(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117592
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】振動アクチュエータ及び電気機器
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023768
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 勝博
(72)【発明者】
【氏名】木下 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】前田 祥宏
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA05
5D107BB08
5D107CC09
5D107DD03
5D107DD12
(57)【要約】
【課題】共振を利用して直線振動する振動アクチュエータにおいて、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅を広帯域化すること。
【解決手段】振動アクチュエータは、可動マグネットを有する可動体と、前記可動体の外周を夫々囲んで軸方向に並置され、通電されると前記可動体を前記軸方向で振動させるモータを、前記可動マグネットと共に構成する一対のコイルを有する固定体と、前記可動マグネットと、前記固定体に設けられた磁性部材と、を含み、振動する前記可動体を前記振動の中心位置に向けて付勢する磁力を発生させる磁気バネと、を有し、前記磁気バネは、前記中心位置からの前記可動体の変位が大きいときに生じる前記磁力が、前記中心位置からの前記可動体の変位が小さいときに生じる前記磁力よりも小さくなるように、構成されている。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動マグネットを有する可動体と、
前記可動体の外周を夫々囲んで軸方向に並置され、通電されると前記可動体を前記軸方向で振動させるモータを、前記可動マグネットと共に構成する一対のコイルを有する固定体と、
前記可動マグネットと、前記固定体に設けられた磁性部材と、を含み、振動する前記可動体を前記振動の中心位置に向けて付勢する磁力を発生させる磁気バネと、を有し、
前記磁気バネは、前記中心位置からの前記可動体の変位が大きいときに生じる前記磁力が、前記中心位置からの前記可動体の変位が小さいときに生じる前記磁力よりも小さくなるように、構成されている、
振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記磁性部材は、前記一対のコイルに対して径方向の外側に配置された固定ヨークを含み、前記固定ヨークは、前記中心位置からの前記可動体の変位が大きいときに生じる前記磁力が、前記中心位置からの前記可動体の変位が小さいときに生じる前記磁力よりも小さくなるように、予め設定された形状及び寸法を有する、
請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記固定ヨークは、前記中心位置に対応する中間部から前記軸方向の両方向に延在し、
前記軸方向において、前記固定ヨークの長さは前記可動体の可動域の長さよりも短い、
請求項2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記固定ヨークは、前記中心位置に対応する中間部から前記軸方向の両方向に延在し、
前記軸方向において、前記固定ヨークの長さは前記可動体の長さに等しい、
請求項3に記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記固定ヨークは、前記中心位置に対応する中間部から前記軸方向の両方向に延在し、前記軸方向の両端部の内径は、前記中間部の内径よりも大きい、
請求項2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記固定ヨークは、内径が変化する内側段差部を前記中間部と前記両端部の夫々との間に有する、
請求項5に記載の振動アクチュエータ。
【請求項7】
前記固定ヨークの外側面は、前記軸方向で全長にわたり平坦である、
請求項6に記載の振動アクチュエータ。
【請求項8】
前記固定ヨークは、外径が変化する外側段差部を前記中間部と前記両端部の夫々との間に有する、
請求項5に記載の振動アクチュエータ。
【請求項9】
前記固定ヨークは、前記中間部から前記両端部までの部分において内径が徐々に拡大する傾斜部を有する、
請求項5に記載の振動アクチュエータ。
【請求項10】
前記磁性部材は、前記軸方向で両側から前記可動体に夫々対向して配置され、いずれも前記可動マグネットに対する吸引力を発生させる一対の固定マグネットを含む、
請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項11】
前記一対の固定マグネットは、前記可動マグネットの外周に対向するよう環状に延在している、
請求項10に記載の振動アクチュエータ。
【請求項12】
前記一対の固定マグネットは、径方向の中央位置で前記軸方向の両側から前記可動マグネットに接近するよう棒状に延在している、
請求項10に記載の振動アクチュエータ。
【請求項13】
前記可動マグネットは、第1の可動マグネットと、前記第1の可動マグネットに対して前記軸方向の両側で径方向の中央位置に配置され、前記第1の可動マグネットよりも小径である一対の第2の可動マグネットと、を含み、
前記一対の固定マグネットは夫々、前記径方向の中央位置で前記軸方向の両側から、対応する第2の可動マグネットに対向して配置されている、
請求項10に記載の振動アクチュエータ。
【請求項14】
前記磁性部材は、前記軸方向で両側から前記可動体に夫々対向して配置され、いずれも前記可動マグネットに対する吸引力を発生させる一対の固定磁性体を含む、
請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項15】
前記一対の固定磁性体は、前記可動マグネットの外周に対向するよう環状に延在している、
請求項14に記載の振動アクチュエータ。
【請求項16】
前記一対の固定磁性体は、径方向の中央位置で前記軸方向の両側から前記可動マグネットに接近するよう棒状に延在している、
請求項14に記載の振動アクチュエータ。
【請求項17】
前記可動体は、径方向の中央位置で前記可動マグネットから前記軸方向の両方向に棒状に延在して配置された一対の可動磁性体をさらに含み、
前記一対の固定磁性体は夫々、前記径方向の中央位置で前記軸方向の両側から、対応する可動磁性体に対向して配置されている、
請求項14に記載の振動アクチュエータ。
【請求項18】
手持ち型又はウェアラブル型の電気機器であって、
請求項1に記載の振動アクチュエータを実装した電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ及びこれを備える電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
振動機能を有する電気機器には一般に、振動発生源としてのアクチュエータ(振動アクチュエータ)が実装されている。電気機器は、振動アクチュエータを駆動してユーザに振動を伝達して体感させることにより、刺激を付与したり、着信を通知したり、操作感や臨場感を向上したりすることができる。なお、電気機器は、携帯型ゲーム端末、据置型ゲーム機のコントローラー(ゲームパッド等)、携帯電話やスマートフォン等の携帯通信端末、タブレットPC(Personal Computer)等の携帯情報端末等を含むほか、ユーザにマッサージ等を施す各種のヘルスケア機器や美容機器を含む。
【0003】
従来の振動アクチュエータの一例は、筒状ケースの内側に配置されたコイルと、永久磁石を有する可動子と、コイルの内側で可動子を軸方向に振動可能に支持する弾性支持部材と、を有する(例えば特許文献1参照)。このような振動アクチュエータでは、コイルに所定の周波数の電流を通電すると、コイルと永久磁石とで構成されるボイスコイルモータの駆動力により可動子が往復運動つまり振動して、振動が振動アクチュエータから外部に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した振動アクチュエータにおいて、可動子と弾性支持部材とは、バネ-マス系の振動モデルを構成する関係にある。すなわち、コイルにバネ-マス系の共振周波数に等しい周波数の交流波が入力されると、可動子は共振状態となり、振動アクチュエータからは、高出力の振動が得られる。換言すれば、共振を利用すると、振動アクチュエータの駆動効率が向上する。したがって、共振を利用する振動アクチュエータを駆動する駆動制御部において、駆動周波数は、共振周波数に対して同等或いは近傍の値に予め設定される。
【0006】
ところが、通常のバネ-マス系の振動モデルでは、その共振周波数近辺の交流周波数が入力される場合のみG値(衝撃値、振動強度とも呼ばれる)が高くなり、入力周波数が共振周波数に等しい値或いはその近傍の値から外れると、G値が極端に低くなる。すなわち、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅が狭い。
【0007】
ここで、可動子の駆動源であるボイスコイルモータを構成するコイル及び永久磁石は、環境温度によって特性が変化する性質を有するため、共振周波数に影響を与える。また、特に機械バネを持たない磁気バネのみの構造の場合、さらに共振周波数への影響が顕著に生じる。したがって、振動アクチュエータの環境温度に応じて、共振周波数が変化する場合がある。さらに、振動アクチュエータには、部品の製造公差や組付公差による個体差があり、その個体差に応じて共振周波数が変化する場合もある。共振周波数が変化して駆動周波数と共振周波数との間に不一致が発生或いは増大すれば、上述した通りG値が極端に低くなる。
【0008】
そのため、共振周波数の変化により駆動周波数と共振周波数との間の不一致が発生或いは増大したとしても、所望の振動強度の出力を容易に維持可能な振動アクチュエータが求められている。より具体的には、所望の振動強度の出力可能な周波数帯域幅を広帯域化したいという要望がある。
【0009】
なお、周波数帯域幅の広帯域化を図る代わりに、共振周波数を探知し、探知した共振周波数に合わせて駆動周波数を可変設定するための専用回路を、振動アクチュエータ或いはその駆動制御部に付加することが、駆動効率を上げる方法として考えられる。しかしながら、そのような専用回路を設けると、振動アクチュエータ或いはこれを備える電気機器において構成或いは制御が複雑化することで、小型化の阻害、製造コストの増大或いは消費電力の増大につながる虞がある。
【0010】
本発明の目的は、共振を利用して直線振動する振動アクチュエータにおいて、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅を広帯域化することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る振動アクチュエータの一態様は、
