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特開2024-117593音場制御装置、音場制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117593
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】音場制御装置、音場制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023769
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓磨
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AA16
5D220AB01
5D220AB06
(57)【要約】
【課題】リアルタイム処理により、高精度なマルチスポット再生を実行する音場制御システムを実現する。
【解決手段】音場制御システム1000では、複数の再生領域で再生するオーディオ信号の短時間フーリエ変換の周波数ごとの振幅の大きさを比較し、振幅の大きい方(音圧レベルの大きい方)に音圧レベルが小さくなる特性の窓関数、振幅の小さい方(音圧レベルの小さい方)に音圧レベルが大きくなる特性の窓関数を適用することで、スピーカアレイSpk_arryの各スピーカを駆動するための駆動信号を取得する。つまり、音場制御システム1000では、複数の再生領域で再生するオーディオ信号の短時間フーリエ変換の周波数ごとの振幅の大きさに応じて、周波数および時間ごとに適応的に窓関数を切り替える処理により、スピーカアレイの各スピーカを駆動するための駆動信号を取得する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスピーカからなるスピーカアレイを用いて、複数のオーディ信号を異なる再生領域で再生するマルチスポット再生を行うための音場制御装置であって、
前記複数のオーディオ信号の短時間フーリエ変換し、短時間フーリエ変換データを取得する短時間フーリエ変換処理部と、
前記複数のオーディオ信号の前記短時間フーリエ変換データにおいて、各周波数成分の振幅を比較する周波数成分レベル比較処理を行うレベル比較処理部と、
前記周波数成分レベル比較処理の比較結果に基づいて、周波数成分ごとに、空間フーリエ変換を行うときに適用する空間窓関数を選択し、選択した前記空間窓関数を適用して、前記短時間フーリエ変換データに対して適応フィルタ処理を行うことで、前記スピーカアレイを駆動するための時間周波数領域駆動信号を取得する時間周波数適応フィルタ処理部と、
前記時間周波数領域駆動信号を逆フーリエ変換することで、前記スピーカアレイの各スピーカを駆動する駆動信号を取得する短時間フーリエ逆変換処理部と、
を備える音場制御装置。
【請求項2】
第1窓関数は、所定のオーディオ信号を所定の再生領域で再生させる場合、第1の音圧レベルで再生させる特性を有しており、
第2窓関数は、前記所定のオーディオ信号を前記所定の再生領域で再生させる場合、第1の音圧レベルよりも高い音圧レベルで再生させる特性を有しており、
前記時間周波数適応フィルタ処理部は、
(1)隣接する再生領域間で、周波数成分の振幅が大きい方の前記短時間フーリエ変換データに対して、前記第1窓関数を前記空間窓関数として適用し、
(2)隣接する再生領域間で、周波数成分の振幅が小さい方の前記短時間フーリエ変換データに対して、前記第2窓関数を前記空間窓関数として適用して、
前記適応フィルタ処理を行う、
請求項1に記載の音場制御装置。
【請求項3】
第1窓関数は、矩形窓関数であり、
第2窓関数は、Hann窓関数である、
請求項2に記載の音場制御装置。
【請求項4】
前記再生領域は、2つの再生分割領域である第1分割領域および第2分割領域を有し、
第1分割領域用窓関数は、所定のオーディオ信号を所定の前記再生分割領域で再生させる場合、第1の音圧レベルで再生させる特性を有しており、
第2分割領域用窓関数は、前記所定のオーディオ信号を前記所定の前記再生分割領域で再生させる場合、第1の音圧レベルよりも高い音圧レベルで再生させる特性を有しており、
前記時間周波数適応フィルタ処理部は、
(1)隣接する前記再生分割領域間で、周波数成分の振幅が大きい方の前記短時間フーリエ変換データに対して、前記第1分割領域用窓関数を前記空間窓関数として適用し、
(2)隣接する前記再生分割領域間で、周波数成分の振幅が小さい方の前記短時間フーリエ変換データに対して、前記第2分割領域用窓関数を前記空間窓関数として適用して、
前記適応フィルタ処理を行う、
請求項1に記載の音場制御装置。
【請求項5】
複数のスピーカからなるスピーカアレイを用いて、複数のオーディ信号を異なる再生領域で再生するマルチスポット再生を行うための音場制御方法であって、
前記複数のオーディオ信号の短時間フーリエ変換し、短時間フーリエ変換データを取得する短時間フーリエ変換処理ステップと、
前記複数のオーディオ信号の前記短時間フーリエ変換データにおいて、各周波数成分の振幅を比較する周波数成分レベル比較処理を行うレベル比較処理ステップと、
前記周波数成分レベル比較処理の比較結果に基づいて、周波数成分ごとに、空間フーリエ変換を行うときに適用する空間窓関数を選択し、選択した前記空間窓関数を適用して、前記短時間フーリエ変換データに対して適応フィルタ処理を行うことで、前記スピーカアレイを駆動するための時間周波数領域駆動信号を取得する時間周波数適応フィルタ処理ステップと、
前記時間周波数領域駆動信号を逆フーリエ変換することで、前記スピーカアレイの各スピーカを駆動する駆動信号を取得する短時間フーリエ逆変換処理ステップと、
を備える音場制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の音場制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なる領域に、異なる音場を同時に実現するマルチ音場制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のスピーカを用いた音場制御技術において、ある領域でのみ音が聞こえる局所再生技術や、局所再生を複数重ね合わせることにより、異なる領域に異なる音を提示できるマルチスポット再生技術は、テレワーク等のパーソナルオーディオや美術館や万博等でのガイドシステムや翻訳システム等において幅広い応用が期待されている。このような局所再生技術やマルチスポット再生技術は、超音波スピーカと異なり、可聴域の音を制御するため、高音質であり、かつ、音圧レベルも高くないため、健康被害の懸念もない。したがって、このような局所再生技術やマルチスポット再生技術は、超音波スピーカに代わる新たな方式としても期待されている。
【0003】
マルチスポット技術で最も主流な方式は、制御領域内を離散化して多数の制御点の音圧を制御する多点制御方式であるが、直線スピーカアレイや円形スピーカアレイを用いた場合は、空間フーリエ変換に基づく方式が有効であることが示されている。このような空間フーリエ変換に基づく方式は、音が聞こえる領域の音圧を「1」、音が聞こえない領域の音圧を「0」とすると、空間的な矩形窓は空間フーリエ変換によりsinc関数として得られるため、各スピーカの駆動信号を解析的に求めることができる。また、空間フーリエ変換に基づく方式において、矩形窓ではなく、より滑らかなHann窓を用いることにより、音の聞こえる領域と聞こえない領域との間の音圧レベル差を向上させることができる。そして、空間フーリエ変換に基づく方式において、窓関数を空間的にずらしたフィルタを複数用いることにより、マルチスポット再生を実現できる。
【0004】
空間フーリエ変換に基づく方式も含めて、従来方式は再生音の種類に関わらず、固定のフィルタが用いられている。それに対して、再生領域外にどうしても漏れ聞こえてしまう音をマスキングするために、再生音を短時間周波数分析したマスク音を再生領域外で再生し、漏れ聞こえをマスクする方式が提案されている(例えば、非特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. Donley, C. H. Ritz, and W. B. Kleijn, "Multi-zone soundfield reproduction with privacy and quality based speech masking filters," IEEE/ACM Trans. Audio, Speech, Lang. Process., vol. 26, no. 6, pp. 1041-1055, June 2018.
