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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117518
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】空調方法及び空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20240822BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20240822BHJP
   F24F 8/70 20210101ALI20240822BHJP
【FI】
F24F7/007 D
F24F7/06 B
F24F8/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023653
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】523058618
【氏名又は名称】千葉放射線科学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀幸
【テーマコード(参考)】
3L058
【Fターム(参考)】
3L058BF06
3L058BF07
(57)【要約】
【課題】より効率的にラドンに起因するリスクを低減することのできる空調方法及び空調システムを提供する。
【解決手段】本発明の一観点に係る空調方法は、複数の壁及び扉によって区切られた複数の区画を天井近傍で接続し、一の区画の天井近傍の空気を他の区画に供給する一方、他の区画の底部近傍の空気を当該他の区画外に排出することを特徴とし、本発明の他の一観点に係る空調システムSは、第一の区画の天井近傍に設置される送気口5と、第二の区画の天井近傍に設置される給気口6と、送気口及び給気口を接続する送気配管7と、送気配管において送気を行わせる送気装置8と、区画の底部近傍に設置される排気口12と、排気口と外を接続する排気配管14と、排気配管において排気を行わせる排気装置15と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の壁及び扉によって区切られた複数の区画を天井近傍で接続し、
一の区画の天井近傍の空気を他の区画に供給する一方、
前記他の区画の底部近傍の空気を当該他の区画外に排出する、屋内の空調方法。
【請求項2】
前記一の区画に外気を給気する、請求項1記載の屋内の空調方法。
【請求項3】
複数の区画各々が、天井近傍において複数の区画の天井近傍いずれかに接続され、同一階において複数の区画が、天井近傍において直接または間接に接続されている請求項1記載の屋内の空調方法。
【請求項4】
複数の区画各々が、底部近傍において複数の区画の底部近傍いずれかに接続され、同一階において複数の区画が、底部近傍において直接または間接に接続されている請求項1記載の屋内の空調方法。
【請求項5】
底部近傍の空気を、排気口及びこれに接続される排気配管によって屋外に排出する請求項1記載の屋内の空調方法。
【請求項6】
第一の区画の天井近傍に設置される送気口と、
第二の区画の天井近傍に設置される給気口と、
前記送気口及び前記給気口を接続する送気配管と、
前記送気配管において送気を行わせる送気装置と、を備える空調システム。
【請求項7】
区画の底部近傍に設置される排気口と、
前記排気口と外を接続する排気配管と、
前記排気配管において排気を行わせる排気装置と、を備える空調システム。
【請求項8】
第一の区画の天井近傍に設置される送気口と、
第二の区画の天井近傍に設置される給気口と、
前記送気口及び前記給気口を接続する送気配管と、
前記送気配管において送気を行わせる送気装置と、
区画の底部近傍に設置される排気口と、
前記排気口と外を接続する排気配管と、
前記排気配管において排気を行わせる排気装置と、を備える空調システム。
【請求項9】
前記排気配管と前記送気配管の熱交換を行う熱交換器を備える請求項8記載の空調システム。
【請求項10】
屋外に設けられる採気口と、
前記第一の区画に設置される外気口と、
前記採気口と前記外気口を接続する外気配管と、
前記外気配管において外気供給を行わせる外気供給装置と、を有する請求項6又は8記載の空調システム。
【請求項11】
前記送気配管の途中に設けられるポロニウム捕集装置を有する請求項6又は8記載の空調システム。
【請求項12】
厨房区画における換気扇を覆う換気扇被覆部を備えており、
前記排気配管は前記換気扇被覆部に接続されることで排気を行うことが可能であり、
前記換気扇被覆部は、開閉弁を備えており、前記開閉弁によって、前記厨房区画における換気を行うか前記排気配管内の排気を行う、請求項7記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調方法及び空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
