(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117521
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】膵臓がんの検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240822BHJP
C07K 14/75 20060101ALI20240822BHJP
C07K 14/81 20060101ALI20240822BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
C07K14/75
C07K14/81
C07K14/47
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023657
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(71)【出願人】
【識別番号】504150782
【氏名又は名称】株式会社プロトセラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高原 照美
(72)【発明者】
【氏名】安田 一朗
(72)【発明者】
【氏名】李 良子
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 南希
(72)【発明者】
【氏名】麻田 恭一
【テーマコード(参考)】
2G045
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045DA36
2G045FB06
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA16
4H045BA18
4H045BA19
4H045BA20
4H045CA40
4H045EA51
(57)【要約】
【課題】膵臓がんの診断のための新規なマーカーペプチドの提供。
【解決手段】被検者における、膵臓がんの検出方法は、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのうちの少なくとも一方を測定することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者における膵臓がんの検出方法であって、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのうちの少なくとも一方を測定することを含む方法。
【請求項2】
配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドからなる群から選択される1種又は2種以上のペプチドをさらに測定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被検者における膵臓がんの検出方法であって、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを測定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
被検者における膵臓がんの検出方法であって、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを測定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
被検者における膵臓がんの検出方法であって、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを測定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
被検者における膵臓がんの検出方法であって、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを測定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
被検者における膵臓がんの検出方法であって、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを測定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
生体試料を質量分析にかけることを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記生物試料が血液、血漿、血清、唾液、尿、髄液、骨髄液、胸水、腹水、関節液、汗、涙液、眼房水、硝子体液及びリンパ液からなる群より選択される体液からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記膵臓がんの検出は、膵臓がんの判定、膵臓がんの予防効果の判定、膵臓がんの治療効果の判定、治療薬が奏効する膵臓がん患者の判定、個々の膵臓がん患者に奏効する治療薬の判定、膵臓がんの診断のための検査方法、又は膵臓がんの治療のための検査方法である請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのうちの少なくとも一方が安定同位体で標識された内部標準品を備える膵臓がんの検出キット。
【請求項12】
配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのうちの少なくとも一方に対する抗体を含む膵臓がんの検出キット。
【請求項13】
配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのうちの少なくとも一方に対する抗体を検出試薬として含む膵臓がんの検出剤。
【請求項14】
被検者における膵臓がんの罹患可能性を判定するための、コンピュータにより実行される方法であって、被検者の生物試料中の、本発明の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号3~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも1種以上のペプチドとについての定量的データを取得する工程と、前記取得したデータを、前記2種、3種、又は4種以上のペプチドの関数である多変量ロジスティック回帰モデルに適用し、被検者における膵臓がんの罹患可能性の予測値を求める工程を含む方法を包含する、方法。
【請求項15】
配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのうちの少なくとも一方を含む膵臓がんを検出するためのバイオマーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドマーカーを用いた膵臓がんの検出方法に関し、より詳細には、ペプチドマーカーを用いた膵臓がんの判定、治療薬が奏効する膵臓がん患者(リスポンダー)の判定(コンパニオン診断法)、予防効果の判定、治療効果の判定、早期診断のための検査方法、早期治療のための検査方法、及び物質のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膵臓がんは、症状が出にくく早期発見が困難であり、全がんの中でもっとも生存率の低い難治がんとして知られている。このため、膵臓がんを早期に診断する方法が切望されている。
【0003】
特許文献1には、α-1-アンチトリプシン(配列番号418)、フィブリノーゲンα鎖(配列番号758)がすい臓がんの診断マーカーとなり得るタンパク質であることが開示されている。
【0004】
特許文献2は、血液凝固因子XIII A鎖由来のペプチドが、すい臓がんを含むがんの診断マーカーとなり得ることを開示している。
【0005】
特許文献3は、α-1-アンチトリプシンの383-413番目のアミノ酸からなるペプチドが、すい臓がんの診断マーカーとなり得ることを開示している。
【0006】
非特許文献1は、すい臓がん患者と健常者でα-2-HS-糖タンパク質の発現が異なることを報告している。ただし、診断マーカーとなり得る特定のペプチドの配列は記載されていない。
【0007】
非特許文献2は、すい臓がんのマーカーペプチドとして、血液凝固第XIII因子の14-38のアミノ酸配列からなるペプチド、フィブリノーゲンβ鎖の45-71番目のアミノ酸からなるペプチド、プロトロンビンの328-363番目のアミノ酸からなるペプチド、フィブリノーゲンα鎖の529-574番目のアミノ酸からなるペプチド、フィブリノーゲンα鎖の576-629番目のアミノ酸からなるペプチドを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2016-519285
【特許文献2】WO2018007555A1
【特許文献3】WO2020223646A1
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Molecular Medicine REREPORORTS 3 651-656
【非特許文献2】translational proteomics 2 (2014) 39-51
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、被検者の生物試料中のバイオマーカーペプチドの測定により膵臓がんを迅速かつ高精度に検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、以下の態様が提供される。
項1.
被検者における膵臓がんの検出方法であって、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのうちの少なくとも一方を測定することを含む方法。
項2.
配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドからなる群から選択される1種又は2種以上のペプチドをさらに測定することを含む項1に記載の方法。
項3.
被検者における膵臓がんの検出方法であって、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを測定することを含む項1に記載の方法。
項4.
被検者における膵臓がんの検出方法であって、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを測定することを含む項1に記載の方法。
項5.
被検者における膵臓がんの検出方法であって、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを測定することを含む項1に記載の方法。
項6.
被検者における膵臓がんの検出方法であって、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを測定することを含む項1に記載の方法。
項7.
被検者における膵臓がんの検出方法であって、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを測定することを含む項1に記載の方法。
項8.
生体試料を質量分析にかけることを含む、項1~7のいずれか一項に記載の方法。
項9.
前記生物試料が血液、血漿、血清、唾液、尿、髄液、骨髄液、胸水、腹水、関節液、汗、涙液、眼房水、硝子体液及びリンパ液からなる群より選択される体液からなる、項1~7のいずれか一項に記載の方法。
項10.
前記膵臓がんの検出は、膵臓がんの判定、膵臓がんの予防効果の判定、膵臓がんの治療効果の判定、治療薬が奏効する膵臓がん患者の判定、個々の膵臓がん患者に奏効する治療薬の判定、膵臓がんの診断のための検査方法、又は膵臓がんの治療のための検査方法である項1~7のいずれか一項に記載の方法。
項11.
配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのうちの少なくとも一方が安定同位体で標識された内部標準品を備える膵臓がんの検出キット。
項12.
