(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117522
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240822BHJP
H05K 13/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
H05K13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023658
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高市 ▲隆▼一郎
(72)【発明者】
【氏名】中谷 勇哉
【テーマコード(参考)】
3C100
5E353
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA59
3C100AA70
3C100BB13
3C100BB29
3C100BB33
3C100EE07
5E353AA02
5E353CC01
5E353CC03
5E353CC21
5E353CC22
5E353EE89
5E353LL02
5E353QQ30
(57)【要約】
【課題】製造室内の陽圧状態を維持する。
【解決手段】生産設備の中空部分の内部を加熱し、中空部分の内部のガスを製造室外に排出する第1の状態を維持する第1のモードと、第1の状態よりもエネルギ消費量が低い第2の状態を維持する第2のモードとを有する、少なくとも一つの生産設備の制御装置は、生産設備が第2の状態から第1の状態に遷移する前に、生産設備が配置された製造室内を陽圧に維持する空調設備を制御する空調制御部に対して製造室内への給気量を増加させるための指示を行う指示部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産設備の中空部分を加熱し、前記中空部分の内部のガスを製造室外に排出する第1の状態を維持する第1のモードと、前記第1の状態よりもエネルギ消費量が低い第2の状態を維持する第2のモードとを有する、少なくとも一つの前記生産設備の制御装置であって、
前記生産設備が前記第2の状態から前記第1の状態に遷移する前に、前記生産設備が配置された前記製造室内を陽圧に維持する空調設備を制御する空調制御部に対して前記製造室内への給気量を増加させるための指示を行う指示部を備える、
制御装置。
【請求項2】
前記製造室内への前記給気量を増加させるための前記指示は、前記製造室内への前記給気量の増加タイミング、増加割合及び増加保持時間に関する指示を含む、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記生産設備が前記第2の状態から生産開始可能な状態になるまでに要すると見込まれる遷移時間の設定値を記憶する記憶部を備え、
前記指示部は、前記生産設備が前記生産開始可能な状態になる時刻と前記記憶部に記憶されている前記遷移時間の前記設定値に基づいて、前記第2のモードから前記第1のモードへの切り替えを行う切替時刻を決定し、前記切替時刻に基づいて、前記製造室内への前記給気量の前記増加タイミングを決定する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第2のモードから前記第1のモードへ切り替えられてから、前記生産設備が前記生産開始可能な状態になるまでに実際に要した第2遷移時間を1回又は複数回計測する計測部と、
前記計測部によって計測された前記第2遷移時間についての1回又は複数回の計測値に基づいて、前記記憶部に記憶されている前記遷移時間の前記設定値を更新する更新部と、
を備える、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記記憶部には、前記生産設備の運転に関する運転パラメータと、前記運転パラメータ毎の前記遷移時間の前記設定値とが紐づけて記憶されており、
前記計測部は、前記運転パラメータ毎の前記第2遷移時間を1回又は複数回計測し、
前記更新部は、前記計測部によって計測された前記運転パラメータ毎の前記第2遷移時間についての1回又は複数回の前記計測値に基づいて、前記記憶部に記憶されている前記運転パラメータ毎の前記遷移時間の前記設定値を更新する、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記運転パラメータは、前記生産設備が生産する生産品の種類、前記第1のモード時に前記生産設備に携わる作業者の作業者情報、前記生産設備の設備情報、前記生産設備の周囲の外的環境情報、前記生産品の材料の種類、及び、前記生産設備で用いられる方法の種類のうちの少なくとも一つを含む、
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記生産設備は、基板上の半田ペーストを加熱するリフロー炉であり、
前記第1のモードは、前記リフロー炉内のヒータに電力を供給して、前記リフロー炉内を加熱し、かつ、前記リフロー炉内のファンに電力を供給して、前記リフロー炉内のガスを前記製造室外に排出する運転モードであり、
前記第2のモードは、前記ヒータへの電力の供給を停止し又は前記ヒータへの電力の供
給量を減らし、かつ、前記ファンへの電力の供給を停止し又は前記ファンの駆動量を減らして前記第2の状態で待機する待機モードである、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記生産設備は、基板上の半田ペーストを加熱するリフロー炉であり、
前記第1のモードは、前記リフロー炉内のヒータに電力を供給して、前記リフロー炉内を加熱し、かつ、前記リフロー炉内のファンに電力を供給して、前記リフロー炉内のガスを前記製造室外に排出する運転モードであり、
前記第2のモードは、前記ヒータ及び前記ファンへの電力の供給を停止して、動作を停止する停止モードである、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記生産設備は、前記ガスを前記製造室外に排出するためのダクトを有し、
前記製造室内の圧力と前記ダクト内の圧力との差圧に基づいて、前記ダクトの開度を制御するダクト制御部を備える、
請求項1から8の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
生産設備の中空部分を加熱し、前記中空部分の内部のガスを製造室外に排出する第1の状態を維持する第1のモードと、前記第1の状態よりもエネルギ消費量が低い第2の状態を維持する第2のモードとを有する、少なくとも一つの前記生産設備の制御方法であって、
前記生産設備が前記第2の状態から前記第1の状態に遷移する前に、前記生産設備が配置された前記製造室内を陽圧に維持する空調設備を制御する空調制御部に対して前記製造室内への給気量を増加させるための指示を行う指示ステップを備える制御方法。
【請求項11】
生産設備の中空部分を加熱し、前記中空部分の内部のガスを製造室外に排出する第1の状態を維持する第1のモードと、前記第1の状態よりもエネルギ消費量が低い第2の状態を維持する第2のモードとを有する、少なくとも一つの前記生産設備の制御装置に、
前記生産設備が前記第2の状態から前記第1の状態に遷移する前に、前記生産設備が配置された前記製造室内を陽圧に維持する空調設備を制御する空調制御部に対して前記製造室内への給気量を増加させるための指示を行う指示ステップを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題への対応やコスト低減の要請などから、工場等の生産設備における省エネ技術が注目を集めている。例えば、生産設備が運転状態にある場合でも常に生産を行っているわけではなく、休憩やシフト交替でオペレータが不在となる時間や、段取り替えの間など、装置が空転している時間が存在する。生産設備を運転モードから停止モードへ切り替えることで生産設備を停止することが行われているが、生産設備の立ち上げには相当の時間を必要とするため、ライン稼働中に生産設備を完全に停止することはできない。従来から、エネルギ消費の低減について、種々検討がなされ、その中でも産業分野におけるエネルギ消費の低減については、種々の技術が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。特許文献1、2では、空転時(非生産時)にはエネルギ消費の少ない状態で装置を待機させ(待機モード、省エネモードなどと呼ばれる)、生産再開に合わせて運転モードへ切り替えることで生産可能な状態に迅速に遷移させる、といった省エネルギ制御が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013‐098417号公報