肺がんには肺の入り口部分である肺門部に発生するがんと肺の末端部分である肺野部に発生するがんの2種類がある。
【0003】
肺門部がんの原因はたばこといわれているが、肺野部がんの原因は長年不明とされてきた。ところが2008年に放射線の影響に関する国連科学委員会報告が発表され、空気中に存在するラドン222の吸引による被曝量は年間1.2mSvとされ、肺野部がんの原因はラドン222の吸引摂取と特定されている。ラドンの密度は空気の約7.5倍であり、密室では天井付近のラドンの濃度は低く、床付近のラドン濃度は高くなる。
【0004】
一方で、近年の住宅等の建築物では、快適な空気を外に逃がさないよう、建築物内すなわち屋内の気密性が高くなっており、上記の課題が顕著となると考えられる。
【0005】
上記ラドンに関する課題に対し、例えば下記特許文献1では、ラドンを検出するための装置が開示されている。
【0006】
なお、ラドン222は、崩壊してポロニウム218となる。ポロニウム218は水に吸着されやすいといった特徴がある。そして屋内で水分を多量に含むものは食べ物であり、気密性の高い屋内においては、放射性物質を体内に取り込むリスクが高くなり、胃がんや大腸がんのリスクを高めてしまうことにもなりかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6682023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の技術は、ラドンを検出するものにすぎず、実際にラドンを屋外にどのように排出するのかといった点についてはまだ検討が十分ではない。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、より効率的にラドンに起因するリスクを低減することのできる空調方法及び空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る屋内の空調方法は、複数の壁及び扉によって区切られた複数の区画を天井近傍で接続し、一の区画の天井近傍の空気を他の区画に供給する一方、他の区画の底部近傍の空気を当該他の区画外に排出するものである。
【0011】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、一の区画に外気を給気することが好ましい。
【0012】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、複数の区画各々が、天井近傍において複数の区画の天井近傍いずれかに接続され、同一階において複数の区画が、天井近傍において直接または間接に接続されていることが好ましい。
【0013】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、複数の区画各々が、底部近傍において複数の区画の底部近傍いずれかに接続され、同一階において複数の区画が、底部近傍において直接または間接に接続されていることが好ましい。
【0014】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、底部近傍の空気を、排気口及びこれに接続される排気配管によって屋外に排出することが好ましい。
【0015】
また、本発明の他の一観点に係る空調システムは、第一の区画の天井近傍に設置される送気口と、第二の区画の天井近傍に設置される給気口と、送気口及び給気口を接続する送気配管と、送気配管において送気を行わせる送気装置と、を備えるものである。
【0016】
また、本発明の他の一観点に係る空調システムは、区画の底部近傍に設置される排気口と、排気口と外を接続する排気配管と、排気配管において排気を行わせる排気装置と、を備えるものである。
【0017】
また、本発明の他の一観点に係る空調システムは、第一の区画の天井近傍に設置される送気口と、第二の区画の天井近傍に設置される給気口と、送気口及び給気口を接続する送気配管と、送気配管において送気を行わせる送気装置と、区画の底部近傍に設置される排気口と、排気口と外を接続する排気配管と、排気配管において排気を行わせる排気装置と、を備えるものである。
【0018】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、排気配管と送気配管の熱交換を行う熱交換器を備えることが好ましい。
【0019】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、屋外に設けられる採気口と、第一の区画に設置される外気口と、採気口と外気口を接続する外気配管と、外気配管において外気供給を行わせる外気供給装置と、を有することが好ましい。
【0020】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、送気配管の途中に設けられるポロニウム捕集装置を有することが好ましい。
