(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117567
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ガス分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
B01D53/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023730
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】小宅 教文
(72)【発明者】
【氏名】山本 征治
(72)【発明者】
【氏名】今川 晴雄
(72)【発明者】
【氏名】永田 哲治
【テーマコード(参考)】
4D012
【Fターム(参考)】
4D012CA03
4D012CB16
4D012CB17
4D012CD07
4D012CE01
4D012CF01
4D012CF02
(57)【要約】
【課題】混合ガスから特定ガスを分離するガス分離装置において、得られる特定ガス純度の向上と、混合ガスからの特定ガス回収率の向上と、を図る。
【解決手段】ガス分離装置は、混合ガスに含まれる特定ガスを第1濃度に濃縮する第1分離器と、第1分離器よりも下流側に設けられ、特定ガスを第1濃度よりも高い第2濃度に濃縮する第2分離器と、第1分離器から特定ガスを脱離させる第1脱離部と、第2分離器から特定ガスを脱離させる第2脱離部と、を備え、第1分離器と、第2分離器とは、それぞれ、特定ガスを吸着する吸着材が収容された吸着塔を有しており、第1分離器が有する吸着塔の数は、第2分離器が有する吸着塔の数よりも多い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス分離装置であって、
混合ガスに含まれる特定ガスを第1濃度に濃縮する第1分離器と、
前記第1分離器よりも下流側に設けられ、前記特定ガスを前記第1濃度よりも高い第2濃度に濃縮する第2分離器と、
前記第1分離器から前記特定ガスを脱離させる第1脱離部と、
前記第2分離器から前記特定ガスを脱離させる第2脱離部と、
を備え、
前記第1分離器と、前記第2分離器とは、それぞれ、前記特定ガスを吸着する吸着材が収容された吸着塔を有しており、
前記第1分離器が有する前記吸着塔の数は、前記第2分離器が有する前記吸着塔の数よりも多い、ガス分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス分離装置であって、
前記第1分離器が有する前記吸着塔の数をN(Nは任意の自然数)とし、
前記第1分離器の各前記吸着塔において、前記混合ガス中の前記特定ガスを前記吸着材に吸着させる吸着工程の時間をtads1としたとき、
前記第1分離器は、N×tads1を1サイクルとして、前記特定ガスの吸着と脱離とを繰り返し、
前記第2分離器は、前記第1分離器の吸着工程の時間tads1を1サイクルとして、前記特定ガスの吸着と脱離とを繰り返す、ガス分離装置。
【請求項3】
請求項2に記載のガス分離装置であって、
前記第1分離器の各前記吸着塔において、前記吸着材から前記特定ガスを脱離させる脱離工程の時間をtdes1とし、
前記第2分離器の前記吸着塔において、前記混合ガス中の前記特定ガスを前記吸着材に吸着させる吸着工程の時間をtads2としたとき、
前記第1分離器における脱離工程の時間tdes1と、前記第2分離器における吸着工程の時間tads2とが等しい、ガス分離装置。
【請求項4】
請求項3に記載のガス分離装置であって、
前記第1濃度は、前記第1分離器からの排出ガスに占める前記特定ガスの濃度であり、
前記第1分離器は、前記第1濃度を10%以上、かつ、85%以下とする、ガス分離装置。
【請求項5】
請求項4に記載のガス分離装置であって、
前記第1分離器は、前記第1濃度を25%以上、かつ、70%以下とする、ガス分離装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のガス分離装置であって、
前記第2濃度は、前記第2分離器からの分離ガスに占める前記特定ガスの濃度であり、
前記第2分離器は、前記第2濃度を95%以上とする、ガス分離装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のガス分離装置であって、
前記混合ガスからの前記特定ガスの回収率が95%以上である、ガス分離装置。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のガス分離装置であって、
前記第2分離器が有する前記吸着塔の数は1である、ガス分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、背景技術及び課題の説明図である。二酸化炭素(CO
2)、酸素(O
2)、窒素(N
2)、水蒸気(H
2O)等を含む混合ガスから、二酸化炭素を分離して再利用する技術が知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
図1(A)は、このような技術を実現するためのガス分離装置の一例を示す。ガス分離装置は、混合ガスの供給を受けて、混合ガスに含まれる二酸化炭素を濃縮・分離し、主として二酸化炭素を含む分離ガスと、主として二酸化炭素以外のガスを含む廃棄ガスと、を排出する。ここで、混合ガス中の二酸化炭素ガス量Aは、分離ガス中の二酸化炭素ガス量Bと、廃棄ガス中の二酸化炭素ガス量Cとの和である(A=B+C)。なお、
図1(A)において「D」は、分離ガス中の二酸化炭素以外のガス量を意味する。
【0003】
ガス分離装置では、分離ガス中の二酸化炭素濃度(以降「二酸化炭素純度」とも呼ぶ)の向上と、混合ガスからの二酸化炭素回収率の向上と、を図ることが求められていた。ここで、二酸化炭素純度(分離ガス中の二酸化炭素濃度)は、分離ガスに占める二酸化炭素ガスの濃度を意味し、
図1(A)において「B/(B+D)」で表される。また、二酸化炭素回収率は、ガス分離装置によって回収された二酸化炭素量を意味し、
