(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117580
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】流体ノズル
(51)【国際特許分類】
B01J 2/04 20060101AFI20240822BHJP
B01D 1/20 20060101ALI20240822BHJP
B05B 7/08 20060101ALI20240822BHJP
B05B 7/06 20060101ALI20240822BHJP
B05B 7/16 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B01J2/04
B01D1/20
B05B7/08
B05B7/06
B05B7/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023748
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】館山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】増田 賢太
(72)【発明者】
【氏名】三崎 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 広樹
(72)【発明者】
【氏名】松下 修也
(72)【発明者】
【氏名】徳田 秀樹
【テーマコード(参考)】
4D076
4F033
4G004
【Fターム(参考)】
4D076AA14
4D076BA24
4D076CB02
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4F033BA02
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4F033QK23X
4F033QK23Y
4G004EA02
4G004EA06
(57)【要約】
【課題】粗大粒子の生成を可及的に低減し、粒度分布の幅がより狭い粒子を製造可能な流体ノズルを提供すること。
【解決手段】流体ノズル10は、液体を吐出する液体吐出口1と、液体に向けて気体を吐出する第1の気体吐出口2と、液体吐出口の端部から吐出された液体に向けて気体を吐出する第2の気体吐出口3を備える。液体吐出口1は、平面形状が横長四角形であり、当該横長四角形を構成する一の角αを挟む2辺のうち長辺の長さをAとし、その対角γを挟む2辺のうち短辺の長さをBとしたときに、両者の比(A:B)が、30:1~1.5:1である。第1の気体吐出口2は液体吐出口1の長辺側に設けられており、第2の気体吐出口3は液体吐出口1の短辺側に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面形状が横長四角形であり、液体を吐出する液体吐出口と、
前記液体吐出口の長辺側に設けられ、液体に向けて気体を吐出する第1の気体吐出口と、
前記液体吐出口の短辺側に設けられ、液体吐出口の端部から吐出された液体に向けて気体を吐出する第2の気体吐出口
を備え、
前記液体噴出口は、前記横長四角形を構成する一の角を挟む2辺のうち長辺の長さをAとし、その対角を挟む2辺のうち短辺の長さをBとしたときに、両者の比(A:B)が、30:1~1.5:1である、
流体ノズル。
【請求項2】
前記第1の気体吐出口及び第2の気体吐出口が、前記液体吐出口に隣接し、かつ互いに独立して配置されている、請求項1記載の流体ノズル。
【請求項3】
前記第2の気体吐出口は、第2の気体吐出口は、前記液体吐出口側の辺の長さが、前記液体吐出口の短辺よりも長い、請求項1記載の流体ノズル。
【請求項4】
原料溶液を噴霧する流体ノズルと、
当該流体ノズルから噴霧された前記原料溶液から形成されたミストを乾燥又は熱分解する加熱炉
を備え、
前記流体ノズルが、請求項1~3のいずれか1項に記載の流体ノズルである、
噴霧乾燥装置又は噴霧熱分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
微小粒子の製造装置として、例えば、噴霧熱分解装置又は噴霧乾燥装置がある。これらの装置においては、流体ノズルが設置されており、流体ノズルの液体吐出口から原料溶液を加熱炉内に噴出してミストを形成させ、そのミストを乾燥又は熱分解することで微粒子が製造される。流体ノズルとして、例えば、2流体ノズルや3流体ノズルが使用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