配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのうちの少なくとも一方に対する抗体を含む膵臓がんの検出キット。
項13.
配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのうちの少なくとも一方に対する抗体を検出試薬として含む膵臓がんの検出剤。
項14.
被検者における膵臓がんの罹患可能性を判定するための、コンピュータにより実行される方法であって、被検者の生物試料中の、本発明の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号3~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも1種以上のペプチドとについての定量的データを取得する工程と、前記取得したデータを、前記2種、3種、又は4種以上のペプチドの関数である多変量ロジスティック回帰モデルに適用し、被検者における膵臓がんの罹患可能性の予測値を求める工程を含む方法を包含する、方法。
項15.
配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのうちの少なくとも一方を含む膵臓がんを検出するためのバイオマーカー。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、膵臓がんを迅速かつ極めて高い信頼性で判定できるため、膵臓がんの早期診断、及び/又は早期治療が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】6種のマルチマーカーを用いた多変量ロジスティック回帰式で評価した各群の被検者のリスクインデックスの散布図。NC:健常者、PAC:膵臓がん患者。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、新規かつ有用な膵臓がんの検出マーカーペプチド(以下、包括して「本発明のペプチド」という場合もある)を提供する。
【0015】
本明細書において、膵臓がんの「検出」には、膵臓がんの判定、治療薬が奏効する膵臓がん患者(リスポンダー)の判定(コンパニオン診断法)、膵臓がんの予防効果の判定、膵臓がんの治療効果の判定、膵臓がんの診断(特には早期診断)ための検査方法、及び膵臓がんの治療(特には早期治療)のための検査方法が含まれる。膵臓がんの「判定」には、膵臓がんの有無を判定することのみならず、予防的に膵臓がんの罹患可能性を判定することや、治療後の膵臓がんの予後を予測すること、及び膵臓がんの治療薬の治療効果を判定することが含まれる。物質のスクリーニング方法には、膵臓がんの「検出」、「判定」及び「治療」に有用な物質のスクリーニング方法が含まれる。
【0016】
本明細書において、「罹患」には「発症」が含まれる。
【0017】
本明細書において、「治療」とは、疾患もしくは症状の治癒又は改善、或いは症状の抑制を意味し「予防」を含む。「予防」とは、疾患又は症状の発現を未然に防ぐことを意味する。
【0018】
本明細書において、「ペプチド」とは、2個以上100個以下のアミノ酸が結合して形成された分子を指す。
【0019】
本発明は、被検者における、膵臓がんの検出又は判定方法であって、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのうちの少なくとも一方を測定することを含む方法を包含する。
【0020】
QGVNDNEEGFFSAR (配列番号1)
TVVQPSVGAAAGPVVPPCPGRIRHFKV (配列番号2)
配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、フィブリノーゲンβ鎖の部分配列であり、質量分析によるモノアイソトピック質量計算値[M+H]+が約1552.67である。
【0021】
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、α-2-HS-糖タンパク質の部分配列であり、質量分析によるモノアイソトピック質量計算値[M+H]+が約2739.52である。
【0022】
質量の実測値は、用いられる測定方法・測定機器に応じて若干変動し得る。したがって、これらの質量における「約」とは、例えば、質量分析計を用いる方法による場合は、±0.5%以内、好ましくは±0.3%以内、より好ましくは±0.1%以内の誤差を含む意味で用いられる。
【0023】
配列番号1及び2で表されるアミノ酸配列からなる各ペプチドの発現量は、膵臓がんの有無と相関がある。具体的には、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの血清中の濃度又は量は、膵臓がん患者で健常者よりも約5倍高く、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの血清中の濃度又は量は、膵臓がん患者で健常者よりも低い。
【0024】
本発明のペプチドをバイオマーカーとして検出する検査、判定、及び診断方法は、従来の膵臓がんの診断方法に代わりに、又は従来の膵臓がんの診断方法と組み合わせて、膵臓がんの検出若しくは診断に、又は膵臓がんの検出若しくは診断の補助に適用可能である。
【0025】
本明細書において、「配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド」と言う場合、別途明記されていない限り、そのようなペプチドには、各アミノ酸が非修飾である配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのみならず、アミノ酸の種類を維持したまま1又は複数のアミノ酸が修飾されている、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドも含まれる。そのような修飾には、酸素原子の結合による酸化、リン酸化、N-アセチル化、S-システイン化等が含まれる。配列番号2~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの各々も同様に、別途明記されていない限り、各アミノ酸が非修飾又は修飾されているペプチドを包含するものとする。配列番号2~10で表されるアミノ酸配列からなる各ペプチドについてもこの定義が当てはまる。
【0026】
配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、好ましくはN末端の1番目のGlnがピログルタミル化されている。
【0027】
一実施形態において、本発明の被検者における膵臓がんの検出方法は、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを測定することを含む。
【0028】
一実施形態において、本発明の被検者における膵臓がんの検出方法は、被検者の生物試料中の配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを測定することを含む。
【0029】
一実施形態において、被検者における膵臓がんの検出方法は、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの両方を測定することを含む。
【0030】
本発明の被検者における膵臓がんの検出方法は、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドに加えて、追加のペプチドを測定することを含んでもよい。そのような追加のペプチドとして、以下の配列番号3~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドが挙げられる。
【0031】
GHRPLDKKREEAPSLRPAPPPISGGGY (配列番号3)
SETSRTAFGGRRAVPPNNSNAAEDDLPTVELQGVVPR (配列番号4)
SIPPEVKFNKPFVFLMIEQNTKSPLFMGKVVNPTQK (配列番号5)
TFGSGEADCGLRPLFEKKSLEDKTERELLESYIDGR (配列番号6)
TFPGFFSPMLGEFVSETESRGSESGIFTNTKESSSHHPGIAEFPSRG (配列番号7)
SSSYSKQFTSSTSYNRGDSTFESKSYKMADEAGSEADHEGTHSTKRGHAKSRPV (配列番号8)
SVPNGPSPEEVEQQKRQQPGPSEHIERRVSNAG (配列番号9)
VKVLDAVRGSPAIN (配列番号10)
【0032】
配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、フィブリノーゲンβ鎖の部分配列であり、質量分析によるモノアイソトピック質量計算値[M+H]+が約2882.54である。
【0033】
