(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011757
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ステントグラフト及び医療システム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/07 20130101AFI20240118BHJP
【FI】
A61F2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114010
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】榎本 加央里
(72)【発明者】
【氏名】江指 慶春
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA16
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC20
4C097MM10
4C097ZZ00
(57)【要約】
【課題】血管内に留置したステントグラフトの合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)の発生を早期に非侵襲的に検出することを可能にする。
【解決手段】ステントグラフト100は、筒部110と、血管20内で拡径変形することによって、筒部の内腔を保持するワイヤー部120と、筒部の外面110aに配置されたワイヤー部に配置された検出部130と、を有する。検出部は、ステントグラフトの血管内への留置時に、筒部の上流部及び/又は下流部において、ワイヤー部と血管の血管壁21との間に配置されるとともに、検出部と血管壁との間の血液の流通状態の変化に基づく圧力変化を検出するように構成されたパッシブ型のセンサ131を有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液が流通可能な内腔を有する筒部と、
前記筒部の内面又は前記筒部の外面に配置され、拡径変形及び縮径変形可能に構成され、血管内で拡径変形することによって前記筒部の前記内腔を保持するワイヤー部と、
前記筒部の前記外面において前記筒部の内面に配置された前記ワイヤー部と重なる位置又は前記筒部の前記外面に配置された前記ワイヤー部に配置された検出部と、を備えたステントグラフトであって、
前記筒部は、前記ワイヤー部を拡径して前記ステントグラフトを前記血管内に留置した際に、前記血管の上流側に位置する上流部と、前記血管の下流側に位置する下流部と、前記上流部と前記下流部との間に位置する中間部と、を有し、
前記検出部は、前記ステントグラフトの前記血管内への留置時に、前記筒部の前記上流部及び/又は前記下流部において、前記ワイヤー部と前記血管の血管壁との間に配置されるとともに、前記検出部と前記血管壁との間の前記血液の流通状態の変化に基づく圧力変化を検出するように構成されたパッシブ型のセンサを有する、ステントグラフト。
【請求項2】
前記ワイヤー部は、前記ステントグラフトの前記血管内への留置時に、前記筒部の前記上流部及び/又は前記下流部において、前記筒部の前記外面と前記血管壁との間に前記血液が流通することを抑制するシール形成部を有し、
前記センサは、前記ステントグラフトの前記血管内への留置時に、前記ワイヤー部の前記シール形成部と前記血管壁との間に配置される、請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項3】
前記センサは、前記ステントグラフトの前記血管内への留置時に、前記検出部と前記血管壁との間に流入する前記血液から受ける圧力を検出可能に構成された流体圧感知型センサである、請求項1又は請求項2に記載のステントグラフト。
【請求項4】
前記センサは、前記筒部の前記外面と対向する面と反対側に感圧面と、前記センサの前記感圧面の周囲を覆うとともに前記筒部の前記外面から離間する方向に前記感圧面よりも突出したリブと、前記リブの突出端に囲まれた前記感圧面と対向する開口部と、前記開口部、前記リブ及び前記感圧面によって画成された空隙と、を有し、
前記センサの前記感圧面は、前記開口部を通じて前記空隙内に前記血液が流入した際に前記検出部の周囲の血流によって生じた圧力変化を検出可能に構成されている、請求項3に記載のステントグラフト。
【請求項5】
前記センサは、前記ステントグラフトの前記血管内への留置時に、前記検出部と前記血管壁との接触圧を検出可能に構成された接触圧感知型センサである、請求項1又は請求項2に記載のステントグラフト。
【請求項6】
前記センサは、前記筒部の前記外面から離間する方向に、前記検出部の他の部分よりも隆起した感圧部を有し、
前記感圧部は、前記筒部の前記外面と対向する面と反対側に、前記ステントグラフトの前記血管内への留置時に前記血管壁と接触するように構成された接触面を有している、請求項5に記載のステントグラフト。
【請求項7】
前記筒部の前記外面又は前記ワイヤー部には、複数の前記検出部が配置されており、
複数の前記検出部は、前記ワイヤー部に巻き付けられているか、前記ワイヤー部に沿って連続的に配列されているか、若しくは前記ワイヤー部に沿って互いに間隔を空けて配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のステントグラフト。
【請求項8】
前記ワイヤー部は、前記筒部の全周に沿って配置されており、
複数の前記検出部は、前記ワイヤー部とともに前記筒部の全周に沿って配置されている、請求項7に記載のステントグラフト。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のステントグラフトと、
前記検出部との間で各種の情報を送受信する外部装置と、を有し、
前記外部装置は、前記検出部から送信される検出結果の受信及び前記検出部への所定の動作指令の送信を行う送受信部と、前記送受信部が受信した前記検出結果に基づいて、前記検出部と前記血管壁との間における前記血液の流通状態を判断する判断部と、を有し、
前記判断部は、前記ステントグラフトが前記血管内に留置された初期段階において前記センサが検出した検出結果又は予め設定された所定値を基準値と定義し、前記基準値に対して前記センサが検出する圧力が所定の閾値を越えて乖離している場合に、前記検出部と前記血管壁との間に血流が生じているものと判断する、医療システム。
【請求項10】
前記外部装置は、前記判断部が前記検出部と前記血管壁との間に血流が生じていることを判断した場合に推奨される処置内容を選択する選択部と、前記判断部の判断結果及び前記推奨される処置内容を報知する報知部と、を有する、請求項9に記載の医療システム。
【請求項11】
前記外部装置は、前記ステントグラフトの留置対象となる生体と非接触の状態において前記センサと前記送受信部との間の通信状態をOFFに維持し、前記生体との接触に伴って前記送受信部と前記センサとの間の通信状態をONに切り替える通信状態切替用の電極部を有する、請求項9又は請求項10に記載の医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントグラフト及び医療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の大動脈に生じた瘤(大動脈瘤)は、瘤径の増大、破裂を防ぐ薬物的治療はなく、破裂の危険を伴う瘤径のものに対しては、一般的に外科的療法(手術)が行われる。また、大動脈瘤の手術は、従来、開腹又は開胸して人工血管を移植する人工血管置換術が主流であったが、近年では、より低侵襲なステントグラフト内挿術(Endovascular Aneurysm Repair;EVAR)の適用が急速に拡大しつつある。
【0003】
一例として、腹部大動脈瘤(AAA:Abdominal aortic aneurysm)に対するステントグラフト内挿術においては、先端にステントグラフトを収容したカテーテルを患者の大腿部動脈から挿入し、ステントグラフトを動脈瘤患部に展開・留置することにより、動脈瘤への血流が遮断されて動脈瘤の破裂が防止され得る。
【0004】
一般的に、ステントグラフト内挿術で使用されるステントグラフトは、略Y字状に分岐した分岐部を備える「主本体部」と、分岐部に装着されるとともに右腸骨動脈及び左腸骨動脈にそれぞれ装着される「脚部」の2種類の部材を組み立てられる構造を有している。
【0005】
