(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117589
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】除細動システム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/39 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
A61N1/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023761
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 祐介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘誠
(72)【発明者】
【氏名】大山 典朗
(72)【発明者】
【氏名】玉村 一樹
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB02
4C053BB12
4C053BB24
4C053CC01
4C053JJ14
4C053JJ15
4C053JJ40
(57)【要約】
【課題】除細動器を大型化させることなく、簡単な回路の追加により、体外式除細動及び心腔内除細動を好適に行うことができる、除細動システムを提供すること。
【解決手段】除細動システム10は、コンデンサーを有し、体外式除細動及び心腔内除細動のための除細動エネルギーを生成する除細動器100と、コンデンサーと電極カテーテル300との間に設けられ、患者の生体インピーダンスに応じて抵抗値(補正抵抗)を変更可能な可変抵抗部210と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサーを有し、当該コンデンサーによって体外式除細動及び心腔内除細動のための除細動エネルギーを生成する除細動器と、
前記コンデンサーと電極カテーテルとの間に設けられ、患者の生体インピーダンスに応じて抵抗値を変更可能な可変抵抗部と、
を備える除細動システム。
【請求項2】
前記コンデンサーは、体外式除細動に適した容量である、
請求項1に記載の除細動システム。
【請求項3】
前記可変抵抗部は、複数の抵抗が並列及び又は直列に設けられており、前記生体インピーダンスに応じて、前記複数の抵抗のうち前記コンデンサーと前記電極カテーテルとの間に並列及び又は直列接続される抵抗を選択する、
請求項1に記載の除細動システム。
【請求項4】
前記可変抵抗部は、前記除細動器とは別体であり、前記除細動器と前記電極カテーテルとの間にケーブルによって接続された接続装置内に設けられている、
請求項1に記載の除細動システム。
【請求項5】
前記除細動器は、前記除細動エネルギーとして、二相性波形の電圧を前記患者に供給し、
前記可変抵抗部は、前記患者の前記生体インピーダンスに応じて前記抵抗値を変更することで前記二相性波形の形状を所望形状に補正する、
請求項1に記載の除細動システム。
【請求項6】
前記可変抵抗部は、前記生体インピーダンスが変化した場合に、少なくとも、前記二相性波形における、ピーク電圧及びパルス幅の値が所望値から所定範囲内に収まるような抵抗を有する、
請求項5に記載の除細動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、電極カテーテルを用いた心腔内除細動、及び、体外パドルや体外パッドを用いた体外式除細動を行うことができる、除細動システムに好適である。
【背景技術】
【0002】
心房細動のアブレーション治療において、術中の自然発作として、心房細動、心房粗動又は心房頻拍が発生することがある。心腔内除細動とは、術中に発生した心房細動を電気的除細動により停止させる必要がある場合に、予め心腔内に留置している電極カテーテルを介して心臓に電気エネルギーを印加することにより細動を除去するものである。心腔内除細動によれば、体外式除細動に比べて患者に与える電気エネルギーが少なくて済み(例えば体外式除細動が150~200J程度であるのに対して心腔内除細動では30J以下)、患者への負担が小さいといったメリットがある。
【0003】