配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、血液凝固第XIII因子 A鎖の部分配列であり、質量分析によるモノアイソトピック質量計算値[M+H]+が約3949.98である。
【0034】
配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、α-1-アンチトリプシンの部分配列であり、16番目(α-1-アンチトリプシンタンパク質のN末端から398番目)のメチオニンが酸化している場合、質量分析によるモノアイソトピック質量計算値[M+H]+が約4149.23であり、16番目及び27番目(α-1-アンチトリプシンタンパク質のN末端から409番目)のメチオニンが酸化している場合、質量分析によるモノアイソトピック質量計算値[M+H]+が約4165.22である。
【0035】
配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、プロトロンビンの部分配列であり、質量分析によるモノアイソトピック質量計算値[M+H]+が約4208.03である。
【0036】
配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、フィブリノーゲンα鎖の部分配列であり、質量分析によるモノアイソトピック質量計算値[M+H]+が約5078.35である。
【0037】
配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、フィブリノーゲンα鎖の部分配列であり、質量分析によるモノアイソトピック質量計算値[M+H]+が約5917.70である。
【0038】
配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、血液拡張因子刺激リン酸化タンパク質の部分配列であり、質量分析によるモノアイソトピック質量計算値[M+H]+が約3623.79である。
【0039】
配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、トランスサイレチンの部分配列であり、質量分析によるモノアイソトピック質量計算値[M+H]+が約1438.83である。
【0040】
本発明のペプチドの特定のアミノ酸の修飾の例としては、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの1番目のセリンのアセチル化、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの16番目(α-1-アンチトリプシンタンパク質のN末端から398番目)のメチオニンの酸化、配列番号5で表されるアミノ酸からなるペプチドの27番目(α-1-アンチトリプシンタンパク質のN末端から409番目)のメチオニンの酸化、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの9番目(プロトロンビンタンパク質のN末端から336番目)のシステインのS-システイン化、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの9番目(フィブリノーゲンα鎖タンパク質の536番目)のメチオニンの酸化、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの28番目(フィブリノーゲンα鎖タンパク質の603番目)のメチオニンの酸化、などが挙げられる。このような場合も、配列番号1~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのいずれかのアミノ酸配列を有する限り、本発明の範囲に包含される。なお、配列番号1~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの上記修飾体は、質量分析にて非修飾体と区別が可能であり、疾患の検出、判定及び治療等に、修飾ペプチド又は非修飾ペプチドのいずれを適切な状況で使用することも本発明の範囲に包含される。
【0041】
配列番号3~10で表されるアミノ酸配列からなる各ペプチドの発現量は、膵臓がんの有無と相関がある。具体的には、配列番号3、5、6、8及び9で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの血清中の濃度又は量は、膵臓がん患者で健常者よりも高く、配列番号4、7及び10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの血清中の濃度又は量は、膵臓がん患者で健常者よりも低い。
【0042】
配列番号3~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つを、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと組み合わせて用いることで、当該疾患をより高い精度で検出することができる。
【0043】
一つの実施形態では、被検者における膵臓がんの検出又は判定方法で測定される本発明のペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号2~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドとを含む。2以上のペプチドを組み合わせることにより、検出精度が増大する。
【0044】
一つの実施形態では、被検者における膵臓がんの検出又は判定方法で測定される本発明のペプチドは、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号1,3~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドとを含む。2以上のペプチドを組み合わせることにより、検出精度が増大する。
【0045】
一つの実施形態では、被検者における膵臓がんの検出又は判定方法で測定される本発明のペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号3~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドとを含む。2以上のペプチドを組み合わせることにより、検出精度が増大する。
【0046】
好ましい一つの実施形態では、被検者における膵臓がんの検出又は判定方法で測定される本発明のペプチドは、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が大幅に増大する。
【0047】
好ましい一つの実施形態では、被検者における膵臓がんの検出又は判定方法で測定される本発明のペプチドは、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が大幅に増大する。
【0048】
好ましい一つの実施形態では、被検者における膵臓がんの検出又は判定方法で測定される本発明のペプチドは、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号3~8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドと、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が大幅に増大する。
【0049】
好ましい一つの実施形態では、被検者における膵臓がんの検出又は判定方法で測定される本発明のペプチドは、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が大幅に増大する。
【0050】
好ましい一つの実施形態では、被検者における膵臓がんの検出又は判定方法で測定される本発明のペプチドは、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号3~8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドと、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が大幅に増大する。
【0051】
好ましい一つの実施形態では、被検者における膵臓がんの検出又は判定方法で測定される本発明のペプチドは、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が大幅に増大する。
【0052】
被検者には、膵臓がんに罹患していると疑われる患者が含まれ、「膵臓がんに罹患していると疑われる患者」は、被検者本人が主観的に疑いを抱く者(何らかの自覚症状がある者に限らず、単に予防検診の受診を希望する者を含む)であってもよいし、何らかの客観的な根拠に基づいて膵臓がんと判定又は診断された者(例えば腹痛、腰痛、糖尿病悪化などを契機に腹部画像検査を受検し膵臓がんと診断された者)であってもよい。「ペプチドを測定する」とはペプチドの濃度、量、又はシグナル強度を測定することを指す。
【0053】