そのため、ステントグラフト内挿術において、内挿したステントグラフトの密着不足によるステントグラフト周囲からの血液漏れ、動脈瘤から枝分れした細い血管(側枝血管)からの血液の逆流、ステントグラフトの継ぎ目や裂け目からの血液漏れ、ステントグラフト自体からの血液の滲み出しなどにより、動脈瘤内に血流が残存する、所謂「エンドリーク」が生じることがある。この場合、動脈瘤内に浸入した血流によって動脈瘤壁に圧がかかってしまうため、動脈瘤破裂の危険性が潜在する。
【0006】
ステントグラフト治療に関連する合併症は、上記のエンドリークのほか、ステントグラフトの位置がずれる、所謂「マイグレーション」、瘤再拡大などがある。一般的に、合併症の兆候は、コンピュータ断層撮影(CT)検査によって診断されている。しかしながら、CT検査は被ばくリスクがあり頻繁に実施できないことから、合併症の兆候の判断をCT検査のみでよって行うことは困難な場合がある。このため、例えば、確定診断以外のトレンドや兆候の把握などといった検査のみを別の検査で代替し、確定診断のみをCT検査を実施することで、撮影による被ばく回数を減らすようなアプローチが考えられる。そのため、合併症の徴候をより簡単に検出できるようにすることが求められている。
【0007】
ステントグラフトを適切な位置に留置させた場合においても、通常、ステントグラフトを含んだ形での血管内皮形成は数か月といった時間軸で形成される。このため、血管とステントグラフトとは、即時に密着しない。また、ステントグラフトが本来留置したい位置や向きで留置できたとしても、拍動によってずれてしまう場合もある。さらには、エンドリークによって瘤の再拡大が発生し、血管とステントグラフトの密着部分が狭くなった結果、ステントグラフトがずれてしまう場合もある。
【0008】
下記特許文献1は、動脈瘤内の圧力の高まりを検出するために、ステントグラフトの外面上に圧力センサを配置することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、動脈瘤内の圧力の高まりを検出するだけでは、ステントグラフトの合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)を早期に検出することは困難であり、病院でのCT検査によってはじめて合併症が発生しているのかが判明する。このため、術者は、必要な処置を適切なタイミングに行うことが難しくなる。
【0011】
本発明は、血管内に留置したステントグラフトの合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)の発生を早期に非侵襲的に検出することが可能であり、上記の合併症に対する術者による必要な処置を早期に行うことを支援できる、ステントグラフト及び医療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、血液が流通可能な内腔を有する筒部と、前記筒部の内面又は前記筒部の外面に配置され、拡径変形及び縮径変形可能に構成され、血管内で拡径変形することによって前記筒部の前記内腔を保持するワイヤー部と、前記筒部の前記外面において前記筒部の内面に配置された前記ワイヤー部と重なる位置又は前記筒部の前記外面に配置された前記ワイヤー部に配置された検出部と、を備えたステントグラフトである。前記筒部は、前記ワイヤー部を拡径して前記ステントグラフトを前記血管内に留置した際に、前記血管の上流側に位置する上流部と、前記血管の下流側に位置する下流部と、前記上流部と前記下流部との間に位置する中間部と、を有する。前記検出部は、前記ステントグラフトの前記血管内への留置時に、前記筒部の前記上流部及び/又は前記下流部において、前記ワイヤー部と前記血管の血管壁との間に配置されるとともに、前記検出部と前記血管壁との間の前記血液の流通状態の変化に基づく圧力変化を検出するように構成されたパッシブ型のセンサを有する。
【0013】
本発明の他の態様は、上記のステントグラフトと、前記検出部との間で各種の情報を送受信する外部装置と、を有する、医療システムである。前記外部装置は、前記検出部から送信される検出結果の受信及び前記検出部への所定の動作指令の送信を行う送受信部と、前記送受信部が受信した前記検出結果に基づいて、前記検出部と前記血管壁との間における前記血液の流通状態を判断する判断部と、を有する。前記判断部は、前記ステントグラフトが前記血管内に留置された初期段階において前記センサが検出した検出結果又は予め設定された所定値を基準値と定義し、前記基準値に対して前記センサが検出する圧力が所定の閾値を越えて乖離している場合に、前記検出部と前記血管壁との間に血流が生じているものと判断する。
【発明の効果】
【0014】
検出部のセンサは、ワイヤー部と血管壁との間に配置されている。血管内に留置したステントグラフトに合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)が生じたときには、検出部と血管壁との間の血液の流通状態の変化に基づく圧力変化が生じる。センサは、この圧力変化を検出する。これによって、血管内に留置したステントグラフトの合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)の発生を早期に非侵襲的に検出することが可能となる。そのため、ステントグラフトの合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)に対する術者による必要な処置を早期に行うことを支援できる。パッシブ型のセンサは、電源を備えることなく上記の圧力変化を検出することができる。このため、検出部の構成を簡素化できる。上記のセンサを有することによって、コンピュータ断層撮影(CT)検査をすることなく、ステントグラフトの合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)を検出できる。CT検査は、必要な場合にのみ追加して行えばよい。このため、患者の被ばく量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1に係る医療システムを用いて、血管内に留置したステントグラフトの合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)の発生を検出する様子を模式的に示す図である。
【
図2】
図2(a)は実施形態1に係るステントグラフトを示す斜視図、
図2(b)は医療システムの外部装置を示す正面図である。
【
図3】
図3(a)は
図2(a)の3a部を示す拡大図、
図3(b)は
図2(a)の3b部を示す拡大図、及び
図3(c)は
図2(a)の3c部を示す拡大図である。
【
図4】
図4(a)は実施形態1に係るステントグラフトの要部を示す断面図、
図4(b)は実施形態1に係るパッシブ型のセンサを示す斜視図である。
【
図5】実施形態1に係る外部装置のGUI(グラフィカルユーザインターフェース)の一例を示す図である。
【
図6】実施形態1に係る外部装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】ステントグラフト内挿術によって血管内の動脈瘤付近にステントグラフトを留置した状態を示す断面図である。
【
図8】実施形態1に係る医療システムによる検査手順を示すフローチャートである。
【
図9】検出部と血管壁との間の血液の流通が抑制された状態において、ステントグラフトの要部及び血管壁を示す断面図である。
【
図10】検出部と血管壁との間の血液の流通が発生した状態において、ステントグラフトの要部及び血管壁を示す断面図である。
【
図11】変形例1に係る外部装置の構成を示すブロック図である。
【
図12】変形例1に係る医療システムによる検査手順を示すフローチャートである。
【
図13】
図13(a)は変形例2に係るステントグラフトの要部を示す断面図、
図13(b)は変形例2に係るパッシブ型のセンサを示す斜視図である。
【
図14】
図14(a)は変形例3に係るステントグラフトの要部を示す断面図、
図14(b)は変形例3に係るパッシブ型のセンサを示す斜視図である。
【
図15】変形例3に係る医療システムによる検査手順を示すフローチャートである。
【
図16】変形例4に係る医療システムによる検査手順を示すフローチャートである。
【
図17】変形例5に係るセンサの配置形態を示す拡大図である。
【
図18】変形例6に係るセンサの配置形態を示す拡大図である。
【
図19】変形例7に係るセンサの配置形態を示す拡大図である。
【
図20】変形例7に係るステントグラフトの要部を示す断面図である。
【