図1(A)において「B/A」もしくは「(1-C)/B」で表される。なお、二酸化炭素純度、及び、二酸化炭素回収率を%表記とする場合、得られた各値に100を乗じればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Haghpanah R, Nilam R, Rajendran A, Farooq S, and Karimi I.A, Cycle synthesis and optimization of a VSA process for postcombustion CO2 capture, AIChE Journal 59(12), Dec 2013, 4735-4748.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、4つの吸着塔を備える1段目の分離器の下流側に、4つの吸着塔を備える2段目の分離器を配置し、1段目及び2段目の分離器を同一のサイクル時間で動作させることで、得られる二酸化炭素純度の向上と、混合ガスからの二酸化炭素回収率の向上とを図る技術が記載されている。しかし、特許文献1に記載の技術は、1段目の分離器からの排出ガスが連続的であることが前提となっているため、1段目の分離器から間欠的にガスが排出されるような工程編成(例えば、1段目の分離器において、窒素ガスをパージするLight Reflux工程や、Light Reflux工程後のガスを再投入するHeavy Reflux工程等を組み込んだ工程編成)とした場合、1段目及び2段目の分離器を同一のサイクル時間で動作させることができず、機能しないという課題があった。
【0007】
非特許文献1には、通常の4ステップ圧力スイング法を、5ステップや6ステップの高度な圧力スイングにすることで、分離エネルギや体格を増大させずに、二酸化炭素の二酸化炭素純度の向上と、混合ガスからの二酸化炭素回収率の向上とを図る技術が記載されている。しかし、非特許文献1に記載の技術では、供給される混合ガス中の二酸化炭素濃度が低い(例えば、10%以下)場合には、得られる二酸化炭素純度が頭打ちするという課題があった。
図1(B)には、混合ガス中の二酸化炭素濃度が1.5%の混合ガスに対して、5ステップ圧力スイング法を用いて、様々な条件下で二酸化炭素を分離した際の、二酸化炭素純度及び二酸化炭素回収率のシミュレーション結果を示す。
図1(B)から明らかなように、混合ガス中の二酸化炭素濃度が低い場合、得られる二酸化炭素純度はおよそ0.9(90%)で頭打ちし、
図1(B)において太枠矩形で示す高純度かつ高回収率(二酸化炭素純度95%かつ二酸化炭素回収率95%)は達成できない。これは、吸着材が二酸化炭素だけでなく、窒素などの二酸化炭素以外のガスを吸着することによって、サイクルを高度化しても二酸化炭素純度に限界があることに起因する。
【0008】
ガス分離装置において、得られる二酸化炭素純度は高いほど好ましく、後工程において圧縮を行ったり、メタン(CH4)へと化学反応させる場合には、二酸化炭素純度は95%以上であることが好ましい。また、混合ガスからの二酸化炭素回収率も高いほど好ましく、100%であることが理想的であるものの、エネルギ効率やガス分離装置の体格を考慮すると、二酸化炭素回収率は90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0009】
なお、このような課題は、二酸化炭素、酸素、窒素、水蒸気等を含む混合ガスから、二酸化炭素を分離する技術に限らず、異なる種類のガスを含む混合ガスから、特定ガスを分離する技術の全般に共通に共通する。
【0010】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、混合ガスから特定ガスを分離するガス分離装置において、得られる特定ガス純度の向上と、混合ガスからの特定ガス回収率の向上と、を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0012】
(1)本発明の一形態によれば、ガス分離装置が提供される。このガス分離装置は、混合ガスに含まれる特定ガスを第1濃度に濃縮する第1分離器と、前記第1分離器よりも下流側に設けられ、前記特定ガスを前記第1濃度よりも高い第2濃度に濃縮する第2分離器と、前記第1分離器から前記特定ガスを脱離させる第1脱離部と、前記第2分離器から前記特定ガスを脱離させる第2脱離部と、を備え、前記第1分離器と、前記第2分離器とは、それぞれ、前記特定ガスを吸着する吸着材が収容された吸着塔を有しており、前記第1分離器が有する前記吸着塔の数は、前記第2分離器が有する前記吸着塔の数よりも多い。
【0013】
この構成によれば、1段目の第1分離器によって混合ガス中の特定ガスを第1濃度に濃縮した後で、2段目の第2分離器によって特定ガスを第2濃度に濃縮する。このように、2段構成にされた分離器によって特定ガスの濃縮を行うことによって、1段構成の分離器を用いる場合と比較して、混合ガス中の特定ガス濃度が低い場合であっても、得られる特定ガス純度の向上と、混合ガスからの特定ガス回収率の向上とを図ることが可能となる。また、1段目の第1分離器が有する吸着塔の数は、2段目の第2分離器が有する吸着塔の数よりも多い。このため、1段目の分離器から間欠的にガスが排出されるような工程編成(例えば、1段目の分離器において、窒素ガスをパージするLight Reflux工程や、Light Reflux工程後のガスを再投入するHeavy Reflux工程等を組み込んだ工程編成)を採用できる。
【0014】
(2)上記形態のガス分離装置において、前記第1分離器が有する前記吸着塔の数をN(Nは任意の自然数)とし、前記第1分離器の各前記吸着塔において、前記混合ガス中の前記特定ガスを前記吸着材に吸着させる吸着工程の時間をtads1としたとき、前記第1分離器は、N×tads1を1サイクルとして、前記特定ガスの吸着と脱離とを繰り返し、前記第2分離器は、前記第1分離器の吸着工程の時間tads1を1サイクルとして、前記特定ガスの吸着と脱離とを繰り返してもよい。
この構成によれば、1段目の第1分離器は、N×tads1を1サイクルとして、特定ガスの吸着と脱離とを繰り返し、2段目の第2分離器は、第1分離器の吸着工程の時間tads1を1サイクルとして、特定ガスの吸着と脱離とを繰り返す。すなわち、第2分離器は、第1分離器のサイクル時間の1/N(1/塔数)で動作する。このようにすれば、1段目の第1分離器と、2段目の第2分離器との間に、中間タンク等のバッファを設けることなく、第1分離器と第2分離器とを連携して動作させることができる。この結果、ガス分離装置の構成をシンプルにして、装置の大型化を抑制し、低コスト化を図ることができる。
【0015】
(3)上記形態のガス分離装置において、前記第1分離器の各前記吸着塔において、前記吸着材から前記特定ガスを脱離させる脱離工程の時間をtdes1とし、前記第2分離器の前記吸着塔において、前記混合ガス中の前記特定ガスを前記吸着材に吸着させる吸着工程の時間をtads2としたとき、前記第1分離器における脱離工程の時間tdes1と、前記第2分離器における吸着工程の時間tads2とが等しくてもよい。
