられたベルトクリップ54と、ベルトクリップ54に接続され、上下方向に延びている駆動ベルト55と、駆動ベルト55を駆動させる第3駆動モータ56と、を備えている。
【0039】
キャリア53は、断面略L字形状の板部材であって、上下方向に長尺なキャリア本体53aと、キャリア本体53aの上端部から外側に突出しているフランジ53bと、フランジ53bの上面から上方に延びている延出部材53cと、を有している。
キャリア本体53aの内側面にはベルトクリップ54が固定され、キャリア本体53aの外側面にはマーキングユニット20が固定されている。延出部材53cの延出端部には、プリズム60が固定されている。
第3駆動モータ56は、駆動プーリ、従動プーリ及びベルトを用いたサーボモータであって、連結軸57を介してブラケット51に連結されている。
【0040】
上記構成において、第3駆動モータ56を駆動させてキャリア53を移動させることで、キャリア53に固定されたマーキングユニット20及びプリズム60が上下移動する。
なお、固定レール52の長尺方向の両端部には、キャリア53の移動を規制する移動規制部材58が取り付けられている。
【0041】
また上記構成において、
図3に示すように、マーキングユニット20が「収納位置」に位置するとき、第2可動ユニット40のうち、マーキングユニット20が配置された側とは反対側の一端部(右側端部)が、装置本体部2の外縁よりも外側に配置され、かつ、車輪10aの外縁よりも内側に配置されている。
そうすることで、第2可動ユニット40のサイズを極力大きくしてマーキングユニット20の可動領域を確保しつつ、第2可動ユニット40をコンパクトに収納できる。
【0042】
プリズム60は、
図2~
図4に示すように、測量装置100の検出対象物となる反射プリズムであって、装置本体部2の左側部分に配置されている。
具体的には、プリズム60は、
図7に示すように、第2可動ユニット40の左側端部に配置され、キャリア53の上端部に取り付けられている。なお、プリズム60は、マーキングユニット20に取り付けられても良い。
プリズム60は、装置本体部2、走行ユニット10、マーキングユニット20、可動ユニット30、40、50、バッテリ70及び制御コントローラ80よりも上方位置に配置されている。そのため、測量装置100が、墨出し装置1の向きに寄らず、プリズム60を検出することができる。
【0043】
上記構成において、
図3、
図4に示すように、プリズム60は、マーキングユニット20の周辺に取り付けられ、マーキングユニット20とともに「収納位置」と「突出位置」の間で可動する。
また、プリズム60は、平面視においてマーキングユニット20と重なる位置に配置され、マーキングユニット20と重なる位置を保持しながらマーキングユニット20とともに前後方向、左右方向及び上下方向に可動する。
そうすることで、測量装置100が、墨出し装置1のマーキングユニット20の位置を精度よく推定できる。
【0044】
バッテリ70は、
図1、
図2に示すように、走行ユニット10、マーキングユニット20、可動ユニット30、40、50及び制御コントローラ80と電気的に接続され、これら構成部品に電力を供給する板状の蓄電池であって、装置本体部2の上面に取り付けられている。
詳しく述べると、バッテリ70は、装置本体部2の右側方位置の角部(前方角部)に配置されている。
バッテリ70は、平面視において第2可動ユニット40の一部と重なる位置に配置され、かつ、第2可動ユニット40と干渉しないように第2可動ユニット40よりも上方位置に配置されている。
【0045】
制御コントローラ80は、
図1、
図2に示すように、データの演算・制御処理としてのCPU(プロセッサ)と、記憶装置としてのROM、RAM、及びHDD(SSD)と、ネットワークを通じて情報データの送受信を行う通信用インタフェースと、を有するコンピュータであって、装置本体部2の上面に取り付けられている。
詳しく述べると、制御コントローラ80は、立体形状の制御モジュール(制御ボックス)に格納され、装置本体部2の右側方位置の角部(後方角部)に配置されている。
【0046】
制御コントローラ80は、CPUが生成する制御信号を、通信用インタフェースを介して走行ユニット10、マーキングユニット20、可動ユニット30、40、50に送信(無線送信)することにより、走行ユニット10、マーキングユニット20、可動ユニット30、40、50のそれぞれの動作を制御する。
言い換えれば、制御コントローラ80のROM、RAM、及びHDDには、
図9に示すように、コンピュータとして必要な機能を果たすメインプログラムに加えて、墨出しプログラムが記憶されており、これらプログラムがCPUによって実行されることで、墨出し装置1の機能が発揮される。
【0047】
上記構成において、墨出し装置1は、走行ユニット10によって水平方向の全方向に走行しながら、マーキングユニット20によって墨出し線をマーキングすることで、予め定められた墨出し線のマーキング位置に墨出し線をマーキングする。