被検試料となる被検者由来の生体試料は特に限定されないが、被検者への侵襲が少ないものであることが好ましく、例えば、血液、血漿、血清、唾液、尿、涙液、汗など生体から容易に採取できるものや、髄液、骨髄液、胸水、腹水、関節液、眼房水、硝子体液、リンパ液など比較的容易に採取されるものが挙げられる。一実施形態では、生物試料が血液、血漿、血清、唾液、尿、髄液、骨髄液、胸水、腹水、関節液、涙液、汗眼房水、硝子体液及びリンパ液からなる群より選択される体液からなる。血清や血漿を用いる場合、常法に従って被検者から採血し、前処理を施さず直接、又は液性成分を分離することにより分析にかける被検試料を調製することができる。検出対象である本発明のペプチドは必要に応じて、抗体カラム、その他の吸着剤カラム、又はスピンカラムなどを用いて、予め高分子量の蛋白質画分などを分離除去しておくこともできる。
【0054】
生体試料中の、本発明のペプチドの検出は、例えば、生体試料を各種の分子量測定法、例えば、ゲル電気泳動や、各種の分離精製法(例:イオン交換クロマトグラフィ、疎水性クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィなど)、表面プラズモン共鳴法、イオン化法(例:電子衝撃イオン化法、フィールドディソープション法、二次イオン化法、高速原子衝突法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法、エレクトロスプレーイオン化法など)、及び質量分析計(例:二重収束質量分析計、四重極型分析計、飛行時間型質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオンサイクロトロン質量分析計、免疫質量分析計、安定同位体ペプチドを内部標準にした質量分析計、安定同位体標識フラグメントイオンを内部標準品にしたMS-MS質量分析計、免疫顕微鏡計、質量顕微鏡計など)を組み合わせる方法等に供し、該ペプチドの分子量又は質量と一致するバンドもしくは該ペプチドのフラグメントイオン、スポット、あるいはピークを検出することにより行うことができるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明のペプチドに対する抗体を作製し、ELISA, RIA,イムノクロマト法、表面プラズモン共鳴法、ウェスタンブロッティング、免疫質量分析法や各種イムノアッセイ、免疫顕微鏡法により該ペプチドを検出する方法もまた、好ましく用いられ得る。さらに上記方法のハイブリッド型検出法も有効である。本発明に対する抗体が認識又は結合するエピトープは、本発明のペプチドの抗原性または免疫原性を有する部分アミノ酸領域(抗原決定基)を有する。エピトープは通常、少なくとも5アミノ酸、好ましくは少なくとも7アミノ酸、より好ましくは少なくとも10アミノ酸からなる。
【0056】
本発明の検出又は判定方法における特に好ましい測定法の1つは、飛行時間型質量分析に使用するプレートの表面に被検試料を接触させ、該プレート表面に捕捉された成分の質量を飛行時間型質量分析計で測定する方法が挙げられる。飛行時間型質量分析計に適合可能なプレートは、検出対象である本発明のペプチドを効率よく吸着し得る表面構造(例:官能基付加ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO2、SiN4、改質シリコン、種々のゲル又はポリマーのコーティング)を有している限り、いかなるものであってもよい。
【0057】
好ましい実施態様においては、質量分析用プレートとして用いられる支持体は、ポリビニリデンジフロリド(PVDF)、ニトロセルロース又はシリカゲル、特に好ましくはPVDFで薄層コーティングされた基材である(WO 2004/031759を参照)。かかる基材は、質量分析用プレートにおいて使用されているものであれば、特に限定されず、例えば、絶縁体、金属、導電性ポリマー、それらの複合体などが挙げられる。かかるPVDFで薄層コーティングされた質量分析用プレートとして、好ましくは株式会社プロトセラのブロットチップ(BLOTCHIP,登録商標)などが挙げられる。代わりに、質量分析用プレートは、支持体表面を塗布、噴霧、蒸着、浸漬、印刷、スパッタリング等の公知の手段でコーティングすることにより、公知の方法により調製することもできる。また、質量分析用プレート上の分子を質量分析する方法自体は公知である(例えばWO 2004/031759)。WO 2004/031759に記載の方法を、必要に応じて適宜改変して使用することができる。
【0058】
被検試料の質量分析用プレート(支持体)への移行は、被検試料となる被検者由来の生体試料を未処理のままで、あるいは抗体カラムその他の方法で高分子タンパク質を除去、濃縮した後に、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動もしくは等電点電気泳動に付し、泳動後ゲルをプレートと接触させて転写(ブロッティング)することにより行われる。転写の方法自体は公知であり、好ましくは電気転写が用いられる。電気転写時に使用する緩衝液としては、pH 7~9、低塩濃度の公知の緩衝液を用いることが好ましい(例えばトリス緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酢酸緩衝液など)。
【0059】
上記の方法により支持体表面上に捕捉された被検試料中の分子を質量分析することにより、質量に関する情報から、標的分子である本発明のペプチドの存在及び量を同定することができる。質量分析は、電気泳動から質量分析までを行える株式会社プロトセラのBLOTCHIP(登録商標)-MSシステムでも実施可能である。質量分析装置からの情報を、任意のプログラムを用いて、非罹患者、処置後の患者(フォローアップ)、もしくは健常人由来の生体試料における質量分析データと比較して、示差的な(differential)情報として出力させることも可能である。そのようなプログラムは周知であり、また、当業者は、公知の情報処理技術を用いて、容易にそのようなプログラムを構築もしくは改変することができることが理解されよう。
【0060】
高精度な質量分析結果を得るためには、高速液体クロマトグラフィに接続した三連四重極型等の質量分析装置を用いて分析する。標的分子の安定同位体標識ペプチドを合成して、それを既知量の内部標準品として被検試料に混合し、逆相固相担体等でペプチド画分の粗精製を実施する。高速液体クロマトグラフィに導入後、分離された各ペプチドは質量分析装置内でイオン化され、その後コリジョンセル内で断片化、得られたペプチドフラグメントをmultiple reaction monitoring法により定量する。このようなペプチドの定量は株式会社プロトセラのProtoKey(登録商標)でも実施可能である。この際、安定同位体標識ペプチドを内部標準として用いることでCV値が5%以下の実測データを取得できる。安定同位体標識ペプチドは、Cambridge Isotope Laboratory(MA, USA)等の供給業者より購入した安定同位体標識アミノ酸を元のアミノ酸の配列位置に置換して既存の合成法(たとえばF-mocによる固相反応)により得られる。
【0061】
上記の質量分析による検出において、タンデム質量分析(MS/MS)法を用いてペプチドを同定することができ、かかる同定法としては、MS/MSスペクトルを解析してアミノ酸配列を決定するde novo sequencing法と、MS/MSスペクトル中に含まれる部分的な配列情報(質量タグ)を用いてデータベース検索を行い、ペプチドを同定する方法等が挙げられる。また、MS/MS法を用いることにより、本発明のペプチドのアミノ酸配列を直接同定し、該配列情報に基づいて該ペプチドの全部もしくは一部を合成し、これを以下の抗体に対する抗原として利用することもできる。
【0062】
本発明のペプチドの測定は、それに対する抗体を用いて行うこともできる。よって、本発明は、ペプチドを特異的に認識する抗体を用いた膵臓がんの検出又は判定方法、かかる抗体を含む膵臓がんの検出又は判定剤、ならびにかかる抗体を含む膵臓がんの検出又は判定キットを含む。かかる方法は、最適化されたイムノアッセイ系を構築してこれをキット化すれば、上記質量分析装置のような特殊な装置を使用することなく、高感度かつ高精度に該ペプチドを検出することができる点で、特に有用である。
【0063】
本発明のペプチドに対する抗体は、例えば、本発明のペプチドを、これを発現する患者由来の生体試料から単離・精製し、該ペプチドを抗原として動物を免疫することにより調製することができる。あるいは、得られるペプチドの量が少量である場合は、RT-PCRによる該ペプチドをコードするcDNA断片の増幅等の周知の遺伝子工学的手法によりペプチドを大量に調製することができ、あるいはかかるcDNAを鋳型として、無細胞転写・翻訳系を用いて本発明のペプチドを取得することもできる。さらに有機合成法により大量に調製することも可能である。
【0064】