【0021】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、厨房区画における換気扇を覆う換気扇被覆部を備えており、排気配管は換気扇被覆部に接続されることで排気を行うことが可能であり、換気扇被覆部は、開閉弁を備えており、開閉弁によって、厨房区画における換気を行うか排気配管内の排気を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上、本発明によって、より効率的にラドンに起因するリスクを低減することのできる空調方法及び空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る空調システムの概略を示す図である。
図2】実施形態に係る空調システムの他の例の概略を示す図である。
図3】実施形態に係る空調システムの他の例の概略を示す図である。
図4】実施形態に係る空調システムの他の例の概略を示す図である。
図5】実施形態に係る空調システムのポロニウム捕集装置の概略を示す図である。
図6】実施形態に係る空調システムの換気扇被覆部の概略を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態に記載した具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
【0025】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る空調システム(以下「本システム」という。)Sの概略を示すための図であり、住宅などの建築物の内部に設けられ、空調を行うことができるものである。
【0026】
本図で示すように、本システムSは様々な特徴を備えている。一つ目の特徴は、外気を屋内へ取り込む採気口1と、第一の区画A1(廊下・玄関)の天井と底部の中間近傍に設置される外気口2と、採気口1及び外気口2を接続する外気配管3と、外気配管3において送気を行わせるための外気供給装置4と、を備えるものである。
【0027】
2つ目の特徴は、第一の区画A1の天井近傍に設置される送気口5と、第二の区画A2(居室・寝室等)の天井と底部の中間近傍に設置される給気口6と、送気口5及び給気口6を接続する送気配管7と、送気配管7において送気を行わせるための送気装置8と、を備えるものである。
【0028】
3つ目の特徴は、本システムSでは、第二の区画A2の底部近傍に設置される排気口9と、第一の区画A1の底部近傍に設置される排出口10と、排気口9及び排出口10を接続する排気配管11と、第一の区画A1の底部近傍(玄関土間)に設置される排気口12と、屋内の空気を外部に放出する排出口13、排気口12と排出口13を接続する排気配管14と、排気配管13において排気を行わせるための排気装置15と、を備えるものである。
【0029】
また本システムSの適用対象となる住宅等の建築物において、その階数は特に制限されない。本図で示すように1階のみのいわゆる平屋の構造物であってもよく、二階以上であっても、更には二階よりも多い多数階であってもよい。
【0030】
本システムSは、典型的には戸建て住宅等の建築物の内部に設けられるものであるが、後述の他の実施形態で示すように、密閉されることで空気が滞留する複数の部屋を備える建築物であれば適用することが可能であるため、例えばマンションやビル等の建築物であっても当然に適用可能である。さらには、地下階を備える構造物であってもよい。
【0031】
本システムSの適用対象となる建築物は、上記の通り複数の区画に区切られているが、二つ以上区画が存在していれば問題はなく、この区画の数に限定はない。また、本システムSの説明では、複数の区画のうち特定の区画を「第一」の区画A1、「第二」の区画A2等と表現しているが、この「第一」や「第二」は、異なる区画であることを示し、わかりやすく説明するために特定の区画と他の区画を区別するために用いる接頭語に過ぎない。また本システムSにおける「区画」とは、一般に「部屋」、「個室」、「居室」等様々な言葉によって表現可能であるが、建築物内において、壁、床、天井、扉等の構造体によって区切られる空間をいう。なお、壁、床、天井、扉等の構造体によって区切られ、本システムSの機能を発揮することができる限りにおいていわゆる「廊下」や「階段」といった領域等も含まれる。一般的に区画はその閉じられた状態で密閉性が高く、空気が循環せず滞留することが多く、本システムSによって建築物内を循環させることで空気中に存在するラドン222の区画外又は建築物外への排出を促しラドン222等の空気よりも重い放射性物質(以下「ラドン等」という。)の滞留を防ぎ、肺がんなどのラドン等によるリスクを下げることが可能となる。
【0032】
