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特開2024-117525情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117525
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20240822BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240822BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20240822BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/00 180
H02J3/00 130
H02J3/38 110
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023662
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 章弘
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AA03
5G066AA09
5G066AE04
5G066HB06
5G066KB01
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、需要家の負荷の有効電力と、発電設備の有効電力とを推定する。
【解決手段】電力系統の所定区間において、負荷を有し、電力の買取契約対象の発電設備を有さない第1需要家と、負荷を有し、余剰買取契約対象の発電設備を有する第2需要家と、負荷を有さず、全量買取契約対象の発電設備を有する第3需要家と、のいずれかに分類される需要家を複数含む電力系統の状態を推定する情報処理装置であって、第1需要家の複数の負荷のそれぞれの電力量計の測定値を合計した第1合計値と、第3需要家の複数の発電設備のそれぞれの電力量計の測定値を合計した第2合計値とを算出する第1算出部と、記第1合計値に対し第1係数を乗算して、第1需要家及び第2需要家の負荷の第1推定値と、第2合計値に対し第2係数を乗算して、第2需要家及び第3需要家の発電設備の第2推定値と、を含む状態を推定する第1推定部と、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の所定区間において、負荷を有し、電力の買取契約対象の発電設備を有さない第1需要家と、負荷を有し、余剰買取契約対象の発電設備を有する第2需要家と、負荷を有さず、全量買取契約対象の発電設備を有する第3需要家と、のいずれかに分類される需要家を複数含む前記電力系統の状態を推定する情報処理装置であって、
前記第1需要家の複数の負荷のそれぞれの電力量計の測定値を合計した第1合計値と、前記第3需要家の複数の発電設備のそれぞれの電力量計の測定値を合計した第2合計値とを算出する第1算出部と、
前記第1合計値に対し第1係数を乗算して、前記第1需要家及び前記第2需要家の負荷の第1推定値と、前記第2合計値に対し第2係数を乗算して、前記第2需要家及び前記第3需要家の発電設備の第2推定値と、を含む前記状態を推定する第1推定部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記第1需要家及び前記第2需要家は、契約容量が所定値未満の第1負荷を有し、
前記第1算出部は、
前記第1需要家の前記第1負荷のそれぞれの電力量計の測定値を合計した前記第1合計値を算出し、
第1推定部は、
前記第1需要家及び前記第2需要家の前記第1負荷の第1推定値を含む前記状態を推定する、
情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記第1需要家及び前記第2需要家は、契約容量が所定値以上の第2負荷を有し、
前記第2需要家は、第1発電設備と、前記第1発電設備より高い電圧で受電する需要家に連系された第2発電設備とを有し、
前記第1需要家の複数の前記第2負荷のそれぞれの電力量計の測定値を合計した第3合計値を算出する第2算出部と、
前記第2負荷及び前記第2発電設備を有する前記第2需要家のそれぞれの電力量計の測定値から、前記第2需要家の前記第2発電設備のそれぞれの有効電力を減算した減算結果の第4合計値を算出する第3算出部と、
を備え、
前記第1推定部は、前記第1負荷の第1推定値と、前記第3及び第4合計値に基づく前記第2負荷の推定値と、を含む前記状態を推定し、
前記第3算出部は、
前記第2需要家の前記第1発電設備及び前記第3需要家の発電設備の推定値と、前記第2需要家の前記第2発電設備の容量と、前記第2需要家の前記第1発電設備及び前記第3需要家の発電設備の容量と、に基づいて、前記第2需要家の前記第2発電設備のそれぞれの有効電力を算出する、
情報処理装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の情報処理装置であって、
発電設備は、電力を変換するパワーコンディショナを含み、
前記第1推定部は、
複数の発電設備のうち、パワーコンディショナが変換可能な電力量に対する発電設備が発電可能な電力量の比率を表す過積載率が所定値未満の発電設備を用いて前記第2推定値を推定する、
情報処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記所定区間に含まれる負荷の有効電力、及び前記第1合計値に前記第1係数を乗じた値の差と、前記所定区間に含まれる発電設備の有効電力、及び前記第2合計値に前記第2係数を乗じた値の差とに基づく目的関数を設定し、前記第1係数と、前記第2係数と、前記所定区間に含まれる負荷の有効電力と、前記所定区間に含まれる発電設備の有効電力とを決定変数とした際に前記目的関数を最小化することにより、前記第1係数と、前記第2係数とを算出する係数算出部を備える、
情報処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記第1推定部が推定した前記状態と、前記電力系統における所定の位置の電圧、及び電流を測定するセンサの測定値とに基づいて、前記センサの測定周期で前記状態を推定する第2推定部を備える、
情報処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の情報処理装置であって、
前記センサが過去に測定した測定値と、各需要家のぞれぞれの電力量計が過去に測定した測定値とに基づいて、前記電力量計の測定周期における前記状態の変動の度合いを示すパラメータを算出するパラメータ算出部を備え、
前記第2推定部は、前記パラメータを用いた状態推定手法により前記状態を推定する、
情報処理装置。
【請求項8】
情報処理装置が、
電力系統の所定区間において、負荷を有し、電力の買取契約対象の発電設備を有さない第1需要家と、負荷を有し、余剰買取契約対象の発電設備を有する第2需要家と、負荷を有さず、全量買取契約対象の発電設備を有する第3需要家と、のいずれかに分類される需要家を複数含む前記電力系統の状態を推定する情報処理方法であって、
前記第1需要家の複数の負荷のそれぞれの電力量計の測定値を合計した第1合計値と、前記第3需要家の複数の発電設備のそれぞれの電力量計の測定値を合計した第2合計値とを算出するステップと、
前記第1合計値に対し第1係数を乗算して、前記第1需要家及び前記第2需要家の負荷の第1推定値と、前記第2合計値に対し第2係数を乗算して、前記第2需要家及び前記第3需要家の発電設備の第2推定値と、を含む前記状態を推定するステップと、
を含む処理を実行する、情報処理方法。
【請求項9】
電力系統の所定区間において、負荷を有し、電力の買取契約対象の発電設備を有さない第1需要家と、負荷を有し、余剰買取契約対象の発電設備を有する第2需要家と、負荷を有さず、全量買取契約対象の発電設備を有する第3需要家と、のいずれかに分類される需要家を複数含む前記電力系統の状態を推定する情報処理プログラムであって、
コンピュータに、
前記第1需要家の複数の負荷のそれぞれの電力量計の測定値を合計した第1合計値と、前記第3需要家の複数の発電設備のそれぞれの電力量計の測定値を合計した第2合計値とを算出する第1算出部と、
前記第1合計値に対し第1係数を乗算して、前記第1需要家及び前記第2需要家の負荷の第1推定値と、前記第2合計値に対し第2係数を乗算して、前記第2需要家及び前記第3需要家の発電設備の第2推定値と、を含む前記状態を推定する第1推定部と、
を実現させる、情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統において、例えば太陽光発電設備が存在する場合、各需要家に設けられた電力量計の測定値は、需要家の負荷の有効電力と、太陽光発電設備の有効電力とが合算された値となる。
【0003】
しかしながら、電力系統の適切な運用計画や設備計画の観点から、需要家の負荷の有効電力と、太陽光発電設備の有効電力とを個別に推定することが必要である。そこで、これらを個別に推定するための技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、センサ内蔵自動開閉器の測定値と、日射量計の測定値とを用いて、需要家の負荷の有効電力と、太陽光発電設備の有効電力とを推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012―044740号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、日射量計の導入や保守のための多大なコストが生じる。
【0007】