3流体ノズルは、2流体ノズルに比べて、平均粒子径が小さな粒子を製造できるという利点がある。そこで、本発明者らは、3流体ノズルを装着した噴霧熱分解装置を用いて微小粒子の製造を試みたところ、得られた粒子には微小粒子だけでなく粗大粒子も含まれており、粒子の粒度分布の幅が広いという課題が存在することを見出した。そして、本発明者らの検討によれば、2流体ノズルを用いた場合には粒子の粒度分布の幅が広くならないことから、上記した課題は3流体ノズルを用いたときに特異的に生ずることが判明した。
本発明の課題は、粗大粒子の生成を可及的に低減し、粒度分布の幅がより狭い粒子を製造可能な流体ノズルを提供することにある。
【0005】
本発明者らは、粒子の粒度分布の幅が広くなる要因について究明すべく種々検討を行った。その結果、次の知見が得られた。即ち、2流体ノズルは、液体吐出口の平面形状が通常円形であるため、液体の吐出範囲は狭く、ミストの正面形状は幅の狭い扇状となる。2流体ノズルでは、液体吐出口から液体が吐出されると同時に、その外周に設けられた気体吐出口から気体が液体に向けて一様に吐出され、液体と気体とが均一に接触して略均一な粒径のミストを形成するため、上記した課題は発生しない。これに対し、液体吐出口の平面形状が長方形である3流体ノズルを用いた場合、液体の吐出範囲が広く、
図4(b)に示されるように、ミストの正面形状は逆台形様となる。この3流体ノズルは、
図4(a)に示されるように、液体吐出口1の長辺側にのみ気体吐出口2が設置されているため、液体吐出口1の端部から吐出された液体は、気体吐出口2から吐出された気体との接触が不十分になる。その結果、液体と気体との接触が不十分な範囲、即ち
図4において楕円で囲んだ範囲におけるミストの粒径が増大して粗大粒子の含有率が増加することが、粒子の粒度分布の幅が広くなる要因であることを本発明者らは突き止めた。以上の知見を踏まえ、本発明者らは、液体吐出口の平面形状を特定の縦横比の横長四角形としたうえで、その周囲4辺を囲むように気体吐出口を配置することにより、液体吐出口端部から吐出された液体が気体吐出口から吐出された気体と十分に接触してミストの粒径の増大が抑えられ、粗大粒子の生成を低減できるため、粒度分布の幅がより狭い粒子を製造できることを見出した。ここで、本明細書において「ミスト」とは、気体中に分散した液体の微粒子をいい、換言すれば霧状の液体である。
【0006】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔4〕を提供するものである。
〔1〕平面形状が横長四角形であり、液体を吐出する液体吐出口と、
前記液体吐出口の長辺側に設けられ、液体に向けて気体を吐出する第1の気体吐出口と、
前記液体吐出口の短辺側に設けられ、液体吐出口の端部から吐出された液体に向けて気体を吐出する第2の気体吐出口
を備え、
前記液体噴出口は、前記横長四角形を構成する一の角を挟む2辺のうち長辺の長さをAとし、その対角を挟む2辺のうち短辺の長さをBとしたときに、両者の比(A:B)が、30:1~1.5:1である、
流体ノズル。
〔2〕前記第1の気体吐出口及び第2の気体吐出口が、前記液体吐出口に隣接し、かつ互いに独立して配置されている、前記〔1〕記載の流体ノズル。
〔3〕前記第2の気体吐出口は、前記液体吐出口側の辺の長さが、前記液体吐出口の短辺よりも長い、前記〔1〕又は〔2〕記載の流体ノズル。
〔4〕原料溶液を噴霧する流体ノズルと、
当該流体ノズルから噴霧された前記原料溶液から形成されたミストを乾燥又は熱分解する加熱炉
を備え、
前記流体ノズルが、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の流体ノズルである、
噴霧乾燥装置又は噴霧熱分解装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粗大粒子の生成を可及的に低減し、粒度分布の幅がより狭い粒子を製造可能な流体ノズルを提供することができる。また、本発明の流体ノズルを噴霧乾燥装置又は噴霧熱分解装置に装着することで、粗大粒子の生成を可及的に低減し、粒度分布の幅がより狭い粒子を簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の流体ノズルの一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の流体ノズルに係る液体吐出口の形状の一例を示す平面図である。
【
