(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117528
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 7/14 20060101AFI20240822BHJP
B60Q 1/02 20060101ALI20240822BHJP
B60Q 1/44 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B60L7/14
B60Q1/02 D
B60Q1/44 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023666
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 稜治
【テーマコード(参考)】
3K339
5H125
【Fターム(参考)】
3K339AA29
3K339AA34
3K339AA36
3K339BA09
3K339CA13
3K339EA09
3K339FA09
3K339JA04
3K339KA11
3K339MA01
3K339MA07
3K339MC02
3K339MC15
3K339MC48
3K339MC53
3K339MC56
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BE00
5H125CB02
5H125CD03
5H125EE53
5H125EE66
(57)【要約】
【課題】電動車両において回生制動力による減速時に制動灯の点滅を実施する。
【解決手段】駆動モータの力行運転時に発生する動力によって加速し、前記駆動モータの回生運転時に発生する回生制動力によって減速可能な電動車両の制御装置であって、回生制動が作動していることを検出する回生制動検出部と、前記電動車両の減速度を検出する減速度検出部と、前記回生制動検出部によって回生制動が検出されるとともに、前記減速度検出部によって検出された減速度が所定の減速度閾値を超えた場合、車両後方の制動灯を、点灯させるよりも前に点滅させる制御部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータの力行運転時に発生する動力によって加速し、前記駆動モータの回生運転時に発生する回生制動力によって減速可能な電動車両の制御装置であって、
回生制動が作動していることを検出する回生制動検出部と、
前記電動車両の減速度を検出する減速度検出部と、
前記回生制動検出部によって回生制動が検出されるとともに、前記減速度検出部によって検出された減速度が所定の減速度閾値を超えた場合、車両後方の制動灯を、点灯させるよりも前に点滅させる制御部と、を備える電動車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記回生制動検出部によって回生制動が検出されるとともに、前記減速度検出部によって検出された減速度が所定の減速度閾値を超え、さらに、予め定められた点滅制御条件が満たされた場合、前記制動灯を点滅させる、請求項1に記載の電動車両の制御装置。
【請求項3】
前記電動車両の周囲の状況を検出する周囲状況検出部を、さらに備え、
前記制御部は、前記周囲状況検出部による検出結果に基づいて、前記電動車両と前方車両の距離が次第に短くなっていること、前記前方車両が減速していること、および、前記電動車両と前記前方車両の衝突余裕時間が所定の時間閾値以下になっていること、の少なくともいずれかの条件を満たした場合に、前記点滅制御条件が満たされたと判定する、請求項2に記載の電動車両の制御装置。
【請求項4】
前記電動車両の周囲の状況を検出する周囲状況検出部を、さらに備え、
前記制御部は、前記周囲状況検出部による検出結果に基づいて、前記電動車両と後方車両の距離、前記後方車両の速度、および、前記電動車両と後方車両の衝突余裕時間の少なくともいずれかが所定の条件を満たした場合に、前記点滅制御条件が満たされたと判定する、請求項2に記載の電動車両の制御装置。
【請求項5】
前記電動車両の周囲の状況を検出する周囲状況検出部を、さらに備え、
