(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117560
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】グラフ評価装置、処理装置、グラフ評価方法、処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 18/2323 20230101AFI20240822BHJP
G06Q 10/0633 20230101ALI20240822BHJP
G05B 19/418 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
G06F18/2323
G06Q10/0633
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023716
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】高倉 優理子
(72)【発明者】
【氏名】森 純一
【テーマコード(参考)】
3C100
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA38
3C100AA57
3C100BB15
3C100EE10
5L010AA07
5L049AA07
5L049CC04
(57)【要約】
【課題】ノード及びエッジを用いて表したグラフによるデータの再現性を評価する。
【解決手段】グラフ評価装置は、ノード及びエッジを用いて表すグラフ構造とグラフ構造のノード通過パターン毎の発生確率を表す確率パラメータとにより表されるグラフモデルを評価するための指標を算出する評価指標算出処理部を備え、評価指標算出処理部は、ノード通過パターン毎の確率パラメータに基づいて、グラフモデルにおける実績のノード通過パターンである実績通過パターンの尤度を算出する尤度算出部と、実績通過パターンの尤度に基づいて、実績通過パターンの再現性を評価するための第1評価指標を算出する評価指標算出部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノード及びエッジを用いて表すグラフ構造と前記グラフ構造のノード通過パターン毎の発生確率を表す確率パラメータとにより表されるグラフモデルを評価するための指標を算出する評価指標算出処理部を備え、
前記評価指標算出処理部は、
前記ノード通過パターン毎の前記確率パラメータに基づいて、前記グラフモデルにおける実績のノード通過パターンである実績通過パターンの尤度を算出する尤度算出部と、
前記実績通過パターンの尤度に基づいて、前記実績通過パターンの再現性を評価するための第1評価指標を算出する評価指標算出部と、
を有する、グラフ評価装置。
【請求項2】
前記確率パラメータは、前記実績通過パターンの尤度が最大となるように設定された値であり、
前記評価指標算出部は、前記第1評価指標として、前記実績通過パターンの最大尤度または最大対数尤度を算出する、請求項1に記載のグラフ評価装置。
【請求項3】
前記確率パラメータは、スムージングされた前記ノード通過パターンに含まれる前記実績通過パターンの発生回数に基づき、前記実績通過パターンの尤度が最大となるように設定された値であり、
前記評価指標算出部は、前記ノード通過パターンそれぞれのスムージング後の前記発生回数に基づいて、前記実績通過パターンの前記最大尤度または前記最大対数尤度を算出する、請求項2に記載のグラフ評価装置。
【請求項4】
前記評価指標算出処理部は、
実績データから前記実績通過パターンを生成する実績通過パターン生成部と、
前記グラフモデルのグラフ構造に基づいて、前記ノード通過パターンを生成するノード通過パターン生成部と、
前記グラフモデルの前記ノード通過パターン毎の前記確率パラメータを設定する確率パラメータ設定部と、
を有する、請求項1に記載のグラフ評価装置。
【請求項5】
前記評価指標算出部は、前記グラフモデルに含まれる前記ノード通過パターンの数と重み係数とによって前記グラフモデルの複雑度を表した第2評価指標を算出する、請求項1に記載のグラフ評価装置。
【請求項6】
前記評価指標算出部は、前記第1評価指標と前記第2評価指標との和を、前記グラフモデルの評価指標として算出する、請求項5に記載のグラフ評価装置。
【請求項7】
前記評価指標に基づいて、前記グラフモデルの再現性と複雑度とに基づき目的に最も合致する最適グラフモデルを探索する探索部を備え、
前記評価指標算出処理部は、異なる複数の前記グラフモデルそれぞれについて、前記評価指標を算出し、
前記探索部は、複数の前記グラフモデルのうち、前記評価指標が最小のグラフモデルを、前記最適グラフモデルとする、請求項6に記載のグラフ評価装置。
【請求項8】
前記評価指標算出処理部は、前記第1評価指標を算出した前記グラフモデルの前記グラフ構造、前記確率パラメータ、または、前記グラフモデルを評価するための指標のうち、少なくともいずれか1つを処理装置に出力する、請求項1~7のいずれか1項に記載のグラフ評価装置。
【請求項9】
請求項8に記載のグラフ評価装置によって算出される前記グラフモデルの前記グラフ構造、前記確率パラメータ、または、前記グラフモデルを評価するための指標のうち、少なくともいずれか1つを受信し、
受信した情報を処理する、処理装置。
【請求項10】
グラフ評価装置によるグラフ評価方法であって、
ノード及びエッジを用いて表すグラフ構造と前記グラフ構造のノード通過パターン毎の発生確率を表す確率パラメータとにより表されるグラフモデルについて、前記ノード通過パターン毎の前記確率パラメータに基づいて、実績のノード通過パターンである実績通過パターンの尤度を算出する尤度算出ステップと、
前記グラフモデルを評価するための指標として、前記実績通過パターンの尤度に基づいて、前記実績通過パターンの再現性を評価するための第1評価指標を算出する第1評価指標算出ステップと、
を含む、グラフ評価方法。
【請求項11】
前記確率パラメータは、前記実績通過パターンの尤度が最大となるように設定された値であり、
前記第1評価指標算出ステップでは、前記第1評価指標として、前記実績通過パターンの最大尤度または最大対数尤度を算出する、請求項10に記載のグラフ評価方法。
【請求項12】
前記確率パラメータは、スムージングされた前記ノード通過パターンに含まれる前記実績通過パターンの発生回数に基づき、前記実績通過パターンの尤度が最大となるように設定された値であり、
前記第1評価指標算出ステップでは、前記ノード通過パターンそれぞれのスムージング後の前記発生回数に基づいて、前記実績通過パターンの前記最大尤度または前記最大対数尤度を算出する、請求項11に記載のグラフ評価方法。
【請求項13】
実績データから前記実績通過パターンを生成する実績通過パターン生成ステップと、
前記グラフモデルのグラフ構造に基づいて、前記ノード通過パターンを生成するノード通過パターン生成ステップと、
前記グラフモデルの前記ノード通過パターン毎の前記確率パラメータを設定する確率パラメータ設定ステップと、
を含む、請求項10に記載のグラフ評価方法。
【請求項14】
前記グラフモデルに含まれる前記ノード通過パターンの数と重み係数とによって前記グラフモデルの複雑度を表した第2評価指標を算出する第2評価指標算出ステップを含む、請求項10に記載のグラフ評価方法。
【請求項15】
前記第1評価指標と前記第2評価指標との和を、前記グラフモデルの評価指標として算出する評価指標算出ステップを含む、請求項14に記載のグラフ評価方法。
【請求項16】
前記評価指標に基づいて、前記グラフモデルの再現性と複雑度とに基づき目的に最も合致する最適グラフモデルを探索する探索ステップを含み、
前記評価指標算出ステップでは、異なる複数の前記グラフモデルそれぞれについて、前記評価指標を算出し、
前記探索ステップでは、複数の前記グラフモデルのうち、前記評価指標が最小のグラフモデルを、前記最適グラフモデルとする、請求項15に記載のグラフ評価方法。
【請求項17】
前記第1評価指標を算出した前記グラフモデルの前記グラフ構造、前記確率パラメータ、または、前記グラフモデルを評価するための指標のうち、少なくともいずれか1つを処理装置に出力する出力ステップを含む、請求項10~16のいずれか1項に記載のグラフ評価方法。
【請求項18】
請求項17に記載のグラフ評価方法によって算出される前記グラフモデルの前記グラフ構造、前記確率パラメータ、または、前記グラフモデルを評価するための指標のうち、少なくともいずれか1つを受信し、
受信した情報を処理する、処理方法。
【請求項19】
コンピュータに、
ノード及びエッジを用いて表すグラフ構造と前記グラフ構造のノード通過パターン毎の発生確率を表す確率パラメータとにより表されるグラフモデルについて、前記ノード通過パターン毎の前記確率パラメータに基づいて、実績のノード通過パターンである実績通過パターンの尤度を算出すること、
前記グラフモデルを評価するための指標として、前記実績通過パターンの尤度に基づいて、前記グラフモデルによる前記実績通過パターンの再現性を評価するための第1評価指標を算出すること、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノード及びエッジを用いて表したグラフを評価するグラフ評価装置、グラフ評価方法及びプログラムと、これらにより得られた情報を処理する処理装置及び処理方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
グラフは、ノードとエッジとの集合であり、ノード間の相互関係(ネットワーク)をモデル化することができる。このようなグラフにより、例えば交通ネットワーク、物流ネットワーク等のように、その要素(ノード)やつながり(エッジ)を表すことが可能となる。そして、グラフに基づき、効率や生産性といった分析を行うことができる。
【0003】
例えば、製鉄プロセスでは、多数の工程での中間材の処理を経て、最終製品を得る。生産性を向上させるためには、各工程での設備の稼働率を最大化することが重要であり、設備の稼働率を向上させるためには、設備間で中間材を一時的に保管する置場の在庫状況を正確に予測し、制御する必要がある。例えば、設備の処理対象材を保管する前面置場に欠材が生じると、設備の処理対象材が不足するため、設備の稼働停止を引き起こす。また、設備にて処理された処理完了材を保管する後面置場がひっ迫すると、設備から処理完了材を払い出すことができなくなり、設備の稼働率を低下させることにつながる。このため、製鉄プロセスにおける物流をグラフにより可視化することで、ボトルネックとなっている設備や置場、搬送機器を特定することができ、生産性を向上させるために必要な対策を検討することができる。
【0004】