図3】本発明の流体ノズルを装着した噴霧乾燥装置又は噴霧熱分解装置の一例を示す概略図である。
【
図4】従来の流体ノズルの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0010】
図1に、本発明の流体ノズルの一例を示す。なお、
図1(a)は概略平面図であり、(b)は概略断面図である。以下、
図1を参照しながら好適な実施形態について説明する。
流体ノズル10は、
図1に示されるように、外周形状が円筒状であり、液体吐出口1と、第1の気体吐出口2と、第2の気体吐出口3を備える。液体吐出口1は、センターエッジ4内の略中央部に配置されている。第1の気体吐出口2は、液体吐出口1の長辺側(長手方向)に配置され、第2の気体吐出口3は、液体吐出口1の短辺側(短手方向)に配置されている。センターエッジ4には、液体吐出口1に液体を供給するための液体ラインと、第1の気体吐出口2に気体を供給するための気体ラインが設けられている。センターエッジ4の両端には、隔壁5を介してサイドブロック6が設けられている。サイドブロック6には、センターエッジ4内の第1の気体吐出口2の気体ラインに接続する気体ラインと、第2の気体吐出口3に気体を供給するための気体ラインが設けられている。
【0011】
液体吐出口1は、液体供給部からセンターエッジ4内の液体ラインを介して供給された液体を吐出する。
液体吐出口1は、
図1に示されるように、ノズル本体の略中央部に設けられており、平面形状が横長四角形である。ここで、本明細書において「平面形状」とは、流体ノズル全体を真上から見下ろしたときの形状をいい、また「横長四角形」とは、縦方向よりも横方向の方が長い四角形をいう。このような形状にすることで、ミストの粒径を変化させることなく、液体噴霧量を容易に増加させることが可能になる。そのため、液体吐出口1の大きさは、流体ノズルの大きさに応じて、液体噴霧量やノズル強度等を考慮して適宜選択することができる。
【0012】
横長四角形は、4つの点とそれらを結ぶ4つの線分で囲まれた平面図形であって、縦方向よりも横方向の方が長い辺を有する四角形であれば、特に限定されない。例えば、
図2に示されるように、(a)長方形、(b)平行四辺形、(c)4辺の長さが異なる四角形、(d)台形を挙げることができる。中でも、長方形、平行四辺形が好ましく、長方形が更に好ましい。なお、横長四角形の角部は、角張っていても、丸みを帯びていてもよい。
【0013】
液体吐出口1を構成する横長四角形の大きさは、
図2に示されるように、横長四角形を構成する一の角αを挟む2辺のうち長辺の長さをAとし、その対角γを挟む2辺のうち短辺の長さをBとしたときに、両者の比(A:B)が、30:1~1.5:1であることを要する。これにより、液体吐出口から吐出された液体と気体吐出口から吐出された気体とを十分に接触させることができるため、ミストの粒径を略均一にすることができる。
かかる比率(A:B)は、ミストの粒径のより一層の略均一化の観点から、25:1~1.5:1が好ましく、20:1~1.5:1がより好ましく、10:1~1.5:1が更に好ましい。
【0014】
液体吐出口1の液体流量は、流体ノズルの大きさにより適宜選択可能であるが、微小粒子の増産化、ミストの粒径の略均一化の観点から、3L/h以上が好ましく、6L/h以上がより好ましく、12L/h以上が更に好ましく、そして200L/h以下が好ましく、150L/h以下がより好ましく、130L/h以下が更に好ましい。
液体吐出口1への供給液体の圧力は、流体ノズルの大きさや液体流量により適宜選択可能であるが、ミストの粒径の略均一化の観点から、0.05MPa以上が好ましく、0.10MPa以上がより好ましく、0.15MPa以上が更に好ましく、そして0.60MPa以下が好ましく、0.50MPa以下がより好ましく、0.40MPa以下が更に好ましい。
【0015】
第1の気体吐出口2は、気体供給部からサイドブロック6内及びセンターエッジ4内の気体ラインを介して供給された気体を、液体吐出口1から吐出された液体に向けて吐出する。これにより、第1の気体吐出口1から吐出された気体が液体吐出口から吐出された液体に衝突して分散し、ミストが形成される。
【0016】
第1の気体吐出口2は、
図1に示されるように、液体吐出口1の長辺側に2つ設けられているが、ミストの粒径の略均一化の観点から、それぞれ液体吐出口1の長辺に隣接して設けることが好ましい。
【0017】
第1の気体吐出口2に供給する気体は、例えば、空気や、窒素、アルゴン等の不活性ガス等を挙げることができる。中でも、経済性の観点から、空気が好ましい。