本システムSにおいて採気口1は、上記の通り屋外に設けられ、建築物外壁において可能な限り高い位置が好ましい。室内、具体的には第一の区画A1に外気を取り入れるためのものである。また、本システムSにおいて採気口1の形状は特に制限されず、円形状、楕円形上、正方形や長方形(スリット等の細長孔等も含む)等の四角形等の多角形状であってよい。また、大きさも特に制限されるわけではなく、その建築物及びその区画の大きさによって適宜調整可能であるが、例えば、一辺5cmの正方形の大きさ以上、面積でいえば25cm以上の面積であることが好ましい。
【0033】
また、本システムSにおいて、採気口1の表面にはフィルターやカバーが存在していてもよい。カバーやフィルターを設けておくことで、塵等を吸い込まずより清浄な空気を送ることができるといった利点がある。
【0034】
また、第一の区画A1には、外気口2が設けられており、採気口1から入ってくる空気を第一の区画A1に供給することができる。また、本システムSにおける外気口2の形状および大きさ、更にはフィルターやカバーが存在してもよい点については上記の採気口1と同様であり、説明については省略する。
【0035】
また、本システムSにおける外気口2の高さについては特に制限されるわけではないが、区画の天井と底部の中間近傍に設けられていることが好ましい。天井近傍には送気口5が設けられるため天井近傍に設けるとそのままラドン等が底部に沈降する前に天井近傍の送気口5に入ってしまう恐れがあるためである。一方、底部近傍にすると、供給される空気の流れが底部に存在することとなり、空気を巻き上げてしまうなどの不都合が生じてしまう。そのため、天井と底部の中間近傍に外気口2を設けておくことが好ましい。ここで「中間近傍」としては、送気口5よりは低く排気口12よりは高い位置であって、天井と底部の中間(半分)の高さから上下1mの範囲内、好ましくは上下50cmの範囲内とすることが好ましい。
【0036】
また、本システムSでは、採気口1と外気口2とを接続する外気配管3を備えている。
【0037】
また、本システムSにおいて、外気配管3は、上記の通り採気口1と外気口2を接続するための配管であり、建築物一般的に用いることができる公知の配管を用いることができ、構造などについては限定されない。なお、「配管」とあるが、例えば区画同士が壁によって仕切られている程度の隣接する場合に、単に貫通孔をあけただけの場合もこの「配管」には含まれるものと考えてよい。
【0038】
また、本システムSでは、外気配管3において給気を行わせるための外気供給装置4を備えることが好ましい。外気供給装置4としては特に限定されるわけではないが、回転羽とこの回転羽を回転させる駆動装置を備えるいわゆるファンであることは好ましい一例である。外気供給装置4を用いることで、外から第一の区画A1への空気の流れを確実に行わせることが可能となる。
【0039】
また、本システムSでは、上記の通り、第一の区画A1の天井近傍に設置される送気口5を有する。送気口5は、天井近傍に設置された開口であり、これに上記の通り送気配管7が接続されている。なお、送気口5は、後述の記載から明らかなように、屋内において複数の区画間をつなぐ開口であり、入り口側が送気口であり、その出口側が給気口となる。ここで「天井近傍」とは天井を含むことはもちろんであるが、壁の天井近くの高さの位置を含む概念である。天井近傍とすることで、ラドン等の濃度の低い空気を取り込むことが可能となる。なお、「天井近傍」とは、上記の機能を確保することができる程度の高さであれば制限はないが、概ね天井から1m以内の範囲にあることが好ましく、より好ましくは天井から50cm以下の範囲であり、更に好ましくは天井から25cm以下である。
【0040】
また、本システムSにおける送気口5の形状および大きさ、更にはフィルターやカバーが存在してもよい点については上記の採気口1と同様であり、説明については省略する。
【0041】
すなわち、本システムSでは、ラドン等を含む空気が存在しているとしても、第一の区画A1の底部近傍に放射性物質を沈降させることで第一の区画A1の天井近傍の空気をラドン等の少ない空気領域とする。そしてこのラドン等の少ない空気を他の区画(第二の区画A2)に送気することで、第二の区画A2全体をよりラドン等の低い領域とすることができる。
【0042】
また、本システムSが適用される建築物には第二の区画A2が存在しており、第二の区画A2においても天井と底部の中間近傍に給気口6が設けられている。給気口6は上記の通り、送気口5と送気配管7によって接続されており、ラドン等の少なくなった空気が供給される開口となっている。本システムSでは、上記の通り、第一の区画A1においてラドン等の濃度の少ない空気を確保して第二の区画A2に送ることとなるため、第二の区画A2では当然にラドン等の濃度が少なくなる。
【0043】
また、本システムSにおける給気口6の形状および大きさ、更にはフィルターやカバーが存在してもよい点については上記の採気口1と同様であり、説明については省略する。
【0044】
