(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117555
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】洗浄コネクタ、オスコネクタ及びコネクタセット
(51)【国際特許分類】
A61M 39/16 20060101AFI20240822BHJP
A61M 39/10 20060101ALI20240822BHJP
A61J 15/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61M39/16
A61M39/10 120
A61J15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023703
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 誠
【テーマコード(参考)】
4C047
4C066
【Fターム(参考)】
4C047CC27
4C047DD10
4C047GG17
4C066AA05
4C066BB01
4C066CC01
4C066CC10
4C066JJ03
4C066JJ05
(57)【要約】
【課題】容易に医療用オスコネクタを洗浄可能とする技術を提供する。
【解決手段】コネクタセット1は、筒状のオスコネクタ本体101と、オスコネクタ本体101の先端に形成されたルアー部103の周囲を覆うカプラ102とを含むオスコネクタ100と、洗浄液を噴出可能に構成される基部20と、基部20に設けられた筒部30と、基部20から噴出された洗浄液を外部に排出する排出部50とを有する洗浄コネクタ10と、を備えたコネクタセット1であって、洗浄コネクタ10の基部20および筒部30は、オスコネクタ100が収容される内部空間Sを形成し、オスコネクタ本体101には、内部空間Sにカプラ102が収容された状態でカプラ102の基端側に形成された該内部空間Sの開口部36を塞ぐ蓋部材60が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のオスコネクタ本体と、前記オスコネクタ本体先端に形成されたルアー部の周囲を覆うカプラとを含むオスコネクタと、
洗浄液を噴出可能に構成される基部と、前記基部に設けられた筒部と、前記基部から噴出された洗浄液を外部に排出する排出部とを有する洗浄コネクタと、
を備えたコネクタセットであって、
前記洗浄コネクタの前記基部および前記筒部は、前記オスコネクタが収容される内部空間を形成し、
前記オスコネクタ本体には、前記内部空間に前記カプラが収容された状態で前記カプラの基端側に形成された該内部空間の開口部を塞ぐ蓋部材が設けられる、
コネクタセット。
【請求項2】
前記蓋部材は、前記オスコネクタ本体側方からカプラ外面より外側に延びている、請求項1に記載のコネクタセット。
【請求項3】
前記蓋部材は、筒部に挿入される際に弾性変形する弾性部材を含み、内部空間に少なくとも前記カプラが収容された状態で該筒部に挿入される、
請求項1に記載のコネクタセット。
【請求項4】
前記蓋部材は、外面に把持部を有する、
請求項1に記載のコネクタセット。
【請求項5】
前記蓋部材は、前記オスコネクタ本体を前記筒部に収容する際の前記オスコネクタ本体の軸方向の差し込み完了位置を表示する表示部を有する、
請求項1に記載のコネクタセット。
【請求項6】
筒状のオスコネクタ本体と、前記オスコネクタ本体の側面に外装された蓋部材と、前記オスコネクタ本体先端に形成されたルアー部の周囲を覆うカプラとを含むオスコネクタが差し込まれる洗浄コネクタであって、
洗浄液を噴出可能に構成される基部と、
前記基部に設けられた筒部と、
前記基部から噴出された洗浄液を外部に排出する排出部と、
を備え、
前記筒部は、前記内部空間に前記カプラが収容された状態で前記カプラの基端側に形成された該内部空間の開口部を塞ぐ前記蓋部材と係合する被係合面を有する、
洗浄コネクタ。
【請求項7】
洗浄液を噴出可能に構成される基部と、前記基部に設けられた筒部と、前記基部から噴出された洗浄液を外部に排出する排出部と、を備えた洗浄コネクタの内部空間に差し込まれて洗浄されるオスコネクタであって、
筒状のオスコネクタ本体と、