ここで、グラフ化対象のネットワークのすべての構成やつながりをそのままグラフに表すと、ネットワークが複雑であるほどグラフは煩雑となり、グラフの視認性は低下する。また、作成されたグラフに基づきシミュレーションを実施する場合には、シミュレーション負荷も増大する。このため、グラフの情報が欠落しないように、グラフのノードを集約または削除してグラフを単純化することが行われている。
【0005】
例えば、大規模グラフから特徴的な部分グラフを発掘するネットワーク分析技術がある。ネットワーク分析技術の手法として、例えばグラフ理論の分野では、クラスタ内のエッジ数が最大となりクラスタ間のエッジが最小となるようにノードを分割するMin-cut法においてそのクラスタリングの質を表す指標(モジュラリティ)を最大化することでグラフを単純化する手法が提案されている。また、特許文献1には、入力されたグラフデータに含まれるエッジを1本しか持たないノードを、該ノードと隣接するノードと同一のクラスタとみなし、1つのノードに集約する手法が開示されている。特許文献2には、グラフのノードをN個の群に分割し、そのN個の群からモジュラリティによってグラフをクラスタに分類し、クラスタが同一である複数のノードを1つのノードに集約する手法が開示されている。
【0006】
また、実績データからプロセスの構造をネットワークとして推定する技術として、プロセスマイニング技術がある。プロセスマイニング技術においてもネットワークを単純化する手法が検討されており、例えば、非特許文献1では、頻度の低いノードやエッジを削除したり集約したりする手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-156698号公報
【特許文献2】特開2017-204161号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Christian W. Gueunther and Wil M.P. van der Aalst “Fuzzy Mining - Adaptive Process Simplification Based on Multi-perspective Metrics”, Business Process Management. BPM 2007. Lecture Notes in Computer Science, vol 4714. [令和4年9月22日検索]、インターネット〈URL:https://doi.org/10.1007/978-3-540-75183-0_24〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1、特許文献2等に記載のネットワーク分析技術は、2つのノード間の関係性にのみ着目して、グラフの構造をクラスタリングの質を表す指標に従って集約するものである。このため、上記特許文献1、特許文献2等に記載の手法によって単純化したグラフは、ノードの通過順序を考慮しておらず、元のグラフが物流ネットワーク等のように通過する順序及び流れのあるネットワークを表すものである場合には、元のグラフの情報の欠落が生じる。
【0010】
また、上記非特許文献1等に記載のプロセスマイニング技術では、ノードの役割を考慮せずにノードやエッジの削除や集約が行われる。このため、元のグラフが物流ネットワーク等のように通過する順序及び流れのあるネットワークを表すものである場合には、上記非特許文献1に記載の手法によって単純化したグラフは、実際にはあり得る流れが欠落したり、異なる役割のノードが集約されたりしている可能性があり、実際のネットワークを表すグラフからの乖離が大きくなる。
【0011】
このように、ネットワークを表すグラフにおいては、単純化したグラフが元のグラフの情報を維持している程度(すなわちグラフによるデータの再現性)が低いこともあり得る。単純化したグラフが元のグラフの情報を維持できていない場合には、単純化したグラフを用いてネットワークの状態を正しく認識できなかったり、分析の精度が低下したりする。このため、単純化したグラフについて、当該グラフによるデータの再現性を評価する手法が望まれている。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ノード及びエッジを用いて表したグラフによるデータの再現性を評価することが可能な、グラフ評価装置、グラフ評価方法及びプログラムと、これらにより得られた情報を処理する処理装置及び処理方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、ノード及びエッジを用いて表すグラフ構造とグラフ構造のノード通過パターン毎の発生確率を表す確率パラメータとにより表されるグラフモデルを評価するための指標を算出する評価指標算出処理部を備え、評価指標算出処理部は、ノード通過パターン毎の確率パラメータに基づいて、グラフモデルにおける実績のノード通過パターンである実績通過パターンの尤度を算出する尤度算出部と、実績通過パターンの尤度に基づいて、実績通過パターンの再現性を評価するための第1評価指標を算出する評価指標算出部と、を有する、グラフ評価装置が提供される。
【0014】
確率パラメータは、実績通過パターンの尤度が最大となるように設定された値であり、評価指標算出部は、第1評価指標として、実績通過パターンの最大尤度または最大対数尤度を算出してもよい。
【0015】
確率パラメータは、スムージングされたノード通過パターンに含まれる実績通過パターンの発生回数に基づき、実績通過パターンの尤度が最大となるように設定された値であり、評価指標算出部は、ノード通過パターンそれぞれのスムージング後の発生回数に基づいて、実績通過パターンの最大尤度または最大対数尤度を算出してもよい。
【0016】
評価指標算出処理部は、実績データから実績通過パターンを生成する実績通過パターン生成部と、グラフモデルのグラフ構造に基づいて、ノード通過パターンを生成するノード通過パターン生成部と、グラフモデルのノード通過パターン毎の確率パラメータを設定する確率パラメータ設定部と、を有してもよい。
【0017】
評価指標算出部は、グラフモデルに含まれるノード通過パターンの数と重み係数とによってグラフモデルの複雑度を表した第2評価指標を算出してもよい。
【0018】
評価指標算出部は、第1評価指標と第2評価指標との和を、グラフモデルの評価指標として算出してもよい。
【0019】
グラフ評価装置は、評価指標に基づいて、グラフモデルの再現性と複雑度とに基づき目的に最も合致する最適グラフモデルを探索する探索部を備えてもよい。このとき、評価指標算出処理部は、異なる複数のグラフモデルそれぞれについて、評価指標を算出し、探索部は、複数のグラフモデルのうち、評価指標が最小のグラフモデルを、最適グラフモデルとする。
【0020】
評価指標算出処理部は、第1評価指標を算出したグラフモデルのグラフ構造、確率パラメータ、または、グラフモデルを評価するための指標のうち、少なくともいずれか1つを処理装置に出力してもよい。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上述のグラフ評価装置によって算出されるグラフモデルのグラフ構造、確率パラメータ、または、グラフモデルを評価するための指標のうち、少なくともいずれか1つを受信し、受信した情報を処理する、処理装置が提供される。
【0022】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、グラフ評価装置によるグラフ評価方法であって、ノード及びエッジを用いて表すグラフ構造とグラフ構造のノード通過パターン毎の発生確率を表す確率パラメータとにより表されるグラフモデルについて、ノード通過パターン毎の確率パラメータに基づいて、実績のノード通過パターンである実績通過パターンの尤度を算出する尤度算出ステップと、グラフモデルを評価するための指標として、実績通過パターンの尤度に基づいて、グラフモデルによる実績通過パターンの再現性を評価するための第1評価指標を含む評価指標を算出する第1評価指標算出ステップと、を含む、グラフ評価方法が提供される。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上述のグラフ評価方法によって算出されるグラフモデルのグラフ構造、確率パラメータ、または、グラフモデルを評価するための指標のうち、少なくともいずれか1つを受信し、受信した情報を処理する、処理方法が提供される。
【0024】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータに、ノード及びエッジを用いて表すグラフ構造とグラフ構造のノード通過パターン毎の発生確率を表す確率パラメータとにより表されるグラフモデルについて、ノード通過パターン毎の確率パラメータに基づいて、実績のノード通過パターンである実績通過パターンの尤度を算出すること、グラフモデルを評価するための指標として、実績通過パターンの尤度に基づいて、グラフモデルによる実績通過パターンの再現性を評価するための第1評価指標を算出すること、を実行させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明によれば、ノード及びエッジを用いて表したグラフによるデータの再現性を評価することが可能となる。かかる過程で得られた情報は、グラフの評価結果の提示やネットワークの分析、シミュレーション等の処理に活用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】物流ネットワークを表すグラフと単純化グラフとの一例を示す説明図である。
【
図2】本発明におけるグラフによるデータの再現性を評価する手法を説明するフローチャートである。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るグラフ評価装置の機能ブロック図である。
【
図4】同実施形態に係るグラフ評価方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】コイルの物流ネットワークの実績データの一例を示す説明図である。
【
図6】
図5の実績データから作成される、元のグラフ及び単純化グラフの一例を示すグラフである。
【
図7】グラフ構造データの一例として、グラフAのグラフ構造を行列化した隣接行列を示す説明図である。
【
図8】実績通過パターンの一例として、グラフAの実績通過パターンを示す表である。
【
図9】ノード通過パターンの一例として、グラフBのノード通過パターンを示す表である。
【
図10】グラフBについて、ノード通過パターン毎の確率パラメータとして算出した最尤推定値を示す表である。
【
図11】グラフBについて、実績通過パターンの尤度及び対数尤度を算出した結果を示す表である。
【