本発明はこれらのような課題を鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、需要家の負荷の有効電力と、太陽光発電設備の有効電力とを推定することが可能な情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための一の発明は、電力系統の所定区間において、負荷を有し、電力の買取契約対象の発電設備を有さない第1需要家と、負荷を有し、余剰買取契約対象の発電設備を有する第2需要家と、負荷を有さず、全量買取契約対象の発電設備を有する第3需要家と、のいずれかに分類される需要家を複数含む前記電力系統の状態を推定する情報処理装置であって、前記第1需要家の複数の負荷のそれぞれの電力量計の測定値を合計した第1合計値と、前記第3需要家の複数の発電設備の電力量計のそれぞれの電力量計の測定値を合計した第2合計値とを算出する第1算出部と、前記第1合計値に対し第1係数を乗算して、前記第1需要家及び前記第2需要家の負荷の第1推定値と、前記第2合計値に対し第2係数を乗算して、前記第2需要家及び前記第3需要家の発電設備の第2推定値と、を含む前記状態を推定する第1推定部と、を備える、情報処理装置である。本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成で、需要家の負荷の有効電力と、発電設備の有効電力とを推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態における電力系統の一例を示す図である。
図2】需要家の分類を説明する図である。
図3】電力系統に含まれる各高圧需要家が有する設備の一例を示す図である。
図4】電力系統に含まれる各低圧需要家が有する設備の一例を示す図である。
図5】過積載がない需要家のPV出力の推移の一例を示すグラフである。
図6】過積載がある需要家のPV出力の推移の一例を示すグラフである。
図7】各需要家の電力量計が測定する測定値(有効電力の平均値)の推移の一例を示すグラフである。
図8】本実施形態における情報処理装置のハードウェア構成を説明する図である。
図9】本実施形態における情報処理装置が備える各機能及びデータベースの一例を示すブロック図である。
図10】本実施形態における需要家分類情報テーブルのデータ構成及びデータ例を示す概略図である。
図11】本実施形態における長周期推定部が備える各機能の一例を示すブロック図である。
図12】各需要家のぞれぞれの電力量測定値及び需要家番号を示す図である。
図13】本実施形態における情報処理装置が実行する処理の概要を説明するフローチャートである。
図14】本実施形態における情報処理装置が実行する長周期推定処理の一例を示すフローチャートである。
図15】本実施形態における情報処理装置が実行する短周期推定処理の一例を示すフローチャートである。
図16】推定された実負荷推定値と、PV出力推定値と、これらの合算値の推移を示すグラフである。
図17】本実施形態における情報処理装置が実行するパラメータ算出処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
==実施形態==
<<電力系統1>>
図1は、後述する情報処理装置2が状態推定を行う電力系統1の一例を示す図である。電力系統1は、配電変電所10と、配電線11と、配電線11の所定の位置に設置されたセンサ付開閉器SW1及びセンサ付開閉器SW2と、センサ付開閉器SW1及びセンサ付開閉器SW2の間の配電線11の所定のノードNj(j=1~n)における需要家に設置された電力量計SMとを含む。
【0012】
[配電変電所10]
配電変電所10は、送電線(不図示)から供給される電圧を変圧し、6.6kVの電圧を配電線11へと出力する。
【0013】
[配電線11]
配電線11は、配電変電所10を起点(送り出しノード)とし、配電変電所10に放射状に接続されている。図1では、一の配電線11のみが示されている。
【0014】
[ノード]
ノードは、配電線11上に設けられている。本実施形態では、ノードは柱上変圧器(不図示)を含む高圧受電点単位で管理されている集約単位である。配電変電所10が配電線11へ出力した電力は、ノードを介して需要家に供給される。なお、図1では、n個のノードN1~ノードNnが設けられている。
【0015】
[センサ付開閉器SW]
センサ付開閉器SW1及びセンサ付開閉器SW2のそれぞれは、設置点の少なくとも電圧、電流及び力率といった測定値を、定周期で測定可能なセンサを有する開閉器である。なお、センサ付開閉器SW1と、センサ付開閉器SW2とは同様であるため、以下、センサ付開閉器SW1について説明する。本実施形態では、センサ付開閉器SW1は、1暦日においては、0:00から23:59まで、1分の測定周期で測定値を測定する。
【0016】
なお、必ずしもセンサ付開閉器SW1の測定周期は1分でなくてもよいし、全てのセンサ付開閉器SWの測定周期が同じではなくてもよい。
【0017】
[需要家の分類]
図2は、需要家の分類を説明する図である。需要家はそれぞれ、電力会社との契約の内容に応じて、需要家の設備が高圧で配電線11に連系される高圧需要家H1~H5と、低圧で配電線11に連系される低圧需要家L1~L5とに分類される。高圧需要家H1~H5は、電力の契約容量が所定の基準値(例えば、50kW)以上であり、低圧需要家L1~L5は、電力の契約容量が基準値未満である。高圧需要家H1~H5が有する負荷は、業務用負荷や産業用負荷が主体である。一方、低圧需要家L1~L5が有する負荷は、住宅等の小規模な負荷が主体である。
【0018】
さらに、需要家は、電力会社との電力買取契約の有無又は契約の内容に応じて、発電設備で発電した電力の買取方式で、3つの需要家に分類される。具体的には、第1需要家は、電力会社と電力の買取契約を締結していないPV連系なしの需要家である。また、第2需要家は、電力会社と所謂余剰買取契約を締結しているPV余剰買取の需要家である。また、第3需要家は、電力会社と所謂全量買取契約を締結しているPV全量買取の需要者である。本実施形態で買取される電力は、太陽光発電による電力(PV(PhotoVoltaic))である。以下、本実施形態では、PVで発電された電力の買取方式を「PV買取方式」とする。
【0019】
PV連系なしの需要家は、電力を消費する負荷を有しているが、電力の買取契約対象の発電設備を有していない。負荷は、配電線11から供給される電力を消費する。つまり、PV連系なしの需要家は、配電線11から供給される電力を買電する。
【0020】
例えば、図1のノードN1には、電力を消費する負荷を有するPV連系なしの低圧需要家L1の設備として、集合住宅が接続されている。配電変電所10が配電線11へ出力した電力は、ノードN1を介して集合住宅に供給される。
【0021】
PV余剰買取の需要家は、電力を消費する負荷と、余剰買取契約対象の発電設備とを有している。負荷は、配電線11から供給される電力と、自己の発電設備が発電した電力の少なくとも一部とを消費する。発電設備としては、本実施形態では太陽光発電設備である。ただし、発電設備は太陽光発電設備に限られず、例えば、風力発電設備等でであってもよい。
【0022】
つまり、PV余剰買取の需要家は、配電線11から供給される電力を買電し、発電設備が発電した電力の少なくとも一部を消費する。更に、PV余剰買取の需要家は、発電設備が発電した電力のうち消費した電力を除く電力(余剰電力)を売電する。
【0023】
例えば、図1のノードN2には、電力を消費する負荷と、発電設備とを有するPV余剰買取の低圧需要家L2の設備として、太陽光発電設備が設置された一般住宅が接続されている。配電変電所10が配電線11へ出力した電力は、ノードN2を介して一般住宅の負荷に供給される。更に、太陽光発電設備が発電した電力の少なくとも一部は、一般住宅の負荷に供給される。
【0024】
PV全量買取の需要家は、電力を消費する負荷を有さず、全量買取契約対象の発電設備を有している。発電全量買取の需要家は、自己の発電設備が発電した電力の全量を売電する。
【0025】
例えば、図1のノードN3には、発電設備を有するPV全量買取の高圧需要家H4の設備として、工場に設置された太陽光発電設備が接続されている。このPV全量買取の需要家は、工場に設置された太陽光発電設備が発電した電力の全量を売電する。
【0026】
図3は、電力系統1に含まれる各高圧需要家が有する設備の一例を示す図である。高圧需要家H1~H5が有する各設備は、高圧受電設備12を介して配電線11に接続される。高圧需要家H1~H5が有する各設備と高圧受電設備12との間は、構内配線W1を介して接続される。また、電力量計SMが、電力系統1に含まれる各高圧需要家H1~H5のそれぞれに設置される。
【0027】
PV連系なしの高圧需要家H1では、契約容量が基準値以上の負荷R2(「第2負荷」に対応する。)が高圧受電設備12を介して配電線11に接続される。PV連系なしの高圧需要家H1は、発電設備を有していない。
【0028】
PV余剰買取の高圧需要家H2,H3では、契約容量が基準値以上の負荷R2と、発電設備とが高圧受電設備12を介して配電線11に接続される。高圧需要家H1~H5が有する発電設備(「第2発電設備」に対応する。)は、高圧あるいは低圧で連系される。すなわち、高圧需要家H1~H5が有する発電設備は、低圧需要家L1~L5が有する発電設備より高い電圧で受電する需要家に連系される。発電設備は、太陽光パネルPVPと、太陽光パネルPVPが発電した直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナPCSとを含む。太陽光パネルPVPは、パワーコンディショナPCSを介して、高圧受電設備12に接続される。なお、図示する例では、高圧で電力系統1に連系されたパワーコンディショナPCSを想定しているが、構内で低圧で連系されたパワーコンディショナPCSである場合でも本実施形態では高圧で連系された場合と同様に取り扱う。
【0029】
PV全量買取の高圧需要家H4,H5では、太陽光パネルPVP及びパワーコンディショナPCSを含む発電設備が、高圧受電設備12を介して配電線11に接続される。
【0030】