本発明のペプチドに対する抗体(以下、「本発明の抗体」と称する場合がある)は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれであってもよく、周知の免疫学的手法により作製することができる。また、該抗体は完全抗体分子だけでなくそのフラグメントをも包含し、例えば、Fab、F(ab')2、ScFv、及びminibody等が挙げられる。
【0065】
例えば、ポリクローナル抗体は、本発明のペプチドを抗原として、市販のアジュバント(例えば、完全又は不完全フロイントアジュバント)とともに、動物の皮下あるいは腹腔内に2~3週間おきに2~4回程度投与し、最終免疫後に全血を採取して抗血清を精製することにより取得できる。抗原を投与する動物としては、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、モルモット、ハムスターなど、目的の抗体を得ることができる哺乳動物が挙げられる。
【0066】
抗体を用いる本発明の検出又は判定方法は、特に制限されるべきものではなく、被検試料中の抗原量に対応した抗体、抗原もしくは抗体-抗原複合体の量を化学的又は物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法及びサンドイッチ法等が好適に用いられる。測定に際し、抗体又は抗原は、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、又は発光物質等の標識剤と結合され得る。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン-アビジン系を用いることもできる。これら個々の免疫学的測定法は、当業者の通常の技能により、本発明の定量方法に適用可能である。
【0067】
本発明のペプチドはタンパク質分解産物からなるため、未分解のタンパク質や、切断部位が共通の類似ペプチド等様々な分子が測定値に影響を与える可能性がある。そこで、第1工程において、生体試料を抗体により免疫アフィニティ精製し、抗体に結合したフラクションを、第2工程において質量分析に付し、精緻な質量を基準に同定、定量する、いわゆる免疫質量分析法を利用することができる(例えば、Rapid Commun. Mass Spectrom. 2007, 21(3): 352-358を参照)。免疫質量分析法によれば、未分解のタンパク質も類似ペプチドも、質量分析計で完全に分離され、バイオマーカーの正確な質量を基準に高い特異度と感度で定量が可能となる。
【0068】
あるいは、本発明の抗体を用いる別の本発明の検出又は判定方法として、該抗体を上記したような質量分析計に適合し得るチップの表面上に固定化し、該チップ上の該抗体に被検試料を接触させ、該抗体に捕捉された生体試料成分を質量分析にかけ、該抗体が認識するマーカーペプチドの質量に相当するピークを検出する方法が挙げられる。
【0069】
上記のいずれかの方法により測定された被検者由来試料中の本発明のペプチドのレベルが、非膵臓がん患者、処置後の患者、もしくは健常人由来の対照試料中の該ペプチドレベルに比べて有意に変動している場合、該被検者は膵臓がんに罹患している可能性が高いと判定することができる。
【0070】
本発明のペプチドは、それぞれ単独でも膵臓がんの検出マーカーとして利用することができるが、2種以上を組み合わせることにより、感度(有病正診率)及び特異度(無病正診率)をより高めることができる。
【0071】
2種以上のペプチドをマーカーとして用いる場合の検出手法としては、例えば、(1) 測定対象であるすべてのペプチドについてレベルが有意に変動する場合に膵臓がんに罹患していると判定し、いずれかのペプチドについてレベルが有意に変動しない場合に膵臓がんに罹患していないと判定する方法、(2) 測定対象であるすべてのペプチドについてレベルが有意に変動しない場合に膵臓がんに罹患していないと判定し、いずれかのペプチドについてレベルが有意に変動した場合に膵臓がんに罹患していると判定する方法、(3) 測定対象であるn個のペプチドのうち、例えば、2~(n-1)個以上のペプチドについて、レベルが有意に変動する場合に膵臓がんに罹患していると判定する方法、さらに各ペプチド間で重みを持たせる方法、ならびに(4) バギング法、ブースティング法、ランダムフォレスト法などの機械学習法、などが考えられるが、特には複数のマーカーペプチドを1つのマーカーセットとして取り扱うことが出来る解析手法である多変量ロジスティック回帰分析を用いることが好ましい。この場合、マーカーとして用いるペプチドの数は特に限定されないが、好ましくは2種以上、より好ましくは3種、より好ましくは4種以上、より好ましくは5種以上である。
【0072】
一つの実施形態では、上記の解析に用いられるペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が増大する。
【0073】
一つの実施形態では、上記の解析に用いられるペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号2~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドとを含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が増大する。
【0074】
一つの実施形態では、上記の解析に用いられるペプチドは、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号1,3~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドとを含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が増大する。
【0075】
一つの実施形態では、上記の解析に用いられるペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号3~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドとを含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が増大する。
【0076】
好ましい一つの実施形態では、上記の解析に用いられるペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が大幅に増大する。
【0077】
好ましい一つの実施形態では、上記の解析に用いられるペプチドは、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が大幅に増大する。
【0078】
好ましい一つの実施形態では、上記の解析に用いられるペプチドは、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号3~8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドと、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が大幅に増大する。
【0079】
好ましい一つの実施形態では、上記の解析に用いられるペプチドは、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が大幅に増大する。
【0080】
好ましい一つの実施形態では、上記の解析に用いられるペプチドは、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号3~8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドと、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が大幅に増大する。
【0081】
好ましい一つの実施形態では、上記解析に用いられるペプチドは、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が大幅に増大する。
【0082】
本願では、質量分析により特定された候補ペプチドの多変量ロジスティック回帰モデルを最尤法により構築したところ、ROCの曲線下面積(AUC)が高い(0.9を超える)極めて信頼性の高い膵臓がんの検出又は判定が可能であることを見出した。
【0083】
検出又は測定されるペプチドの数は、本発明の検査方法におけるAUCが或る閾値を超える値となる数であることが好ましい。閾値は好ましくは0.85、より好ましくは0.9である。例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの血中濃度の関数であるロジスティック回帰モデルによれば、特異度に対して感度をプロットしたROCの曲線下面積(AUC)が0.85を超え、極めて高い精度で膵臓がんを検出することができる。
【0084】