図12】本発明の第2の実施形態に係るグラフ評価装置の機能ブロック図である。
【
図13】同実施形態に係るグラフ評価方法の一例を示すフローチャートである。
【
図14】グラフBの近傍解として得られる単純化グラフ(グラフC~I)のグラフ群の一例を示す説明図である。
【
図15】グラフA~Iについて評価指標の値を示す棒グラフである。
【
図16】本発明のグラフ評価装置として機能する情報処理装置のハードウェア構成図の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
[1.概要]
本発明は、ノード及びエッジを用いて表すグラフ構造と、グラフ構造のノード通過パターン毎の発生確率を表す確率パラメータとにより表されるグラフモデルを評価する手法に関するものである。
【0029】
例えば、製鉄プロセスにおける、製品(中間材)が設備や置場、搬送機器のどのような工程を経て流通するかを表す物流ネットワークをグラフとして可視化することにより、設備の稼働率の低下等の生産量を低下させるボトルネック要因となっている工程を特定することが可能となる。
図1に、物流ネットワークを表すグラフGoと、グラフGoを単純化した単純化グラフGsとの一例を示す。
図1左側のグラフGoは、設備や置場、搬送機器等の、対象となるすべての要素(ノード)同士の物流におけるつながり(エッジ)をそのままグラフに表している。製鉄プロセスの物流ネットワークのような複雑なネットワークでは、グラフGoは情報を正確に表しているものの煩雑となり、一見してボトルネック要因となっている工程を特定するのは難しい。そこで、ノードやエッジを削除したり集約したりしてグラフGoが表すネットワークの要素やつながり等を単純化し、モデル化することによって、ボトルネック要因である工程及びこれに影響を及ぼす工程の視認性を高めている。
【0030】
例えば
図1右側に示すように、ボトルネック要因である工程及びこれに影響を及ぼす工程のノード(○、□、◇)とこれらのノード間のつながりを示すエッジとによってグラフGoを単純化した単純化グラフGsを作成する。エッジの線の太さは物流量を表し、線が太いほど物流量が多いことを表している。このような単純化グラフGsを用いれば、物が集中している工程を容易に特定することができ、ボトルネックを解消するための対策を検討することができる。
【0031】
ここで、単純化グラフGsは、ノードやエッジの集約、削除によって作成されるものであるため、元のグラフGoの情報が欠落したり、実際にはあり得ない情報が含まれたりする可能性がある。単純化グラフGsが元のグラフGoの情報を維持できていない場合には、単純化グラフGsを用いてネットワークの状態を正しく認識できなかったり、分析の精度が低下したりする。そこで、本発明では、ノード及びエッジを用いて表された評価対象のグラフ(例えば、単純化グラフGs等)のグラフ構造と、当該グラフ構造のノード通過パターン毎の発生確率を表す確率パラメータとにより表されるグラフモデルの再現性を評価する手法を提案する。
【0032】
図2に、本発明におけるグラフモデルの再現性を評価する手法の流れを示す。
【0033】
まず、
図2に示すように、グラフモデルのノード通過パターン毎の発生確率を表す確率パラメータに基づいて、グラフモデルにおける実績通過パターンの尤度を算出する(S10)。評価するグラフモデルは、ノード及びエッジを用いて表すグラフ構造と、グラフ構造のノード通過パターン毎の発生確率を表す確率パラメータとにより表されている。ノード通過パターンとは、ノード及びエッジにより表した経路であり、例えば物流ネットワークでは物が工程を通過する順序を示している。つまり、ノード通過パターンとは、グラフ構造に存在する経路とも言える。また、確率パラメータとは、グラフモデルのノード通過パターンが実際に発生し得る確率を示している。確率パラメータの値は、任意に設定し得る値であり、例えば実績通過パターンの尤度が最大となるように設定された値(すなわち、最尤推定値)を用いてもよい。ステップS10では、グラフモデルにより表されているすべてのノード通過パターン毎の確率パラメータに基づいて、実績通過パターンの尤度を算出する。
【0034】
次いで、ステップS10にて算出された実績通過パターンの尤度に基づいて、グラフモデルを評価するための指標として、グラフモデルの再現性を評価する第1評価指標を算出する(S20)。ここで、グラフモデルの再現性とは、当該グラフモデルに基づき実績データを示したときに、元となる実績データを維持する度合いをいう。実績データは、グラフ構造(グラフ)により表そうとする実際のネットワークにおいて実績のある経路を示す経路情報(後述する
図5参照)を含むデータである。なお、グラフモデルに基づき示す実績データと、元となる実績データとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。第1評価指標は、例えば最大尤度、最大対数尤度等により表すことができる。単純化グラフGsのグラフモデルについて第1評価指標を算出することで、例えば元のグラフGoの第1評価指標からの差分からは情報の欠落の程度を知ることができ、他のグラフモデルの第1評価指標との差分からはより再現性の高いグラフモデルを特定することができる。
【0035】
以下、本発明の一実施形態に係るグラフ評価装置及びこれによるグラフ評価方法について、具体的に説明していく。
【0036】
[2.第1の実施形態]
[2-1.グラフ評価装置]
まず、
図3に基づいて、本発明の第1の実施形態に係るグラフ評価装置100について説明する。
図3は、本実施形態に係るグラフ評価装置100の機能ブロック図である。本実施形態に係るグラフ評価装置100は、
図3に示すように、実績データ取得部110と、グラフ取得部120と、評価指標算出処理部130と、を有する。
【0037】
(実績データ取得部)
実績データ取得部110は、ネットワークにおける実績データを記憶する実績データ記憶部210から、実績データを取得する。実績データ記憶部210は、グラフのノード及びエッジにより表される工程の通過順序を、実績データとして記憶している。例えば、実績データ記憶部210は、製鉄プロセスにて製造されるコイルが通過した工程の順序を、実績データとして記憶する(後述する
図5参照)。実績データ取得部110は、取得した実績データをグラフ取得部120へ出力する。
【0038】
(グラフ取得部)
グラフ取得部120は、評価対象のグラフモデルのグラフ構造を表すグラフ構造データを取得する。グラフ構造は、ノード及びエッジを用いてノード間の関係性を表す情報である。グラフ構造は、ノード及びエッジにより表される有向グラフを表す。
【0039】
グラフ取得部120は、例えば、グラフ構造データ記憶部220から作成済みのグラフ構造データを取得してもよい。グラフ構造データ記憶部220は、異なる複数のグラフ構造データを記憶している。これらのグラフ構造データは、ネットワークを表すグラフのノードやエッジを集約したり削除したりして単純化した、異なる複数のグラフモデルのグラフ構造を表している。グラフ構造データ記憶部220が記憶するグラフ構造データは、ユーザが作成したものであってもよく、グラフのノードやエッジを集約したり削除したりするブログラムを実行して元のグラフのグラフ構造から自動的に作成されたものであってもよい。
【0040】
あるいは、グラフ取得部120は、実績データ取得部110が取得した実績データから得られる元のグラフのグラフ構造に基づき、ノードやエッジを集約したり削除したりしてグラフモデルのグラフ構造を作成することによって、グラフ構造データを取得してもよい。
【0041】
グラフ取得部120は、例えばグラフ構造を行列化した隣接行列(後述する
図7参照)を、グラフ構造データとして取得してもよい。グラフ取得部120は、取得したグラフ構造データを、評価指標算出処理部130へ出力する。
【0042】
(評価指標算出処理部)
評価指標算出処理部130は、グラフモデルを評価するための指標として、グラフモデルの再現性を評価するための第1評価指標を算出する。評価指標算出処理部130は、まず、グラフ取得部120により取得したグラフ構造データについて、ノード通過パターン毎の確率パラメータを設定する。確率パラメータは、任意の値に設定してもよく、例えば実績通過パターンの尤度が最大となるように設定された値であってもよい。
【0043】
実績通過パターンの尤度が最大となる確率パラメータの値は、例えば最尤推定法を用いて算出することができる。具体的には、評価指標算出処理部130は、まず、実績データ取得部110により取得された実績データから、元のグラフに示されている実際に発生したノード通過パターン(すなわち、実績通過パターン)を作成する。そして、評価指標算出処理部130は、これらの実績通過パターンが、グラフモデルの各ノード通過パターンにおいて発生する発生確率を算出し、各ノード通過パターンの確率パラメータの値とする。
【0044】
このようにノード通過パターン毎の確率パラメータを設定した後、評価指標算出処理部130は、設定した確率パラメータに基づいて、グラフモデルにおける実績通過パターンの尤度を算出する。実績通過パターンの尤度は、実績通過パターンのノード通過パターン毎の確率パラメータを、当該ノード通過パターンに含まれるパターンの種類数で割った値で表し得る。尤度は、対数尤度であってもよい。
【0045】
そして、評価指標算出処理部130は、算出した実績通過パターンの尤度に基づいて、グラフモデルの再現性を評価する第1評価指標を算出する。評価指標算出処理部130は、グラフモデルについてのみ第1評価指標を算出してもよく、グラフモデル及び元のグラフの第1評価指標を算出してもよい。確率パラメータが実績通過パターンの尤度が最大となるように設定された値であるとき、評価指標算出処理部130は、第1評価指標として、例えば最大尤度またはその対数である最大対数尤度等を算出してもよい。
【0046】
このような処理を行う評価指標算出処理部130は、例えば
図3に示すように、実績通過パターン生成部131と、ノード通過パターン生成部133と、確率パラメータ設定部135と、尤度算出部137と、評価指標算出部139と、を有する。
【0047】
実績通過パターン生成部131は、実績データ取得部110により取得された実績データから、実績通過パターンの集合を生成する。ノード通過パターン生成部133は、グラフ取得部120により取得したグラフ構造データに基づき、グラフモデルのノード通過パターンを生成する。確率パラメータ設定部135は、ノード通過パターン生成部133により生成されたグラフモデルのノード通過パターン毎の確率パラメータを設定する。尤度算出部137は、確率パラメータ設定部135により設定された確率パラメータを用いて、実績通過パターンの尤度を算出する。評価指標算出部139は、グラフモデルを評価する指標を算出する。評価指標算出部139は、例えば、尤度算出部137により算出された実績通過パターンの尤度に基づいてグラフモデルの第1評価指標を算出する。