前記オスコネクタ本体先端に形成されたルアー部の周囲を覆うカプラと、
前記オスコネクタ本体の側面に設けられ、前記内部空間に前記カプラが収容された状態で前記カプラの基端側に形成された該内部空間の開口部を塞ぐ蓋部材と、
を備えるオスコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用オスコネクタを洗浄するための洗浄コネクタ、オスコネクタ及びコネクタセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用のコネクタは、シリンジ、カテーテル、チューブ等の様々な医療器具の接続に使用されている。経管栄養用途においても、患者の体内に挿入されたカテーテル等と栄養剤の供給源との接続にコネクタが用いられている。なお、コネクタの誤接続は医療事故につながる可能性があるため、誤接続防止のための取り組みの一環として国際的な規格の導入が進められている。経管栄養用途の規格によれば、患者側の投与ラインにオスコネクタを取り付け、栄養剤の供給源側の投与ラインにメスコネクタを取り付ける必要がある。このコネクタは栄養剤の投与終了後に接続が解除されるが、この際、患者側のオスコネクタに栄養剤が残留してしまう場合がある。
【0003】
特許文献1には、オスコネクタを清掃するための吸水性を有する拭き取りチップが記載されているが、特許文献1に記載の拭き取りチップでは、オスコネクタに残留する栄養剤を完全に除去することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みて発明されたもので、より容易に医療用オスコネクタを洗浄可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコネクタセットは、筒状のオスコネクタ本体と、オスコネクタ本体先端に形成されたルアー部の周囲を覆うカプラとを含むオスコネクタと、洗浄液を噴出可能に構成される基部と、基部に設けられた筒部と、基部から噴出された洗浄液を外部に排出する排出部とを有する洗浄コネクタとを備えたコネクタセットであって、洗浄コネクタの基部および筒部は、オスコネクタが収容される内部空間を形成し、オスコネクタ本体には、内部空間にカプラが収容された状態でカプラの基端側に形成された該内部空間の開口部を塞ぐ蓋部材が設けられることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、洗浄コネクタの基部から噴出された洗浄液が外部へ漏れることが無く、且つ、洗浄液を内部空間で循環させてオスコネクタを洗浄することができる。
【0008】
本発明におけるコネクタセットにおいて、蓋部材は、オスコネクタ本体側方からカプラ外面より外側に延びていることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、内部空間の開口部を完全に塞ぐことができ、洗浄液が漏れるのを効果的に防ぐことができる。
【0010】
本発明に係るコネクタセットにおいて、オスコネクタ本体は、該本体周囲に一対のフランジを有し、蓋部材は、一対のフランジの間の溝に嵌合し、内部空間の開口部を塞ぐ様に延出し、内部空間の一部を区画する底部を有することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、フランジの間の溝に底部が嵌合し、且つ底部が内部空間の一部を区画し、広い面積で内部空間をシールするので、洗浄液から受ける水圧に対する耐圧性が向上し、洗浄液が漏れにくい。
【0012】
本発明に係るコネクタセットにおいて、蓋部材は、筒部に挿入される際に弾性変形する弾性部材を含み、内部空間に少なくともカプラが収容された状態で該筒部に挿入されることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、蓋部材が圧縮された状態で筒部に挿入された状態で、広い面積で内部空間をシールするので、内部空間の密閉姓が向上し、洗浄液から受ける水圧に対する耐圧性が向上し、洗浄液の漏れを防ぐことができる。
【0014】
本発明に係るコネクタセットにおいて、蓋部材は、外面に把持部を有することが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、把持部を指で掴んで蓋部材の着脱が容易に行える。