【0018】
第1の気体吐出口の気体流量は、ミストの粒径の略均一化の観点から、200L/min以上が好ましく、250L/min以上がより好ましく、400L/min以上が更に好ましく、そして1500L/min以下が好ましく、1300L/min以下がより好ましく、1250L/min以下が更に好ましい。
第1の気体吐出口2への供給気体の圧力は、流体ノズルの大きさや気体流量により適宜選択可能であるが、ミストの粒径の略均一化の観点から、0.1MPa以上が好ましく、0.2MPa以上がより好ましく、0.5MPa以上が更に好ましく、そして1.0MPa以下が好ましく、0.9MPa以下がより好ましく、0.85MPa以下が更に好ましい。
【0019】
第2の気体吐出口3は、気体供給部からサイドブロック6内の気体ラインを介して供給された気体を、液体吐出口1の端部から吐出された液体に向けて吐出する。これにより、第2の気体吐出口3から吐出された気体が液体吐出口1の端部から吐出された液体に衝突して分散し、とりわけ
図4において楕円で囲んだ範囲のミストの粒径の増大を抑制することができる。その結果、ミストの粒径が略均一化され、粗大粒子の生成を抑制することができる。
【0020】
第2の気体吐出口3に供給する気体としては、第1の気体吐出口2に供給する気体と同様のものを挙げることができるが、第1の気体吐出口2に供給する気体と同一であることが好ましい。
【0021】
第2の気体吐出口3は、
図1に示されるように、液体吐出口1の短辺側に2つ設けられているが、ミストの粒径の増大抑制の観点から、それぞれ液体吐出口1の短辺側に隣接して設けることが好ましい。
【0022】
また、第1の気体吐出口2及び第2の気体吐出口3は、液体吐出口1に隣接し、かつ互いに独立して配置することが好ましい。即ち、
図1では、第1の気体吐出口2及び第2の気体吐出口3がそれぞれ2つずつ設けられ、独立した開口を形成している。これにより、第2の気体吐出口3から吐出された気体が、第1の気体吐出口2から吐出された気体と干渉することなく、液体吐出口1の端部から吐出された液体に衝突するため、液体吐出口1の端部、とりわけ
図4において楕円で囲んだ範囲に形成されたミストの粒径の増大を抑制することができる。その結果、ミストの粒径が略均一化され、粗大粒子の生成を抑制することができる。
【0023】
第2の気体吐出口3の液体吐出口側の辺の長さは、液体吐出口1を構成する横長四角形の短辺よりも長いことが好ましい。これにより、第2の気体吐出口3から気体を液体吐出口1の端部から吐出された液体に向けてより広範囲に吐出し、また気体流量を増加できるため、第2の気体吐出口3から吐出された気体と十分に接触し、液体吐出口1の端部に形成されたミストの粒径の増大をより一層抑制することができる。その結果、ミストの粒径がより一層略均一化され、粒度分布の幅がより一層狭い粒子を製造することができる。なお、第2の気体吐出口3の外周は、第1の気体吐出口2の外周と隔壁5を介して連続していることが好ましい。
【0024】
第2の気体吐出口3の気体流量は、液体吐出口1の端部に形成されたミストの粒径の増大抑制の観点から、200L/min以上が好ましく、250L/min以上がより好ましく、300L/min以上が更に好ましく、そして1000L/min以下が好ましく、800L/min以下がより好ましく、500L/min以下が更に好ましい。
第2の気体吐出口3への供給気体の圧力は、流体ノズルの大きさや気体流量により適宜選択可能であるが、液体吐出口1の端部に形成されたミストの粒径の増大抑制の観点から、0.1MPa以上が好ましく、0.2MPa以上がより好ましく、0.5MPa以上が更に好ましく、そして1.0MPa以下が好ましく、0.9MPa以下がより好ましく、0.85MPa以下が更に好ましい。
【0025】
ノズル本体の大きさは特に限定されず、液体噴霧量やノズル強度等を考慮して適宜選択することが可能である。例えば、ノズル本体の長さは、例えば、400~1500mmであり、ノズル本体の外径は、ノズルが円筒型の場合、φ40~80mmである。
【0026】
流体ノズルは、液体と空気をノズル内部で混合する内部混合方式でも、ノズル外部で混合する外部混合方式でも構わないが、本発明の効果を享受しやすい点で、外部混合方式が好ましい。
本発明の流体ノズルは、後述する噴霧乾燥装置又は噴霧熱分解装置に装着する流体ノズルとして有用である。
【0027】
〔噴霧乾燥装置又は噴霧熱分解装置〕
本発明の噴霧熱分解装置又は噴霧乾燥装置は、本発明の流体ノズルを装着したものである。以下、