図4は、電力系統1に含まれる各低圧需要家が有する設備の一例を示す図である。低圧需要家L1~L5が有する各設備は、柱上変圧器TRを介して配電線11に接続される。低圧需要家L1~L5が有する各設備と柱上変圧器TRとの間は、引込線13及び配線W2を介して接続される。また、電力量計SMが、電力系統1に含まれる各低圧需要家L1~L5のそれぞれに設置される。
【0031】
PV連系なしの低圧需要家L1では、契約容量が基準値未満の負荷R1(「第1負荷」に対応する。)が柱上変圧器TRを介して配電線11に接続すされる。PV連系なしの低圧需要家L1は、発電設備を有していない。
【0032】
PV余剰買取の低圧需要家L2,L3では、契約容量が基準値未満の負荷R1と、発電設備(「第1発電設備」に対応する。)とが柱上変圧器TRを介して配電線11に接続される。発電設備は、太陽光パネルPVPと、パワーコンディショナPCSとを含む。太陽光パネルPVPは、パワーコンディショナPCSを介して、柱上変圧器TRに接続される。
【0033】
PV全量買取の低圧需要家L4,L5では、太陽光パネルPVP及びパワーコンディショナPCSを含む発電設備が、柱上変圧器TRを介して配電線11に接続される。
【0034】
図2に戻り、需要家の分類について説明を続ける。
電力の買取契約の対象となる発電設備を有する需要家(PV余剰買取の需要家、及びPV全量買取の需要家)は、パワーコンディショナPCSの容量(以下、「PCS容量」とする。)と、太陽光パネルPVPの容量(以下、「PVパネル容量」とする。)との関係に応じて、過積載率の高い需要家と、過積載率の低い需要家とに分類される。PCS容量は、パワーコンディショナPCSが変換可能な電力量である。また、PVパネル容量は、発電設備が発電可能な電力量である。本実施形態では、PVパネル容量は、太陽光パネルPVPが発電可能な電力量である。本実施形態における過積載率とは、PCS容量に対するPVパネル容量の比率である。例えば、PCS容量が10kW(キロワット)であり、PVパネル容量が12kWである場合には、過積載率は1.2である。通常、太陽光発電設備における過積載率は1.0~1.5程度である。
【0035】
PCS容量よりPVパネル容量を大きくする過積載を行うことで、発電設備から配電線11に出力される電力(以下、「PV出力」とする。)の最大値(以下、「最大PV出力」とする。)を制限し、受変電設備(高圧受電設備12または柱上変圧器TR)を簡易化することができるというメリットがある。一方で、過積載を行うことで、PV出力はPCS容量を上限としたピークカットが行われる。ピークカットとは、出力する電力を削減することである。すなわち、過積載を行うと、PCS容量を超えた分のPV出力はカットされ、PCS容量分の電力だけが配電線11に出力される。
【0036】
図5は、過積載がない需要家のPV出力の推移の一例を示すグラフである。本図に示すグラフの横軸は時間であり、縦軸はPV出力(単位は、kW)である。本図には、1日(0:00から23:59まで)におけるPV出力の推移を示している。図示する例では、PCS容量とPVパネル容量とが等しい。図示するように、過積載がない(PCS容量がPVパネル容量以上である)場合には、発電設備が発電した電力量が、そのままPV出力となる。すなわち、過積載がない場合には、PVパネル容量が、最大PV出力となる。
【0037】
図6は、過積載がある需要家のPV出力の推移の一例を示すグラフである。本図に示すグラフの横軸は時間であり、縦軸はPV出力(単位は、kW)である。本図には、1日(0:00から23:59まで)におけるPV出力の推移を示している。図示するように、過積載がある(PCS容量がPVパネル容量より小さい)場合には、発電設備が発電した電力のうち、PCS容量を超える分は、PV出力からカットされる。すなわち、過積載がある場合には、PCS容量が、最大PV出力となる。
【0038】
過積載率が大きいほど、PV出力がピークカットされる量が増加する。そのため、過積載率が大きい需要家のPV出力は、過積載が低い需要家のPV出力と、時系列データの傾向が異なる。そこで、過積載率に所定の閾値を設け、過積載率が閾値以上の需要家を過積載率の高い需要家に、過積載率が閾値より小さい需要家を過積載率の低い需要家に分類する。
【0039】
つまり、電力系統1は、PV連系なしの高圧需要家H1、PV余剰買取かつ過積載率の低い(以下、「PV余剰買取(過積載率低)」とする。)高圧需要家H2、PV余剰買取かつ過積載率の高い(以下、「PV余剰買取(過積載率高)」とする。)高圧需要家H3、PV全量買取かつ過積載率の低い(以下、「PV全量買取(過積載率低)」とする。)高圧需要家H4、PV全量買取かつ過積載率の高い(以下、「PV全量買取(過積載率高)」とする。)高圧需要家H5、PV連系なしの低圧需要家L1、PV余剰買取(過積載率低)の低圧需要家L2、PV余剰買取(過積載率高)の低圧需要家L3、PV全量買取(過積載率低)の低圧需要家L4、及び、PV全量買取(過積載率高)の低圧需要家L5のいずれかに分類される需要家を複数含むことになる。
【0040】
以下の説明では、電力系統1に含まれる需要家のうち、需要家H1に分類される全ての需要家をまとめて、単に「需要家H1」と称する。需要家H2~H5及び需要家L1~L5についても同様とする。
【0041】
図1に戻り、電力系統1について説明を続ける。
[電力量計SM]
電力量計SMは、電力系統1に含まれる需要家のそれぞれに設置される。電力量計SMとしては、所謂スマートメータを用いることができる。
【0042】
本実施形態では、全ての電力量計SMの測定周期は30分であるとする。なお、電力量計SMが測定した測定値を、測定周期で除した量は、測定周期の期間における有効電力の平均値である。
【0043】
電力量計SMは、1暦日においては、0:00から23:30まで、30分の測定周期で測定値を測定する。
【0044】
なお、必ずしも電力量計SMの測定周期は30分でなくてもよいいし、全ての電力量計SMの測定周期が同じではなくてもよい。
【0045】
図7は、各需要家の電力量計SMが測定する測定値(有効電力の平均値)の推移の一例を示すグラフである。本図において、横軸は時間であり、縦軸は有効電力の平均値である。本図には、1日(0:00から23:59まで)における有効電力の平均値の推移を示している。
【0046】
PV連系なしの需要家については、電力を消費する負荷に対して1台の電力量計SMが設置される。PV連系なしの需要家に設置された電力量計SMは、負荷の使用電力量を、定周期で測定する。そのため、PV連系なしの需要家に設置された電力量計SMが測定する測定値は、負荷の使用電力(負荷の有効電力)のみを示す。
【0047】
また、PV余剰買取の需要家については、電力を消費する負荷と、発電設備とに対して一台の電力量計SMが設置される。PV余剰買取の需要家に設置された電力量計SMは、負荷の使用電力量と、自己の発電設備が発電した電力量との総計である電力量を、定周期で測定する。つまり、PV余剰買取の需要家に設置された電力量計SMの測定値は、負荷の使用電力量(負荷の有効電力)と、自己の発電設備が発電した電力量(発電設備の有効電力)とが混在したものである。
【0048】
また、PV全量買取の需要家については、発電設備に対して1台の電力量計SMが設置される。PV全量買取の需要家に設置された電力量計SMは、自己の発電設備が発電した電力量を、定周期で測定する。そのため、PV全量買取の需要家に設置された電力量計SMの測定値は、自己の発電設備が発電した電力量(発電設備の有効電力)のみを示す。
【0049】
また、前述のように、本実施形態では、発電設備が太陽光発電設備である態様を示している。そのため、図7に示すように、晴天時には、発電設備の有効電力(つまり、太陽光発電設備が発電した電力)は、日中の時間帯が大きく、正午(12:00)付近で極大となる。また、夜間はPV発電に必要な日射量が得られないため、発電設備の有効電力は、夜間の時間帯は小さく、5:00以前及び18:00以降は殆ど発電しない。そのため、需要家の分類によって、電力量計SMが測定する測定値(有効電力)の1日における時系列データの傾向が異なる。
【0050】
<<情報処理装置2>>
情報処理装置2は、電力系統1の対象区間(「所定区間」に対応する。)において、電力系統1の状態を推定する装置である。なお、本実施形態において、対象区間は、図1に示す電力系統1のセンサ付開閉器SW1及びセンサ付開閉器SW2の間の区間であるとして説明する。また、センサ付開閉器SW1及びセンサ付開閉器SW2の測定値のうち、情報処理装置2が扱う測定値は、センサ付開閉器SW1(配電変電所10側)の測定値のみである。情報処理装置2は、通信ネットワーク4を介して、電力系統1に含まれる各電力量計SM、及びセンサ付開閉器SW1,SW2と通信接続する。
【0051】
以下、情報処理装置2のハードウェア構成及び情報処理装置2の機能ブロックの順に説明する。
【0052】
<情報処理装置2のハードウェア構成>
図8は、本実施形態における情報処理装置2のハードウェア構成を説明する図である。情報処理装置2は、CPU(Central Processing Unit)200と、メモリ201と、通信装置202と、記憶装置203と、入力装置204と、出力装置205と、記録媒体読取装置206とを有するコンピュータである。
【0053】
[CPU200]
CPU200は、メモリ201や記憶装置203に記憶された情報処理プログラムを実行することにより、情報処理装置2が有する様々な機能を実現する。
【0054】
[メモリ201]
メモリ201は、例えばRAM(Random-Access Memory)等であり、様々なプログラムやデータ等の一時的な記憶領域として用いられる。
【0055】
[通信装置202]
通信装置202は、通信ネットワーク4を介して、他のコンピュータと各種プログラムやデータの受け渡しを行う。
【0056】
[記憶装置203]
記憶装置203は、CPU200によって、実行または処理される各種データを格納する非一時的な(例えば不揮発性の)記憶装置である
【0057】
[入力装置204]