【0016】
本発明に係るコネクタセットにおいて、蓋部材は、オスコネクタ本体を筒部に収容する際に、筒部に係合して、オスコネクタ本体の軸方向の移動を規制する規制部を有することが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、規制部が筒部に係合することで、筒部に収容されたオスコネクタのルアー部の開口に突起が挿入された状態であることが確認できる。
【0018】
本発明に係るコネクタセットにおいて、蓋部材は、オスコネクタ本体を筒部に収容する際のオスコネクタ本体の軸方向の差し込み完了位置を表示する表示部を有することが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、表示部を筒部の被表示部に合わせることで、オスコネクタ本体の軸方向の差し込みが完了したことが確認できる。
【0020】
本発明に係る洗浄コネクタは、筒状のオスコネクタ本体と、オスコネクタ本体の側面に外装された蓋部材と、オスコネクタ本体先端に形成されたルアー部の周囲を覆うカプラとを含むオスコネクタが差し込まれる洗浄コネクタであって、洗浄液を噴出可能に構成される基部と、基部に設けられた筒部と、基部から噴出された洗浄液を外部に排出する排出部とを備え、筒部は内部空間にカプラが収容された状態でカプラの基端側に形成された内部空間の開口部を塞ぐ蓋部材と係合する被係合面を有することを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、蓋部材を筒部と係合させることで、蓋部材が内部空間を塞ぎ、洗浄液が漏れることを防ぐ。
【0022】
本発明に係るオスコネクタは、洗浄液を噴出可能に構成される基部と、基部に設けられた筒部と、基部から噴出された洗浄液を外部に排出する排出部と、を備えた洗浄コネクタの内部空間に差し込まれて洗浄されるオスコネクタであって、筒状のオスコネクタ本体と、オスコネクタ本体先端に形成されたルアー部の周囲を覆うカプラと、オスコネクタ本体の側面に設けられ、内部空間にカプラが収容された状態でカプラの基端側に形成された内部空間の開口部を防ぐ蓋部材とを備えることを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、オスコネクタ側面に蓋部材を被せるだけの簡単な構成で、洗浄コネクタの内部空間をシールすることができ、容易にオスコネクタを洗浄することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る洗浄コネクタ、オスコネクタ及びコネクタセットは、容易に医療用オスコネクタを洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態の一例であるコネクタセットの斜視図である。
【
図2】実施形態の一例であるコネクタセットの側面図である。
【
図3】洗浄コネクタの第1部材の斜視図であって、筒部の開口部から基部を見た図である。
【
図4】実施形態の一例であるコネクタセットの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るコネクタセット1の実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0027】
図1及び
図2は、実施形態の一例であるコネクタセット1であって、
図1はコネクタセット1の斜視図、
図2はコネクタセット1の側面図である。
図3は、コネクタセット1が有する洗浄コネクタ10の第1部材11を開口部から見た斜視図である。コネクタセット1は、洗浄コネクタ10とオスコネクタ100と蓋部材60を備えている。洗浄コネクタ10は、オスコネクタ100を内部に収容可能な筒部30を有する。
図1及び
図2は、筒部30に収容したオスコネクタ100に蓋部材60を装着した状態を示し、オスコネクタ100は隠れた状態である。
【0028】