前記制御部は、前記周囲状況検出部による検出結果に基づいて、前記電動車両の前方の信号機が赤信号または黄信号であること、および、前記電動車両の前方に車両の停止を指示する道路標識があること、の少なくともいずれかを満たした場合に、前記点滅制御条件が満たされたと判定する、請求項2に記載の電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動車両の研究開発、製造が進められている。ここで、電動車両とは、駆動モータの力行運転時に発生する動力によって加速し、駆動モータの回生運転時に発生する回生制動力によって減速可能な車両全般を指す。電動車両としては、例えば、EV(Electric Vehicle:電気自動車)、HV(Hybrid Vehicle:ハイブリッド自動車)、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle:プラグインハイブリッド自動車)、FCV(Fuel Cell Vehicle:燃料電池自動車)などが挙げられる。
【0003】
また、電動車両において、アクセルペダルをオフすることで回生制動力によって強減速する技術がある。その場合、アクセルペダルをオフして所定値以上の減速度で減速するときには、法規により、ブレーキペダルを踏んでいなくても車両後方の制動灯(ブレーキランプ)を点灯させることになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7-9002号公報
【特許文献2】特開2011-255795号公報
【特許文献3】特開2015-123754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、例えば、電動車両以外の車両(ガソリン車、ディーゼル車など)の場合、運転者は、ブレーキ(ペダル)の踏み始めなど、後方車両(後続車)に注意喚起したいときは、ポンピングブレーキを行うことで、車両後方の制動灯を点滅させる。これにより、後方車両の運転者は、前方車両のその制動灯の点滅を見ることで、前方車両が減速することを知り、早期に対応することができる。
【0006】
しかしながら、上述の電動車両の場合、アクセルペダルをオフして所定値以上の減速度で減速するときに制動灯を点灯させるが、制動灯を点滅させることができない。特に、電動車両と後方車両の距離が短いときなどには、制動灯の点滅の必要性が高いが、それを実施できない。
【0007】
そこで、本発明の課題は、電動車両において回生制動力による減速時に制動灯の点滅を実施可能な制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、駆動モータの力行運転時に発生する動力によって加速し、前記駆動モータの回生運転時に発生する回生制動力によって減速可能な電動車両の制御装置であって、回生制動が作動していることを検出する回生制動検出部と、前記電動車両の減速度を検出する減速度検出部と、前記回生制動検出部によって回生制動が検出されるとともに、前記減速度検出部によって検出された減速度が所定の減速度閾値を超えた場合、車両後方の制動灯を、点灯させるよりも前に点滅させる制御部と、を備える。
【0009】
この構成によれば、電動車両において、回生制動力による減速時に、減速度が所定の減速度閾値を超えたという条件を満たした場合に、制動灯について、点灯させるよりも前に点滅させることができる。
【0010】
また、前記電動車両の前記制御装置において、前記制御部は、前記回生制動検出部によって回生制動が検出されるとともに、前記減速度検出部によって検出された減速度が所定の減速度閾値を超え、さらに、予め定められた点滅制御条件が満たされた場合、前記制動灯を点滅させる。
【0011】
この構成によれば、点滅制御条件が満たされたことも制動灯点滅の条件とすることで、必要性に応じた、より効果的な制動灯点滅を実施することができる。
【0012】
また、前記電動車両の前記制御装置において、前記電動車両の周囲の状況を検出する周囲状況検出部を、さらに備え、前記制御部は、前記周囲状況検出部による検出結果に基づいて、前記電動車両と前方車両の距離が次第に短くなっていること、前記前方車両が減速していること、および、前記電動車両と前記前方車両の衝突余裕時間が所定の時間閾値以下になっていること、の少なくともいずれかの条件を満たした場合に、前記点滅制御条件が満たされたと判定する。
【0013】
この構成によれば、前方車両に関する情報を用いて、必要性に応じた、より効果的な制動灯点滅を実施することができる。
【0014】