可動マグネットを有する可動体と、
前記可動体の外周を夫々囲んで軸方向に並置され、通電されると前記可動体を前記軸方向で振動させるモータを、前記可動マグネットと共に構成する一対のコイルを有する固定体と、
前記可動マグネットと、前記固定体に設けられた磁性部材と、を含み、振動する前記可動体を前記振動の中心位置に向けて付勢する磁力を発生させる磁気バネと、を有し、
前記磁気バネは、前記中心位置からの前記可動体の変位が大きいときに生じる前記磁力が、前記中心位置からの前記可動体の変位が小さいときに生じる前記磁力よりも小さくなるように、構成されている。
【0012】
本発明に係る電気機器の一態様は、
上記の振動アクチュエータを実装した手持ち型又はウェアラブル型の電気機器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、共振を利用して直線振動する振動アクチュエータにおいて、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅を広帯域化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1に係る振動アクチュエータの外観斜視図
【
図2A】実施の形態1に係る振動アクチュエータの側断面図
【
図2B】実施の形態1に係る振動アクチュエータの斜視断面図
【
図3A】実施の形態1に係る振動アクチュエータの、板バネを装着した可動体の斜視図
【
図4A】実施の形態1に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図
【
図4B】実施の形態1に係る振動アクチュエータにおける固定ヨークの斜視断面図
【
図4C】実施の形態1に係る振動アクチュエータにおける、固定ヨークと可動体の可動体本体との寸法上の関係を示す側断面図
【
図4D】実施の形態1に係る振動アクチュエータにおける、固定ヨークと可動体の可動域との寸法上の関係を示す側断面図
【
図5A】実施の形態1に係る振動アクチュエータの振動動作の説明に供する図であって、可動体に上方移動の推力が作用する状況を示す図
【
図5B】実施の形態1に係る振動アクチュエータの振動動作の説明に供する図であって、可動体に下方移動の推力が作用する状況を示す図
【
図6A】実施の形態1に係る振動アクチュエータにおける振幅増大とバネ定数低下との関係の説明に供する図であって、可動体が振動中心位置にある状態を示す図
【
図6B】実施の形態1に係る振動アクチュエータにおける振幅増大とバネ定数低下との関係の説明に供する図であって、可動体が
図6Aに示す位置から上方に変位した状態を示す図
【
図6C】実施の形態1に係る振動アクチュエータにおける振幅増大とバネ定数低下との関係の説明に供する図であって、可動体が
図6Bに示す位置からさらに上方に変位した状態を示す図
【
図7】実施の形態1に係る振動アクチュエータの広帯域化された周波数帯域幅を示す図
【
図8】実施の形態1に係る振動アクチュエータを実装した電気機器の一例を示す図
【
図9】実施の形態1に係る振動アクチュエータを実装した電気機器の他の例を示す図
【
図10A】実施の形態2に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図
【
図10B】実施の形態2に係る振動アクチュエータにおける固定ヨークの斜視断面図
【
図10C】実施の形態2に係る振動アクチュエータにおける、固定ヨークと可動体の可動体本体との寸法上の関係を示す側断面図
【
図10D】実施の形態2に係る振動アクチュエータにおける、固定ヨークと可動体の可動域との寸法上の関係を示す側断面図
【
図11A】実施の形態3に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図
【
図11B】実施の形態3に係る振動アクチュエータにおける固定ヨークの斜視断面図
【
図12A】実施の形態4に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図
【
図12B】実施の形態4に係る振動アクチュエータにおける固定ヨークの斜視断面図
【
図13A】実施の形態5に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図
【
図13B】実施の形態5に係る振動アクチュエータにおける固定ヨークの斜視断面図
【
図14A】実施の形態6に係る振動アクチュエータの側断面図
【
図14B】実施の形態6に係る振動アクチュエータの斜視断面図
【
図15A】実施の形態6に係る振動アクチュエータの、板バネを装着した可動体の斜視図
【
図16】実施の形態6に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図
【
図17A】実施の形態6に係る振動アクチュエータにおける振幅増大とバネ定数低下との関係の説明に供する図であって、可動体が振動中心位置にある状態を示す図
【
図17B】実施の形態6に係る振動アクチュエータにおける振幅増大とバネ定数低下との関係の説明に供する図であって、可動体が
図17Aに示す位置から上方に変位した状態を示す図
【
図17C】実施の形態6に係る振動アクチュエータにおける振幅増大とバネ定数低下との関係の説明に供する図であって、可動体が
図17Bに示す位置からさらに上方に変位した状態を示す図
【
図18A】実施の形態7に係る振動アクチュエータの側断面図
【
図18B】実施の形態7に係る振動アクチュエータの斜視断面図
【
図19A】実施の形態7に係る振動アクチュエータの、板バネを装着した可動体の斜視図
【
図20】実施の形態7に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図
【
図21A】実施の形態8に係る振動アクチュエータの側断面図
【
図21B】実施の形態8に係る振動アクチュエータの斜視断面図
【
図22A】実施の形態8に係る振動アクチュエータの、板バネを装着した可動体の斜視図
【
図23】実施の形態8に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図
【
図24A】実施の形態9に係る振動アクチュエータの側断面図
【
図24B】実施の形態9に係る振動アクチュエータの斜視断面図
【
図25】実施の形態9に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図
【
図26A】実施の形態10に係る振動アクチュエータの側断面図
【
図26B】実施の形態10に係る振動アクチュエータの斜視断面図
【
図27】実施の形態10に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図
【
図28A】実施の形態11に係る振動アクチュエータの側断面図
【
図28B】実施の形態11に係る振動アクチュエータの斜視断面図
【
図29A】実施の形態11に係る振動アクチュエータの、板バネを装着した可動体の斜視図
【
図30】実施の形態11に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態1)
[振動アクチュエータの構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る振動アクチュエータを正面側から見た外観斜視図であり、
図2Aは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの側断面図であり、
図2Bは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの斜視断面図であり、
図3Aは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの、板バネを装着した可動体の斜視図であり、
図3Bは、
図3Aに示す可動体の斜視断面図であり、
図4Aは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図であり、
図4Bは、本実施の形態に係る振動アクチュエータにおける固定ヨークの断面斜視図である。
【0017】
以下の説明において、「上側」及び「下側」等における「上」及び「下」は、本実施の形態に係る振動アクチュエータ1の構成及び挙動を理解しやすくするために便宜上付与したものである。振動アクチュエータ1が電気機器(
図8、9参照)に搭載される場合には、ここに記載する「上」及び「下」が、逆になってもよいし、左右になってもよいし、斜めになってもよい。ちなみに、本実施の形態において、上下方向は、振動アクチュエータ1における可動体の振動方向であり、「上方向」は振動方向の一方であり、「下方向」は振動方向の他方向である。すなわち、振動アクチュエータ1は、可動体30を上下方向に直線状に振動させるリニアアクチュエータである。
【0018】
また、以下の説明において、特に断らない限り、「径方向」とは、振動アクチュエータ1において上下方向に延びる中心軸CAを中心として放射状又は遠心状に延びる方向を意味し、「外側」及び「内側」等における「外」及び「内」は、中心軸CAを中心とする径方向における外方及び内方を意味する。また、特に断らない限り、「周方向」とは、中心軸CAの周りを囲んで延びる方向を意味する。
【0019】
また、以下の説明で用いる形状に関する表現は、簡略的な概形説明のための便宜的な表現であって、幾何学的に正確な図形の定義が必ずしも当てはまるものでないことは、言うまでもない。ここに記載する装置全体或いは各構成部品の形状は一例であり、本発明は、本実施の形態で例示した形状に限定されない。
【0020】
振動アクチュエータ1は、電気機器として携帯型ゲーム端末機器(例えば、
図8に示すゲームコントローラGC)等の電子機器に振動発生源として実装され、電子機器の振動機能を実現する。この電子機器としては、スマートフォン等の携帯機器(例えば、
図9に示す携帯端末M)も含む。また、振動アクチュエータ1を実装可能な電気機器には、ユーザにマッサージ等を施すヘルスケア機器及び美容機器等も含まれる。振動アクチュエータ1は、各種電気機器に実装され、内部の可動体30の振動により振動アクチュエータ1自体が振動して、ユーザに対して着信を通知したり、操作感や臨場感を与えたり、物理的な刺激を与えたりする。
【0021】
<固定体>
振動アクチュエータ1は、ケース10を有する。ケース10は、上側蓋部11、上側周壁部12、下側周壁部13及び下側蓋部14を有する。上側蓋部11及び下側蓋部14は概して円盤状の形状を有し、上側周壁部12及び下側周壁部13は概して円筒状の形状を有する。本実施の形態では、ケース10を構成する上側蓋部11、上側周壁部12、下側周壁部13及び下側蓋部14はいずれも、非磁性及び非導電性の樹脂材料で形成されている。なお、上側蓋部11、上側周壁部12、下側周壁部13及び下側蓋部14は、非磁性及び非導電性に限定されるものではなく、磁性及び導電性を有する材料であってもよく、例えば真鍮(黄銅)で構成されてもよい。ケース10は、内部での可動体30の振動を吸収せずにケース10を介して振動アクチュエータ1の搭載機器へ確実に伝達可能な剛性を有する。