【特許文献2】特開2014‐186656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生産物の品質を維持するため、工場内の製造室(生産室)は陽圧状態を保つ必要がある。従来の陽圧制御システムは追従制御であるため、生産設備が待機モード又は停止モードから運転モードへ切り替えられた場合、生産設備からの排気が増加することで製造室からの全体排気が増加し、製造室内の陽圧状態が維持されなくなり、生産物の不良原因となる場合がある。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、製造室内の陽圧状態を維持可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点に係る制御装置は、生産設備の中空部分の内部を加熱し、前記中空部分の内部のガスを製造室外に排出する第1の状態を維持する第1のモードと、前記第1の状態よりもエネルギ消費量が低い第2の状態を維持する第2のモードとを有する、少なくとも一つの前記生産設備の制御装置であって、前記生産設備が前記第2の状態から前記第1の状態に遷移する前に、前記生産設備が配置された前記製造室内を陽圧に維持する空調設備を制御する空調制御部に対して前記製造室内への給気量を増加させるための指示を行う指示部を備える制御装置である。
【0007】
この構成によれば、休憩やシフト交替などでオペレータが不在となる場合や段取り替えなどにより生産が一時的に止まる場合に、生産設備を第2のモードに切り替えることで、無駄なエネルギ消費を抑えることができる。第2のモードへの切り替えはオペレータが手動で指示してもよいし、自動で切り替えてもよい。ここで、「エネルギ」には、生産設備に直接的に供給されるエネルギ(電力、熱、力など)だけでなく、生産設備を動作させる
ために間接的に必要となるエネルギ、たとえば、生産設備で利用される物質(雰囲気ガス、冷却液、洗浄液、触媒など)を製造、運搬、貯蔵、供給するために必要なエネルギなど、を含んでもよい。
【0008】
空調設備は、製造室内への給気量と製造室内からの給気量(排気量)とを制御することにより、製造室内を陽圧に維持する。生産設備が第2のモードから第1のモードに切り替わることにより、生産設備の中空部分の内部のガスが製造室外に排出される。したがって、生産設備が第2のモードである場合と比べて、生産設備が第1のモードである場合における製造室内からの給気量が増加する。生産設備が第2のモードから第1のモードに切り替わる前に、すなわち、生産設備が第2の状態から第1の状態に遷移する前に、空調設備を制御する空調制御部に対して製造室内への給気量を増加させるための指示を行う。これにより、生産設備が第2の状態から第1の状態に遷移する前に製造室内への給気量が増加するため、生産設備が第2の状態から第1の状態に遷移して製造室内からの給気量が増加しても、製造室内を陽圧に維持することができる。
【0009】
前記製造室内への前記給気量を増加させるための前記指示は、前記製造室内への前記給気量の増加タイミング、増加割合及び増加保持時間に関する指示を含んでもよい。空調制御部は、製造室内への給気量の増加割合に基づいて、製造室内への給気量の増加量を決定する。空調制御部は、現在時刻が製造室内への給気量の増加タイミング(増加開始時刻)に達した場合、空調設備を制御し、空調設備は、製造室内への給気量を増加する。空調制御部は、製造室内への給気量の増加保持時間が経過するまで製造室内への給気量が増加した状態が保持されるように、空調設備を制御する。
【0010】
前記生産設備が前記第2の状態から生産開始可能な状態になるまでに要すると見込まれる遷移時間の設定値を記憶する記憶部を備え、前記指示部は、前記生産設備が前記生産開始可能な状態になる時刻と前記記憶部に記憶されている前記遷移時間の前記設定値に基づいて、前記第2のモードから前記第1のモードへの切り替えを行う切替時刻を決定し、前記切替時刻に基づいて、前記製造室内への前記給気量の前記増加タイミングを決定してもよい。
【0011】
本発明の一観点に係る制御装置は、前記第2のモードから前記第1のモードへ切り替えられてから、前記生産設備が前記生産開始可能な状態になるまでに実際に要した第2遷移時間を1回又は複数回計測する計測部と、前記計測部によって計測された前記第2遷移時間についての1回又は複数回の計測値に基づいて、前記記憶部に記憶されている前記遷移時間の前記設定値を更新する更新部と、を備えてもよい。
【0012】
前記記憶部には、前記生産設備の運転に関する運転パラメータと、前記運転パラメータ毎の前記遷移時間の前記設定値とが紐づけて記憶されており、前記計測部は、前記運転パラメータ毎の前記第2遷移時間を1回又は複数回計測し、前記更新部は、前記計測部によって計測された前記運転パラメータ毎の前記第2遷移時間についての1回又は複数回の前記計測値に基づいて、前記記憶部に記憶されている前記運転パラメータ毎の前記遷移時間の前記設定値を更新してもよい。前記運転パラメータは、前記生産設備が生産する生産品の種類、前記第1のモード時に前記生産設備に携わる作業者の作業者情報、前記生産設備の設備情報、前記生産設備の周囲の外的環境情報、前記生産品の材料の種類、及び、前記生産設備で用いられる方法の種類のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0013】
前記生産設備は、基板上の半田ペーストを加熱するリフロー炉であり、前記第1のモードは、前記リフロー炉内のヒータに電力を供給して、前記リフロー炉内を加熱し、かつ、前記リフロー炉内のファンに電力を供給して、前記リフロー炉内のガスを前記製造室外に排出する運転モードであり、前記第2のモードは、前記ヒータへの電力の供給を停止し又
は前記ヒータへの電力の供給量を減らし、かつ、前記ファンへの電力の供給を停止し又は前記ファンの駆動量を減らして前記第2の状態で待機する待機モードであってもよい。前記生産設備は、基板上の半田ペーストを加熱するリフロー炉であり、前記第1のモードは、前記リフロー炉内のヒータに電力を供給して、前記リフロー炉内を加熱し、かつ、前記リフロー炉内のファンに電力を供給して、前記リフロー炉内のガスを前記製造室外に排出する運転モードであり、前記第2のモードは、前記ヒータ及び前記ファンへの電力の供給を停止して、動作を停止する停止モードであってもよい。
【0014】
前記生産設備は、前記ガスを前記製造室外に排出するためのダクトを有し、前記製造室内の圧力と前記ダクト内の圧力との差圧に基づいて、前記ダクトの開度を制御するダクト制御部を備えてもよい。
【0015】
本発明の一観点に係る制御方法は、生産設備の中空部分の内部を加熱し、前記中空部分の内部のガスを製造室外に排出する第1の状態を維持する第1のモードと、前記第1の状態よりもエネルギ消費量が低い第2の状態を維持する第2のモードとを有する、少なくとも一つの前記生産設備の制御方法であって、前記生産設備が前記第2の状態から前記第1の状態に遷移する前に、前記生産設備が配置された前記製造室内を陽圧に維持する空調設備に対して前記製造室内への給気量を増加させるための指示を行う指示ステップを備える制御方法である。
【0016】
本発明の一観点に係るプログラムは、生産設備の中空部分の内部を加熱し、前記中空部分の内部のガスを製造室外に排出する第1の状態を維持する第1のモードと、前記第1の状態よりもエネルギ消費量が低い第2の状態を維持する第2のモードとを有する、少なくとも一つの前記生産設備の制御装置に、前記生産設備が前記第2の状態から前記第1の状態に遷移する前に、前記生産設備が配置された前記製造室内を陽圧に維持する空調設備に対して前記製造室内への給気量を増加させるための指示を行う指示ステップを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製造室内の陽圧状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明が適用されるシステムの全体構成を示す図である。
【
図3】
図3は、制御装置の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、リフロー炉の省エネモードへの切り替え時に実行されるフローの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、IPCの操作パネルの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、IPCの操作パネルの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、省エネモード時間及び立ち上げ時間の説明図である。