【0048】
また上記構成において、
図2に示すように、マーキングユニット20は装置本体部2の一方側(左側)に配置され、バッテリ70及び制御コントローラ80は装置本体部2の他方側(右側)に配置されている。
そのため、墨出し装置1の各構成部品を全体としてバランスよく配置できる。
【0049】
測量装置100は、
図1に示すように、測量位置において墨出し装置1に搭載されたプリズム60を検出し、検出結果に基づいて墨出し装置1の相対位置情報を測量する自動追尾型のトータルステーションである。
測量装置100は、オペレータ端末200と情報データ通信を行い、オペレータ端末200に向けて墨出し装置1の相対位置情報を送信する。
【0050】
測量装置100は、照射方向を連続的に変化させてレーザー光を照射し、プリズム60からの反射光を受光することで、プリズム60との距離及び向きを測量する装置本体101と、装置本体101の内部に取り付けられる制御コントローラ102と、を備えている。
制御コントローラ102は、CPU(プロセッサ)と、記憶装置と、通信用インタフェースとを備えたコンピュータである。
【0051】
オペレータ端末200は、作業者によって操作されるコンピュータである。
オペレータ端末200は、建物内で操作されても良いし、建物の外部で操作されても良い。
【0052】
<墨出しシステムの機能>
墨出し装置1(制御コントローラ80)は、
図6に示すように、機能面から説明すると、「設計データ」、「走行経路データ」のほか、各種プログラム及び各種データをオペレータ端末200から読み込んで一時的に記憶しておく記憶部81と、オペレータ端末200との間で各種データを送受信する通信部82と、建物内における現在位置の情報を取得する位置情報取得部83と、建物内において所定の走行経路に沿って走行させ、墨出し処理を実行させる墨出し制御部84と、を主な構成要素として備えている。
これらは、CPU、ROM、RAM、HDD、通信用インタフェース、及び各種プログラム等によって構成されている。
言い換えれば、制御コントローラ80(制御部)が、記憶部81と、通信部82と、位置情報取得部83と、墨出し制御部84との機能を実行する。
【0053】
記憶部81に記憶される「設計データ」とは、建物の3次元形状の設計情報であって、具体的には、建物のBIM(Building Information Modeling)データである。
「設計データ」は、3次元形状の設計図に関する情報を含むデータであって、建物の部屋毎に作成され、かつ、施工段階毎に作成される。
設計図に関する情報は、建物の所定の部屋において所定の施工段階における図面を示すものであって、当該設計図には墨出し線のマーキング位置情報も含まれている。
例えば、建物の情報と、建物の部屋の情報と、部屋の施工段階の情報とが対応付けられている。
本実施形態では、建物の3次元形状を示す設計データを想定しているが、特に限定されることなく、施工処理の内容によっては2次元形状の設計データであっても良い。
【0054】
「走行経路データ」とは、建物の部屋内において墨出し作業を行うための走行経路を示すデータである。「走行経路データ」は、例えば、建物の部屋毎に作成され、かつ、施工段階毎に作成されている。
【0055】
測量装置100は、各種プログラム及び各種データを記憶する記憶部110と、オペレータ端末200との間で各種データを送受信する通信部111と、測量位置に設置された状態で測量を実行する測量実行部112と、を主な構成要素として備えている。
これらは、CPU、ROM、RAM、HDD、通信用インタフェース、及び各種プログラム等によって構成されている。
【0056】
オペレータ端末200は、各種プログラム及び各種情報データを保持して格納しておく記憶部210と、墨出し装置1及び測量装置100との間で各種データを送受信する通信部211と、建物内における墨出し装置1の現在位置の情報を推定する位置推定部212と、を主な構成要素として備えている。
記憶部210は、「設計データ」及び「走行経路データ」を記憶している。
これらは、CPU、ROM、RAM、HDD、通信用インタフェース、及び各種プログラム等によって構成されている。
【0057】
<<墨出し装置の現在位置の推定>>
墨出しシステムSは、以下のように墨出し装置1の現在位置を推定する。
まず、測量装置100の測量実行部112は、
図1に示す測量位置において墨出し装置1に搭載されたプリズム60を検出し、検出結果に基づいて墨出し装置1の相対位置情報を測量する。
そして、通信部111は、オペレータ端末200とデータ通信を行い、墨出し装置1の相対位置情報を送信する。
【0058】
オペレータ端末200の通信部211は、測量装置100から墨出し装置1の相対位置情報を受信する。