心腔内除細動システムは、例えば特許文献1等に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、1つの除細動器で心腔内除細動及び体外式除細動の両方を行うことができれば、非常に便利である。
【0006】
しかし、当然のことながら、心腔内除細動に適した回路構成と、体外式除細動に適した回路構成は異なる。心腔内除細動に適した回路構成と、体外式除細動に適した回路の2系統の回路を設ければ実現は簡単であるが、このようにすると、除細動器が大型化してしまう。
【0007】
特に、コンデンサーは他の回路と比較すると回路面積が大きいので、体外式除細動専用のコンデンサーに心腔内除細動専用のコンデンサーとを設けると回路規模が大きくなってしまう。
【0008】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであり、除細動器を大型化させることなく、簡単な回路の追加により、体外式除細動及び心腔内除細動を好適に行うことができる、除細動システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の除細動システムの一つの態様は、
コンデンサーを有し、当該コンデンサーによって体外式除細動及び心腔内除細動のための除細動エネルギーを生成する除細動器と、
前記コンデンサーと電極カテーテルとの間に設けられ、患者の生体インピーダンスに応じて抵抗値を変更可能な可変抵抗部と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、患者の生体インピーダンスに応じて抵抗値を変更可能な可変抵抗部を設けたので、簡単な回路の追加により、例えば体外式除細動に適した容量のコンデンサーを有する除細動器の出力を、心腔内除細動に適した形状の出力に変換することができ、体外式除細動及び心腔内除細動を好適に行うことができる、除細動システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】理想波形と実波形との間にずれが生じている例を示す波形図
【
図3】可変抵抗部により、実波形を理想波形とほぼ同等にした例を示す波形図
【
図4】電極カテーテルに与えられる二相性波形のモデル形状を示した図
【
図5A】生体インピーダンスが25Ωの場合における二相性波形補正の様子を示す図
【
図5B】生体インピーダンスが50Ωの場合における二相性波形補正の様子を示す図
【
図5C】生体インピーダンスが75Ωの場合における二相性波形補正の様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
<1>除細動システムの構成
図1は、実施の形態の除細動システム10の接続図である。除細動システム10は、心臓カテーテル検査室における不整脈アブレーション治療等に用いられる。
【0014】
除細動システム10は、除細動器100と、接続装置200と、電極カテーテル300と、体外パドル/パッド400と、を有する。
【0015】
除細動器100は、心腔内除細動機能と、体外式除細動機能と、モニター機能とを有する。つまり、除細動器100は、電極カテーテル300によって心腔内除細動を行うための電気エネルギー、及び、体外パドル又はパッド(以下「パドル/パッド」と記す)によって体外式除細動を行うための電気エネルギーを生成可能となっている。除細動器100は、図示しないコンデンサーに電荷をチャージすることで、電気エネルギー(すなわち除細動エネルギー)を生成する。生成された除細動エネルギーは接続装置200を介して、電極カテーテル300又は体外パドル/パッド400に供給される。
【0016】
なお、本実施の形態では、体外パドル/パッド400は接続装置200を介して除細動器100に接続されているが、体外パドル/パッド400は接続装置200を介さずに直接除細動器100に接続されていてもよい。
【0017】
除細動器100は、充電操作スイッチ(以下スイッチを「SW」と略記する)111、通電操作SW112、出力ダイヤルSW113等の各種の操作スイッチと、LCD(Liquid Crystal Display)114と、AC電源を入力してDC電源に変換するAC/DC電源115と、を有する。
【0018】
さらに、除細動器100は、図示はしていないが、バッテリーや昇圧回路、演算回路及び制御回路等を内蔵している。
【0019】