洗浄コネクタ10は、オスコネクタ100が取り付けられる第1部材11と、第1部材11に連結された第2部材12とを備える。第1部材11と第2部材12は、着脱自在に構成されている。なお、洗浄コネクタ10を1つの部材で構成することも可能である。第2部材12には、洗浄液の供給源として洗浄液が充填されたシリンジ(図示せず)が取り付けられ、洗浄液は第2部材12を介して第1部材11に供給される。洗浄液の供給源は、シリンジに限定されず、例えば、洗浄液が充填されたタンクであってもよい。この場合、第2部材12には洗浄液タンクから延びるチューブが接続される。
【0029】
洗浄コネクタ10の洗浄対象であるオスコネクタ100は、栄養剤の投与ラインに取り付けられるコネクタである。オスコネクタ100から延びるチューブ110は患者に接続されている。即ち、チューブ110が患者に接続された状態でオスコネクタ100の洗浄が実施される。詳しくは後述するが、オスコネクタ100が洗浄コネクタ10にセットされると、カプラ102の開口が第1部材11の基部20側を向き、基部20の突起24がオスルアー部103の開口に挿入された状態となる(
図5参照)。
【0030】
洗浄コネクタ10を構成する第1部材11は、オスコネクタ100が取り付けられる基部20と、基部20上に設けられ、オスコネクタ100を覆う筒部30と、基部20及び筒部30に囲まれた内部空間Sから洗浄廃液を排出するための排出部50とを備える。基部20は、洗浄液の噴出孔23を有する。第2部材12から供給される洗浄液は、基部20の噴出孔23から基部20及び筒部30に囲まれた第1部材11の空間である内部空間S(
図5参照)に噴出され、オスコネクタ100に付着した栄養剤を洗い流す。洗浄廃液は、排出部50により該内部空間から排出される。排出部50には、例えば、洗浄廃液を貯める廃液タンクに接続されたチューブ(図示せず)が取り付けられる。
【0031】
第1部材11は、全体として略円筒形状を有し、円筒の軸方向中央部より排出部50が突出した構造を有する。第2部材12も同様に、略円筒形状を有し、第1部材11の筒部30と反対側の軸方向端部に接続されている。第1部材11と第2部材12は、各々の円筒の中心軸が一致するように配置される。洗浄液の供給源であるシリンジは、第2部材12の第1部材11と反対側の軸方向端部に取り付けられる。即ち、シリンジと洗浄対象であるオスコネクタ100が、洗浄コネクタ10の軸方向両端に離れて位置する状態となる。なお、本明細書では、説明の便宜上、洗浄コネクタ10の軸方向に沿った方向を「上下方向」とし、第1部材11側を「上」、第2部材12側を「下」という場合がある。
【0032】
第1部材11の基部20は、筒部30が連結された台座部21と、第2部材12が連結される接続部22とを有する。基部20は、全体として略円筒形状を有し、接続部22が筒壁を、台座部21が筒底をそれぞれ形成している。台座部21は、略円板状に形成され、洗浄液の噴出孔23と、円板の中央部に形成された突起24とを有する。噴出孔23は、台座部21を基部20の軸方向に貫通して接続部22の筒内に連通している。噴出孔23は、突起24の周囲に複数形成されることが好ましく、本実施形態では台座部21の周方向に等間隔で4つ形成されている。突起24は、接続部22と反対の方向に延び、略円柱形状を有する。
【0033】
詳しくは後述するが、第1部材11の筒部30は、一方が開放された筒状で、オスコネクタ100を内部に挿入可能に構成されている。これにより、オスコネクタ100をスムーズに着脱することが可能になる。
【0034】
接続部22は、小径部と大径部を有し、第2部材12を挿入可能な内部空間を有する。小径部は台座部21に隣接し、第2部材12の軸方向一端部は小径部の内部空間(筒内)に位置する。第2部材12を介して供給される洗浄液は、小径部の筒内に流入し、台座部21を貫通する噴出孔23を通って、オスコネクタ100が収容された内部空間Sに噴出される。接続部22の大径部には、第2部材12を固定するための係止部として開口29が形成されている。本実施形態では、第2部材12の係合突起16が開口29に嵌合することで第2部材12が接続部22に固定される。開口29は、例えば、大径部の径方向に並んで2つ形成される。尚、小径部の径方向側面には翼部を設けてもよい。後述する第2部材12の翼部と小径部の翼部の周方向の位置を合わせることで、第2部材12の係合突起16が開口29に嵌合していることを確認することができる。
【0035】
