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特開2024-117572ガス漏れ検知装置、ガス漏れ検知システム、及び、ガス漏れ検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117572
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ガス漏れ検知装置、ガス漏れ検知システム、及び、ガス漏れ検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/38 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
G01M3/38 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023738
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503063168
【氏名又は名称】東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 泰直
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮
(72)【発明者】
【氏名】五味 保城
(72)【発明者】
【氏名】安部 健
(72)【発明者】
【氏名】原 毅
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA11
2G067BB17
2G067CC04
2G067DD17
(57)【要約】
【課題】レーザーを走査して照射しその反射光を受光することでガス漏れを検知するレーザー方式のガス漏れ検知装置において、効果的にノイズを除去し、ガス漏洩検知の誤判断を抑制する。
【解決手段】レーザーを検知対象領域へ走査して照射すると共に、照射したレーザーの反射光を受光し、受光した反射光の受光量に基づいてガスの漏洩を検知するガス漏れ検知方法であって、前記受光量を走査位置と対応づけたガス濃度として記憶し、走査位置と対応づけて予め記憶したノイズ情報に基づいて、前記ガス濃度を補正し、補正後の前記ガス濃度に基づいてガス漏洩の判断を行う。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーを検知対象領域へ走査して照射するレーザー走査部と、
照射した前記レーザーの反射光を受光するレーザー受光部と、
前記レーザー受光部で受光した受光量を走査位置と対応づけたガス濃度として記憶する記憶部と、
走査位置と対応づけて予め記憶したノイズ情報に基づいて、前記ガス濃度を補正する補正部と、
補正後の前記ガス濃度に基づいてガス漏洩の判断を行う、判断部と、
を備えた、ガス漏れ検知装置。
【請求項2】
前記ノイズ情報は、ガス漏れのない状態の前記検知対象領域において予め前記レーザー走査部で照射したレーザーの反射光を前記レーザー受光部で受光して得られたノイズ補正用データであり、
前記補正は、前記走査位置を対応づけて前記ガス濃度から前記ノイズ補正用データ分をキャンセルする、
請求項1に記載のガス漏れ検知装置。
【請求項3】
前記判断部は、閾値以上の前記ガス濃度が走査中に連続して所定の回数以上となる場合に、ガス漏洩との判断を行う、
請求項1に記載のガス漏れ検知装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のガス漏れ検知装置と、
前記検知対象領域を挟んで前記レーザー走査部と対向する位置に設けられ、前記レーザーを反射する反射体と、
を備えた、ガス漏れ検知システム。
【請求項5】
レーザーを検知対象領域へ走査して照射すると共に、照射したレーザーの反射光を受光し、受光した反射光の受光量に基づいてガスの漏洩を検知するガス漏れ検知方法であって、
前記受光量を走査位置と対応づけたガス濃度として記憶し、
走査位置と対応づけて予め記憶したノイズ情報に基づいて、前記ガス濃度を補正し、
補正後の前記ガス濃度に基づいてガス漏洩の判断を行う、
ガス漏れ検知方法。
【請求項6】
前記ノイズ情報は、ガス漏れのない状態の前記検知対象領域において照射したレーザーの反射光を受光して予め得られたノイズ補正用データであり、