【
図8】
図8は、遷移時刻予測モデルを示す図である。
【
図9】
図9は、遷移時刻の計算処理のフローの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、IPCの操作パネルの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、差圧をIPCの表示装置に表示するフローの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、差圧の目標値、生データ、移動分散の表示例を示す図である。
【
図13】
図13は、ダンパー制御のフローの一例を示す図である。
【
図14】
図14は、ダクト開度の判定処理及びダクト開度の制御処理の説明図である。
【
図15】
図15は、IPCから計装用制御機器への指示フローの一例を示す図である。
【
図16】
図16は、待機モード時又は停止モード時に異常が発生した場合の制御フローの一例を示す図である。
【
図17】
図17は、IPCの機能の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適用例及び実施形態について図を参照しながら説明する。以下に示す適用例及び実施形態は、本願の一態様であり、本願の権利範囲を限定するものではない。
【0020】
<適用例>
本発明の適用例について説明する。本発明は、生産設備の省エネルギ制御を行う制御装置およびその制御方法に関するものである。制御装置は、生産設備と別体もしくは外付けのユニットでもよいし、生産設備と一体もしくは内蔵のユニットでもよい。この制御装置は、複数のモードを有する生産設備であれば、あらゆる種類の生産設備に適用することができる。なお、生産設備とは、製品の生産に関係する設備であり、中空部分を有する設備をいい、典型的には製造装置や加工装置が該当するが、生産に間接的に寄与する設備、たとえば、運搬装置、貯蔵設備、クリーンルーム、空調装置、照明装置なども生産設備に該当する。以下の実施形態では、本発明の好適な適用例として、基板上の半田ペーストを加熱するリフロー炉の制御を例示する。
【0021】
[システムの概要]
図1は、本発明が適用されるシステムの全体構成を示す図である。
図1を参照して、当該システムの概略構成を説明する。
図1のシステムでは、例えば、ファクトリーオートメーション(FA)とビルオートメーション(BA)との連携制御が実施されている。
図1のシステムは、製造室(生産室)1内に配置された生産設備を制御する制御装置100と、空調設備2を制御する計装用制御機器200と、を備える。制御装置(制御システム)100は、IPC(Industrial Personal Computer)、PLC(Programmable Logic Controller)、リフロー炉PLC等から構成されてもよい。
【0022】
空調設備2は、インバータ21及び給気ファン22が設けられた給気装置23と、インバータ24及び給気ファン25が設けられた給気装置26とを有する。空調設備2は、製造室1内への給気量と製造室1内からの給気量(排気量)とを制御することにより、製造室1内を陽圧に維持する。例えば、空調設備2は、差圧センサ27によって測定された製造室1内の圧力P1が、差圧センサ27によって測定された製造室1の外部の圧力P0よりも高くなるように、製造室1内への給気量と製造室1内からの給気量とを制御する。計装用制御機器200の指示に基づいてインバータ21が給気ファン22を制御することで、製造室1内への給気量を調整する。計装用制御機器200の指示に基づいてインバータ24が給気ファン25を制御することで、製造室1内からの給気量を調整する。製造室1内の空気は、製造室内に設けられた給気口3A、3Bを介して製造室1外に排出される。計装用制御機器200は、空調設備2を制御する空調制御部の一例である。
【0023】
製造室1内に配置された生産設備は、ローダ11、半田印刷機12、検査装置13、高速マウンタ14、高精度マウンタ15、検査装置16、リフロー炉17及びアンローダ18から構成されている。ローダ11、半田印刷機12、検査装置13、高速マウンタ14、高精度マウンタ15、検査装置16、リフロー炉17及びアンローダ18のそれぞれは、1台であってもよいし、複数台であってもよい。製造室1では、処理されるプリント基板が、ローダ11、半田印刷機12、検査装置13、高速マウンタ14、高精度マウンタ15、検査装置16、リフロー炉17、アンローダ18の順に送られる。
【0024】
ローダ11から送られたプリント基板に対し、半田印刷機12において半田ペーストが
印刷される。当該印刷の良否が検査装置13で検査された後、高速マウンタ14及び高精度マウンタ15で電子部品がプリント基板上にマウントされる。当該マウントの良否が検査装置16で検査された後、電子部品をマウントされたプリント基板がリフロー炉17内に投入される。本明細書では、電子部品がマウントされたプリント基板を、「ワーク」と呼ぶ。そして、リフロー炉17で、半田ペーストを溶解させて電子部品が固定された後、ワークは、アンローダ18を介して、種々の工程に送られる。
【0025】
なお、ローダ11、半田印刷機12、検査装置13、高速マウンタ14、高精度マウンタ15、検査装置16、リフロー炉17、アンローダ18は、非常ランプをそれぞれ備え、また、その動作がそれぞれの制御装置によって制御される。そして、当該制御装置は、それぞれにおいて非常事態が発生した場合には、各装置に対応する非常ランプを点灯させる。
【0026】
(リフロー炉)
図2を参照して、リフロー炉17の構成を詳しく説明する。
図2は、リフロー炉17の構成を示す図である。リフロー炉17には、中空な不活性雰囲気室31が設けられている。不活性雰囲気室31には、ダクト32A、32Bが設けられている。ダクト32Aには、ファン33A及び開閉板34Aが設けられ、ダクト32Bには、ファン33B及び開閉板34Bが設けられている。制御装置100の指示に基づいて、インバータ35Aがファン33Aを制御し、インバータ35Bがファン33Bを制御することで、ダクト32A、32B内に空気が流れる。リフロー炉17の中空部分の内部のガスは、ダクト32A、32B及び製造室1に設けられた給気口3C、3Dを介して製造室1外に排出される。
【0027】
開閉板34A、34Bは、ダクト32A、32Bのそれぞれにおいて空気が流れる度合いを調整するために設けられている。開閉板34A、34Bによるダクト32A、32B内の送風路の開閉度合いは、ダンパーモータ36A、36Bによってそれぞれ制御される。以下、ダクト32A内の送風路の開閉度合いをダクト32Aの開度と称し、ダクト32B内の送風路の開閉度合いをダクト32Bの開度と称する。制御装置100は、ダンパーモータ36A、36Bの駆動を制御する。
【0028】
不活性雰囲気室31には、不活性雰囲気室31内を加熱するための加熱装置であるヒータ37が設けられている。制御装置100は、リフロー炉17内のヒータ37の加熱動作等を制御する。ダクト32Aには、差圧センサ38が設けられている。差圧センサ38は、製造室1内の圧力P1及びダクト32A内の圧力P2を測定する。ダクト32Bに、差圧センサ38を設けてもよく、この場合、差圧センサ38は、製造室1内の圧力P1及びダクト32B内の圧力P2を測定する。
【0029】
図3は、制御装置100の構成の一例を示す図である。
図3に示す例では、IPC101、PLC102及びリフロー炉PLC103により制御装置100が構成されている。電力モニタ111は、製造室1内に配置された製造設備の消費電力を検出して、検出した消費電力量をIPC101に送る。差圧センサ38は、製造室1内の圧力P1とダクト32A内の圧力P2との差圧を測定し、その測定値(差圧データ)をIPC101に送る。差圧センサ38は、製造室1内の圧力P1とダクト32B内の圧力P2との差圧を測定し、その測定値(差圧データ)をIPC101に送ってもよい。パトランプ112は、PLC102の指示に基づいて、リフロー炉17の状態に応じた表示を行う。パトランプ112は、表示をライトの点灯色、点滅(点灯)パターン等の組合せで出力する。PLC102は、ダンパーモータ36A、36Bに指令を出し、開閉板34A、34Bの開閉の度合いを制御する。モード出力部113は、PLC102によって行われるモードの切り替えに関する信号をリフロー炉PLC103に伝える。リフロー炉PLC103は、インバータ35A、35B及びヒータ37を制御する。
