(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117494
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】頭部及び軸部を有する締結部材の保持構造
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20240822BHJP
B25B 23/12 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B23P19/06 C
B25B23/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023625
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】505384140
【氏名又は名称】株式会社九飛勢螺
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新城 啓氏
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA02
3C038BA02
3C038BB02
(57)【要約】
【課題】締結機を大型化することがなく、構造を簡略化することができ、締結部材を締結機の特定位置に安定的に保持すること。
【解決手段】保持構造5は、頭部10及び軸部11を有する締結部材1が締結機70に保持されるようにするための保持構造5であって、締結機70に設けられて、締結部材1が軸方向に通過可能な筒状の通路3と、通路3の特定位置の周囲に設けられた複数の磁石2と、を備え、磁石2の吸引力で結合部材1の頭部10を特定位置で保持するよう構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部及び軸部を有する締結部材が締結機に保持されるようにするための保持構造であって、
前記締結機に設けられて、前記締結部材が軸方向に通過可能な非磁性体からなる筒状の通路と、
前記通路の特定位置の周囲に設けられた複数の磁石と、を備え、
前記磁石の吸引力で前記結合部材の頭部を前記特定位置で保持するよう構成されている
ことを特徴とする保持構造。
【請求項2】
前記複数の磁石は、等間隔を置いて偶数個設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の保持構造。
【請求項3】
前記複数の磁石は、前記通路の中心に向けられた前記磁石の極性が全て同一となるように配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の保持構造。
【請求項4】
前記複数の磁石は、前記通路の中心に向けられた前記磁石の極性が互いに隣接する前記磁石で異なるように配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の保持構造。
【請求項5】
前記複数の磁石は、互いに近接する2個を1組として各組が等間隔を置いて設けられ、
前記各組における2個の前記磁石が、前記通路の中心に向けられた前記磁石の極性が互いに近接する前記磁石で異なるように配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバビットやハンマー等を有する締結機で、ネジ、ビス、釘等の頭部及び軸部を有する締結部材を対象物にねじ締めしたり打ち込んだりする際に、締結部材を締結機の特定位置に安定的に保持するための保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ネジ、ビス、釘等の頭部及び軸部を有する締結部材を用いて、自動車や建築物等における対象物同士が締結される。そして、ドライバビットやハンマー等を有する締結機を用いて、締結部材が対象物にねじ締めされたり打ち込まれたりする。
【0003】
そして、締結機のドライバビットやハンマー等が通過する通路の特定位置に締結部材が保持されて、保持された締結部材がドライバビットやハンマー等によって対象物にねじ締めされたり打ち込まれたりする。
【0004】
例えば、特許文献1にドライバビットを有する締結機(自動ねじ締め機)が開示されている。この締結機は、モータの駆動で回転可能なドライバビットを有しており、ドライバビットが移動する通路の特定位置に締結部材(ネジ)が保持される。
【0005】
図4(A)の通り、締結機は一対のチャック爪6を有しており、一対のチャック爪6が締結部材1の頭部10及び軸部11を把持して特定位置に保持する。そして、
図4(B)の通り、ドライバビット4で締結部材1を対象物にねじ締めする際、一対のチャック爪6が開くようになっている。
【0006】