【非特許文献2】D. Wallace and J. Cheer, "Design and evaluation of personal audio systems based on speech privacy constraints," J. Acoust. Soc. Am., vol. 147, no. 4, pp. 2271-2282, Apr. 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の方式(例えば、非特許文献1、2に開示の方式)にはトレードオフの関係があり、マスク信号を大きくすると再生領域外の漏れ聞こえは低減されるが、再生領域にもマスク信号が到来するため、再生領域における再生音質は劣化してしまうという問題がある。このような問題に対処するために、例えば、2つの領域にそれぞれ再生する音を短時間周波数分析してスピーカの駆動信号を適応的に算出する方式が提案されている。このような方式では、それぞれの領域においてお互いの再生音を考慮したマルチスポット再生を実現できるが、リアルタイム処理ができないため、同時通訳等のリアルタイム処理が要求されるアプリケーションには対応できない。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、リアルタイム処理により、高精度なマルチスポット再生(再生信号適応型マルチスポット再生)を実行する音場制御システム、音場制御装置、音場制御方法およびプログラムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、複数のスピーカからなるスピーカアレイを用いて、複数のオーディオ信号を異なる再生領域で再生するマルチスポット再生を行うための音場制御装置であって、短時間フーリエ変換処理部と、レベル比較処理部と、時間周波数適応フィルタ処理部と、短時間フーリエ逆変換処理部と、を備える。
【0009】
短時間フーリエ変換処理部は、複数のオーディオ信号の短時間フーリエ変換を行い、短時間フーリエ変換データを取得する。
【0010】
レベル比較処理部は、複数のオーディオ信号の短時間フーリエ変換データにおいて、各周波数成分の振幅を比較する周波数成分レベル比較処理を行う。
【0011】
時間周波数適応フィルタ処理部は、周波数成分レベル比較処理の比較結果に基づいて、周波数成分ごとに、空間フーリエ変換を行うときに適用する空間窓関数を選択し、選択した空間窓関数を適用して、短時間フーリエ変換データに対して適応フィルタ処理を行うことで、スピーカアレイを駆動するための時間周波数領域駆動信号を取得する。
【0012】
短時間フーリエ逆変換処理部は、時間周波数領域駆動信号を逆フーリエ変換することで、スピーカアレイの各スピーカを駆動する駆動信号を取得する。
【0013】
この音場制御装置では、複数の再生領域で再生するオーディオ信号の短時間フーリエ変換の周波数ごとの振幅の大きさを比較し、振幅の大きさに応じて空間窓関数を選択して適用することで、スピーカアレイの各スピーカを駆動するための駆動信号を取得する。つまり、この音場制御装置では、複数の再生領域で再生するオーディオ信号の短時間フーリエ変換の周波数ごとの振幅の大きさに応じて、周波数および時間ごとに適応的に窓関数を切り替える処理(時間周波数適応フィルタ処理)により、スピーカアレイの各スピーカを駆動するための駆動信号を取得する。よって、この音場制御装置では、上記のような単純な処理を行うだけで複数の再生領域に対する音場制御(例えば、マルチスポット再生)を行うことができるので、リアルタイム処理により、高精度な音場制御(例えば、マルチスポット再生)を実行することができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明であって、第1窓関数は、所定のオーディオ信号を所定の再生領域で再生させる場合、第1の音圧レベルで再生させる特性を有しており、第2窓関数は、所定のオーディオ信号を所定の再生領域で再生させる場合、第1の音圧レベルよりも高い音圧レベルで再生させる特性を有している。
【0015】
そして、時間周波数適応フィルタ処理部は、(1)隣接する再生領域間で、周波数成分の振幅が大きい方の短時間フーリエ変換データに対して、第1窓関数を空間窓関数として適用し、(2)隣接する再生領域間で、周波数成分の振幅が小さい方の短時間フーリエ変換データに対して、第2窓関数を空間窓関数として適用して、適応フィルタ処理を行う。
【0016】
これにより、この音場制御装置では、例えば、マルチスポット再生処理において、複数の再生領域で再生するオーディオ信号の短時間フーリエ変換の周波数ごとの振幅の大きさを比較し、振幅の大きい方(音圧レベルの大きい方)に音圧レベルが小さくなる特性の窓関数、振幅の小さい方(音圧レベルの小さい方)に音圧レベルが大きくなる特性の窓関数を適用することで、スピーカアレイの各スピーカを駆動するための駆動信号を取得する。つまり、この音場制御装置では、例えば、マルチスポット再生処理において、複数の再生領域で再生するオーディオ信号の短時間フーリエ変換の周波数ごとの振幅の大きさに応じて、周波数および時間ごとに適応的に窓関数を切り替える処理により、スピーカアレイの各スピーカを駆動するための駆動信号を取得する。よって、この音場制御装置では、上記のような単純な処理を行うだけで複数の再生領域に対する音場制御(例えば、マルチスポット再生)を行うことができるので、リアルタイム処理により、高精度な音場制御(例えば、マルチスポット再生)を実行することができる。
【0017】
第3の発明は、第2の発明であって、第1窓関数は、矩形窓関数であり、第2窓関数は、Hann窓関数である。
【0018】
これにより、この音場制御装置では、第1窓関数を矩形窓関数とし、第2窓関数をHann窓関数として、適応フィルタ処理を行うことができる。
【0019】