また、前記電動車両の前記制御装置において、前記電動車両の周囲の状況を検出する周囲状況検出部を、さらに備え、前記制御部は、前記周囲状況検出部による検出結果に基づいて、前記電動車両と後方車両の距離、前記後方車両の速度、および、前記電動車両と後方車両の衝突余裕時間の少なくともいずれかが所定の条件を満たした場合に、前記点滅制御条件が満たされたと判定する。
【0015】
この構成によれば、後方車両に関する距離、速度、衝突余裕時間の情報を用いて、必要性に応じた、より効果的な制動灯点滅を実施することができる。
【0016】
また、前記電動車両の前記制御装置において、前記電動車両の周囲の状況を検出する周囲状況検出部を、さらに備え、前記制御部は、前記周囲状況検出部による検出結果に基づいて、前記電動車両の前方の信号機が赤信号または黄信号であること、および、前記電動車両の前方に車両の停止を指示する道路標識があること、の少なくともいずれかを満たした場合に、前記点滅制御条件が満たされたと判定する。
【0017】
この構成によれば、前方の信号機や道路標識に関する情報を用いて、必要性に応じた、より効果的な制動灯点滅を実施することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電動車両において回生制動力による減速時に制動灯の点滅を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態の電動車両の概要構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態の制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態における車速と加速度と各閾値の関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施形態の制御装置による処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の電動車両の制御装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
まず、
図1を参照して、実施形態の電動車両1の概要構成について説明する。
図1は、実施形態の電動車両1の概要構成を示すブロック図である。
【0022】
電動車両1は、駆動モータ13の力行運転時に発生する動力によって加速し、駆動モータ13の回生運転時に発生する回生制動力によって減速可能な電動車両の例である。電動車両1は、シリーズ方式のハイブリッドシステム2を搭載している。
【0023】
ハイブリッドシステム2には、エンジン11(ENG)、発電モータ12(MG1)、駆動モータ13(MG2)、駆動用バッテリ14(BAT)、PCU15(Power Control Unit:パワーコントロールユニット)が含まれる。
【0024】
エンジン11は、例えば、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンである。エンジン11のクランクシャフト21には、エンジン出力ギヤ22が一体に回転するように設けられている。
【0025】
発電モータ12は、例えば、永久磁石同期モータからなる。発電モータ12の回転軸23には、発電モータギヤ24が一体に回転するように設けられている。発電モータギヤ24は、エンジン出力ギヤ22と噛合している。発電モータ12は、エンジン11の停止時に、エンジン11をクランキングさせるスタータモータとして使用される。エンジン11の始動後、発電モータ12は、エンジン11の動力を電力に変換する発電機として機能する。
【0026】
駆動モータ13は、例えば、発電モータ12よりも大型の永久磁石同期モータからなる。駆動モータ13の回転軸25には、モータ出力ギヤ26が一体に回転するように設けられている。
【0027】
モータ出力ギヤ26は、電動車両1に搭載されている動力伝達機構3に結合されている。動力伝達機構3には、カウンタ軸31、カウンタギヤ32、出力ギヤ33、デファレンシャルギヤ34が含まれる。
【0028】
カウンタ軸31は、駆動モータ13の回転軸25と平行に設けられている。カウンタギヤ32及び出力ギヤ33は、カウンタ軸31に一体に回転するように設けられている。出力ギヤ33は、デファレンシャルギヤ34のリングギヤ35と噛合している。モータ出力ギヤ26は、カウンタギヤ32と噛合している。
【0029】
駆動モータ13の動力は、モータ出力ギヤ26、カウンタギヤ32、出力ギヤ33を介して、デファレンシャルギヤ34に伝達される。そして、デファレンシャルギヤ34に伝達された動力は、電動車両1の左右のドライブシャフト4を介して、左右の駆動輪5に伝達される。これにより、左右の駆動輪5が回転し、電動車両1が前進走行または後進走行する。
