(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117556
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】内燃機関制御方法及び内燃機関制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 29/02 20060101AFI20240822BHJP
F02D 41/34 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
F02D29/02 321A
F02D41/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023705
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 允崇
(72)【発明者】
【氏名】丹澤 一樹
(72)【発明者】
【氏名】松田 佳克
【テーマコード(参考)】
3G093
3G301
【Fターム(参考)】
3G093AA01
3G093BA20
3G093BA21
3G093BA22
3G093CA03
3G093DA04
3G093DA05
3G301HA01
3G301JA24
3G301KA05
3G301LB02
3G301MA19
3G301PE08Z
(57)【要約】
【課題】アイドルストップ機能を有するポート噴射式内燃機関のPNを低減すること。
【解決手段】内燃機関の冷却液の温度である冷却水温がアイドルストップ許可水温以上の場合に、停止条件が成立したら内燃機関を停止し、停止中に解除条件が成立したら内燃機関を再始動するアイドルストップ機能を有し、かつ、吸気ポートに設けられた燃料噴射弁から燃料噴射を行う内燃機関を制御する内燃機関制御方法において、冷却水温がアイドルストップ許可水温以上、かつ内燃機関が暖機状態になったと推定されるときの温度である暖機完了水温未満の場合には、吸気バルブが開いている吸気行程中の第1噴射時期で燃料噴射を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の冷却液の温度である冷却水温がアイドルストップ許可水温以上の場合に、停止条件が成立したら前記内燃機関を停止し、停止中に解除条件が成立したら前記内燃機関を再始動するアイドルストップ機能を有し、かつ、吸気ポートに設けられた燃料噴射弁から燃料噴射を行う前記内燃機関を制御する内燃機関制御方法において、
前記冷却水温が前記アイドルストップ許可水温以上、かつ前記内燃機関が暖機状態になったと推定されるときの温度である暖機完了水温未満の場合には、吸気バルブが開いている吸気行程中の第1噴射時期で燃料噴射を行うことを特徴とする、内燃機関制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関制御方法において、
前記冷却水温が前記アイドルストップ許可水温未満の場合には、排気行程中の第2噴射時期で燃料噴射を行う、内燃機関制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関制御方法において、
前記冷却水温が前記暖機完了水温以上の場合には、排気行程中の第3噴射時期で燃料噴射を行う、内燃機関制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関制御方法において、
前記冷却水温が前記アイドルストップ許可水温未満の場合には、排気行程中の第2噴射時期で燃料噴射を行い、
前記冷却水温が前記暖機完了水温以上の場合には、排気行程中かつ前記第2噴射時期より遅角側の第3噴射時期で燃料噴射を行う、内燃機関制御方法。
【請求項5】
内燃機関の冷却液の温度である冷却水温がアイドルストップ許可水温以上の場合に、停止条件が成立したら前記内燃機関を停止し、停止中に解除条件が成立したら前記内燃機関を再始動するアイドルストップ機能を有し、かつ、吸気ポートに設けられた燃料噴射弁から燃料噴射を行う前記内燃機関を制御する内燃機関制御装置において、