また、本システムSでは、送気配管7において送気を行わせるための送気装置8を備えることが好ましい。送気装置8としては特に限定されるわけではないが、回転羽とこの回転羽を回転させる駆動装置を備えるいわゆるファンであることは好ましい一例である。送気装置8を用いることで、第一の区画A1から第二の区画A2への空気の流れを確実に行わせることが可能となる。
【0045】
また、本システムSでは、第二の区画A2の底部近傍に排気口9と、第一の区画A1の底部近傍に排出口10と、排気口9及び排出口10を接続する排気配管11が設けられている。本システムSによると、上記の通り第一の区画A1でラドン等濃度を低くした空気領域を作成し、第二の区画A2に送るため十分にラドン等濃度が低くなっているがそれでもラドン等が蓄積してしまう可能性があり、また、第二の区画A2に空気を供給する以上気圧を調整する観点から供給される空気量と同程度の空気量を区画外に排出させる必要がある。そのため、少しでもラドン等濃度の高い領域の空気を排出させる観点から、底部近傍に排気口9及び排出口10及び排気配管11を設けることで区画外に廃棄することが可能となる。ここで「排気」とは、区画の外にラドン等濃度が相対的に高い空気を排出することをいい、典型的には建築物の外に排気することが好ましいが、建築物において他の区画にこの空気を排出させることも含ませるものである。なお、「配管」とあるが、第一の区画A1と第二の区画A2が壁によって仕切られている程度の隣接する場合、排気口9及び排出口10及び排気配管11は単に貫通孔を開けた場合や扉底部に隙間を設けた場合も、この「配管」に含まれるものと考えてよい。
【0046】
また本システムSでは、上記の通り床近傍すなわち底部近傍に排気口9を設けているが、「底部近傍」とは底部そのものを含む概念ではあるものの、上記天井近傍と同様、底部近くのある程度の高さの範囲までも含ませて良い概念である。すなわち「底部近傍」とは、上記の機能を確保することができる程度の高さであれば制限はないが、概ね底部から10cm以下(人が横たわった状態での顔の高さ以下)の範囲にあることが好ましく、より好ましくは5cm以下の範囲である。
【0047】
また、本システムSでは、第一の区画A1の底部近傍(玄関土間)に排気口12と、屋内の空気を外部に放出する排出口13、排気口12と排出口13を接続する排気配管14を備えている。ここで「外」は、上記の通り、建築物の外を含むのが典型的ではある。なお、「配管」とあるが、例えば区画と外が壁によって仕切られている程度の隣接する場合に、単に貫通孔をあけただけの場合もこの「配管」には含まれるものと考えてよい。
【0048】
また、本システムSでは、排気配管14において排気を行わせるための排気装置15を備えることが好ましい。排気装置15としては特に限定されるわけではないが、送気装置8と同様の構成を採用することができる。具体的には、回転羽とこの回転羽を回転させる駆動装置を備えるいわゆるファンであることは好ましい一例である。排気装置15を用いることで、第一の区画A1から外への空気の流れを確実に行わせることが可能となる。
【0049】
ところで、本システムSでは、外気口2から供給される空気中に、空気よりも重いラドン等が含まれており、これを沈降させてラドン等の濃度が低くなった上澄みとなる空気を他の区画に供給することとなる。そのため第一の区画A1はできる限り、屋内において底部の高度が最も低く、天井の高度がある程度高い区画であることが好ましい。高度の低い区画であれば密度の大きいラドンは最も低い場所に沈降していき、天井の高度が十分あればラドンと上澄みの空気を分離しやすくなり、そのラドンを適切に外気へ排気すれば吸い込む恐れが少なるためである。この場合、一般住居においては玄関の土間及びそれに接続された廊下等が該当するが、これに限定されるわけではない。
【0050】
一方で、第二の区画A2は、ラドン等の濃度の低い空気が供給される区画であり、比較的居住時間の長い区画であることが好ましく、適している用途としては、例えば寝室やリビング等であるがこれに限定されるわけではない。
【0051】
(空調方法)
上記の記載から明らかであるが、ここで、本システムによる空調方法(以下「本方法」という。)について説明する。
【0052】
まず、本方法は、複数の壁及び扉によって区切られた複数の区画を天井近傍で接続し、一の区画(第一の区画A1)の天井近傍の空気を他の区画に供給する一方、他の区画(第二の区画A2)の底部近傍の空気を当該他の区画外に排出するものである。これにより、ラドンに起因するリスクを低減することができる。
【0053】
また、本方法においては、一の区画に対して外気を給気することが好ましい。外気を供給することで、屋内において空気の循環を形成し、底部にたまりやすいラドンを屋外に排出させやすくできる。
【0054】
また、本方法においては、後述の実施形態からも明らかとなるが、複数の区画、好ましくはすべての区画が、天井近傍において複数の区画の天井近傍いずれかに接続され、同一階において全ての区画が、天井近傍において直接または間接に接続されていることが好ましい。これにより、ラドン等の濃度の低い空気をいずれの区画に対しても供給しあうことが可能となる。