【0022】
上側蓋部11、上側周壁部12、下側周壁部13、下側蓋部14は夫々、外周から放射状に突出して設けられた連結部15を有する。上側蓋部11、上側周壁部12、下側周壁部13、下側蓋部14は、同心状に重ねて連結部15の周方向位置を揃えた状態で、例えば止着孔151への締結部材等の止着により互いに連結されて、一体のケース10となる。ケース10を含んで構成される固定体20の内部には、可動体30等の収容空間が形成される。連結部15を放射状に突出させ、ケース10の外周において連結部15以外の部分を小径化することで、収容空間の確保とケース10の小型化との両立が図られる。なお、本実施の形態ではケース10の構成部品点数が4個(上側蓋部11、上側周壁部12、下側周壁部13、下側蓋部14)であるが、ケース10の構成は種々変形して実施可能であり、部品点数についても4個に限定されない。
【0023】
ケース10は、振動アクチュエータ1において、固定体20を構成する。固定体20は、上述したケース10に加えて、駆動コイル組立体21を有する。固定体20の内部には、可動体30及び板バネ部40が収容されている。
【0024】
<駆動コイル組立体>
駆動コイル組立体21は、上側駆動コイル211と、下側駆動コイル212と、ボビン213と、固定ヨーク214と、を有する。
【0025】
上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212は、中心軸CAを中心に同心状に、且つ、中心軸CAの方向(「軸方向」に相当。本実施の形態では、上下方向と同一方向である。)に沿って並置された状態で、ボビン213に保持されている。ボビン213は、非磁性及び非導電性の樹脂材料で形成されている。ボビン213の内周面は、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の内周面を覆い、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212が可動体30と直接的に接触或いは衝突することから保護する保護壁として機能する。
【0026】
好ましくは、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212は、互いに同径で、上下方向の長さも互いに同一であり、可動体30の上下の最大振幅により定められる可動域の中間位置(上下方向における振動中心位置VC(
図6A等参照)でもある。)に対して上下方向で対称の位置に配置される。上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212を構成する巻線の巻回方向は、互いに逆方向である。
【0027】
ボビン213の外周面には、上下方向の中間部(ボビン213において振動中心位置VCに対応する位置)及び両端部の夫々から外側に延びる中間フランジ2131、端部フランジ2132、2133により区画された上下2つの溝2134、2135が設けられており、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212は夫々、上側の溝2134及び下側の溝2135に配置される。
【0028】
なお、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212を構成する巻線は、一本のワイヤで構成してよい。この構成の場合、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212が互いに繋がる部分に相当するワイヤ中間部は、中間フランジ2131を跨いで配置される。そして、上側駆動コイル211及び下側駆動212の夫々において互いに繋がる部分とは反対側の部分に相当するワイヤ両端部は、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212への通電を可能とするため、外部の駆動回路(例えば
図8、9の駆動制御部5203)に電気的に接続される。上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の夫々のワイヤ両端部は、例えば固定ヨーク214の上下両端部の上側或いは下側を迂回して、ケース10に設けられた開口部(図示せず)を介して外部へ引き出される。固定体20に外部への接続端子を設け、当該接続端子にワイヤ両端部を絡げる構成としてもよい。
【0029】
固定ヨーク214は、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の外周を囲むように配置されている。固定ヨーク214は、無着磁の磁性材料からなり、全体として筒状の形状を有する部材である。固定ヨーク214は、ボビン213の端部フランジ2132、2133の間に配置されている。また、固定ヨーク214は、可動体30の可動域の中心位置(振動中心位置VC)に対応する中間部Pから上下両方向に延在するように配置されている。好ましくは、固定ヨーク214において、中間部Pから上方に延在する上半部と中間部Pから下方に延在する下半部とは、同一の長さを有する。また、好ましくは、固定ヨーク214の内周面及び外周面は、凹凸や傾斜がない平坦な面であり、固定ヨーク214の内径は、上下方向の全長にわたり同一である。
【0030】
駆動コイル組立体21は、上側周壁部12及び下側周壁部13により構成される周壁部の内周面に保持されている。本実施の形態では、駆動コイル組立体21は、上側周壁部12及び下側周壁部13により上下両側から挟まれて、上下方向において位置決めされている。これにより、上側駆動コイル211、下側駆動コイル212及び固定ヨーク214を上下方向において位置決めすることができる。
【0031】
固定ヨーク214は、可動マグネット31から発生する磁束の通り道(磁路)を規制して、可動マグネット31の磁場と上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の電場との間の電磁相互作用を促進するバックヨークとしての機能を有する。また、固定ヨーク214は、可動マグネット31と共に、磁気バネとして機能することもできる。すなわち、固定ヨーク214は、振動する可動体30を振動中心位置VCに向けて付勢する磁力を発生させる磁気バネを可動マグネット31と共に構成するよう固定体20に設けられた磁性部材の一例である。磁気バネは、本実施の形態において支持部材として機能する板バネ部40(上側板バネ41及び下側板バネ42)と共に、バネ-マス系におけるバネ部を構成する。
【0032】
本実施の形態では、
図4C、4Dに示される通り、固定ヨーク214の上下方向の長さLb1は、可動体30の可動域の上下方向の長さLm1よりも短く、且つ、可動体30の可動体本体の上下方向の長さ(厚み)La1よりも長い。
【0033】
本実施の形態では、固定ヨーク214の長さLb1が可動体30の可動域の長さLm1よりも短いことにより、磁気バネの特性、具体的にはバネ定数が可変になる。これにより、磁気バネにおいて、振動中心位置VCからの可動体30の変位が大きいときに生じる磁力が、振動中心位置VCからの可動体30の変位が小さいときに生じる磁力よりも小さくなる。この作用の詳細については後述する。ちなみに、
図4Dの左側は、可動体30が可動域の上限位置にある状態を示し、
図4Dの右側は、可動体30が可動域の下限位置にある状態を示す。
【0034】
<可動体>
可動体30は、共振を利用する振動アクチュエータ1において、バネ-マス系におけるマス部を構成する。
【0035】
可動体30は、固定体20の内部に収容されており、固定体20の内部で上下方向に沿って直線状に振動可能である。可動体30は、支持部材により支持されている。本実施の形態では、支持部材は板バネ部40により構成されている。板バネ部40は、上側板バネ41及び下側板バネ42を有する。可動体30は、上側板バネ41及び下側板バネ42により上下方向に沿って直線状に振動可能に支持されている。
【0036】
可動体30は、可動マグネット31と、主可動ヨーク32、33と、副可動ヨーク34、35と、接続部36、37と、を有する。可動マグネット31の上面には、主可動ヨーク32及び副可動ヨーク34が順に積層され、可動マグネット31の下面には、主可動ヨーク33及び副可動ヨーク35が順に積層されている。接続部36、37は、径方向の中央位置で可動体30の上下両方向に突出する中央凸部を構成し、夫々の先端部で上側板バネ41の内周部412及び下側板バネ42の内周部422に接続されている。
【0037】
可動体30を振動させる推力を上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212との電磁相互作用により発生させるため、可動体30には可動マグネット31が必須である。振動アクチュエータ1の実用性向上のため、可動体30が主可動ヨーク32、33及び接続部36、37を有することが好ましく、可動体30が副可動ヨーク34、35をさらに有することが一層好ましいが、可動体30において、主可動ヨーク32、33、副可動ヨーク34、35及び接続部36、37は必ずしも必須ではない。以下説明する可動体本体の構成は、一例である。
【0038】
<可動体本体>
可動マグネット31、主可動ヨーク32、33及び副可動ヨーク34、35は、上述した通りに上下方向に積層されて一体の可動体本体を構成する。可動体本体の外径は固定体20の筒状部分の最小内径(具体的にはボビン213の内周面の径)よりも僅かに小径である。これにより、可動体30と固定体20との間にクリアランスを確保して、可動体30を固定体20の筒状部分に接触させずに振動させることができる。
【0039】
本実施の形態では、可動体本体の外径は、可動体本体の上下方向の全長にわたり一定である。但し、上下方向における可動マグネット31の中間位置で広がる面を境界として、可動体30の上半部と下半部とが面対称となる形状であれば、可動体本体の外径は一定でなくてもよい。
【0040】
可動マグネット31は、上下方向に着磁された永久磁石である。例えば、可動マグネット31の上面及び下面が夫々N極及びS極に着磁されている(
図5A等参照)。可動マグネット31は、可動体30を振動させる推力を発生させるモータ(より具体的にはボイスコイルモータ)を上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212と共に構成する。なお、モータの駆動による可動体30の振動動作については、後述する。また、可動マグネット31は、固定ヨーク214と共に、バネ-マス系におけるバネ部のうちの磁気バネを構成する。
【0041】
可動マグネット31は、本実施の形態では、可動マグネット31は、円板形状であり、上側の板面(上面)及び下側の板面(下面)が上下方向に直交する方向に広がるように配置されている。