【0048】
評価指標算出処理部130は、算出したグラフモデルを評価するための指標(本実施形態では、第1評価指標)を、表示装置300へ出力する。なお、評価指標算出処理部130は、算出したグラフモデルのグラフ構造、確率パラメータ、または、グラフモデルを評価するための指標のうち、少なくともいずれか1つを表示装置300へ出力するものであればよい。したがって、評価指標算出処理部130は、作成したグラフ構造を表示装置300へ出力してもよく、グラフ構造及び評価指標の両方を表示装置300へ出力してもよい。
【0049】
表示装置300は、例えばディスプレイ等であり、グラフ評価装置100に通信可能に接続されている。表示装置300は、例えば、グラフモデルを評価するユーザ等に対して、グラフ評価装置100が算出した第1評価指標を出力する。これにより、ユーザは、グラフモデルの第1評価指標に基づき、グラフモデルの再現性を定量的に評価することができる。また、グラフ構造を表示装置300に出力することで、ユーザは、表示装置300に表示されたグラフから、各時点におけるネットワークの状態を容易に把握できる。
【0050】
グラフ評価装置100は、実績データが更新されたタイミングや定期的なタイミング等の、所定のタイミングで処理を実行し、実績データの取得から評価指標に基づいてグラフ構造を作成し、表示装置300に出力してもよい。これにより、ユーザは、最新のグラフ構造を確認することができる。したがって、ボトルネック要因となっている工程の特定等、リアルタイムにネットワークの分析を行うことができる。
【0051】
なお、本実施形態では、グラフ評価装置100は、
図3に示すように、表示装置300に第1評価指標等の情報を出力したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、グラフ評価装置100は、評価指標算出処理部130から出力される情報を処理する処理装置へ、情報を出力してもよい。処理装置は、グラフ評価装置100によって算出されるグラフモデルのグラフ構造、確率パラメータ、または、グラフモデルを評価するための指標のうち、少なくともいずれか1つを受信し、受信した情報を処理する。
【0052】
処理装置は、グラフ評価装置100に直接または通信ネットワークを介して接続される装置(後述の
図16参照)であって、
図16の出力装置923、リムーバブル記録媒体925、外部機器927、または、通信網929を介して接続されている外部の情報処理装置931である。
図3に示した表示装置300は、処理装置の一例であって、
図16の出力装置923に対応する。表示装置300は、グラフ評価装置100から受信した情報の表示処理を行い、グラフや評価指標を画面に表示する。また、例えば、処理装置は、物流ネットワークを分析する分析装置や物流をシミュレーションするシミュレーション装置等であってもよい。分析装置及びシミュレーション装置は、例えば、
図16の通信網929を介して接続されている外部の情報処理装置931であってもよい。
【0053】
なお、本発明に係るグラフ評価装置100は、グラフモデルを評価する指標(本実施形態では、第1評価指標)を算出できる機能を有するものであればよいため、少なくとも評価指標算出処理部130の尤度算出部137及び評価指標算出部139を備えていればよい。本実施形態では、グラフ評価装置100は、グラフ取得部120によって取得されたグラフ構造に対して、確率パラメータ設定部135によりノード通過パターン毎の確率パラメータを設定して生成されたグラフモデルを評価している。しかし、本発明はかかる例に限定されず、グラフ評価装置100は、他の装置によって生成されたグラフモデルを評価してもよい。したがって、実績データ取得部110、グラフ取得部120、実績通過パターン生成部131、ノード通過パターン生成部133、及び、確率パラメータ設定部135は、グラフ評価装置100とは異なる、1または複数の装置により構成されていてもよい。
【0054】
グラフ評価装置100の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作成し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0055】
[2-2.グラフ評価方法]
次に、
図4に基づいて、本実施形態に係るグラフ評価方法について説明する。
図4は、本実施形態に係るグラフ評価方法の一例を示すフローチャートである。以下の説明では、具体例として、製鉄プロセスにて製造されるコイルの物流ネットワークを考える。当該物流ネットワークを表すグラフは、製造過程においてコイルが通過する工程(設備、置場、搬送機器)の通過順序を表している。
【0056】
(S100:実績データ取得)
まず、
図4に示すように、実績データ取得部110は、実績データ記憶部210から、実績データを取得する(S100)。実績データ記憶部210は、ネットワークにおける実績データを記憶している。
図5に、コイルの物流ネットワークの実績データの一例を示す。
【0057】
図5に示す実績データは、コイルが順に通過する3つの工程を表しており、コイルの識別番号であるコイル番号(CoilNo)と、コイルが通過する第1工程、第2工程、第3工程とが関連付けられている。例えば、コイル番号C0000のコイルは、工程A(ノードA)、工程AGV1(ノードAGV1)、工程C(ノードC)の順に工程を通過することを表している。実績データ取得部110は、実績データ記憶部210から、所定数あるいは所定期間の実績データを取得して、グラフ取得部120へ出力する。
【0058】
(S110:グラフ構造データ取得)
次いで、グラフ取得部120は、評価対象のグラフモデルのグラフ構造を表すグラフ構造データを取得する(S110)。グラフ構造は、ノード及びエッジを用いてノード間の関係性を表した有向グラフを表す。グラフ取得部120は、例えば、グラフ構造データ記憶部220から作成済みのグラフ構造データを取得してもよい。あるいは、グラフ取得部120は、実績データ取得部110が取得した実績データから得られる元のグラフのグラフ構造に基づき、ノードやエッジを集約したり削除したりしてグラフモデルのグラフ構造を作成することによって、グラフ構造データを取得してもよい。また、実績データ取得部110は、要素やつながりをそのまま表した元のグラフのグラフ構造データも取得してもよい。
【0059】
例えば
図6に示す、
図5のすべての実績データの要素やつながりをそのまま表したグラフA(元のグラフ)と、グラフAを単純化してモデル化したグラフB(単純化グラフ)とを考える。グラフA、Bにおいて、ノードを連結するエッジに対応して記載された数字は、エッジにより連結されたノード(工程)間を移動したコイル数を表している。グラフBは、グラフAのノードAGV1とノードAGV2とが集約されたグラフ構造により表された単純化グラフである。単純化グラフは、元のグラフよりもノード数またはエッジ数が少ないグラフである。
【0060】
ステップS110では、グラフ取得部120は、グラフA、Bのノード及びエッジの関係性を表すグラフ構造データGを取得する。グラフ構造データGの一例として、
図7に、
図6のグラフAのグラフ構造を行列化した隣接行列を示す。なお、グラフ構造データGの形式は隣接行列に限定されず、グラフ構造を再現可能な情報であればよい。また、グラフ構造から再現されるノード通過パターンがステップS100で取得した実績データに含まれる通過パターンを1つも再現しない場合は、後述する第1評価指標を正しく計算することができない。このため、グラフ構造データGは、ステップS100で取得した実績データに含まれる通過パターンを少なくとも1つは再現できるものとする。
【0061】
グラフ取得部120は、取得したグラフ構造データを、評価指標算出処理部130へ出力する。
【0062】
(S120-S160:第1評価指標の算出)
そして、評価指標算出処理部130は、グラフモデルの再現性を評価するための第1評価指標を算出する。
【0063】
まず、実績通過パターン生成部131は、実績データ取得部110により取得された実績データから、元のグラフのノード通過パターン(実績通過パターン)を生成する(S120)。
【0064】
例えば、
図5に示した実績データにおいて、各実績データにより特定されるコイルが工程を通過するパターンを、通過パターンeとする。通過パターンeは、コイルが通過する第1工程、第2工程、第3工程を連結した情報である。例えば、コイル番号C0000のコイルの通過パターンe
1は、「A-AGV1-C」のように表される。通過パターンeの集合をE={e
1,・・・,e
I}とする。なお、Iは、取得した実績データ数(すなわちコイル数)を表す。
図5の例では、I=50となる。
【0065】
実績通過パターン生成部131は、実績データ取得部110により取得された実績データから、実績通過パターンの集合P={p
1,・・・,p
J}を生成する。ここで、各実績通過パターンの発生回数をN={N
0,・・・,N
J}∈R
Jとする。Jは、実績データから作成される実績通過パターン数である。例えば、ステップS100にて
図5の実績データが取得されたとき、実績通過パターン生成部131は、
図6のグラフAに含まれる実績通過パターンとして、
図8に示す6パターン(すなわち、J=6)の実績通過パターンp
1~p
6を取得する。実績通過パターンの集合は、P={A-AGV1-C,A-AGV2-C,A-AGV2-E,B-AGV3-D,B-AGV4-D,B-AGV5-D}となる。このとき、各実績通過パターンの発生回数は、N={10,5,5,10,10,10}となる。このように、実績通過パターンをその種類毎にまとめることにより、実績通過パターン数Jを小さくすることができ、計算負荷を軽減することができる。
【0066】
次いで、ノード通過パターン生成部133は、ステップS110においてグラフ取得部120により取得したグラフ構造データに基づき、グラフモデルのノード通過パターンを生成する(S130)。ノード通過パターン生成部133は、例えば、グラフ構造データが有する始点と終点とを持った有向グラフにおいて、始点から終点までの経路を列挙する等して、グラフモデルのノード通過パターンを生成する。
【0067】
ここで、ノード通過パターンの集合をQ={q
1,・・・,q
K}とする。Kは、グラフ構造データに基づき作成されたグラフモデルにおけるノード通過パターン数である。例えば、
図6のグラフBのグラフ構造に含まれるノード通過パターンは、
図9に示す5パターン(すなわち、K=5)の実績通過パターンq
1~q
5となる。これらのノード通過パターンの集合は、Q={A-<AGV1,AGV2>-C,A-<AGV1,AGV2>-E,B-AGV3-D,B-AGV4-D,B-AGV5-D}となる。