第4の発明は、第1の発明であって、再生領域は、2つの再生分割領域である第1分割領域および第2分割領域を有し、第1分割領域用窓関数は、所定のオーディオ信号を所定の再生分割領域で再生させる場合、第1の音圧レベルで再生させる特性を有しており、第2分割領域用窓関数は、所定のオーディオ信号を所定の再生分割領域で再生させる場合、第1の音圧レベルよりも高い音圧レベルで再生させる特性を有している。
【0020】
そして、時間周波数適応フィルタ処理部は、
(1)隣接する再生分割領域間で、周波数成分の振幅が大きい方の短時間フーリエ変換データに対して、第1分割領域用窓関数を空間窓関数として適用し、
(2)隣接する再生分割領域間で、周波数成分の振幅が小さい方の短時間フーリエ変換データに対して、第2分割領域用窓関数を空間窓関数として適用して、
適応フィルタ処理を行う。
【0021】
これにより、この音場制御装置では、隣接する分割領域間において、短時間フーリエ変換データの各周波数成分の振幅の大小に応じて、適用する空間窓関数を選択できる。したがって、この音場制御装置では、複数の(3つ以上の)再生領域が設定される場合であっても、適切に音場制御(例えば、マルチスポット再生)を行うことができる。
【0022】
第5の発明は、複数のスピーカからなるスピーカアレイを用いて、複数のオーディ信号を異なる再生領域で再生するマルチスポット再生を行うための音場制御方法であって、短時間フーリエ変換処理ステップと、レベル比較処理ステップと、時間周波数適応フィルタ処理ステップと、短時間フーリエ逆変換処理ステップと、を備える。
【0023】
短時間フーリエ変換処理ステップは、複数のオーディオ信号の短時間フーリエ変換を行い、短時間フーリエ変換データを取得する。
【0024】
レベル比較処理ステップは、複数のオーディオ信号の短時間フーリエ変換データにおいて、各周波数成分の振幅を比較する周波数成分レベル比較処理を行う。
【0025】
時間周波数適応フィルタ処理ステップは、周波数成分レベル比較処理の比較結果に基づいて、周波数成分ごとに、空間フーリエ変換を行うときに適用する空間窓関数を選択し、選択した空間窓関数を適用して、短時間フーリエ変換データに対して適応フィルタ処理を行うことで、スピーカアレイを駆動するための時間周波数領域駆動信号を取得する。
【0026】
短時間フーリエ逆変換処理ステップは、時間周波数領域駆動信号を逆フーリエ変換することで、スピーカアレイの各スピーカを駆動する駆動信号を取得する。
【0027】
これにより、第1の発明と同様の効果を奏する音場制御方法を実現することができる。
【0028】
第6の発明は、第5の発明である音場制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0029】
これにより、第1の発明と同様の効果を奏する音場制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを実現することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、本発明は上記課題に鑑み、リアルタイム処理により、高精度なマルチスポット再生(再生信号適応型マルチスポット再生)を実行する音場制御システム、音場制御装置、音場制御方法およびプログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態に係る音場制御システム1000の概略構成図。
図2】第1実施形態に係る音場制御システム1000のスピーカアレイSpk_arryの概略構成図。
図3】音場制御システム1000で実行される処理のフローチャート。
図4】音場制御システム1000で実行される処理のフローチャート。
図5】再生領域および無音領域の音圧分布を関数によりモデル化する手法を説明するための図。
図6】音圧P(φ)のグラフを示す図(領域Zone1(Q1)に再生させるオーディオ信号の周波数成分の振幅の方が領域Zone2(Q2)に再生させるオーディオ信号の周波数成分の振幅よりも大きい場合)。
図7】音圧P(φ)のグラフを示す図(領域Zone2(Q2)に再生させるオーディオ信号の周波数成分の振幅の方が領域Zone1(Q1)に再生させるオーディオ信号の周波数成分の振幅よりも大きい場合(同じ場合を含む))。
図8】直線スピーカアレイを用いた場合の駆動信号の空間フーリエ変換(角度スペクトル)を示す図。
図9】第2実施形態に係る音場制御システム2000の概略構成図。
図10】第1実施形態に係る音場制御システム2000のスピーカアレイSpk_arryの概略構成図。
図11】音場制御システム2000で実行される処理のフローチャートである。
図12】音場制御システム2000で実行される処理のフローチャートである。
図13】音圧P(φ)のグラフを示す図。
図14】CPUバス構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第1実施形態]
第1実施形態について、図面を参照しながら、以下説明する。
【0033】
<1.1:音場制御システムの構成>
図1は、第1実施形態に係る音場制御システム1000の概略構成図である。
【0034】
図2は、第1実施形態に係る音場制御システム1000のスピーカアレイSpk_arryの概略構成図である。なお、図2に示したように、x軸、y軸およびz軸を設定するものとする。また、xyz空間(3次元空間)の原点は、図2の点Oに設定するものとする。
【0035】
音場制御システム1000は、図1に示すように、音場制御装置100と、スピーカアレイSpk_arryとを備える。なお、説明便宜のため、音場制御システム1000では、図2に示すように、円形スピーカアレイ(同一円周上に等間隔に設置された複数のスピーカから構成されるスピーカアレイ)を駆動することで、複数の領域(例えば、図2の場合、第1領域Zone1(この領域をQ1とする)および第2領域Zone2(この領域をQ2とする))の音場を制御するものとして、以下、説明する。また、スピーカアレイSpk_arryは、図2に示すように、上方からの平面視において、中心点Oから半径rの同一円周上に等間隔に設置されたL個(L:自然数)のスピーカSpk1~SpkL(図2の場合、L=16)から構成されているものとする。