この構成によれば、1段目の第1分離器における脱離工程の時間tdes1と、2段目の第2分離器における吸着工程の時間tads2とが等しいため、第1分離器と第2分離器とをより一層連携して動作させることができる。
【0016】
(4)上記形態のガス分離装置において、前記第1濃度は、前記第1分離器からの排出ガスに占める前記特定ガスの濃度であり、前記第1分離器は、前記第1濃度を10%以上、かつ、85%以下としてもよい。
この構成によれば、1段目の第1分離器は、第1濃度を10%以上、かつ、85%以下とするため、混合ガス中の特定ガス濃度が低い場合であっても、得られる特定ガス純度の向上と、混合ガスからの特定ガス回収率の向上とを図ることが可能となる。
【0017】
(5)上記形態のガス分離装置において、前記第1分離器は、前記第1濃度を25%以上、かつ、70%以下としてもよい。
この構成によれば、1段目の第1分離器は、第1濃度を25%以上、かつ、70%以下とするため、混合ガス中の特定ガス濃度が低い場合であっても、得られる特定ガス純度の向上と、混合ガスからの特定ガス回収率の向上とを図ると共に、分離エネルギを低減することができる。
【0018】
(6)上記形態のガス分離装置において、前記第2濃度は、前記第2分離器からの分離ガスに占める前記特定ガスの濃度であり、前記第2分離器は、前記第2濃度を95%以上としてもよい。
この構成によれば、2段目の第2分離器は、第2濃度を95%以上とするため、得られる特定ガス純度を、後工程(例えば、特定ガスの圧縮工程、特定ガスを用いた燃料製造工程等)での利用にあたって好ましい純度まで高純度化できる。
【0019】
(7)上記形態のガス分離装置において、前記混合ガスからの前記特定ガスの回収率が95%以上であってもよい。
この構成によれば、混合ガスからの特定ガスの回収率が95%以上であるため、混合ガスからの特定ガス回収率を高くできる。
【0020】
(8)上記形態のガス分離装置において、前記第2分離器が有する前記吸着塔の数は1であってもよい。
この構成によれば、2段目の第2分離器が有する吸着塔の数は1であるため、ガス分離装置の構成をシンプルにして、装置の大型化を抑制し、低コスト化を図ることができる。
【0021】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、ガス分離装置、多段に配置された分離器を含むガス分離システム、ガス分離装置を備える燃料製造装置(例えば、メタン製造装置)これら装置及びシステムの制御装置、制御方法、これら装置及びシステムを制御するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】本発明の一実施形態としてのガス分離装置の構成を例示した説明図である。
【
図5】二酸化炭素回収率に関するシミュレーション結果を示す図である。
【
図6】第1比較例のガス分離装置について説明する図である。
【
図7】第2比較例のガス分離装置について説明する図である。
【
図8】第3比較例のガス分離装置について説明する図である。
【
図9】第1分離器における濃縮エネルギに関するシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】ガス分離装置における分離エネルギに関するシミュレーション結果を示す図である。
【
図11】第2実施形態のガス分離装置の構成を例示した説明図である。
【
図12】第2実施形態のガス分離装置の工程図である。
【
図13】第1分離器の第1吸着塔における工程遷移を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
図2は、本発明の一実施形態としてのガス分離装置1の構成を例示した説明図である。ガス分離装置1は、二酸化炭素(CO
2)、酸素(O
2)、窒素(N
2)、水蒸気(H
2O)等を含む「混合ガス」から、二酸化炭素を分離して、二酸化炭素を多く含む「分離ガス」を排出する。混合ガスには、例えば、工場などからの燃焼排ガスを利用できる。分離ガスは、例えば、燃料としてのメタン(CH
4)の生成のための原料として利用できる。本実施形態において、二酸化炭素は「特定ガス」に相当する。なお、以降の実施形態では、二酸化炭素、酸素、窒素、水蒸気等を含む混合ガスから、二酸化炭素を分離するガス分離装置1について説明するが、ガス分離装置1は、異なる種類のガスを含む混合ガスから、二酸化炭素とは異なる特定ガスを分離するように構成されてもよい。
【0024】
ガス分離装置1は、第1分離器10と、第1分離器10よりも下流側に設けられた第2分離器20と、第1脱離部31と、第2脱離部32と、制御装置50と、を備えている。第1分離器10は、外部から混合ガスの供給を受け、混合ガスに含まれる二酸化炭素を第1濃度に濃縮する1段目の分離器である。第1脱離部31は、第1分離器10から二酸化炭素を脱離させるための真空ポンプである。第2分離器20は、1段目の第1分離器10から混合ガスの供給を受け、混合ガスに含まれる二酸化炭素を、第1濃度よりも高い第2濃度に濃縮する2段目の分離器である。第2脱離部32は、第2分離器20から二酸化炭素を脱離させるための真空ポンプである。このように、本実施形態のガス分離装置1は、真空ポンプ31,32を利用した圧力スイング法によって二酸化炭素の脱離を行う。
【0025】
第1分離器10は、複数(図示の例では3つ)の吸着塔10a~10cを備えている。各吸着塔10a~10cは、それぞれ、円筒形状の筐体の内部に、第1吸着材100が収容された構成を有する。第1吸着材100は、特定ガスとしての二酸化炭素を吸着する吸着材である。第1吸着材100としては、ゼオライト、活性炭、金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks)等を使用できる。ここで、第1分離器10に収容される第1吸着材100としては、低濃度域の吸着性能が高い吸着材(例えば、ゼオライト、低濃度域の吸着性能を向上させるよう調整したMOF等)が使用されることが好ましい。
【0026】
第1分離器10の吸着塔10a~10cには、それぞれ、複数の流路11a~11c,12a~12c,13a~13c,14a~14c,15,16が接続されている。以降、各流路について、第1吸着塔10aを例示して説明する。
【0027】
混合ガス流路11aは、外部に設けられた工場やタンク等から、第1吸着塔10aに対して混合ガスを供給するための流路である。混合ガス流路11aには、流路の開閉やガス流量の調整をするための弁が設けられている。混合ガス流路11b,cは、接続先が第2吸着塔10b、第3吸着塔10cである点を除き、混合ガス流路11aと同様の構成を有する。
【0028】