図21】実施形態2のステントグラフトの要部を示す断面図である。
【
図22】実施形態2の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。よって、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0017】
また、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0018】
なお、本明細書において、「第1」、「第2」などの序数詞を付すこともある。しかしながら、これら序数詞に関する特段の説明がない限りは、説明の便宜上、構成要素を識別するために付したものであって、数又は順序を特定するものではない。また、「端部」とは。軸方向の端から一定の範囲を含む領域を意味する。
【0019】
<実施形態1>
図1~
図10を参照して、本発明の実施形態1を説明する。
【0020】
図1~
図7は、実施形態1に係るステントグラフト100の構成の説明に供する図である。
図8~
図10は、実施形態1に係る医療システム10の使用例の説明に供する図である。
【0021】
図1に示すように、実施形態1に係る医療システム10は、血管20内に留置したステントグラフト100の合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)の発生を検出するために使用される。医療システム10は、血管20内に留置したステントグラフト100と、ステントグラフト100に配置された検出部130との間で各種の情報を送受信する外部装置200と、を有する。
【0022】
(ステントグラフト100)
図2(a)、
図3(a)、
図3(b)、及び
図3(c)に示すように、実施形態1に係るステントグラフト100は、筒部110と、ワイヤー部120と、検出部130と、を有する。ステントグラフト100は、図示しないデリバリー装置(デリバリーカテーテル)によって血管20内へと送達され、展開・拡張されることで所望の血管20内に留置される(
図7を参照)。
【0023】
筒部110は、血液が流通可能な内腔111を有する。筒部110は、本体チューブ112と、本体チューブ112から二股に分岐する第1分岐チューブ113と、第2分岐チューブ114と、を有する。本体チューブ112は、比較的大径に形成され、第1分岐チューブ113及び第2分岐チューブ114は本体チューブ112に比較して小径に形成されている。筒部110は、生体適合性を有するポリエステル等の樹脂の糸で織られた織物(ファブリック)から円筒状に形成されている。
【0024】
ワイヤー部120は、筒部110の外面110aに配置され、拡径変形及び縮径変形可能に構成されている。ワイヤー部120は、血管20内で拡径変形することによって筒部110の内腔111を保持する。ワイヤー部120は、自己拡張可能又はバルーン拡張可能に形成され、筒部110を血管20内に保持し得るように形成されている。ワイヤー部120は、ニッケルチタン合金やステンレス等から形成されている。
【0025】
図2(a)に示すように、ステントグラフト100は、本体チューブ112の端部に取り付けられた鉤170を有する。鉤170は、血管壁21にアンカリングする。
【0026】
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)、及び
図4(a)に示すように、検出部130は、筒部110の外面110aに配置されたワイヤー部120に配置されている。
【0027】
図2(a)、
図7に示すように、筒部110は、ワイヤー部120を拡径してステントグラフト100を血管20内に留置した際に、血管20の上流側に位置する上流部115と、血管20の下流側に位置する下流部116、117と、上流部115と下流部116、117との間に位置する中間部118と、を有する。
図7,
図9.
図10に示すように、シール部160は、筒部110の上流部115及び/又は下流部116、117に形成される。シール部160は、筒部110の外面110aと血管20の血管壁21との間に血液が流通することを抑制する。
【0028】
検出部130は、パッシブ型のセンサ131を有する。センサ131は、ステントグラフト100の血管20内への留置時に、筒部110の上流部115及び/又は下流部116、117において、ワイヤー部120と血管20の血管壁21との間に配置される。センサ131は、検出部130と血管壁21との間の血液の流通状態の変化に基づく圧力変化を検出するように構成される。ここに、センサ131によって検出される「検出部130と血管壁21との間の血液の流通状態の変化に基づく圧力変化」には、検出部130と血管壁21との間に流入する血液から受ける圧力の変化や、検出部130と血管壁21との接触圧の変化が含まれる。実施形態1のセンサ131は、後述するように、検出部130と血管壁21との間に流入する血液から受ける圧力を検出するように構成されている。後述するが、変形例3のセンサ131は検出部130と血管壁21との接触圧を検出するように構成されている。
【0029】
なお、実施形態1のシール部160は、筒部110の上流部115及び下流部116、117に形成される。このため、実施形態1のセンサ131は、筒部110の上流部115及び下流部116、117に配置される。シール部160は、筒部110の上流部115又は下流部116、117に形成することができる。このときには、センサ131は、シール部160が形成される上流部115又は下流部116、117に配置することができる。例えば、弓部大動脈瘤手術において、末梢側(下行)大動脈縫合のみステントグラフトにて代用するオープンステントグラフト法(Frozen elephant trunk 法)の場合において、センサ131は、下流部116、117のみに配置される。
【0030】
ステントグラフト100は、デリバリー装置(デリバリーカテーテル)のシース内に格納される。このため、センサ131は、筒部110やワイヤー部120をシース内に格納するときの邪魔とならないように、小型であることが好ましい。
【0031】
パッシブ型のセンサ131は、電源を備えることなく上記の圧力変化を検出することができる。このため、検出部130の構成を簡素化できる。
【0032】
実施形態1のセンサ131は、血管20内に留置したステントグラフト100の合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)を以下のように検出できる。
【0033】
センサ131は、ステントグラフト100の血管20内への留置時に、筒部110の上流部115及び/又は下流部116、117において、ワイヤー部120と血管壁21との間に配置される。Type1のエンドリークは、シール部160からのリークである。このため、ワイヤー部120と血管壁21との間に配置したセンサ131は、Type1のエンドリークを検出できる。
【0034】
ステントグラフト100の位置がずれるときには、シール部160に血液の流入が少なからず生じる。このため、ワイヤー部120と血管壁21との間に配置したセンサ131は、マイグレーションを検出できる。
【0035】
瘤再拡大の場合、以下のような現象が起きることが知られている。ステントグラフト100を留置した後に瘤が再拡大すると、ステントグラフト100のシール部160の長手方向長さは、瘤の拡大に伴って当初よりも短くなる。シール性は、シール部160が短くなると低下する。このため、シール部160に血液の流入が生じる。この流れによって、Type1のエンドリークやマイグレーション、あるいは、それらの両方が発生する。ワイヤー部120と血管壁21との間に配置したセンサ131は、上記のようにType1のエンドリークやマイグレーションを検出できる。
【0036】
Type2のエンドリークに関しては、Type2のエンドリークが発生した結果、瘤が再拡大する場合では、ワイヤー部120と血管壁21との間に配置したセンサ131は、上記のように検出できる。
【0037】
したがって、ステントグラフト100の血管20内への留置時に、筒部110の上流部115及び/又は下流部116、117において、ワイヤー部120と血管壁21との間にセンサ131を配置し、圧力の変化を追うことによって、シール性を間接的に評価できる。これにより、ステントグラフト100の主な合併症である、エンドリーク、マイグレーション、及び瘤再拡大のすべてを検出できる。
【0038】
図2(a)、
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)、
図7,
図9.