出力設定ダイヤルSW113は、通電レベルを設定する機能と、通電先を切り換える機能と、を有する。また、出力設定ダイヤルSW113は、モニターモード及びAED(Automated External Defibrillator)モードを選択する機能を有する。
【0020】
ユーザーが出力設定ダイヤルSW113の回動位置を「AED」の位置に合わせると除細動器100はAEDモード(つまり体外式除細動モード)となる。また、ユーザーがダイヤルを「切」の位置から時計方向に回動させていくと、除細動器100を心腔内除細動モードにすることができ、その回動位置に応じて1,2,4,6,8,10,15,20,30[J]のいずれかの通電レベルを設定できる。一方、ユーザーがダイヤルを「切」の位置から反時計方向に回動させていくと、除細動器100を体外式除細動モードにすることができ、その回動位置に応じて1,2,4,6,8,10,15,20,30,50,70,100,150,200[J]のいずれかの通電レベルを設定できる。
【0021】
除細動器100と、電極カテーテル300及び体外パドル/パッド400とは、接続装置200により接続されている。具体的には、接続装置200は、電極カテーテル300との中継ケーブルK1を接続可能な第1の端子部T1と、体外パドル/パッド400との間のケーブルK2を接続可能な第2の端子部T2と、を有する。
【0022】
電極カテーテル300は、中継ケーブルK1を介して接続装置200に接続される。実際上、電極カテーテル300は、右心房内に留置されるRA電極と、冠静脈洞に留置されるCS電極と、上大静脈に留置されるEP電極(SVC電極やIVC電極など)と、を有する。これらの電極のうち、RA電極及びCS電極が心腔内除細動を行うために用いられ、RA電極、CS電極及びEP電極が心内電位を測定するために用いられる。
【0023】
体外パドル/パッド400は、それぞれ体外式除細動用電極を有する一対のパドル/パッドから構成されており、パドルの場合にはハンドル部に充電操作SW401及び通電操作SW402が設けられており、ユーザーが充電操作SW401及び通電操作SW402を操作することで、除細動器100に充電動作を行わせることができるとともに除細動器100から除細動のためのエネルギーの供給を受けることができるようになっている。
【0024】
接続装置200は、ケーブルK0によって除細動器100と接続されている。接続装置200は、ケーブルK0を介して除細動器100から体外式除細動又は心腔内除細動のための電気エネルギーを入力し、端子T2及びケーブルK2を介して体外パドル/パッド400に体外式除細動のための電気エネルギーを出力し、端子T1及び中継ケーブルK1を介して電極カテーテル300に心腔内除細動のための電気エネルギーを出力する。
【0025】
また、接続装置200は、ケーブルK2及び端子T2を介して体外パドル/パッド400から充電スイッチ操作信号及び通電スイッチ操作信号を入力し、これをケーブルK0を介して除細動器100に出力する。
【0026】
また、接続装置200は切換SW220を有する。ユーザーによる除細動器100の出力設定ダイヤルSW113の操作に応じて切換SW220の接点a、bのいずれかが選択される。つまり、ユーザーが出力設定ダイヤルSW113により体外式除細動を選択すると切換SWが接点aに接続し、これに対してユーザーが出力設定ダイヤルSW113により心腔内除細動を選択すると切換SW220が接点bに接続する。
【0027】
ここで、除細動器100は、体外式除細動に適した容量のコンデンサー(図示せず)を有する。除細動器100は、このコンデンサーに電荷を蓄えることで、除細動エネルギーを生成し、当該除細動エネルギーを除細動のタイミングで体外パドル/パッド400又は電極カテーテル300に出力する。
【0028】
かかる構成に加えて、接続装置200は、可変抵抗部210を有する。可変抵抗部210は、複数の補正抵抗211、212、213が並列に設けられている。補正抵抗212、213のそれぞれにはリレー214、215が接続されている。リレー214、215は、除細動器100からの制御信号S1によりオンオフ制御される。
【0029】