図3を参照しながら好適な実施形態について説明する。
【0028】
図3は、本発明の噴霧乾燥装置又は噴霧熱分解装置の一例を示す概略図である。
噴霧熱分解装置又は噴霧乾燥装置100は、
図3に示されるように、加熱炉11内に、原料溶液を噴霧するための流体ノズル10と、原料溶液から形成されたミストを加熱して乾燥又は熱分解するための加熱装置12を備えている。
【0029】
流体ノズル10は、本発明の流体ノズルであれば特に限定されない。なお、ノズルの具体的態様は、上記において説明したとおりである。
流体ノズルは、1基又は2基以上設置することが可能であるが、
図3に示される装置は、1基設置されている。
【0030】
加熱炉11の材質は、炉材として使用されているものであれば特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス、インコネル、ハステロイ、チタン等の耐熱性のある金属、セラミックス、レンガ、不定形耐火物を挙げることができる。
加熱炉11の形状は、適宜選択することが可能であるが、例えば、略円筒形を挙げることができる
加熱11炉の大きさは、製造スケールに応じて適宜選択することが可能であるが、例えば、堅型円筒状である場合、内径は600~1600mmが好ましく、高さは3000~10000mmが好ましい。
【0031】
加熱装置12は、原料溶液のミストの乾燥又は熱分解に必要な熱量を付与できれば特に限定されないが、例えば、燃焼バーナ、熱風ヒータ、電気ヒータ等を挙げることができる。加熱装置12は、1基又は2基以上設置することが可能であり、
図3に示される装置は、8基設置されている。なお、燃焼バーナ、熱風ヒータ及び電気ヒータは、一般的に販売されているものあれば、いずれも使用することができる。
【0032】
次に、噴霧乾燥装置又は噴霧熱分解装置を用いた微小粒子の製造方法を説明するが、好適な実施形態として無機酸化物粒子の製造方法について説明する。
【0033】
先ず、原料溶液を調製する。原料溶液は、例えば、酸化物を構成する元素を含む化合物の溶液であり、原料化合物と溶媒とを混合して調製される。溶媒としては、水及び有機溶媒を挙げることができる。中でも、環境への影響、製造コストの点から、水が好ましい。
原料化合物としては、無機酸化物を構成する元素を含有し、水に溶解する化合物であれば特に限定されないが、例えば、無機塩、有機塩、アルコキシド等を挙げることができる。無機塩としては、例えば、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物が挙げられる。有機塩としては、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩を挙げることができる。
【0034】
無機酸化物を構成する元素としては、例えば、周期表第1族元素、周期表第2族元素、周期表第4族元素、周期表第8族元素、周期表第9族元素、周期表第10族元素、周期表第11族元素、周期表第12族元素、周期表第13族元素、周期表第14族元素及び周期表第15族元素から選択される1又は2以上の元素を挙げることができる。
【0035】
原料化合物の具体例としては、次のものを挙げることができる。
周期表第1族元素を含む原料化合物としては、例えば、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム等のナトリウム化合物、硝酸カリウム、塩化カリウム、水酸化カリウム、硫酸カリウム等のカリウム化合物を挙げることができる。周期表第2族元素を含む原料化合物としては、例えば、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、燐酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、蟻酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム等のカルシウム化合物を挙げることができる。周期表第13族元素を含む原料化合物としては、例えば、ホウ酸、メタホウ酸塩、四ホウ酸塩、ホウ酸塩を挙げることができる。メタホウ酸塩の具体例としては、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウムが挙げられ、四ホウ酸塩の具体例としては、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウムを挙げることができる。