そして、位置推定部212は、「設計データ」に含まれる建物Bの部屋の設計情報と、測量装置100によって測量された墨出し装置1の相対位置情報とに基づいて、建物Bの部屋内における墨出し装置1の現在位置を推定する。
そして、通信部211は、墨出し装置1に向けて墨出し装置1の位置情報を送信する。
「位置情報」とは、2次元の位置情報であって、例えば所定の柱B1の中心位置を原点位置(X0,Y0)と設定したときの位置座標(X,Y)によって特定される。なお、「位置情報」は、位置座標(X,Y,Z)によって特定される3次元の位置情報であっても良い。
【0059】
墨出し装置1の通信部82は、オペレータ端末200から墨出し装置1の位置情報を受信する。
そして、位置情報取得部83は、墨出し装置1の現在位置の情報を取得する。
【0060】
<<墨出し作業の実行>>
墨出しシステムSは、以下のように墨出し作業を実行する。
墨出し装置1の墨出し制御部84は、「設計データ(設計情報)」に基づいて墨出し線のマーキング位置を特定する。そして、墨出し装置1の現在位置の情報と、特定したマーキング位置の情報に基づいて墨出し装置1の走行経路決定し、「走行経路データ」を取得する。
そして、墨出し制御部84は、「走行経路データ」に基づいて墨出し装置1の「墨出し開始位置」及び「墨出し開始向き」を決定し、決定した「墨出し開始位置」まで墨出し装置1を移動させる。
【0061】
墨出し装置1が「墨出し開始位置」に到達したときに、墨出し制御部84は、決定した走行経路に沿って墨出し装置1を走行させ、マーキングユニット20の位置及び角度を可動させるように制御し、床のマーキング位置に墨出し線をマーキングさせる。
上記により、墨出しシステムSは、墨出し作業を実行することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、オペレータ端末200が、墨出し装置1の位置情報を推定し、当該位置情情報を墨出し装置1に向けてデータ送信しているが、オペレータ端末200の代わりに墨出し装置1が、自己の位置情報を推定しても良い。
すなわち、墨出し装置1が、自律移動ロボットとして「位置推定部」を構成要素として備え、自身で墨出しプログラムを実行しても良い。
その場合には、墨出し装置1が、測量装置100と直接データ通信を行い、相対位置情報を取得すると良い。
【0063】
また本実施形態では、墨出し装置1が、墨出し作業の制御を行っているが、墨出し装置1の代わりにオペレータ端末200が、墨出し装置1の墨出し作業の制御を行っても良い。
すなわち、オペレータ端末200が、「墨出し制御部」を構成要素として備え、墨出し装置1の動作を全般的に制御しても良い。
その場合には、オペレータ端末200が、墨出し装置1とリアルタイムでデータ通信を行い、墨出し装置1の動作を遠隔制御すると良い。
【0064】
また本実施形態では、墨出し装置1が、所定地点から墨出し開始位置まで自動走行することとしているが、作業者が、墨出し装置1を墨出し開始地点まで持ち運び、墨出し開始地点にセットする作業を行っても良い。
【0065】
<墨出し方法>
次に、墨出しシステムSで実行される墨出し方法(墨出しプログラム)の処理について、
図10に基づいて説明する。
本実施形態に係る上記プログラムは、作業者からの操作指示を受け付けて実行される。
【0066】
図10に示す「墨出し方法」の処理フローでは、まず、オペレータ端末200(位置推定部212)が、墨出し装置1の現在位置の情報を推定するステップ1(S1)から始まる。
具体的には、位置推定部212が、「設計データ」に含まれる建物の設計情報と、測量装置100によって測量された墨出し装置1の相対位置情報とに基づいて、建物内における墨出し装置1の現在位置を推定する。
墨出し装置1(位置情報取得部83)は、オペレータ端末200から墨出し装置1の現在位置の情報を取得する。
【0067】
そして、ステップ2で、墨出し装置1(墨出し制御部84)が墨出し線のマーキング位置を特定する。
具体的には、墨出し制御部84は、オペレータ端末200から「設計データ」を取得し、「設計データ」に含まれる墨出し線のマーキング位置情報を参照して、マーキング位置を特定する。
【0068】
そして、ステップ3で、墨出し制御部84が走行経路を決定する。
具体的には、墨出し制御部84は、墨出し装置1の現在位置の情報と、特定したマーキング位置の情報とに基づいて墨出し装置1の走行経路を決定する。そして、「走行経路データ」を取得する。
より具体的には、墨出し制御部84は、「走行経路データ」に基づいて墨出し装置1の「墨出し開始位置」と、「墨出し開始向き」とを決定する。
そして、墨出し制御部84は、決定した「墨出し開始位置」まで墨出し装置1を移動させる。
【0069】
そして、ステップ4で、墨出し装置1(墨出し制御部84)が墨出し作業を実行する。
具体的には、墨出し制御部84は、決定した「墨出し開始位置」から、決定した「走行経路」に沿って墨出し装置1を走行させ、建物の床面のマーキング位置に墨出し線をマーキングさせる。