【0068】
そして、確率パラメータ設定部135は、グラフモデルのノード通過パターン毎の確率パラメータを設定する(S140)。グラフモデルの確率パラメータθ={θ1,・・・,θK}∈RKの値は、任意に設定し得る値であり、例えば実績通過パターンのノード通過パターン毎の発生確率を設定してもよい。ここでは、実績通過パターンを最も再現し得るグラフモデルを得るため、確率パラメータθとして、最尤推定法に基づき実績通過パターンの尤度が最大となるように設定された値(すなわち、最尤推定値)θMLを用いる。確率パラメータθとして用いる最尤推定値θML
h(j)は、下記式(1)で表される。
【0069】
【0070】
なお、上記式(1)において、ノード通過パターンqkに含まれる実績通過パターンの種類数をC={c1,・・・,cK}∈RK、ノード通過パターンqkに含まれる実績通過パターンをEKとし、実績通過パターンの数を|EK|と表す。また、実績通過パターンpjのインデックスjから当該実績通過パターンが含まれているノード通過パターンqkのインデックスkを返す関数をh(j)とする。すなわち、関数h(j)は、入力されたインデックスjの実績通過パターンpjに対応するノード通過パターンqkのインデックスkを出力する。
【0071】
ここで、グラフモデルのグラフ構造データGのグラフ構造によっては、実績通過パターンを再現できないノード通過パターンが存在する場合がある。例えば、多くのノードを集約したグラフモデルには、このようなグラフ構造が生じる。この場合、関数h(j)を計算することができなくなり、確率パラメータθとして用いる最尤推定値θMLの算出もできなくなる。
【0072】
そこで、予めラプラススムージング等を用いてスムージングを行うことにより、実績通過パターンを再現できない場合でも最尤推定値θMLを算出できるようにしてもよい。具体的には、関数h(j)を計算することができないインデックスjに対して、関数h(j)は0を返すようにする。つまり、関数h(j)は、入力されたインデックスjの実績通過パターンpjに対応するノード通過パターンqkがある場合にはそのインデックスkを出力するが、入力されたインデックスjの実績通過パターンに対応するノード通過パターンがない場合には0を出力する。このとき最尤推定値θML
h(j)は、下記式(2)により表すことができる。
【0073】
【0074】
なお、スムージングの手法は、ラプラススムージング以外のスムージングであってもよい。
【0075】
図10に、
図6のグラフBについて、ノード通過パターン毎の確率パラメータθとして最尤推定値θ
ML
h(j)を上記式(2)に基づき算出した結果を示す。
図10に示すように、
図9に示した5つのノード通過パターンそれぞれの最尤推定値θ
ML
h(j)が算出される。このように最尤推定値θ
ML
h(j)を算出して確率パラメータθとして設定することで、実績通過パターンを最も再現し得るグラフモデルを得ることができる。
【0076】
このようにノード通過パターン毎の確率パラメータを設定した後、尤度算出部137は、確率パラメータ設定部135が設定した確率パラメータに基づいて、グラフモデルにおける実績通過パターンの尤度を算出する(S150)。実績通過パターンの尤度は、実績通過パターンのノード通過パターン毎の確率パラメータを、当該ノード通過パターンに含まれるパターンの種類数で割った値で表し得る。尤度は、対数尤度であってもよい。
【0077】
図11に、
図6のグラフBについて、実績通過パターンの尤度及び対数尤度を算出した結果を示す。
図11に示す通過パターンは、
図6のグラフBに含まれるすべてのノード通過パターンを示しており、7つの実績通過パターンを再現することを表している。再現される実績通過パターンそれぞれについて、ステップS100にて取得した実績データにおける実績通過パターンの発生回数、関数h(j)が出力したノード通過パターンq
kのインデックスk、対応するノード通過パターンに含まれる実績通過パターンの種類数C
h(j)は、
図11に示す値となる。なお、
図11に示す表において、再現される実績通過パターン「A-AGV1-E」ではh(j)=0となる。このとき、c
0は、h(j)=0となるインデックスjの個数を示している。
図10に示した確率パラメータ(最尤推定値θ
ML
h(j))及び対応するノード通過パターンに含まれる実績通過パターンの種類数C
h(j)から、実績通過パターンの尤度及び対数尤度が算出される。
【0078】
ステップS150にて算出した実績通過パターンの尤度または対数尤度は、実績データが、評価対象のグラフモデルのモデル構造に含まれる各ノード通過パターンにおいて、どの程度発生し得るかを表している。
【0079】
その後、評価指標算出部139は、ステップS150にて尤度算出部137が算出した実績通過パターンの尤度に基づいて、グラフモデルの第1評価指標を算出する(S160)。例えば、評価指標算出部139は、第1評価指標として最大尤度または最大対数尤度を算出してもよい。最大尤度MLは下記式(3-1)で表され、最大対数尤度MLLは、下記式(3-2)で表される。下記式(3-1)または式(3-2)では確率パラメータθとして最尤推定値θML
h(j)を用いているが、確率パラメータθの値は、任意に設定し得る。例えば、最尤推定値θML
h(j)の代わりに、確率パラメータθの値として、解析対象期間とは別期間の実績データから学習して得られた値を用いてもよく、ユーザが設定した値を用いてもよい。
【0080】
【0081】
例えば、
図11に示した
図6のグラフBについての実績通過パターンの尤度から、上記式(3-1)を用いて最大尤度MLを算出すると、8.122667668864×10
-6となる。すなわち、最大尤度MLを第1評価指標とした場合、グラフBの第1評価指標は8.122667668864×10
-6となる。また、
図11に示した
図6のグラフBについての実績通過パターンの対数尤度から、上記式(3-2)を用いて最大対数尤度MLLを算出すると、-92.646となる。すなわち、最大対数尤度MLLを第1評価指標とした場合の、グラフBの第1評価指標は-92.646となる。
【0082】
なお、ステップS140においてノード通過パターンの発生回数に対してスムージングが行われた場合には、評価指標算出部139は、ノード通過パターンそれぞれのスムージング後の発生回数に基づき最大尤度または最大対数尤度を算出する。評価指標算出部139は、算出したグラフモデルの第1評価指標を、表示装置300へ出力する。
【0083】
以上、本実施形態に係るグラフ評価方法について説明した。
【0084】
[2-3.評価指標を用いた再現性の評価]
グラフモデルを評価するユーザは、表示装置300に出力されたグラフモデルの第1評価指標に基づき、当該グラフモデルの再現性を定量的に評価することができる。第1評価指標を用いることで、例えば以下のような評価を行うことができる。
【0085】
(a.単純化グラフによる元のグラフのデータの再現性)
例えば、第1評価指標を用いて、単純化グラフによる元のグラフのデータの再現性を評価することができる。第1評価指標を用いれば、例えば
図6に示したグラフB(単純化グラフ)が、実績データをそのまま表した元のグラフAをどの程度再現しているかを、評価することができる。このとき、グラフBのグラフモデルが実績通過パターンを最も再現し得るように、グラフモデルの確率パラメータθとして、最尤推定値θ
MLを用いるのがよい。すなわち、グラフ構造と実績データDとに基づき算出した最尤推定値θ
MLを確率パラメータθとして、当該グラフ構造と確率パラメータθで表されるグラフモデルによる実績データDの再現性を、第1評価指標を用いて評価する。
【0086】
この場合、第1評価指標は、ノードやエッジを集約したり削除したりしない元のグラフの値が最良となる。そこで、元のグラフのグラフモデルについて算出された第1評価指標から、単純化グラフのグラフモデルについて算出された第1評価指標がどの程度悪化するかを確認することで、単純化グラフによる元のグラフのデータの再現性を相対的に評価することができる。
【0087】
例えば、最大対数尤度を第1評価指標とした場合、元のグラフの最大対数尤度が最も大きく、単純化グラフの最大対数尤度は元のグラフの最大対数尤度よりも小さくなる。具体例として、元のグラフ及び単純化グラフa~fについて、下記表1に示すような最大対数尤度が得られたとする。
【0088】
【0089】
表1に示す例では、単純化グラフのうち最も最大対数尤度が大きい単純化グラフfが、元のグラフのデータの再現性が最も高く、適切なノードの集約、削除が行われているグラフといえる。一方、著しく最大対数尤度が小さい単純化グラフcは、元のグラフのデータの再現性が低く、元のグラフの情報が維持できていない可能性が高いと考えられる。このように、第1評価指標により、単純化グラフによる元のグラフのデータの再現性を評価することができる。
【0090】
(b.ネットワークの状況変化の評価)
また、例えば、ネットワークを表すグラフモデルの第1評価指標を用いて、当該ネットワークの状況の変化を評価することができる。例えば、ネットワークを表すグラフ構造のグラフモデルに基づき、所定の周期で(例えば1カ月ごとに)得られた実績データに基づき第1評価指標を算出する。こうして得られる第1評価指標の時系列データから、第1評価指標が大きく低下した場合には、ネットワークを表すグラフにおいて要素を通過する順序や流れが変化している(例えば、物流ネットワークにおいて物流の状況が変化している)と考えられ、ネットワークに異常が発生した可能性があると推察できる。
【0091】
このとき、ネットワークを表すグラフモデルが当該ネットワークにおいて得られた実績通過パターンを最も再現し得るように、グラフモデルの確率パラメータθとして、最尤推定値θMLを用いるのがよい。すなわち、グラフ構造と実績データDとに基づき算出した最尤推定値θMLを確率パラメータθとして、当該グラフ構造と確率パラメータθで表されるグラフモデルによる別の実績データD’の再現性を、第1評価指標を用いて評価する。
【0092】
例えば、物流ネットワークを表すグラフ構造のグラフモデルに基づき、表2に示すように、月別の実績データから、第1評価指標として最大対数尤度を算出する。ここで、2022年4月を基準とする場合、2022年4月に取得された実績データを用いて算出した最尤推定値θMLを確率パラメータθとして物流ネットワークのグラフモデルを作成する。そして、当該グラフモデルにおいて、第1評価指標を用いて他の月の実績データがどの程度再現されるかを評価することにより、物流ネットワークにおける物流の変化を評価する。例えば、表2においては、2022年9月以降、第1評価指標が小さくなっている。これは、基準とした2022年4月のグラフモデルでは実績データの再現性が低下しており、物流に変化が生じているためと推察される。これより、物流ネットワークに異常が発生している可能性を検知できる。また、物流ネットワークの変化から、基準とするグラフモデルの変更が必要である可能性も検知し得る。