【0030】
IPC101、PLC102及びリフロー炉PLC103は、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置、プログラム等の各種のデータを記憶するための記憶装置と、
通信の際に利用される通信インターフェース等を備える。記憶装置は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等のメ
モリ(揮発性記憶装置)、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等のストレージ(不揮発性記憶装置)である。通信インターフェースは、例えばネットワークカード等の通信装置によって実現される。そして、IPC101、PLC102及びリフロー炉PLC103の演算装置は、例えば記憶装置に格納されたプログラムを実行することによって、各種の動作が実現される。IPC101、PLC102及びリフロー炉PLC103のメモリは、着脱可能な記憶媒体によって実現される場合も有り得る。なお、計装用制御機器200のハードウェア構成は、IPC101、PLC102及びリフロー炉PLC103のハードウェア構成と同様である。
【0031】
(リフロー炉の省エネルギ制御)
基板生産ラインの稼働中は、原則として、リフロー炉17の状態を、安定した品質でワークの生産(熱処理)が可能な状態に維持する必要がある。そのためには、リフロー炉17の状態を、リフロー炉17の中空部分の内部を加熱し、リフロー炉17の中空部分の内部のガスを製造室1外に排出する状態(これを「第1の状態」と称する)に維持する必要がある。処理対象となるワークは常にリフロー炉17内に投入されているわけではなく、例えば休憩やシフト交替で作業員が不在となる時間、段取り替えの時間、異常発生時など、リフロー炉17内へのワークの投入が一時的に止まる場合もある。そこで、本実施形態のリフロー炉17は、リフロー炉の中空部分の内部を加熱し、リフロー炉17の中空部分の内部のガスを製造室1外に排出するモードである第1のモード(これを「運転モード」と称する)と、第1の状態に比べてエネルギ消費量の低い状態(これを「第2の状態」と称する)を維持する第2のモードとを有している。第2のモードは、第2の状態で待機する待機モード又は動作を停止する停止モードである。必要に応じて、リフロー炉17の動作モードを運転モードから待機モードに切り替えることで、非生産時のエネルギ消費を抑える。待機モードでは、例えば、ファン33A、33Bの駆動を停止する、ファン33A、33Bの駆動量を減らす、ヒータ37への電力の供給を停止する、ヒータ37への電力の供給量を減らす等を行うことで、エネルギの消費が抑制される。ファン33A、33の回転数を下げることで、ファン33A、33の駆動量を減らしてもよい。ファン33A、33を連続駆動から間欠駆動に切り替えることで、ファン33A、33の駆動量を減らしてもよい。また、待機モードでは、運転モードで蓄積された熱エネルギを維持する役割がある。待機モードにおいて、熱エネルギを維持することで、リフロー炉17の再立ち上げ時の温度開始時点が目標値に近くなるため、リフロー炉17の立ち上げに要するエネルギの消費量を抑える効果がある。リフロー炉17内の雰囲気を維持するために、(1)リフロー炉17への圧縮空気の供給を停止する(供給エアの元栓を閉める)、(2)リフロー炉17内からの空気排出を減らす、等を行ってもよい。リフロー炉17の動作モードを運転モードから待機モードに切り替えることを、「リフロー炉17の省エネモードへの切り替え」とも称する。
【0032】
基板生産ラインが停止する場合やリフロー炉17のメンテナンス等を行う場合、リフロー炉17の動作を停止することが行われる。必要に応じて、リフロー炉17の動作モードを運転モードから停止モードに切り替えることで、非生産時のエネルギ消費を抑える。例えば、ファン33A、33Bが駆動している状態で、ヒータ37への電力の供給を停止する場合、リフロー炉17内の加熱が停止するが、リフロー炉17内からの排気は続くため、リフロー炉17内の温度が急激に下がる場合がある。この場合、リフロー炉17の動作が停止した後の比較的早い段階でリフロー炉17内の加熱を開始しても、リフロー炉17内の温度が目標温度に達するまでに要する時間が長くなり、熱損失が大きい。そこで、本
実施形態では、リフロー炉17の停止モードにおいて、ファン33A、33Bの駆動の停止及びヒータ37への電力の供給の停止を行うことで、リフロー炉17内の温度の低下を緩やかにする。これにより、リフロー炉17の動作モードを停止モードから運転モードに切り替える場合に、リフロー炉17内の温度が目標温度に達するまでに要する時間が短くなり、エネルギの消費量を抑えることが可能となる。
【0033】
次に、
図4~
図10を参照して、本システムのフローを説明する。
図4は、リフロー炉17の省エネモードへの切り替え時に実行されるフローの一例を示す図である。ここでは、リフロー炉17の省エネモードへの切り替え時の処理について説明する。リフロー炉17の動作モードを運転モードから停止モードへ切り替える場合やリフロー炉17の動作モードを停止モードから運転モードに切り替える場合については、「省エネモード」を「停止モード」に適宜読み替えればよい。ユーザは、IPC101に生産開始予定時刻を入力する(S101)。生産開始予定時刻は、リフロー炉17が生産開始可能な状態になると予定される時刻である。ユーザは、IPC101に省エネモードの開始を入力する(S102)。
図5は、IPC101の操作パネル300の一例を示す図である。ユーザは、IPC101の操作パネル300を用いて、生産開始予定時刻として16:30を入力し、省エネモードの開始(START)を入力する。IPC101の操作パネル300は、ユーザ
からの入力を受け付けると共に、種々の情報を表示する表示機能を有している。以下では、IPC101の操作パネル300を用いた情報表示及び操作の一例を示しているが、これに限定されない。例えば、プログラマブルターミナルの画面に情報を表示し、ユーザはプログラマブルターミナルを用いてリフロー炉17に対する操作を行ってもよい。プログラマブルターミナルは、PLC102及びリフロー炉PLC103の少なくとも一方と接続可能であり、プログラマブルターミナルの指示はPLC102及びリフロー炉PLC103の少なくとも一方に送られる。
【0034】
IPC101は、PLC102に対して、リフロー炉17の省エネモードへの切り替えを指示する(S103)。PLC102は、モード出力部113及びリフロー炉PLC103を介して、リフロー炉17の省エネモードへの切り替えを行う(S104)。これにより、リフロー炉17の省エネモードがONになる。PLC102は、パトランプ112の表示を運転モードから待機モードに切り替える。なお、リフロー炉17の停止モードへの切り替え時は、PLC102は、パトランプ112の表示を運転モードから停止モードに切り替える。
【0035】
IPC101は、省エネモードの開始時刻をIPC101の記憶装置に記録する(S105)。
図6は、IPC101の操作パネル300の一例を示す図である。
図6に示すように、現在時刻が省エネモードの開始時刻として記録される。IPC101は、遷移時刻(切替時刻)を計算する(S106)。
【0036】
図7~
図9を参照して、遷移時刻の計算処理の一例を説明する。まず、省エネモード時間(x)及び立ち上げ時間(y)について説明する。
図7は、省エネモード時間(x)及び立ち上げ時間(y)の説明図である。
図7の横軸は、時間(min)を示し、
図7の縦軸は、ヒータ37の温度を示している。省エネモード時間(x)は、リフロー炉17の省エネモードをONにする時刻からリフロー炉17の省エネモードをOFFにする時刻までの経過時間である。
図7では、ヒータ37をONにする時刻が、リフロー炉17の省エネモードをOFFにする時刻(遷移時刻)である。立ち上げ時間(y)は、リフロー炉17の省エネモードをOFFにする時刻から生産開始予定時刻までの経過時間である。リフロー炉17の省エネモードをONにすることで、ヒータ37がOFFになり又はヒータ37への電力の供給量が減り、ヒータ37の温度が低下する。リフロー炉17の省エネモードをOFFにすることで、ヒータ37がONになり又はヒータ37への電力の供給量が増え、ヒータ37の温度が目標温度まで上昇することで、リフロー炉17が安定した品質のワ
ークを生産開始することが可能な状態(生産開始可能状態)になる。