ここで、除細動器100は、患者の生体インピーダンスを測定する機能を有する。具体的には、除細動器100は、患者に高周波電流を供給し、そのときの検出電圧に基づいて患者の生体インピーダンスを算出する。生体インピーダンスの測定は、電極カテーテル300を介して行ってもよく、体外パドル/パッド400を介して行ってもよい。ただし、電極カテーテル300を用いた心腔内除細動を行う場合には、電極カテーテル300を介して生体インピーダンスを測定する。
【0030】
除細動器100は、測定した患者の生体インピーダンスに基づいて、リレー214、215のオンオフを制御することにより、可変抵抗部210の抵抗を変更する。これにより、回路の時定数を変更して、除細動器100から電極カテーテル300に供給される二相性波形の形状を所望形状に補正することができる。
【0031】
ここで、心腔内除細動を行う場合には、電極カテーテルに一般に二相性波形を供給するようになっている。二相性波形は、単相性波形と比較して、同じエネルギーであればより効果的に除細動を行うことができ、よって患者に与える負担が小さく、現在の主流となっている。
【0032】
心腔内除細動をさらに効果的に行うためには、この二相性波形の形状を最適化する必要がある。このことは、心腔内除細動に限らず、体外式除細動を行う場合も同様である。なお、理想的な二相性波形は、生体インピーダンスに応じて異なる。
【0033】
実際上、除細動器100の内部に設けられたコンデンサーの容量と、患者の生体インピーダンスとが、二相性波形の形状を決定する要素の一部となっている。さらに言うと、コンデンサーの容量や生体インピーダンスに応じて、二相性波形の形状が最適化な形状からずれてしまうおそれがある。
【0034】
ここで、生体インピーダンスに応じてコンデンサーの容量を変えれば二相性波形の形状を最適化することができるが、除細動エネルギーを生成するためのコンデンサーの容量を簡単に変更することは実際上困難である。そこで、本実施の形態では、可変抵抗部210を設け、回路の時定数を変更することにより、電極カテーテル300に供給する二相性波形の形状を最適化するようになっている。
【0035】
実施の形態の例では、補正抵抗211の抵抗値はR1[Ω]、補正抵抗212の抵抗値はR2[Ω]、補正抵抗213の抵抗値はR3[Ω]である。可変抵抗部210を構成する補正抵抗の数、及び、各補正抵抗の抵抗値は適宜変更して実施可能である。
【0036】
要は、可変抵抗部210は、患者の生体インピーダンスが変化した場合に、少なくとも、二相性波形における、ピーク電圧及びパルス幅の値を、所望値から所定範囲内に収めることができる抵抗を有していればよい。
【0037】
<2>可変抵抗部による二相性波形の形状補正
次に、可変抵抗部210による、二相性波形の形状補正について詳しく説明する。
【0038】
図2及び
図3は、除細動器100から電極カテーテル300に供給される除細動波形を示したものである。図中の点線は理想波形を示し、実線は実際に患者に供給される実波形を示す。
【0039】
図2は、理想波形と実波形との間にずれが生じている例を示す波形図である。可変抵抗部210が無い場合(つまり補正抵抗が0[Ω]の場合)には、
図2に示したように、理想波形と実波形との間にずれが生じてしまう。このように実波形が理想波形からずれてしまうと、効率的な除細動を行うことができないおそれがある。
【0040】
図3は、可変抵抗部210により、実波形を理想波形とほぼ同等にした例を示す波形図である。
図3の例では、補正抵抗としてX1[Ω]を選択することにより、実波形の形状を理想波形の形状とほぼ同じにしている。なお、実際には、
図1のリレー214をオン、リレー215をオフすることで、X1[Ω]の補正抵抗を得ている。
【0041】
図2及び
図3の例は、生体インピーダンスが50Ωのときの除細動波形を示したものである。
【0042】
因みに、患者の生体インピーダンスが50Ωであると仮定すると、50Ωの補正抵抗を接続した場合には、患者に30Jの除細動エネルギーを与えるためには、補正抵抗でも30Jのエネルギーが消費されること考慮すると、除細動器100は、60Jのエネルギーを出力する必要がある。
【0043】
実際上求められるのは、患者の生体インピーダンスが変化した場合でも、二相性波形の形状変化を、所定の範囲に収めることである。
【0044】
図4は、電極カテーテル300に与えられる二相性波形のモデル形状を示したものである。