【0036】
音場制御装置100は、図1に示すように、再生領域設定部1と、伝達関数取得処理部2と、短時間フーリエ変換処理部3と、レベル比較処理部4と、時間周波数適応フィルタ処理部5と、短時間フーリエ逆変換処理部6と、を備える。
【0037】
再生領域設定部1は、複数の音場制御対象とする領域(再生領域)についての情報を設定する。なお、説明便宜のため、複数の音場制御対象とする領域(再生領域)、2つの再生領域(図2における2つの再生領域Zone1、Zone2)が設定される場合について、以下、説明する。再生領域設定部1は、設定した音場制御対象とする領域(再生領域)についての情報を含むデータを、データD_bright_zone(Q)(Q={Q1,Q2})として、時間周波数適応フィルタ処理部5に出力する。
【0038】
伝達関数取得処理部2は、スピーカアレイSpk_arryを構成するL個のスピーカのそれぞれと半径rrefの円周上との伝達関数の2次元円筒調和スペクトル行列を取得する処理を行い、当該処理により取得された2次元円筒調和スペクトル行列Cを含むデータを、データD_Cとして、時間周波数適応フィルタ処理部5に出力する。
【0039】
短時間フーリエ変換処理部3は、オーディオ信号s(Qi)(t)(再生領域Qi(i:自然数)で再生(出力)させるオーディオ信号(時間領域の信号)、t:時間)を入力し、当該オーディオ信号s(Qi)(t)に対して、短時間フーリエ変換処理を実行する。本実施形態では、説明便宜のため、2つのオーディオ信号s(Qi)(t)が短時間フーリエ変換処理部3に入力されるものとし、再生領域Q1で再生させるオーディオ信号をオーディオ信号s(Q1)(t)とし、再生領域Q2で再生させるオーディオ信号をオーディオ信号s(Q2)(t)として、以下説明する。
【0040】
短時間フーリエ変換処理部3は、図1に示すように、時間領域窓関数処理部31-1、32-1と、離散フーリエ変換処理部32-1、32-2とを備える。
【0041】
時間領域窓関数処理部31-1は、音場制御装置100に入力される再生領域Q1で再生するオーディオ信号s(Q1)(t)を入力し、当該オーディオ信号s(Q1)(t)に時間領域の窓関数による処理(時間領域窓関数処理)を行い所定期間(単位時間)の信号を取得する。そして、時間領域窓関数処理部31-1は、時間領域窓関数処理により取得した信号を、信号s1(Q1)(t)として、離散フーリエ変換処理部32-1に出力する。
【0042】
時間領域窓関数処理部31-2は、音場制御装置100に入力される再生領域Q2で再生するオーディオ信号s(Q2)(t)を入力し、当該オーディオ信号s(Q2)(t)に時間領域の窓関数による処理(時間領域窓関数処理)を行い所定期間(単位時間)の信号を取得する。そして、時間領域窓関数処理部31-2は、時間領域窓関数処理により取得した信号を、信号s1(Q2)(t)として、離散フーリエ変換処理部32-2に出力する。
【0043】
離散フーリエ変換処理部32-1は、時間領域窓関数処理部31-1から出力される信号s1(Q1)(t)を入力し、当該信号s1(Q1)(t)(時間領域の信号)に対して、離散フーリエ変換を行い、離散フーリエ変換後のデータ(周波数領域のデータ)を、データS(Q1)(ω)(ω:角周波数、ω=2πf、f:周波数)として取得する。そして、離散フーリエ変換処理部32-1は、取得した周波数領域のデータS(Q1)(ω)をレベル比較処理部4および時間周波数適応フィルタ処理部5に出力する。
【0044】
離散フーリエ変換処理部32-2は、時間領域窓関数処理部31-2から出力される信号s1(Q2)(t)を入力し、当該信号s1(Q2)(t)(時間領域の信号)に対して、離散フーリエ変換を行い、離散フーリエ変換後のデータ(周波数領域のデータ)を、データS(Q2)(ω)(ω:角周波数、ω=2πf、f:周波数)として取得する。そして、離散フーリエ変換処理部32-2は、取得した周波数領域のデータS(Q2)(ω)をレベル比較処理部4および時間周波数適応フィルタ処理部5に出力する。
【0045】
レベル比較処理部4は、離散フーリエ変換処理部32-1から出力されるデータS(Q1)(ω)と、離散フーリエ変換処理部32-2から出力されるデータS(Q2)(ω)とを入力する。レベル比較処理部4は、データS(Q1)(ω)とデータS(Q2)(ω)とに対して周波数ごとの成分(周波数スペクトル成分)の振幅値の大小を比較する処理(レベル比較処理)を行い、当該処理結果のデータを、データD_Lev_det(ω)として、取得する。そして、レベル比較処理部4は、取得したデータD_Lev_det(ω)を時間周波数適応フィルタ処理部5に出力する。
【0046】
時間周波数適応フィルタ処理部5は、再生領域設定部1から出力されるデータD_bright_zone(Q)と、伝達関数取得処理部2から出力されるデータD_Cと、離散フーリエ変換処理部32-1から出力されるデータS(Q1)(ω)と、離散フーリエ変換処理部32-2から出力されるデータS(Q2)(ω)と、レベル比較処理部4から出力されるデータD_Lev_det(ω)とを入力する。時間周波数適応フィルタ処理部5は、データD_bright_zone(Q)、D_C、S(Q1)(ω)、データS(Q2)(ω)、および、D_Lev_det(ω)を用いて、時間周波数適応フィルタ処理を実行し、スピーカアレイSpk_arryの各スピーカを駆動するための信号(駆動信号)のデータ(時間周波数領域のデータ)D(ω)~D(ω)を取得する。なお、スピーカアレイSpk_arryは、同一円周上に等間隔に設置されたL個(L:自然数)のスピーカから構成されているものとし、i番目のスピーカを駆動するための信号のデータ(時間周波数領域のデータ)をD(ω)(i:自然数、1≦i≦L)とする。