排出ガス流路12aは、第1吸着塔10aからの排出ガスであって、排出ガス中の二酸化炭素が第1濃度まで濃縮されたガスを排出するための流路である。排出ガス流路12aは、第1脱離部31の上流側に接続されている。排出ガス流路12aには、流路の開閉やガス流量の調整をするための弁が設けられている。排出ガス流路12b,cは、接続先が第2吸着塔10b、第3吸着塔10cである点を除き、排出ガス流路12aと同様の構成を有する。
【0029】
循環流路13aは、第1脱離部31から排出されたガスを、混合ガス流路11aへと戻すための流路である。循環流路13aには、流路の開閉やガス流量の調整をするための弁が設けられている。循環流路13b,cは、接続先が第2吸着塔10b、第3吸着塔10cである点を除き、循環流路13aと同様の構成を有する。
【0030】
廃棄ガス流路14aは、第1吸着塔10aからの廃棄ガスであって、二酸化炭素以外のガスを多く含むガスを外部に廃棄するための流路である。廃棄ガス流路14aには、流路の開閉やガス流量の調整をするための弁が設けられている。廃棄ガス流路14b,cは、接続先が第2吸着塔10b、第3吸着塔10cである点を除き、廃棄ガス流路14aと同様の構成を有する。
【0031】
バイパス流路15は、廃棄ガス流路14aと廃棄ガス流路14cとを接続する流路である。バイパス流路16は、廃棄ガス流路14aと廃棄ガス流路14b、及び、廃棄ガス流路14bと廃棄ガス流路14cとを接続する流路である。バイパス流路15と、バイパス流路16とには、それぞれ、流路の開閉やガス流量の調整をするための弁が設けられている。
【0032】
第2分離器20は、第1分離器10の吸着塔数よりも少ない数(図示の例では1つ)の吸着塔20aを備えている。吸着塔20aは、円筒形状の筐体の内部に、第2吸着材200が収容された構成を有する。第2吸着材200は、特定ガスとしての二酸化炭素を吸着する吸着材である。第2吸着材200としては、ゼオライト、活性炭、金属有機構造体(MOF)等を使用できる。ここで、第2分離器20に収容される第2吸着材200としては、高濃度域の吸着性能が高い吸着材(例えば、活性炭、高濃度域の吸着性能を向上させるよう調整したMOF等)が使用されることが好ましい。
【0033】
第2分離器20の吸着塔20aには、複数の流路21,22,24,25,41,42が接続されている。
【0034】
混合ガス流路21は、第1脱離部31よりも下流側において、第1分離器10と第2分離器20とを接続している。混合ガス流路21は、第1分離器10からの排出ガスであって、排出ガス中の二酸化炭素が第1濃度まで濃縮されたガスを、吸着塔20a(第2分離器20)へと供給するための流路である。混合ガス流路21には、流路の開閉やガス流量の調整をするための弁が設けられている。
【0035】
排出ガス流路22は、吸着塔20aからの排出ガスであって、排出ガス中の二酸化炭素が、第1濃度よりも高い第2濃度まで濃縮されたガスを排出するための流路である。排出ガス流路22は、第2脱離部32に接続されている。排出ガス流路22には、流路の開閉やガス流量の調整をするための弁が設けられている。
【0036】
循環流路23は、吸着塔20aから排出されたガスを、吸着塔20aへと戻すための流路である。循環流路23には、流路の開閉やガス流量の調整をするための弁が設けられている。
【0037】
廃棄ガス流路24は、吸着塔20aからの廃棄ガスであって、二酸化炭素以外のガスを含むガスを外部に廃棄するための流路である。廃棄ガス流路24には、流路の開閉やガス流量の調整をするための弁が設けられている。
【0038】
分離ガス流路41は、吸着塔20a(第2分離器20)からの排出ガスであって、排出ガス中の二酸化炭素が第2濃度まで濃縮されたガスを排出するための流路である。分離ガス流路41は、第2脱離部32の下流側に接続されている。分離ガス流路41から排出されるガスは、ガス分離装置1によって生成される「分離ガス」に相当し、この分離ガスを用いて、後工程での燃料生成(例えばメタン生成)が行われる。分離ガス流路41には、流路の開閉やガス流量の調整をするための弁が設けられている。
【0039】
廃棄ガス流路42は、吸着塔20a(第2分離器20)からの廃棄ガスを外部に廃棄するための流路である。廃棄ガス流路42は、第2脱離部32の下流側に接続されている。廃棄ガス流路42には、流路の開閉やガス流量の調整をするための弁が設けられている。
【0040】
制御装置50は、各流路11a~11c,12a~12c,13a~13c,14a~14c,15,16,21,22,24,25,41,42上に設けられた弁の開閉を行うことにより、流路上のガス流通有無、及び、ガスの流量を制御するコンピュータである。制御装置50は、上述した各弁の開閉によって、以下に説明する各工程を実行する。
【0041】
図3は、ガス分離装置1の工程図である。
図4は、各吸着塔における工程遷移を示す図である。
図4(A)は、第1分離器10の第1吸着塔10aにおける工程遷移を表し、
図4(B)は、第2分離器20の吸着塔20aにおける工程遷移を表す。
【0042】
第1分離器10の吸着塔10a~10cでは、以下に示す工程a1~a5が実行される。
図3及び
図4(A)を参照しつつ各工程について説明する。
(a1)吸着工程Ads:吸着塔10a~10cに混合ガスを供給し、吸着塔10a~10cの第1吸着材100に二酸化炭素を吸着させる工程。二酸化炭素吸着後のガスの少なくとも一部は、廃棄ガスとして排出される。二酸化炭素吸着後のガスの残部は、Light Reflux工程において使用される。
(a2)Heavy Reflux工程HR:Light Reflux工程からの出ガスを、循環流路13a~13cを介して吸着塔10a~10cに供給し、第1吸着材100に二酸化炭素を再吸着させる工程。二酸化炭素吸着後のガスは、廃棄ガスとして排出される。
(a3)脱離工程Des:第1脱離部31を用いて、吸着塔10a~10cの第1吸着材100から二酸化炭素を脱離させる工程。脱離された二酸化炭素を多く含む排出ガスは、混合ガス流路21を介して第2分離器20へと供給される。
(a4)Light Reflux工程LR:吸着工程を終えたガスのうちの窒素ガスを、バイパス流路15及びバイパス流路16を介して吸着塔10a~10cに供給し、吸着塔10a~10cの内部をパージする工程。
(a5)圧力回復工程Pr:第1脱離部31により減圧状態となった吸着塔10a~10cの内部圧力を、所定圧力(例えば大気圧)まで回復させる工程。
【0043】
第2分離器20の吸着塔20aでは、以下に示す工程b1~b4が実行される。
図3及び
図4(B)を参照しつつ各工程について説明する。
(b1)吸着工程Ads:吸着塔20aに混合ガス(第1分離器10からの排出ガス)を供給し、吸着塔20aの第2吸着材200に二酸化炭素を吸着させる工程。二酸化炭素吸着後のガスは、廃棄ガスとして排出される。