【0030】
駆動用バッテリ14は、複数の二次電池(例えば、リチウムイオン電池)を組み合わせた組電池である。駆動用バッテリ14は、例えば、約200~350V(ボルト)の直流電力を出力する。
【0031】
PCU15は、発電モータ12及び駆動モータ13の駆動を制御するためのユニットであり、第1インバータ41(MG1INV)、第2インバータ42(MG2INV)及び昇圧コンバータ43(BstCONV)を備えている。
【0032】
電動車両1の加速走行時には、駆動モータ13が力行運転されて、駆動モータ13が力行のための動力を発生する。このとき、駆動用バッテリ14から出力される直流電力が昇圧コンバータ43により必要に応じて昇圧されて、昇圧コンバータ43から出力される直流電力が第2インバータ42で交流電力に変換され、その交流電力が駆動モータ13に供給される。これにより、駆動用バッテリ14の電力が消費される。
【0033】
また、エンジン11の始動時には、駆動用バッテリ14から出力される直流電力が昇圧コンバータ43により昇圧されて、昇圧された直流電力が第1インバータ41で交流電力に変換され、交流電力が発電モータ12に供給される。これにより、発電モータ12がモータリング運転されて、エンジン11が発電モータ12によりモータリングされる。このモータリングによりエンジン11のクランクシャフト21が回転し、その回転数が始動に必要な回転数まで上昇すると、エンジン11の点火プラグがスパークされて、エンジン11が始動する。
【0034】
エンジン11が動作している状態で、発電モータ12が発電運転されることにより、発電モータ12が交流電力を発生する。発電モータ12が発電する交流電力は、第1インバータ41により、直流電力に変換される。そして、第1インバータ41から出力される直流電力が第2インバータ42で交流電力に変換され、交流電力が駆動モータ13に供給される。
【0035】
また、駆動モータ13への電力の供給が不要なときには、第1インバータ41から出力される直流電力が昇圧コンバータ43で降圧されて、降圧後の直流電力が駆動用バッテリ14に供給されることにより、駆動用バッテリ14が充電される。
【0036】
電動車両1の減速走行時には、駆動モータ13が回生運転されて、駆動輪5から駆動モータ13に伝達される動力が交流電力に変換される。このとき、駆動モータ13が走行駆動系の抵抗となり、その抵抗が電動車両1を制動する制動力(回生制動力)として作用する。駆動モータ13が発生する交流電力は、第2インバータ42により、直流電力に変換される。そして、第2インバータ42から出力される直流電力が昇圧コンバータ43で降圧されて、降圧後の直流電力が駆動用バッテリ14に供給されることにより、駆動用バッテリ14が充電される。
【0037】
また、電動車両1には、マイコン51(マイクロコントローラユニット)を含む構成のECU6(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)が備えられている。マイコン51には、例えば、CPU(Central Processing Unit)、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリや、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。
【0038】
図1には、1つのECU6のみが示されているが、電動車両1には、各部を制御するため、ECU6と同様の構成を有する複数のECUが搭載されている。ECU6を含む複数のECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。ECU6の詳細については後述する。
【0039】
アクセルセンサ7は、運転者により足踏み操作されるアクセルペダルの操作量に応じた検知信号を出力する。アクセルセンサ7は、ECU6と通信可能に接続されており、検知信号をECU6に出力する。
【0040】
車速センサ8は、例えば、電動車両1の車輪の付近に設置され、当該車輪の回転速度または回転数を示す車速パルスを生成するセンサである。車速センサ8は、ECU6と通信可能に接続されており、生成した車速パルスをECU6に出力する。
【0041】