筒部30は、略円筒形状を呈し、その軸方向は第1部材11の軸方向と一致している。筒部30の内部空間Sには、カプラ102が設けられたオスコネクタ100の先端側が収容される。一方、チューブ110が接続されたオスコネクタ100の基端側は、後述する蓋部材60が内部空間Sを塞ぐ様に配置される。好ましくは、蓋部材60は、オスコネクタ本体101の側方からカプラ102の外面より径方向外側に延び、内部空間の開口部36を塞ぐ形状をしている。なお、栄養剤はオスコネクタ100の先端側に残留するため、この状態で栄養剤を十分に除去することができる。なお、オスコネクタ100の基端とは、チューブ110が接続される側の軸方向一端を意味し、先端とは基端と反対側の軸方向他端を意味する。より好ましくは、蓋部材60は、内部空間Sの開口部36を塞ぐ底部61と、底部61の中央にオスコネクタ100に装着可能な孔を有し、孔の内周には径方向内側に張り出した突部64を有する。突部64は、オスコネクタ周囲の一対のフランジ105の間の溝に嵌合し、底部61は、内部空間Sの一部を区画するように構成される。
【0036】
排出部50は、第1部材11の軸方向中央部から軸方向に対して直交する方向(径方向)に突出している。排出部50は、基部20の台座部21に連結され、基部20と一体成形されている。排出部50は、円管状の管部51を有する。管部51は、基部20と筒部30に囲まれた内部空間Sに連通し、該内部空間から洗浄廃液を排出するための流路を管内部に形成する。
【0037】
以下、
図4及び
図5を参照しながら、コネクタセット1の構成、及びコネクタセット1が有する洗浄コネクタ10とオスコネクタ100の構成について、さらに詳説する。
図4はコネクタセット1の分解斜視図、
図5は
図2中のAA線断面図である。
【0038】
オスコネクタ100は、筒状のオスコネクタ本体101と、オスコネクタ本体101に連結されて該本体の周囲を覆うカプラ102とを含む。カプラ102は、オスコネクタ本体101の外径よりも大きな内径を有する円筒状の部材であって、基端側部分が縮径した形状を有する。この縮径した部分が、オスコネクタ本体101に連結される。カプラ102の内周面にはネジが形成され、該ネジはメスコネクタとの結合に使用される。カプラ102は、一般的に、ロックナットとも呼ばれる。カプラ102は、例えば、オスコネクタ本体101に対して、軸周りに回転可能に、且つ軸方向に移動しないように連結されている。
【0039】
オスコネクタ本体101は、オスルアー部103と、チューブ接続部104とを有する。オスルアー部103は、メスコネクタに挿入される部分であって、先端に向かって次第に外径が小さくなったテーパー形状を有する。このテーパー形状は、メスコネクタとの間で漏れのない接続を実現するためにISO規格で定められた形状であり、ルアーテーパーと呼ばれる。なお、オスルアー部103の先端はカプラ102の先端から少し突出している。チューブ接続部104は、チューブ110が接続される部分であって、オスルアー部103よりも大きな外径を有する。
【0040】
オスコネクタ本体101の軸方向中央部には、径方向外側に向かって突出したフランジ105が形成されている。フランジ105は、オスコネクタ本体101の外周面に沿って円環状に形成され、オスコネクタ本体101の軸方向に間隔をあけて2つ存在する。2つのフランジ105に挟まれた部分には、蓋部材60が嵌合するように取り付けられる。オスコネクタ本体101の外径は、フランジ105が形成された部分で最大となる。詳しくは後述するが、洗浄コネクタ10にオスコネクタ100がセットされたときに、蓋部材60が筒部30の開口部36を塞ぐように配置される。言い換えると、フランジ105に取り付けられる蓋部材60に開口部36が当接するように筒部30が形成されている。
【0041】
オスコネクタ100は、上述の通り、栄養剤の投与ラインに取り付けられ、例えば、チューブ110は患者の鼻孔に挿入されている。オスコネクタ100は栄養剤の投与終了後に図示しないメスコネクタとの接続が解除されるが、この際、特にオスコネクタ本体101とカプラ102の隙間に栄養剤が残留しやすい。このため、洗浄コネクタ10は、オスコネクタ本体101とカプラ102の隙間に洗浄液を供給可能に構成されている。
【0042】