前記補正は、前記走査位置を対応づけて前記ガス濃度から前記ノイズ補正用データ分をキャンセルする、
請求項5に記載のガス漏れ検知方法。
【請求項7】
閾値以上の前記ガス濃度が走査中に連続して所定の回数以上となる場合に、ガス漏洩との判断を行う、
請求項5に記載のガス漏れ検知方法。
【請求項8】
前記検知対象領域を挟んで前記レーザーを出射する位置と対向する位置に、前記レーザーを反射する反射体を設ける、
請求項5~7のいずれか1項に記載のガス漏れ検知方法。
【請求項9】
レーザーを検知対象領域へ走査して照射するレーザー走査部と、
照射した前記レーザーの反射光を受光するレーザー受光部と、
前記レーザー受光部で受光した受光量を走査位置と対応づけたガス濃度として記憶する記憶部と、
閾値以上の前記ガス濃度が走査中に連続して所定の回数以上となる場合に、ガス漏洩との判断を行う判断部と、
を備えた、ガス漏れ検知装置。
【請求項10】
レーザーを検知対象領域へ走査して照射すると共に、照射したレーザーの反射光を受光し、受光した反射光の受光量に基づいてガスの漏洩を検知するガス漏れ検知方法であって、
前記受光量を走査位置と対応づけたガス濃度として記憶し、
閾値以上の前記ガス濃度が走査中に連続して所定の回数以上となる場合に、ガス漏洩との判断を行う、
ガス漏れ検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス漏れ検知装置、ガス漏れ検知システム、及び、ガス漏れ検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスを供給する配管からのガス漏れを検知するために、種々の手法が提案されている。一例として、特許文献1には、レーザー方式のガスセンサを用いて、メタンのガス漏れを検知するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】「特開2021-60377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、照射したレーザーの反射光を受光してメタンの吸収による反射光の減衰の有無からガス漏れの有無を検知していることから、受光量が小さい場合、単なるノイズであるかメタンの吸収であるかの判断が難しい。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、レーザーを走査して照射しその反射光を受光することでガス漏れを検知するレーザー方式のガス漏れ検知装置において、効果的にノイズを除去し、ガス漏洩検知の誤判断を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のガス漏れ検知装置は、レーザーを検知対象領域へ走査して照射するレーザー走査部と、照射した前記レーザーの反射光を受光するレーザー受光部と、前記レーザー受光部で受光した受光量を走査位置と対応づけたガス濃度として記憶する記憶部と、走査位置と対応づけて予め記憶したノイズ情報に基づいて、前記ガス濃度を補正する補正部と、補正後の前記ガス濃度に基づいてガス漏洩の判断を行う、判断部と、を備えている。
【0007】
第1の態様のガス漏れ検知装置では、レーザー走査部でレーザーを検知対象領域へ走査して照射し、レーザー受光部で照射した前記レーザーの反射光を受光する。レーザー受光部で受光した受光量は走査位置と対応づけたガス濃度として記憶部に記憶する。発明者の知見により、レーザーを受光する場合、特定の走査位置においてガス漏洩がないにも係わらずノイズが発生する場合があることがわかった。そこで、走査位置と共に予め記憶したノイズ情報に基づいて、前記ガス濃度を補正部で補正し、補正後のガス濃度に基づいて、判断部でガス漏洩の判断を行う。
【0008】
このように、走査位置と対応づけた予め記憶したノイズ情報に基づいてガス濃度を補正部で補正し、補正後のガス濃度に基づいてガス漏洩の判断を行うことにより、効果的にノイズを除去し、ガス漏洩検知の誤判断を抑制することができる。
【0009】
第2の態様のガス漏れ検知装置は、ガス漏れのない状態の前記検知対象領域において予め前記レーザー走査部で照射したレーザーの反射光を前記レーザー受光部で受光して得られたノイズ補正用データであり、前記補正は、前記走査位置を対応づけて前記ガス濃度から前記補正用受光量データ分をキャンセルする。