図10に示すように、ワイヤー部120は、ステントグラフト100の血管20内への留置時に、筒部110の上流部115及び/又は下流部116、117において、筒部110の外面110aと血管壁21との間に血液が流通することを抑制するシール形成部を有する。センサ131は、ステントグラフト100の血管20内への留置時に、ワイヤー部120のシール形成部と血管壁21との間に配置される。ワイヤー部120のシール形成部は、ワイヤー部120のうち筒部110の上流部115及び/又は下流部116、117に存在する部分によって構成される。例えば、シール形成部は、ワイヤー部120のうち、
図2(a)の3a部、
図2(a)の3b部、及び
図2(a)の3c部のそれぞれに存在する部分によって構成される。
【0039】
ワイヤー部120のシール形成部は、ステントグラフト100の血管20内への留置時に、筒部110の上流部115及び/又は下流部116、117において、筒部110の外面110aと血管壁21との間に血液が流通することを抑制するシール部160を形成する。また、ステントグラフト100の血管20内への留置時に、ワイヤー部120のシール形成部と血管壁21との間にセンサ131を配置することによって、センサ131は、シール部160における血液の流通状態の変化に基づく圧力変化を検出し易くなる。
【0040】
センサ131は、後述する外部装置からの電波をエネルギー源として動作するために電源を内蔵する必要のない、所謂パッシブ型である限りにおいて具体的な構成は限定されない。例えば、パッシブ型のセンサ131は、ステントグラフト100の血管20内への留置時に、検出部130と血管壁21との間に流入する血液から受ける圧力を検出可能に構成された流体圧感知型センサ140である。
【0041】
流体圧感知型センサ140は、検出部130と血管壁21との間に流入する血液から受ける圧力を検出する。これによって、流体圧感知型センサ140は、シール部160によって血液の流通が抑制された状態にあるか、あるいは、ステントグラフト100の位置ずれ等のために検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生した状態にあるかを検出できる。
【0042】
図4(a)、
図4(b)に示すように、流体圧感知型センサ140は、感圧面141と、リブ142と、開口部143と、空隙144と、を有する。感圧面141は、筒部110の外面110aと対向する面と反対側に形成されている。リブ142は、センサ131の感圧面141の周囲を覆うとともに筒部110の外面110aから離間する方向に感圧面141よりも突出している。開口部143は、リブ142の突出端142aに囲まれ、感圧面141と対向して位置する。空隙144は、開口部143、リブ142及び感圧面141によって画成されている。センサ131の感圧面141は、開口部143を通じて空隙144内に血液が流入した際に検出部130の周囲の血流によって生じた圧力変化を検出可能に構成されている。
【0043】
流体圧感知型センサ140は、例えば、ピエゾ抵抗効果を利用した半導体圧力センサを適用できる。流体圧感知型センサ140は、基板145と、シリコン単結晶板から形成されるダイヤフラム146と、を有する。ダイヤフラム146は、中央部分の本体部146aと、本体部146aの周囲の支持部146bとを有する。ダイヤフラム146は、シリコン層をエッチング等することによって形成される。センサ131の感圧面141は、ダイヤフラム146の表面に形成された複数個の歪ゲージ147を有する。歪ゲージ147は、ダイヤフラム146の表面に不純物をイオン注入などによって拡散させて形成される。流体圧感知型センサ140には、歪ゲージ147によって抵抗ブリッジ回路が形成されている。さらに、流体圧感知型センサ140は、この抵抗ブリッジ回路が可変抵抗として組み込まれたRLC回路と、このRLC回路に接続された送信アンテナを有する。これにより、圧力が感圧面141に加わったときに、抵抗ブリッジ回路における抵抗値が変化し、それに伴ってRLC回路の帯域幅が変化し、送信アンテナからの戻り信号も変化する。そして、送信アンテナからの戻り信号から得られる帯域幅に基づいて、圧力が算出される(米国特許第6111520号明細書を参照)。なお、流体圧感知型センサ140としては、米国特許第7699059号明細書に示されるように、感圧面141で受ける圧力に応じて静電容量が変化するコンデンサを含むLC回路と、このLC回路に接続された送信アンテナを有する静電容量変化型センサとしてもよい。この場合、感圧面141で受ける圧力に応じてLC回路の共振周波数が変化する。このため、後述する外部装置200の送受信部210から周波数を変えながら電波を発信し、流体圧感知型センサ140の送信アンテナから戻り信号が返ってきた周波数を特定することで、圧力が算出される。
【0044】
リブ142は、ダイヤフラム146の感圧面141が血管壁21に張り付くことを防止する。図示例では、リブ142は、ダイヤフラム146とは別体に形成されている。この場合に限定されず、リブ142は、ダイヤフラム146と一体的に成形することができる。
【0045】
図3に示すように、ワイヤー部120には、複数の検出部130が配置されている。複数の検出部130は、ワイヤー部120に沿って互いに間隔を空けて配置されている。
【0046】
複数のセンサ131は、ワイヤー部120に沿った複数の位置において、検出部130と血管壁21との間の血液の流通状態の変化に基づく圧力変化を検出する。このため、複数のセンサ131は、ワイヤー部120に沿った複数の位置において、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生したことを検出できる。
【0047】
ワイヤー部120は、筒部110の全周に沿って配置されている。複数の検出部130は、ワイヤー部120とともに筒部110の全周に沿って配置されている。
【0048】
複数のセンサ131は、筒部110の全周に沿った複数の位置において、検出部130と血管壁21との間の血液の流通状態の変化に基づく圧力変化を検出する。このため、複数のセンサ131は、筒部110の軸線を中心にした複数の方位において、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生したことを検出できる。
【0049】
(外部装置200)
図2(b)、
図5、及び
図6に示すように、外部装置200は、送受信部210と、判断部220と、選択部230と、報知部240と、通信状態切替用の電極部250と、を有する。
【0050】
図6に示すように、送受信部210は、検出部130のセンサ131から送信される検出結果の受信及び検出部130への所定の動作指令の送信を行う。判断部220は、プロセッサ(CPU)から構成される。メモリ221、モニタ241、及び電源222は、プロセッサに接続されている。判断部220は、送受信部210が受信した検出結果に基づいて、検出部130と血管壁21との間における血液の流通状態を判断する。判断部220は、ステントグラフト100が血管20内に留置された初期段階、すなわちステントグラフト100に位置ずれ等が生じていない段階においてセンサ131が検出した検出結果を基準値と定義する。基準値は、血圧値を用いることができる。この場合、初期段階の検出結果を用いることはないため、予め設定された所定値を基準値と定義する。基準値は、例えば、大動脈内の血圧値である。定義した基準値は、メモリ221に保存される。メモリ221は、RAMやROMから構成され、基準値などの種々のデータや、処理プログラムが保存されている。判断部220は、基準値と、センサ131が検出する圧力とを比較する。そして、判断部220は、基準値に対してセンサ131が検出する圧力が所定の閾値を越えて乖離している場合に、検出部130と血管壁21との間に血流が生じているものと判断する。
【0051】
選択部230は、判断部220が検出部130と血管壁21との間に血流が生じていることを判断した場合に推奨される処置内容(バルーニング、ステントグラフト再留置、外科手術よる人工血管置換術など)を選択できる。選択部230は、処置内容を表示するモニタ241などから構成される。
【0052】
報知部240は、判断部220の判断結果及び推奨される処置内容を報知する。報知部240は、アラートを発出するスピーカ(図示せず)や、判断結果及び処置内容を表示するモニタ241などから構成される。
【0053】
通信状態切替用の電極部250は、センサ131と送受信部210との間の通信状態をON/OFFする。電極部250は、外部装置200の上面などに露出して取り付けられている。電極部250は、ステントグラフト100の留置対象となる生体と非接触の状態においてセンサ131と送受信部210との間の通信状態をOFFに維持する。一方、電極部250は、生体との接触に伴って送受信部210とセンサ131との間の通信状態をONに切り替える。
【0054】
電極部250は、生体と接触した状態のときに、送受信部210とセンサ131との間の通信状態をONに切り替える。電波は、生体と接触した状態において発信される。このため、センサ131は、検出部130と血管壁21との間における血液の流通状態の変化に基づく圧力変化を正確に検出できる。
