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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117546
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】歯間ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46B 5/00 20060101AFI20240822BHJP
   A61C 15/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A46B5/00 B
A61C15/02 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023690
(22)【出願日】2023-02-17
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅景 悠平
(72)【発明者】
【氏名】玄行 杏里
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA03
3B202AB15
3B202BA18
3B202BB04
3B202DB01
3B202EA04
3B202EE07
3B202EG01
3B202EG03
3B202EH02
(57)【要約】
【課題】使用の際にネック部が歯列に対して傾いた場合でも挿入時の安定性が高く、耐久性に優れた歯間ブラシを提供せんとする。
【解決手段】ハンドル部を固定してネック部の先端位置にハンドル部の軸に直角な方向に所定の大きさの力を作用させたときに、該ネック部の撓み量が最も大きくなる方向をA方向、最も小さくなる方向をB方向としたとき、A方向に力を作用させたときの該ネック部のA方向への撓み量(Da)と、B方向に力を作用させたときの該ネック部のB方向への撓み量(Db)との比(Da/Db)が、1.5~2.2である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル部と、ハンドル部の先端から該ハンドル部の軸方向に沿って延びる、ハンドル部よりも細く構成されたネック部と、ネック部の先端から該ネック部の軸方向に沿って延びる芯部の周囲に、複数の清掃体が放射状に突設されてなるブラシ部とを備え、
前記ハンドル部を固定して前記ネック部の先端位置にハンドル部の軸に直角な方向に所定の大きさの力を作用させたときに、該ネック部の撓み量が最も大きくなる方向をA方向、最も小さくなる方向をB方向としたとき、A方向に力を作用させたときの該ネック部のA方向への撓み量(Da)と、B方向に力を作用させたときの該ネック部のB方向への撓み量(Db)との比(Da/Db)が、1.5~2.2であることを特徴とする歯間ブラシ。
【請求項2】
前記A方向に100gfの力を作用させたときの前記ネック部のA方向への撓み量(Da)が1.5mm以上であり、且つB方向に100gfの力を作用させたときの該ネック部のB方向への撓み量(Db)が0.7mm以上である、請求項1記載の歯間ブラシ。
【請求項3】
前記A方向とB方向とが、互いに直交する方向であり、前記ネック部の先端位置に軸に直角な方向に所定の大きさの力を作用させたときの前記ネック部の撓み量の前記A方向の成分(da)と前記B方向の成分(db)とが等しくなる前記方向が、軸方向からみてB方向からA方向に向かって25~35度回転した方向となる、請求項1又は2記載の歯間ブラシ。
【請求項4】
前記ネック部が、断面視扁平な横長断面構造を有し、前記A方向が前後方向、前記B方向が該A方向に直交する左右横方向である、請求項1記載の歯間ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドル部と、ハンドル部の先端から該ハンドル部の軸方向に沿って延びるネック部と、ネック部の先端から該ネック部の軸方向に沿って延びる芯部の周囲に、複数の清掃体が放射状に突設されてなるブラシ部とを備えた歯間ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の歯間ブラシは、従来、ネック部の形状をストレート部と凹状テーパー部とを組み合わせることによって耐久性を向上させる歯間ブラシが提案されている(特許文献1)。また、ネック部に軟質樹脂、ハンドル部に硬質樹脂を用いることでワイヤーを抜けにくくしつつ、耐久性を向上させる歯間ブラシも提案されている(特許文献2)。しかしこれら歯間ブラシは、ネック部の断面が真円であり、撓みの方向に指向性がなく、歯間への挿入の際にブラシ部がぶれやすくなり、口腔内での操作性や歯間部への挿入性が低下するという課題があった。