前記冷却水温が前記アイドルストップ許可水温以上、かつ前記内燃機関が暖機状態になったと推定されるときの温度である暖機完了水温未満の場合に、吸気バルブが開いている吸気行程中の第1噴射時期で燃料噴射を行う噴射時期制御部を備えることを特徴とする、内燃機関制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気に燃料を噴射するポート噴射式内燃機関の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料噴射弁から噴射された燃料と空気との混合気に火花点火する内燃機関においては、吸気バルブやシリンダ壁に燃料が付着して、それらが気化しないまま火花点火が行われると、パティキュレートと呼ばれる微粒子(以下、PMともいう。)が発生するおそれがある。特許文献1には、PMの粒子数であるパティキュレートナンバ(以下、PNともいう。)を減少させるために、エンジン水温が閾値以下の場合には燃料噴射時期の進角限界を設けて、吸気バルブやピストンへの燃料の付着を抑制する制御が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸気ポート内で燃料を噴射するポート噴射式内燃機関では、特に冷間始動時等に吸気バルブや吸気ポート壁に付着した燃料が気化せずに溜まり、吸気バルブが開いたときに壁流となってシリンダ内に流入するおそれがある。特に、アイドルストップ機能を有する内燃機関では、機関停止直前に噴射された燃料が機関停止中に液滴となり、機関再始動時の壁流量が増加するおそれがある。そして、壁流として流入する燃料が多くなるほどPMが発生し易くなる。上記文献の制御は筒内直噴式内燃機関を対象とする制御なので、上記の壁流を抑制することはできない。
【0005】
そこで本発明は、アイドルストップ機能を有するポート噴射式内燃機関のPNを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、内燃機関の冷却液の温度である冷却水温がアイドルストップ許可水温以上の場合に、停止条件が成立したら内燃機関を停止し、停止中に解除条件が成立したら内燃機関を再始動するアイドルストップ機能を有し、かつ、吸気ポートに設けられた燃料噴射弁から燃料噴射を行う内燃機関を制御する内燃機関制御方法が提供される。この方法において、冷却水温がアイドルストップ許可水温以上、かつ内燃機関が暖機状態になったと推定されるときの温度である暖機完了水温未満の場合には、吸気バルブが開いている吸気行程中の第1噴射時期で燃料噴射を行う。
【0007】
本発明の別の態様によれば、内燃機関の冷却液の温度である冷却水温がアイドルストップ許可水温以上の場合に、停止条件が成立したら内燃機関を停止し、停止中に解除条件が成立したら内燃機関を再始動するアイドルストップ機能を有し、かつ、吸気ポートに設けられた燃料噴射弁から燃料噴射を行う内燃機関を制御する内燃機関制御装置が提供される。この装置において、冷却水温がアイドルストップ許可水温以上、かつ内燃機関が暖機状態になったと推定されるときの温度である暖機完了水温未満の場合に、吸気バルブが開いている吸気行程中の第1噴射時期で燃料噴射を行う噴射時期制御部を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記の各態様によれば、アイドルストップ機能を有するポート噴射式内燃機関のPNを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2は、燃料噴射時期を設定するための制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、冷却水温と燃料噴射時期との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る制御を適用する内燃機関1の概略構成図である。
【0012】
内燃機関1は、内部をピストン9が往復運動するシリンダ8と、車外の空気をシリンダ8に導入する吸気ポート2と、シリンダ8から排気を導出する排気ポート3と、燃料噴射弁10と、点火プラグ11と、コントローラ12と、を備える。
【0013】