【0010】
第2の態様のガス漏れ検知装置では、予めガス漏れのない状態の検知対象領域において、レーザー走査部、レーザー受光部を用いてガス濃度を取得し、当該ガス濃度をノイズ情報とする。そして、ガス漏れ検知のためのレーザー照射で得られた走査におけるガス濃度から、ノイズ補正用データ分をキャンセルする。
【0011】
このようにして、具体的に、ガス濃度を補正することができる。
【0012】
第3の態様のガス漏れ検知装置は、前記判断部は、閾値以上の前記ガス濃度が走査中に連続して所定の回数以上となる場合に、ガス漏洩との判断を行う。
【0013】
ガスを供給する配管からガスが漏洩した場合、検知対象ガスは漏洩箇所を起点に雲状に拡散することが知られている。この漏洩雲は、ある程度の大きさを有するため、当該ガスの漏洩雲が存在する場合には、ガス濃度が走査中に連続して閾値以上となることが推測できる。そこで、判断部において、閾値以上のガス濃度が走査中に連続して、所定の回数以上となる場合に、ガス漏洩との判断を行う。所定の回数は、検知を要するガス漏洩雲の大きさに応じて設定することができる。このように判断することにより、誤判断を抑制することができる。
【0014】
第4の態様のガス漏れ検知システムは、第1~第3の対応のガス漏れ検知装置と、前記検知対象領域を挟んで前記レーザー走査部と対向する位置に設けられ、前記レーザーを反射する反射体と、を備えている。
【0015】
第4の態様のガス漏れ検知システムによれば、レーザー走査部から照射されたレーザーが反射体で反射されるので、反射体が設けられていない場合と比較して、反射条件のバラツキが抑制され、ノイズを抑制することができる。
【0016】
第5の態様のガス漏れ検知方法は、レーザーを検知対象領域へ走査して照射すると共に、照射したレーザーの反射光を受光し、受光した反射光の受光量に基づいてガスの漏洩を検知するガス漏れ検知方法であって、前記受光量を走査位置と対応づけたガス濃度として記憶し、走査位置と対応づけて予め記憶したノイズ情報に基づいて、前記ガス濃度を補正し、補正後の前記ガス濃度に基づいてガス漏洩の判断を行う。
【0017】
このように、走査位置と共に予め記憶したノイズ情報に基づいて、ガス濃度を補正し、補正後のガス濃度に基づいてガス漏洩の判断を行うことにより、効果的にノイズを除去し、ガス漏洩検知の誤判断を抑制することができる。
【0018】
第6の態様のガス漏れ検知方法は、前記ノイズ情報は、ガス漏れのない状態の前記検知対象領域において照射したレーザーの反射光を受光して予め得られたノイズ補正用データであり、前記補正は、前記走査位置を対応づけて前記ガス濃度から前記ノイズ補正用データ分をキャンセルする。
【0019】
第6の態様のガス漏れ検知方法では、予めガス漏れのない状態の検知対象領域において、ガス濃度を取得し、当該ガス濃度をノイズ情報とする。そして、ガス漏れ検知のためのレーザー照射で得られた走査におけるガス濃度から、ノイズ補正用データ分をキャンセルする。
【0020】
このようにして、具体的に、ガス濃度を補正することができる。
【0021】
第7の態様のガス漏れ検知方法は、閾値以上の前記ガス濃度が走査中に連続して所定の回数以上となる場合に、ガス漏洩との判断を行う。
【0022】
検知対象ガスの漏洩雲は、ある程度の大きさを有するため、当該ガスの漏洩雲が存在する場合には、ガス濃度が走査中に連続して閾値以上となることが推測できる。そこで、判断部において、閾値以上のガス濃度が走査中に連続して、所定の回数以上となる場合に、ガス漏洩との判断を行う。所定の回数は、検知を要するガス漏洩雲の大きさに応じて設定することができる。このように判断することにより、誤判断を抑制することができる。
【0023】
第8の態様のガス漏れ検知方法は、前記検知対象領域を挟んで前記レーザーを出射する位置と対向する位置に前記レーザーを反射する反射体を設ける。
【0024】
第8の態様のガス漏れ検知方法によれば、レーザー走査部から照射されたレーザーが反射体で反射されるので、反射光量が大きくなるとともに反射体を設けていない場合と比較して、反射条件のバラツキが抑制され、ノイズを抑制することができる。