【0003】
この課題を解決するため、ネック部に断面視扁平な横長断面構造を設けることで、撓みの方向に指向性を出し、当該撓みやすい方向に手でネック部を繰り返し折り曲げできるようにすることで、臼歯部の歯間に対してブラシ部を軸方向に真っ直ぐ挿入することを可能とする歯間ブラシも提案されている(特許文献3、4)。これらの歯間ブラシはネック部を手で曲げるため、歯列に対して歯間ブラシが平行になることを前提として寸法が設定されている。
【0004】
しかし、実際に使用される際には、ネック部を手で曲げることなくそのまま使用されるケースも多く、ネック部が歯列に対して傾いた状態で挿入されることも多い。このようにネック部が歯列に対して傾いた状態でブラシ部を歯間に挿入しようとすると、ブラシ部(芯部)の変形に対してネック部が追従(撓み変形)しないため、特に臼歯部の歯間に対する挿入性が悪化し、また芯部の根元に応力が集中し、折れやすくなるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2012/011574
【特許文献2】特開2017-144104号公報
【特許文献3】特開2016-155022号公報
【特許文献4】特開2018-068512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、使用の際にネック部が歯列に対して傾いた場合でも挿入時の安定性が高く、耐久性に優れた歯間ブラシを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の発明を包含する。
(1) 外周面のうち少なくとも前後の面に把持面を有するハンドル部と、ハンドル部の先端から該ハンドル部の軸方向に沿って延びるネック部と、ネック部の先端から該ネック部の軸方向に沿って延びる芯部の周囲に、複数の清掃体が放射状に突設されてなるブラシ部とを備え、前記ハンドル部を固定して前記ネック部の先端位置に軸に直角な方向に所定の大きさの力を作用させたときに、該ネック部の撓み量が最も大きくなる方向をA方向、最も小さくなる方向をB方向としたとき、A方向に力を作用させたときの該ネック部のA方向への撓み量(Da)と、B方向に力を作用させたときの該ネック部のB方向への撓み量(Db)との比(Da/Db)が、1.5~2.2であることを特徴とする歯間ブラシ。
【0008】
(2) 前記A方向に100gfの力を作用させたときの前記ネック部のA方向への撓み量(Da)が1.5mm以上であり、且つB方向に100gfの力を作用させたときの該ネック部のB方向への撓み量(Db)が0.7mm以上である、(1)記載の歯間ブラシ。
【0009】
(3) 前記A方向とB方向とが、互いに直交する方向であり、前記ネック部の先端位置に軸に直角な方向に所定の大きさの力を作用させたときの前記ネック部の撓み量の前記A方向の成分(da)と前記B方向の成分(db)とが等しくなる前記方向が、軸方向からみてB方向からA方向に向かって25~35度回転した方向となる、(1)又は(2)記載の歯間ブラシ。
【0010】
(4) 前記ネック部が、断面視扁平な横長断面構造を有し、前記A方向が前後方向、前記B方向が該A方向に直交する左右横方向である、(1)~(3)の何れかに記載の歯間ブラシ。
【発明の効果】
【0011】
本発明の歯間ブラシによれば、使用の際に、ブラシ部が歯列に対して平行に挿入された場合、上記A方向に撓みやすいため、歯列に沿って変形し、滑らかに挿入することができ、上記B方向へはA方向に比べて変形しにくいため、歯間部への挿入時の操作安定性を高めることができる。さらに、上記撓み量(Da)と撓み量(Db)との比(Da/Db)を1.5~2.2に設定したことで、使用の際にネック部が歯列に対して傾いた場合でも、臼歯部の歯間に対する挿入性が高く、かつ耐久性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の代表的実施形態にかかる歯間ブラシを示す斜視図。
図2】同じく歯間ブラシの正面図。
図3】同じく歯間ブラシの側面図。
図4】同じく歯間ブラシのハンドル部を固定してネック部の先端位置にA方向に力を作用させたときのネック部が撓む様子を示す要部の説明図。
図5】同じく歯間ブラシのハンドル部を固定してネック部の先端位置にB方向に力を作用させたときのネック部が撓む様子を示す要部の説明図。
図6】軸に直角な方向であって、B方向からA方向に向かって25~35度回転した方向に力を作用させたときのネック部が撓む様子を示す、軸方向からみた要部の説明図。
図7】実施例1のサンプルの撓み試験の結果を示すグラフ。
図8】実施例2のサンプルの撓み試験の結果を示すグラフ。
