IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱鉛筆株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-非焼成鉛筆芯 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117586
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】非焼成鉛筆芯
(51)【国際特許分類】
   C09D 13/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
C09D13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023757
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 達哉
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AB02
4J039AD04
4J039AD09
4J039BA02
4J039BC02
4J039BE01
4J039BE25
4J039DA02
4J039DA06
4J039EA38
4J039EA48
4J039GA30
4J039GA31
(57)【要約】
【課題】描線の擦過による筆記面の汚れの解消と、滑らかな筆記性とを両立させた非焼成鉛筆芯を提供する。
【解決手段】体質材と、顔料と、水溶性樹脂と、架橋剤と、分子量30,000以下のポリテトラフルオロエチレンとを含む、非焼成鉛筆芯。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体質材と、顔料と、水溶性樹脂と、架橋剤と、分子量30,000以下のポリテトラフルオロエチレンとを含む、非焼成鉛筆芯。
【請求項2】
前記水溶性樹脂はカルボキシメチルセルロースナトリウムを含むとともに、
前記架橋剤はポリアクリル酸である、請求項1に記載の非焼成鉛筆芯。
【請求項3】
芯体に油脂類が含浸されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非焼成鉛筆芯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非焼成鉛筆芯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼成鉛筆芯は、黒鉛と粘土を混錬して芯を形成し、1,000℃付近の高温で粘土を焼結させて、芯体を得たのち、その芯体に生じた細孔にオイル等を含浸させて製造するのが一般的である。このような焼成鉛筆芯は、含浸させたオイルにより黒鉛が紙面に定着し、消しゴムによる消去性が良好なので、広く使用されている(たとえば、特許文献1)。しかし、焼成鉛筆芯は結合材の粘土を焼結させるために1,000℃付近の加熱が必要であり、エネルギーがかかる。
【0003】
また、従来の非焼成鉛筆芯は、ワックス又は樹脂を結合材としており、各種無機系又は有機系顔料と混錬し、押出成形機などにより芯状に成形後、必要に応じて乾燥処理を施すなどして製造される(たとえば、特許文献2)。このような非焼成鉛筆芯は結合材がワックス又は樹脂であり、強度に乏しいことがある。したがって、先端を尖らせた場合、筆記時に十分な先端強度は得られないことがある。また、消しゴムによる消去性はほとんどない。
【0004】
一方、結合材にカルボキシメチルセルロース塩を用いることによって、非焼成鉛筆芯が高湿度下においても書き味及び着色性を損なうことなく、吸湿による芯の膨張が生じなくなるとの技術もある(特許文献3)。しかしながら、吸湿による強度低下が生じやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-138031号公報
【特許文献2】特開2012-52109号公報
【特許文献3】特開平11-335617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の各実施態様は、描線の擦過による筆記面の汚れの解消と、滑らかな筆記性とを両立させた非焼成鉛筆芯を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1態様の非焼成鉛筆芯は、体質材と、顔料と、水溶性樹脂と、架橋剤と、分子量30,000以下のポリテトラフルオロエチレンとを含む。
【0008】
本願の第2態様の非焼成鉛筆芯は、第1態様の構成に加え、前記水溶性樹脂はカルボキシメチルセルロースナトリウムを含むとともに、前記架橋剤はポリアクリル酸である。
【0009】
本願の第3態様の非焼成鉛筆芯は、第1態様又は第2態様の構成に加え、芯体に油脂類が含浸されている。
【発明の効果】
【0010】