入力装置204は、ユーザによるコマンドやデータの入力を受け付ける装置であり、キーボード、タッチパネルディスプレイ上でのタッチ位置を検出するタッチセンサなどの入力インタフェースを含む。
【0058】
[出力装置205]
出力装置205は、例えばディスプレイやプリンタなどの装置である。
【0059】
[記録媒体読取装置206]
記録媒体読取装置206は、メモリカードや光ディスク、コンパクトディスク等の記録媒体3に記録された情報処理プログラム等の様々なデータを読み取り、記憶装置203に格納する。
【0060】
<情報処理装置2の機能ブロック>
情報処理装置2の機能ブロックを説明する。なお、ここでは概要を説明し、情報処理装置2が実行する詳細な処理については、後述するフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0061】
図9は、本実施形態における情報処理装置2が備える各機能及びデータベースの一例を示すブロック図である。情報処理装置2は、測定値データベース210と、需要家情報データベース220と、長周期推定部230と、係数算出部240と、短周期推定部250(第2推定部)と、パラメータ算出部260とを備える。
【0062】
[測定値データベース210]
測定値データベース210は、電力系統1に含まれる各需要家のそれぞれが有する各電力量計SMのそれぞれで測定された所定周期の測定値(以下、「電力量測定値」とする。)、及び、センサ付開閉器SW1で測定された所定周期の測定値(以下、「潮流測定値」とする。)を蓄積するデータベースである。測定値データベース210に格納されているデータは、記憶装置203に予め記憶されていてもよいし、CPU200が、通信装置202を介して、各電力量計SM及びセンサ付開閉器SW1から測定値を取得し、取得した測定値を測定値データベース210に書き込むことで、随時更新されてもよい。
【0063】
[需要家情報データベース220]
需要家情報データベース220は、電力系統1に含まれる各需要家のそれぞれの分類種別を示す需要家分類情報テーブルを記憶するデータベースである。
【0064】
図10は、本実施形態における需要家分類情報テーブルのデータ構成及びデータ例を示す概略図である。図示するように、需要家分類情報テーブルは、需要家識別情報と、分類種別との各項目を有する。需要家識別情報は、電力系統1に含まれる各需要家を識別する識別情報である。分類種別は、各需要家が、上述した需要家H1~H5,L1~L4のいずれに該当するかを示す分類情報である。
【0065】
図示する例では、需要家識別情報「1001」の需要家は分類種別が「需要家H1」であり、需要家識別情報「1002」の需要家は分類種別が「需要家H2」であり、需要家識別情報「1003」の需要家は分類種別が「需要家H3」であり、需要家識別情報「1004」の需要家は分類種別が「需要家H4」であり、需要家識別情報「1005」の需要家は分類種別が「需要家H5」であり、需要家識別情報「1006」の需要家は分類種別が「需要家L1」であり、需要家識別情報「1007」の需要家は分類種別が「需要家L2」であり、需要家識別情報「1008」の需要家は分類種別が「需要家L3」であり、需要家識別情報「1009」の需要家は分類種別が「需要家L4」であり、需要家識別情報「1010」の需要家は分類種別が「需要家L5」である。
【0066】
図9に戻り、情報処理装置2の機能構成について説明を続ける。
[長周期推定部230]
長周期推定部230は、通信ネットワークを介して、各電力量計SMのそれぞれから定周期(電力量計SMの測定周期)で電力量測定値を取得し、取得した電力量測定値に基づいて、対象区間における負荷の有効電力と発電設備の有効電力とを含む、電力系統1における対象区間の状態を推定する。以下、推定した負荷の有効電力を「実負荷推定値」と称し、推定した発電設備の有効電力を「PV出力推定値」と称する。また、長周期推定部230が推定した電力系統1における対象区間の状態を、「長周期推定結果」と称する。長周期推定結果は、実負荷推定値と、PV出力推定値とを含む。
【0067】
ここで、高圧需要家と低圧需要家とを比較すると、高圧需要家と比べ低圧需要家の方が、電力の契約容量が小さく、一般的に契約軒数が多い。また、低圧需要家は主に住宅で構成されている。そのため、低圧需要家を無作為に複数軒抽出し、いくつかのグループを構成した場合、各グループに含まれる軒数が多くなるにつれ、各グループそれぞれにおける実際の負荷の有効電力の合計値のデータ間の相関が強くなる傾向にある。
【0068】
また、高圧需要家及び低圧需要家のいずれにおいても、各需要家の発電設備の有効電力のデータ間には強い相関がある。一方、発電設備の有効電力は、気象条件の影響が強く、夜間では発電がおこなわれないため、各需要家の負荷の有効電力と発電設備の有効電力とのデータ間の相関は弱い。
【0069】
そこで、長周期推定部230は、各需要家の電力量計SMの電力量測定値を用いて、電力系統1における負荷の有効電力を代表するサンプル値により全体の負荷の有効電力を推定し、電力系統1における発電設備の有効電力を代表するサンプル値により全体の発電設備の有効電力を推定する。サンプル値の算出方法、及びサンプル値を用いた状態の推定方法の詳細については後述する。
【0070】
ただし、高圧需要家H1~H3の負荷の有効電力は、軒数が少なく、低圧需要家L1~L3の負荷の有効電力と時系列データの傾向が異なるため、サンプル値を用いた推定の対象から除外する。
【0071】
また、過積載率高の需要家H3,H5,L3,L5の発電設備の有効電力は、過積載率低の需要家の発電設備の有効電力と発電ピーク時付近での時系列データの傾向が異なるため、サンプル値を用いた推定の対象から除外する。
【0072】
すなわち、まず、長周期推定部230は、需要家H4,L1,L2,L4の状態を、サンプル値を用いて推定する。以下、負荷を有する高圧需要家及び過積載率高の需要家を除く需要家H4,L1,L2,L4を、「サンプル推定対象の需要家」と称する場合がある。続いて、長周期推定部230は、除外した需要家H1,H2、H3,H5,L3,L5のそれぞれの状態を分類種別ごとに推定する。そして、長周期推定部230は、サンプル値を用いて推定した状態と、分類種別ごとに推定した需要家H1,H2、H3,H5,L3,L5のそれぞれの状態を合算することにより、電力系統1における対象区間全体の状態を推定する。
【0073】
図11は、本実施形態における長周期推定部230が備える各機能の一例を示すブロック図である。長周期推定部230は、第1算出部231と、第2算出部232と、第3算出部233と、第1推定部234とを備える。
【0074】
第1算出部231は、低圧需要家L1のそれぞれの電力量計SMの測定値を合計した第1合計値と、高圧需要家H4及び低圧需要家L4のそれぞれの電力量計SMの測定値を合計した第2合計値とを算出する。
【0075】
第2算出部232は、高圧需要家H1のそれぞれの電力量計SMの測定値を合計した第3合計値を算出する。
【0076】
第3算出部233は、高圧需要家H2,H3のそれぞれの電力量計SMの測定値から、高圧需要家H2,H3の発電設備のそれぞれの有効電力を減算した減算結果の第4合計値を算出する。このとき、第3算出部233は、高圧需要家H4、低圧需要家L2、及び低圧需要家L4の発電設備の有効電力の推定値と、高圧需要家H2,H3の発電設備の容量と、高圧需要家H4、低圧需要家L2、及び低圧需要家L4の発電設備の容量と、に基づいて、高圧需要家H2の発電設備のそれぞれの有効電力を算出する。
【0077】
第1推定部234は、第1合計値に対し第1係数αを乗算して、PV連系なしの需要家及びPV余剰買取の需要家の第1負荷の有効電力の第1推定値と、第2合計値に対し第2係数βを乗算して、PV余剰買取の需要家及びPV全量買取の需要家の発電設備の有効電力の第2推定値と、を含む、電力系統1における対象区間の状態を推定する。また、第1推定部234は、第1負荷の有効電力の第1推定値と、第3及び第4合計値に基づく第2負荷の有効電力の推定値と、を含む状態を推定する。ただし、第1推定部234は、複数の発電設備のうち、パワーコンディショナPCSが変換可能な電力量に対する発電設備が発電可能な電力量の比率を表す過積載率が所定値未満の発電設備を用いて第2推定値を推定する。
【0078】
図9に戻り、情報処理装置2の機能構成について説明を続ける。
[係数算出部240]
係数算出部240は、測定値データベース210が記憶する各電力量計SMのそれぞれが過去に測定した電力量測定値(以下、「過去の電力量測定値」とする。)に基づいて、長周期推定部230が負荷の有効電力を推定する際に用いる第1係数α、及び、長周期推定部230が発電設備の有効電力を推定する際に用いる第2係数βを算出する。具体的には、係数算出部240は、対象区間に含まれる負荷の有効電力、及び第1合計値に第1係数αを乗じた値の差と、対象区間に含まれる発電設備の有効電力、及び第2合計値に第2係数βを乗じた値の差とに基づく目的関数を設定し、第1係数αと、第2係数βと、対象区間に含まれる負荷の有効電力と、対象区間に含まれる発電設備の有効電力とを決定変数とした際に目的関数を最小化することにより、第1係数αと、第2係数βとを算出する。以下、第1係数α及び第2係数βをまとめて、「係数パラメータ(α,β)」と称する場合がある。
【0079】
[短周期推定部250]
短周期推定部250は、通信ネットワークを介して、センサ付開閉器SW1から定周期(センサ付開閉器SW1の測定周期)で潮流測定値を取得し、取得した潮流測定値と、長周期推定部230が推定した長周期推定結果とに基づいて、センサ付開閉器SWの測定周期で、電力系統1における対象区間の状態を推定する。短周期推定部250が推定した電力系統1における対象区間の状態を、「短周期推定結果」と称する。短周期推定結果は、実負荷推定値と、PV出力推定値とを含む。
【0080】
[パラメータ算出部260]