図7に示すように、リフロー炉17の省エネモードをOFFする時刻(遷移時刻)は、遷移時刻の前後の時間である省エネモード時間(x)及び立ち上げ時間(y)の比率で決まる。したがって、遷移時刻は、省エネモード時間(x)及び立ち上げ時間(y)の関係性から算出することが可能である。
【0037】
図8は、遷移時刻予測モデルを示す図である。
図8の横軸は、省エネモード時間(x)を示し、
図8の縦軸は、立ち上げ時間(y)を示す。
図8に示す遷移時刻予測モデル(一次関数モデル)は、省エネモード時間(x)及び立ち上げ時間(y)の関係性に基づいて算出されたモデルである。
【0038】
図9は、遷移時刻の計算処理のフローの一例を示す図である。IPC101は、生産開始予定時刻及び省エネモードの開始時刻を取得する(S201)。IPC101は、生産開始予定時刻と省エネモードの開始時刻との差分(T)を計算する(S202)。IPC101は、
図9に示す遷移時刻予測モデルを用いて、立ち上げ時間(y)を算出する。すなわち、IPC101は、遷移時刻予測モデルの方程式(x+y=T、y=ax+b)を解くことにより、立ち上げ時間(y)を算出する(S203)。IPC101は、生産開始予定時刻から立ち上げ時間(y)を引き算することにより遷移時刻を計算する(S204)。上記遷移時刻予測モデルの方程式のa及びbについては、予め蓄積したデータ(省エネモード開始から実際に遷移するまでの複数パターンの時間データ)によって求めてもよく、複数回のデータから算出してもよい。
【0039】
IPC101は、計算した遷移時刻を表示する(S107)。IPC101は、遷移時刻のデータをPLC102に送る(S108)。PLC102は、タイマにより遷移時刻を監視し、現在時刻が遷移時刻になるまで待機する(S109)。PLC102は、現在時刻が遷移時刻になった場合、モード出力部113及びリフロー炉PLC103を介して、リフロー炉17を待機モードから運転モードに切り替える(S110)。これにより、リフロー炉17の省エネモードがOFFになる。なお、停止モードから運転モードへの切り替えについては、PLC102は、現在時刻が遷移時刻になった場合、モード出力部113及びリフロー炉PLC103を介して、リフロー炉17を停止モードから運転モードに切り替える。
図5及び
図6には図示していないが、現在時刻が省エネモードの終了時刻として記録されてもよい。リフロー炉17が運転モードになると、ヒータ37への電力の供給が開始されてヒータ37がONになり又はヒータ37への電力の供給量が増え、ダクト32A、32Bの開度が100%になり、ファン33A、33Bへの電力の供給が開始されてファン33A、33Bが駆動する又はファン33A、33の駆動量が増える。ファン33A、33の回転数を上げることで、ファン33A、33の駆動量を増やしてもよい。また、ファン33A、33を間欠駆動から連続駆動に切り替えることで、ファン33A、33の駆動量を増やしてもよい。
【0040】
PLC102は、リフロー炉PLC103を介して、リフロー炉17の状態が生産可能状態になった時刻(生産可能時刻)を取得してもよい。PLC102は、生産可能時刻のデータをIPC101に送る。IPC101は、遷移時刻及び生産可能時刻に基づいて、遷移時間を計算する。遷移時間は、リフロー炉17の動作モードを待機モード又は停止モードから運転モードに切り替えた時刻からリフロー炉17の状態が生産可能状態になった時刻までに要した時間(生産可能時刻-遷移時刻)である。
図5及び
図6には図示していないが、生産可能開始時刻が生産開始実時刻(設備立上完了トリガ)として記録されてもよい。
【0041】
図4では、ユーザがIPC101に生産開始予定時刻を入力するモード(入力モード)により、リフロー炉17の省エネモードへの切り替えが実行される。入力モードに替えて
、スケジュールモードにより、リフロー炉17の省エネモードへの切り替えが実行されてもよい。
図10は、スケジュールモードにより、リフロー炉17の省エネモードへの切り替えが実行される場合のIPC101の操作パネル300の一例を示す図である。IPC101は、MES(Manufacturing Execution System)から取得した生産計画情報に基づいて、生産開始予定時刻を決定して、操作パネル300に生産開始予定時刻を表示する。また、
図10に示す操作パネル300には、省エネモードの開始時刻が表示されている。更に、操作パネル300には、省エネモードの終了時刻及び生産開始実時刻が表示されてもよい。
【0042】
図11~
図13を参照して、ダンパー制御について説明する。
図11は、製造室1内の圧力P1とダクト32A内の圧力P2との差圧(P1-P2)をIPC101の表示装置に表示するフローの一例を示す図である。IPC101は、差圧(P1-P2)の目標値の入力を受け付ける(S301)。例えば、ユーザが、IPC101のユーザインターフェースを用いて差圧(P1-P2)の目標値を入力してもよい。IPC101は、表示装置に差圧(P1-P2)の目標値を表示する(S302)。IPC101は、差圧センサ38から差圧データを取得する(S303)。IPC101は、差圧(P1-P2)の生データ、設定間隔(Tmin)の差圧(P1-P2)の移動分散-2σ、-3σを表示装置に表示する(S304)。
図12は、差圧(P1-P2)の目標値、生データ、移動分散-2σ、-3σの表示例を示す図である。
【0043】
図13は、ダンパー制御のフローの一例を示す図である。ダンパー制御は、定常的に行われてもよいし、間欠的に行われてもよい。ダンパー制御は、リフロー炉17の動作モードが運転モード、待機モード又は停止モードである場合に行われてもよい。リフロー炉17の動作モードが運転モードである場合(運転モード時)にダンパー制御を行い、リフロー炉17の動作モードが待機モード又は停止モードである場合にダンパー制御を停止してもよい。リフロー炉17の動作モードが待機モードである場合(待機モード時)にダンパー制御を行い、リフロー炉17の動作モードが運転モード又は停止モードである場合にダンパー制御を停止してもよい。リフロー炉17の動作モードが停止モードである場合(停止モード時)にダンパー制御を行い、リフロー炉17の動作モードが運転モード又は待機モードである場合にダンパー制御を停止してもよい。IPC101は、差圧(P1-P2)の閾値の入力を受け付けることにより、閾値を取得する(S401)。例えば、ユーザ
が、IPC101のユーザインターフェースを用いて差圧(P1-P2)の閾値を入力してもよい。IPC101は、複数の閾値の入力を受け付けることで、複数の閾値を取得してもよい。また、IPC101は、実験又はシミュレーションにより差圧(P1-P2)の閾値を求めてもよい。IPC101は、表示装置に差圧(P1-P2)の閾値を表示する(S402)。
【0044】
IPC101は、差圧センサ38から差圧データを取得する(S403)。IPC101は、差圧(P1-P2)の生データ、設定間隔(Tmin)の差圧(P1-P2)の移動分散-3σを表示装置に表示する(S404)。ユーザの選択に応じて、IPC101は、差圧(P1-P2)の生データ、設定間隔(Tmin)の差圧(P1-P2)の移動分散-2σを表示装置に表示してもよい。IPC101は、移動分散-3σのデータをPLC102に送る(S405)。ユーザの選択に応じて、IPC101は、移動分散-2σのデータ又は差圧(P1-P2)の生データをPLC102に送ってもよい。
【0045】
PLC102は、移動分散-3σのデータに基づいて、ダクト開度の判定処理を行う(S406)。PLC102は、移動分散-3σのデータ又は差圧(P1-P2)の生データに基づいて、ダクト開度の判定処理を行ってもよい。PLC102は、ダクト開度の判定処理の結果に基づいて、ダンパー装置104に開度変更指令を出す(S407)。ダンパー装置104は、ダンパーモータ36A、36Bを有する。ダンパーモータ36Aは、
PLC102からの開度変更指令に基づいて、開閉板34Aの開閉の度合いを制御し、ダクト32Aの開度を制御する。ダンパーモータ36Bは、PLC102からの開度変更指令に基づいて、開閉板34Bの開閉の度合いを制御し、ダクト32Bの開度を制御する。
【0046】
図14を参照して、ダクト開度の判定処理及びダクト開度の制御処理を説明する。
図14は、ダクト開度の判定処理及びダクト開度の制御処理の説明図である。
図14は、設定間隔(Tmin)の差圧(P1-P2)の移動分散-3σに基づいて、開閉板34Aの開閉の度合いを制御することで、ダクト32Aの開度を制御する処理を示す。