本願の各実施態様は、上記のように構成されているので、描線の擦過による筆記面の汚れの解消と、滑らかな筆記性とを両立させた非焼成鉛筆芯を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の非焼成鉛筆芯の外観を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願の実施形態の非焼成鉛筆芯は、体質材と、顔料と、水溶性樹脂と、架橋剤と、分子量30,000以下のポリテトラフルオロエチレンとを含む。
【0013】
体質材としては、従来の非焼成鉛筆芯に使用されているものであれば、特に限定されるものではなく、いずれも使用することができる。たとえば、窒化ホウ素、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等の白色系体質材や、固形描画材の色相によっては、黒鉛のような有色系の体質材も使用することができ、当然これら数種類の混合物も使用できる。特に、好ましくは、その物性、形状から黒鉛、タルク、窒化ホウ素、カオリンが挙げられる。
【0014】
顔料としては、たとえば、酸化チタン、鉄黒、カーボンブラック、紺青、群青、青色1号、弁柄、黄酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、青色2号、青色404号、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、DPPレッド、黄色4号、黄色5号、緑色3号等の顔料等が挙げられ、これらは単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0015】
水溶性樹脂は、結合剤として用いられるものであり、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシセルロースアンモニウム、ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどの水溶性有機高分子を用いることができる。また、水溶性樹脂の原料として、澱粉を用いることもできる。
【0016】
水溶性樹脂のうち、カルボキシメチルセルロースナトリウムとは、セルロースの誘導体であって、セルロースの骨格を構成するグルコピラノースモノマーのヒドロキシ基の一部において、水素(-H)がカルボキシメチル基(-CHCOOH)で置換されたカルボキシメチルセルロースにおいて、このカルボキシメチル基の末端の水素イオンがナトリウムイオンで置換されたものをいう。
【0017】
架橋剤とは、上記したカルボキシメチルセルロースナトリウムのような水溶性樹脂の高分子同士を架橋して、物理的及び化学的性質を安定化させるために用いられるものであり、たとえば、ポリアクリル酸を用いることができる。ポリアクリル酸は、アクリル酸(CH=CHCOOH)が重合化して分子量が25,000程度となった下記式1の構造式で表される。
【0018】
[-CHCH(COOH)-]・・・式(1)
【0019】
ここで、ポリアクリル酸の分子量については特に限定はないが、5,000以上、1,000,000以下であることが望ましい。分子量が5,000以上であることにより、カルボキシメチルセルロース酸塩を構成する個々のモノマーのナトリウムイオンが酸で置換される際、ポリマー同士が多数の箇所で架橋されることになり、結合の安定性が向上する。一方、分子量が1,000,000以下であることにより、粉体との混合が容易となる。
【0020】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とは、テトラフルオロエチレンの重合によって得られる高分子であり、下記式2に示すように、フッ素原子及び炭素原子のみからなるフッ素樹脂である。
【0021】
[-CF-CF-]・・・式(2)
【0022】
PTFEの分子量は、粒子がフィブリル化するのを防止するため、30,000以下が好適である。
【0023】
上記の非焼成鉛筆芯は、下記の製造方法により製造することができる。すなわち、体質材と、顔料と、水溶性樹脂と、架橋剤と、PTFEとの混合物を調製する工程、及び、前記混合物を芯体へ成形する工程を含み、前記成形する工程において、前記カルボキシメチルセルロース塩と、前記架橋剤とを反応させて架橋させる。
【0024】
たとえば、体質材と、顔料と、水溶性樹脂と、架橋剤と、PTFEとを混練して混合物を調製するとき、必要に応じて溶剤を添加することもできる。溶剤としては、メタノール、エタノールなど低級アルコール又は水などが用いられる。そして、得られた混合物をプランジャー型、又はスクリュー型押し出し機で鉛筆芯の形状に押し出し成形する。なお、溶剤を用いている場合は、その後その溶剤を乾燥(約40℃、24時間)除去する。この成形により、図1に示すような、略円筒形状の芯体11を有する非焼成鉛筆芯10が得られる。成形後の芯体11は、粉体の微視的構造に由来する細孔を有する多孔質である。この細孔は、そのままであってもよいが、60~80℃で12時間加熱後、油脂類を含浸させることが望ましい。