図9】実施例3のサンプルの撓み試験の結果を示すグラフ。
図10】比較例1のサンプルの撓み試験の結果を示すグラフ。
図11】比較例2のサンプルの撓み試験の結果を示すグラフ。
図12】比較例3のサンプルの撓み試験の結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0014】
本発明の代表的な実施形態に係る歯間ブラシ1は、図1図3に示すように、ハンドル部2と、ハンドル部2の先端から該ハンドル部2の軸方向に沿って延び、先端に向かって次第に細くなるネック部3と、ネック部3の先端から該ネック部の軸方向に沿って延びる芯部40の周囲に、複数の清掃体41が放射状に突設されてなるブラシ部4とを備えている。ハンドル部2及びネック部3はユーザが手で持つハンドル体10である。
【0015】
本発明に係る歯間ブラシ1は、特に、ネック部3について、ハンドル部2を固定してネック部3の先端3aの位置に該ネック部3の軸に対して直角な方向に所定の大きさの力を作用させたときに、該ネック部3の撓み量が最も大きくなる方向をA方向、最も小さくなる方向をB方向としたとき、A方向に力を作用させたときの該ネック部のA方向への撓み量(Da)と、該ネック部のB方向に力を作用させたときのB方向への撓み量(Db)との比(Da/Db)が、1.5~2.2であることを特徴としている。作用させる力は、実際にユーザが加える力の大きさを考慮して、100gf以上、より好ましくは100~300gfの範囲内の所定の大きさの力とすることが好ましい。
【0016】
このような撓み性を有することにより、本発明に係る歯間ブラシは、A方向へ撓みやすいという指向性を有し、使用の際に、ブラシ部が歯列に対して平行に挿入された場合、上記A方向に撓みやすいため、歯列に沿って変形し、滑らかに挿入することができ、且つ上記B方向へは変形しにくいため、歯間部への挿入時の操作安定性が高い。また、Da/Dbを1.5~2.2に設定したことで、使用の際にネック部が歯列に対して傾いた場合であっても、臼歯部の歯間に対する挿入性が高く、かつ耐久性に優れたものとなる。
【0017】
ブラシ部4は、例えば、金属細線からなる芯部40に対して、その長さ方向に沿って複数の清掃体としての毛41(フィラメント)を放射状に植毛し、所望の形状に毛切りしたものである。より詳しくは、金属細線(ワイヤ)を二つ折りにしてその間に複数本のフィラメントを配置させ、この金属細線を捻って、金属細線からなる芯部40に対して放射状に清掃体としての複数のフィラメント(毛41)が植毛されたものである。その後フィラメントを毛切りすることにより所定の外周面形状(本例では円錐台形状)として構成されている。
【0018】
芯部40の基端部には屈曲させてなる図示しないアンカー部が設けられ、このアンカー部をハンドル本体10(ネック部3及びハンドル部2の先端部分)に埋設することで、使用時に、例えば歯間にブラシ部4を挿入した状態でブラシ部4を回転させてもブラシ部4がハンドル体10から脱落しないように構成されている。
【0019】
芯部40を構成する金属細線としては、例えばステンレスやCo合金などの金属製ワイヤを採用できる。ワイヤの直径は、0.20~0.45mm程度に設定できる。フィラメントには、例えば、ナイロンおよびアラミド等のポリアミド樹脂(ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6、ポリアミド66)や、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、或いは、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン樹脂などの熱可塑性合成樹脂が使用される。フィラメントの太さ、断面形状等はとくに限定されず、種々の形態のものを用いることができる。
【0020】
なお、本発明に係るブラシ部は、このような金属細線の芯部40とフィラメントの毛41からなるものに何ら限定されず、芯部とブラシ部を合成樹脂材料により一体成形したものや、芯部を主に合成樹脂材料で成形し、その周囲に清掃体としての複数の清掃用突起を熱可塑性エラストマーや熱硬化性シリコンゴム、合成ゴム等の材料で二色成形したものなど、種々のものが可能である。
【0021】
ハンドル体10は、図1図5に示すように、主な持ち手となる棒状のハンドル部2と、ハンドル部2の先端部に延設され、ブラシ部4に向けて次第に細くなる折り曲げ可能なネック部3とを備えており、これらは合成樹脂により一体的に成形されている。芯部40の基部側は、ネック部3とハンドル部2の先端部にわたってインサート成形により埋設させることによって脱落不能に支持されている。
【0022】