【0055】
図5は、外部装置200のGUI(グラフィカルユーザインターフェース)の一例を示している。外部装置200のモニタ241は、送受信部210が受信した検出結果、例えば、「平均圧力値〇〇mmHg」、「圧力の波形」を表示する。モニタ241は、センサ131名の一覧を表示する。センサ名の一覧の中からセンサ名の表示をタッチすることによって、選択したセンサ131が検出した「圧力の波形」を表示する。モニタ241は、判断部220の判断結果、例えば、「判定 リーク検出」を点滅表示する。符号242は、電源222のスイッチの表示である。図示省略するが、モニタ241は、推奨される処置内容を表示できる。
【0056】
(実施形態1の検査手順)
次に、
図8~
図10を参照しつつ、実施形態1に係る医療システム10を使用した検査手順について説明する。
【0057】
図8に示すように、外部装置200(受信機)の電源222をONすると(S101)、判断部220は、外部装置200が生体と接触しているか否かを判断する(S102)。外部装置200が生体と接触していないと判断部220が判断した場合(S102:No)、操作者は電極部250が生体に接触していることを確認する(S103)。処理は、ステップS101に戻る。外部装置200が生体と接触していると判断部220が判断した場合(S102:Yes)、判断部220は、検出部130のセンサ131から送信される検出結果に基づいて、血液から受ける圧力を検出する(S104)。
【0058】
判断部220は、圧力最大値が基準値に対して閾値を越えて乖離しているか否かを判断する(S105)。基準値は、ステントグラフト100が血管20内に留置された初期段階においてセンサ131が検出した検出結果又は予め設定された所定値と定義される。基準値は、例えば、大動脈内の血圧値であり、メモリ221に保存されている。血圧値を基準値として用いる場合、初期段階の検出結果を用いることはない。基準値は、大動脈内の血圧値の所定値が設定される。閾値は、特に限定されず適宜に設定することができる。閾値は、例えば、基準値の120%に設定することができる。
【0059】
圧力最大値が基準値に対して閾値を越えて乖離していない場合、つまり、圧力最大値が基準値の120%未満である場合(S105:No)、シール部160によって検出部130と血管壁21との間の血液の流通が抑制された状態が維持されている。このため、報知部240は良好である旨を報知する(S106)。
【0060】
一方、圧力最大値が基準値に対して閾値を越えて乖離している場合、つまり、圧力最大値が基準値の120%以上である場合(S105:Yes)、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生した状態である。このため、報知部240は、アラートを報知し、判断部220の判断結果及び推奨される処置内容(バルーニングなど)を報知する(S107)。
【0061】
なお、閾値は、基準値の115%から基準値の140%の間で設定するのが好ましい。閾値が基準値の115%未満に設定されている場合、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生しない状態にも関わらず、体動や血管の脈動によって検出される圧力が当該閾値を超え、誤ってアラートが報知される可能性がある。また、閾値が基準値の140%を超えて設定されている場合、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生している状態にも関わらず、アラートが報知されない可能性がある。
【0062】
術者は、報知された推奨される処置内容を実施し、圧力の正規化を実施する(S108)。以上により、処理を終了する。
【0063】
図9に示すように、センサ131は、ステントグラフト100の血管20内への留置時に、ワイヤー部120のシール形成部と血管壁21との間に配置される。シール部160によって検出部130と血管壁21との間の血液の流通が抑制された正常な状態においては、センサ131の空隙144内には血液が流入しない。
図9において、血流は太線矢印によって示される。センサ131は、圧力変化を検出しない。これによって、シール部160によって検出部130と血管壁21との間の血液の流通が抑制された状態であることを検出できる。
【0064】
一方、
図10に示すように、エンドリーク等によって検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生した状態においては、センサ131の空隙144内に血液が流入する。
図10において、血流は太線矢印によって示される。センサ131は、検出部130の周囲の血流によって生じた圧力変化を検出する。検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生したとき、圧力値は高くなる。これによって、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生した状態であることを検出できる。
【0065】
なお、流体圧感知型センサ140を、前述した静電容量変化型センサで構成する場合、以下の手順で、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生した状態であるか否かを検出する。
(1)外部装置200の送受信部210から単一の周波数を数秒間送信し、センサから信号が返ってくるか確認する。
(2)上記を、周波数を段階的に高くしながら実施し、信号が返って来なくなった周波数の1つ前を最大共振周波数として特定する。
(3)特定した最大共振周波数から圧力最大値を算出し、基準値に対して閾値を越えて乖離しているか否かを判定する。
【0066】
(作用効果)
以上のように、実施形態1に係るステントグラフト100は、筒部110と、ワイヤー部120と、検出部130と、を有する。筒部110は、血液が流通可能な内腔111を有する。ワイヤー部120は、筒部110の外面110aに配置され、拡径変形及び縮径変形可能に構成されている。ワイヤー部120は、血管20内で拡径変形することによって筒部110の内腔111を保持する。検出部130は、筒部110の外面110aに配置されたワイヤー部120に配置されている。筒部110は、ワイヤー部120を拡径してステントグラフト100を血管20内に留置した際に、血管20の上流側に位置する上流部115と、血管20の下流側に位置する下流部116、117と、上流部115と下流部116、117との間に位置する中間部118と、を有する。検出部130は、パッシブ型のセンサ131を有する。センサ131は、ステントグラフト100の血管20内への留置時に、筒部110の上流部115及び/又は下流部116、117において、ワイヤー部120と血管壁21との間に配置される。センサ131は、検出部130と血管壁21との間の血液の流通状態の変化に基づく圧力変化を検出するように構成される。
【0067】
このように構成したステントグラフト100は、検出部130のセンサ131が、ワイヤー部120と血管壁21との間に配置されている。血管20内に留置したステントグラフト100に合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)が生じたときには、検出部130と血管壁21との間の血液の流通状態の変化に基づく圧力変化が生じる。センサ131は、この圧力変化を検出する。これによって、血管20内に留置したステントグラフト100の合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)の発生を早期に非侵襲的に検出することが可能となる。そのため、ステントグラフト100の合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)に対する術者による必要な処置を早期に行うことを支援できる。パッシブ型のセンサ131は、電源を備えることなく上記の圧力変化を検出することができる。このため、検出部130の構成を簡素化できる。上記のセンサ131を有することによって、コンピュータ断層撮影(CT)検査をすることなく、ステントグラフト100の合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)を検出できる。CT検査は、必要な場合にのみ追加して行えばよい。このため、患者の被ばく量を低減できる。
【0068】
ワイヤー部120は、ステントグラフト100の血管20内への留置時に、筒部110の上流部115及び/又は下流部116、117において、筒部110の外面110aと血管壁21との間に血液が流通することを抑制するシール形成部を有する。センサ131は、ステントグラフト100の血管20内への留置時に、ワイヤー部120のシール形成部と血管壁21との間に配置される。ワイヤー部120のシール形成部によって、筒部110の外面110aと血管壁21との間に血液が流通することを抑制するシール部160を形成できる。また、ステントグラフト100の血管20内への留置時に、ワイヤー部120のシール形成部と血管壁21との間にセンサ131を配置することによって、センサ131は、シール部160における血液の流通状態の変化に基づく圧力変化を検出し易くなる。