ホウ酸塩の具体例としては、例えば、五ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸カリウムが挙げられる。また、例えば、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、燐酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、酢酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム等のアルミニウム化合物を挙げることができる。また、アルコキシドとして、例えば、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、オルトケイ酸テトラプロピル(TPOS)、テトラブトキシシラン等のケイ酸アルコキシド、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドを使用することができる。更に、アルミノケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸カリウム、アルミノケイ酸カルシウム等のアルミノケイ酸塩や、アルミニウム酸化物を溶媒に分散した溶液、アルミニウム酸化物のゾル溶液を使用することもできる。
【0036】
原料溶液中の原料化合物の合計濃度は、通常0.01mol/Lから飽和濃度であり、好ましくは0.1~1.0mol/Lである。
【0037】
次に、加熱炉内に、本発明の流体ノズルから原料溶液を噴霧すると同時に、原料溶液に第1の気体吐出口及び第2の気体吐出口から気体を原料溶液に向けて吐出し、液体と気体とを略均一に接触させて略均一な粒径のミストを形成させ、このミストを乾燥又は熱分解することで、無機酸化物粒子(微小粒子)が生成する。
【0038】
原料溶液の流量は、通常1~100L/hであり、好ましくは3~80L/hであり、更に好ましくは5~60L/hである。
原料溶液の噴出速度は、通常1~50m/sであり、好ましくは5~35m/sであり、更に好ましくは10~20m/sである。
加熱炉内の温度は、原料溶液の種類により適宜選択可能であるが、通常100~1800℃であり、好ましくは150~1500℃であり、更に好ましくは150~1200℃である。
【0039】
次に、乾燥又は熱分解によって生じた無機酸化物粒子(微小粒子)を、例えば、加熱炉下流から誘引ファンによって回収装置に移動させ回収する。回収装置としては、例えば、サイクロン粉体回収機、バグフィルターを挙げることができる。また、微小粒子の回収にあたっては、フィルターを通過させることにより、粒子径を調整してもよい。さらに、回収装置の下流側に、必要に応じて、スクラバー等の除塵、浄化設備を配置してもよい。
【0040】
無機酸化物粒子を構成する無機化合物の具体例としては、例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ケイ素、アルミノシリケート、アルミノホウケイ酸、バリウムホウケイ酸を挙げることができる。また、無機酸化物を組み合わせた複合酸化物でも構わない。
【0041】
本発明の噴霧乾燥装置又は噴霧熱分解装置により製造される無機酸化物粒子(微小粒子)は、中実粒子、多孔質粒子、中空粒子のいずれでも、これら2以上の混合物でも構わない。ここで、本明細書において「中実粒子」とは、内部に空洞を有さない構造の粒子をいい、例えば、単一の層からなる粒子、及び、コア(内核とも言われる)とシェル層(外殻とも言われる)を有する粒子を挙げることができる。また、「中空粒子」とは、内部に空洞(中空部)を有する構造のものであり、外殻に包囲された空洞を有する粒子をいう。空洞の数は、単数でも複数でもよい。更に、「多孔質粒子」とは、粒子表面から内部まで連結した貫通孔を多数有する粒子をいう。貫通孔の大きさや形状は、特に限定されない。また、粒子内部に閉気孔を有していてもよい。
【0042】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、噴霧乾燥装置又は噴霧熱分解装置100は、流体ノズル10及び加熱炉11が縦型に配置されているが、縦型に限らず、横型や斜め型であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 液体吐出口
2 第1の気体吐出口
3 第2の気体吐出口
4 センターエッジ
5 隔壁
6 サイドブロック
10 流体ノズル
11 加熱炉
12 加熱装置
20 流体ノズル
100 噴霧乾燥装置又は噴霧熱分解装置