【0042】
主可動ヨーク32、33は、無着磁の磁性体で構成されている。主可動ヨーク32、33は、可動マグネット31の磁束を集中させ、漏らすことなく効率良く流して、可動マグネット31と上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212との電磁相互作用を促進させる。主可動ヨーク32、33は、例えば、可動マグネット31の上面及び下面に接着することにより可動マグネット31に積層して配置することができる。
【0043】
本実施の形態では、主可動ヨーク32、33は、径方向の中央位置に貫通開口部を有する円環状の板状部材であるが、変形例として、貫通開口部のない円板状の部材であってもよい。本実施の形態では、主可動ヨーク32、33の貫通開口部には、接続部36、37が挿入されている。
【0044】
副可動ヨーク34、35は、無着磁の磁性体で構成されている。また、副可動ヨーク34、35は、本実施の形態では、主可動ヨーク32、33の貫通開口部の開口径よりも大径である貫通開口部を有する円環状の板状部材である。副可動ヨーク34、35は、主可動ヨーク32、33に集中させた可動マグネット31の磁束を上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212に向けて適度に分散させることで、可動マグネット31と上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212との電磁相互作用を促進させる。副可動ヨーク34、35は、例えば、主可動ヨーク32の上面及び主可動ヨーク33の下面に接着することにより主可動ヨーク32、33に積層して配置することができる。副可動ヨーク34、35の厚み(上下方向長さ)や幅(副可動ヨーク34、35の外周部と内周部との間の径方向幅)を適宜調整することで、可動体30の質量を適宜調整することもできる。
【0045】
接続部36、37は、可動体本体と上側板バネ41及び下側板バネ42とを接続する。接続部36、37は夫々、挿入ピン361、371と外側筒部362、372とを有する。挿入ピン361、371及び外側筒部362、372は、非磁性及び非導電性の樹脂材料で構成されている。なお、挿入ピン361、371及び外側筒部362、372は、非磁性及び非導電性に限定されるものではなく、磁性及び導電性を有する材料であってもよく、例えば真鍮(黄銅)で構成されてもよい。
【0046】
外側筒部362、372は夫々、例えば第1の端部を主可動ヨーク32、33の貫通開口部に挿入することにより、可動体本体に装着されている。外側筒部362、372の第2の端部には、上側板バネ41及び下側板バネ42の内周部412、422が当接している。挿入ピン361、371は、外側筒部362、372よりも小径であり、外側筒部362、372に上側及び下側から夫々挿入されて、外側筒部362、372に固定されている。
【0047】
挿入ピン361の上端部及び挿入ピン371の下端部にはフランジが設けられており、挿入ピン361の上端フランジと外側筒部362の第2の端部とで上側板バネ41の内周部412を挟持している。同様に、挿入ピン371の下端フランジと外側筒部372の第2の端部とで下側板バネ42の内周部422を挟持している。
【0048】
<板バネ部>
板バネ部40は、可動体30を支持する支持部材の一例である。板バネ部40は、上側板バネ41と下側板バネ42とを有する。上側板バネ41及び下側板バネ42は夫々、アーム部411、421と、内周部412、422と、外周部413、423と、を有する。
【0049】
内周部412、422は、小径の環状部であり、可動体30に接続されている。内周部412、422と可動体30の接続部36、37との接続構成については上述した通りである。
【0050】
外周部413、423は、大径の環状部であり、固定体20に接続されている。本実施の形態では、外周部413は上側蓋部11と上側周壁部12とで上下方向に挟持され、外周部423は下側蓋部14と下側周壁部13とで上下方向に挟持されている。
【0051】
アーム部411、421は、内周部412、422と外周部413、423とを接続する。アーム部411、421は、可動体30の振動に伴って撓むことが可能な可撓部である。本実施の形態では、アーム部411、421は、内周部412、422と外周部413、423との間で渦巻き状に延在しているため、可動ストロークの確保が容易である。
【0052】
[振動アクチュエータの動作]
以下、振動アクチュエータ1の動作について説明する。
【0053】
図5Aに示す状況では、上側駆動コイル211には、上から平面視すると反時計回りの方向の電流が入力され、下側駆動コイル212には、上から平面視すると時計回りの方向の電流が入力されている。
【0054】
この場合、フレミングの左手の法則に従い、上側駆動コイル211には下向きの推力-f(ここで、-(マイナス)の符号は力が下向きであることを示す)が作用する。同様に、フレミングの左手の法則に従い、下側駆動コイル212にも下向きのローレンツ力-fが作用する。上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212は固定体20の一部であり移動不能であることから、作用反作用の法則に従って可動体30に作用する上向きの推力+F(ここで、+(プラス)の符号は力が上向きであることを示す)により、可動体30が上方移動する。
【0055】
図5Bに示す状況では、上側駆動コイル211には、上から平面視すると時計回りの方向の電流が入力され、下側駆動コイル212には、上から平面視すると反時計回りの方向の電流が入力されている。
【0056】
この場合、フレミングの左手の法則に従い、上側駆動コイル211には上向きの推力+fが作用する。同様に、フレミングの左手の法則に従い、下側駆動コイル212にも上向きのローレンツ力+fが作用する。上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212は固定体20の一部であり移動不能であることから、作用反作用の法則に従って可動体30に作用する下向きの推力-Fにより、可動体30が下方移動する。
【0057】
上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212に交流の駆動電流が入力されると、駆動電流の周波数(駆動周波数)に応じて、
図5Aに示す状況と
図5Bに示す状況とが交互に繰り返される。つまり、可動体30は上方移動と下方移動とを交互に繰り返す。これにより、可動体30は振動する。本実施の形態では、推力の作用する方向が上下方向であるため、可動体30は上下方向に直線状に振動する。
【0058】
本実施の形態では、可動体30は上側板バネ41及び下側板バネ42により弾性支持されている。よって、可動体30が振動中心位置VCから上方又は下方に移動すると、撓んだ上側板バネ41及び下側板バネ42が元の形状に戻ろうとする復元力を発生し、この力を可動体30に伝達する。この力により可動体30は逆方向に付勢される。すなわち、可動体30は、上方移動していた場合は下方に、下方移動していた場合は上方に、振動中心位置VCに復帰するよう移動する。さらに、本実施の形態では、可動体30の可動マグネット31と固定体20の固定ヨーク214とに磁気吸引力が働く。可動体30は、振動すると上記の復元力だけでなくこの磁気吸引力にも付勢されて、振動中心位置VCに復帰するよう移動する。
【0059】
特に、本実施の形態では、上述した通り、全体として筒状形状であり且つ内側外側の周面が平坦形状である固定ヨーク214の長さLb1が、可動体30の可動域の長さLm1よりも短くされている。これにより、磁気バネのバネ定数に変化が発生する。この点について、
図6A、
図6B及び
図6Cを参照して説明する。なお、
図6A、
図6B及び
図6Cでは、
図5Aに示すように可動体30を上方に駆動するタイミングで発生する作用を例に挙げて説明する。可動体30を下方に駆動するタイミングで発生する作用については、以下説明する内容において力の作用する方向を上下反転するだけで疑義なく理解できるため、ここではその説明を省略する。
【0060】
図6Aに示す状況では、可動体30は振動中心位置VCに位置している。
図6Aに示す可動体30は、これから上方移動が開始する未振動状態の可動体30であってもよいし、振動中心位置VCを通過している振動状態の可動体30であってもよい。
【0061】
可動体30と固定ヨーク214との間には常に磁気吸引力が作用するところ、可動体30が振動中心位置VCにある場合、磁気吸引力の向きには、上方向への偏りも下方向への偏りもない。すなわち、振動中心位置VCにある可動体30には、磁気バネによる付勢力は上方向にも下方向にも作用しない。
【0062】
図6Bに示す状況では、可動体30は上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212への通電(
図5A参照)による駆動により、振動中心位置VCに対して僅かに上方へ変位している。
【0063】
このとき、可動体30と固定ヨーク214との間に作用する磁気吸引力が、上向きに偏る。固定ヨーク214は、この磁気吸引力により上向きに吸引されるが、固定ヨーク214は固定体20の一部であり移動不能であることから、作用反作用の法則に従って可動体30に下向きの付勢力が作用する。
【0064】
図6Cに示す状況では、可動体30は、駆動により、
図6Bに示す位置よりもさらに上方へ変位している。
【0065】
このとき、可動体30と固定ヨーク214との間に作用する磁気吸引力は、
図6Bに示す状況と同様、上向きに偏っているが、可動体30の外周面と固定ヨーク214の内周面との対向面積が縮小することにより、相互間を結ぶ磁束の量が減少して(漏れ磁束が増加)、相互間に作用する磁気吸引力が低減するため、可動体30に作用する下向きの付勢力が低減する。
【0066】
すなわち、
図6A、
図6B及び
図6Cに例示された一連の動作では、磁気バネのバネ定数が、振動する可動体30が振動中心位置VCから離れるにつれて低くなる。
【0067】
磁気バネのバネ定数が低くなると、合成バネ定数も低くなる。合成バネ定数は次の式(1)で定められる。
【0068】
【0069】
上記の式(1)に示されるように、本実施の形態では、磁気バネのバネ定数は振幅に依存し、これに伴い、バネ-マス系におけるバネ部の合成バネ定数も振幅に依存する。
【0070】
そして、次の式(2)により、合成バネ定数が振幅の増大に伴って低くなると、可動体30の共振周波数も振幅の増大に伴って低くなる。
【0071】
【0072】
ここで、振動アクチュエータ1の駆動原理を示す運動方程式及び回路方程式を以下に示す。振動アクチュエータ1は、下式(3)で示す運動方程式及び下式(4)で示す回路方程式に基づいて駆動する。
【0073】
【0074】
【0075】