【0069】
センサ131は、ステントグラフト100の血管20内への留置時に、検出部130と血管壁21との間に流入する血液から受ける圧力を検出可能に構成された流体圧感知型センサ140である。流体圧感知型センサ140は、検出部130と血管壁21との間に流入する血液から受ける圧力を検出する。これによって、流体圧感知型センサ140は、シール部160によって血液の流通が抑制された状態にあるか、あるいは、ステントグラフト100の位置ずれ等のために検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生した状態にあるかを検出できる。
【0070】
センサ131は、感圧面141と、リブ142と、開口部143と、空隙144と、を有する。感圧面141は、筒部110の外面110aと対向する面と反対側に形成されている。リブ142は、センサ131の感圧面141の周囲を覆うとともに筒部110の外面110aから離間する方向に感圧面141よりも突出している。開口部143は、リブ142の突出端142aに囲まれ、感圧面141と対向して位置する。空隙144は、開口部143、リブ142及び感圧面141によって画成されている。センサ131の感圧面141は、開口部143を通じて空隙144内に血液が流入した際に検出部130の周囲の血流によって生じた圧力変化を検出可能に構成されている。このように構成したセンサ131によれば、リブ142によって、感圧面141が血管壁21に張り付くことが防止される。センサ131は、開口部143を通じて空隙144内に血液が流入したとき、検出部130の周囲の血流によって生じた圧力変化を検出できる。
【0071】
ワイヤー部120には、複数の検出部130が配置されている。複数の検出部130は、ワイヤー部120に沿って互いに間隔を空けて配置されている。複数のセンサ131は、ワイヤー部120に沿った複数の位置において、検出部130と血管壁21との間の血液の流通状態の変化に基づく圧力変化を検出する。このため、複数のセンサ131は、ワイヤー部120に沿った複数の位置において、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生したことを検出できる。
【0072】
ワイヤー部120は、筒部110の全周に沿って配置されている。複数の検出部130は、ワイヤー部120とともに筒部110の全周に沿って配置されている。このように構成することによって、複数のセンサ131は、筒部110の全周に沿った複数の位置において、検出部130と血管壁21との間の血液の流通状態の変化に基づく圧力変化を検出する。このため、複数のセンサ131は、筒部110の軸線を中心にした複数の方位において、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生したことを検出できる。
【0073】
医療システム10は、上記のステントグラフト100と、ステントグラフト100に配置された検出部130との間で各種の情報を送受信する外部装置200と、を有する。外部装置200は、送受信部210と、判断部220と、を有する。送受信部210は、検出部130から送信される検出結果の受信及び検出部130への所定の動作指令の送信を行う。判断部220は、送受信部210が受信した検出結果に基づいて、検出部130と血管壁21との間における血液の流通状態を判断する。判断部220は、ステントグラフト100が血管20内に留置された初期段階においてセンサ131が検出した検出結果又は予め設定された所定値を基準値と定義し、基準値に対してセンサ131が検出する圧力が所定の閾値を越えて乖離している場合に、検出部130と血管壁21との間に血流が生じているものと判断する。このように構成した医療システム10によれば、血管20内に留置したステントグラフト100の合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)の発生を早期に非侵襲的に検出することが可能となる。そのため、ステントグラフト100の合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)に対する術者による必要な処置を早期に行うことを支援できる。コンピュータ断層撮影(CT)検査をすることなく、ステントグラフト100の合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)を検出できる。CT検査は、必要な場合にのみ追加して行えばよい。このため、患者の被ばく量を低減できる。
【0074】
外部装置200は、選択部230と、報知部240と、を有する。選択部230は、判断部220が検出部130と血管壁21との間に血流が生じていることを判断した場合に推奨される処置内容(バルーニングなど)を選択する。報知部240は、判断部220の判断結果及び推奨される処置内容を報知する。このように構成した医療システム10によれば、ステントグラフト100の合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)に対する術者による必要な処置を早期に行うことを支援できる。
【0075】
外部装置200は、通信状態切替用の電極部250を有する。電極部250は、ステントグラフト100の留置対象となる生体と非接触の状態においてセンサ131と送受信部210との間の通信状態をOFFに維持する。一方。電極部250は、生体との接触に伴って送受信部210とセンサ131との間の通信状態をONに切り替える。このように構成した医療システム10によれば、電波は、生体と接触した状態において発信される。このため、センサ131は、検出部130と血管壁21との間の血液の流通状態の変化に基づく圧力変化を正確に検出できる。
【0076】
次に、上述した実施形態1の変形例を説明する。以下の説明では、既に説明した内容についての重複した説明を省略する。また、以下の説明で特に言及しない内容については、上述した実施形態と同一のものとすることができる。
【0077】
<変形例1>
図11、
図12を参照しつつ、変形例1に係る医療システム10について説明する。
【0078】
図11に示すように、変形例1に係る医療システム10の外部装置201は、通信状態切替用の電極部250を備えていない点において、実施形態1の外部装置200(
図6)と相違する。共通する構成の説明は省略する。
【0079】
図12を参照しつつ、変形例1に係る医療システム10を使用した検査手順について説明する。
【0080】
図12に示すように、変形例1の検査手順は、実施形態1の検査手順(
図8)と比較して、ステップS102及びステップS103における処理が必要ない。ステップS301、S302~S306における処理は、ステップS101、S104~S108における処理と同様である。共通する処理の説明は省略する。
【0081】
<変形例2>
図13(a)、
図13(b)を参照しつつ、変形例2に係るパッシブ型のセンサ131について説明する。
【0082】
変形例2に係るパッシブ型のセンサ131は、実施形態1と同様に、流体圧感知型センサ140である。流体圧感知型センサ140は、感圧面141と、リブ142と、開口部143と、空隙144と、を有する。感圧面141は、筒部110の外面110aと対向する面と反対側に形成されている。リブ142は、センサ131の感圧面141の周囲を覆うとともに筒部110の外面110aから離間する方向に感圧面141よりも突出している。開口部143は、リブ142の突出端142aに囲まれ、感圧面141と対向して位置する。空隙144は、開口部143、リブ142及び感圧面141によって画成されている。センサ131の感圧面141は、開口部143を通じて空隙144内に血液が流入した際に検出部130の周囲の血流によって生じた圧力変化を検出可能に構成されている。流体圧感知型センサ140は、実施形態1と同様に、基板145と、ダイヤフラム146と、を有する。
【0083】
変形例2の基板145は、ダイヤフラム146を収納する箱型のハウジング形状を有する。基板145の側壁は、ダイヤフラム146の周囲を覆うとともに筒部110の外面110aから離間する方向に感圧面141よりも突出している。リブ142は、基板145の側壁のうち感圧面141よりも突出した部位によって構成されている。この点において、実施形態1のセンサ131の構成と相違する。
【0084】
変形例2に係る流体圧感知型センサ140は、実施形態1と同様に、検出部130と血管壁21との間に流入する血液から受ける圧力を検出することによって、シール部160によって血液の流通が抑制された状態にあるか、あるいは、ステントグラフト100の位置ずれ等のために検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生した状態にあるかを検出できる。
【0085】
変形例2に係る流体圧感知型センサ140は、基板145がハウジングを兼ねている。この形態に限定されず、ダイヤフラム146及び基板145を収容する別体のハウジングを使用することもできる。