吸気ポート2のシリンダ8側の開口部には吸気カムシャフト6により駆動される吸気バルブ4が配置され、吸気バルブ4が開いている期間中はシリンダ8と吸気ポート2とが連通している。排気ポート3のシリンダ8側の開口部には排気カムシャフト7により駆動される排気バルブ5が配置され、排気バルブ5が開いている期間中はシリンダ8と排気ポート3とが連通している。
【0014】
燃料噴射弁10は、噴孔が吸気ポート2に臨むよう配置されている。すなわち、内燃機関1は、いわゆるポート噴射式である。なお、噴射された燃料噴霧が吸気バルブ4の傘部を指向するよう配置されていることが望ましい。
【0015】
点火プラグ11は、電極部分がシリンダ8に臨むよう配置されている。
【0016】
コントローラ12は、内燃機関1の冷却液の温度である冷却水温Twと、内燃機関1の負荷及び回転速度等を読み込み、これらに基づいて燃料噴射時期や点火時期を制御する。コントローラ12は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えた1又は複数のマイクロコンピュータで構成される。なお、本説明において、燃料噴射時期とは燃料噴射を開始するタイミングのことをいい、点火時期とは火花点火を開始するタイミングのことをいう。冷却水温、負荷、及び回転速度の検出には公知の手法を適用可能である。例えば、冷却水温Twは図示しない水温センサにより検出し、負荷は図示しないアクセルペダル開度センサにより検出し、回転速度は図示しないクランク角センサにより検出する。
【0017】
また、内燃機関1は、いわゆるアイドルストップ機能を有する。すなわち、コントローラ12は、内燃機関1の運転中に所定の停止条件が成立すると内燃機関1を停止し、停止中に所定の解除条件が成立すると内燃機関1を再始動させる、アイドルストップ制御を実行する。停止条件及び解除条件としては公知の各条件を適用可能である。停止条件は、例えばブレーキペダルが踏み込まれている、車速がゼロkm/h等である。解除条件は、停止条件の少なくともいずれかを満たさなくなることである。
【0018】
アイドルストップ制御は、冷却水温Twが所定の閾値(以下、アイドルストップ許可水温ともいう。)Tw1より低い場合には実行されない。アイドルストップ許可水温Tw1は、内燃機関1の冷却水温Twとしては比較的低温といえる温度、例えば40~50℃程度とする。アイドルストップ許可水温Tw1未満の場合にアイドルストップ制御を行わないのは、当該温度域では内燃機関1の暖機促進や暖房機能の早期確保等のために冷却水温Twを上昇させる必要があるからである。
【0019】
冷却水温Twは、アイドルストップ許可水温Tw1未満の低温領域と、アイドルストップ許可水温Tw1以上で暖機完了水温Tw2未満の中間領域と、暖機完了水温Tw2以上の高温領域、の3つの領域に分けることができる。なお、暖機完了水温Tw2とは、内燃機関1が暖機状態になったと推定されるときの温度である。
【0020】
ところで、ポート噴射式の内燃機関1では、噴射された燃料が吸気バルブ4や吸気ポート2の壁面に付着することがある。高温領域であれば、吸気バルブ4や吸気ポート2の壁面が有する熱により、付着した燃料の気化が促進される。しかし、低温領域及び中間領域における吸気バルブ4及び吸気ポート2の壁面の温度では、付着された燃料は十分に気化されずに液滴化し、吸気バルブ4の開弁とともに壁流となってシリンダ8内に流入するおそれがある。そして、膨張行程中に燃焼せずにそのまま排気行程において排出される未燃燃料の量が多くなるほど、PNは悪化する。そこでコントローラ12は、以下に説明する通り冷却水温Twの温度領域毎に適切な燃料噴射時期を設定することで、PNの悪化を抑制する。
【0021】
図2は、コントローラ12が実行する、燃料噴射時期を設定するための制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御ルーチンは、所定の間隔(例えば数ミリ秒程度)で繰り返し実行される。以下、フローチャートのステップにしたがって説明する。
【0022】
ステップS100では、コントローラ12は内燃機関1の回転速度Ne及び負荷Qを読み込む。
【0023】
ステップS110では、コントローラ12は中間領域における燃料噴射時期である第1噴射時期INJ1を予め作成して記憶しておいた噴射時期マップを用いて算出する。噴射時期マップは、一般的な噴射時期制御に用いられるものと同様で、例えば縦軸を負荷Q、横軸を回転速度Neとして、負荷Qと回転速度Neとで定まる運転点毎に燃料噴射時期を割り付けたものである。