【0093】
【0094】
(c.変更したグラフモデルによる再現性の評価)
さらに、例えば、グラフモデルの確率パラメータを任意に変化したときに、グラフモデルによる実績データの再現性がどのように変化するかを、第1評価指標を用いて評価することができる。すなわち、グラフ構造と実績データDとに基づき算出した最尤推定値θMLを確率パラメータθとしたグラフモデルについて、確率パラメータθを任意に変化させた後のグラフモデルによる実績データDの再現性を、第1評価指標を用いて評価する。
【0095】
例えば物流ネットワークを表すグラフモデルにおいて、確率パラメータθとして、グラフ構造と実績データDとに基づき算出した最尤推定値θMLの値が設定されているとする。このとき、オペレータが現実の理想的な物流条件に合わせるために確率パラメータθの値の少なくとも一部を変更し、変更後のパラメータにより表されるグラフモデルの第1評価指標を実績データDについて算出する。このように算出した第1評価指標の変化により、オペレータの意思を反映したグラフモデルの評価を行うことができる。
【0096】
また、上記モデル構造と最尤推定値θML(確率パラメータθ)とで表した物流ネットワークを表すグラフモデルにおいて、確率パラメータθを生産計画に基づいて設定された値に少なくとも一部を変更し、変更後のパラメータにより表されるグラフモデルの第1評価指標を実績データDについて算出する。このように算出した第1評価指標の変化により、生産計画と実績との差異を評価することができる。
【0097】
以上、第1の実施形態に係るグラフ評価方法について説明した。本実施形態に係るグラフ評価方法によれば、ノード及びエッジを用いて表すグラフ構造とグラフ構造のノード通過パターン毎の発生確率を表す確率パラメータとにより表されるグラフモデルについて、ノード通過パターンの確率パラメータに基づいて、実績通過パターンの尤度を算出する。そして、算出した実績通過パターンの尤度に基づいて、例えば最大対数尤度等の第1評価指標を算出する。このような第1評価指標を用いることで、グラフモデルの再現性を定量的に評価することが可能となる。その結果、例えば、単純化グラフによる元のグラフのデータの再現性を評価したり、基準とする実績データに基づくグラフモデルの再現性からネットワークの状況の変化を検知したり、変更したグラフモデルの再現性から実施しようとする変更が適切であるかどうかを評価したりすることが可能となる。また、第1評価指標に基づいてグラフを作成することで、再現性の高いグラフを作成することもできる。
【0098】
[3.第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係るグラフ評価装置及びこれを用いたグラフ評価方法を説明する。本実施形態では、第1の実施形態にて算出したグラフモデルの再現性を評価するための第1評価指標と、グラフモデルに含まれるノード通過パターンの数と重み係数とによってグラフモデルの複雑度を表した第2評価指標とに基づいて、グラフモデルの評価指標を算出する。さらに、算出した評価指標に基づき、目的に最も合致する最適グラフモデルを探索する。これらの評価指標に基づいてグラフを作成することで、評価指標に従った再現性と複雑度とのバランスのとれたグラフを作成することが可能となる。
【0099】
[3-1.グラフ評価装置]
まず、
図12に基づいて、本発明の第2の実施形態に係るグラフ評価装置100について説明する。
図12は、本実施形態に係るグラフ評価装置100の機能ブロック図である。なお、以下の説明においては、第1の実施形態と同様の機能構成についての詳細な説明を省略する。
【0100】
本実施形態に係るグラフ評価装置100は、
図12に示すように、実績データ取得部110と、グラフ取得部120と、評価指標算出処理部130と、探索部140とを有する。
【0101】
(実績データ取得部)
実績データ取得部110は、ネットワークにおける実績データを記憶する実績データ記憶部210から、実績データを取得する。実績データ取得部110は、第1の実施形態の実績データ取得部110と同様に機能する。実績データ取得部110は、取得した実績データをグラフ取得部120へ出力する。
【0102】
(グラフ取得部)
グラフ取得部120は、評価対象のグラフモデルのグラフ構造を表すグラフ構造データを取得する。グラフ取得部120は、第1の実施形態のグラフ取得部120と同様に機能する。グラフ取得部120は、例えば、グラフ構造データ記憶部220から作成済みのグラフ構造データを取得してもよい。あるいは、グラフ取得部120は、実績データ取得部110が取得した実績データから得られる元のグラフのグラフ構造に基づき、ノードやエッジを集約したり削除したりしてグラフモデルのグラフ構造を作成することによって、グラフ構造データを取得してもよい。グラフ取得部120は、例えばグラフ構造を行列化した隣接行列(後述する
図7参照)を、グラフ構造データとして取得してもよい。グラフ取得部120は、取得したグラフ構造データを、評価指標算出処理部130へ出力する。
【0103】
(評価指標算出処理部)
評価指標算出処理部130は、グラフモデルを評価する指標を算出する。本実施形態に係る評価指標算出処理部130では、グラフモデルの再現性を評価するための第1評価指標と、グラフモデルの複雑度を表した第2評価指標とを算出し、第1評価指標と第2評価指標に基づいて、グラフモデルの評価指標を算出する。評価指標は、例えば第1評価指標と第2評価指標との和として表してもよい。
【0104】
評価指標算出処理部130は、第1評価指標を、第1の実施形態と同様に算出する。すなわち、評価指標算出処理部130は、まず、グラフ取得部120により取得したグラフ構造データについて、ノード通過パターン毎の確率パラメータを設定する。次いで、評価指標算出処理部130は、設定した確率パラメータに基づいて、グラフモデルにおける実績通過パターンの尤度を算出する。そして、評価指標算出処理部130は、算出した実績通過パターンの尤度に基づいて、グラフモデルの再現性を評価する第1評価指標を算出する。
【0105】
また、評価指標算出処理部130は、グラフモデルに含まれるノード通過パターンの数に基づき設定される自由パラメータ数と重み係数とを乗算して、第2評価指標を算出する。自由パラメータ数は、グラフモデルに含まれるノード通過パターンの数Kから1を減算した値とする。重み係数は、例えばユーザによって適宜設定され、例えば第1評価指標とのバランスから設定し得る。そして、評価指標算出処理部130は、第1評価指標と第2評価指標とを足し合わせ、評価指標を求める。
【0106】
このような処理を行う評価指標算出処理部130は、例えば
図12に示すように、実績通過パターン生成部131と、ノード通過パターン生成部133と、確率パラメータ設定部135と、尤度算出部137と、評価指標算出部139と、を有する。
【0107】
実績通過パターン生成部131、ノード通過パターン生成部133、確率パラメータ設定部135、及び、尤度算出部137は、第1の実施形態と同様に機能する。すなわち、実績通過パターン生成部131は、実績データ取得部110により取得された実績データから、実績通過パターンの集合を生成する。ノード通過パターン生成部133は、グラフ取得部120により取得したグラフ構造データに基づき、グラフモデルのノード通過パターンを生成する。確率パラメータ設定部135は、ノード通過パターン生成部133により生成されたグラフモデルのノード通過パターン毎の確率パラメータを設定する。尤度算出部137は、確率パラメータ設定部135により設定された確率パラメータを用いて、実績通過パターンの尤度を算出する。
【0108】
評価指標算出部139は、グラフモデルを評価する指標を算出する。本実施形態では、評価指標算出部139は、グラフモデルを評価する指標として、第1評価指標、第2評価指標、及び、評価指標を算出する。すなわち、評価指標算出部139は、尤度算出部137により算出された実績通過パターンの尤度に基づいてグラフモデルの第1評価指標を算出する。また、評価指標算出部139は、グラフモデルに含まれるノード通過パターンの数に基づき設定される自由パラメータ数と重み係数とを乗算して、第2評価指標を算出する。そして、評価指標算出部139は、第1評価指標と第2評価指標とを足し合わせ、グラフモデルの評価指標を算出する。
【0109】
評価指標算出処理部130は、算出した評価指標を探索部140へ出力する。また、評価指標算出処理部130は、既に説明したように、算出した評価指標やそのグラフ構造、確率パラメータを表示装置300へ出力してもよい。このとき評価指標算出処理部130は、評価指標に加え、第1評価指標及び第2評価指標を表示装置300へ出力してもよく、第1評価指標のみを表示装置300へ出力してもよい。既に説明したように、表示装置300は、例えば、グラフモデルを評価するユーザ等に対して、グラフ評価装置100が算出したグラフモデルのグラフ構造、確率パラメータ、または、グラフモデルを評価するための指標のうち、少なくともいずれか1つを出力する。ユーザは、例えば、評価指標から、グラフモデルについて、グラフモデルの再現性と複雑度のバランスを定量的に評価することができる。
【0110】
(探索部)
探索部140は、評価指標に基づいて、グラフモデルの再現性と複雑度とに基づき目的に最も合致する最適グラフモデルを探索する。探索部140は、所定の終了条件を満たすまで、グラフモデルの探索を行う。例えば、元のグラフの評価指標よりも評価指標が改善されたときに探索を終了するとしてもよく、グラフモデルのグラフ構造を変化させ探索を繰り返し実施したときに評価指標の変動が収束したときに探索を終了するとしてもよい。探索部140は、所定の終了条件を満たしたときのグラフモデルを最適グラフモデルとして表示装置300へ出力する。
【0111】
探索部140は、グラフ取得部120がグラフのエッジ削除等を繰り返して作成した複数のグラフ構造について、評価指標算出処理部130がそれぞれ算出した評価指標のうち最良のものを、その探索段階における評価指標の値として保持する。なお、値を保持する評価指標は、最良のもののみであってもよく、上位から所定数のものとしてもよい。したがって、探索部140は、所定の終了条件を満たしたときまでに得られたグラフモデルのうち、評価指標の値が上位から所定数(1以上)である1または複数のグラフモデルを表示装置300へ出力することも可能である。また、1回の探索で、探索部140がグラフ取得部120に対して作成させるグラフ構造の数は、1つでもよく、複数であってもよい。
【0112】