すなわち、振動アクチュエータ1における質量m[kg]、変位x(t)[m]、推力定数Kf[N/A]、電流i(t)[A]、合成バネ定数Ksp(x)[N/m]、減衰係数D[N/(m/s)]等は、式(3)を満たす範囲内で適宜変更できる。また、電圧e(t)[V]、抵抗R[Ω]、インダクタンスL[H]、逆起電力定数Ke[V/(rad/s)]は、式(4)を満たす範囲内で適宜変更できる。
【0076】
上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212に可動体30の共振周波数に等しい周波数の交流波が入力されると、可動体30は共振状態となる。すなわち、電源供給部から上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212に対して、可動体30の共振周波数と略等しい周波数の交流波を入力することで、可動体30を効率良く振動させることができる。
【0077】
振動アクチュエータ1は、式(3)、(4)を満たし、式(2)で示す共振周波数を用いた共振現象で駆動すると、可動体30を低消費電力で直線振動させることができる。また、減衰係数を大きくすれば、高帯域にわたり振動を発生させることができる。
【0078】
また、上述した通り、本実施の形態では、固定ヨーク214の長さLb1の設定により、磁気バネにより発生する磁気吸引力が、振動する可動体30の振幅が大きくなるほど(換言すれば、振動する可動体30が振動中心位置VCから上側及び下側へ離れるにつれて)、相互間の磁束が減少するため、低減する。これは、上述した磁気バネのバネ定数が、振動する可動体30が振動中心位置VCから上側及び下側へ離れるにつれて低くなることを意味する。磁気バネのバネ定数が低くなると、バネ部の合成バネ定数も低くなる。バネ-マス系におけるバネ部のバネ定数(前述した合成バネ定数)が低くなると、式(2)に示される通り、バネ-マス系におけるマス部の共振周波数が低くなる。
【0079】
上述した「振動する可動体30の振幅が大きくなる」という現象は、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212へ入力される交流電流の周波数(駆動周波数)が低くなると発生する。なぜなら、駆動周波数が低いと、電流波形の波長が長くなり、これにより、振動する可動体30が上方移動/下方移動する時間長が長くなり、その結果として可動体30の上方移動/下方移動の距離が長くなるからである。
【0080】
逆に、振動する可動体30の振幅が小さくなるという現象は、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212へ入力される交流電流の周波数(駆動周波数)が高くなると発生する。なぜなら、駆動周波数が高いと、電流波形の波長が短くなり、これにより、振動する可動体30が上方移動/下方移動する時間長が短くなり、その結果として可動体30の上方移動/下方移動の距離が短くなるからである。
【0081】
要するに、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の駆動周波数が低くなると、共振周波数が低くなり、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の駆動周波数が高くなると、共振周波数が高くなる。したがって、駆動周波数が変化する方向と同じ方向へ共振周波数が変化するため、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅が広くなる(広帯域化又はワイドバンド化ともいう)。
【0082】
この場合における振動アクチュエータ1の周波数特性は、
図7において周波数特性曲線C2により示される。周波数特性曲線C2において、所望の振動強度(設定G値)以上の振動が確保できる周波数帯域幅W2は、通常の周波数特性曲線C1の周波数帯域幅W1よりも広い。すなわち、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅が広帯域となっている。
【0083】
したがって、仮に、製品の個体差等により振動アクチュエータ1において共振周波数にも個体差が生じ、振動アクチュエータ1に対する所定の駆動周波数との間に不一致が発生或いは増大したとしても、所望の振動強度の出力確保が容易である。すなわち、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅を広帯域化することができる。また、この効果を実現するに際し、共振周波数を検知するための専用回路を設ける等の特別な構成や制御は必須ではない。よって、振動アクチュエータ1やその搭載機器の小型化、製造コスト抑制又は消費電力抑制が可能である。
【0084】
図8及び
図9は、振動アクチュエータ1と同等の振動アクチュエータを実装した電気機器の例を示している。
図8は、振動アクチュエータ1をゲームコントローラGCに実装した例を示し、
図9は、振動アクチュエータ1を携帯端末Mに実装した例を示す。
【0085】
ゲームコントローラGCは、例えば、無線通信によりゲーム機本体に接続され、ユーザが握ったり把持したりすることにより使用される。ゲームコントローラGCは、ここでは矩形板状を有し、ユーザが両手でゲームコントローラGCの左右側を掴み操作するものとしている。
【0086】
ゲームコントローラGCは、振動により、ゲーム機本体からの指令をユーザに通知する。なお、ゲームコントローラGCは、図示しないが、指令通知以外の機能、例えば、ゲーム機本体に対する入力操作部を備える。
【0087】
携帯端末Mは、例えば、携帯電話やスマートフォン等の携帯通信端末である。携帯端末Mは、振動により、外部の通信装置からの着信をユーザに通知するとともに、携帯端末Mの各機能(例えば、操作感や臨場感を与える機能)を実現する。
【0088】
ゲームコントローラGC及び携帯端末Mは夫々、通信部5201、処理部5202、駆動制御部5203、及び駆動部としての振動アクチュエータ1である振動アクチュエータ5204、5205、5206を有する。なお、ゲームコントローラGCの例のように、複数の振動アクチュエータ5204、5205が実装されてよい。
【0089】
ゲームコントローラGC及び携帯端末Mにおいて、振動アクチュエータ5204~5206は、例えば、端末の主面と振動アクチュエータ5204~5206の振動方向と直交する面、ここでは下側蓋部14の底面とが平行となるように実装されることが好ましい。
【0090】
端末の主面とは、ユーザの体表面に接触する面であり、本実施の形態では、ユーザの体表面に接触して振動を伝達する振動伝達面を意味する。なお、端末の主面と、振動アクチュエータ5204、5205、5206の下側蓋部14の底面とが直交するように配置されてもよい。
【0091】
具体的には、ゲームコントローラGCでは、操作するユーザの指先、指の腹、手の平等が接触する面、或いは、操作部が設けられた面と、振動方向が直交するように振動アクチュエータ5204、5205が実装される。また、携帯端末Mの場合は、表示画面(タッチパネル面)と振動方向が直交するように振動アクチュエータ5206が実装される。これにより、ゲームコントローラGC及び携帯端末Mの主面に対して垂直な方向の振動が、ユーザに伝達される。
【0092】
通信部5201は、外部の通信装置と無線通信により接続され、通信装置からの信号を受信して処理部5202に出力する。ゲームコントローラGCの場合、外部の通信装置は、情報通信端末としてのゲーム機本体であり、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信規格に従って通信が行われる。携帯端末Mの場合、外部の通信装置は、例えば基地局であり、移動体通信規格に従って通信が行われる。
【0093】
処理部5202は、入力された信号を、変換回路部(図示省略)により振動アクチュエータ5204、5205、5206を駆動するための駆動信号に変換して駆動制御部5203に出力する。なお、携帯端末Mにおいては、処理部5202は、通信部5201から入力される信号の他、各種機能部(図示省略、例えばタッチパネル等の操作部)から入力される信号に基づいて、駆動信号を生成する。
【0094】
駆動制御部5203は、振動アクチュエータ5204、5205、5206に接続されており、振動アクチュエータ5204、5205、5206を駆動するための回路が実装されている。駆動制御部5203は、振動アクチュエータ5204、5205、5206に対して駆動信号を供給する。
【0095】
振動アクチュエータ5204、5205、5206は、駆動制御部5203からの駆動信号に従って駆動する。具体的には、振動アクチュエータ5204、5205、5206において、可動体30は、ゲームコントローラGC及び携帯端末Mの主面に直交する方向に振動する。
【0096】
ゲームコントローラGC又は携帯端末Mに接触するユーザの体表面には、体表面に垂直な方向の振動が伝達されるので、ユーザに対して十分な体感振動を与えることができる。ゲームコントローラGCでは、ユーザに対する体感振動を、振動アクチュエータ5204、5205のうちの一方、または双方で付与でき、少なくとも強弱の振動を選択的に付与するといった表現力の高い振動を付与できる。
【0097】
振動アクチュエータ1は、携帯端末や美顔マッサージ器等の電動理美容器具等の手持ち型の電気機器において、ユーザとの接触部に実装すると効果的である。ユーザが身につけて使用するウェアラブル端末においても同様である。ユーザとの接触部は、例えばゲームコントローラGC等のような手持ち型の電気機器の場合は、例えばユーザが使用時に把持するハンドル部であり、例えば美顔マッサージ器等のようなウェアラブル型の電気機器の場合は、例えばユーザの体表面に対して加圧する加圧部である。
【0098】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態において、上述した実施の形態と共通又は対応する部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略又は簡略化する。ここでは、上述した実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0099】
本実施の形態の振動アクチュエータ1Aでは、
図10C及び
図10Dに示すように、固定ヨーク214Aの上下方向の長さLb2が、可動体30の可動域の上下方向の長さLm1よりも短く、且つ、可動体30の可動体本体の上下方向の長さLa1に等しい。なお、本実施の形態の固定ヨーク214Aは、実施の形態1の固定ヨーク214に対し、上下方向の長さの点では相違するが、その余の点では共通する。
【0100】
これにより、本実施の形態において、実施の形態1と同じ効果を実現することができる。特に、本実施の形態では、固定ヨーク214Aの上下方向の長さLb2が、可動体30の可動体本体の上下方向の長さLa1に等しいので、より小さい振幅でも確実に、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅の広帯域化という効果を実現することができる。ちなみに、