制動灯9は、ECU6からの指示により、点灯、点滅、消灯の動作を行う。なお、制動灯9は、例えば、車両後方の中段の左右に設けられているブレーキランプであるが、これに限定されない。例えば、制動灯9は、ほかに、車両後方の上段に設けられているハイマウントストップランプや、ブレーキランプの上部に設けられているハザードランプなどであってもよい。また、制動灯9は、それらのうちの2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0042】
なお、「点滅」とは、制動灯9の照度が、100%→0%→100%→…と繰り返される場合に限定されず、ほかに、例えば、100%→50%→100%→…、80%→20%→80%→…、などと繰り返される場合も含む。つまり、後方車両の運転者が見た場合に点灯および消灯と区別して点滅として認識できるような照度変更であればよい。
【0043】
カメラ71は、電動車両1の周囲を所定のフレームレートで連続して撮影して、画像データをECU6に出力する。カメラ71は、例えば、前方撮影用、右方撮影用、左方撮影用、後方撮影用に合計4台設置される。
【0044】
ライダ72(LiDAR:Light Detection And Ranging)は、電動車両1の周囲にレーザ光を照射し、物体からの反射光を光センサで受光して、その反射光に応じた検出信号をECU6に出力する。ライダ72は、例えば、電動車両1のフロントバンパの左端、中央、右端、および、リヤバンパの左端、中央、右端にそれぞれ配置される。
【0045】
電動車両1の車室内には、表示装置52が配設されている。表示装置52は、例えば、タッチパネル付きの表示装置である。また、表示装置52は、液晶ディスプレイ上に感圧式または静電容量式の透明フィルムスイッチを貼付した構成であってもよく、電動車両1の車両設定の情報の他、ナビゲーション情報や音楽情報など種々の情報を表示するマルチインフォメーションディスプレイとして設けられていてもよい。
【0046】
次に、
図2を参照して、実施形態のECU6(制御装置)の機能構成について説明する。
図2は、実施形態のECU6(制御装置)の機能構成を示すブロック図である。
【0047】
ECU6は、取得部61、回生制動検出部62、減速度検出部63、周囲状況検出部64、制御部65を備える。なお、ECU6が備える機能はこれらに限定されない。
【0048】
取得部61は、各種構成(アクセルセンサ7、車速センサ8、カメラ71、ライダ72など)から各種情報(データ)を取得する。
【0049】
回生制動検出部62は、取得部61が取得した各種情報(車速センサ8から取得した車速パルスなど)に基づいて、回生制動が作動していることを検出する。
【0050】
減速度検出部63は、取得部61が取得した各種情報(車速センサ8から取得した車速パルスなど)に基づいて、電動車両1の減速度を検出する。
【0051】
周囲状況検出部64は、取得部61が取得した各種情報(カメラ71やライダ72などからの各種情報)に基づいて、電動車両1の周囲の状況を検出する。例えば、周囲状況検出部64は、電動車両1と前方車両の距離や、前方車両の加速度、減速度や、電動車両1と後方車両の距離や、後方車両の速度や、電動車両1の前方の信号機の表示色(赤信号、黄信号、青信号のいずれか)や、電動車両1の前方の道路標識の種類などを検出する。
【0052】
制御部65は、各種制御を実行する。例えば、制御部65は、回生制動検出部62によって回生制動が検出されるとともに、減速度検出部633によって検出された減速度が所定の減速度閾値を超えた場合、車両後方の制動灯9を、点灯させるよりも前に点滅させる。
【0053】
また、制御部65は、回生制動検出部62によって回生制動が検出されるとともに、減速度検出部63によって検出された減速度が所定の減速度閾値を超え、さらに、予め定められた点滅制御条件が満たされた場合、制動灯9を点滅させるようにしてもよい。
【0054】
その場合、例えば、制御部65は、周囲状況検出部64による検出結果に基づいて、電動車両1と前方車両の距離が次第に短くなっている(例えば、100m(メートル)、90m、80m、と次第に短くなっている)こと、前方車両が減速していること、および、電動車両1と前方車両の衝突余裕時間(TTC(Time to Collision))が所定の時間閾値以下になっていること、の少なくともいずれかの条件を満たした場合に、点滅制御条件が満たされたと判定する。つまり、前方車両との関係で電動車両1の減速が予測されることで制動灯9の点滅による後方車両への注意喚起が必要であると考えられる場合に、点滅制御条件が満たされたと判定する。