【0025】
この油脂類としては、常温で液状の油状物、たとえば、流動パラフィン、スピンドル油、シリコーン油、αオレフィンオリゴマー、スクワラン等を好適に用いることができる。これらのうちでは、特にシリコーン油が良好で、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル等が例示される。
【0026】
上記のような製造方法により、少なくとも体質材と、顔料と、水溶性樹脂と、架橋剤と、PTFEとを混練及び成形して成る非焼成鉛筆芯とすることによって、描線の擦過による筆記面の汚れの解消と、滑らかな筆記性とを両立させた非焼成鉛筆芯を製造することができる。
【実施例0027】
(1)原材料
各実施例及び各比較例の非焼成鉛筆芯で共通して用いた原材料は、以下のとおりであった。体質材としては、黒鉛A(MCP-10、日本黒鉛)又は黒鉛B(MCP-5、日本黒鉛)を用いた。顔料としては、カーボンブラック(MA-100、三菱化学)を用いた。水溶性樹脂としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム(サンローズF20LC、日本製紙)、澱粉(スターチTK、日澱化学)及びポリビニルアルコール(PVA-217、クラレ)をそれぞれ同質量に混合したものを用いた。架橋剤としては、ポリアクリル酸(アクアリックHL-415、日本触媒)を用いた。また、芯体に含浸させる油脂類としては、シリコーンオイル(KF-96-100CS、信越化学)を用いた。
【0028】
PTFE粒子としては、KTL500F(喜多村)又はL170JE(旭硝子)を使用した。前者は、短繊維長のPTFE粒子として使用し、数平均分子量は23,793、一次粒子径は0.23μmであった。一方、後者は、長繊維長のPTFE粒子として使用し、数平均分子量は32,187、一次粒子径は0.40μmであった。なお、数平均分子量及び一次粒子径の測定は、特許第7078441号に記載の方法に準拠して実施した。具体的には、一次粒子径として、走査型電子顕微鏡(S-4700、日立ハイテクノロジーズ)を用いて、最小構成単位となるPTFE微粒子の長手方向の距離を測定した。また、数平均分子量(M)は、Thermo plus EVO2 DSC8231(リガク)を用いて、PTFE粒子を昇温速度10℃/minで350℃まで昇温させ、10℃/minで冷却したときの結晶化熱(ΔH:cal/g)を測定し、下記式3に当て嵌めて算出した。
【0029】
=2.1×ΔH -5.16×1010・・・式(3)
【0030】
(2)実施例
(2-1)実施例1
実施例1として、体質材(黒鉛A)60質量%、顔料10重量%、水溶性樹脂15質量%及び架橋剤5重量%、並びにPTFE粒子(KTL500F)10質量%を配合した。
【0031】
(2-2)実施例2
実施例2として、体質材(黒鉛A)40質量%、顔料10重量%、水溶性樹脂15質量%及び架橋剤5重量%、並びにPTFE粒子(KTL500F)30質量%を配合した。
【0032】
(2-3)実施例3
実施例3として、体質材(黒鉛B)40質量%、顔料30重量%、水溶性樹脂15質量%及び架橋剤10重量%、並びにPTFE粒子(KTL500F)5質量%を配合した。
【0033】
(2-4)実施例4
実施例4として、体質材(黒鉛B)35質量%、顔料30重量%、水溶性樹脂15質量%及び架橋剤10重量%、並びにPTFE粒子(KTL500F)10質量%を配合した。
【0034】
(3)比較例
(3-1)比較例1
比較例1として、体質材(黒鉛A)70質量%、顔料10重量%、水溶性樹脂15質量%及び架橋剤5重量%を配合した。
【0035】
(3-2)比較例2
比較例2として、体質材(黒鉛B)45質量%、顔料30重量%、水溶性樹脂15質量%及び架橋剤10重量%を配合した。
【0036】
(3-3)比較例3
比較例3として、体質材(黒鉛A)60質量%、顔料10重量%、水溶性樹脂15質量%及び架橋剤5重量%、並びにPTFE粒子(L170JE)10質量%を配合した。
【0037】
(4)非焼成鉛筆芯の製造
上記の実施例1~実施例4並びに比較例1~比較例3の各々の原材料を混練した後、プランジャー型、又はスクリュー型押出機で鉛筆芯の形状に押し出し成形し水分を蒸発させ、非焼成鉛筆芯を得た。得られた芯体をシリコーンオイルに浸漬して含浸させた。最終的に得られた非焼成鉛筆芯の全体に占める、含浸されたシリコーンオイルの割合は、実施例1で14.3質量%、実施例2で1.1質量%、実施例3で18.1質量%及び実施例4で16.3質量%、並びに比較例1で23.2質量%、比較例2で17.8質量%及び比較例3で17.8質量%であった。
【0038】