なお、本発明に係るグラフ評価装置100は、グラフモデルを評価する指標(本実施形態では、第1評価指標、第2評価指標、及び、評価指標)を算出できる機能を有するものであればよいため、少なくとも評価指標算出処理部130の尤度算出部137及び評価指標算出部139を備えていればよい。すなわち、本実施形態に係るグラフ評価装置100も、第1の実施形態と同様、他の装置によって生成されたグラフモデルを評価してもよい。また、最適グラフモデルを探索するために、グラフ評価装置100は、探索部140をさらに備えていてもよい。したがって、実績データ取得部110、グラフ取得部120、実績通過パターン生成部131、ノード通過パターン生成部133、確率パラメータ設定部135、及び、探索部140は、グラフ評価装置100とは異なる、1または複数の装置により構成されていてもよい。
【0113】
第1の実施形態と同様、本実施形態においても、グラフ評価装置100の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作成し、パーソナルコンピュータ等の、プロセッサ等を備えるコンピュータに実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0114】
[3-2.グラフ評価方法]
次に、
図13に基づいて、本実施形態に係るグラフ評価方法について説明する。
図13は、本実施形態に係るグラフ評価方法の一例を示すフローチャートである。なお、以下の説明においては、第1の実施形態と同様の処理についての詳細な説明を省略する。また、以下の説明では、具体例として、第1の実施形態と同様の、製鉄プロセスにて製造されるコイルの物流ネットワークを考える。
【0115】
(S201:実績データ取得)
まず、
図13に示すように、実績データ取得部110は、実績データ記憶部210から、実績データを取得する(S201)。ステップS201は、
図4のステップS100と同様に行えばよい。実績データ取得部110は、第1の実施形態と同様に、例えば
図5に示したようなネットワークにおける実績データを記憶する実績データ記憶部210から、所定数あるいは所定期間の実績データを取得して、グラフ取得部120へ出力する。
【0116】
(S203:グラフ構造データ取得)
次いで、グラフ取得部120は、評価対象のグラフモデルのグラフ構造を表すグラフ構造データを取得する(S203)。ステップS203は、
図4のステップS110と同様に行えばよい。すなわち、グラフ取得部120は、例えば、グラフ構造データ記憶部220から作成済みのグラフ構造データを取得してもよい。あるいは、グラフ取得部120は、実績データ取得部110が取得した実績データから得られる元のグラフのグラフ構造に基づき、ノードやエッジを集約したり削除したりしてグラフモデルのグラフ構造を作成することによって、グラフ構造データを取得してもよい。また、実績データ取得部110は、要素やつながりをそのまま表した元のグラフのグラフ構造データも取得してもよい。グラフ取得部120は、取得したグラフ構造データを、評価指標算出処理部130へ出力する。
【0117】
(S205-S213:第1評価指標の算出)
そして、評価指標算出処理部130は、グラフモデルの再現性を評価するための第1評価指標を算出する。第1評価指標の算出処理であるステップS205~S213は、
図4のステップS120~S160と同様に行えばよい。
【0118】
まず、実績通過パターン生成部131は、実績データ取得部110により取得された実績データから、元のグラフのノード通過パターン(実績通過パターン)を生成する(S205)。次いで、ノード通過パターン生成部133は、ステップS203においてグラフ取得部120により取得したグラフ構造データに基づき、グラフモデルのノード通過パターンを生成する(S207)。
【0119】
そして、確率パラメータ設定部135は、グラフモデルのノード通過パターン毎の確率パラメータを設定する(S209)。グラフモデルの確率パラメータθ={θ1,・・・,θK}∈RKの値は、任意に設定し得る値であり、例えば実績通過パターンのノード通過パターン毎の発生確率を設定してもよい。例えば、確率パラメータθとして、上記式(1)または式(2)を用いて算出し得る、最尤推定法に基づき実績通過パターンの尤度が最大となるように設定された値(すなわち、最尤推定値)θMLを用いてもよい。このように確率パラメータ設定部135によりノード通過パターン毎の確率パラメータを設定した後、尤度算出部137は、設定した確率パラメータに基づいて、グラフモデルにおける実績通過パターンの尤度を算出する(S211)。尤度は、対数尤度であってもよい。
【0120】
その後、評価指標算出部139は、ステップS209にて算出した実績通過パターンの尤度に基づいて、グラフモデルの第1評価指標を算出する(S213)。第1評価指標は、例えば、上記式(3-1)で表される最大尤度MLであってもよく、上記式(3-2)で表される最大対数尤度MLLであってもよい。なお、ステップS209においてノード通過パターンの発生回数に対してスムージングが行われた場合には、評価指標算出部139は、ノード通過パターンそれぞれのスムージング後の発生回数に基づき最大尤度MLまたは最大対数尤度MLLを算出する。
【0121】
(S215:第2評価指標の算出)
また、評価指標算出部139は、グラフモデルに含まれるノード通過パターンの数と重み係数とに基づき、第2評価指標を算出する(S215)。具体的には、評価指標算出部139は、グラフモデルに含まれるノード通過パターンの数Kから1を減算した値である自由パラメータ数F(=K-1)と、重み係数wとを乗ずることにより、第2評価指標を算出する。重み係数は、例えばユーザによって適宜設定され、例えば第1評価指標とのバランスから設定し得る。第2評価指標は、グラフの複雑度を表す。第2評価指標の重み係数wの値が大きいほど、後述する評価指標においてグラフモデルの単純性をより強く評価する。
【0122】
(S217:評価指標の算出)
そして、評価指標算出部139は、ステップS213にて算出した第1評価指標とステップS215にて算出した第2評価指標とを足し合わせ、評価指標を算出する(S217)。評価指標Zは、例えば第1評価指標が上記式(3-2)に示す最大対数尤度MLLで表されるとき、下記式(4)のように表すことができる。
【0123】
【0124】
例えば、
図6のグラフBのグラフモデルについて評価指標を算出した場合、第1評価指標は上述したようにMLL=-92.646であり、第2評価指標は、自由パラメータ数はF=4(ノード通過パターンの数K=5)であり、重み係数w=10とすれば、w×F=40となる。これらの値を上記式(4)に代入すると、評価指標Zは132.65となる。なお、同様に、
図6のグラフAのグラフモデルについて評価指標を算出すると、評価指標Zは137.43となる。グラフBのグラフモデルの評価指標の値が元のグラフ(グラフA)のグラフモデルの評価指標の値に近いほど、グラフBのグラフモデルは再現性と単純さとのバランスの取れたグラフモデルであると評価することができる。
【0125】
(S219-S223:グラフモデル探索)
ステップS217にて評価指標が算出されると、探索部140は、評価指標に基づいて、グラフモデルの再現性と複雑度とに基づき目的に最も合致する最適グラフモデルを探索する。まず、探索部140は、今回評価したグラフモデルが、所定の終了条件を満たすか否かを判定する(S219)。終了条件は予め設定されており、例えば、元のグラフのグラフモデルの評価指標よりも評価指標が改善されたときに探索を終了するとしてもよく、グラフモデルのグラフ構造を変化させ探索を繰り返し実施したときに評価指標の変動が収束したときに探索を終了するとしてもよい。探索部140は、ステップS217にて算出された評価指標に基づき、グラフモデルの探索を終了するか否かを判定する。
【0126】
例えば、100回探索を繰り返しても評価指標が改善しなかった場合に探索を終了するという探索の終了条件が設定されているとする。今回評価したグラフモデルの評価指標が前の評価指標から改善したとき、または、連続して100回今回評価したグラフモデルの評価指標が前の評価指標から改善していないときには、探索部140は探索の終了条件を満たしていないとして(S219:NO)、より評価指標のよいグラフ構造を探索するため、グラフ取得部120に対して、新たなグラフモデルを再作成させる(S221)。
【0127】
新たなグラフモデルの作成は、集約するノードや削除するエッジを変更することにより行われる。例えば、これまで探索したグラフモデルのうち、最も評価指標の値の小さいグラフモデルG*(評価指標f*)に対して、ノードの集約やエッジの削除等によりグラフ構造を操作したグラフモデル群を、今回評価したグラフモデルの近傍解として算出する。グラフモデル群は、例えば、今回評価したグラフモデルのグラフ構造データGにおいて、親ノードと子ノードとは同一として、その間のノードの集約を変更した新たなグラフ構造データを作成することにより作成してもよい。具体例として、
図14に、
図6のグラフBから、親ノードA、Bと子ノードC、D、Eとを変更せず、その間のノードAGV1~AGV5の集約を変更したりエッジを削除したりして作成された単純化グラフ(グラフC~I)のグラフモデル群の一例を示す。
【0128】
グラフ取得部120は、探索部140からグラフモデルの再作成の指示を受けると、
図14に示すグラフC~Iのように、グラフ構造の異なる新たな単純化グラフのグラフモデル群を作成する。なお、グラフモデルの再作成方法は係る例に限定されず、例えば、グラフ評価装置100の計算能力が高い場合には、元のグラフから考え得るすべてのグラフ構造の単純化グラフのグラフモデル群について、順に作成してもよい。
【0129】
グラフ取得部120によって単純化グラフのグラフモデル群が再作成されると、各単純化グラフのグラフモデルについて、第1評価指標の算出(S207~S213)、第2評価指標の算出(S215)、評価指標の算出(S217)がそれぞれ行われる。なお、2回目以降の第1評価指標の算出においては、実績通過パターンの作成(S205)は実施しなくともよく、1回目に作成された実績通過パターンを用いればよい。
【0130】
そして、100回探索を繰り返しても今回評価したグラフモデルの評価指標が前の評価指標から改善せず、探索の終了条件を満たした場合に(S219:YES)、探索部140は、この時点までに最も評価指標が最小となったグラフモデルを、最適グラフモデルとして、表示装置300へ出力する(S223)。これにより、ユーザは、グラフモデルの再現性と複雑度とに基づき目的に最も合致する最適グラフモデルを用いて、ネットワークの状況をより正しく把握することが可能となる。
【0131】
例えば、
図15に、
図6のグラフA、B及び
図14のグラフC~Iについて、上記式(4)に基づき算出したグラフモデルの評価指標Zの値を示す。