【0055】
また、例えば、制御部65は、周囲状況検出部64による検出結果に基づいて、電動車両1と後方車両の距離、後方車両の速度、および、電動車両1と後方車両の衝突余裕時間の少なくともいずれかが所定の条件を満たした場合に、点滅制御条件が満たされたと判定する。つまり、電動車両1と後方車両の衝突の可能性を踏まえて、制動灯9の点滅による後方車両への注意喚起が必要であると考えられる場合に、点滅制御条件が満たされたと判定する。
【0056】
また、例えば、制御部65は、周囲状況検出部64による検出結果に基づいて、電動車両1の前方の信号機が赤信号または黄信号であること、および、電動車両1の前方に車両の停止を指示する道路標識(例えば、車両通行止め、車両進入禁止、一時停止などの道路標識)があること、の少なくともいずれかを満たした場合に、点滅制御条件が満たされたと判定する。つまり、電動車両1の前方の道路標識の存在によって電動車両1の減速が予測されることで制動灯9の点滅による後方車両への注意喚起が必要であると考えられる場合に、点滅制御条件が満たされたと判定する。
【0057】
次に、
図3を参照して、実施形態における車速と加速度と各閾値の関係について説明する。
図3は、実施形態における車速と加速度と各閾値の関係を示すグラフである。
【0058】
図3において、縦軸は電動車両1の加速度(上側が加速、下側が減速)で、横軸は車速である。まず、消灯閾値TH11は、図示のように、車速が大きいほど減速度が大きい値として設定されている。その下方に、点滅終了閾値TH22が設定されている。
【0059】
さらにその下方に、点滅開始閾値TH21(減速度閾値に相当)が設定されている。さらにその下方に、点灯閾値TH12が設定されている。
【0060】
換言すると、消灯閾値TH11と点灯閾値TH12が大きな幅で設定されており、その間の部分に、点滅開始閾値TH21と点滅終了閾値TH22が設定されている。
【0061】
各閾値がこのように設定されていることで、走行中の電動車両1が減速し始めた後、減速度が次第に大きくなっていった場合に、減速度は、点灯閾値TH12を超える(下回る)前に、点滅開始閾値TH21を超える。これにより、制動灯9は、点灯するよりも前に点滅するので、後方車両に注意喚起することができる。制動灯9の点灯、点滅、消灯の切り替えについては、
図4を用いて詳述する。
【0062】
図4は、実施形態のECU6(制御装置)による処理の例を示すフローチャートである。なお、この
図4の処理が行われている間、以下で言及が無くても、各部61~64による各種処理が逐次実行されているものとする。
【0063】
ステップS1において、制御部65は、電動車両1が点灯閾値TH12(
図3)より強い減速をしている(つまり、減速度が点灯閾値TH12より大きい(
図3において点灯閾値TH12よりも下側である))か否かを判定し、Yesの場合はステップS2に進み、Noの場合はステップS5に進む。
【0064】
ステップS2において、制御部65は、制動灯9を点灯させる。なお、このステップS2になった時点で、制動灯9は点滅中であるので、制御部65は、制動灯9を点滅から点灯に変更する。
【0065】
次に、ステップS3において、制御部65は、電動車両1が消灯閾値TH11(
図3)より弱い減速をしている(つまり、減速度が消灯閾値TH11より小さい)か否かを判定し、Yesの場合はステップS4に進み、Noの場合はステップS3に戻る。
ステップS4において、制御部65は、制動灯9を消灯させる。その後、ステップS1に戻る。
【0066】
ステップS5において、制御部65は、点滅制御条件を満たしたか否かを判定し、Yesの場合はステップS6に進み、Noの場合はステップS8に進む。
【0067】
ステップS6において、制御部65は、電動車両1が点滅開始閾値TH21(
図3)より強い減速をしている(つまり、減速度が点滅開始閾値TH21より大きい)か否かを判定し、Yesの場合はステップS7に進み、Noの場合はステップS8に進む。
ステップS7において、制御部65は、制動灯9を点滅させる。
【0068】
ステップS8において、制御部65は、制動灯9が点滅中か否かを判定し、Yesの場合はステップS9に進み、Noの場合はステップS1に戻る。
【0069】
ステップS9において、制御部65は、電動車両1が点滅終了閾値TH22(