パラメータ算出部260は、測定値データベース210が記憶する各電力量計SMのそれぞれの過去の電力量測定値、及びセンサ付開閉器SW1が過去に測定した潮流測定値(以下、「過去の潮流測定値」とする。)に基づいて、短周期推定部250が状態を推定する際に用いる、電力系統1における対象区間の状態の変動度合いを示す分散値パラメータを算出する。
【0081】
続いて、情報処理装置2が実行する処理について説明する。以下、説明の便宜を図るため、電力量計SMの測定周期で測定値を参照する時刻を「T」、センサ付開閉器SW1の測定周期で測定値を参照する時刻を「t」とする。すなわち、時刻Tは、電力量計SMが電力量測定値を測定した時刻を示し、時刻tは、センサ付開閉器SW1が潮流測定値を測定した時刻を示す。また、各需要家H1~H5,L1~L5のそれぞれの電力量計SMの電力量測定値及び需要家の軒数を、図12に示すように定義する。
【0082】
図12は、各需要家のぞれぞれの電力量測定値及び需要家番号を示す図である。図示するように、時刻Tにおける需要家番号「i1」の高圧需要家H1の電力量測定値を「SM_H1(i1,T)(i1 = 1, ... ,I1)」とし、需要家番号「i2」の高圧需要家H2の電力量測定値を「SM_H2(i2,T)( i2 = 1,..., I2)」とし、需要家番号「i3」の高圧需要家H3の電力量測定値を「SM_H3(i3,T) ( i3 = 1,..., I3)」とし、需要家番号「i4」の高圧需要家H4の電力量測定値を「SM_H4(i4,T) ( i4 = 1,..., I4)」とし、需要家番号「i5」の高圧需要家H5の電力量測定値を「SM_H5(i5,T) ( i5= 1,..., I5)」とし、需要家番号「j1」の低圧需要家L1の電力量測定値を「SM_L1(j1,T) (j1 = 1, ... , J1)」とし、需要家番号「j2」の低圧需要家L2の電力量測定値を「SM_L2(j2,T)(j2 = 1, ... , J2)」とし、需要家番号「j3」の低圧需要家L3の電力量測定値を「SM_L3(j3,T) (j3 = 1, ... , J3)」とし、需要家番号「j4」の低圧需要家L4の電力量測定値を「SM_L4(j4,T) (j4 = 1, ... , J4)」とし、需要家番号「j5」の低圧需要家L5の電力量測定値を「SM_L5(j5,T) (j5= 1, ... , J5)」とする。
【0083】
ここで、I1は電力系統1の対象区間に含まれる高圧需要家H1の軒数であり、I2は高圧需要家H2の軒数であり、I3は高圧需要家H3の軒数であり、I4は高圧需要家H4の軒数であり、I5は高圧需要家H5の軒数であり、J1は低圧需要家L1の軒数であり、J2は低圧需要家L2の軒数であり、J3は低圧需要家L3の軒数であり、J4は低圧需要家L4の軒数であり、J5は低圧需要家L5の軒数である。よって、対象区間に含まれる高圧需要家の軒数Iは、I = I1 + I2 + I3 + I4 + I5であり,低圧需要家の軒数Jは、J = J1 + J2 + J3 + J4 + J5である。また、需要家番号「i1=n(nは、1からI1までの整数)」は、高圧需要家H1のうちn軒目の需要家を示す。需要家番号i2~i5,j1~j5についても同様である。
【0084】
続いて、図13図17を参照して、情報処理装置2が、電力系統1における対象区間の状態を推定する処理の詳細について説明する。
【0085】
<<処理の概要>>
図13は、本実施形態における情報処理装置2が実行する処理の概要を説明するフローチャートである。まず、係数算出部240及びパラメータ算出部260が、各電力量計SMの過去の電力量測定値、及びセンサ付開閉器SW1の過去の潮流測定値に基づいて、長周期推定処理で用いる係数パラメータ、及び短周期推定処理で用いる分散値パラメータを算出するパラメータ算出処理を実行する(ステップS1)。パラメータ算出処理は、情報処理装置2が各電力量計SM又はセンサ付開閉器SW1と接続されていないオフラインの状態でデータの前処理を行うオフライン処理である。パラメータ算出処理の詳細は後述する。
【0086】
続いて、長周期推定部230が、電力量計SMの測定周期で、各電力量計SMの電力量測定値に基づいて電力系統1の状態を推定する長周期推定処理を実行する(ステップS2)。長周期推定処理の詳細は後述する。
【0087】
続いて、短周期推定部250が、センサ付開閉器SW1の測定周期で、センサ付開閉器SW1の潮流測定値と、長周期推定処理で推定した長周期推定結果とに基づいて、電力系統1の状態を推定する短周期推定処理を実行する(ステップS3)。短周期推定処理の詳細は後述する。
【0088】
続いて、情報処理装置2は、電力量計SMの電力量測定値に更新があるか否かを判定する(ステップS4)。情報処理装置2は、電力量計SMの電力量測定値に更新があると判定した場合(ステップS4:Yes)、ステップS2の処理に戻る。一方、情報処理装置2は、電力量計SMの電力量測定値に更新がないと判定した場合(ステップS4:No)、ステップS3の処理に戻る。
【0089】
次に、以上で説明した各処理の詳細を説明する。まず、情報処理装置2の長周期推定部230が、電力量計SMの測定周期で実行する長周期推定処理について説明する。
【0090】
<長周期推定処理>
図14は、本実施形態における情報処理装置2が実行する長周期推定処理の一例を示すフローチャートである。情報処理装置2の長周期推定部230は、各電力量計SMのそれぞれから電力量測定値を受信した際に、本図に示す長周期推定処理を実行する。すなわち、長周期推定部230は、電力量計SMの測定周期で長周期推定処理を繰り返し実行する。
【0091】
まず、長周期推定部230は、電力系統1の対象区間に含まれる各電力量計SMのそれぞれから時刻Tにおける電力量測定値を受信して取得する(ステップS201)。
【0092】
[サンプル推定対象の需要家の状態の推定]
続いて、長周期推定部230は、負荷を有する高圧需要家、及び過積載率高の需要家を除く、サンプル推定対象の需要家の電力量測定値に基づいて、サンプル推定対象の需要家の時刻Tにおける実負荷推定値及びPV出力推定値を算出する(ステップS202)。すなわち、まず、長周期推定部230は、PV全量買取(過積載率低)の高圧需要家H4、PV連系なしの低圧需要家L1、PV余剰買取(過積載率高)の低圧需要家L2、PV全量買取(過積載率低)の低圧需要家L4の実負荷推定値びPV出力推定値を算出する。
【0093】
具体的には、長周期推定部230は、次の式(1)により、時刻Tにおける、サンプル推定対象の需要家の実負荷推定値p~ load(T)を算出する。
【0094】
【数1】
【0095】
ここで、ps load(T)は、時刻Tにおける、実負荷推定値を代表するサンプル値(以下、「実負荷サンプル値(「第1合計値」に対応する。)」とする。)である。実負荷サンプル値は、時刻Tにおける、PV連系なしの低圧需要家L1の電力量測定値の合計値である。具体的には、長周期推定部230は、次の式(2)により実負荷サンプル値を算出する。
【0096】
【数2】
【0097】
また、第1係数αは、実負荷推定値と実負荷サンプル値との比率に関する係数である。すなわち、サンプル推定対象の需要家の実負荷推定値は、PV連系なしの低圧需要家L1の電力量測定値の合計値に、第1係数αを乗じた値である。
【0098】
また、長周期推定部230は、次の式(3)により、時刻Tにおける、サンプル推定対象の需要家のPV出力推定値p~ pv(T)を算出する。
【0099】
【数3】
【0100】
ここで、ps pv(T)は、時刻Tにおける、PV出力推定値を代表するサンプル値(以下、「PV出力サンプル値(「第2合計値」に対応する。)」とする。)である。PV出力サンプル値は、PV全量買取(過積載率低)の需要家H4及びPV全量買取(過積載率低)の低圧需要家L4の電力量測定値の合計値である。具体的には、長周期推定部230は、次の式(2)によりPV出力サンプルを算出する。
【0101】
【数4】
【0102】
また、第2係数βは、PV出力推定値とPV出力サンプル値との比率に関する係数である。すなわち、サンプル推定対象の需要家のPV出力推定値は、PV全量買取(過積載率低)の需要家H4及びPV全量買取(過積載率低)の低圧需要家L4の電力量測定値の合計値に、第2係数βを乗じた値である。
【0103】
続いて、長周期推定部230は、ステップS202において除外した、負荷を有する高圧需要家及び過積載率高の需要家について、各需要家の電力量測定値を用いて、需要家の分類種別ごとにそれぞれの実負荷推定値とPV出力推定値とを算出する(ステップS203)。
【0104】
[PV連系なしの高圧需要家H1の状態の推定]
具体的には、長周期推定部230は、PV連系なしの高圧需要家H1の実負荷推定値pH1 load(T)(「第3合計値」に対応する。)を、需要家H1のそれぞれの電力量計SMの測定値の合計値とし、次の式(5)により算出する。
【0105】
【数5】
【0106】
なお、需要家H1にはPV出力がないため、長周期推定部230は、需要家H1のPV出力推定値は算出しない。
【0107】
[PV余剰買取(PV過積載率低)の高圧需要家H2の状態]
また、長周期推定部230は、PV余剰買取(PV過積載率低)の高圧需要家H2のPV出力推定値pH2 pv(T)を、次の式(6)により算出する。
【0108】
【数6】
【0109】
ここで、Cpvは、ステップS202においてPV出力推定値を算出する対象としたサンプル推定対象の需要家(負荷を有する高圧需要家及び過積載率高の需要家を除く需要家)のPV容量の合計値(以下、「合計PV容量」とする。)である。また、CH2 PV(i2)は、需要家番号「i2」の高圧需要家H2のPV容量である。すなわち、長周期推定部230は、合計PV容量に対する需要家番号「i2」の高圧需要家H2のPV容量の比率に、ステップS202において算出したPV出力推定値を乗じた値を、需要家番号「i2」の高圧需要家H2のPV出力推定値とする。そして、長周期推定部230は、各高圧需要家H2のそれぞれのPV出力推定値を合計することで、高圧需要家H2全体のPV出力推定値を算出する。