(b2)排出工程Evac:吸着塔20a内部の窒素ガスを、第2脱離部32によって吸引して、廃棄ガス流路42を介して排出する工程。
(b3)脱離工程Des:第2脱離部32を用いて、吸着塔20aの第2吸着材200から二酸化炭素を脱離させる工程。脱離されたガスは分離ガスとして、分離ガス流路41を介して外部へと排出される。
(b4)圧力回復工程Pr:第2脱離部32により減圧状態となった吸着塔20aの内部圧力を、所定圧力(例えば大気圧)まで回復させる工程。
【0044】
図3上段に示すように、第1分離器10では、吸着工程Ads、Heavy Reflux工程HR、脱離工程Des、Light Reflux工程LR、圧力回復工程Prを1サイクルとして、この列挙順(換言すれば、a1~a5の順)で、各工程が繰り返し実行される。なお、
図3上段では図示の便宜上、1サイクルのみ記載している。
【0045】
第1分離器10では、各吸着塔10a~10cでそれぞれ異なる工程が実行されるように、工程の実行順序がずらされている。図示の例では、時刻t1から、第1吸着塔10aでは吸着工程Adsが開始され、第2吸着塔10bではLight Reflux工程LRが開始され、第3吸着塔10cではHeavy Reflux工程HRが開始される。
【0046】
第1分離器10の吸着塔10a~10cにおける吸着工程Adsの実行時間を「tads1」としたとき、tads1は1/3サイクル時間であり、第1分離器10は3×tads1を1サイクルとして二酸化炭素の吸着と脱離を繰り返す。このため、
図3に示すように、第1吸着塔10a、第2吸着塔10b、第3吸着塔10cの順に連続的に吸着工程Adsが実行されることとなり、第1分離器10は、外部からの混合ガスを連続的に受け入れることができる。一方、第1分離器10の吸着塔10a~10cにおける脱離工程Desの実行時間を「tdes1」としたとき、tdes1は、1/3サイクル時間よりも短い。このため、第1分離器10からは、間欠的に(連続しない状態で)、第2分離器20へと排出ガスが供給される。
【0047】
図3下段に示すように、第2分離器20では、吸着工程Ads、排出工程Evac、脱離工程Des、圧力回復工程Prを1サイクルとして、排出工程Evacを最初にして(換言すれば、b2~b4,b1の順で)、各工程が繰り返し実行される。
【0048】
第2分離器20の1サイクル時間は、第1分離器10における吸着工程Adsの実行時間tads1と等しく、第1分離器10の1/3サイクル時間である。換言すれば、第2分離器20は、第1分離器10における吸着工程Adsの実行時間tads1を1サイクルとして、二酸化炭素の吸着と脱離を繰り返す。また、第2分離器20の吸着塔20aにおける吸着工程Adsの実行時間を「tads2」としたとき、tads2は、第1分離器10における脱離工程Desの実行時間tdes1と等しい。そして、
図3に示すように、第2分離器20では、吸着工程Adsが各サイクルの最後に実行されることによって、第2分離器20における吸着工程Adsの実施タイミングと、第1分離器10における脱離工程Desの実施タイミングとが等しい。このため、第1分離器10から第2分離器20へと間欠的に排出ガスが供給される場合であっても、間欠的に供給された排出ガスを第2分離器20において吸着させることができ、第1分離器10と第2分離器20との間にバッファ(中間タンク等)を要することなく、ガスを連続処理できる。
【0049】
なお、本実施形態において「等しい」とは、厳密に一致する場合に限らず、制御誤差に起因した相違や、余裕時間に起因した相違を許容する。なお、第1分離器10がN(Nは任意の自然数)個の吸着塔を備える場合は、上述の説明で「1/3」とした部分を「1/N」と読み替えた上で、同様に構成すればよい。例えば、第1分離器10が2個の吸着塔を備える場合は「1/3」を「1/2」と読み替えればよい。この点は、第1分離器10が4個以上の場合であっても同様である。
【0050】
上述の通り、第1分離器10は、混合ガス中の二酸化炭素を第1濃度に濃縮し、第2分離器20は、第1分離器10からの排出ガス中の二酸化炭素を、第1濃度よりも高い第2濃度に濃縮する。「第1濃度」は、第1分離器10からの排出ガス(換言すれば、混合ガス流路21を流れるガス、脱離工程Desによる排出ガス)に占める二酸化炭素の濃度として定義できる。第1濃度は、任意に定めることができるが、10%以上、かつ、85%以下とすることが好ましい。さらに第1濃度は、25%以上、かつ、70%以下とすることがより好ましい。
【0051】
「第2濃度」は、第2分離器20からの分離ガス(換言すれば、分離ガス流路41を流れるガス、脱離工程Desによる排出ガス)に占める二酸化炭素の濃度として定義できる。第2濃度は、任意に定めることができるが、95%以上とすることが好ましい。なお、第2濃度は、
図1(A)で説明した「二酸化炭素純度」に相当し、「分離ガス中の二酸化炭素ガス量B/(分離ガス中の二酸化炭素ガス量B+分離ガス中の二酸化炭素以外のガス量D)」で表すことができる。
【0052】
また、ガス分離装置1は、混合ガスからの二酸化炭素の回収率が95%以上であることが好ましい。ここで「二酸化炭素回収率」は、ガス分離装置1によって回収された二酸化炭素量を意味し、
図1(A)で説明したように、「分離ガス中の二酸化炭素ガス量B/混合ガス中の二酸化炭素ガス量A」もしくは「(1-廃棄ガス中の二酸化炭素ガス量C)/分離ガス中の二酸化炭素ガス量B」で表される。
【0053】
図5は、二酸化炭素回収率に関するシミュレーション結果を示す図である。
図5では、
図2~
図4で説明した本実施形態のガス分離装置1、及び、比較例としてのガス分離装置1x,1y,1zのそれぞれについて、二酸化炭素回収率に関するシミュレーションを行った。まず、
図6~
図8を用いて、比較例のガス分離装置1x,1y,1zについて説明する。
【0054】
図6は、第1比較例のガス分離装置1xについて説明する図である。
図6(A)は、ガス分離装置1xの構成を示し、
図6(B)は、ガス分離装置1xの工程図を示す。ガス分離装置1xは、4ステップ圧力スイング法によって二酸化炭素の脱離を行う装置であり、
図6(A)に示すように、1段の分離器(吸着塔110a,110b)により構成されている。ガス分離装置1xでは、
図6(B)に示すように、吸着工程Ads、排出工程Evac、脱離工程Des、圧力回復工程Prを1サイクルとして、この列挙順に各工程が繰り返し実行される。
【0055】
図7は、第2比較例のガス分離装置1yについて説明する図である。
図7(A)は、ガス分離装置1yの構成を示し、
図7(B)は、ガス分離装置1yの工程図を示す。ガス分離装置1yは、5ステップ圧力スイング法によって二酸化炭素の脱離を行う装置であり、