配列番号1~10で表わされるアミノ酸配列を有する複数のペプチドの血中濃度の関数であるロジスティック回帰モデルによれば、AUCがより1に近づき、高い精度で膵臓がんを検出することができる。
【0085】
なお、本発明のペプチドが単独ではAUCが0.85以下の場合もあるが、そのようなペプチドであっても、本発明の複数のペプチドを組み合わせる等して、AUCが0.85を超える膵臓がんの検出又は判定に使用できる限り、膵臓がんの検出又は判定のためのバイオマーカーとして有効である。
【0086】
本発明の検出方法は、患者から時系列で生体試料を採取し、各試料における本発明のペプチドの発現の経時変化を調べることにより行うこともできる。生体試料の採取間隔は特に限定されないが、患者のQOLを損なわない範囲でできるだけ頻繁にサンプリングすることが望ましく、例えば、血漿もしくは血清を試料として用いる場合、約1日~約1年の間で採血を行うことが好ましい。
【0087】
さらに、上記時系列的なサンプリングによる膵臓がんの検出方法は、前回サンプリングと当回サンプリングとの間に、被検者である患者に対して該疾患の治療措置が講じられた場合に、当該措置による治療効果を評価するのに用いることができる。即ち、治療の前後にサンプリングした試料について、治療後の状態が治療前の状態と比較してペプチドの低下又は上昇(病態の改善)が認められると判定された場合に、当該治療の効果があったと評価することができる。一方、治療後の状態が治療前の状態と比較してペプチドの低下又は上昇(病態の改善)が認められない、あるいはさらに悪化していると判定された場合には、当該治療の効果がなかったと評価することができる。
【0088】
さらに、上記時系列的なサンプリングによる膵臓がんの検出のための検査方法は、健康食品等の摂取、禁煙、運動療法、有害環境からの隔離等、膵臓がんの罹患リスク低減措置後の予防効果を評価するのに用いることができる。即ち、罹患リスクの低減措置の施行の前後にサンプリングした試料について、施行後の状態が施行前の状態と比較してペプチドの低下又は上昇(病態の発症もしくは進行)が認められないと判定された場合に、当該措置の施行の効果があったと評価することができる。一方、治療後の状態が治療前の状態と比較してペプチドの上昇又は低下(病態の改善)が認められない、あるいはさらに病態が悪化していると判定された場合には、当該措置の施行の効果がなかったと評価することができる。
【0089】
従って、本発明のペプチドならびに方法は、膵臓がんを診断又は検出するマーカーのみならず、膵臓がんの予後を予測するマーカー、ならびに治療効果判定のマーカーともなり得る。すなわち、本発明のペプチドならびに方法は、膵臓がんの治療の創薬標的分子のスクリーニングに、及び/又は患者(リスポンダー)の選別もしくは治療薬の投与量(用量)の調節のためのコンパニオン診断薬として使用することができる。
【0090】
また、本発明のペプチドならびに方法は、物質のスクリーニング方法に使用できる。この場合の物質には、膵臓がんを未病段階で防止する健康食品やトクホ製品などの食品類、膵臓がんを診断又は検出するマーカー類、及び罹患後の膵臓がんを治療する治療薬等の医薬品類が含まれる。
【0091】
例えば、本発明の一実施形態の膵臓がんの治療に有効な物質のスクリーニング方法は、非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ等)、特に膵臓がんモデルの非ヒト動物に試験物質を投与すること、試験物質への投与後の、非ヒト動物由来の生物試料(特には血清、血漿)における本発明のペプチドのレベル(濃度、量、又はシグナル強度)の変化を検出することを含む。
【0092】
生物試料中のペプチドのレベルが、試験物質の投与前のレベルに比べて、健常者の値に近づく方向に変化している場合(配列番号1、3、5、6、8及び9で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは減少、配列番号2、4、7及び10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは増加)には、試験物質を、膵臓がんの治療に有効な候補物質であることを示し、該候補物質を選択することができる。
【0093】
あるいは、生物試料中のペプチドのレベルが、試験物質の投与前に比べて同じか、健常者の値から離れる方向に変化している場合(配列番号1、3、5、6、8及び9で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは増加、配列番号2、4、7及び10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは減少)、試験物質を、すい臓がんの治療に有効な候補物質ではないことを示し、そのように判断することができる。
【0094】
あるいは、スクリーニングには、2種以上のペプチドの生物試料中(特には血清、血漿)の測定値を用いて多変量ロジスティック回帰式を得、試験物質の投与前の2種以上のペプチドの測定値及び試験物質の投与後の2種以上のペプチドの測定値のそれぞれを当該回帰式に代入して得られる値を比較し、健常者の値に近づく方向に変化しているか、健常者の値から遠ざかる方向に変化しているかで判定してもよい。
【0095】
本発明は、本発明の1種又は2種以上のペプチドの各々に対する抗体を含む膵臓がんの検出キットを包含する。
【0096】
一つの実施形態では、上記1種又は2種以上のペプチドの各々に対する抗体は、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドとの各々に対する抗体を含む。
【0097】
一つの実施形態では、上記1種又は2種以上のペプチドの各々に対する抗体は、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号2~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドとの各々に対する抗体を含む。
【0098】
一つの実施形態では、上記1種又は2種以上のペプチドの各々に対する抗体は、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号1,3~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドとの各々に対する抗体を含む。
【0099】
一つの実施形態では、上記1種又は2種以上のペプチドの各々に対する抗体は、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号3~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドとの各々に対する抗体を含む。
【0100】
好ましい一つの実施形態では、上記1種又は2種以上のペプチドの各々に対する抗体は、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの各々に対する抗体を含む。
【0101】
好ましい一つの実施形態では、上記1種又は2種以上のペプチドの各々に対する抗体は、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの各々に対する抗体を含む。このようなペプチドの組み合わせにより、検出精度が大幅に増大する。
【0102】
好ましい一つの実施形態では、上記1種又は2種以上のペプチドの各々に対する抗体は、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号3~8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドと、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの各々に対する抗体を含む。
【0103】
好ましい一つの実施形態では、上記1種又は2種以上のペプチドの各々に対する抗体は、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの各々に対する抗体を含む。
【0104】
好ましい一つの実施形態では、上記1種又は2種以上のペプチドの各々に対する抗体は、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号3~8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドと、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの各々に対する抗体を含む。
【0105】
好ましい一つの実施形態では、上記1種又は2種以上のペプチドの各々に対する抗体は、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの各々に対する抗体を含む。
【0106】