【0025】
第9の態様のガス漏れ検知装置は、レーザーを検知対象領域へ走査して照射するレーザー走査部と、照射した前記レーザーの反射光を受光するレーザー受光部と、前記レーザー受光部で受光した受光量を走査位置と対応づけたガス濃度として記憶する記憶部と、閾値以上の前記ガス濃度が走査中に連続して所定の回数以上となる場合に、ガス漏洩との判断を行う判断部と、を備えている。
【0026】
第9の態様のガス漏れ検知装置では、レーザー走査部でレーザーを検知対象領域へ走査して照射し、レーザー受光部で照射した前記レーザーの反射光を受光する。レーザー受光部で受光した受光量は走査位置と対応づけたガス濃度として記憶部に記憶する。そして、閾値以上のガス濃度が走査中に連続して所定の回数以上となる場合に、判断部でガス漏洩の判断を行う。
【0027】
ガスを供給する配管からガスが漏洩した場合、検知対象ガスは漏洩箇所を起点に雲状に拡散することが知られている。この漏洩雲は、ある程度の大きさを有するため、当該ガスの漏洩雲が存在する場合には、ガス濃度が走査中に連続して閾値以上となることが推測できる。そこで、判断部において、閾値以上のガス濃度が走査中に連続して、所定の回数以上となる場合に、ガス漏洩との判断を行う。所定の回数は、検知を要するガス漏洩雲の大きさに応じて設定することができる。このように判断することにより、誤判断を抑制することができる。
【0028】
第10の態様のガス漏れ検知方法は、レーザーを検知対象領域へ走査して照射すると共に、照射したレーザーの反射光を受光し、受光した反射光の受光量に基づいてガスの漏洩を検知するガス漏れ検知方法であって、前記受光量を走査位置と対応づけたガス濃度として記憶し、閾値以上の前記ガス濃度が走査中に連続して所定の回数以上となる場合に、ガス漏洩との判断を行う。
【0029】
検知対象ガスの漏洩雲は、ある程度の大きさを有するため、当該ガスの漏洩雲が存在する場合には、ガス濃度が走査中に連続して閾値以上となることが推測できる。そこで、判断部において、閾値以上のガス濃度が走査中に連続して、所定の回数以上となる場合に、ガス漏洩との判断を行う。所定の回数は、検知を要するガス漏洩雲の大きさに応じて設定することができる。このように判断することにより、誤判断を抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、レーザーを走査して照射しその反射光を受光することでガス漏れを検知するレーザー方式のガス漏れ検知装置において、効果的にノイズを除去し、ガス漏洩検知の誤判断を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態のガス漏れ検知システムの概略構成図である。
図2】第1実施形態のガス漏れ検知装置の概略斜視図である。
図3】第1実施形態のレーザーユニットの概略斜視図である。
図4】第1実施形態の検知対象領域へレーザー光を照射し、反射体で反射されている状態を示す概略斜視図である。
図5】第1実施形態の制御系の概略ブロック図である。
図6】第1実施形態のノイズ補正データの一例を示すグラフである。
図7】第1実施形態のガス漏れ探索処理のフローチャートである。
図8】第1実施形態のガス漏れ判断処理のフローチャートである。
図9A】第1実施形態のノイズ補正データ分の出力をキャンセルする前のガス濃度の一例を示すグラフである。
図9B】第1実施形態のノイズ補正データ分の出力をキャンセルした後のガス濃度の一例を示すグラフである。
図10A】反射体を備えた場合のガス濃度のグラフである。
図10B】反射体を備えていない場合のガス濃度のグラフである。
図11】第2実施形態の第二ガス漏れ判断処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示に係るガス漏れ検知装置、ガス漏れ検知システム、ガス漏れ検知方法の実施形態について説明する。本実施形態では、都市ガスパイプラインのガバナやバルブを設置するガスステーション内においてガスの漏洩を検知する場合を例に説明する。
【0033】
[第1実施形態]
図1に示されるように、検知対象となるガスステーション10は、外壁12で囲まれた区画であり、地中に埋設されたガス導管(不図示)と接続される配管14が地上に設けられている。配管14には、バルブ14Bが設けられている。外壁12の内側が検知対象領域16となる。