図7(A)に示すように、1段の分離器(吸着塔110a,110b,110c)により構成されている。ガス分離装置1yでは、
図7(B)に示すように、吸着工程Ads、Heavy Reflux工程HR、脱離工程Des、Light Reflux工程LR、圧力回復工程Prを1サイクルとして、この列挙順に各工程が繰り返し実行される。
【0056】
図8は、第3比較例のガス分離装置1zについて説明する図である。
図8(A)は、ガス分離装置1zの構成を示し、
図8(B)は、ガス分離装置1zの工程図を示す。ガス分離装置1zは、4ステップ圧力スイング法によって二酸化炭素の脱離を行う装置であり、
図8(A)に示すように、2段の分離器により構成されている。1段目の分離器は、吸着塔110a,110bを有し、2段目の分離器は、吸着塔120a,120bを有している。ガス分離装置1zでは、
図8(B)に示すように、吸着工程Ads、排出工程Evac、脱離工程Des、圧力回復工程Prを1サイクルとして、この列挙順に各工程が繰り返し実行される。ガス分離装置1zでは、1,2段目の分離器で実行される工程内容及びサイクル時間が同じである。
【0057】
図5では、本実施形態のガス分離装置1、及び、比較例としてのガス分離装置1x,1y,1zのそれぞれについて、二酸化炭素回収率95%を達成するために必要な分離エネルギ(GJ/t-CO2)と、二酸化炭素回収率95%を満たす条件下における二酸化炭素純度とを、それぞれ有限体積法によって算出し、縦軸と横軸にプロットした。なお、二酸化炭素純度95%以上が得られる場合(ガス分離装置1の例)は、二酸化炭素純度を95%に固定し、二酸化炭素回収率95%かつ二酸化炭素純度95%を得るための最小エネルギを算出した。
【0058】
図5からは、本実施形態のガス分離装置1は、二酸化炭素回収率95%を達成するために必要な分離エネルギが、比較例のガス分離装置1x,1y,1zと比べて最も小さいことがわかる。また、本実施形態のガス分離装置1は、二酸化炭素回収率95%を満たす条件下における二酸化炭素純度が、比較例のガス分離装置1x,1y,1zと比べて最も高いことがわかる。すなわち、本実施形態のガス分離装置1は、比較例のガス分離装置1x,1y,1zと比較して、二酸化炭素の高回収率を低エネルギで実現した上で、さらに二酸化炭素の高純度化を図ることができる。
【0059】
図9は、第1分離器10における濃縮エネルギに関するシミュレーション結果を示す図である。
図9では、第1分離器10のみを用いて、横軸にプロットされた各第1濃度(%)まで二酸化炭素の濃縮を行った場合に要する濃縮エネルギ(GJ/t-CO2)を、それぞれ有限体積法によって算出し、プロットした。ここで、外部から第1分離器10へと供給される混合ガス中の二酸化炭素濃度は1.5%とし、第1分離器10による二酸化炭素回収率は99%とした。なお、
図9の縦軸は、ガス分離装置1全体ではなく、第1分離器10のみのエネルギを示すため、分離エネルギと呼ばず、濃縮エネルギと呼んでいる。
【0060】
図9からは、第1分離器10のみを用いて高回収率(95%以上、
図9の例では99%)が達成できる最大の二酸化炭素純度は85%であり、その際の濃縮エネルギは4.18(GJ/t-CO2)であることがわかる。
【0061】
図10は、ガス分離装置1における分離エネルギに関するシミュレーション結果を示す図である。
図10では、1段目の第1分離器10によって横軸にプロットされた各第1濃度(%)まで二酸化炭素の濃縮を行い、かつ、2段目の第2分離器20によって第2濃度(すなわち二酸化炭素純度)が95%となるまで二酸化炭素の濃縮を行った場合に要する分離エネルギ(GJ/t-CO2)を、それぞれ有限体積法によって算出し、プロットした。ここで、外部からガス分離装置1(第1分離器10)へと供給される混合ガス中の二酸化炭素濃度は1.5%とし、ガス分離装置1による二酸化炭素回収率は95%とした。
【0062】
図10からは、第1分離器10における第1濃度を10%以上、かつ、85%以下とすることで、1段構成の圧力スイング法では達成できなかった二酸化炭素純度95%、かつ、二酸化炭素回収率は95%を達成できることがわかる。また、第1分離器10における第1濃度を、
図10において破線枠で囲んだ25%以上、かつ、70%以下の範囲内とすれば、ガス分離装置1全体としての分離エネルギを最小化できる。ガス分離装置1全体として、高純度かつ高回収率を達成した上での最小分離エネルギは、およそ3.6(GJ/t-CO2)であり、
図9から導き出される1段のみ(第1分離器10のみ)で分離を行った場合の4.18(GJ/t-CO2)よりも小さい。
【0063】
以上のように、第1実施形態のガス分離装置1は、1段目の第1分離器10によって混合ガス中の特定ガス(二酸化炭素)を第1濃度に濃縮した後で、2段目の第2分離器20によって特定ガス(二酸化炭素)を第2濃度に濃縮する。特定ガス(二酸化炭素)を吸着する吸着材は、特定ガスだけではなく、特定ガス以外のガス(例えば、窒素、水蒸気等)も吸着する。このため、混合ガス中の特定ガス濃度が低い(例えば、10%以下である)場合、吸着材が特定ガス以外のガスを多く吸着してしまい、ガス分離装置1により得られる特定ガス純度(二酸化炭素純度)の向上と、混合ガスからの特定ガス回収率(二酸化炭素回収率)の向上とが難しい。この点、本実施形態のガス分離装置1は、2段構成にされた分離器10,20によって特定ガスの濃縮を行うことによって、1段構成の分離器を用いる場合と比較して、混合ガス中の特定ガス濃度が低い場合であっても、得られる特定ガス純度(二酸化炭素純度)の向上と、混合ガスからの特定ガス回収率(二酸化炭素回収率)の向上とを図ることが可能となる(
図5,9,10)。
【0064】