洗浄コネクタ10は、上述の通り、オスコネクタ100がセットされる第1部材11と、洗浄液の供給源であるシリンジ等が接続される第2部材12とで構成されている。オスコネクタ100は、オスルアー部103を基部20側に向けた状態で第1部材11に取り付けられ、少なくともカプラ102の全体が筒部30の内部に収容される。このとき、基部20の突起24がオスルアー部103の筒内に挿入された状態となり、カプラ102とオスルアー部103の隙間が噴出孔23に対向配置される。これにより、噴出孔23から噴出される洗浄液は、オスルアー部103の内部に浸入することなく、カプラ102とオスルアー部103の隙間に導入される。
【0043】
詳しくは後述するが、蓋部材60は筒部30の開口部36に径方向に圧縮されて挿入され、これにより、筒部30と蓋部材60により内部空間Sはシールされる。このとき、カプラ102は、基部20の台座部21には接触せず、台座部21とカプラ102の間には洗浄廃液が流れる空間が存在する。カプラ102とオスルアー部103の隙間に噴出された洗浄液は、該隙間に残留する栄養剤を洗い流し、オスコネクタ100の先端側から流出して排出部50に流れ込む。なお、カプラ102とオスルアー部103の隙間に噴出された洗浄液の一部は、カプラ102の基端側の隙間から内部空間Sに流出し、カプラ102の外側を通って排出部50に流れる。このように洗浄廃液が漏出することなくカプラ102全体を洗浄することができ、衛生的な状態を維持することができる。
【0044】
第2部材12は、筒状の本体13と、本体13に連結されたカプラ14とを含む。本体13は、シリンジを接続可能なオスルアー部(図示せず)を有する。カプラ14は、オスルアー部に外挿され、例えば、シリンジ等の結合に使用される。本体13のオスルアー部と反対側の軸方向端部(上端部)には溝19が形成され、該溝にOリング18が装着される。そして、本体13の上端部が基部20の接続部22内に挿入される。Oリング18は、接続部22の内周面に密着して洗浄液の漏出を防止する。これにより、オスルアー部103から導入された洗浄液は、本体13及び接続部22の筒内を通って噴出孔23から内部空間Sに供給される。
【0045】
本体13の外周面には、係合突起16が形成されている。本実施形態では、係合突起16が接続部22の開口29に嵌まることで、第1部材11と第2部材12の連結状態が維持される。また、本体13の軸方向中央部には、板状の翼部17が形成されている。第2部材12は、回転操作により第1部材11に対して着脱されるが、翼部17は該回転操作に利用され、第2部材12の着脱を容易にする。なお、第2部材12の構造は、特に限定されず、例えば、第1部材11と第2部材12は螺号されてもよいし、カプラ14や翼部17を有していなくてもよい。また、第1部材11の接続部22にも板状の翼部を設けてもよい。上述したように、第1部材11と第2部材の翼部の周方向の位置を揃えることにより、第1部材11と第2部材12の嵌合状態を確認することができる。
【0046】
尚、オスコネクタ100への蓋部材60の組付けは以下のよう使用者が後から行うようにしてもよい。まず、蓋部材60をオスルアー部103の先端から挿入し、フランジ105の溝に蓋部材60を嵌め込んで外装する。次にカプラ102をオスルアー部103の先端から連結する。オスルアー部103の外径がオスコネクタ本体101の基端側の外径よりも小さいため、このように装着することが容易となる。但し、カプラ102が装着されたオスコネクタ100に対して、基端側から蓋部材60を挿入するようにしてもよい。
【0047】
蓋部材60は、側面から延びる接続部68を介してキャップ69を有してもよい。キャップ69はメスコネクタとの接続を解除されたオスルアー部103の開口に装着されるものであり、オスコネクタ100が汚染されることを防ぐものである。但し、本発明において、キャップ69は必須の構成ではない。
【0048】
以下、
図5を参照しながら、コネクタセット1の構成、特に内部空間Sを形成する洗浄コネクタ10の筒部30と蓋部材60に関連する構成について、さらに詳説する。
図5は
図2中のAA線断面図であり、オスコネクタ100を洗浄コネクタ10に収容した状態の軸方向に平行な断面を示している。
【0049】
洗浄コネクタ10の筒部30は、基部20から軸方向の上方に延びる円筒形状をしている。筒部30の内部には、オスコネクタ100のカプラ102が収容されている。基部20と筒部30と蓋部材60によって、カプラ102が収容された状態で、洗浄液が循環可能な内部空間Sが形成される。