【0034】
検知対象領域16の一角には、第1実施形態に係るガス漏れ検知装置20が設けられている。ガス漏れ検知装置20は、図2に示されるように、地上から立設された台座部22上に設置されている。台座部22は、4本の柱状の脚22Aと上部板22Bとで構成されている。上部板22Bの上に、ガス漏れ検知装置20が設置されている。
【0035】
ガス漏れ検知装置20は、レーザー照射部24、レーザー受光部26、走査台28を備えている(図2、3参照)。レーザー照射部24及びレーザー受光部26は、図3に示されるように、レーザーユニット25として一体化されている。レーザー照射部24からは、都市ガスの主成分であるメタンにより選択的に吸収されるレーザー光Lを出射する。レーザー光としては、一例として、波長1.6537μm程度のレーザー光を用いることができる。レーザー受光部26は、レーザー照射部24から出射され、反射により戻ったレーザー光を、集光レンズ26Aを介して受光し、受光信号へ変換して後述するコントローラ30へ出力する。
【0036】
レーザーユニット25は、筐体23内に格納されており、走査台28は、筐体23を載置する雲台で構成されている。走査台28は、コントローラ30からの信号に応じて、水平方向に首振り回転する。これにより、レーザー照射部24から出射されたレーザー光Lが、角度θの範囲で往復動作を繰り返して、検知対象領域16において、水平方向に走査照射される。当該走査照射により、配管14の鉛直方向上側の空間全体にレーザー光Lが照射される。レーザー照射部24及び走査台28が、本開示のレーザー走査部となる。
【0037】
図4にも示されるように、外壁12には、反射体12Aが設けられている。反射体12Aは、必要な反射率が得られるシート材とされており、検知対象領域16を挟んでレーザー照射部24と対向し、レーザー光Lが照射される位置に設けられている。反射体12Aとしては、一例として、入射方向に反射光が出射するマイクロプリズム反射シートを用いることができる。本開示のガス漏れ検知システム21は、反射体12Aを含んで構成されている。レーザー照射部24から出射されたレーザー光Lは、反射体12Aで反射される。
【0038】
レーザー受光部26は、集光レンズ(不図示)を介してレーザー光Lの反射光を受光し、所定の信号処理を行って、受光量に関しての受光信号を後述するコントローラ30へ出力する。レーザー受光部26は、所定の時間レートで反射光を受光して受光信号の送信を実行している。そのため、レーザー光Lの走査位置は、首振り開始時からの時間で得ることができる。
【0039】
ガス漏れ検知装置20は、コントローラ30を備えている。コントローラ30は、図5に示されるように、レーザー照射部24、レーザー受光部26、走査台28と接続されている。また、コントローラ30は、表示部32と接続されている。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、入出力インターフェース(I/O)34と、記憶部35と、を備えている。
【0040】
CPU31、ROM32、RAM33、及びI/O34は、バス36を介して各々接続されている。I/O34には、記憶部35を含む各機能部が接続されている。これらの各機能部は、I/O34を介して、CPU31と相互に通信可能とされる。
【0041】
記憶部35としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等が用いられる。記憶部35には、ガス漏れ検知装置20の各部を制御するための制御プログラムや、各種のデータが記憶される。なお、この制御プログラム、各種データは、ROM32に記憶されていてもよい。
【0042】
本実施形態では、制御プログラムの一部として、ガス漏れ探索処理プログラム、ガス漏れ判断処理プログラム等が格納されている。また、この処理に使用されるデータとして、ノイズ補正データD1、閾値TH、異常値回数N等が格納されている。
【0043】