【0110】
また、長周期推定部230は、高圧需要家H2の実負荷推定値pH2 load(T)(「第4合計値」に対応する。)を、次の式(7)により算出する。
【0111】
【数7】
【0112】
すなわち、長周期推定部230は、需要家番号「i2」の高圧需要家H2の電力量測定値から、需要家番号「i2」の高圧需要家H2のPV出力推定値を減じた値を、需要家番号「i2」の高圧需要家H2の実負荷推定値とする。そして、長周期推定部230は、各高圧需要家H2のそれぞれの実負荷推定値を合計することで、高圧需要家H2全体の実負荷推定値を算出する。
【0113】
[PV余剰買取(PV過積載率高)の高圧需要家H3の状態の推定]
また、長周期推定部230は、PV余剰買取(PV過積載率高)の高圧需要家H3のPV出力推定値pH3 pv(T)を、次の式(8)により算出する。
【0114】
【数8】
【0115】
ここで、CH3 PV(i3)は、需要家番号「i3」の高圧需要家H3のPV容量である。また、CH3 pcs(i3)は、需要家番号「i3」の高圧需要家H3のPCS容量である。また、min(・)は、引数に与えた値のうち、最小の値を返す関数である。すなわち、長周期推定部230は、合計PV容量に対する需要家番号「i3」の高圧需要家H3のPV容量の比率に、ステップS202において算出したPV出力推定値を乗じた値と、需要家番号「i3」のPCS容量とのうち最小となる値を、需要家番号「i3」の高圧需要家H3のPV出力推定値とする。つまり、上述した式(8)は、合計PV容量に対する高圧需要家H3のPV容量の比率に、サンプル推定対象の需要家のPV出力推定値を乗じた値が、PCS容量を逸脱した場合には、PCS容量で高圧需要家H3のPV出力推定値が固定値になることを表している。そして、長周期推定部230は、各高圧需要家H3のそれぞれのPV出力推定値を合計することで、高圧需要家H3全体のPV出力推定値を算出する。
【0116】
また、長周期推定部230は、高圧需要家H3の実負荷推定値pH3 load(T)(「第4合計値」に対応する。)を、次の式(9)により算出する。
【0117】
【数9】
【0118】
すなわち、長周期推定部230は、需要家番号「i3」の高圧需要家H3の電力量計SMの測定値から、需要家番号「i3」の高圧需要家H3のPV出力推定値を減じた値を、需要家番号「i3」の高圧需要家H3の実負荷推定値とする。そして、長周期推定部230は、各高圧需要家H3のそれぞれの実負荷推定値を合計することで、高圧需要家H3全体の負荷推定値を算出する。
【0119】
[PV全量買取(PV過積載率高)の高圧需要家H5の状態の推定]
また、長周期推定部230は、PV全量買取(PV過積載率高)の高圧需要家H5のPV出力推定値pH5 pv(T)を、次の式(10)により算出する。
【0120】
【数10】
【0121】
ここで、CH5 PV(i5)は、需要家番号「i5」の高圧需要家H5のPV容量である。また、CH5 pcs(i5)は、需要家番号「i5」の高圧需要家H5のPCS容量である。すなわち、長周期推定部230は、PV余剰買取(PV過積載率高)の高圧需要家H3と同様の方法で、高圧需要家H5のPV出力推定値を算出する。
【0122】
なお、高圧需要家H5には負荷がないため、長周期推定部230は、高圧需要家H5の実負荷推定値は算出しない。
【0123】
[PV余剰買取(PV過積載率高)の低圧需要家L3の状態の推定]
また、長周期推定部230は、PV余剰買取(PV過積載率高)の低圧需要家L3のPV出力推定値pL3 pv(T)を、次の式(11)により算出する。
【0124】
【数11】
【0125】
ここで、CL3 PV(j3)は、需要家番号「j3」の低圧需要家L3のPV容量である。また、CL3 pcs(j3)は、需要家番号「j3」の低圧需要家L3のPCS容量である。すなわち、長周期推定部230は、PV余剰買取(PV過積載率高)の高圧需要家H3及びPV全量買取(PV過積載率高)の高圧需要家H5と同様の方法で、低圧需要家L3のPV出力推定値を算出する。
【0126】
また、長周期推定部230は、低圧需要家L3の実負荷推定値pL3 load(T)を、次の式(12)により算出する。
【0127】
【数12】
【0128】
すなわち、長周期推定部230は、PV余剰買取(PV過積載率高)の高圧需要家H3と同様の方法で、低圧需要家L3の実負荷推定値を算出する。
【0129】
[PV全量買取(PV過積載率高)の低圧需要家L5の状態の推定]
また、長周期推定部230は、PV全量買取(PV過積載率高)の低圧需要家L5のPV出力推定値pL5 pv(T)を、次の式(13)により算出する。
【0130】
【数13】
【0131】
ここで、CL5 PV(j5)は、需要家番号「j5」の低圧需要家L5のPV容量である。また、CL5 pcs(j5)は、需要家番号「j5」の低圧需要家L5のPCS容量である。すなわち、長周期推定部230は、PV余剰買取(PV過積載率高)の高圧需要家H3、PV全量買取(PV過積載率高)の高圧需要家H5、及びPV余剰買取(PV過積載率高)の低圧需要家L3と同様の方法で、低圧需要家L5のPV出力推定値を算出する。
【0132】
なお、低圧需要家L5には負荷がないため、長周期推定部230は、低圧需要家L5の実負荷推定値は算出しない。
【0133】
[対象区間全体の状態の推定]
続いて、長周期推定部230は、ステップS202及びステップS203において算出した実負荷推定値を合計することにより、対象区間に含まれる全ての需要家の実負荷推定値を算出し、ステップS202及びステップS203において算出したPV出力推定値を全て合計することにより、対象区間に含まれる全ての需要家のPV出力推定値を算出する(ステップS204)。
【0134】
具体的には、長周期推定部230は、次の式(14)により、対象区間に含まれる全ての需要家の実負荷推定値p~’ Load(T)を算出する。
【0135】
【数14】
【0136】
すなわち、長周期推定部230は、ステップS202において算出したサンプル推定対象の需要家の実負荷推定値と、高圧需要家H1の実負荷推定値と、高圧需要家H2の実負荷推定値と、高圧需要家H3の実負荷推定値と、低圧需要家L3の実負荷推定値との合計値を、対象区間に含まれる全ての需要家の実負荷推定値とする。
【0137】
また、長周期推定部230は、次の式(15)により、対象区間に含まれる全ての需要家のPV出力推定値p~’ pv(T)を算出する。
【0138】
【数15】
【0139】
すなわち、長周期推定部230は、ステップS202において算出したサンプル推定対象の需要家のPV出力推定値と、高圧需要家H2のPV出力推定値と、高圧需要家H3のPV出力推定値と、高圧需要家H5のPV出力推定値と、低圧需要家L3のPV出力推定値と、低圧需要家L5のPV出力推定値との合計値を、対象区間に含まれる全ての需要家のPV出力推定値とする。
【0140】
長周期推定部230は、対象区間に含まれる全ての需要家のPV出力推定値及び対象区間に含まれる全ての需要家の実負荷推定値を、長周期推定結果として短周期推定部250に出力し、その後、本長周期推定処理を終了する。
【0141】
続いて、情報処理装置2の短周期推定部250が、センサ付開閉器SW1の測定周期で実行する短周期推定処理について説明する。
【0142】
<短周期推定処理>
図15は、本実施形態における情報処理装置2が実行する短周期推定処理の一例を示すフローチャートである。情報処理装置2の短周期推定部250は、センサ付開閉器SW1から測定値を受信した際に、本図に示す短周期推定処理を実行する。すなわち、長周期推定部230は、センサ付開閉器SW1の測定周期で短周期推定処理を繰り返し実行する。
【0143】
まず、短周期推定部250は、センサ付開閉器SW1から時刻tにおける潮流測定値を受信して取得する(ステップS301)。
【0144】
続いて、短周期推定部250は、ステップS301において取得したセンサ付開閉器SW1の潮流測定値と、長周期推定部230が推定した長周期推定結果とに基づいて、時刻tにおける実負荷推定値及びPV出力推定値を算出する(ステップS302)。
【0145】
時刻tにおけるセンサ付開閉器SW1の潮流測定値から算出した有効電力p(t)(以下、「潮流値p(t)」とする。)と、対象区間に含まれる全ての需要家の実負荷推定値pload(t)及びPV出力推定値ppv(t)との関係は、次の式(16)により表すことができる。
【0146】
【数16】
【0147】
ここで、pE(t)は、送電ロスを含む、潮流値p(t)と見かけ上の負荷(実負荷推定値pload(t)とPV出力推定値ppv(t)との合計値)との差分である。
【0148】
本実施形態では、短周期推定部250は、実負荷推定値pload(t)及びPV出力推定値ppv(t)を状態値とし、時刻tにおける離散型状態空間モデルを次の式(17)~(19)で定める。
【0149】
【数17】
【0150】
【数18】
【0151】
【数19】
【0152】
ここで、x(t)は状態値ベクトル、y(t)は測定値ベクトル、Uは2行2列の単位行列、w(t)は状態値誤差を表すベクトル、r(t)は測定値誤差を表すベクトルである。
【0153】
測定値である式(19)に示すy(t)では、潮流値p(t)に加え、電力量計SMの測定周期で求めた実負荷推定値p~’ Load(t)及びPV出力推定値p~’ pv(t)を疑似測定値として与えている。潮流値p(t)は、センサ付開閉器SW1の測定周期で更新され、疑似測定値(実負荷推定値p~’ Load(t)及びPV出力推定値p~’ pv(t))は、電力量計SMの測定周期で更新される。
【0154】
式(17)に示すUは、状態値の動特性を示す行列であるが、本実施形態では、測定値が更新されるまでは状態値が一定であると仮定し、Uを単位行列とする。また、式(18)において、1行目は式(16)を表しており、2行目は負荷の有効電力に関する疑似測定値と状態値との関係を示しており、3行目は発電設備の有効電力に関する疑似測定値と状態値との関係を示している。