【0050】
筒部30は基部20の基端から開口部36にかけて径方向に広がる傾斜を有している。蓋部材60は、内周の傾斜に沿うように筒部30に挿入されている。後述するように、筒部30に挿入される蓋部材60の外径側面(底部61)は、筒部30の傾斜に合わせた傾斜を有する。筒部30の内側の傾斜と、筒部30に挿入される蓋部材60の外周の傾斜を揃えることで、内部空間Sはシールされ、洗浄液の漏れを防ぐことができる。また、筒部30は開口部36に向けて径方向に広がることで、オスコネクタ100のカプラ102を差し込みやすい形状となっている。従って、オスコネクタ100を筒部30内に挿抜する際に過剰な抵抗が生じることがない。また、筒部30は簡易な形状であるため、筒部30を洗浄することも容易である。開口部36の内側の先端にはアールを設けてもよい。アールを設けることで、蓋部材60を挿入しやすくなる効果がある。尚、
図5においては、筒部30は、円筒形状であるがこれに限定されない。筒部30は、基部20の基端から上方にむけて縮径するような形状としてもよい。この場合において、基部20と筒部30は二部材で分離可能に構成し、基部20の突起24にオスルアー部103を取り付け、その後に筒部30をオスコネクタ本体101の基端側から基部20に取り付けるように構成する。この場合には、蓋部材60は、カプラ102の外面より径方向外側に延びている必要はない。
【0051】
図5に示すように、蓋部材60は筒部30に挿入される底部61を有していることが好適である。底部61が筒部30に挿入されることにより、蓋部材60を筒部30に単純に被せて蓋をする構成に比べて、内部空間Sをシールする面積が大きくなり、密閉性が向上し、洗浄液の漏れを防ぐことができる。
【0052】
蓋部材60の底部61は、オスコネクタ本体101の周囲に設けられた2つのフランジ105の間の溝に嵌合するように構成されている。底部61は、蓋部材60をオスコネクタ本体101のフランジ105の間の溝に嵌合させた状態で、筒部30に嵌る円板形状であり、開口部36を塞ぐ大きさに形成されている。Oリングによってシールする場合を考えると、Oリングの断面は円形であり、筒部30に挿入して径方向に圧縮されても、軸方向の上方に向かっては縮径するので、筒部30への接触面積は小さい。これに対して、
図5に示すように、底部61の断面は、軸方向の上方に向かって拡径する台形形状をしている。従って、底部61は外周側面全体で筒部30の内面に接触し、Oリングでシールする場合に比べて、接触面積が大きくなる。更に底部61の外径は、筒部30の開口部36内径よりやや大きく形成される。底部61を径方向に圧縮して筒部30に挿入することで、底部61の外周側側面が筒部30の内部に押し付けられて開口部36をシールし、突部64がフランジ105の間の溝に押し付けられフランジ105をシールする。当該構成によって、内部空間Sをシールする面積が大きくなり、洗浄液の水圧に対する耐圧性が向上し、水圧や振動等によって蓋部材60が容易に外れることが無く、洗浄液の漏れを防ぐことができる。
【0053】
底部61は、オスコネクタ本体101に外装可能な孔を有し、該孔の内周にフランジ105の溝に嵌合する突部64を有している。底部61は、軟質塩化ビニル等の弾性部材で構成されることが好ましい。一方、筒部30は底部61を挿入したときに変形しない程度の硬質材料で形成されることが好ましい。これによって、底部61は内径方向に圧縮されて筒部30に挿入され、内部空間Sを強固にシールすることが可能となる。
【0054】
底部61の外周側の先端にはアールを設けてもよい。該アールによって、蓋部材60を筒部30に挿入する際に、底部61を筒部30の内部に案内しやすくするためである。
【0055】
筒部30の開口部36側の先端は天面部31を有している。開口部36と当接する蓋部材60の部分には、底部61の外径よりも径方向に張り出した段差部65が形成される。段差部65は、筒部30の天面部31に係合して、オスコネクタ本体101の軸方向の移動を規制する規制部として作用する。筒部30の軸方向の高さとオスコネクタ100のフランジ105の位置は、段差部65が天面部31に係合する位置で、オスルアー部103の開口に突起24が適切な位置に差し込まれるように構成される。段差部65によって、オスコネクタ100の軸方向の差し込み状態が確認できる。