図3)より弱い減速をしている(つまり、減速度が点滅終了閾値TH22より小さい)か否かを判定し、Yesの場合はステップS10に進み、Noの場合はステップS1に戻る。
ステップS10において、制御部65は、制動灯9の点滅を終了させ、点灯させる。その後、ステップS1に戻る。
【0070】
このように、本実施形態によれば、電動車両1において、回生制動力による減速時に、減速度が所定の減速度閾値を超えたという条件を満たした場合に、制動灯9の点滅を実施することができる。つまり、
図4のフローチャートからもわかるように、制動灯9について、点灯させるよりも前に点滅させることができる。これにより、上述の法規を遵守しつつ、後方車両に注意喚起することができる。したがって、事故の未然防止等の効果を奏する。
【0071】
また、回生制動検出と強減速度検出のほかに、点滅制御条件充足も制動灯9の点滅の条件とすることで、必要性に応じた、より効果的な制動灯点滅を実施することができる。
【0072】
また、点滅制御条件が満たされたと判定する場合には、前方車両に関する情報を用いたり、後方車両に関する距離、速度、衝突余裕時間の情報を用いたり、前方の信号機や道路標識に関する情報を用いたりすることで、例えば、以下のような条件を満たした場合に、点滅制御条件が満たされたと判定する。
【0073】
(1)電動車両1と前方車両の距離が次第に短くなっていること
(2)前方車両が減速していること
(3)電動車両1と前方車両の衝突余裕時間が所定の時間閾値以下になっていること
(4)後方車両に関する距離、速度、衝突余裕時間が所定の条件を満たしたこと
(5)電動車両1の前方の信号機が赤信号または黄信号であること
(6)電動車両1の前方に車両の停止を指示する道路標識があること
【0074】
これにより、必要性に応じた、より効果的な制動灯点滅を実施することができる。つまり、(1)~(6)の少なくともいずれかの条件を満たした場合は、制動灯9の点滅による後方車両への注意喚起の必要性がより高いと考えられる。
【0075】
<変形例>
次に、変形例について説明する。例えば、制動灯9を点滅から点灯に切り替える条件は、
図4で説明したものに限定されない。ほかに、例えば、以下の(11)~(13)の条件を用いてもよい。
(11)点滅継続時間が規定時間に達した場合
(12)点滅回数が規定回数に達した場合
(13)
図4の処理においてステップS7に2回目に移行した場合(その場合、ステップS7への初回移行時に点滅を開始し、ステップS7への2回目の移行時に点滅を点灯に変更。つまり、ステップS2への移行なしで点滅を点灯に変更可。)
【0076】
制動灯9の点滅の主な目的は後方車両への注意喚起であるので、長時間の点滅の必要性は低い。上述の(11)~(13)の条件を採用することで、必要性の低い長時間の点滅を回避できる。
【0077】
また、本実施形態のECU6で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することができる。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0078】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0079】
例えば、実施形態ではシリーズ方式のハイブリッドシステムを搭載した電動車両を例にとったが、本発明は、これに限定されず、EV、HV、PHEV、FCVなどの回生制動可能な電動車両全般に適用可能である。
【0080】
また、制動灯9を点滅させる場合は上記の場合に限定されない。ほかに、例えば、電動車両1の減速開始時に、運転者が手動スイッチ等を操作して制動灯9の点滅を指示したときに、制動灯9を点滅させるようにしてもよい。
【0081】
また、電動車両1の周囲の状況を認識するためのセンサは、カメラ71、ライダ72に限定されず、ほかに、超音波センサ、赤外線センサなどの他のセンサであってもよい。
【0082】
また、
図3のグラフでは、各閾値は、直線としたが、これに限定されず、曲線(例えば、二次関数、指数関数等によって表される曲線)であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1:電動車両、2:ハイブリッドシステム、6:ECU、9:制動灯、11:エンジン、13:駆動モータ、14:駆動用バッテリ、61:取得部、62:回生制動検出部、63:減速度検出部、64:周囲状況検出部、65:制御部