図10Dの左側は、可動体30が可動域の上限位置にある状態を示し、
図10Dの右側は、可動体30が可動域の下限位置にある状態を示す。
【0101】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態において、上述した実施の形態と共通又は対応する部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略又は簡略化する。ここでは、上述した実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0102】
本実施の形態の振動アクチュエータ1Bでは、
図11A及び
図11Bに示すように、固定ヨーク214Bの内周面が、内径が変化する内側段差部214B1を有する。これにより、固定ヨーク214Bにおいて、上下方向両端部の内径が、中間部Pの内径よりも大きい。言い換えれば、固定ヨーク214Bの内周面は、中間部Pが内方に凸状となっている。固定ヨーク214Bにおいて、上下方向両端部間の長さLb31は、可動体30の可動域の上下方向の長さLm1に等しいか、それ以上であってよい。なお、本実施の形態の固定ヨーク214Bは、実施の形態1の固定ヨーク214に対し、上述した点を除き、共通する。
【0103】
これにより、本実施の形態においては、実施の形態1と比べ、可動体30が上下方向に移動する際の磁気バネのバネ定数の変化(減退)をより顕著にする効果を実現することができる。
【0104】
また、本実施の形態の固定ヨーク214Bは、外周面が凹凸や傾斜のない平坦な面であるため、例えば、外側に配置されるケース10に対して接着する場合には、接着面積と大きく確保することができる。
【0105】
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態において、上述した実施の形態と共通又は対応する部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略又は簡略化する。ここでは、上述した実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0106】
本実施の形態の振動アクチュエータ1Cでは、
図12A及び
図12Bに示すように、固定ヨーク214Cの外周面が、外径が変化する外側段差部214C1を有する。これにより、固定ヨーク214Cにおいて、上下方向両端部の外径が、中間部Pの外径よりも大きい。言い換えれば、固定ヨーク214Cの外周面は、中間部Pが内方に凸状となっている。なお、本実施の形態の固定ヨーク214Cは、実施の形態3の固定ヨーク214Bに対し、上述した点を除き、共通する。
【0107】
これにより、本実施の形態においては、実施の形態1と比べ、可動体30が上下方向に移動する際の磁気バネのバネ定数の変化(減退)をより顕著にする効果を実現することができる。
【0108】
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5について説明する。本実施の形態において、上述した実施の形態と共通又は対応する部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略又は簡略化する。ここでは、上述した実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0109】
本実施の形態の振動アクチュエータ1Dでは、
図13A及び
図13Bに示すように、固定ヨーク214Dの内周面が、中間部Pから上下方向両端部までの部分において内径が徐々に拡大する傾斜内周面(傾斜部の一例)214D1を有する。これにより、固定ヨーク214Dにおいて、上下方向両端部の内径が、中間部Pの内径よりも大きい。言い換えれば、固定ヨーク214Dの内周面は、中間部Pが内方に凸状となっている。固定ヨーク214Dにおいて、上下方向両端部間の長さLb31は、可動体30の可動域の上下方向の長さLm1に等しいか、それ以上であってよい。なお、本実施の形態の固定ヨーク214Dは、実施の形態3の固定ヨーク214Bに対し、上述した点を除き、共通する。
【0110】
これにより、本実施の形態においては、実施の形態1と比べ、可動体30が上下方向に移動する際の磁気バネのバネ定数の変化(減退)をより顕著にする効果を実現することができる。
【0111】
また、本実施の形態の固定ヨーク214Dは、外周面が凹凸や傾斜のない平坦な面であるため、例えば、外側に配置されるケース10に対して接着する場合には、接着面積と大きく確保することができる。
【0112】
また、本実施の形態の固定ヨーク214Dは、傾斜内周面214D1において内径が徐々に拡径するため、より緩やかに磁気バネのバネ定数を低下させることができる。
【0113】
(実施の形態6)
以下、本発明の実施の形態6について説明する。本実施の形態において、上述した実施の形態と共通又は対応する部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略又は簡略化する。ここでは、上述した実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0114】
図14A及び
図14Bは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの側断面図及び斜視断面図であり、
図15Aは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの、板バネを装着した可動体の斜視図であり、
図15Bは、
図15Aに示す可動体の斜視断面図であり、
図16は、本実施の形態に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図である。
【0115】
本実施の形態の振動アクチュエータ1Eでは、固定体20が、可動マグネット31に、より具体的には可動マグネット31に被さった副可動ヨーク34、35に、上下方向で対向するよう磁性部材保持部215、216に保持された固定マグネット217E、218Eを有する。
【0116】
磁性部材保持部215、216は、上側周壁部12及び下側周壁部13において駆動コイル組立体21を上下両側から挟む部分が、上側板バネ41及び下側板バネ42よりも可動体30に近い位置で内側に延在するように構成されている。固定マグネット217E、218Eは、予め上下方向に着磁された永久磁石である。固定マグネット217E、218Eは、可動マグネット31に対向する端部が、可動マグネット31の対向面の極性とは反対の極性となるように、着磁されている。これにより、固定マグネット217E、218Eと可動体30(可動マグネット31)との間には、磁気吸引力が常時発生する。
【0117】
固定マグネット217E、218Eは、磁性部材保持部215、216において可動体30に対向する面に配置されている。本実施の形態において、固定マグネット217E、218Eは、環状の副可動ヨーク34、35に対して全周にわたり対向するよう環状に延在している。固定マグネット217E、218Eは、振動する可動体30を振動中心位置VCに向けて付勢する磁力を発生させる磁気バネを可動マグネット31と共に構成するよう固定体20に設けられた磁性部材の一例である。
【0118】
上述の通り、本実施の形態では、上下方向において可動体30と上側板バネ41及び下側板バネ42の夫々との間に固定マグネット217E、218E及び磁性部材保持部215、216が介在する。よって、可動体30の接続部36が上下方向にやや長尺となり、振動アクチュエータ1の全体としても、上下方向にやや長尺となる。但し、本実施の形態では、可動体30の可動体本体の上下方向の長さは、上記各実施の形態等と同様、La1である。また、可動体30の可動域の上下方向の長さも、上記各実施の形態と同様、Lm1である。
【0119】
これに対し、固定体20において、固定ヨーク214Eの上下方向の長さは、可動体30の可動域の上下方向の長さLm1以上であってよい。また、固定ヨーク214Eの内径は、上下方向の全長にわたり同一であってよい。これらのような固定ヨーク214Eに関する寸法及び形状の設定により、本実施の形態では、固定ヨーク214Eと可動マグネット31とでは、磁気バネのバネ定数を可変とする効果を発揮しない。上述した通り、本実施の形態では、その効果を発揮するのは、固定マグネット217E、218Eである。
【0120】
この点について、
図17A、
図17B及び
図17Cを参照して説明する。なお、
図17A、
図17B及び
図17Cでは、
図5Aに示すように可動体30を上方に駆動するタイミングで発生する作用を例に挙げて説明する。可動体30を下方に駆動するタイミングで発生する作用については、以下説明する内容において力の作用する方向を上下反転するだけで疑義なく理解できるため、ここではその説明を省略する。
【0121】
図17Aに示す状況では、可動体30は振動中心位置VCに位置している。
図17Aに示す可動体30は、これから上方移動が開始する未振動状態の可動体30であってもよいし、振動中心位置VCを通過している振動状態の可動体30であってもよい。
【0122】
可動体30と固定ヨーク214Eとの間に常時作用する磁気吸引力の向きには、可動体30が振動中心位置VCにある場合、上方向への偏りも下方向への偏りもない。また、可動体30が振動中心位置VCにある場合、上側の固定マグネット217Eと可動マグネット31との間の磁気吸引力と、下側の固定マグネット218Eと可動マグネット31との間の磁気吸引力とは、釣り合っている。すなわち、振動中心位置VCにある可動体30には、磁気バネによる付勢力は上方向にも下方向にも作用しない。
【0123】
図17Bに示す状況では、可動体30は上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212への通電(
図5A参照)による駆動により、振動中心位置VCに対して僅かに上方へ変位している。
【0124】
このとき、可動体30と固定ヨーク214との間に作用する磁気吸引力が、上向きに偏る。固定ヨーク214Eは、この磁気吸引力により上向きに吸引されるが、固定ヨーク214Eは固定体20の一部であり移動不能であることから、作用反作用の法則に従って可動体30に下向きの付勢力が作用する。このとき、上側の固定マグネット217Eと可動マグネット31との間の磁気吸引力は、両者が近づいたことで増大する一方、下側の固定マグネット218Eと可動マグネット31との間の磁気吸引力は、両者が遠ざかったことで低減する。よって、固定マグネット217E、218Eと可動マグネット31との間の磁気吸引力の向きは、上方向に偏る。この上方向への偏り発生により、可動体30に作用する下向きの付勢力は、若干減殺される。
【0125】
図17Cに示す状況では、可動体30は、駆動により、
図17Bに示す位置よりもさらに上方へ変位している。
【0126】
このとき、可動体30と固定ヨーク214Eとの間に作用する磁気吸引力については、