【0055】
また、本方法において、複数の区画各々が、底部近傍において複数の区画の底部近傍いずれかに接続され、同一階において複数の区画、好ましくはすべての区画が、底部近傍において直接または間接に接続されていることが好ましい。これにより、ラドン等の濃度の高くなった底部近傍の空気を区画外に排出させることが可能となる。特に、底部近傍の空気を、排気口及びこれに接続される排気配管によって屋外に排出することが好ましい。同一階に複数の区画を備える場合において、そのそれぞれの区画の高さが同じであると、ラドンの自重による移動の効果は期待できない。そのため、複数の区画各々をそれぞれ接続させることで、同一階であってもラドンの移動をより効率的にすることができる。
【0056】
以上、本システムSによって、より効率的にラドンに起因するリスクを低減することのできる空調方法及び空調システムを提供することができる。
【0057】
(実施形態2)
図2は、本実施形態に係る空調システム(以下「本システム」という。)Sの概略を示す図である。本実施形態は、一つの階に三以上の区画が存在し、また、複数階建の建築物である点が上記実施形態1とは異なる点である。なお、本実施形態では、主として異なる点について説明し、実施形態1と同様の構成についてはその説明を省略する。
【0058】
本システムSでは、建築物の二階部分に第三の区画A3、第一の区画A1及び第二の区画A2が存在し、さらに、一階には第四の区画A4と第五の区画A5が存在している。第三の区画A3は普段人が立ち入らない収納や内壁空間や十分な底面積と高さを持つ空洞容器等が好ましい。第一の区画A1とは図1と同様、階下への階段に接続されている廊下で構成されており、第二の区画A2も図1と同様、寝室やリビングで構成されているのが好ましい。第四の区画A4は二階からの階段に接続された廊下や玄関で、第五の区画A5がリビングやダイニングキッチンで構成されている。
【0059】
本システムSにおいて、第三の区画A3には、上記実施形態1と同様、第三の区画A3の中間の高さに設けられる外気口2から外気が供給されており、天井近傍に設けられている送気口105から送気配管107、送気装置108、給気口106を介して第一の区画A1にラドン等の濃度の低い空気が供給される。一方、第二の区画A2も、第一の区画A1の天井近傍に設けられている送気口5から送気配管7、送気装置8、給気口6を介して第二の区画A2にラドン等の濃度の低い空気が供給される。この結果、第二の区画A2には第一の区画A1よりもラドン等の濃度のさらに低い空気を供給することができる。
【0060】
また、第二の区画A2の底部近傍には図1と同様、排気口9と排気配管11と排出口10が形成されており、第三の区画A3の底部近傍においても排気口109と排気配管111と排出口110が形成されており、第一の区画A1においては階段の入口が排気口の機能を担うことによって、底部近傍に集まるラドン等を外部又は階下へ排出することが可能となっている。
【0061】
また、本システムSでは、第一の区画A1が階段によって階下の第四の区画A4に接続されている。
【0062】
また階下の第四の区画A4においても、図1と同様、底部近傍に排気口12、排出口13、排気配管14、排気装置15が設けられており、第五の区画A5の底部近傍においては排気口209と排気配管211と排出口210により区画外、本図の例では第四の区画A4にラドン等の濃度の比較的高い空気を排出することができる。
【0063】
ところで、本システムSでは、限定されるわけではないが、排気配管14によって建築物外部に空気を排出する場合において、排気配管14と外気配管3の熱交換を行う熱交換器16を備える構成とすることも好ましい。この場合の具体的なイメージについて図3に示しておく。
【0064】
具体的に説明すると、本システムSの他の例では排気配管14を延長して外気配管3と熱交換させることで、屋内の空気の温度と外気の温度とを近づけることが可能となる。より具体的には、冬に屋内で暖房によって暖められた空気が排気される場合は、外気配管3によって屋内に供給される空気の温度を高くすることができ、夏に屋内で冷房によって冷たくなった空気が排気される場合は、外気配管3から屋内に供給される空気の温度を低くすることができ、エネルギー効率の観点から好ましいものとなる。
【0065】
以上、本実施形態では、複数階の建築物であっても適用可能であり、また、一つの階に複数の区画があった場合に、そのそれぞれが直接または間接的に送気口、送気配管、給気口によって接続されていることで、ラドン等の濃度の低い空気を提供することが可能となる。
【0066】
(実施形態3)
本実施形態は、上記実施形態2と同様であるが、階下の第五の区画A5に対しても給気口18を設けて、階上の区画(例えば第二の区画A2)の天井近傍からラドン等の濃度の低い空気を供給する仕組みとなっている。本図の例を図4に示しておく。
【0067】