【0047】
そして、時間周波数適応フィルタ処理部5は、上記により取得したデータ(時間周波数領域のデータ)D(ω)~D(ω)を短時間フーリエ逆変換処理部6に出力する。
【0048】
短時間フーリエ逆変換処理部6は、図1に示すように、逆離散フーリエ変換処理部61-1~61-Lと、時間領域窓関数処理部62-1~62-Lと、を備える。
【0049】
逆離散フーリエ変換処理部61-1は、時間周波数適応フィルタ処理部5から出力される駆動信号の時間周波数領域のデータD (all)(ω)を入力し、当該データD (all)(ω)に対して、逆離散フーリエ変換を行い、逆離散フーリエ変換後の信号(時間領域の信号)d(t)を取得する。そして、逆離散フーリエ変換処理部61-1は、取得した逆離散フーリエ変換後の信号(時間領域の信号)d(t)を時間領域窓関数処理部62-1に出力する。
【0050】
逆離散フーリエ変換処理部61-i(i:自然数、2≦i≦L)も逆離散フーリエ変換処理部61-1と同様の構成、機能を有している。つまり、逆離散フーリエ変換処理部61-i(i:自然数、2≦i≦L)は、時間周波数適応フィルタ処理部5から出力される駆動信号の時間周波数領域のデータD (all)(ω)を入力し、当該データD (all)(ω)に対して、逆離散フーリエ変換を行い、逆離散フーリエ変換後の信号(時間領域の信号)d(t)を取得する。そして、逆離散フーリエ変換処理部61-iは、取得した逆離散フーリエ変換後の信号(時間領域の信号)d(t)を時間領域窓関数処理部62-iに出力する。
【0051】
時間領域窓関数処理部62-1は、逆離散フーリエ変換処理部61-1から出力される逆離散フーリエ変換後の信号(時間領域の信号)d(t)を入力し、当該信号d(t)に対して時間領域の窓関数による処理(時間領域窓関数処理)を行い、当該処理により取得した信号を、信号sig_dとして、スピーカアレイSpk_arryの第1番目のスピーカSpk1に出力する。
【0052】
時間領域窓関数処理部62-i(i:自然数、2≦i≦L)も時間領域窓関数処理部62-1と同様の構成、機能を有している。つまり、時間領域窓関数処理部62-iは、逆離散フーリエ変換処理部61-iから出力される逆離散フーリエ変換後の信号(時間領域の信号)d(t)を入力し、当該信号d(t)に対して時間領域の窓関数による処理(時間領域窓関数処理)を行い、当該処理により取得した信号を、信号sig_dとして、スピーカアレイSpk_arryの第i番目のスピーカSpkiに出力する。
【0053】
スピーカアレイSpk_arryは、図2に示すように、上方からの平面視において、中心点Oから半径rの同一円周上に等間隔に設置されたL個(L:自然数)のスピーカSpk1~SpkL(図2の場合、L=16)から構成されている。
【0054】
スピーカSpki(i:自然数、1≦i≦L)は、短時間フーリエ逆変換処理部6から出力される信号sig_dにより駆動されるスピーカであり、信号sig_dに相当する音を出力(放射)する。
【0055】
<1.2:音場制御システムの動作>
以上のように構成された音場制御システム1000の動作について以下説明する。
【0056】
図3図4は、音場制御システム1000で実行される処理のフローチャートである。
【0057】
図5は、再生領域および無音領域の音圧分布を関数によりモデル化する手法を説明するための図である。図5に示したように、x軸、y軸およびz軸を設定するものとする。
【0058】
図6は、音圧P(φ)のグラフを示す図(領域Zone1(Q1)に再生させるオーディオ信号の周波数成分の振幅の方が領域Zone2(Q2)に再生させるオーディオ信号の周波数成分の振幅よりも大きい場合)である。図7は、音圧P(φ)のグラフを示す図(領域Zone2(Q2)に再生させるオーディオ信号の周波数成分の振幅の方が領域Zone1(Q1)に再生させるオーディオ信号の周波数成分の振幅よりも大きい場合(同じ場合を含む))である。
【0059】
音場制御システム1000では、2.5次元音場制御を行うものとする。各スピーカからの放射音場では3次元的放射するが、2.5次元音場制御方式は、3次元空間のスピーカと同一平面のみの音場を制御する方式である。したがって、スピーカおよび合成音圧は全て同一平面上のものとし、高さ方向は無視する。
【0060】
以下では、説明便宜のため、図2に示すように、領域Zone1(領域Q1)、領域Zone2(領域Q2)を再生領域とし、それ以外の領域を無音領域に設定し、領域Zone1(領域Q1)に再生させるオーディオ信号をオーディオ信号s(Q1)(t)(例えば、日本語の音声信号)とし、領域Zone2(領域Q2)に再生させるオーディオ信号をオーディオ信号s(Q2)(t)(例えば、英語の音声信号)とする場合(一例)について、フローチャートを参照しながら説明する。
【0061】
(ステップS1):
ステップS1では、再生領域設定処理が実行される。具体的には、以下の処理が実行される。
【0062】
再生領域設定部1は、音場制御対象とする領域(再生領域)である領域Q1、領域Q2についての情報(領域Q1、領域Q2を特定するための情報)を設定し、設定した音場制御対象とする領域(再生領域)についての情報を含むデータを、データD_bright_zone(Q)(Q={Q1,Q2})として、時間周波数適応フィルタ処理部5に出力する。
【0063】
(ステップS2):
ステップS2では、伝達関数取得処理が実行される。具体的には、以下の処理が実行される。
【0064】
伝達関数取得処理部2は、スピーカアレイSpk_arryを構成するL個のスピーカのそれぞれと半径rrefの円周上との伝達関数の2次元円筒調和スペクトル行列を取得する処理を実行する。