図17Bに示す状況とほぼ変わらない。一方、上側の固定マグネット217Eと可動マグネット31との間の磁気吸引力は、両者がさらに近づいたことでさらに増大する一方、下側の固定マグネット218Eと可動マグネット31との間の磁気吸引力は、両者がさらに遠ざかったことでさらに低減する。よって、固定マグネット217E、218Eと可動マグネット31との間に作用する上向きの磁気吸引力は、増大する。可動体30に作用する下向きの付勢力は、増大した上方向の磁気吸引力によりさらに減殺され、
図17Bに示す状況に比べて低減する。
【0127】
すなわち、
図17A、
図17B及び
図17Cに例示された一連の動作では、磁気バネのバネ定数が、振動する可動体30が振動中心位置VCから離れるにつれて低くなる。振幅の増大に伴って、磁気バネのバネ定数が低くなると、合成バネ定数も低くなり、合成バネ定数が低くなると、可動体30の共振周波数も低くなる。
【0128】
また、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の駆動周波数が低くなると、共振周波数が低くなり、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の駆動周波数が高くなると、共振周波数が高くなる。したがって、駆動周波数が変化する方向と同じ方向へ共振周波数が変化するため、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅が広くなる。この点については、実施の形態1の説明に際して詳述した通りである。
【0129】
(実施の形態7)
以下、本発明の実施の形態7について説明する。本実施の形態において、上述した実施の形態と共通又は対応する部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略又は簡略化する。ここでは、上述した実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0130】
図18A及び
図18Bは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの側断面図及び斜視断面図であり、
図19Aは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの、板バネを装着した可動体の斜視図であり、
図19Bは、
図19Aに示す可動体の斜視断面図であり、
図20は、本実施の形態に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図である。
【0131】
本実施の形態の振動アクチュエータ1Fでは、固定体20が、可動体30に、特に可動マグネット31の上下両面に、上下方向で対向するよう上側蓋部11F及び下側蓋部14Fの夫々に保持された固定マグネット217F、218Fを有する。固定マグネット217F、218Fは、振動する可動体30を振動中心位置VCに向けて付勢する磁力を発生させる磁気バネを可動マグネット31と共に構成するよう固定体20に設けられた磁性部材の一例である。上側蓋部11F及び下側蓋部14Fは、本実施の形態では、磁性部材を保持する磁性部材保持部として機能するよう構成されている。
【0132】
固定マグネット217F、218Fは、予め上下方向に着磁された永久磁石である。固定マグネット217F、218Fは、可動マグネット31に対向する端部が、可動マグネット31の対向面の極性とは反対の極性となるように、着磁されている。これにより、固定マグネット217F、218Fと可動体30(可動マグネット31)との間には、磁気吸引力が常時発生する。
【0133】
固定マグネット217F、218Fは、上側蓋部11F及び下側蓋部14Fにおいて可動体30に対向する面に配置されている。本実施の形態において、固定マグネット217F、218Fは、可動マグネット31の上面及び下面において他の部材に覆われずに上方及び下方に臨む部分に対向するよう、径方向の中央部分において上下両側から可動マグネット31の上面及び下面に接近するよう棒状に延在している。
【0134】
上述の通り、本実施の形態では、上側蓋部11F及び下側蓋部14Fから可動マグネット31の上面及び下面の近接位置まで固定マグネット217F、218Fを延在させている。そのため、本実施の形態では、可動体30を上側板バネ41及び下側板バネ42の夫々に接続する接続部36、37において、外側筒部362、372に挿入する挿入部材が筒状(内側筒部361F、371F)となっている。これにより、固定マグネット217F、218Fは、夫々固定された上側蓋部11F及び下側蓋部14Fから、上側板バネ41及び下側板バネ42の内周部412、422の中央開口部を通り抜けて、可動体30(可動マグネット31)の上面及び下面に対向する位置まで、到達することができる。但し、固定マグネット217F、218Fは、可動体30の振動動作を阻害しないよう、可動体30(可動マグネット31)と接触し得る位置までは延在していない。さらに、可動体30(可動マグネット31)の上面及び下面に対向する位置とは、例えば、上下方向において上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の配置位置に対応する位置(上下方向で重なる位置)である。また、内側筒部361F、371Fは、中空部に配置される固定マグネット217F、218Fの外径よりも若干大径であり、内側筒部361F、371Fと固定マグネット217F、218Fとの間には、可動体30の振動時に両者の接触を抑制或いは防止するクリアランスが確保されている。
【0135】
なお、内側筒部361F、371Fは、筒状形状である点を除き、中実である上記各実施の形態の挿入ピン361、371と共通する構成を有する。
【0136】
本実施の形態は、固定ヨーク214Eと可動マグネット31とでは磁気バネのバネ定数を可変とする効果を発揮しない点で、実施の形態6と同様である。上述した通り、本実施の形態で、その効果を発揮するのは、固定マグネット217F、218Fである。この効果が発揮される原理については、実施の形態6において
図17A、
図17B及び
図17Cを参照して説明した原理と同じであるため、ここではその詳細説明を省略する。
【0137】
図17A、
図17B及び
図17Cに例示された一連の動作では、磁気バネのバネ定数が、振動する可動体30が振動中心位置VCから離れるにつれて低くなる。振幅の増大に伴って、磁気バネのバネ定数が低くなると、合成バネ定数も低くなり、合成バネ定数が低くなると、可動体30の共振周波数も低くなる。
【0138】
また、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の駆動周波数が低くなると、共振周波数が低くなり、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の駆動周波数が高くなると、共振周波数が高くなる。したがって、駆動周波数が変化する方向と同じ方向へ共振周波数が変化するため、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅が広くなる。この点については、実施の形態1の説明に際して詳述した通りである。
【0139】
(実施の形態8)
以下、本発明の実施の形態8について説明する。本実施の形態において、上述した実施の形態と共通又は対応する部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略又は簡略化する。ここでは、上述した実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0140】
図21A及び
図21Bは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの側断面図及び斜視断面図であり、
図22Aは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの、板バネを装着した可動体の斜視図であり、
図22Bは、
図22Aに示す可動体の斜視断面図であり、
図23は、本実施の形態に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図である。
【0141】
本実施の形態の振動アクチュエータ1Gでは、固定体20が、可動体30に、特に可動体30を上側板バネ41及び下側板バネ42の夫々に接続する接続部36、37に配置された追加可動マグネット311G、312Gに、上下方向で対向するよう上側蓋部11F及び下側蓋部14Fの夫々に保持された固定マグネット217G、218Gを有する。固定マグネット217G、218Gは、振動する可動体30を振動中心位置VCに向けて付勢する磁力を発生させる磁気バネを追加可動マグネット311G、312Gと共に構成するよう固定体20に設けられた磁性部材の一例である。
【0142】
固定マグネット217G、218Gは、予め上下方向に着磁された永久磁石である。固定マグネット217G、218Gは、追加可動マグネット311G、312Gに対向する端部が、追加可動マグネット311G、312Gの対向面の極性とは反対の極性となるように、着磁されている。これにより、固定マグネット217G、218Gと可動体30(追加可動マグネット311G、312G)との間には、磁気吸引力が常時発生する。
【0143】
固定マグネット217G、218Gは、上側蓋部11F及び下側蓋部14Fにおいて可動体30に対向する面に配置されている。本実施の形態において、固定マグネット217G、218Gは、例えば平板状である等、比較的低背型の形状である。固定マグネット217G、218Gは、径方向の中央部分において上下両側から追加可動マグネット311G、312Gに上下方向で対向して配置されている。
【0144】
本実施の形態において、固定マグネット217G、218Gに対向する追加可動マグネット311G、312Gは、接続部36、37の挿入ピン361G、371Gの先端部(フランジ側端部)に設けられた凹部内に配置されている。追加可動マグネット311G、312Gは、上下方向に予め着磁された永久磁石である。追加可動マグネット311G、312Gを収容する凹部を挿入ピン361G、371Gに設けたことにより、振動アクチュエータ1全体のサイズ拡大を抑制することができる。
【0145】
本実施の形態は、固定ヨーク214Eと可動マグネット31とでは磁気バネのバネ定数を可変とする効果を発揮しない点で、実施の形態6、7と同様である。上述した通り、本実施の形態で、その効果を発揮するのは、固定マグネット217G、218Gである。この効果が発揮される原理については、実施の形態6において
図17A、
図17B及び
図17Cを参照して説明した原理と同じであるため、ここではその詳細説明を省略する。
【0146】
図17A、
図17B及び
図17Cに例示された一連の動作では、磁気バネのバネ定数が、振動する可動体30が振動中心位置VCから離れるにつれて低くなる。振幅の増大に伴って、磁気バネのバネ定数が低くなると、合成バネ定数も低くなり、合成バネ定数が低くなると、可動体30の共振周波数も低くなる。