また、ガス分離装置では一般に、特定ガス純度(二酸化炭素純度)、混合ガスからの特定ガス回収率(二酸化炭素回収率)、単位体積あたりの特定ガス分離エネルギ、及び分離器の体格がトレードオフの関係にある。例えば、大きな分離エネルギを加えると、吸着材における特定ガス吸着量と脱離量との差を大きくできるため、吸着材の吸着性能を十分に活用できるため、特定ガス純度及び特定ガス回収率を向上させると共に、分離器の体格を小さくできる一方、分離エネルギが増大する。また、ゆっくりと特定ガスの吸着及び脱離を行えば、分離エネルギを小さくし、かつ、特定ガス純度及び特定ガス回収率を向上できる一方、分離器を大きくする必要が生じる(分離器の体格が大型化する)。さらに、特定ガス回収率の向上は、分離器から特定ガスが漏れ出る前に吸着工程を終了し、吸脱着を繰り返すことで実現できるものの、この場合、特定ガスを吸着していない吸着材が存在することとなり、特定ガス純度が低下する。また、特定ガス純度の向上は、分離器内の吸着材すべてに特定ガスを吸着させることで実現できるものの、この場合、特定ガスが分離器から流出するため、特定ガス回収率が低下する。このようなトレードオフを解消するために、ガス分離装置では、特定ガスの単純な吸脱着だけではなく、窒素ガスをパージするLight Reflux工程や、Light Reflux工程後のガスを再投入するHeavy Reflux工程等を組み込んだ高度な工程編成が採用されている。この点、本実施形態のガス分離装置1では、1段目の第1分離器10が有する吸着塔10a,10b,10cの数は、2段目の第2分離器20が有する吸着塔20aの数よりも多い。このため、ガス分離装置1において、1段目の分離器10から間欠的にガスが排出されるような工程編成(例えば、1段目の分離器において、窒素ガスをパージするLight Reflux工程や、Light Reflux工程後のガスを再投入するHeavy Reflux工程等を組み込んだ工程編成、
図3)を採用できる。
【0065】
さらに、本実施形態のガス分離装置1では、1段目の第1分離器10は、N×tads1を1サイクルとして、特定ガス(二酸化炭素)の吸着と脱離とを繰り返し、2段目の第2分離器20は、第1分離器10の吸着工程の時間tads1を1サイクルとして、特定ガス(二酸化炭素)の吸着と脱離とを繰り返す(
図3)。すなわち、第2分離器20は、第1分離器10のサイクル時間の1/N(1/塔数)で動作する。このようにすれば、1段目の第1分離器10と、2段目の第2分離器20との間に、中間タンク等のバッファを設けることなく、第1分離器10と第2分離器20とを連携して動作させることができる。この結果、ガス分離装置1の構成をシンプルにして、装置の大型化を抑制し、低コスト化を図ることができる。
【0066】
さらに、本実施形態のガス分離装置1では、1段目の第1分離器10における脱離工程の時間tdes1と、2段目の第2分離器20における吸着工程の時間tads2とが等しいため、第1分離器10と第2分離器20とをより一層連携して動作させることができる(
図3)。
【0067】
さらに、本実施形態のガス分離装置1では、1段目の第1分離器10は、第1分離器10からの排出ガスに占める特定ガスの濃度(第1濃度)を10%以上、かつ、85%以下とするため、混合ガス中の特定ガス濃度が低い場合であっても、得られる特定ガス純度の向上と、混合ガスからの特定ガス回収率の向上とを図ることが可能となる(
図10)。
【0068】
さらに、本実施形態のガス分離装置1では、1段目の第1分離器10は、第1分離器10からの排出ガスに占める特定ガスの濃度(第1濃度)を25%以上、かつ、70%以下とするため、混合ガス中の特定ガス濃度が低い場合であっても、得られる特定ガス純度の向上と、混合ガスからの特定ガス回収率の向上とを図ると共に、分離エネルギを低減することができる(
図10:破線枠内)。
【0069】
さらに、本実施形態のガス分離装置1では、2段目の第2分離器20は、第2分離器20からの分離ガスに占める特定ガスの濃度(第2濃度、二酸化炭素純度)を95%以上とするため、得られる特定ガス純度を、後工程(例えば、特定ガスの圧縮工程、特定ガスを用いた燃料製造工程等)での利用にあたって好ましい純度まで高純度化できる。
【0070】
さらに、本実施形態のガス分離装置1では、混合ガスからの特定ガスの回収率が95%以上であるため、混合ガスからの特定ガス回収率を高くできる。
【0071】
さらに、本実施形態のガス分離装置1では、2段目の第2分離器20が有する吸着塔の数は1(
図2:吸着塔20a)であるため、ガス分離装置1の構成をシンプルにして、装置の大型化を抑制し、低コスト化を図ることができる。
【0072】
<第2実施形態>
図11は、第2実施形態のガス分離装置1Aの構成を例示した説明図である。第2実施形態のガス分離装置1Aは、第1実施形態で説明した構成において、第1分離器10に代えて第1分離器10Aを備え、制御装置50に代えて50Aを備える。第1分離器10Aは、2つの吸着塔10a,10bを備えており、第1実施形態で説明したバイパス流路16、混合ガス流路11c、排出ガス流路12c、循環流路13c、及び廃棄ガス流路14cを備えていない。制御装置50Aは、各流路上に設けられた各弁の開閉によって、
図12及び
図13に説明する各工程を実行する。
【0073】
図12は、第2実施形態のガス分離装置1Aの工程図である。
図13は、第1分離器10Aの第1吸着塔10aにおける工程遷移を表す図である。第1分離器10Aの吸着塔10a,10bでは、第1実施形態で説明した吸着工程Adsが、次のa11,a12に示す2工程に分かれている。
(a11)第1吸着工程Ads:吸着塔10a,10bに混合ガスを供給し、吸着塔10a,10bの第1吸着材100に二酸化炭素を吸着させる工程。二酸化炭素吸着後のガスの少なくとも一部は、廃棄ガスとして排出される。二酸化炭素吸着後のガスの残部は、Light Reflux工程において使用される。
(a12)吸着及びHeavy Reflux工程Ads+HR:吸着塔10a,10bに混合ガスを供給すると共に、Light Reflux工程からの出ガスを、循環流路13a,13bを介して吸着塔10a,10bに供給し、第1吸着材100に二酸化炭素を吸着させる工程。二酸化炭素吸着後のガスは、廃棄ガスとして排出される。
【0074】
図12に示すように、第1分離器10Aでは、吸着工程Adsの開始後と、終了前とにおいてそれぞれ第1吸着工程Adsが実行される。そして、これら第1吸着工程Adsの間に、吸着及びHeavy Reflux工程Ads+HRが実行される。第2実施形態の例でも、第2分離器20の1サイクル時間は、第1分離器10Aにおける吸着工程Adsの実行時間tads1と等しく、第1分離器10Aの1/2サイクル時間である。換言すれば、第2分離器20は、第1分離器10Aにおける吸着工程Adsの実行時間tads1を1サイクルとして、二酸化炭素の吸着と脱離を繰り返す。また、第2分離器20の吸着塔20aにおける吸着工程Adsの実行時間tads2は、第1分離器10Aにおける脱離時間Desの実行時間tdes1と等しい。そして、
図12に示すように、第2分離器20では、吸着工程Adsが各サイクルの最初に実行されることによって、第2分離器20における吸着工程Adsの実施タイミングと、第1分離器10Aにおける脱離工程Desの実施タイミングとが等しい。このため、第1分離器10Aから第2分離器20へと間欠的に排出ガスが供給される場合であっても、間欠的に供給された排出ガスを第2分離器20において吸着させることができ、第1分離器10Aと第2分離器20との間にバッファ(中間タンク等)を要することなく、ガスを連続処理できる。