(5)曲げ強度測定
上記の実施例1~実施例4並びに比較例1~比較例3のそれぞれの非焼成鉛筆芯について、曲げ強度を測定した。具体的には、各非焼成鉛筆芯について、23℃の温度下、支点間40mmで3点曲げ強度を測定し、折損した際の圧力(単位:MPa)を求めた。
【0039】
(6)先端強度測定
上記の実施例1~実施例4並びに比較例1~比較例3のそれぞれの非焼成鉛筆芯について、先端強度を測定した。具体的には、通常の鉛筆の木軸に装着した非焼成鉛筆芯の先端を角度17±1°の円錐形状に削り,その先端を直径0.6±0.1mmの円形に削り、全体を円錐台形状とした。このように先端形状を整えた鉛筆軸を専用固定治具で先端を下向きにして60°の角度に保持した。この状態で、10mm/minの速度で荷重を加え、先端が欠けたとき(具体的には、荷重が約0.7N以上急激に減少した場合、先端が欠けたと判断した)の荷重を測定した。
【0040】
(7)摩耗量測定
上記の実施例1~実施例3並びに比較例1~比較例3のそれぞれの非焼成鉛筆芯について、機械筆記に供した際の摩耗量を測定した。具体的には、JIS S 6006で規定するレコード式測定機を用いて、同規則に規定する測定条件で芯の摩耗量を測定した。
【0041】
(8)描線濃度測定
上記の実施例1~実施例3並びに比較例1~比較例3のそれぞれの非焼成鉛筆芯について、描線濃度を測定した。具体的には、JIS S 6006で規定するレコード式測定機描線の濃度測定法に基づき、描線における4カ所の濃度を測定した。
【0042】
(9)擦過濃度測定
上記の実施例1~実施例3並びに比較例1~比較例3のそれぞれの非焼成鉛筆芯について、擦過濃度を測定した。具体的には、前記(8)の描線に500gの荷重を乗せたフェルトで4往復擦過し、折り返し地点の濃度を測定した。
【0043】
(10)動摩擦係数測定
上記の実施例1~実施例3並びに比較例1~比較例3のそれぞれの非焼成鉛筆芯について、筆記時における筆記面との間の動摩擦係数を測定した。具体的には、通常の鉛筆の木軸に装着した非焼成鉛筆芯の先端を角度17±1°の円錐形状に削り,その先端を直径0.6±0.1mmの円形に削り、全体を円錐台形状とした。このように先端形状を整えた鉛筆軸を専用固定治具で先端を下向きにして60°の角度に保持し、動摩擦測定機(TRIBOGEAR、新東科学)に固定した。この状態で、300gの荷重を加え、10mm/secの速度で引き書きしたときの動摩擦係数を測定した。
【0044】
(11)結果
上記の(5)~(10)での測定結果を、下記表1に示す。なお、下記表1中の、「描線濃度」及び「擦過濃度」以外の数値は、各実施例及び各比較例それぞれ10本の非焼成鉛筆芯で測定した数値の平均値である。
【0045】
【表1】
【0046】
まず、分子量30,000以下のPTFE粒子を含有する実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4並びに分子量30,000超のPTFE粒子を含有する比較例3の非焼成鉛筆芯では、描線濃度に対する擦過濃度の比率(擦過濃度/描線濃度)がそれぞれ0.079、0.034、0.110、0.109及び0.055であった。また、動摩擦係数はそれぞれ0.173、0.177、0.186、0.189及び0.182であった。これに対し、PTFE粒子を含有しない比較例1及び比較例2の非焼成鉛筆芯では、擦過濃度/描線濃度はそれぞれ0.153及び0.205で、動摩擦係数はそれぞれ0.190及び0.202であった。
【0047】
ここで、擦過濃度/描線濃度の数値は、描線がどれだけ擦れやすいかを表す指標と考えられる。そして、上記の結果から、PTFE粒子を含有する実施例1~実施例4及び比較例3は、PTFE粒子を含有しない比較例1及び比較例2に比べて描線が擦れにくくなっている、ということがいえる。また、PTFE粒子を含有する実施例1~実施例4及び比較例3は、PTFE粒子を含有しない比較例1及び比較例2に比べて動摩擦係数が低くなっている。このことから、PTFE粒子は、非焼成鉛筆芯において、描線の擦過による筆記面の汚れを低減させるとともに滑らかな筆記性を実現させる効果があることが推認された。
【0048】
しかしながら、分子量30,000超のPTFE粒子を含有する比較例3の非焼成鉛筆芯は、分子量30,000以下のPTFE粒子を含有する実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4に比べ、曲げ強度及び先端強度が劣るという結果となった。ここで、分子量30,000超のPTFE粒子は、分子量30,000以下のPTFE粒子に比べフィブリル化しやすいため、これが含有された非焼成鉛筆芯では機械的強度が劣るという結果になったと推認される。
【0049】