【0065】
具体的には、スピーカアレイSpk_arryを構成するL個のスピーカのi番目(i:自然数、1≦i≦L)のスピーカの位置をrとし、各スピーカの駆動信号をDとし(下記数式のD)とし、駆動信号Dにより合成された中心点をOとする半径rrefの円周上の音場の2次元円筒調和スペクトルをa(rref)とし(下記数式のa(rref)とする。
【数1】
このとき、スピーカアレイSpk_arryのL個のスピーカのそれぞれと、中心点Oから半径rrefの円周上との伝達関数の2次元円筒調和スペクトル行列C(rref)を下記数式とする。
【数2】
このとき、i番目(i:自然数、1≦i≦L)のスピーカと位置(rref,φ)(φ:xy平面において、x軸となす角度)との間の伝達関数をH(rref,φ)とすると(H():第1種ハンケル関数)、上記2次元円筒調和スペクトル行列C(rref)の要素cn,i(rref)は、下記数式により取得される。
【数3】
j:虚数単位
しかし、実際にはφを連続的に計測するのは難しいため、中心点Oから半径rrefの円周上に等間隔にM個(M:自然数)のマイクロフォンを設置し、伝達関数H(rref,φ)を測定する。この場合、cn,i(rref)は、下記数式により近似的に取得される。
【数4】
伝達関数取得処理部2は、上記数式に相当する処理を実行することで、スピーカアレイSpk_arryを構成するL個のスピーカのそれぞれと半径rrefの円周上との伝達関数の2次元円筒調和スペクトル行列の各要素を取得する。そして、伝達関数取得処理部2は、(数式2)の2次元円筒調和スペクトル行列C(rref)を取得する。
【0066】
そして、伝達関数取得処理部2は、当該処理により取得された2次元円筒調和スペクトル行列Cを含むデータを、データD_Cとして、時間周波数適応フィルタ処理部5に出力する。
【0067】
(ステップS3~S5):
ステップS3~S5では、音場制御装置100に入力される各オーディオ信号s(Qi)(t)(本実施形態では、オーディオ信号s(Q1)(t)およびオーディオ信号s(Q2)(t))について、短時間フーリエ変換処理が実行される。具体的には、以下の処理が実行される。
【0068】
ステップS3において、音場制御装置100に入力される全てのオーディオ信号s(Qi)(t)(本実施形態では、オーディオ信号s(Q1)(t)およびオーディオ信号s(Q2)(t))を対象として、ループ処理(ループ1)が開始(実行)される。
【0069】
ステップS4において、オーディオ信号s(Qi)に対して、短時間フーリエ変換処理が実行される。具体的には、時間領域窓関数処理部31-i(i=1、2)は、音場制御装置100に入力される再生領域Qi(i=1、2)で再生するオーディオ信号s(Qi)(t)を入力し、当該オーディオ信号s(Qi)(t)に時間領域の窓関数g(t)による処理(時間領域窓関数処理)(例えば、下記数式の窓関数g(t)をオーディオ信号s(Qi)(t)に畳み込む処理)を実行し、所定期間(単位時間)の信号s1(Qi)(t)を取得する。
【数5】
t:各時刻(サンプル単位)
T:短時間フーリエ変換の対象とするフレーム数
s1(Qi)(t)=g(t)*s(Qi)(t)
*:畳み込み処理を示す演算子
そして、時間領域窓関数処理部31-iは、時間領域窓関数処理により取得した信号を、信号s1(Qi)(t)として、離散フーリエ変換処理部32-iに出力する。
【0070】
離散フーリエ変換処理部32-i(i=1,2)は、時間領域窓関数処理部31-iから出力される信号s1(Qi)(t)を入力し、当該信号s1(Qi)(t)(時間領域の信号)に対して、離散フーリエ変換を行い(例えば、下記数式に相当する処理を行い)、離散フーリエ変換後のデータ(周波数領域のデータ)を、データS(Qi)(ω)(ω:角周波数、ω=2πf、f:周波数)として取得する。
【数6】
そして、離散フーリエ変換処理部32-iは、取得した周波数領域のデータS(Qi)(ω)をレベル比較処理部4および時間周波数適応フィルタ処理部5に出力する。
【0071】
ステップS5において、音場制御装置100に入力される全てのオーディオ信号s(Qi)(t)(本実施形態では、オーディオ信号s(Q1)(t)およびオーディオ信号s(Q2)(t))に対して、ループ処理(ループ1)が実行されたか否かを判定し、(1)音場制御装置100に入力される全てのオーディオ信号s(Qi)(t)に対してループ処理(ループ1)が実行されたと判定された場合、処理をステップS6に進め、(2)音場制御装置100に入力される全てのオーディオ信号s(Qi)(t)に対してループ処理(ループ1)が実行されていない場合、処理をステップS3に戻し、ループ処理(ループ1)を繰り返し実行する。
【0072】
(ステップS6):
ステップS6(ステップS61~S67)では、時間周波数適応フィルタ処理が実行される。具体的には、以下の処理が実行される。
【0073】
(ステップS61):
ステップS61において、時間周波数適応フィルタ処理のループ処理(ループ2)が開始(実行)される。なお、ループ処理(ループ2)は、データS(Qi)(ω)(本実施形態では、S(Q1)(ω)およびS(Q2)(ω))の全ての周波数成分を対象として、実行される。
【0074】
(ステップS62):
ステップS62において、レベル比較処理部4は、レベル比較処理を行う。
【0075】
具体的には、レベル比較処理部4は、離散フーリエ変換処理部32-1から出力されるデータS(Q1)(ω)と、離散フーリエ変換処理部32-2から出力されるデータS(Q2)(ω)とを入力する。レベル比較処理部4は、データS(Q1)(ω)とデータS(Q2)(ω)とに対して周波数ごとの成分(周波数スペクトル成分)の振幅値の大小を比較する処理(レベル比較処理)を行う。具体的には、データS(Qi)(ω)に含まれる周波数成分をS(Qi)(ω)(ω:整数、-N≦ω≦Nとする)とすると、