【0155】
短周期推定部250は、例えば、式(17)及び式(18)に示す状態空間モデルに対し、カルマンフィルタを適用し、負荷の有効電力及び発電設備の有効電力の状態値を求める。カルマンフィルタは、線形システムを対象とした状態推定手法の一つである。カルマンフィルタでは、状態値および測定値に含まれる誤差(ノイズ)が正規分布であると仮定し、得られた測定値から、状態空間モデルを用いて、状態値を逐次的に推定する。
【0156】
このとき、短周期推定部250は、式(17)のw(t)を、状態値に対応した、x(t)の各要素の平均値が0で、分散値がσ2 w,i(i=1,2)となる白色ノイズと仮定する。また、短周期推定部250は、式(18)式のr(t)を、測定値に対応した、y(t)の各要素の平均値が0で、分散値がσ2 r,j(j=1,2,3)となる白色ノイズと仮定する。
【0157】
短周期推定部250は、パラメータ算出部260がオフライン処理で予め算出した状態値の誤差に関する分散値σ2 w,i及び測定値の誤差に関する分散値σ2 r,jをパラメータとして設定し、カルマンフィルタを適用することで、実負荷推定値pload(t)及びPV出力推定値ppv(t)を、センサ付開閉器SW1の測定周期で求める。短周期推定部250は、推定した実負荷推定値及びPV出力推定値を、短周期推定結果として出力し、その後、本短周期推定処理を終了する。
【0158】
図16は、推定された実負荷推定値ploadと、PV出力推定値ppvと、これらの合算値の推移を示すグラフである。本図に示すグラフの横軸は時間であり、縦軸は有効電力である。ここでの合算値は、上述した式(16)により、潮流値p(t)から差分pE(t)を減算した値と等しい。
【0159】
続いて、情報処理装置2が、オフライン処理として実行するパラメータ算出処理について説明する。
【0160】
<パラメータ算出処理>
図17は、本実施形態における情報処理装置2が実行するパラメータ算出処理の一例を示すフローチャートである。情報処理装置2の係数算出部240及びパラメータ算出部260は、上述した長周期推定処理及び短周期推定処理の前処理としてパラメータ算出処理を実行する。
【0161】
まず、係数算出部240及びパラメータ算出部260は、各電力量計SM及びセンサ付開閉器SW1が過去の所定期間に測定した測定値を測定値データベース210から読み出して取得する(ステップS101)。
【0162】
[係数パラメータ(α,β)の算出]
続いて、係数算出部240が、過去の所定期間の各時間ステップ1~Nで測定された電力量測定値に基づいて、長周期推定処理に用いる係数パラメータ(α,β)を算出する(ステップS102)。Nは、係数パラメータ(α,β)を算出するために用いる時間ステップ数である。具体的には、係数算出部240は、次の式(20)で定まる目的関数を設定し、次の式(21)で定まる制約条件の下で、目的関数を最小化することにより、係数パラメータ(α,β)を算出する。
【0163】
【数20】
【0164】
【数21】
【0165】
ここで、ploadは、未知量であり、対象区間に含まれる負荷の有効電力である。負荷の有効電力ploadは、次の式(22)で示す、過去の所定期間の各時間ステップ1~Nについての成分を有するベクトル量である。ここで、Nは、用いる過去の測定値の点数である。
【0166】
【数22】
【0167】
また、ppvは、未知量であり、発電設備の有効電力である。発電設備の有効電力ppvは、次の式(23)で示す、過去の所定期間の時間ステップ1~Nについての成分を有するベクトル量である。
【0168】
【数23】
【0169】
また、ps loadは、既知量であり、過去の実負荷サンプル値である。実負荷サンプル値ps loadは、次の式(24)で示す、過去の所定期間の時間ステップ1~Nについての成分を有するベクトル量である。
【0170】
【数24】
【0171】
また、ps pvは、既知量であり、過去のPV出力サンプル値である。PV出力サンプル値ps pvは、次の式(25)で示す、過去の所定期間の時間ステップ1~Nについての成分を有するベクトル量である。
【0172】
【数25】
【0173】
また、pNETは、既知量であり、電力量測定値の合計値である。電力量測定値の合計値pNETは、次の式(26)で示される、過去の所定期間の時間ステップ1~Nについての成分を有するベクトル量である。
【0174】
【数26】
【0175】
ただし、pNET(T)は、次の式(27)で示すように、時刻Tにおける、サンプル推定対象の需要家(PV全量買取(PV過積載率低)の需要家H4、PV連系なしの低圧需要家L1、PV余剰買取(PV過積載率低)の低圧需要家L2、及び、PV全量買取(PV過積載率低)の低圧需要家L4)の電力量測定値の合計値である。
【0176】
【数27】
【0177】
式(20)において、未知量であるα,β,pooad,pPVは最適化計算を行うための変数となる。式(20)に示すように、本実施形態の目的関数は、対象区間に含まれる負荷の有効電力、及び実負荷サンプル値に第1係数αを乗じた値の差(括弧内の第1項)と、対象区間に含まれる発電設備の有効電力、及びPV出力サンプル値に第2係数βを乗じた値の差(括弧内の第2項)とに基づく関数である。
【0178】
上述した式(20)に示す目的関数において、括弧内の第1項は、対象区間に含まれる負荷の有効電力、及び実負荷サンプル値に第1係数αを乗じた値の差の絶対値の二乗である。また、括弧内の第2項は、対象区間に含まれる発電設備の有効電力、及びPV出力サンプル値に第2係数βを乗じた値の差の絶対値の二乗である。よって、目的関数は、負荷の有効電力、及び実負荷サンプル値に第1係数αを乗じた値の差分と、発電設備の有効電力、及びPV出力サンプル値に第2係数βを乗じた値の差分との二乗和である。
【0179】
つまり、係数算出部240は、対象区間に含まれる負荷の有効電力、及び実負荷サンプル値に第1係数αを乗じた値の差と、対象区間に含まれる発電設備の有効電力、及びPV出力サンプル値に第2係数βを乗じた値とを極力小さくするように、目的関数を最小化することにより、係数パラメータ(α,β)を算出する。
【0180】
また、このとき、係数算出部240は、上述した式(21)に示す制約条件下で、目的関数を最小化する。式(21)は、負荷の有効電力と、発電設備の有効電力との和が、サンプル推定対象の需要家の電力量測定値の合計値と等しいことを示している。
【0181】
式(20)及び式(21)は、微分可能な凸関数の最小化問題であり、ラグランジュ未定定数法等で解くことができる。
【0182】
なお、本実施形態では、係数パラメータ(α,β)を時間に対し一定の係数としているが、これに限らず、例えば、時刻によって可変の関数α(T),β(T)としてもよい。係数パラメータを関数とする場合には、上述した式(1)は、次の式(28)で表すことができ、上述した式(2)は、次の式(29)で表すことができる。
【0183】
【数28】
【0184】
【数29】
【0185】
係数算出部240は、算出した係数パラメータ(α,β)を長周期推定部230に出力する。
【0186】
(分散値パラメータ(σ2 w,i,σ2 r,j)の算出)
続いて、パラメータ算出部260が、各電力量計SM及びセンサ付開閉器SW1の過去の測定値に基づいて、短周期推定処理に用いる分散値パラメータを算出する(ステップS103)。
【0187】
パラメータ算出部260は、短周期推定処理において用いるカルマンフィルタの分散値パラメータを、過去の測定値を用いたヒューリスティックな方法により算出する。ただし、次の仮定1~仮定4が近似的に成り立つとした。
【0188】
仮定1:負荷の有効電力の時系列データと発電設備の有効電力の時系列データと間の相関は弱い。
仮定2:日中の発電設備の有効電力の変動量は,負荷の有効電力の変動量と比べ十分に大きい。
仮定3:負荷の有効電力の変動量は、一日を通じて大きく変化しない。
仮定4:センサ付開閉器SW1の測定誤差は、負荷の有効電力の推定誤差及び発電設備の有効電力の推定誤差と比べ十分に小さい。
【0189】
状態値である負荷の有効電力及び発電設備の有効電力は、式(17)に示すように、時間的な変化に対し一定であるモデルを用いている。そこで、パラメータ算出部260は、状態値のモデル誤差に関する分散値σ2 w,iを、潮流測定値から近似的に求める。例えば、パラメータ算出部260は、過去の潮流測定値に基づき、発電設備の有効電力がない夜間の潮流測定値の分散値を、負荷の有効電力の分散値σ2 w,i=1とする。具体的には、パラメータ算出部260は、次の式(30)により、負荷の有効電力の分散値σ2 w,i=1を算出する。
【0190】
【数30】
【0191】
ここで、pnは、過去の潮流測定値から日射の無い夜間(例えば、20時~4時)のデータを抽出した時系列データである。また、Var[]は。引数のデータ系列の分散値を計算する演算子である。
【0192】
また、パラメータ算出部260は、過去の潮流測定値に基づき、日中の潮流測定値の分散値を、発電設備の有効電力の分散値σ2 w,i=2とする。具体的には、パラメータ算出部260は、次の式(31)により、発電設備の有効電力の分散値σ2 w,i=2を算出する。
【0193】
【数31】
【0194】
ここで、pdは、過去の潮流測定値から日射のある日中(例えば、6時~18時)のデータを抽出した時系列データである。
【0195】
また、パラメータ算出部260は、センサ付開閉器SW1の測定精度や分解能から想定される測定誤差の分散値を、潮流測定値に対応した分散値σ2 r,j=1とする。想定される測定誤差の分散値は、センサ付開閉器SW1の測定精度や分解能に基づきパラメータ算出部260が算出してもよいし、ユーザが予め設定してもよい。具体的には、パラメータ算出部260は、次の式(32)により、潮流測定値に対応した分散値σ2 r,j=1を算出する。
【0196】
【数32】
【0197】