ここで、ノイズ補正データD1、閾値TH、異常値回数Nについて説明する。ノイズ補正データD1は、予め、ガス漏れのない状態で、ガス漏れ検知装置20を用いて検知対象領域16へレーザー光Lを走査照射し、その反射光をレーザー受光部26で受光して得られた、走査位置と対応づけられたガス濃度である。当該ガス濃度は、受光により得られたデータを加工したデータである。データの加工は、レーザー受光部26に搭載された演算部(不図示)により行われる。例えば、特開平05-010877号に開示されているように、受光したレーザー光を所定の周波数の信号で周波数変調(および振幅変調)し、得られた上記所定の周波数の信号fとその倍の周波数の信号2fを求め、信号2fを信号fで除算することによって、得ることができる。
コントローラ30は、走査位置に対応づけられた当該ガス濃度をノイズ補正データD1として記憶部35へ記憶させる。図6には、ノイズ補正データD1の一部の一例が示されている。毎秒1°の回転角度で走査し、0.1回/秒でガス濃度を取得した場合の、角度θの一端から13秒後~18秒後迄の5秒間のガス濃度の一例である。
このノイズ補正データD1を、実際のガス検知で測定したガス濃度から差し引くことで、ノイズをキャンセルすることができる。
【0044】
閾値THは、ガス検知の測定時に、ガス濃度が閾値THを超えた場合に、異常値であると判断する値である。例えば、予めガス漏れ時の値を測定して、S/N比や、出力値を得ておき、当該数値から必要な値を算出し、閾値THとして設定することができる。本実施形態では、ノイズ補正データD1で補正された後のガス濃度が閾値THを超えた場合に、異常値であると判断する。
【0045】
異常値回数Nは、検知を要するガス漏洩雲がある場合に、ノイズ補正データD1で補正された後のガス濃度が閾値THを超える最低連続回数である。異常値回数Nは、ガス濃度の取得回数(出力回数)と、検知を要するガス漏洩雲の大きさに応じて設定される。ガス漏洩雲は、検知対象ガス(本実施形態ではメタンガス)の塊であり、検知対象ガスの濃度が高い部分である。他の例えば、図4に示されるように、検知を要するガス漏洩雲がG0の場合、走査中に点線で示す10回のガス濃度が取得される。したがって、この回数よりも多い回数で連続してガス濃度の異常値が入力された場合に、ガス漏洩ありと判断する。
【0046】
次に、本実施形態のガス漏れ検知装置20の作用について説明する。
【0047】
ガス漏れ検知装置20のコントローラ30は、ガス漏れ検知を実行する指示が入力されると、ガス漏れ探索処理プログラムを読み出して実行する。
【0048】
ガス漏れ探索処理は、図7示されるように、ステップS10で、レーザー照射部24からレーザー光Lの照射を開始し、ステップS12で、走査台28を駆動させ、ステップS14で、レーザー受光部26での反射光の受光を開始する。これにより、レーザー光Lが走査されつつ検知対象領域16へ照射され、反射光がレーザー受光部26で受光される。受光された反射光は、所定のレートで受光信号へ変換され、ステップS16で、走査位置に対応づけられて記憶部35にガス濃度として記憶される。そして、ステップS18で、運転終了指示が入力されたかどうかを判断し、判断が肯定された場合には、本処理を終了する。運転終了指示が入力されるまでは、ガス濃度の記憶を繰り返す。これにより、所定時間のレートで取得されたガス濃度が、記憶部35に記憶される。
【0049】
また、ガス漏れ検知を実行する指示が入力されると、ガス漏れ探索処理プログラムと並行して、ガス漏れ判断処理プログラムが実行される。ガス漏れ判断処理は、図8に示されるように、ステップS20で、記憶部35に記憶されたガス濃度を読み出し、これをノイズ補正データD1とし、ステップS22で、ガス濃度からノイズ補正データD1分の出力をキャンセルすることで、ガス濃度を補正する。図9Aには、ノイズ補正データD1分の出力をキャンセルする前のガス濃度の一例が示され、図9Bには、ノイズ補正データD1分の出力をキャンセルした後のガス濃度の一例が示されている。図6において突出している出力値(16.4秒の値)は、図9Aからキャンセルされて、図9Bにおいて閾値TH以下となるように補正されている。
【0050】
次に、ステップS24で、閾値THを超えている部分がN回以上連続しているかどうかを判断する。判断が肯定された場合には、ステップS26で、表示部32に「ガス漏れを検知した」旨、及び「検知の位置(走査位置)」を表示し、ステップS28へ進む。表示部32における表示は、ライトの点滅や、文字等で行うことができ、警報音を含むものであってもよい。また、ガス漏れを検知した情報を外部へ通信させてもよい。