(1)|S(Q1)(ω)|>|S(Q1)(ω)|である場合、レベル比較処理部4は、処理をステップS63に進め、
(2)|S(Q1)(ω)|>|S(Q1)(ω)|ではない場合、レベル比較処理部4は、処理をステップS64に進める。なお、|x|は、xの絶対値を表す。
【0076】
なお、レベル比較処理部4は、上記の判定処理の結果のデータを、データD_Lev_det(ω)(周波数ωごとのレベル判定結果データを含むデータ)として、取得し、取得したデータD_Lev_det(ω)を時間周波数適応フィルタ処理部5に出力する。
【0077】
(ステップS63、S64):
ステップS63において、|S(Q1)(ω)|>|S(Q1)(ω)|である場合の窓関数の設定処理が実行される。具体的には、以下の処理が実行される。
【0078】
時間周波数適応フィルタ処理部5は、レベル比較処理部4から出力されるデータD_Lev_det(ω)から、|S(Q1)(ω)|>|S(Q1)(ω)|であることを把握し、
(1)Q1のデータ用の窓関数をHann窓に設定し、かつ、
(2)Q2のデータ用の窓関数を矩形窓に設定する。
【0079】
つまり、時間周波数適応フィルタ処理部5は、周波数成分ωのスペクトルの絶対値(振幅)が大きい方の信号(データ)に対して、Hann窓を設定し、周波数成分ωのスペクトルの絶対値(振幅)が小さい方の信号(データ)に対して、矩形窓を設定する。
【0080】
そして、処理をステップS65に進める。
【0081】
一方、ステップS64において、|S(Q1)(ω)|>|S(Q1)(ω)|ではない場合の窓関数の設定処理が実行される。具体的には、以下の処理が実行される。
【0082】
時間周波数適応フィルタ処理部5は、レベル比較処理部4から出力されるデータD_Lev_det(ω)から、|S(Q1)(ω)|>|S(Q1)(ω)|ではないことを把握し、
(1)Q2のデータ用の窓関数をHann窓に設定し、かつ、
(2)Q1のデータ用の窓関数を矩形窓に設定する。
【0083】
つまり、時間周波数適応フィルタ処理部5は、周波数成分ωのスペクトルの絶対値(振幅)が大きい方の信号(データ)に対して、Hann窓を設定し、周波数成分ωのスペクトルの絶対値(振幅)が小さい方の信号(データ)に対して、矩形窓を設定する。
【0084】
そして、処理をステップS65に進める。
【0085】
(ステップS65):
ステップS65において、2次元円筒調和スペクトルの取得処理が実行される。具体的には、以下の処理が実行される。
【0086】
ここで、窓関数を矩形に設定したときの2次元円筒調和スペクトルan,rect(Φ,φ)、および、窓関数をHann窓に設定したときの2次元円筒調和スペクトルan,hann(Φ,φ)の取得方法について、説明する。
【0087】
音の聞こえる方向の音圧を「1」、音の聞こえない方向の音圧を「0」とすると、窓関数を矩形窓に設定した場合の中心点Oから半径rrefの円周上の音圧(音圧分布)Prect(φ)(図5を参照)は、下記数式により表すことができる(矩形波としてモデル化することができる)。
【数7】
φ:矩形波の中心の方位角
Φ:矩形波の幅
そして、上記数式で表される音圧Prect(φ)に対して空間フーリエ変換を行うことで、上記数式の2次元円筒調和スペクトルan,rect(Φ,φ)(窓関数を矩形窓に設定したときの2次元円筒調和スペクトルan,rect(Φ,φ))は、下記数式により取得される。
【数8】
φ:矩形波(矩形窓の矩形部分に相当)の中心の方位角
Φ:矩形波(矩形窓の矩形部分に相当)の長さ
n:空間周波数を示す値(n:整数、-N≦n≦Nとする)
また、上記と同様に、音の聞こえる方向の音圧を「1」、音の聞こえない方向の音圧を「0」とすると、窓関数をHann窓に設定した場合の中心点Oから半径rrefの円周上の音圧(音圧分布)Phann(φ)は、下記数式により表すことができる(下記数式によりモデル化することができる)。
【数9】
そして、上記数式で表される音圧Phann(φ)に対して空間フーリエ変換を行うことで、上記数式の2次元円筒調和スペクトルan,hann(Φ,φ)(窓関数をHann窓に設定したときの2次元円筒調和スペクトルan,hann(Φ,φ))は、下記数式により取得される。
【数10】
φ:Hann窓の波形部分(値が0でない部分)の中心の方位角
Φ:Hann窓の波形部分(値が0でない部分)の長さ
n:空間周波数を示す値(n:整数、-N≦n≦Nとする)
時間周波数適応フィルタ処理部5は、再生領域設定部1から出力されるデータD_bright_zone(Q)から、再生領域Q1、Q2の情報(角度φ、長さΦ、中心点Oからの半径rref)を取得し、取得した再生領域Q1、Q2の情報と、レベル比較処理部4での判定結果とに基づいて、(数式8)または(数式10)に相当する処理を行うことで、2次元円筒調和スペクトルan,rect(Φ,φ)または2次元円筒調和スペクトルan,hann(Φ,φ)を取得する。
【0088】
つまり、時間周波数適応フィルタ処理部5は、以下のように処理を行う。
(1)領域Zone1(Q1)に再生させるオーディオ信号の周波数成分の振幅の方が領域Zone2(Q2)に再生させるオーディオ信号の周波数成分の振幅よりも大きい場合、すなわち、|S(Q1)(ω)|>|S(Q2)(ω)|である場合、時間周波数適応フィルタ処理部5は、(A)領域Zone1(Q1)に再生させるオーディオ信号の周波数成分データS(Q1)(ω)に、Hann窓を適用した場合の2次元円筒調和スペクトルan,hann(Φ,φ)を適用し、(B)領域Zone2(Q2)に再生させるオーディオ信号の周波数成分データS(Q2)(ω)に、矩形窓を適用した場合の2次元円筒調和スペクトルan,rect(Φ,φ)を適用する。
【0089】