【0056】
オスコネクタ100の軸方向の差し込み状態を確認する手段は、規制部(段差部65)に限らない。蓋部材60に表示部を設けて、筒部30の被表示部に表示部を合わせることで、外周に差し込み完了位置を示す構成としてもよい。例えば、蓋部材60を段差部65の無い円筒形状とし、蓋部材60の外周に差し込み完了位置を示す表示部を設けてもよい。例えば、表示部は、筒部30の外周に線、或いは印をつけることで形成される。表示部が筒部30の天面部31(被表示部)に一致する位置までオスコネクタ100を差し込むことで、オスルアー部103に突起24が適切な位置に差し込まれたことを確認できる構成とすることができる。或いは、蓋部材60は、筒部30の外周の全体、又は一部を覆うカバー部を有してもよい。この場合には、筒部30の外周に線、或いは印を設けて被表示部とし、カバー部の先端を被表示部に合わせることで、差し込み完了を示す構成としてもよい。この場合においては、カバー部の先端が表示部となる。
【0057】
オスコネクタ100が筒部30に収容された状態では、オスルアー部103が突起24に差し込まれた状態は、筒部30によって隠れているため確認することは困難である。上述したように蓋部材60に規制部、或いは表示部を設けることによって、オスルアー部103の開口へ突起24が差し込まれた状態が判別できる。
【0058】
蓋部材60は外周に筒部30の天面部31から上方に延びる把持部63を有している。把持部63は、内部に筒状の空洞を有し、オスコネクタ本体101を囲む形状をしている。把持部63は、蓋部材60の着脱の際に指で摘みやすい部位となる。
図5に示すように、把持部63の先端は、オスコネクタ100基端側にオスコネクタ本体101の先端を越える様に延在させてもよい。把持部63は、
図5に示す断面視において、筒部30に当接する段差部65の上方から先端にかけてアールを有し、指にフィットする形状を有している。把持部63は、軟質材料で形成されていることが好ましく、指に引っ掛かりをよくする効果がある。
【0059】
本実施形態のコネクタセット1は、オスコネクタ本体101に設けられた蓋部材60が洗浄コネクタ10の洗浄液を排出する内部空間Sの開口部36を塞ぐ様に構成した。これによって、基部20から噴出された洗浄液が漏れることが無く、且つ、洗浄液を内部空間Sで循環させてオスコネクタ100を洗浄することができる。本実施形態のコネクタセット1は、蓋部材60が筒部30に挿入されているので、シール面積が大きくなり、洗浄液の水圧に対する耐圧性が向上し、洗浄液の漏れを防ぐことができる。
【0060】
以上、
図5を参照して、コネクタセット1の構成、特に内部空間Sを形成する洗浄コネクタ10の筒部30と蓋部材60に関連する構成について説明したが、コネクタセット1の構成は、上述した構成に限られるものではない。例えば、蓋部材60は、筒部30を覆うキャップ型としてもよい。この場合において、蓋部材60のキャップ側面は、外径方向に押し広げながら筒部30に装着され、筒部30を挟むように形成したり、筒部の外面と係合する凹凸部を設けたりすることが好ましい。
【0061】
排出部50は筒部30の側面から軸方向に垂直方向に突出している例を示したが、軸方向に平行で上方(オスコネクタ基端側)に突出するように排出部を構成してもよい。この場合において、蓋部材は、排出部の形状に合わせて筒部の開口部を塞ぐ形状に変形することは言うまでもない。
【0062】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
1 コネクタセット、10 洗浄コネクタ、11 第1部材、12 第2部材、13 本体、14 カプラ、15 オスルアー部、16 係合突起、17 翼部、18 Oリング、19 溝、20 基部、21 台座部、22 接続部、23 噴出孔、24 突起、29 開口、30 筒部、31 天面部、36 開口部、50 排出部、51 管部、60 蓋部材、61 底部、63 把持部、64 突部、68 接続部、69 キャップ、100 オスコネクタ、101 オスコネクタ本体、102 カプラ、103 オスルアー部、104 チューブ接続部、105 フランジ、110 チューブ