【0086】
<変形例3>
図14(a)、
図14(b)を参照しつつ、変形例3に係るパッシブ型のセンサ131について説明する。
【0087】
センサ131は、パッシブ型である限りにおいて流体圧感知型センサ140に限定されない。例えば、パッシブ型のセンサ131は、ステントグラフト100の血管20内への留置時に、検出部130と血管壁21との接触圧を検出可能に構成された接触圧感知型センサ150である。
【0088】
接触圧感知型センサ150は、検出部130と血管壁21との接触圧を検出することによって、シール部160によって血液の流通が抑制された状態にあるか、あるいは、ステントグラフト100の位置ずれ等のために検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生した状態にあるかを検出できる。
【0089】
図14(a)、
図14(b)に示すように、接触圧感知型センサ150は、筒部110の外面110aから離間する方向に、検出部130の他の部分よりも隆起した感圧部151を有する。感圧部151は、筒部110の外面110aと対向する面と反対側に、ステントグラフト100の血管20内への留置時に血管壁21と接触するように構成された接触面152を有する。感圧部151は、検出部130の他の部分よりも隆起しているため、接触面152が血管壁21に接触し易く、血管壁21からの圧力を確実に受けることができる。これによって、接触圧感知型センサ150の感圧部151は、検出部130と血管壁21との接触圧を検出できる。
【0090】
接触圧感知型センサ150は、実施形態1の流体圧感知型センサ140と同様に、例えば、ピエゾ抵抗効果を利用した半導体圧力センサを適用できる。接触圧感知型センサ150は、基板145と、ダイヤフラム146と、を有する。ダイヤフラム146は、本体部146aと、支持部146bとを有する。複数個の歪ゲージ147は、ダイヤフラム146の表面に形成されている。ダイヤフラム146の上面に、歪ゲージ147を覆うように隆起部153が形成されている。感圧部151は、ダイヤフラム146の本体部146aと、隆起部153とによって構成される。接触圧感知型センサ150には、歪ゲージ147によって抵抗ブリッジ回路が形成されている。さらに、接触圧感知型センサ150は、この抵抗ブリッジ回路が可変抵抗として組み込まれたRLC回路と、このRLC回路に接続された送信アンテナを有する。これにより、検出部130と血管壁21との接触圧が感圧部151に加わったときに、抵抗ブリッジ回路における抵抗値が変化し、それに伴ってRLC回路の帯域幅が変化し、送信アンテナからの戻り信号も変化する。そして、送信アンテナからの戻り信号から得られる帯域幅に基づいて、検出部130と血管壁21との接触圧が算出される(米国特許第6111520号明細書を参照)。なお、接触圧感知型センサ150としては、米国特許第7699059号明細書に示されるように、感圧部151で受ける圧力に応じてLC回路のコンデンサ容量が変化するセンサとしてもよい。
【0091】
図示例では、隆起部153は、ダイヤフラム146とは別体に形成されている。この場合に限定されず、隆起部153は、ダイヤフラム146と一体的に成形することができる。
【0092】
次に、
図15を参照しつつ、変形例3に係る医療システム10を使用した検査手順について説明する。変形例3に係る医療システム10の外部装置200は、実施形態1の外部装置200と同様に構成され(
図6を参照)、通信状態切替用の電極部250を備えている。
【0093】
図15に示すように、変形例3の検査手順は、ステップS504、ステップS505における処理が、上記のステップS104、ステップS105(
図8を参照)における処理と異なる。ステップS501~S503、S506~S508における処理は、ステップS101~S103、S106~S108(
図8を参照)における処理と同様である。共通する処理の説明は一部省略する。
【0094】
変形例3の検査手順のステップS504において、判断部220は、検出部130のセンサ131から送信される検出結果に基づいて、検出部130と血管壁21との接触圧を検出する。
【0095】
判断部220は、接触圧が基準値に対して閾値を越えて乖離しているか否かを判断し、検出部130と血管壁21との間に血流が生じているかを判断する(S505)。この場合の基準値も、ステントグラフト100が血管20内に留置された初期段階においてセンサ131が検出した検出結果又は予め設定された所定値と定義される。基準値はメモリ221に保存されている。閾値は、特に限定されず適宜に設定することができる。閾値は、例えば、下限値を基準値の80%、上限値を基準値の120%に設定することができる。
【0096】
なお、シール部160におけるシールが正常に行われている場合、接触圧は、血圧よりも小さくなる。センサ131は、ステントグラフト100の筒部110の外側に配置される。血圧は筒部110によって、ある程度遮蔽される。センサ131は、筒部110を介して血圧を受け、血管壁21に押しつけられる。そのため、接触圧は、血圧よりも小さくなる。
【0097】
接触圧が基準値に対して閾値を越えて乖離していない場合、つまり、接触圧が基準値の80%~基準値の120%の範囲内である場合(S505:No)、シール部160によって血液の流通が抑制された状態が維持されている。このため、報知部240は良好である旨を報知する(S506)。
【0098】
一方、接触圧が基準値に対して閾値を越えて乖離している場合、つまり、接触圧が基準値の80%未満、又は基準値の120%を超えている場合(S605:Yes)、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生した状態である。接触圧が基準値に対して閾値(上限値)を越えて上がったときのみならず、検出部130が血管壁21から離れて接触圧が基準値に対して閾値(下限値)を越えて下がったときにも、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生したことを検出できる。このため、報知部240は、アラートを報知し、判断部220の判断結果及び推奨される処置内容(バルーニングなど)を報知する(S507)。
【0099】
なお、閾値は、上限値を基準値の115%から140%の間で設定するのが好ましい。閾値(上限値)が基準値の115%未満に設定されている場合、体動や血管の脈動による検出される圧力の変化により、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生しない状態にも関わらず、誤ってアラートが報知される可能性がある。また、閾値(上限値)が基準値の140%を超えて設定されている場合、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生している状態にも関わらず、アラートが報知されない可能性がある。
【0100】
術者は、報知された推奨される処置内容を実施し、センサ131の正規化を実施する(S508)。以上により、処理を終了する。
【0101】
以上のように、変形例3のセンサ131は、ステントグラフト100の血管20内への留置時に、検出部130と血管壁21との接触圧を検出可能に構成された接触圧感知型センサ150である。接触圧感知型センサ150は、検出部130と血管壁21との接触圧を検出することによって、シール部160によって血液の流通が抑制された状態にあるか、あるいは、ステントグラフト100の位置ずれ等のために検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生した状態にあるかを検出できる。
【0102】
センサ131は、筒部110の外面110aから離間する方向に、検出部130の他の部分よりも隆起した感圧部151を有する。感圧部151は、筒部110の外面110aと対向する面と反対側に、ステントグラフト100の血管20内への留置時に血管壁21と接触するように構成された接触面152を有する。このように構成したセンサ131によれば、感圧部151は、検出部130の他の部分よりも隆起しているため、接触面152が血管壁21に接触し易く、血管壁21からの圧力を確実に受けることができる。これによって、接触圧感知型センサ150の感圧部151は、検出部130と血管壁21との接触圧を検出できる。
【0103】
なお、接触圧感知型センサ150を、前述した静電容量変化型センサで構成する場合、以下の手順で、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生した状態であるか否かを検出する。
(1)外部装置200の送受信部210から単一の周波数を数秒間送信し、センサから信号が返ってくるか確認する。
(2)上記を、周波数を段階的に高くしながら実施し、信号が返って来始めた周波数を最小共振周波数として特定するとともに、信号が返って来なくなった周波数の1つ前の周波数を最大共振周波数として特定する。
(3)特定した最小共振周波数と最大共振周波数から接触圧の最小値と最大値を算出し、それらが基準値に対して閾値を越えて乖離しているか否かを判定する。