ハンドル体10の合成樹脂材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、飽和ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、プロピオン酸セルロース、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)などの熱可塑性合成樹脂材料を採用できる。特に、繰り返して折り曲げたときの耐久性に優れていることから、ポリエチレンを好適に採用できる。
【0023】
ハンドル部2は、ユーザが指でしっかりとグリップできるように構成された部分である。断面視で扁平な略六角形状であり、図2に示すように、正面視において中間部22は先端側の上部21および基端側の下部23よりも細くなるように括れている。中間部22には、全周にわたる凹溝22cを軸方向に間隔をおいて複数設けられており、各凹溝22cによりハンドル部2が屈曲しやすいように構成されている。また、上部および中間部22の前後面には、軸方向に延びる滑り止めの溝24が複数平行に設けられている。ただし、本発明のハンドル部は、このような構成に限定されず、種々の構造のものが可能である。
【0024】
ネック部3は、口内の組織と接触しにくいように先端に向けて次第に細くなるように構成されており、且つ所定の方向に撓みやすいように指向性(ハンドル部を固定してネック部の先端に軸に直交する方向に荷重を掛けた際、その方向によってネック部の撓み量が異なる)を有するように構成されている。本例では、ネック部3が前後方向に撓みやすいように、前後の厚みに比べて左右の幅の方が大きくなるように横長扁平な断面形状とされている。
【0025】
すなわち、前後方向が本発明の「A方向」、側方、すなわち左右横方向が本発明の「B方向」となるように設定されている。なお、本発明の「A方向」、「B方向」は、それぞれ本例のような前後方向、左右横方向に限定されず、一方又は双方が斜め方向であってもよいし、A方向が左右横方向で、B方向が前後方向であってもよい。また、「A方向」、「B方向」の相互の角度は、本例では互いに直交しているが、これに限定されるものでもない。
【0026】
ネック部3の前後の面には、幅方向に延びる凹溝3cが軸方向に間隔をおいて平行に複数設けられており、これら凹溝3cは上記前後方向(A方向)にネック部3が撓みやすいように、且つ指で操作する際に滑り止めとして機能する。また、本例のネック部3は、軸方向に沿った基端側の領域R1が、正面視、側面視とも基端側から先端側に向かって左右の幅、前後の厚みの小さくなる変化率が次第に小さくなる、稜線L1、L2が凹曲線のテーパー形状とされている(第1テーパ形状部31)。
【0027】
また、領域R1の先端側に連続して、先端側に向かって左右の幅、前後の厚みの小さくなる変化率が一定である、稜線L3、L4が直線のテーパー形状の領域R2(第2テーパ形状部32)が設けられている。さらに、領域R2の先端側に連続して、ネック部3の先端部となる略半球状の領域R3(半球状部33)が設けられている。
【0028】
第1テーパ形状部31(領域R1)の軸方向に沿った長さ寸法は、第2テーパ形状部32(領域R2)の軸方向に沿った長さ寸法よりも大きくなるように設定されていることが好ましい。第2テーパ形状部32(領域R2)の軸方向に沿った長さ寸法は、7.0mm以下に設定することが好ましく、同じく第2テーパ形状部32(領域R2)の左右の幅は、1.8~2.8mmの範囲内で変化するテーパー形状であることが好ましく、同じく第2テーパ形状部32(領域R2)の前後の厚みは、1.6~2.6mmの範囲内で変化するテーパー形状であることが好ましい。
【0029】
本例では、とくに上記の形状の第1テーパ形状部31と第2テーパ形状部32の組み合わせにより、特にB方向への撓み量(Db)を0.7mm以上とし、Da/Dbの値を1.5~2.2に設定している。ただし、本発明はこのようなネック部3の構造に何ら限定されず、Da/Dbの値を1.5~2.2に設定できれば、他の構造であってもよいことは勿論である。
【0030】
各撓み量は、A方向に100gfの力を作用させたときのA方向への撓み量(Da)が1.5mm以上であり、且つB方向に100gfの力を作用させたときのB方向への撓み量(Db)が0.7mm以上となるように設定されていることが好ましい。Daは、より好ましくは1.6mm以上とされ、Dbは、より好ましくは0.8mm以上とされる。
【0031】