好ましい実施形態において、本発明の1種又は2種以上のペプチドの各々に対する抗体を検出試薬として含む膵臓がんの検出剤を包含する。1種又は2種以上のペプチドの各々に対する抗体は、上記膵臓がんの検出キットに含まれる抗体と同じ抗体を使用することができる。
【0107】
本発明は、被検者における膵臓がんの罹患可能性を判定するための、コンピュータにより実行される方法であって、被検者の生物試料中の、本発明の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号3~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも1種以上のペプチドとについての定量的データを取得する工程と、前記取得したデータを、前記2種、3種、又は4種以上のペプチドの関数である多変量ロジスティック回帰モデルに適用し、被検者における膵臓がんの罹患可能性の予測値を求める工程とを含む方法を包含する。ここで、ペプチドの定量的データとは、例えば質量分析やペプチドに対する抗体を用いて測定されたペプチドの発現量、血中濃度等の定量的な測定値を指す。
【0108】
好ましい実施形態において、本発明は、被検者における膵臓がんの罹患可能性を判定するための、コンピュータにより実行される方法であって、被検者の生物試料中の、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号3~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも1種以上のペプチドとについての定量的データを取得する工程と、前記取得したデータを、前記
ペプチドの関数である多変量ロジスティック回帰モデルに適用し、被検者における膵臓がんの罹患可能性の予測値を求める工程とを含む方法を包含する。
【0109】
一つの実施形態では、上記の方法に用いられるペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドとを含む。
【0110】
一つの実施形態では、上記の方法に用いられるペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号2~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドとを含む。
【0111】
一つの実施形態では、上記の方法に用いられるペプチドは、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号1,3~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドとを含む。
【0112】
一つの実施形態では、上記方法に用いられるペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号3~10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドとを含む。
【0113】
好ましい一つの実施形態では、上記方法に用いられるペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。
【0114】
好ましい一つの実施形態では、上記方法に用いられるペプチドは、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。
【0115】
好ましい一つの実施形態では、上記方法に用いられるペプチドは、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号3~8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドと、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。
【0116】
好ましい一つの実施形態では、上記方法に用いられるペプチドは、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。
【0117】
好ましい一つの実施形態では、上記方法に用いられるペプチドは、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号3~8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドから選択される少なくとも一つのペプチドと、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。
【0118】
好ましい一つの実施形態では、上記方法に用いられるペプチドは、被検者の生物試料中の配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。
【0119】
上記コンピュータにより実行される方法は、予測値を求めた後で、該予測値に基づいて被検者における膵臓がんの罹患可能性を判定する工程をさらに含んでもよい。例えば求めた予測値が、ある閾値を超えた場合に、その被検者を膵臓がんに罹患している可能性が高いと判定する。閾値は、例えば、複数の健常者のペプチドから測定された予測値の平均値又は中央値よりも大きい値であるか、膵臓がん患者から測定された予測値の平均値又は中央値である。
【0120】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。
【0121】
本明細書中に引用されているすべての特許出願及び文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【実施例0122】
実施例1 膵臓がんマーカーペプチドの同定
1.被検者及び血液採取
富山大学にて、膵臓がん患者118名、健常者118名の血液を、6mL採取した。採取した血液を、0.5~1.0hr静置した後、3,000rpmで10分間室温にて遠心分離し、血清を得た。上清を使用するまで-80℃で分けて保存した。
【0123】
膵臓がんの診断基準には腹部造影CT検査、腹部MRI検査、超音波内視鏡検査を含めた画像検査で膵臓内に腫瘍を認め、病理検査(手術症例では手術検体を、また手術未施行例では超音波内視鏡下穿刺吸引法による生検検体を用いて診断)で膵臓がんと診断した症例を採用した。
【0124】
2.BLOTCHIP(登録商標)による質量分析
血清中の質量分析によるペプチド解析を、ペプチドームプロファイリングの迅速定量法である、ワンステップの直接転写技術のBLOTCHIP(登録商標)質量分析により行った(Biochem. Biophys. Res. Commun. 2009;379(1):110-114)。
【0125】
まず、血清サンプルをドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)に供し、ペプチドをタンパク質と分離した。次に、ゲル中のペプチドをBLOTCHIP(登録商標)(株式会社プロトセラ、大阪府摂津市所在)に電気転写した。転写終了後、チップの表面を超純水でリンスし、BLOTCHIP(登録商標)に直接マトリックス(α-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸, Sigma-Aldrich Co., アメリカ合衆国ミズーリ州)を塗布後、UltrafleXtreme MALDI-TOF/TOF mass spectrometer (Bruker、アメリカ州マサチューセッツ州)のリニアモードで、Proteomics 2011, 11:2727-2737.に記載された通りに質量分析を行い、ペプチドプロファイルを得た。
【0126】
3.統計解析
サンプルはBLOTCHIP(登録商標)質量分析により4回繰り返し解析した。より統計学的に有意なピークを見出すために、4つのデータを独立データとして使用し、解析ソフトClinProTools 3.0 (Bruker)を使用してウィルコクソン検定のp値を計算し、p値が0.05以下の場合に有意差ありとみなした。
【0127】
統計解析ソフトR(R Core Team (2020). R: A language and environment for statistical computing. R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria. URL https://www.r-project.org/)によりウィルコクソン検定のp値を計算するために、一つのサンプル当たりの4つのデータの平均値を用いてペプチドの診断性能を評価し、診断性能の高い有用なバイオマーカーペプチドを発見した。モデルの構築には統計解析ソフトR(R Core Team (2020)を使用した。
【0128】
構築したモデルの診断能の評価のためにROC分析を実施した。Rのパッケージである”Epi パッケージ“(A package for statistical analysis in epidemiology、Version 2.47、http://cran.r-project.org/web/packages/Epi/index.html)を用いた。AUCはROC曲線から計算した。診断のための最適カットオフ値は、Cancer 1950;3:32-35のYouden’s indexに従って決定した。