ここで、σ2 pは、潮流測定値の測定精度や分解能から想定される分散値である。例えば、潮流測定値の測定精度や分解能が高いほど分散値が小さく、潮流測定値の測定精度や分解能が低いほど分散値が大きい。
【0198】
また、負荷の有効電力と発電設備の有効電力の疑似測定値(実負荷推定値及びPV出力推定値)は、実際の負荷の有効電力または発電設備の有効電力を電力量計SMの測定周期で平均化した場合に発生する平均化誤差に相当する。そこで、パラメータ算出部260は、疑似測定値の分散値σ2 r,j=2及び分散値σ2 r,j=3を,各時刻の潮流測定値の平均化誤差から近似的に求める。例えば、パラメータ算出部260は、過去の潮流測定値に基づき、発電設備の有効電力がない夜間の潮流測定値の平均化誤差の分散値を、負荷の有効電力の疑似測定値(実負荷推定値)の分散値σ2 r,j=2とする。具体的には、パラメータ算出部260は、次の式(33)により、負荷の有効電力の疑似測定値(実負荷推定値)の分散値σ2 r,j=2を算出する。
【0199】
【数33】
【0200】
ここで、p^ nは、pnの値を電力量計SMの測定周期で平均化した時系列データである。
【0201】
また、パラメータ算出部260は、過去の潮流測定値に基づき、日中の潮流測定値の平均化誤差の分散値を、発電設備の有効電力の疑似測定値(PV出力推定値)の分散値σ2 r,j=3とする。具体的には、パラメータ算出部260は、次の式(34)により、発電設備の有効電力の疑似測定値(PV出力推定値)の分散値σ2 r,j=3を算出する。
【0202】
【数34】
【0203】
ここで、p^ dは、pdの値を電力量計SMの測定周期で平均化した時系列データである。
【0204】
パラメータ算出部260は、算出した分散値パラメータを短周期推定部250に出力し、本パラメータ算出処理を終了する。
【0205】
なお、上述したフローチャートでは、情報処理装置2は、係数パラメータを算出した後に、分散値パラメータを算出しているが、これに限らず、分散値パラメータを算出した後に、係数パラメータを算出してもよい。
【0206】
==まとめ==
実施形態の情報処理装置2は、電力系統1の所定区間において、負荷を有し、電力の買取契約対象の発電設備を有さない第1需要家と、負荷を有し、余剰買取契約対象の発電設備を有する第2需要家と、負荷を有さず、全量買取契約対象の発電設備を有する第3需要家と、のいずれかに分類される需要家を複数含む電力系統1の状態を推定する情報処理装置2であって、第1需要家の複数の負荷のそれぞれの電力量計の測定値を合計した実負荷サンプル値と、第3需要家の複数の発電設備のそれぞれの電力量計の測定値を合計したPV出力サンプル値とを算出する第1算出部231と、実負荷サンプル値に対し第1係数αを乗算して、第1需要家及び第2需要家の実負荷推定値と、PV出力サンプル値に対し第2係数βを乗算して、第2需要家及び第3需要家のPV出力推定値と、を含む状態を推定する第1推定部234と、を備える。
【0207】
このような構成によれば、簡易な構成で、需要家の負荷の有効電力と、発電設備の有効電力とを推定することが可能となる。すなわち、日射量計等の設備を要せずに、電力量計SMの測定値のみを用いて、需要家の負荷の有効電力と、発電設備の有効電力とを個別に推定することができる。
【0208】
また、上述したように、高圧需要家の負荷の有効電力は、低圧需要家の負荷の有効電力と時系列データの傾向が異なる。また、一般的に、低圧需要家は、高圧需要者に比べて契約件数が多く、負荷の有効電力の時系列データ間の相関が強くなる傾向にある。そのため、情報処理装置2において、第1需要家及び第2需要家は、契約容量が所定値未満の第1負荷を有し、第1算出部231は、第1需要家の第1負荷のそれぞれの電力量計SMの測定値を合計した実負荷サンプル値を算出し、第1推定部234は、第1需要家及び第2需要家の第1負荷の実負荷推定値を含む状態を推定してもよい。
【0209】
このような構成によれば、第2負荷を有する高圧需要者を除き、第1負荷を有する低圧需要者のみの実負荷推定値を含む状態を推定することができるため、より精度良く状態を推定することができる。
【0210】
また、情報処理装置2において、第1需要家及び第2需要家は、契約容量が所定値以上の第2負荷を有し、第2需要家は、第1発電設備と、第1発電設備より高い電圧に対応する第2発電設備とを有し、第1需要家の複数の第2負荷のそれぞれの電力量計SMの測定値を合計した第3合計値を算出する第2算出部232と、第2負荷及び第2発電設備を有する第2需要家のそれぞれの電力量計の測定値から、第2需要家の第2発電設備のそれぞれの有効電力を減算した減算結果の第4合計値を算出する第3算出部233と、を備え、第1推定部234は、第1負荷の実負荷推定値と、第3及び第4合計値に基づく第2負荷の実負荷推定値と、を含む状態を推定し、第3算出部233は、第2需要家の第1発電設備及び第3需要家の発電設備のPV出力推定値と、第2需要家の第2発電設備の容量と、第2需要家の第1発電設備及び第3需要家の発電設備の容量と、に基づいて、第2需要家の第2発電設備のそれぞれの有効電力を算出してもよい。
【0211】
このような構成によれば、第1負荷の実負荷推定値に加えて、第2負荷の実負荷推定値を含めた状態を推定することができる。
【0212】
また、上述したように、過積載率の高い需要家の発電設備の有効電力は、過積載率の低い需要家の発電設備の有効電力と時系列データの傾向が異なる。そのため、情報処理装置2において、発電設備は、電力を変換するパワーコンディショナPCSを含み、第1推定部234は、複数の発電設備のうち、パワーコンディショナが変換可能な電力量に対する発電設備が発電可能な電力量の比率を表す過積載率が所定値未満の発電設備を用いてPV出力推定値を推定してもよい。
【0213】
このような構成によれば、過積載率の高い需要家を除き、過積載率の低い需要者のみのPV出力推定値を含む状態を推定することができるため、より精度良く状態を推定することができる。
【0214】
また、情報処理装置2において、所定区間に含まれる負荷の有効電力、及び実負荷推定値に第1係数αを乗じた値の差と、所定区間に含まれる発電設備の有効電力、及びPV出力推定値に第2係数βを乗じた値の差とに基づく目的関数を設定し、第1係数αと、第2係数βと、所定区間に含まれる負荷の有効電力と、所定区間に含まれる発電設備の有効電力とを決定変数とした際に目的関数を最小化することにより、第1係数αと、第2係数βとを算出する係数算出部240を備える。
【0215】
このような構成によれば、第1係数αと第2係数βとの精度が向上するため、更に精度良く状態を推定することができる。
【0216】
また、情報処理装置2において、第1推定部234が推定した状態と、電力系統1における所定の位置の電圧、及び電流を測定するセンサ付開閉器SW1の測定値とに基づいて、センサ付開閉器SW1の測定周期で状態を推定する短周期推定部250を備える。
【0217】
一般に、センサ付開閉器SW1の測定周期(例えば、1分)は、電力量計SMの測定周期(例えば、30分)よりも短い。よって、情報処理装置2は、各電力量計SMの測定値に加えて、センサ付開閉器SW1の測定値を用いることで、電力量計SMの測定周期よりも短い周期で電力系統1の状態を推定することができる。これにより、情報処理装置2は、電力系統1の状態を時系列で精度良く推定することができる。すなわち、情報処理装置2は、より細かい時間断面で電力系統1の状態を推定することができる。これにより、PV出力または負荷の変動が、電力量計SMの測定周期よりも短い周期で大きく変動する場合であっても、推定誤差が生じるのを抑制し、電力系統1の状態をより精度良く推定することができる。
【0218】
また、情報処理装置2において、センサ付開閉器SW1が過去に測定した測定値と、各需要家のぞれぞれの電力量計SMが過去に測定した測定値とに基づいて、電力量計SMの測定周期における状態の変動の度合いを示すパラメータを算出するパラメータ算出部260を備え、短周期推定部250は、パラメータを用いた状態推定手法により状態を推定する。
【0219】
このような構成によれば、過去の測定値に基づき算出した電力量計SMの測定周期における状態の変動の度合いを状態の推定に反映することができるため、より精度良く状態を推定することができる。
【0220】
また、本実施形態の情報処理方法によれば、日射量計等の設備を要せずに、センサ付開閉器SW1の測定値と、電力量計SMの測定値とを用いて、状態を推定することができる。従って、このような構成によれば、簡易な構成で、需要家の負荷の有効電力と、発電設備の有効電力とを推定することが可能となる。
【0221】
また、本実施形態の情報処理装置2に用いられる情報処理プログラムによれば、日射量計等の設備を要せずに、センサ付開閉器SW1の測定値と、電力量計SMの測定値とを用いて、状態を推定することができる。従って、このような構成によれば、簡易な構成で、需要家の負荷の有効電力と、発電設備の有効電力とを推定することが可能となる。
【0222】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0223】
例えば、上述した実施形態では、情報処理装置2は、負荷を有する高圧需要家、及び過積載率の高い需要家を除いて、サンプル値による状態の推定を行っているが、これに限らず、負荷を有する高圧需要家又は過積載率の高い需要家を含めてサンプル値による状態の推定を行ってもよい。
【符号の説明】
【0224】
1:電力系統
10:配電変電所
11:配電線
2:情報処理装置
200:CPU
201:メモリ
202:通信装置
203:記憶装置
204:入力装置
205:出力装置
206:記録媒体読取装置
210:測定値データベース
220:需要家情報データベース
230:長周期推定部
231:第1算出部
232:第2算出部
233:第3算出部
234:第1推定部
240:係数算出部
250:短周期推定部
260:パラメータ算出部
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