また、図6に示すように、ネック部3の先端位置に軸に直角な方向であって、所定の大きさの力Fを作用させたときの撓み量のA方向の成分(da)とB方向の成分(db)とが等しく(da=db)なるFの方向が、軸方向からみてB方向からA方向に向かって25~35度回転した方向であるようなネック部3が好ましい。このような歯間ブラシによれば、使用の際にネック部3が歯列に対して傾いた場合に、臼歯部の歯間に対する挿入性がより高くなる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施の例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例0033】
以下、歯間ブラシのサンプルを作製し、撓みによる挿入性への影響について試験した結果について説明する。
【0034】
(サンプル)
歯間ブラシの複数のサンプル(ブラシ部の寸法が異なる実施例1~3、比較例1~3の合計6つのサンプル)を用意した。ブラシ部以外の構成は共通であり、ネック部を含むハンドル体の素材を低密度ポリエチレン(LLDPE)とし、ブラシ部の芯部は金属細線(ステンレス製φ0.25mm)を折り曲げ、フィラメント(ナイロン製、断面三角形)を間に配置してねじりあげたものを使用した。
【0035】
ブラシ部の形状は、いずれのサンプルも基本的には図1図3で示した形状を有し、第2テーパ形状部32(領域R2)の先端位置の左右の幅、及び前後の厚みが、各サンプルで下記表1のようになるように設定し、これに合わせて第1テーパー形状部31(領域R1)、半球状部33(領域R3)の形状・寸法も微調整した。各サンプルのブラシ部の前後方向が本発明の「A方向」、左右横方向が本発明の「B方向」となる。
【0036】
【表1】
【0037】
(撓み量の算出)
各サンプルを水平な姿勢で、ハンドル部を台に固定し、ネック部の先端位置(ワイヤの根元)に100gのおもりを吊るし(F=100gf)、ネック部の先端位置の鉛直下方への変位量を撓み量として測定する。これを、ネック部の左右幅方向(B方向)を角度0deg.、前後方向(A方向)を角度90deg.として、15deg.刻みでサンプルを軸中心に回転させ、異なる向きに固定してそれぞれ測定するとともに、各測定された変位量のA方向の成分(da)とB方向の成分(db)を算出した。
【0038】
(歯間への挿入性の試験)
実施例、比較例合計6水準で解析を行い、臼歯部の歯間に対する挿入性を実際に使用した際のアンケート結果を元に比較を行った。挿入性が非常に良い場合を「◎」、良い場合を「〇」、良くない場合を「△」、悪い場合を「×」とした。
【0039】
(試験結果)
各サンプルの試験結果を、下記表2、及び図7図12に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
実施例1~3の各サンプルは、いずれも歯間挿入性が良好であり、実施例1、2はとくに良好であった。比較例1、3の各サンプルは、Da(A方向(前後方向)に力を加えたときのA方向の撓み量)と、Db(B方向(左右側方)に力を加えたときのB方向の撓み量)の差が大きく(Da/Dbの比が大きく)、歯列に対してハンドルが傾くとネック部がワイヤーの変形に追従しないため歯間挿入性が良くない或いは悪くなったと考えられる。
【0042】
比較例2のサンプルは、ネック断面形状が円柱状のため、Da/Dbの比が1.0に近い値となっている。このため、Da/Dbの値が小さいため、臼歯部の歯間へ挿入する際、ネックが十分に撓まず、ワイヤーが歯間部に当たった際に歯間開口部に対する角度が大きくなり、挿入性が悪くなったと推測される。
【0043】
これらの結果から、Da/Dbの比が1.5~2.2の範囲であれば歯間部への挿入性が高くなることがわかる。A方向の撓み量が1.5mm以上、B方向の撓み量が0.7mm以上であること
【0044】
また、上記結果から、撓み成分であるdaとdbが同じ値になる力を加える方向も重要であり、この方向がB方向に近くなる(B方向からの回転角度が小さくなる)と、ハンドルが傾くと追従しづらくなり、歯間挿入性・耐久性が低下してしまい、またこの方向が45deg付近になるとネックの撓み方向に指向性がなくなり、歯間挿入時にブラシ部がブレやすくなり、口腔内での操作性や歯間挿入性が低下してしまうことがわかる。歯間部への挿入性を高めるには上記回転角度が24~30deg程度になるように設定すると歯間挿入性・耐久性が高い結果を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 歯間ブラシ
2 ハンドル部
3 ネック部
3a 先端
3c 凹溝
4 ブラシ部
10 ハンドル体
21 上部
22 中間部
22c 凹溝
23 下部
24 溝
31 第1テーパ形状部
33 半球状部
40 芯部
41 毛
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12