【0129】
4.ペプチドの同定
各ペプチドは、Sep-Pak C18固相抽出カートリッジ(Waters Corporation、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ミルフォード)を用いて、0.1%トリフルオロ酢酸を含む水に80%v/v アセトニトリル(ACN)で抽出した。溶出液をCC-105 遠心濃縮器(株式会社トミー精工, 東京)を用いて100μL以下に濃縮した。次に溶液を0.065% TFAを含む2%v/v ACN水溶液400μL(溶離液Aと称する)に希釈し、C18シリカカラム(XBridge Shield RP18 2.5mL; Waters)を装備したAKTA精製装置(GE Healthcare UK Ltd, 英国バッキンガムシャー州)にかけた。溶出液を、溶離液Aに対し0.05% TFAを含む80%v/v ACNの水溶液で1.0mL/分の流速で0-100%の線形勾配により24個の画分(各1mL)に分けた。各画分をCC-105遠心濃縮器で10μL以下に濃縮し、ペプチドの配列をMALDI-TOF/TOF(ultrafleXtreme; Bruker)及びLC-MS/MS(Orbitrap Eclipse; Thermo Fisher Scientific Inc, アメリカ合衆国マサチューセッツ州ワルサム)を用いて分析した。
【0130】
(結果)
1.膵臓がんのバイオマーカーペプチドの同定
膵臓がん患者から採取した118検体と健常者から採取した118検体の血清のペプチド解析をBLOTCHIP(登録商標)質量分析により行った。各ペプチドームプロファイルより得られた質量スペクトルのデータをデータベースに保存した。すべてのMS測定が完了した後、解析ソフトClinProTools3.0を用いて、前記2群の差分解析を行った。その結果、統計解析により得られたすべてのピークの形状を目視により精査し、MALDI-MS測定にランダムに現れるノイズ、弱いピーク、及び微かなピークを除外した。
【0131】
さらに、逆相クロマトグラフィで部分的に精製した血清ペプチドによりMALDI-TOF/TOF及びLC-MS/MSペプチド配列決定分析を行った。9個のペプチドを最終的に同定した(表1)。
【0132】
配列番号1のペプチドのAUCは単一マーカーでも0.681、配列番号2のAUCは0.669である。
【0133】
【0134】
2.アミノ酸配列解析
上記の番号1~8のペプチドのアミノ酸配列を当業者に周知のペプチド配列決定法により決定した(表2)。配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのN末端の1番目のGlnがピログルタミル化、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの1番目のセリンのアセチル化、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの16番目(α-1-アンチトリプシンタンパク質のN末端から398番目)のメチオニンの酸化、配列番号5で表されるアミノ酸からなるペプチドの27番目(α-1-アンチトリプシンタンパク質のN末端から409番目)のメチオニンの酸化、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの9番目(プロトロンビンタンパク質のN末端から336番目)のシステインのS-システイン化、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの9番目(フィブリノーゲンα鎖タンパク質の536番目)のメチオニンの酸化、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの28番目(フィブリノーゲンα鎖タンパク質の603番目)のメチオニンの酸化が確認された。
【0135】
【0136】
実施例2 多変量ロジスティック回帰分析
実施例1の統計解析における膵臓がん患者及び健常者の配列番号1、2、5、6、7、及び8の各ペプチドの平均シグナル強度値を用いて多変量ロジスティック回帰式を得、予測確率の中央値(メジアン)を求め、膵臓がん患者群と健常者群の2群間で統計的に有意差があるか検討を行った(表3)。配列番号5のペプチドは、16番目及び27番目のメチオニンが酸化している酸化体を用いた。また予測確率をリスクインデックスとして、散布図及び箱ひげ図で示した(
図1)。
【0137】
【0138】
表3に示すように、6種類のバイオマーカーペプチドの平均シグナル強度値を回帰式に代入して得られる値は、膵臓がん患者群 (PAC)では健常者群(対照)に比べて6.03倍 に有意に上昇していた。また、AUCは0.923 であり、これらのペプチドがバイオマーカーとして有用であることが示された。なお、配列番号5のペプチドとして16番目及び27番目のメチオニンが酸化している酸化体の代わりに16番目のメチオニンが酸化している酸化体を用いた場合、膵臓がん患者群 (PAC)の健常者群(対照)に対するシグナル強度比は5.24倍であり、AUCは0.913であった(データ非図示)。
【0139】
実施例3 多変量ロジスティック回帰分析
実施例1で同定した全9個、8種類のバイオマーカーペプチドの中から複数のペプチドの組合せについて、各ペプチドのレベルを被検者の血清でProtoKey(登録商標)を用いたプロテオーム解析により測定した。また、膵臓がんのバイオマーカーペプチドとして、番号9のペプチドを追加した(表4、表5)。この測定値を用いて予測確率の多変量ロジスティック回帰式を得、予測確率の中央値(メジアン)を求め、膵臓がん患者群と健常者群の2群間で統計的に有意差があるか検討を行った(表6)。試験1では、番号1、2、3、5、及び7のペプチドを使用した。試験2では、番号1、2、3、5、7、及び9を使用した。尚、番号5のペプチドに関してBLOTCHIP(登録商標)質量分析では複数の酸化体が検出されていたものの、ProtoKey(登録商標)による測定では酸化体が検出されず、未酸化体のペプチドのみを測定した。
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
表6に示すように、試験1において、5種類のバイオマーカーペプチドの血中濃度を回帰式に代入して得られる値は、膵臓がん患者群 (PAC)では健常者群(対照)に比べて4.88倍に有意に上昇していた。また、AUCは0.910であり、膵臓がんを迅速かつ非常に高い診断性能でもっぱら診断でき、これらのペプチドがバイオマーカーとして有用であることが示された。試験2において、試験1に対してさらに番号9のペプチドを追加した6種のバイオマーカーペプチドの血中濃度を回帰式に代入して得られる値は、膵臓がん患者群 (PAC)では健常者群(対照)に比べて5.47倍に有意に上昇していた。また、AUCは0.915であり、診断精度はさらに向上した。さらに、試験1及び試験2のペプチドを用いると、コントロールと膵臓がん患者を区別することができるだけでなく、膵臓がんと大腸がんも区別することができた(データ非図示)。これらのマーカーが膵臓がんの検出、判定、及び/又は診断に有用であることが理解される。
【0144】
実施例4 多変量ロジスティック回帰分析
実施例1で同定した全9個、8種類のバイオマーカーペプチドの中から複数のペプチドの組合せについて、各ペプチドのレベルを被検者の血清でProtoKey(登録商標)を用いたプロテオーム解析により測定した。また、膵臓がんのバイオマーカーペプチドとして、番号10のペプチドを追加した(表7、表8)。配列番号1、5、7、及び10の測定値を用いて予測確率の多変量ロジスティック回帰式を得、予測確率の中央値(メジアン)を求め、膵臓がん患者群と健常者群の2群間で統計的に有意差があるか検討を行った(表9)。
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
表9に示すように、4種類のバイオマーカーペプチドの血中濃度を回帰式に代入して得られる値は、膵臓がん患者群 (PAC)では健常者群(対照)に比べて2.88倍に有意に上昇していた。また、AUCは0.865であり、膵臓がんを迅速かつ非常に高い診断性能でもっぱら診断でき、これらのペプチドがバイオマーカーとして有用であることが示された。
【0149】
以上の実施例1~4の結果から、これらのペプチドマーカーの血中濃度から多変量ロジスティック回帰モデルで得られた予測値が、膵臓がんの判定、治療薬が奏効する膵臓がん患者(リスポンダー)の判定及び個々の膵臓がん患者に奏効する治療薬の判定(コンパニオン診断法)、予防効果の判定、治療効果の判定、早期診断のための検査方法、早期治療のための検査方法、及び物質のスクリーニング方法に有用であることが示唆された。