【0104】
<変形例4>
図16を参照しつつ、変形例4に係る医療システム10を使用した検査手順について説明する。
【0105】
変形例4に係る医療システム10の外部装置201は、変形例1の外部装置201と同様に構成され(
図11を参照)、通信状態切替用の電極部250を備えてない。この点において、変形例3の外部装置200と相違する。共通する構成の説明は省略する。
【0106】
図16に示すように、変形例4の検査手順は、変形例3の検査手順(
図15)と比較して、ステップS502及びステップS503における処理が必要ない。ステップS701、S702~S706における処理は、ステップS501、S504~S508における処理と同様である。共通する処理の説明は省略する。
【0107】
<変形例5>
図17を参照しつつ、変形例5に係るセンサ131の配置形態について説明する。
【0108】
センサ131は、ワイヤー部120に沿って互いに間隔を空けて配置する場合に限られない。変形例5のステントグラフト100は、ワイヤー部120に、複数の検出部130が配置されている。複数の検出部130は、ワイヤー部120に巻き付けられて配置されている。
【0109】
複数のセンサ131は、ワイヤー部120に沿った複数の位置において、検出部130と血管壁21との間の血液の流通状態の変化に基づく圧力変化を検出する。このため、複数のセンサ131は、ワイヤー部120に沿った複数の位置において、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生したことを検出できる。
【0110】
複数の検出部130をワイヤー部120に巻き付けて配置する形態は、複数の検出部130をワイヤー部120に沿って連続的に配列する形態とみなすことができる。
【0111】
実施形態1と同様に、ワイヤー部120は、筒部110の全周に沿って配置されている。複数の検出部130は、ワイヤー部120とともに筒部110の全周に沿って配置されている。
【0112】
<変形例6>
図18を参照しつつ、変形例6に係るセンサ131の配置形態について説明する。
【0113】
変形例6のステントグラフト100は、実施形態1と同様に、ワイヤー部120に、複数の検出部130が配置されている。複数の検出部130は、ワイヤー部120に沿って互いに間隔を空けて配置されている。変形例6における複数の検出部130は、屈曲するワイヤー部120の頂点のみに配置され、頂点同士の間には配置されていない。この点において、実施形態1と相違する。
【0114】
複数のセンサ131は、ワイヤー部120の複数の頂点の位置において、検出部130と血管壁21との間の血液の流通状態の変化に基づく圧力変化を検出する。このため、複数のセンサ131は、ワイヤー部120の複数の頂点の位置において、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生したことを検出できる。
【0115】
実施形態1と同様に、ワイヤー部120は、筒部110の全周に沿って配置されている。複数の検出部130は、ワイヤー部120とともに筒部110の全周に沿って配置されている。
【0116】
<変形例7>
図19、
図20を参照しつつ、変形例7に係るステントグラフト100、及び変形例7に係るセンサ131の配置形態について説明する。
【0117】
ワイヤー部120は、筒部110の外面110aに配置する場合に限られない。
図19、
図20に示すように、変形例7に係るステントグラフト100のワイヤー部120は、筒部110の内面110bに配置され、拡径変形及び縮径変形可能に構成されている。
【0118】
検出部130は、筒部110の外面110aに配置されたワイヤー部120に配置する場合に限られない。変形例7に係るステントグラフト100の検出部130は、筒部110の外面110aにおいて筒部110の内面110bに配置されたワイヤー部120と重なる位置に配置されている。
【0119】
このように構成したステントグラフト100は、実施形態1と同様に、検出部130のセンサ131が、ワイヤー部120と血管壁21との間に配置されている。血管20内に留置したステントグラフト100に合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)が生じたときには、検出部130と血管壁21との間の血液の流通状態の変化に基づく圧力変化が生じる。センサ131は、この圧力変化を検出する。これによって、血管20内に留置したステントグラフト100の合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)の発生を早期に非侵襲的に検出することが可能となる。そのため、ステントグラフト100の合併症(エンドリーク、マイグレーション、瘤再拡大)に対する術者による必要な処置を早期に行うことを支援できる。
【0120】
変形例7のセンサ131は、実施形態1と同様の流体圧感知型センサ140である。変形例7のセンサ131は、基板145が筒部110の外面110aに直接取り付けられている。
【0121】
図19に示すように、変形例7のステントグラフト100は、筒部110の外面110aに、複数の検出部130が配置されている。複数の検出部130は、筒部110の内面110bに配置されたワイヤー部120に沿って互いに間隔を空けて配置されている。
【0122】
複数のセンサ131は、筒部110の内面110bに配置されたワイヤー部120に沿った複数の位置において、検出部130と血管壁21との間の血液の流通状態の変化に基づく圧力変化を検出する。このため、複数のセンサ131は、筒部110の内面110bに配置されたワイヤー部120に沿った複数の位置において、検出部130と血管壁21との間に血液の流通が発生したことを検出できる。
【0123】
実施形態1と同様に、ワイヤー部120は、筒部110の全周に沿って配置されている。複数の検出部130は、ワイヤー部120とともに筒部110の全周に沿って配置されている。
【0124】
<実施形態2>
次に、
図21を参照しつつ、実施形態2に係るステントグラフト100について説明する。
【0125】
図21に示すように、実施形態2に係るステントグラフト100は、ワイヤー部120のエコー視認性を高める形状を有することができる。ワイヤー部120は、表面に切られた溝121を有する。実施形態2のセンサ131は、実施形態1と同様の流体圧感知型センサ140である。
【0126】
なお、ワイヤー部120のエコー視認性を高めるために、ワイヤー部120にブラスト加工を施したり、凹凸形状に形成したりすることができる。
【0127】
次に、
図22を参照しつつ、実施形態2の処理について説明する。
【0128】
図22に示すように、術者は、エコーをONし、エコー画像を取得する(S901)。そして、術者は、エコー画像上の輝度の高い部分に注目し、ワイヤー部120と血管20との密着性を評価していく(S902)。
【0129】
術者は、実施形態2の処理を、上記の実施形態1及び各変形例に任意に適用することによって、ワイヤー部120と血管20との密着性を判断できる。そのため、エンドリークやマイグレーションに対する術者による必要な処置を早期に行うことを支援できる。
【0130】
以上、実施形態及び変形例を通じて本発明に係るステントグラフト100及び医療システム10を説明したが、本発明は説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0131】
例えば、ステントグラフト100は、センサ131に加えて、アンテナを追加することができる。また、ステントグラフト100及び医療システム10を使用する具体的な手技の内容や処置手順等も明細書内で説明した内容に限定されることはない。
【0132】
例えば、実施形態で説明したステントグラフトを人工血管と組み合わせることで、いわゆるオープンステントグラフト(ハイブリット型ステントグラフト)を構成することも可能である。
【0133】
明細書内において説明した各部の構造や部材の配置等は適宜変更することができ、また図示により説明した付加的な部材の使用の省略や、その他の付加的な部材の使用等も適宜に行いうる。
【符号の説明】
【0134】
10 医療システム
20 血管
21 血管壁
100 ステントグラフト
110 筒部
110a 外面
110b 内面
111 内腔
112 本体チューブ
113 第1分岐チューブ
114 第2分岐チューブ
115 一端部
116 他端部
117 他端部
118 中間部
120 ワイヤー部
121 溝
130 検出部
131 センサ
140 流体圧感知型センサ
141 感圧面
142 リブ
142a 突出端
143 開口部
144 空隙
145 基板
146 ダイヤフラム
146a 本体部
146b 支持部
147 歪ゲージ
150 接触圧感知型センサ
151 感圧部
152 接触面
153 隆起部
160 シール部
170 鉤
200 外部装置
201 外部装置
210 送受信部
220 判断部
221 メモリ
222 電源
230 選択部
240 報知部
241 モニタ
250 電極部