すなわち、分子量30,000以下のPTFE粒子を含有する実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4では、機械的強度(曲げ強度、先端強度)、筆記面の汚れ低減(擦過濃度/描線濃度)及び滑らかな筆記性(動摩擦係数)のいずれも優れた結果を示した。これに対し、PTFE粒子を含有しない比較例1では機械的強度、筆記面の汚れ低減及び滑らかな筆記性のいずれの結果も各実施例に比べ劣っていた。また、同じくPTFE粒子を含有しない比較例2では、機械的強度は各実施例と遜色なかったものの、筆記面の汚れ低減及び滑らかな筆記性のいずれの結果も各実施例に比べ劣っていた。さらに、分子量30,000超のPTFE粒子を含有する比較例3では、筆記面の汚れ低減及び滑らかな筆記性の結果は各実施例と遜色なかったものの、機械的強度は各実施例に比べ劣っていた。
【0050】
以上より、分子量30,000以下のPTFE粒子を含有する実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4では、PTFE粒子の効果としての筆記面の汚れ低減及び滑らかな筆記性が実現されているのに加え、PTFE粒子の分子量が30,000以下であることでフィブリル化しにくいことによる機械的強度の向上も図られていることが推認された。
【0051】
なお、摩耗量の結果は、各実施例は各比較例に比べ取り立てて優れているとはいえなかったため、PTFE粒子の配合は摩耗料には影響しないことも推認された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、非焼成の鉛筆芯として利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 非焼成鉛筆芯 11 芯体
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
(2)実施例
(2-1)実施例1
実施例1として、体質材(黒鉛A)60質量%、顔料10量%、水溶性樹脂15質量%及び架橋剤5量%、並びにPTFE粒子(KTL500F)10質量%を配合した。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
(2-2)実施例2
実施例2として、体質材(黒鉛A)40質量%、顔料10量%、水溶性樹脂15質量%及び架橋剤5量%、並びにPTFE粒子(KTL500F)30質量%を配合した。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
(2-3)実施例3
実施例3として、体質材(黒鉛B)40質量%、顔料30量%、水溶性樹脂15質量%及び架橋剤10量%、並びにPTFE粒子(KTL500F)5質量%を配合した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
(2-4)実施例4
実施例4として、体質材(黒鉛B)35質量%、顔料30量%、水溶性樹脂15質量%及び架橋剤10量%、並びにPTFE粒子(KTL500F)10質量%を配合した。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
(3)比較例
(3-1)比較例1
比較例1として、体質材(黒鉛A)70質量%、顔料10量%、水溶性樹脂15質量%及び架橋剤5量%を配合した。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
(3-2)比較例2
比較例2として、体質材(黒鉛B)45質量%、顔料30量%、水溶性樹脂15質量%及び架橋剤10量%を配合した。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
(3-3)比較例3
比較例3として、体質材(黒鉛A)60質量%、顔料10量%、水溶性樹脂15質量%及び架橋剤5量%、並びにPTFE粒子(L170JE)10質量%を配合した。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
(6)先端強度測定
上記の実施例1~実施例4並びに比較例1~比較例3のそれぞれの非焼成鉛筆芯について、先端強度を測定した。具体的には、通常の鉛筆の木軸に装着した非焼成鉛筆芯の先端を角度17±1°の円錐形状に削り,その先端を直径0.6±0.1mmの円形に削り、全体を円錐台形状とした。このように先端形状を整えた鉛筆軸を専用固定治具で先端を下向きにして60°の角度に保持した。この状態で、10mm/minの速度で荷重を加え、先端が欠けたとき(具体的には、荷重が約0.7N以上急激に減少した場合、先端が欠けたと判断した)の荷重を測定した。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
なお、摩耗量の結果は、各実施例は各比較例に比べ取り立てて優れているとはいえなかったため、PTFE粒子の配合は摩耗には影響しないことも推認された。