図15より、評価指標が最小であるグラフEのグラフモデルが最適グラフモデルとなる。グラフEは、ノードAGV3、AGV5を集約したものであり、グラフAを参照すると、ノードAGV3、AGV5はいずれもノードB、Dと隣接している。隣接ノードが共通するノードを集約したグラフEのようにグラフを単純化すれば、実績通過パターンにはないノード通過パターンが生じることがなく、グラフモデルの再現性が高まり、評価指標の値も小さくなる。
【0132】
比較として、グラフBは、
図11を参照すると、再現した実績通過パターンの中に実績通過パターンにはないノード通過パターン「A-AGV1-E」が存在する。このため、グラフBはグラフEよりもグラフモデルの評価指標が大きくなっている。このように、上記式(4)に示す評価指標を用いれば、実績データにはない通過パターンが再現されることも鑑みてグラフモデルを評価することができる。
【0133】
[4.ハードウェア構成]
図16に基づいて、本実施形態に係るグラフ評価装置100のハードウェア構成について説明する。
図16は、本実施形態に係るグラフ評価装置100として機能する情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0134】
情報処理装置900は、プロセッサ(
図16ではCPU901)と、ROM903と、RAM905とを含む。また、情報処理装置900は、バス907と、入力I/F909と、出力I/F911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを含む。
【0135】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能する。CPU901は、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体925に記録された各種プログラムに従って、情報処理装置900内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムあるいは演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラム、あるいは、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
【0136】
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
【0137】
入力I/F909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバー等の、ユーザが操作する操作手段である入力装置921からの入力を受け付けるインタフェースである。入力I/F909は、例えば、ユーザが入力装置921を用いて入力した情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路等として構成されている。入力装置921は、例えば、赤外線あるいはその他の電波を利用したリモートコントロール装置、あるいは、情報処理装置900の操作に対応したPDA(Personal Digital Assistant)等の外部機器927であってもよい。情報処理装置900のユーザは、入力装置921を操作し、情報処理装置900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0138】
出力I/F911は、入力された情報を、ユーザに対して視覚的または聴覚的に通知可能な出力装置923へ出力するインタフェースである。出力装置923は、例えば、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプ等の表示装置であってもよい。あるいは、出力装置923は、スピーカ及びヘッドホン等の音声出力装置や、プリンター、移動通信端末、ファクシミリ等であってもよい。出力I/F911は、出力装置923に対して、例えば、情報処理装置900により実行された各種処理にて得られた処理結果を出力するよう指示する。具体的には、出力I/F911は、表示装置に対して情報処理装置900による処理結果を、テキストまたはイメージで表示するよう指示する。また、出力I/F911は、音声出力装置に対し、再生指示を受けた音声データ等のオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力するよう指示する。
【0139】
ストレージ装置913は、情報処理装置900の記憶部の1つであり、データ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶デバイス、SSD(Solid State Drive)等の半導体記憶デバイス、光記憶デバイスまたは光磁気記憶デバイス等により構成される。ストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラム、プログラムの実行により生成された各種データ、及び、外部から取得した各種データ等を格納する。
【0140】
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、情報処理装置900に内蔵あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されているリムーバブル記録媒体925に記録されている情報を読み出し、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されているリムーバブル記録媒体925に情報を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体925は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクまたは半導体メモリ等である。具体的には、リムーバブル記録媒体925は、CDメディア、DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディア、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体925は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
【0141】
接続ポート917は、機器を情報処理装置900に直接接続するためのポートである。接続ポート917は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS-232Cポート等である。情報処理装置900は、接続ポート917に接続された外部機器927から、直接各種データを取得したり外部機器927に各種データを提供したりすることができる。
【0142】
通信装置919は、例えば、通信網929に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。通信装置919は、例えば、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)または移動体通信用のアンテナ等である。また、通信装置919は、有線LAN、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網929は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成されている。例えば、通信網929は、インターネット等の広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)、LAN、移動体通信ネットワーク、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等である。
【0143】
なお、通信網929には、
図16に示すように、外部の情報処理装置931が接続されている。情報処理装置931は、情報処理装置900と同様のハードウェア構成を有する装置であってもよい。本実施形態において、情報処理装置931は、例えばグラフ評価装置100から受信した情報を処理する処理装置であって、物流ネットワークを分析する分析装置や物流をシミュレーションするシミュレーション装置等である。
【0144】
以上、情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示した。上述の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されてもよく、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されてもよい。情報処理装置900のハードウェア構成は、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて適宜変更可能である。
【0145】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0146】
例えば、上記実施形態では、物流ネットワークを表すグラフを評価する例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、本発明のグラフ評価方法は、物流ネットワーク等のように通過する順序及び流れのあるネットワークを表すグラフを評価することができる。具体的には、道路や電車、飛行機等のネットワークや、会社や病院等における事務プロセスを表す業務ネットワークを表すグラフを評価することも可能である。
【0147】
また、上記実施形態では、グラフ評価装置は、実績データをそのまま表した元のグラフや単純化グラフを作成して取得することも実施したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、グラフ評価装置は、予め取得されているグラフモデルについて第1評価指標を算出したり、第1評価指標と第2評価指標とに基づいて評価指標を算出したりしてもよい。
【符号の説明】
【0148】
100 グラフ評価装置
110 実績データ取得部
120 グラフ取得部
130 評価指標算出処理部
131 実績通過パターン生成部
133 ノード通過パターン生成部
135 確率パラメータ設定部
137 尤度算出部
139 評価指標算出部
140 探索部
210 実績データ記憶部
220 グラフ構造データ記憶部
300 表示装置
900 情報処理装置
907 バス
913 ストレージ装置
915 ドライブ
917 接続ポート
919 通信装置
921 入力装置
923 出力装置
925 リムーバブル記録媒体
927 外部機器
929 通信網
931 (外部)情報処理装置
Go 元のグラフ
Gs 単純化グラフ