【0147】
また、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の駆動周波数が低くなると、共振周波数が低くなり、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の駆動周波数が高くなると、共振周波数が高くなる。したがって、駆動周波数が変化する方向と同じ方向へ共振周波数が変化するため、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅が広くなる。この点については、実施の形態1の説明に際して詳述した通りである。
【0148】
(実施の形態9)
以下、本発明の実施の形態9について説明する。本実施の形態において、上述した実施の形態と共通又は対応する部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略又は簡略化する。ここでは、上述した実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0149】
図24A及び
図24Bは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの側断面図及び斜視断面図であり、
図25は、本実施の形態に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図である。
【0150】
本実施の形態の振動アクチュエータ1Hは、実施の形態6において固定体20に磁性部材として設けられていた固定マグネット217E、218Eに代えて、無着磁の磁性体である固定磁性体231H、232Hを配置した点で、実施の形態6と相違する。その余の点では、本実施の形態は実施の形態6と同様である。また、固定磁性体231H、232Hは、無着磁である点で固定マグネット217E、218Eと相違するものの、形状や配置位置等はいずれも、固定マグネット217E、218Eと同様である。すなわち、固定磁性体231H、232Hは、本実施の形態において、振動する可動体30を振動中心位置VCに向けて付勢する磁力を発生させる磁気バネを可動マグネット31と共に構成するよう固定体20に設けられた磁性部材の一例である。
【0151】
したがって、本実施の形態では、永久磁石の使用点数を増やさずに実施の形態6と同様の効果を実現できるため、製造コストの点で有利である。
【0152】
(実施の形態10)
以下、本発明の実施の形態10について説明する。本実施の形態において、上述した実施の形態と共通又は対応する部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略又は簡略化する。ここでは、上述した実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0153】
図26A及び
図26Bは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの側断面図及び斜視断面図であり、
図27は、本実施の形態に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図である。
【0154】
本実施の形態の振動アクチュエータ1Iは、実施の形態7において固定体20に磁性部材として設けられていた固定マグネット217F、218Fに代えて、無着磁の磁性体である固定磁性体231I、232Iを配置した点で、実施の形態7と相違する。その余の点では、本実施の形態は実施の形態7と同様である。また、固定磁性体231I、232Iは、無着磁である点で固定マグネット217F、218Fと相違するものの、形状や配置位置等はいずれも、固定マグネット217F、218Fと同様である。すなわち、固定磁性体231I、232Iは、本実施の形態において、振動する可動体30を振動中心位置VCに向けて付勢する磁力を発生させる磁気バネを可動マグネット31と共に構成するよう固定体20に設けられた磁性部材の一例である。
【0155】
したがって、本実施の形態では、永久磁石の使用点数を増やさずに実施の形態7と同様の効果を実現できるため、製造コストの点で有利である。
【0156】
(実施の形態11)
以下、本発明の実施の形態11について説明する。本実施の形態において、上述した実施の形態と共通又は対応する部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略又は簡略化する。ここでは、上述した実施の形態との相違点を中心に説明する。本実施の形態の構成は、上述した実施の形態の中では実施の形態7の構成に比較的類似しているため、実施の形態7との相違点を中心に説明する。
【0157】
図28A及び
図28Bは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの側断面図及び斜視断面図であり、
図29Aは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの、板バネを装着した可動体の斜視図であり、
図29Bは、
図29Aに示す可動体の斜視断面図であり、
図30は、本実施の形態に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図である。
【0158】
本実施の形態の振動アクチュエータ1Jは、実施の形態7における上側蓋部11F及び下側蓋部14Fに代えて、いずれも無着磁の磁性体で構成された上側蓋部11J及び下側蓋部14Jを配置した点で、実施の形態7と相違している。上側蓋部11J及び下側蓋部14Jは、無着磁の磁性体で構成された点のみにおいて実施の形態1等で説明した上側蓋部11及び下側蓋部14と相違し、その余の点では同様である。
【0159】
可動体30の可動マグネット31は、上面及び下面において径方向の中央部分に、いずれも無着磁の磁性体で構成された可動磁性体38J、39Jを有する。可動磁性体38J、39Jは、可動体30を上側板バネ41及び下側板バネ42の夫々に接続する接続部36、37の内側筒部361F、371Fの中空部に収容され、可動マグネット31の上面及び下面から上下両方向に棒状に延在して、上側蓋部11J及び下側蓋部14Jに対向している。なお、可動体30の可動マグネット31に可動磁性体38J、39Jを設ける代わりに、可動マグネット31の上面及び下面に接して設けられている外側筒部362、372と外側筒部362、372に内設される内側筒部361F、371Fとをそれぞれ磁性体としてもよい。
【0160】
この構成により、上側蓋部11J及び下側蓋部14Jと可動体30(可動マグネット31)との間には、磁気吸引力が常時発生する。すなわち、本実施の形態において、上側蓋部11J及び下側蓋部14Jは、振動する可動体30を振動中心位置VCに向けて付勢する磁力を発生させる磁気バネを可動マグネット31と共に構成するよう固定体20に設けられた磁性部材の一例である。
【0161】
本実施の形態は、固定ヨーク214Eと可動マグネット31とでは磁気バネのバネ定数を可変とする効果を発揮しない点で、実施の形態6と同様である。上述した通り、本実施の形態で、その効果を発揮するのは、上側蓋部11J及び下側蓋部14Jである。この効果が発揮される原理については、実施の形態6において
図17A、
図17B及び
図17Cを参照して説明した原理と同じであるため、ここではその詳細説明を省略する。
【0162】
図17A、
図17B及び
図17Cに例示された一連の動作では、磁気バネのバネ定数が、振動する可動体30が振動中心位置VCから離れるにつれて低くなる。振幅の増大に伴って、磁気バネのバネ定数が低くなると、合成バネ定数も低くなり、合成バネ定数が低くなると、可動体30の共振周波数も低くなる。
【0163】
また、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の駆動周波数が低くなると、共振周波数が低くなり、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の駆動周波数が高くなると、共振周波数が高くなる。したがって、駆動周波数が変化する方向と同じ方向へ共振周波数が変化するため、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅が広くなる。この点については、実施の形態1の説明に際して詳述した通りである。
【0164】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述した特定の実施の形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、上記実施の形態に記載された具体例に対する種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明に係る振動アクチュエータは、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅を広帯域化することができ、ゲーム機端末及び携帯端末等の電子機器並びに各種のマッサージ機器及び美容機器等を含む電気機器に搭載されるものとして有用である。
【符号の説明】
【0166】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1I、1J、5204、5205、5206 振動アクチュエータ
10 ケース
11、11F、11J 上側蓋部
12 上側周壁部(周壁部)
13 下側周壁部(周壁部)
14、14F、14J 下側蓋部
15 連結部
151 止着孔
20 固定体
21 駆動コイル組立体
211 上側駆動コイル
212 下側駆動コイル
213 ボビン
2131 中間フランジ
2132、2133 端部フランジ
2134、2135 溝
214、214A、214B、214C、214D、214E 固定ヨーク
214B1 内側段差部
214C1 外側段差部
214D1 傾斜内周面
215、216 磁性部材保持部
217E、217F、217G、218E、218F、218G 固定マグネット
231H、231I、232H、232I 固定磁性体
30 可動体
31 可動マグネット
311G、312G 追加可動マグネット
32、33 主可動ヨーク
34、35 副可動ヨーク
36、37 接続部
361、361G、371、371G 挿入ピン
361F、371F 内側筒部
362、372 外側筒部
38J、39J 追加可動磁性体
40 板バネ部
41 上側板バネ
411 アーム部
412 内周部
413 外周部
42 下側板バネ
421 アーム部
422 内周部
423 外周部
5201 通信部
5202 処理部
5203 駆動制御部
CA 中心軸
C1、C2 周波数特性曲線
GC ゲームコントローラ
La1 可動体本体の上下方向の長さ
Lb1 固定ヨークの上下方向の長さ
Lm1 可動域の上下方向の長さ
M 携帯端末
P 中間部
VC 振動中心位置(中心位置)
W1、W2 周波数帯域幅