【0075】
このように、第1分離器10Aに設けられる吸着塔の数は任意に変更できる。また、第2分離器20に設けられる吸着塔の数についても同様に、第2分離器20の吸着塔数が、第1分離器10Aの吸着塔数よりも少ない限りにおいて、任意に変更してよい。例えば、第1分離器10Aの吸着塔数=6、第2分離器20の吸着塔数=2とすれば、第1実施形態で説明したと同様の工程編成でガスを処理できる。例えば、第1分離器10Aの吸着塔数=4、第2分離器20の吸着塔数=2とすれば、第2実施形態で説明したと同様の工程編成でガスを処理できる。このような第2実施形態のガス分離装置1Aにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0076】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。また、上記実施形態において、ハードウェアによって実現されるとした構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されるとした構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0077】
[変形例1]
上記実施形態では、ガス分離装置1,1Aの構成の一例を示した。しかし、ガス分離装置の構成は種々の変形が可能である。例えば、二酸化炭素の脱離手段(第1脱離部31、第2脱離部32)として、真空ポンプを用いた圧力スイング法を用いる場合を例示したが、二酸化炭素の脱離手段としては、熱による温度差を利用した温度スイング法や、圧力と熱を併用した温度圧力スイング法を採用してもよい。温度スイング法の場合、第1脱離部31及び第2脱離部32として、熱供給装置を用いればよい。温度圧力スイング法の場合、第1脱離部31及び第2脱離部32として、真空ポンプと熱供給装置とを用いればよい。
【0078】
例えば、第1分離器10,10A及び第2分離器20の吸着塔に収容される第1吸着剤100、第2吸着材200には、同じものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。
【0079】
例えば、第1分離器10,10Aにおける第1濃度は、10%よりも小さくてもよく、85%よりも大きくてもよい。例えば、第2分離器20における第2濃度は、95%よりも小さくてもよい。例えば、ガス分離装置1,1Aにおける特定ガス回収率は、95%よりも小さくてもよい。
【0080】
[変形例2]
上記実施形態では、ガス分離装置1,1Aにおいて実行される工程編成の一例を示したしかし、工程編成は種々の変更が可能である。例えば、第1分離器10,10Aにおける吸着工程の時間tads1と、第2分離器20の1サイクル時間とは相違していてもよい。例えば、第1分離器10,10Aにおける脱離工程の時間tdes1と、第2分離器20における吸着工程の時間tads2と、は相違してもよい。
【0081】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0082】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
ガス分離装置であって、
混合ガスに含まれる特定ガスを第1濃度に濃縮する第1分離器と、
前記第1分離器よりも下流側に設けられ、前記特定ガスを前記第1濃度よりも高い第2濃度に濃縮する第2分離器と、
前記第1分離器から前記特定ガスを脱離させる第1脱離部と、
前記第2分離器から前記特定ガスを脱離させる第2脱離部と、
を備え、
前記第1分離器と、前記第2分離器とは、それぞれ、前記特定ガスを吸着する吸着材が収容された吸着塔を有しており、
前記第1分離器が有する前記吸着塔の数は、前記第2分離器が有する前記吸着塔の数よりも多い、ガス分離装置。
[適用例2]
適用例1に記載のガス分離装置であって、
前記第1分離器が有する前記吸着塔の数をN(Nは任意の自然数)とし、
前記第1分離器の各前記吸着塔において、前記混合ガス中の前記特定ガスを前記吸着材に吸着させる吸着工程の時間をtads1としたとき、
前記第1分離器は、N×tads1を1サイクルとして、前記特定ガスの吸着と脱離とを繰り返し、
前記第2分離器は、前記第1分離器の吸着工程の時間tads1を1サイクルとして、前記特定ガスの吸着と脱離とを繰り返す、ガス分離装置。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載のガス分離装置であって、
前記第1分離器の各前記吸着塔において、前記吸着材から前記特定ガスを脱離させる脱離工程の時間をtdes1とし、
前記第2分離器の前記吸着塔において、前記混合ガス中の前記特定ガスを前記吸着材に吸着させる吸着工程の時間をtads2としたとき、
前記第1分離器における脱離工程の時間tdes1と、前記第2分離器における吸着工程の時間tads2とが等しい、ガス分離装置。
[適用例4]
適用例1から適用例3のいずれか一項に記載のガス分離装置であって、
前記第1濃度は、前記第1分離器からの排出ガスに占める前記特定ガスの濃度であり、
前記第1分離器は、前記第1濃度を10%以上、かつ、85%以下とする、ガス分離装置。
[適用例5]
適用例1から適用例4のいずれか一項に記載のガス分離装置であって、
前記第1分離器は、前記第1濃度を25%以上、かつ、70%以下とする、ガス分離装置。
[適用例6]
適用例1から適用例5のいずれか一項に記載のガス分離装置であって、
前記第2濃度は、前記第2分離器からの分離ガスに占める前記特定ガスの濃度であり、
前記第2分離器は、前記第2濃度を95%以上とする、ガス分離装置。
[適用例7]
適用例1から適用例6のいずれか一項に記載のガス分離装置であって、
前記混合ガスからの前記特定ガスの回収率が95%以上である、ガス分離装置。
[適用例8]
適用例1から適用例7のいずれか一項に記載のガス分離装置であって、
前記第2分離器が有する前記吸着塔の数は1である、ガス分離装置。
【符号の説明】
【0083】
1,1A…ガス分離装置
1x,1y,1z…ガス分離装置(比較例)
10,10A…第1分離器
10a…第1吸着塔
10b…第2吸着塔
10c…第3吸着塔
11a,11b,11c…混合ガス流路
12a,12b,12c…排出ガス流路
13a,13b,13c…循環流路
14a,14b,14c…廃棄ガス流路
15,16…バイパス流路
20…第2分離器
20a…吸着塔
21…混合ガス流路
22…排出ガス流路
23…循環流路
24…廃棄ガス流路
31…第1脱離部
32…第2脱離部
41…分離ガス流路
42…廃棄ガス流路
50,50A…制御装置
100…第1吸着材
200…第2吸着材