図4において、縦軸は電圧値(V)又は電流値(A)を示し、横軸は経過時間(ms)を示す。また、V1は一相目のピーク電圧、V2(絶対値)は二相目のピーク電圧、A1は一相目のピーク電流、A2(絶対値)は二相目のピーク電流、T1は一相目のパルス幅、T2は二相目のパルス幅、Tdはインターフェースディレイを示す。これらの各値が、生体インピーダンスが変化した場合でも、所定の範囲に収まることが求められる。
【0045】
図5A-
図5Cはそれぞれ、生体インピーダンスが25Ω、50Ω、75Ωで変化した場合における、本実施の形態の二相性波形補正の様子を示す図である。
【0046】
図5Aは生体インピーダンスが25Ωのときの除細動波形の様子を示す図である。生体インピーダンスが25Ωのときにはリレー214及び215の両方がオンされ、可変抵抗部210の補正抵抗X2[Ω]が1/X2=1/R1+1/R2+1/R3を満たす値とされる。X2[Ω]の補正抵抗を介して得られる実波形(図中の実線)は、理想波形(図中の点線)に対して、
図4で説明した各値が所定の範囲に収まっており、理想波形と同等の波形とされる。
【0047】
図5Bは生体インピーダンスが50Ωのときの除細動波形の様子を示す図である。生体インピーダンスが50Ωのときにはリレー214がオン、リレー215がオフされ、可変抵抗部210の補正抵抗X1[Ω]が1/X1=1/R1+1/R2を満たす値とされる。X1[Ω]の補正抵抗を介して得られる実波形(図中の実線)は、理想波形(図中の点線)に対して、
図4で説明した各値が所定の範囲に収まっており、理想波形と同等の波形とされる。
【0048】
図5Cは生体インピーダンスが75Ωのときの除細動波形の様子を示す図である。生体インピーダンスが75Ωのときにはリレー214及び215の両方がオフされ、可変抵抗部210の補正抵抗がX3[Ω]=R1を満たす値とされる。X3[Ω]の補正抵抗を介して得られる実波形(図中の実線)は、理想波形(図中の点線)に対して、
図4で説明した各値が所定の範囲に収まっており、理想波形と同等の波形とされる。
【0049】
図5A-
図5Cに示したように、本実施の形態の構成によれば、生体インピーダンスが変化した場合でも、それに応じて可変抵抗部210の補正抵抗値を変更することで、
図4で説明した各値を所定の範囲に収めることができる。
【0050】
このように、生体インピーダンスの値に応じて、適宜補正抵抗を切り替えることにより、理想波形に近い実波形を得ることができる。
【0051】
<3>除細動器100の動作
ここで、除細動器100の動作について簡単に説明する。
【0052】
先ず、ユーザーによって除細動器100の出力ダイヤルSW113が操作されると、患者に供給される除細動エネルギーが設定される。例えば、出力ダイヤルSW113の位置が30Jとされると、患者に供給される除細動エネルギーとして30Jが設定される。
【0053】
次いで、除細動器100が、患者の生体インピーダンスを測定する。
【0054】
次いで、測定した生体インピーダンスに基づいて可変抵抗部210の補正抵抗を選択する。具体的には、除細動器100が接続装置200にリレー214、215をオンオフするための制御信号S1を出力することで、補正抵抗が選択される。
【0055】
次いで、除細動器100は、選択した補正抵抗に応じてコンデンサー(図示せず)にチャージする電圧を選択し、チャージを行う。具体的には、全抵抗≒補正抵抗+電極カテーテルの抵抗等の内部抵抗+生体インピーダンス、となるので、除細動器100は、これを加味した上で、生体に供給される除細動エネルギーがユーザーによって設定されたエネルギー(この例では30J)となるようにチャージ電圧を設定してチャージを行う。
【0056】
次いで、ユーザーによって通電SW112が押されたタイミングで、電極カテーテル300とコンデンサー間を接続して、チャージした電荷を電極カテーテル300に供給することで除細動を行う。
【0057】
なお、補正抵抗を選択してチャージを行った後であって、通電SW112が押された直後に、もう一度生体インピーダンスを測定して生体インピーダンスが大きく変わっていないかを再確認した後に、チャージした電荷を電極カテーテル300に供給するようにしてもよい。このようにすることで、より安全性を高めることができる。
【0058】
<4>まとめ