図14に示す例では、閾値TH1、TH2及びTH3が設定されている。差圧(P1-P2)が閾値TH1以下になった場合、ダクト32Aの開度を徐々に上げる。差圧(P1-P2)が閾値TH2を超えた時点におけるダクト32Aの開度(50%)を維持する。差圧(P1-P2)が閾値TH3を超えた場合、ダクト32Aの開度を徐々に下げる。差圧(P1-P2)が閾値TH2以下になった時点におけるダクト32Aの開度(40%)を維持する。このように、差圧(P1-P2)の変化に基づいて、ダクト32Aの開度を制御することで、差圧(P1-P2)を一定範囲内に維持することが可能となり、ダクト32A内を陰圧に維持することができる。ダクト32Aの開度の制御及び開閉板34Aの開閉の度合いの制御は、ダクト32Bの開度の制御及び開閉板34Bの開閉の度合いの制御に適用することができる。運転モード時にダクト32A、32Bから必要以上の排気が行われると、熱損失が大きくなる場合がある。運転モード時においては、ダクト32A、32B内のガスや異物が製造室1内に逆流しない程度に、ダクト32A、32Bの開度を適切に制御することで、ダクト32A、32Bの排気量を抑える。これにより、熱損失を低減しつつ、リフロー炉17内の保温効果を高め、エネルギロスを最小化することができる。待機モード時及び停止モード時においては、ダクト32A、32B内を陰圧に維持することで、ダクト32A、32B内のガスや異物が製造室1内に逆流することが抑止される。
【0047】
図15は、IPC101から計装用制御機器200への指示フローの一例を示す図である。IPC101は、遷移時刻のデータをPLC102に送る(S501)。IPC101は、遷移時刻のデータをPLC102に送った後、割り込み指示を計装用制御機器200に送る(S502)。割り込み指示は、製造室1内への給気量を増加させるための指示であり、製造室1内への給気量の増加タイミング(増加開始時刻)、増加割合(%)及び増加保持時間に関する指示を含む。リフロー炉17の動作モードが待機モード又は停止モードから運転モードに切り替わる前に、IPC101は、割り込み指示を計装用制御機器200に送る。
【0048】
計装用制御機器200は、製造室1内への給気量の増加割合(%)に基づいて、製造室1内への給気量の増加量を決定する。計装用制御機器200は、現在時刻が増加開始時刻に達した場合、空調設備2を制御し、空調設備2は、製造室1内への給気量を増加する。計装用制御機器200は、製造室1内への給気量の増加保持時間が経過するまで製造室1内への給気量が増加した状態が保持されるように、空調設備2を制御する。リフロー炉17の動作モードが待機モードから運転モードに切り替わることにより、ファン33A、33Bへの電力の供給が開始されてファン33A、33Bが駆動し、リフロー炉17の中空部分の内部のガスが製造室1外に排出される。或いは、リフロー炉17の動作モードが待機モードから運転モードに切り替わることにより、ファン33A、33Bの駆動量が増加し、リフロー炉17の中空部分の内部のガスの排出量が増える。したがって、リフロー炉17の動作モードが待機モードである場合と比べて、リフロー炉17の動作モードが運転モードである場合における製造室1内からの給気量が増加する。本実施形態では、リフロー炉17の動作モードが待機モードから運転モードに切り替わる前に、すなわち、リフロー炉17が第2の状態から第1の状態に遷移する前に、空調設備2を制御する計装用制御機器200に対して製造室1内への給気量を増加させるための指示を行うことで、製造室1内からの給気量が増加しても、製造室1内を陽圧に維持することが可能である。
【0049】
リフロー炉17の動作モードが停止モードから運転モードに切り替わることにより、ファン33A、33Bへの電力の供給が開始されてファン33A、33Bが駆動し、リフロー炉17の中空部分の内部のガスが製造室1外に排出される。したがって、リフロー炉17の動作モードが停止モードである場合と比べて、リフロー炉17の動作モードが運転モードである場合における製造室1内からの給気量が増加する。本実施形態では、リフロー炉17の動作モードが停止モードから運転モードに切り替わる前に、すなわち、リフロー炉17が第2の状態から第1の状態に遷移する前に、空調設備2を制御する計装用制御機器200に対して製造室1内への給気量を増加させるための指示を行うことで、製造室1内からの給気量が増加しても、製造室1内を陽圧に維持することが可能である。
【0050】
図16は、待機モード時又は停止モード時に異常が発生した場合の制御フローの一例を示す図である。ここでは、待機モード時に異常が発生した場合の制御について説明する。停止モード時に異常が発生した場合の制御については、「省エネモード」及び「待機モード」を「停止モード」に適宜読み替えればよい。計装用制御機器200は、異常フラグをIPC101に通知する(S601)。IPC101は、PLC102に省エネモードのキャンセル指令を送る(S602)。また、ユーザから省エネモードのキャンセル入力を受け付けた場合、IPC101は、PLC102に省エネモードのキャンセル指令を送る。
【0051】
IPC101は、割り込み指示を計装用制御機器200に送る(S603)。割り込み指示は、製造室1内への給気量を増加させるための指示であり、製造室1内への給気量の増加タイミング(増加開始時刻)、増加割合(%)及び増加保持時間に関する指示を含む。計装用制御機器200は、製造室1内への給気量の増加割合(%)に基づいて、製造室1内への給気量の増加量を決定する。計装用制御機器200は、現在時刻が増加開始時刻に達した場合、空調設備2を制御して製造室1内への給気量を増加する。計装用制御機器200は、製造室1内への給気量の増加保持時間が経過するまで製造室1内への給気量が増加した状態を保持する。
【0052】
PLC102は、ダクト32A、32Bのそれぞれの開度が100%になるようにダンパー装置104に遷移指示を送る(S604)。ダンパーモータ36Aは、PLC102からの遷移指示に基づいて、ダクト32Aの開度が100%になるように開閉板34Aの開閉の度合いを制御する。ダンパーモータ36Bは、PLC102からの指令に基づいて、ダクト32Bの開度が100%になるように開閉板34Bの開閉の度合いを制御する。
【0053】
PLC102は、リフロー炉17の省エネモードの切り替え指示をリフロー炉PLC103に送る(S605)。リフロー炉PLC103は、リフロー炉17の動作モードを待機モードから運転モードに切り替える。これにより、リフロー炉17の省エネモードがOFFになる。リフロー炉17の動作モードが待機モードから運転モードに切り替わると、ヒータ37への電力の供給が開始されてヒータ37がONになり又はヒータ37への電力の供給量が増え、ファン33A、33Bへの電力の供給が開始されてファン33A、33Bが駆動する又はファン33A、33の駆動量が増える。なお、リフロー炉17の動作モードが停止モードから運転モードに切り替わる場合には、ヒータ37への電力の供給が開始されてヒータ37がONになり、ファン33A、33Bへの電力の供給が開始されてファン33A、33Bが駆動する。
【0054】
運転モードにおいては、ヒータ37への電力の供給が開始されてヒータ37がONになり又はヒータ37への電力の供給量が増え、ヒータ37の温度が目標温度に維持される。これにより、リフロー炉17内の温度が安定した品質のワークを生産開始可能な状態に維持される。また、運転モードにおいては、ファン33A、33Bへの電力の供給が開始さ
れてファン33A、33Bが駆動することで、リフロー炉17内で発生したガスが、ダクト32A、32B及び製造室1に設けられた給気口3C、3Dを介して製造室1外に排出される。これにより、リフロー炉17内で発生したガスが、製造室1内に放出されずに製造室1外に排出される。リフロー炉17内へのワークの投入が一時的に止まる場合、リフロー炉17の動作モードを運転モードから待機モードへと切り替え、ファン33A、33Bへの電力の供給を停止してファン33A、33Bの駆動を停止する又はファン33A、33Bの駆動量を減らし、ヒータ37への電力の供給を停止する又はヒータ37への電力の供給量を減らす。これにより、エネルギの消費を抑制できる。また、リフロー炉17内へのワークの投入が長時間止まる場合、リフロー炉17の動作モードを運転モードから停止モードへと切り替え、ファン33A、33Bへの電力の供給を停止してファン33A、33Bの駆動を停止し、ヒータ37への電力の供給を停止する。れにより、エネルギの消費を抑制できる。
【0055】