【0051】
ステップS24で判断が否定された場合には、ステップS28へ進む。ステップS28で、運転終了指示が入力されたかどうかを判断し、運転終了指示が入力されるまでは、上記の処理を繰り返す。これにより、記憶部35に記憶されたガス濃度に基づいて、ガス漏れの検知を行うことができる。
【0052】
本実施形態のガス漏れ検知装置20によれば、走査位置と対応づけた予め記憶したレーザー反射光に関するノイズ補正データD1に基づいて、ガス濃度を補正し、補正後のガス濃度に基づいてガス漏洩の判断を行う。したがって、効果的にガス濃度のノイズを除去し、ガス漏洩検知の誤判断を抑制することができる。また、ガス濃度の補正を、予め検知対象領域16において測定したノイズ補正データD1を用いることにより、容易に補正することができる。
【0053】
また、閾値TH以上のガス濃度(ノイズ補正データD1で補正された後)が走査中に連続して、予め定めたN回所定の回数となる場合に、ガス漏洩との判断を行う。このように判断することにより、さらに誤判断を抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態のガス漏れ検知システム21は、反射体12Aを備えているので、反射体が設けられていない場合と比較して、レーザー光の反射光量が大きくなるとともに反射条件のバラツキが抑制され、ノイズを抑制することができる。図10Aには、反射体12Aを備えた場合のガス濃度のグラフが示され、図10Bには、反射体12Aを備えていない場合のガス濃度のグラフが示されている。反射体12Aを備えた場合には、ノイズが抑制されていることがわかる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0056】
本実施形態のガス漏れ検知装置は、第1実施形態のガス漏れ検知装置20と同様の構成を有し、判断部としてのコントローラ30において、ガス漏れ判断処理プログラムに代えて、第二ガス漏れ判断処理プログラムが実行される点のみ異なっている。
【0057】
本実施形態のガス漏れ検知装置は、ガス漏れ検知を実行する指示が入力されると、ガス漏れ探索処理プログラムを読み出して実行する(図7参照)。
【0058】
また、ガス漏れ検知を実行する指示が入力されると、ガス漏れ探索処理プログラムと並行して、第二ガス漏れ判断処理プログラムが実行される。ガス漏れ判断処理は、図11に示されるように、ステップS30で、記憶部35に記憶されたガス濃度を読み出し、ステップS34で、閾値THを超えている部分がN回以上連続しているかどうかを判断する。判断が肯定された場合には、ステップS36で、表示部32に「ガス漏れを検知した」旨、及び「検知の位置(走査位置)」を表示し、ステップS38へ進む。表示部32における表示は、第1実施形態と同様に行うことができる。
【0059】
ステップS34で判断が否定された場合には、ステップS38へ進む。ステップS38で、運転終了指示が入力されたかどうかを判断し、運転終了指示が入力されるまでは、上記の処理を繰り返す。これにより、設定した閾値に対応する以上の漏洩雲が存在する場合に、ガス漏洩を検知することができる。このように判断することにより、誤判断を抑制することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、ガスステーション内でガス漏れ検知装置20を用いる場合について説明したが、他の施設、例えば、工場やガス基地、建築工事現場などに用いることもできる。また、本実施形態では、メタンを検知する場合について説明したが、他のガス、例えば、プロパンやブタン等を検知する場合にも用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
12A 反射体
16 検知対象領域
20 ガス漏れ検知装置
21 ガス漏れ検知システム
24 レーザー照射部(レーザー走査部)
26 レーザー受光部
28 走査台(レーザー走査部)
30 コントローラ(補正部、判断部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11