本実施形態に係る空調システム(以下「本システム」という。)Sでは、第二の区画A2の天井近傍に更に送気口17を設け、送気配管19及び送気装置20及び給気口18を介して階下の第五の区画A5に供給している。これにより、ラドン等の少ない空気を階下に対しても供給可能である。
【0068】
ところで、ラドン222は、アルファ崩壊することによってポロニウム218に変化することが知られている。ポロニウム218はラドン222とは異なり水に溶けやすい性質がある水溶性放射性物質であるため、液体が多く存在する区画には特に注意が必要となる。一般的に、オフィスビルでは給湯室や食堂、調理場、一般家庭ではダイニングキッチン等が経口摂取する飲料水や湿った食品を空気中に暴露する区画となるため、この区画の天井近傍に給気口18を設ける構成としておくことが好ましい。
【0069】
さらに、本実施形態では、液体を多く取り扱う区画である第五の区画A5に空気を供給する送気配管19の途中に、ポロニウム218を捕集するためのポロニウム捕集装置51を備えていることが好ましい。
【0070】
ポロニウム捕集装置51の構成は、例えば図5で示すように、水を収容する水収容容器52を有して構成されており、この水収容容器52内に、上記送気配管19が接続される構成、具体的には、空気が入ってくる側の送気配管の一端が水収容容器52の鉛直方向下側に設置され、空気が出ていく側の送気配管の一端が水収容容器52の鉛直方向上側に設置されている。上記の通りポロニウム218は水に溶けやすい性質があるため、水を収容しておくことでこの水によって空気中からポロニウム218を効率的に除去することが可能である。
【0071】
なお、ポロニウム捕集装置51に通す空気の供給元となる区画については特に限定されるわけではないが、寝室であることが好ましい。寝室は台所・食堂使用時に人の出入りが比較的少なく、その天井近傍の空気におけるラドン等の濃度が最も低いと考えられるためである。
【0072】
ところで、ポロニウム218を区画内において除去することは重要であり、ポロニウム捕集装置51の機能を区画内に配置する他の例として、水を収容する水収容容器62と、水収容容器62に浸され水を蒸散させる蒸散具63と、この蒸散具63に風を供給する送風機64と、を有するポロニウム捕集装置61を構成してもよい。このように区画内の空間にポロニウム捕集装置61を設けると、空気中に飛散するポロニウム218を送風機64によって水に浸された蒸散具63に付着させることでポロニウム218を効率的に捕集することができるといった利点がある。
【0073】
また、本システムSでは、更に、厨房区画である第五の区画A5において設置される換気扇Fを覆う換気扇被覆部71を備えていることが好ましい。この場合の例を図6に示しておく。
【0074】
本システムSにおける換気扇被覆部71は、本図で示すように、換気扇Fを被覆するカバー部72と、これにつながる配管状の被覆配管部73と、を備えたものであり、区画内において設けられており、一方の口74は底部近傍に設けられ、他方の口75は換気扇を覆うようになっている。すなわちこの場合において、排気口12が換気扇Fとなっている。
【0075】
本システムSにおいて、カバー部72及び被覆配管部73は、排気する空気を屋外まで導く点において排気配管14とその機能は同じであるが、主として屋内に設けられている点が排気配管14と少し異なる。
【0076】
また換気扇被覆部71には、その経路中、具体的には換気扇Fを被覆するカバー部72に開閉弁76を備えており、開閉弁76によって、厨房区画である第五の区画A5における換気を行うか排気配管内の排気を行うことができるようになっていることが好ましい。このようにすることで、一般的な建築物の屋内に配置される換気扇Fを活用してラドンを多く含む排気が容易に可能となるとともに、開閉弁76を備えることで、厨房等において発生する煙などを排出することが可能となる。なお、開閉弁76が閉じた状態では、底部近傍から吸引したラドン222を相対的に多く含む空気を効率的に排出するとともにこの換気扇被覆部71からラドン222が漏れ出てしまうことを抑えることができる。開閉弁76が開いた状態では厨房等において発生する煙などを屋外に排出させることができる一方、被覆配管部73の経路を閉じることでラドン222が屋内(厨房内)に供給されないよう蓋となっている。これにより、換気扇の機能を最大限に活用することが可能となる。
【0077】
以上、本実施形態により、複数階の建築物に対しても効率的にラドン等のリスクを低減させる空調システムとなる。さらに、本実施形態のように、ポロニウム捕集装置や換気扇被覆部を設けることで、厨房等においてポロニウム218等のリスクを低減させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、空調システム及び空調方法として産業上の利用可能性がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6