生産を再開するためには、リフロー炉17の動作モードを待機モードから運転モードに切り替え、ファン33A、33Bへの電力の供給を開始してファン33A、33Bの駆動を再開又はファン33A、33Bの駆動量を増やし、ヒータ37への電力の供給を再開又はヒータ37への電力の供給量を増やす。或いは、リフロー炉17の動作モードを停止モードから運転モードに切り替え、ファン33A、33Bへの電力の供給を開始してファン33A、33Bを駆動し、ヒータ37への電力の供給を開始する。ただし、リフロー炉17の動作モードを待機モード又は停止モードから運転モードに切り替えたとしても直ちにリフロー炉17内の温度が目標温度に達するわけではなく、リフロー炉17内の温度が目標温度に達するまでにはある程度の時間を必要とする。ここで、リフロー炉17の運転モードへの切り替えが行われてから(遷移時刻T0)、リフロー炉17内の温度が目標温度に達してリフロー炉17が生産開始可能状態になるまで(時刻T1)に要する時間を、遷移時間RT(=T1-T0)と呼ぶ。遷移時間は、装置構成、運転条件及び生産品目(生産品の種類)等によって異なる。
【0056】
そこで本実施形態では、IPC101が、遷移時刻からリフロー炉17が実際に生産開始可能状態になるまでに要した実時間を計測し、その計測値に基づいて遷移時間の設定値を自動で更新(学習)することにより、モード切替タイミングの最適化を行う。以下、IPC101による制御の具体的な構成について詳しく説明する。
【0057】
(機能ブロック)
図17は、IPC101の機能の構成を示すブロック図である。IPC101の機能は、記憶部120、モード切替決定部121、指示部122、計測部123、更新部124、入力部125、制御部126から構成される。記憶部120は、遷移時間の設定値、計測値等を記憶する機能であり、メモリやストレージ等の記憶装置を利用して実現される。モード切替決定部121は、リフロー炉17の動作モード(運転モード/待機モード/停止モード)の切り替えを決定する機能である。指示部122は、計装用制御機器200を介して、空調設備2に対して製造室1内への給気量を増加させるための指示(割り込み指示)を行う機能である。
【0058】
計測部123は、リフロー炉17の動作モードが待機モード又は停止モードから運転モードへ切り替えられてから、リフロー炉17が生産開始可能な状態になるまでに実際に要した時間(第2遷移時間)をタイマにより計測する機能である。更新部124は、計測部123によって計測された第2遷移時間の計測値に基づいて、記憶部120に記憶されている遷移時間の設定値を更新する機能である。入力部125は、ユーザからの情報やデータの入力を受け付ける機能である。制御部126は、リフロー炉17が待機モード又は停止モードにある場合に、製造室1内の圧力P1とダクト32A内の圧力P2との差圧に基づいて、ダクト32A、32Bの開度を制御する機能である。また、制御部126は、各
種の演算や計算を行う演算部(計算部)としても機能する。
【0059】
図17に示す各種の機能は、IPC101の記憶装置に記憶されたプログラムをIPC101のCPU等のコンピュータが実行することにより実現されるものである。
図17に示すIPC101の機能の全てが必須というわけではなく、適宜、IPC101の機能の追加又は削除がなされてもよい。また、
図17に示すIPC101の機能の全部又は一部をASICやFPGAなどの回路で構成してもよいし、あるいは、当該機能の全部又は一部をクラウドサーバや他の装置で実行してもよい。
【0060】
次に、
図17に示す各種の機能の動作を説明する。指示部122又は制御部126は、リフロー炉17が待機モード又は停止モードである状態(第2状態)から生産開始可能状態になるまでに要すると見込まれる遷移時間の設定値を算出する。例えば、指示部122又は制御部126は、生産開始予定時刻及び省エネモードの開始時刻に基づいて、
図17に示す遷移時刻予測モデルを用いて立ち上げ時間(y)を算出し、立ち上げ時間(y)を遷移時間の設定値として算出してもよい。記憶部120は、指示部122又は制御部126によって算出された遷移時間の設定値を記憶する。
【0061】
リフロー炉17の動作モードが運転モードである場合に、待機モード又は停止モードへの切り替え命令が発生すると、モード切替決定部121がリフロー炉17の動作モードを待機モード又は停止モードに切り替えることを決定する。待機モード又は停止モードへの切り替え命令は、IPC101がユーザから入力を受け付けた場合に発生する。また、所定時刻(休憩開始時刻、シフト交替時刻など)が設定されたスケジュール情報に基づいて、待機モード又は停止モードへの切り替え命令が発生する場合もある。
【0062】
指示部122は、リフロー炉17の動作モードが待機モード又は停止モードから運転モードに切り替わる前に、すなわち、リフロー炉17が第2の状態から第1の状態に遷移する前に、計装用制御機器200を介して、空調設備2に対して製造室1内への給気量を増加させるための指示(割り込み指示)を行う。割り込み指示は、製造室1内への給気量の増加タイミング(増加開始時刻)、増加割合(%)及び増加保持時間に関する指示を含む。
【0063】
指示部122は、リフロー炉17が生産開始可能な状態になると予定される時刻(生産開始予定時刻)と、記憶部120に記憶されている遷移時間の設定値に基づいて、リフロー炉17の動作モードを待機モード又は停止モードから運転モードへの切り替えを行う切替時刻(遷移時刻)を決定する。例えば、指示部122は、生産開始予定時刻から遷移時間の設定値を引くことにより求めた値を切替時刻(遷移時刻)として決定する。現在時刻が切替時刻(遷移時刻)に達すると、リフロー炉17の動作モードが待機モード又は停止モードから運転モードに切り替わり、製造室1内からの給気量が増加する。そのため、指示部122は、切替時刻(遷移時刻)に基づいて、製造室1内への給気量の増加タイミングを決定する。
【0064】
計測部123は、リフロー炉17の動作モードが待機モード又は停止モードから運転モードへ切り替えられてから、リフロー炉17が生産開始可能な状態になるまでに実際に要した時間(第2遷移時間)を1回又は複数回計測する。計測部123は、第2遷移時間についての1回又は複数回の計測値を記憶部120に記憶してもよい。更新部124は、第2遷移時間についての1回又は複数回の計測値に基づいて、記憶部120に記憶されている遷移時間の設定値を更新する。第2遷移時間についての1回又は複数回の計測値を用いて、遷移時間の設定値を更新(学習)することが可能となるため、リフロー炉17を実稼働しながら遷移時間の設定値を自動で最適化することができる。運転条件や設置環境の違い、経年劣化等により、同じ生産設備でも遷移時間にばらつきが生じ得るが、本実施形態
のように実際に計測した値に基づいて適宜設定値の更新を行うことで、適正な遷移時間を自動で設定することができる。
【0065】
記憶部120には、リフロー炉17が生産する生産品の種類と、生産品の種類毎の遷移時間の設定値とが、紐づけて記憶されていてもよい。計測部123は、生産品の種類毎の第2遷移時間を1回又は複数回計測する。更新部124は、生産品の種類毎の第2遷移時間についての1回又は複数回の計測値に基づいて、記憶部120に記憶されている生産品の種類毎の遷移時間の設定値を更新する。生産品の種類毎の第2遷移時間についての1回又は複数回の計測値を用いて、生産品の種類毎の遷移時間の設定値を更新(学習)することが可能となるため、リフロー炉17を実稼働しながら生産品の種類毎の遷移時間の設定値を自動で最適化することができる。生産品の種類が変わると遷移時間にばらつきが生じ得るが、生産品の種類毎に計測した値に基づいて適宜設定値の更新を行うことで、適正な遷移時間を自動で設定することができる。
【0066】
記憶部120には、リフロー炉17の運転に関する運転パラメータと、運転パラメータ毎の遷移時間の設定値とが、紐づけて記憶されていてもよい。運転パラメータは、リフロー炉17が生産する生産品の種類、リフロー炉17が生産する生産品の材料の種類、リフロー炉17で用いられる方法の種類、運転モード時にリフロー炉17に携わる作業者の作業者情報、リフロー炉17の設備情報、及び、リフロー炉17の周囲の外的環境情報のうちの少なくとも一つを含む。リフロー炉17の周囲の外的環境情報には、リフロー炉17の周囲の温度情報、湿度情報等が含まれる。計測部123は、運転パラメータ毎の第2遷移時間を1回又は複数回計測する。更新部124は、運転パラメータ毎の第2遷移時間についての1回又は複数回の計測値に基づいて、記憶部120に記憶されている運転パラメータ毎の遷移時間の設定値を更新する。運転パラメータ毎の第2遷移時間についての1回又は複数回の計測値を用いて、運転パラメータ毎の遷移時間の設定値を更新(学習)することが可能となるため、リフロー炉17を実稼働しながら運転パラメータ毎の遷移時間の設定値を自動で最適化することができる。ユーザが運転パラメータをIPC101に入力してもよいし、各種のセンサからIPC101が運転パラメータを取得してもよい。これらに限定されず、IPC101が他の方法により運転パラメータを取得してもよい。