【0070】
上記ステップを経て
図10のプロセスを終了する。
上記の墨出しプログラムの処理フローにより、墨出し装置1が走行経路に沿って墨出し線をマーキングすることができる。
【0071】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、
図1に示すように、墨出し装置1が自動走行(自律走行)するものあったが、特に限定されなくても良い。
例えば、作業者が墨出し装置1を遠隔操作することで、墨出し装置1が全方向に走行し、所定のマーキング位置に墨出し線を連続してマーキングしても良い。
【0072】
上記実施形態では、
図1に示すように、墨出し装置1が墨出し作業を行うものであったが、墨出し作業以外の施工処理に応用させても良い。
つまりは、施工処理装置が水平方向において全方向に走行し、所定の施工処理を行うものとしても良い。
「施工処理」とは、例えば、建物の被施工体(柱や梁)に耐火被覆材を吹き付ける「吹き付け作業」や、床レベルを測定する「床レベル測定作業」等が挙げられる。
【0073】
上記実施形態では、
図2~
図4に示すように、墨出し装置1が、4つの車輪10aを有する走行ユニット10を備えているが、車輪10aの個数、形状及び配置について特に限定されない。
例えば、墨出し装置1が3つの車輪10aを有していても良い。車輪10aがメカナムホイールではなく、通常の駆動車輪であっても良い。
【0074】
上記実施形態では、
図2に示すように、墨出し装置1が、装置本体部2に対してマーキングユニット20を前後方向(第1方向)、左右方向(第2方向)及び上下方向に可動させる構成となっているが、特に限定されない。
例えば、墨出し装置1が、装置本体部2に対してマーキングユニット20を左右方向のみに可動させるものであっても良い。あるいは、墨出し装置1が、マーキングユニット20を前後方向のみに可動させるものであっても良い。
また例えば、墨出し装置1が、装置本体部2に対してマーキングユニット20を斜め方向(前方斜め方向、後方斜め方向)に可動させるものであっても良い。
【0075】
上記実施形態では、
図3に示すように、複数の車輪10aが、装置本体部2の外縁よりも外側に配置されているが、特に限定されず、装置本体部2の外縁よりも内側に配置されても良い。すなわち、複数の車輪10aが装置本体部2の真下に配置されても良い。
その場合には、マーキングユニット20が「収納位置」にいるとき、マーキングユニット20及び可動ユニット30、40、50が、平面視において装置本体部2の外縁よりも内側に配置されていると良い。また、マーキングユニット20が「突出位置」にいるとき、マーキングユニット20が、平面視において装置本体部2の外縁よりも外側に配置されていると良い。
【0076】
上記実施形態では、オペレータ端末200(墨出し装置1)が読み取り可能な記録媒体に墨出しプログラムが記憶されており、オペレータ端末200(墨出し装置1)が当該プログラムを読み出して実行することによって処理が実行される。ここでオペレータ端末200が読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。
そのほか、オペレータ端末200を利用して専用ウェブアプリを起動させて、ウェブブラウザ上で墨出しプログラムが実行されることとしても良い。
【0077】
上記実施形態では、主として本発明に係る墨出し装置及び墨出しシステムに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
S 墨出しシステム
1 墨出し装置
2 装置本体部
2a 前方フレーム
2b 後方フレーム
2c 側方フレーム
2d 逃げ部
10 走行ユニット(走行部)
10a 車輪(前方車輪、側方車輪)
10b 車輪軸
10c 駆動モータ
20 マーキングユニット(マーキング部)
21 印字ヘッド
30 第1可動ユニット(可動部)
31 固定レール
32 キャリア
33 ベルトクリップ
34 駆動ベルト
35 駆動モータ
36 連結軸
37 移動規制部材
40 第2可動ユニット(可動部)
41 固定レール
42 可動レール
43 ベルトクリップ
44 駆動ベルト
45 第2駆動モータ
46 連結軸
47 移動規制部材
50 第3可動ユニット(可動部)
51 ブラケット
52 固定レール
53 キャリア
53a キャリア本体
53b フランジ
53c 延出部材
54 ベルトクリップ
55 駆動ベルト
56 第3駆動モータ
57 連結軸
58 移動規制部材
60 プリズム(検出対象物)
70 バッテリ
80 制御コントローラ(制御部)
81 記憶部
82 通信部
83 位置情報取得部
84 墨出し制御部
100 測量装置
101 装置本体
102 制御コントローラ
110 記憶部
111 通信部
112 測量実行部
200 オペレータ端末
210 記憶部
211 通信部
212 位置推定部
B 建物
B1 柱