ところで、近年では、ゆるみ対策として、外径が大きな頭部10を有する締結部材1が多くなっている。その場合、外径が大きな頭部10によってチャック爪6が大きく開くことで、締結機が大型化して利便性が悪化すると共に、チャック爪6を高強度にする必要があるため、締結機の構造が複雑化して、製造コストが増加することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上記事情に鑑みて、締結機を大型化することがなく、構造を簡略化することができ、締結部材を締結機の特定位置に安定的に保持することができる保持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る保持構造は、頭部及び軸部を有する締結部材が締結機に保持されるようにするための保持構造であって、締結機に設けられて、締結部材が軸方向に通過可能な非磁性体からなる筒状の通路と、通路の特定位置の周囲に設けられた複数の磁石と、を備え、磁石の吸引力で結合部材の頭部を特定位置で保持するよう構成されている。
【0010】
また、複数の磁石は、等間隔を置いて偶数個設けられていることが望ましい。
【0011】
そして、複数の磁石は、通路の中心に向けられた磁石の極性が全て同一となるように配置されていることが望ましい。
【0012】
複数の磁石は、通路の中心に向けられた磁石の極性が互いに隣接する磁石で異なるように配置されていてもよい。
【0013】
さらに、複数の磁石は、互いに近接する2個を1組として各組が等間隔を置いて設けられ、各組における2個の磁石が、通路の中心に向けられた磁石の極性が互いに近接する磁石で異なるように配置されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る保持構造では、磁石の吸引力で締結部材の頭部を締結機の特定位置で保持するように構成されているので、外径が大きな頭部を有する締結部材であっても、締結部材を締結機の特定位置に安定的に保持することができると共に、締結機が大型化することがなく、構造を簡略化することができ、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】保持構造を示す図であって、
図2(A)は通路の軸方向の断面図、
図2(B)は
図2(A)のB-B断面図である。
【
図4】従来のチャック爪を示す図であって、
図4(A)はチャック爪が閉じて締結部材を把持している状態、
図4(B)はチャック爪が開いた状態である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明に係る保持構造の実施形態を説明する。
【0017】
図1に示す通り、本実施形態では、締結機70は、自動ねじ締め機からなる。オペレータは、締結機70を使って、ネジからなる締結部材1を対象物にねじ締めすることができるようになっている。締結機70は、伸縮駆動可能なシリンダ部71と、シリンダ部71の伸縮駆動に連動して移動する移動部72とを備えている。シリンダ部71が伸縮駆動することで、移動部72が往復移動するようになっている。
【0018】
締結機70は、さらに、回転駆動可能なモータ73と、モータ73の回転駆動に連動して回転するドライバビット74とを備えている。また、ドライバビット74は、移動部72と共に往復移動するように構成されている。従って、ドライバビット74は、回転しながら往復移動するように構成されている。
【0019】
締結機70は、ドライバビット74の先端側に締結部材1を特定位置に保持する保持構造5を備えている。そして、締結機70は、保持構造5に締結部材1を供給する締結部材供給装置75を備えている。そのため、締結機70は、保持構造5によって、締結部材供給装置75から供給される締結部材1を特定位置に保持することができる。
【0020】
締結機70は、保持構造5に保持された締結部材1をドライバビット74によって回転しながら押し出すことで、締結部材1を対象物に締結することができる。
【0021】
図2(A)に示す通り、保持構造5は、締結部材1が通過可能な筒状の通路3と、通路3の特定位置の周囲に設けられた複数の磁石2と、を備えている。締結部材1が通路3を通過するとき、締結部材1の軸部11の軸方向と通路3の軸方向3aとが一致するようになっている。通路3の内径寸法は、締結部材1の頭部10の外径寸法より大きいため、締結部材1が通路3を通過することができる。
【0022】
図2(B)に示す通り、本実施形態では、4個の磁石2が通路3の外側に等間隔を置いて設けられている。
図2(A)に示す通り、各磁石2は、通路3の軸方向3aにおける特定位置に配置されている。
【0023】
通路3は、磁石2が発生する磁場に相互作用を及ぼさないように、銅やプラスチック等の非磁性体で構成されている。また、締結部材1は、鉄等の磁性体で構成されているので、磁石2が発生する磁場によって吸引されて、通路3の特定位置に保持されるようになっている。そのため、締結部材1に対する磁石2の吸引力が強くなるように、通路3の内径寸法は、締結部材1の頭部10の外径に近接(例えば、1~5mm程度)するような長さに設定されている。
【0024】
締結部材1は、複数の磁石2によって頭部10の周囲が吸引されることで、通路3の特定位置に保持されるようになっている。そして、複数の磁石2が等間隔を置いて配置されているので、締結部材1は、軸部1の軸方向が通路3の軸方向3aに対して傾斜せずに一致して保持されるようになっている。
【0025】
締結部材1が通路3の軸方向3aに対して傾斜せずに保持されることで、ドライバビット74の先端が締結部材1の頭部10に一致すると共に、締結部材1を対象物に対して垂直に締結することができる。その結果、締結部材1を対象物に対して強固に締結することができる。