【0067】
PLC102が、製造室1内の圧力とダクト32A内の圧力との差圧に基づいて、ダクト32A、32Bの開度を制御する例を示したが、この制御例に限定されない。制御部126が、製造室1内の圧力とダクト32A内の圧力との差圧に基づいて、ダクト32A、32Bの開度を制御してもよい。また、制御部126が、製造室1内の圧力とダクト32B内の圧力との差圧に基づいて、ダクト32A、32Bの開度を制御してもよい。制御部126は、ダクト制御部の一例である。
【0068】
上記では、IPC101、PLC102及びリフロー炉PLC103が協働して動作することにより、制御装置100の機能を提供する例を示したが、本実施形態はこの例に限定されない。IPC101、PLC102及びリフロー炉PLC103のうちの二つが協働して動作することにより、制御装置100の機能を提供してもよい。あるいは、IPC101、PLC102及びリフロー炉PLC103のうちの一つが動作することにより、制御装置100の機能を提供してもよい。また、IPC101の機能のうちの少なくとも一つを、PLC102及びリフロー炉PLC103が提供してもよい。PLC102の機能のうちの少なくとも一つを、IPC101及びリフロー炉PLC103が提供してもよい。リフロー炉PLC103の機能のうちの少なくとも一つを、IPC101及びPLC102が提供してもよい。
【0069】
<その他>
上記実施形態及び変形例は、本発明の構成例を例示的に説明するものに過ぎない。本発
明は上記の具体的な形態には限定されることはなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0070】
上記で説明した各処理は、コンピュータが実行する方法として捉えてもよい。また、上記で説明した各処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを、ネットワークを通じて、又は、非一時的にデータを保持するコンピュータ読取可能な記録媒体等からコンピュータに提供してもよい。
【0071】
<付記1>
生産設備の中空部分の内部を加熱し、前記中空部分の内部のガスを製造室(1)外に排出する第1の状態を維持する第1のモードと、前記第1の状態よりもエネルギ消費量が低い第2の状態を維持する第2のモードとを有する、少なくとも一つの前記生産設備の制御装置(100)であって、
前記生産設備が前記第2の状態から前記第1の状態に遷移する前に、前記生産設備が配置された前記製造室(1)内を陽圧に維持する空調設備(2)を制御する空調制御部(200)に対して前記製造室(1)内への給気量を増加させるための指示を行う指示部(122)を備える、
制御装置(100)。
<付記2>
前記製造室(1)内への前記給気量を増加させるための前記指示は、前記製造室(1)内への前記給気量の増加タイミング、増加割合及び増加保持時間に関する指示を含む、
付記1に記載の制御装置(100)。
<付記3>
前記生産設備が前記第2の状態から生産開始可能な状態になるまでに要すると見込まれる遷移時間の設定値を記憶する記憶部(120)を備え、
前記指示部(122)は、前記生産設備(17)が前記生産開始可能な状態になる時刻と前記記憶部(120)に記憶されている前記遷移時間の前記設定値に基づいて、前記第2のモードから前記第1のモードへの切り替えを行う切替時刻を決定し、前記切替時刻に基づいて、前記製造室(1)内への前記給気量の増加のタイミングを決定する、
付記2に記載の制御装置(100)。
<付記4>
前記第2のモードから前記第1の運転モードへ切り替えられてから、前記生産設備が前記生産開始可能な状態になるまでに実際に要した第2遷移時間を1回又は複数回計測する計測部(123)と、
前記計測部(123)によって計測された前記第2遷移時間についての1回又は複数回の計測値に基づいて、前記記憶部(120)に記憶されている前記遷移時間の前記設定値を更新する更新部(124)と、
を備える、
付記3に記載の制御装置(100)。
<付記5>
前記記憶部(120)には、前記生産設備の運転に関する運転パラメータと、前記運転パラメータ毎の前記遷移時間の前記設定値とが紐づけて記憶されており、
前記計測部(123)は、前記運転パラメータ毎の前記第2遷移時間を1回又は複数回計測し、
前記更新部(124)は、前記計測部(123)によって計測された前記運転パラメータ毎の前記第2遷移時間についての1回又は複数回の前記計測値に基づいて、前記記憶部(120)に記憶されている前記運転パラメータ毎の前記遷移時間の前記設定値を更新する、
付記4に記載の制御装置(100)。
<付記6>
前記運転パラメータは、前記生産設備が生産する生産品の種類、前記第1のモード時に前記生産設備に携わる作業者の作業者情報、前記生産設備の設備情報、前記生産設備の周囲の外的環境情報、前記生産品の材料の種類、及び、前記生産設備で用いられる方法の種類のうちの少なくとも一つを含む、
付記5に記載の制御装置。
<付記7>
前記生産設備は、基板上の半田ペーストを加熱するリフロー炉(17)であり、
前記第1のモードは、前記リフロー炉(17)内のヒータ(37)に電力を供給して、前記リフロー炉(17)内を加熱し、かつ、前記リフロー炉(17)内のファン(33A、33B)に電力を供給して、前記リフロー炉(17)内のガスを前記製造室(1)外に排出する運転モードであり、
前記第2のモードは、前記ヒータ(37)への電力の供給を停止し又は前記ヒータ(37)への電力の供給量を減らし、かつ、前記ファン(33A、33B)への電力の供給を停止し又は前記ファンの駆動量を減らして前記第2の状態で待機する待機モードである、
付記1から6の何れか一つに記載の制御装置(100)。
<付記8>
前記生産設備は、基板上の半田ペーストを加熱するリフロー炉(17)であり、
前記第1のモードは、前記リフロー炉(17)内のヒータ(37)に電力を供給して、前記リフロー炉(17)内を加熱し、かつ、前記リフロー炉(17)内のファン(33A、33B)に電力を供給して、前記リフロー炉(17)内のガスを前記製造室(1)外に排出する運転モードであり、
前記第2のモードは、前記ヒータ(37)及び前記ファン(33A、33B)への電力の供給を停止して、動作を停止する停止モードである、
付記1から6の何れか一つに記載の制御装置(100)。
<付記9>
前記生産設備は、前記ガスを前記製造室(1)外に排出するためのダクトを有し、
前記製造室(1)内の圧力と前記ダクト内の圧力との差圧に基づいて、前記ダクトの開度を制御するダクト制御部を備える、
付記1から8の何れか一つに記載の制御装置(100)。
<付記10>
生産設備の中空部分の内部を加熱し、前記中空部分の内部のガスを製造室(1)外に排出する第1の状態を維持する第1のモードと、前記第1の状態よりもエネルギ消費量が低い第2の状態を維持する第2のモードとを有する、少なくとも一つの前記生産設備(17)の制御方法であって、
前記生産設備(17)が前記第2の状態から前記第1の状態に遷移する前に、前記生産設備(17)が配置された前記製造室(1)内を陽圧に維持する空調設備(2)を制御する空調制御部(200)に対して前記製造室(1)内への給気量を増加させるための指示を行う指示ステップを備える、
制御方法。
<付記11>
生産設備の中空部分の内部を加熱し、前記中空部分の内部のガスを製造室(1)外に排出する第1の状態を維持する第1のモードと、前記第1の状態よりもエネルギ消費量が低い第2の状態を維持する第2のモードとを有する、少なくとも一つの前記生産設備(17)の制御装置に、
前記生産設備(17)が前記第2の状態から前記第1の状態に遷移する前に、前記生産設備(17)が配置された前記製造室(1)内を陽圧に維持する空調設備(2)を制御する空調制御部(200)に対して前記製造室(1)内への給気量を増加させるための指示を行う指示ステップを実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0072】
1:製造室
2:空調設備
17:リフロー炉
21、24、35A、35B:インバータ
22、25:給気ファン
23、26:給気装置
27、38:差圧センサ
32A、32B:ダクト
33A、33B:ファン
34A、34B:開閉板
36A、36B:ダンパーモータ
37:ヒータ
100:制御装置
101:IPC
102:PLC
103:リフロー炉PLC
200:計装用制御機器