【0024】
第1噴射時期INJ1は吸気バルブ4が開いている吸気行程中である。その理由は以下の通りである。
【0025】
中間領域においては、上述した通り吸気バルブ4及び吸気ポート2の壁面に付着した燃料が気化し難い。また、中間領域においてはアイドルストップ制御が実行されるが、機関停止中は、吸気バルブ4及び吸気ポート2の壁面の温度の上昇が止まるため、より気化し難い状態、換言すると液滴化し易い状態になる。
【0026】
さらに、再始動時にはいわゆる始動時増量補正によって、暖機完了後の通常運転状態に比べて燃料噴射量が増量される。この増量補正は燃料が気化し難いことを考慮したものである。換言すると、噴射した燃料の一部が燃焼しないことを前提としたものである。
【0027】
このため、後述する高温領域と同様に排気行程中に燃料噴射をすると、通常運転状態よりも増量された燃料がシリンダ8に流入することとなり、壁流として流入した燃料はより燃焼し難くなる。これに対し、燃料噴射時期を吸気バルブ4が開いている吸気行程中にすると、噴射された燃料は空気の流れに乗ってシリンダ8に流入し易くなり、吸気バルブ4及び吸気ポート2の壁面への付着量が少なくなる。これにより吸気バルブ4が開いたときに流入する壁流の量が減少するので、再始動時の壁流の燃え残りを抑制できる。
【0028】
なお、第1噴射時期INJ1の具体的な数値は、本実施形態を適用する内燃機関1の仕様に応じてシミュレーション等により適宜設定するものである。
【0029】
フローチャートの説明に戻る。
【0030】
ステップS120では、コントローラ12は低温領域における燃料噴射時期である第2噴射時期INJ2を第1噴射時期INJ1と同様に予め作成して記憶しておいた噴射時期マップを用いて算出する。
【0031】
第2噴射時期INJ2は、排気行程中である。排気行程中は吸気バルブ4が閉まっている(オーバーラップ期間を除く)ので、噴射された燃料は吸気バルブ4や吸気ポート2の壁面に付着する。しかし、低温領域ではアイドルストップ制御が許可されないので、機関停止中のように燃料の液滴化が進むことはなく、吸気バルブ4が開くまで付着した燃料の気化は進む。また、再始動時のように燃料噴射量が増量されることがないので、気化し切らずに壁流になったとしても燃え残る量は少なく、PNを悪化させるほどにはならない。
【0032】
ステップS130では、コントローラ12は高温領域における燃料噴射時期である第3噴射時期INJ3を第1噴射時期INJ1と同様に予め作成して記憶しておいた噴射時期マップを用いて算出する。
【0033】
第3噴射時期INJ3は、第2噴射時期INJ2と同様に排気行程中である。ただし、第3噴射時期INJ3は第2噴射時期INJ2に比べると遅角側である。
【0034】
高温領域では、吸気バルブ4及び吸気ポート2の壁面の温度が十分に高くなっているため、アイドルストップ制御による機関停止中に温度が低下したとしても、吸気バルブ4や吸気ポート2の壁面に付着した燃料の気化は進む。つまり、内燃機関1の再始動時にシリンダ8に流入する壁流量が少ないので、燃料噴射量が増量されてもPNが悪化することはない。さらには、噴射時期を排気行程中にする場合と吸気行程中にする場合とを比べると、気化する時間が長くなる分、排気行程中に噴射する場合の方が、燃費性能が向上する。
【0035】
また、第3噴射時期INJ3が第2噴射時期INJ2に比べて遅角側なのは、高温領域では上記の通り吸気バルブ4や吸気ポート2の壁面の温度が高い分、低温領域に比べて燃料の気化が早く進むからである。換言すると、低温領域では気化する時間をより長くとるために、高温領域に比べて燃料噴射時期を早くする。
【0036】
ステップS140では、コントローラ12は冷却水温Twを読み込む。
【0037】
ステップS150では、コントローラ12は冷却水温Twがアイドルストップ許可水温Tw1未満であるか否かを判定する。コントローラ12は、冷却水温Twがアイドルストップ許可水温Tw1未満である場合にはステップS160の処理を実行し、アイドルストップ許可水温Tw1以上の場合はステップS170の処理を実行する。