以上説明したように、本実施の形態によれば、コンデンサーを有し、当該コンデンサーによって体外式除細動及び心腔内除細動のための除細動エネルギーを生成する除細動器100と、コンデンサーと電極カテーテル300との間に設けられ、患者の生体インピーダンスに応じて抵抗値(補正抵抗)を変更可能な可変抵抗部210と、を設けたことにより、簡単な回路の追加により、例えば体外式除細動に適した容量のコンデンサーを有する除細動器の出力を、心腔内除細動に適した形状の出力に変換することができ、体外式除細動及び心腔内除細動を好適に行うことができる、除細動システム10を実現できる。
【0059】
ここで、一般に、心腔内除細動に適したコンデンサーは、体外式除細動に適したコンデンサーの容量よりも大きい。その結果、放電の傾きが小さくなり、V1電圧が低くてもよくなるので、心腔内除細動の安全性を高めることができる。
【0060】
しかし、上述したように、体外式除細動に適した容量のコンデンサーに加えて、心腔内除細動専用のコンデンサーを設けると回路規模が大きくなってしまう。上述の実施の形態では、これを考慮して、体外式除細動用のコンデンサーを用いた場合に、生体インピーダンスに応じて可変抵抗部210の抵抗を変更する。このようにして回路の時定数を変更する。その結果、出力電圧のピーク値や放電の傾きなどが心腔内除細動に適したものとなり、電極カテーテル300に供給される二相性波形の形状が所望形状に補正される。
【0061】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0062】
可変抵抗部210の構成は、
図1の例に限らない。例えば、2つ又は4つ以上の抵抗が並列に接続されており、それらの接続が生体インピーダンスに基づいて切り換えられてもよい。また、可変抵抗部を1つの可変抵抗により構成し、生体インピーダンスに応じて当該可変抵抗の抵抗値を変化させてもよい。ただし、上述の実施の形態では、除細動エネルギーが大きく、1つの可変抵抗だけでは可変抵抗が損傷するおそれがあることを考慮して、複数の抵抗を並列接続するようにしている。つまり、実施の形態では、複数の抵抗を並列接続することで、抵抗1つ当たりで負担するエネルギーを小さくし、抵抗の損傷を抑制するようになっている。
【0063】
上述の実施の形態では、可変抵抗部210は、複数の抵抗211~213が並列に設けられており、生体インピーダンスに応じて、複数の抵抗211~213のうちコンデンサーと電極カテーテル300との間に並列接続される抵抗を選択する場合について述べたが、本発明はこれに限らない。本発明の可変抵抗部は、複数の抵抗が並列及び又は直列に設けられており、生体インピーダンスに応じて、複数の抵抗のうちコンデンサーと電極カテーテルとの間に並列及び又は直列接続される抵抗を選択してもよい。
【0064】
可変抵抗部は、生体インピーダンスが変化した場合でも、少なくとも、二相性波形における、ピーク電圧及びパルス幅の値が所望値から所定範囲内に収まるような抵抗を有する構成であればよい。
【0065】
上述の実施の形態では、可変抵抗部210を、除細動器100と電極カテーテル300との間に設けて、電極カテーテル300から印加する二相性波形の形状を所望形状に補正する場合について述べたが、これに限らず、可変抵抗部210を、除細動器100と体外パドル/パッド400との間に設けて、体外パドル/パッド400から印加する二相性波形の形状を所望形状に補正するようにしてもよい。この場合、体外パドル/パッド400に供給する除細動エネルギーは、電極カテーテル300に供給する除細動エネルギーと比較して非常に大きいので、可変抵抗部を、定格電力などの高いエネルギーに耐えられる抵抗としたり、抵抗を複数個設けることで1つの抵抗に掛かるエネルギーを小さくするとよい。
【0066】
上述実施の形態では、可変抵抗部210を接続装置200内に設けた場合について述べたが、可変抵抗部210を除細動器100に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示の除細動システムは、例えば体外式除細動に適した容量のコンデンサーを有する除細動器により、体外式除細動及び心腔内除細動の両方を行う場合に有用である。
【符号の説明】
【0068】
10 除細動システム
100 除細動器
200 接続装置
210 可変抵抗部
211~213 補正抵抗
214、215 リレー
300 電極カテーテル
400 体外パドル/パッド