【0026】
図3(A)に示す通り、複数の磁石2は、通路3の中心に向けられた磁石2の極性が全て同一となるように配置されている。本実施形態では、複数の磁石2は、通路3の中心に向けられた磁石2の極性が全てS極となるように配置されている。
【0027】
このように配置することで、各磁石2が相互に磁力に対する悪影響を及ぼすことがなく、各磁石2の磁力を締結部材1の頭部10の周囲に対して等間隔に及ぼすことができるので、締結部材1が通路3に対して傾斜することなく保持することができる。
【0028】
他の実施形態では、
図3(B)に示す通り、複数の磁石2は、通路3の中心に向けられた磁石2の極性が互いに隣接する磁石2で異なるように配置されている。
【0029】
このように配置することで、各磁石2が相互に磁力に対する悪影響を及ぼすことがなく、各磁石2の磁力を締結部材1の頭部10の周囲に対して等間隔に及ぼすことができるので、締結部材1が通路3に対して傾斜することなく保持することができる。
【0030】
また、他の実施形態では、
図3(C)に示す通り、複数の磁石2は、互いに近接する2個を1組として各組が等間隔を置いて設けられ、各組における2個の磁石2が、通路3の中心に向けられた磁石2の極性が互いに近接する磁石2で異なるように配置されている。
【0031】
このように配置することで、各磁石2が相互に磁力に対する悪影響を及ぼすことがなく、各磁石2の磁力を締結部材1の頭部10の周囲に対して等間隔に及ぼすことができるので、締結部材1が通路3に対して傾斜することなく保持することができる。さらに、2個の磁石2を1組とするため、強い磁力で安定的に締結部材1を保持することができる。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の構成はこれらの実施形態に限定されない。
締結機70は、ハンマー等を有する打込み機であってもよく、締結部材1は、ビス、釘等であってもよいことは言うまでもない。
【0033】
本発明の効果について説明する。
【0034】
本発明に係る保持構造5は、頭部10及び軸部11を有する締結部材1が締結機70に保持されるようにするための保持構造5であって、締結機70に設けられて、締結部材1が軸方向に通過可能な非磁性体からなる筒状の通路3と、通路3の特定位置の周囲に設けられた複数の磁石2と、を備え、磁石2の吸引力で結合部材1の頭部10を特定位置で保持するよう構成されている。
【0035】
従来の締結機70では、締結部材1を保持する構造としてチャック爪が使用されているが、本発明では、磁石2の吸引力で締結部材1の頭部10を締結機70の特定位置で保持するように構成されているので、外径が大きな頭部10を有する締結部材1であっても、締結部材1を締結機70の特定位置に安定的に保持することができると共に、締結機70が大型化することがなく、構造を簡略化することができ、製造コストを低減することができる。
【0036】
さらに、一般的に、締結部材1は鉄等の磁性体で構成されているので、締結部材1に対する複数の磁石2の吸引力が低下しないために、通路3を非磁性体とすることで、磁石2が発生する磁場に相互作用を及ぼさないようにすることができる。
【0037】
また、複数の磁石2は、等間隔を置いて偶数個設けられていることが好ましい。
複数の磁石2は、筒状の通路3の周囲に配置されており、磁石2の吸引力によって締結部材1が保持されるので、偶数個の磁石2であると、磁石2が通路3の中心に対して対称に配置されることから、締結部材1を保持するときに締結部材1が確実かつ安定的に傾かないようにすることができる。
【0038】
さらに、複数の磁石2が等間隔を置いて配置されることから、締結部材1を保持するときに締結部材1が確実に傾かないようにすることができる。
【0039】
複数の磁石2は、通路3の中心に向けられた磁石2の極性が全て同一となるように配置されていることが望ましい。
従って、各磁石2が相互に磁力に対する悪影響を及ぼすことがなく、各磁石2の磁力を締結部材1の頭部10の周囲に対して等間隔に及ぼすことができるので、締結部材1が通路3に対して傾斜することなく保持することができる。
【0040】
また、好ましくは、複数の磁石2は、通路3の中心に向けられた磁石2の極性が互いに隣接する磁石2で異なるように配置されている。
その結果、各磁石2が相互に磁力に対する悪影響を及ぼすことがなく、各磁石2の磁力を締結部材1の頭部10の周囲に対して等間隔に及ぼすことができるので、締結部材1が通路3に対して傾斜することなく保持することができる。
【0041】
そして、複数の磁石2は、互いに近接する2個を1組として各組が等間隔を置いて設けられ、各組における2個の磁石2が、通路3の中心に向けられた磁石2の極性が互いに近接する磁石2で異なるように配置されていてもよい。
このように、2個の磁石2を1組とするため、強い磁力で安定的に締結部材1を保持することができる。また、各組の磁石2が等間隔を置いて配置されるので、各磁石2が相互に磁力に対する悪影響を及ぼすことがなく、締結部材1が通路3に対して傾斜することなく保持することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 締結部材
10 頭部
11 軸部
2 磁石
3 通路
5 保持構造
70 締結機