【0038】
ステップS160では、コントローラ12は目標燃料噴射時期tINJを第2噴射時期INJ2に設定して今回のルーチンを終了する。
【0039】
ステップS170では、コントローラ12は、冷却水温Twが暖機完了水温Tw2未満であるか否かを判定する。コントローラ12は、冷却水温Twが暖機完了水温Tw2未満の場合はステップS180の処理を実行し、暖機完了水温Tw2以上の場合はステップS190の処理を実行する。
【0040】
ステップS180では、コントローラ12は目標燃料噴射時期tINJを第1噴射時期INJ1に設定して今回のルーチンを終了する。ステップS190では、コントローラ12は目標燃料噴射時期tINJを第3噴射時期INJ3に設定して今回のルーチンを終了する。
【0041】
図3は、第1噴射時期INJ1~第3噴射時期INJ3と温度領域の関係をまとめた図である。図中の実線は第1噴射時期INJ1~第3噴射時期INJ3を示し、一点鎖線は比較例の噴射時期を示している。この比較例は、温度領域を暖機完了前と暖機完了後の2つに分け、それぞれの噴射時期を設定したものである。
【0042】
比較例では、本実施形態の中温領域に相当する領域と低温領域に相当する領域が1つの領域として扱われる。この場合、燃料が気化する時間を長くとるために噴射時期は排気行程中になる。このため、アイドルストップ制御が実行されると上述した通りPNの悪化を招くこととなる。
【0043】
これに対し本実施形態では、低温領域では排気行程中の第2噴射時期INJ2、中温領域では吸気行程中の第1噴射時期INJ1、高温領域では排気行程中の第3噴射時期INJ3に燃料噴射をする。つまり、暖機完了前の温度領域を、アイドルストップ許可温度Tw1を境界として低温領域と中温領域に分けて、中温領域では吸気行程中に燃料を噴射する。これにより、アイドルストップ制御による再始動時におけるPNの悪化を抑制できる。
【0044】
なお、
図2のフローチャートでは、第1噴射時期INJ1~第3噴射時期INJ3を算出した後に、冷却水温Twに基づいていずれの噴射時期を採用するかを決定しているが、これに限られるわけではない。例えば、回転速度Ne及び負荷Qとともに冷却水温Twも読み込み、冷却水温Twに基づいて現在の温度領域を判定し、現在の温度領域の噴射時期のみを算出するようにしてもよい。
【0045】
以上のように本実施形態では、内燃機関1の冷却液の温度である冷却水温Twがアイドルストップ許可水温Tw1以上の場合に、停止条件が成立したら内燃機関1を停止し、停止中に解除条件が成立したら内燃機関1を再始動するアイドルストップ機能を有し、かつ、吸気ポート2に設けられた燃料噴射弁10から燃料噴射を行う内燃機関1を制御する内燃機関制御方法が提供される。この方法では、冷却水温Twがアイドルストップ許可水温Tw1以上、かつ内燃機関1が暖機状態になったと推定されるときの温度である暖機完了水温Tw2未満の場合には、吸気バルブ4が開いている吸気行程中の第1噴射時期INJ1で燃料噴射を行う。これにより、冷却水温が中間領域にある場合にアイドルストップ制御による再始動が行われても、PNの悪化を抑制できる。
【0046】
本実施形態では、冷却水温Twがアイドルストップ許可水温Tw1未満の場合には、排気行程中の第2噴射時期INJ2で燃料噴射を行う。これにより、低温領域におけるPNの悪化を抑制できる。
【0047】
本実施形態では、冷却水温Twが暖機完了水温Tw2以上の場合には、排気行程中の第3噴射時期INJ3で燃料噴射を行う。これにより、PNの悪化を抑制し、かつ燃費性能の向上を図ることができる。
【0048】
本実施形態では、高温領域における第3噴射時期INJ3は低温領域における第2噴射時期INJ2より遅角側である。これにより、燃料が気化し難い低温領域において、燃料が気化し易い高温領域に比べて燃料が気化する時間を長くとることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0050】
1 内燃機関、 2 吸気ポート、 3 排気ポート、 4 吸気バルブ、 5 排気バルブ、 6 吸気カムシャフト、 7 排気カムシャフト、 8 シリンダ、 9 ピストン、 10 燃料噴射弁、 11 点火プラグ、 12 コントローラ(噴射時期制御部)