なお、周波数成分ω=nについて、Hann窓を適用して2次元円筒調和スペクトルを取得する場合、
n,win(n)=an,hann(Φ,φ
win(n)=hann
win(n)∈{rect,hann}
と表記し、周波数成分ω=nについて、矩形窓を適用して2次元円筒調和スペクトルを取得する場合、
n,win(n)=an,rect(Φ,φ
win(n)=rect
win(n)∈{rect,hann}
と表記することとする(以下、同様)。
【0090】
また、上記の場合の音圧P(φ)のグラフを図6に示す。図6に示すように、領域Zone1(Q1)(0≦φ≦π/2)において、Hann窓が適用され、領域Zone2(Q2)(π≦φ≦3π/2)において、矩形窓が適用されている。
(2)領域Zone2(Q2)に再生させるオーディオ信号の周波数成分の振幅の方が領域Zone1(Q1)に再生させるオーディオ信号の周波数成分の振幅よりも大きい場合(等しい場合を含む)、すなわち、|S(Q1)(ω)|≧|S(Q2)(ω)|である場合、時間周波数適応フィルタ処理部5は、(A)領域Zone1(Q1)に再生させるオーディオ信号の周波数成分データS(Q1)(ω)に、矩形窓を適用した場合の2次元円筒調和スペクトルan,rect(Φ,φ)を適用し、(B)領域Zone2(Q2)に再生させるオーディオ信号の周波数成分データS(Q2)(ω)に、Hann窓を適用した場合の2次元円筒調和スペクトルan,hann(Φ,φ)を適用する。
【0091】
上記の場合の音圧P(φ)のグラフを図7に示す。図7に示すように、領域Zone1(Q1)(0≦φ≦π/2)において、矩形窓が適用され、領域Zone2(Q2)(π≦φ≦3π/2)において、Hann窓が適用されている。
【0092】
時間周波数適応フィルタ処理部5は、上記処理により、周波数成分ごとに(ω(=n(n:整数、-N≦n≦N))ごとに)2次元円筒調和スペクトルan,win(n)を取得する。
【0093】
(ステップS66):
ステップS66において、データS(Qi)(ω)(本実施形態では、S(Q1)(ω)およびS(Q2)(ω))の全ての周波数成分ω(-N≦ω≦N)(ωはnに対応)について、ループ処理(ループ2)が実行されたか否かを判定し、(1)全ての周波数成分ωについて、ループ処理(ループ2)が実行されたと判定された場合、処理をステップS67に進め、(2)全ての周波数成分ωについて、ループ処理(ループ2)が実行されていないと判定された場合、処理をステップS61に戻し、ループ処理(ループ2)を繰り返し実行する。
【0094】
(ステップS67):
ステップS67において、時間周波数領域の駆動信号の取得処理が実行される。具体的には、以下の処理が実行される。
【0095】
時間周波数適応フィルタ処理部5は、下記数式に相当する処理を行い、再生領域Qiに再生させるように設定したオーディオ信号(信号s(Qi)(t))から取得した時間周波数領域の駆動信号D^(Qi)(スピーカアレイSpk_arryのL個のスピーカを駆動するための駆動信号(時間周波数領域の信号))を取得する。
【数11】
:行列Xのエルミート転置行列(随伴行列)
(Qi):再生領域Qiに再生させるオーディオ信号の周波数n(=ω)の周波数成分データ(データQ(Qi1)(ω)の要素)(―N≦n≦N)
n,win(n):窓関数をwin(n)(win(n)∈{rect,hann})とする空間周波数n(-N≦n≦N))の2次元円筒調和スペクトル
なお、win(n)は、ループ処理(ループ2)で取得されたデータ(矩形窓を適用するか、Hann窓を適用するかを示すデータ)である。
【0096】
そして、時間周波数適応フィルタ処理部5は、再生領域Qiに再生させるように設定したオーディオ信号(信号s(Qi)(t))から取得した時間周波数領域の駆動信号D^(Qi)を重ね合わせることで(全てのオーディオ信号s(Qi)(t)から取得した駆動信号D^(Qi)を重ね合わせることで)、スピーカアレイSpk_arryのL個のスピーカを駆動するための駆動信号(時間周波数領域の信号)D^(all)を取得する。つまり、時間周波数適応フィルタ処理部5は、下記数式に相当する処理を実行することで、スピーカアレイSpk_arryのL個のスピーカを駆動するための駆動信号(時間周波数領域の信号)D^(all)を取得する。
【数12】
Q={Q,Q
そして、時間周波数適応フィルタ処理部5は、上記処理により取得したスピーカアレイSpk_arryのL個のスピーカを駆動するための駆動信号(時間周波数領域の信号)D^(all)(=[D (all)(r),・・・,D (all)(r)]=[D (all)(ω,r),・・・,D (all)(ω,r)])を短時間フーリエ逆変換処理部に出力する。
【0097】
(ステップS7):
ステップS7において、短時間フーリエ逆変換処理が実行される。具体的には、以下の処理が実行される。
【0098】
逆離散フーリエ変換処理部61-i(i:自然数、1≦i≦L)は、時間周波数適応フィルタ処理部5から出力される駆動信号の時間周波数領域のデータD (all)(ω)(=D (all)(r)=D (all)(ω,r))(D (all)(ω)は、1×Lの行列D^(all)のi番目(i列目)の要素)を入力し、当該データD (all)(ω)に対して、逆離散フーリエ変換を行う。つまり、逆離散フーリエ変換処理部61-iは、下記数式に相当する処理を行い、スピーカアレイSpk_arryのi番目のスピーカを駆動する信号d(t)(時間領域の駆動信号d(t))を取得する。
【数13】
そして、逆離散フーリエ変換処理部61-1は、上記処理により取得した逆離散フーリエ変換後の信号(時間領域の信号)d(t)を時間領域窓関数処理部62-iに出力する。
【0099】
時間領域窓関数処理部62-i(i:自然数、1≦i≦L)は、逆離散フーリエ変換処理部61-iから出力される逆離散フーリエ変換後の信号(時間領域の信号)d(t)を入力し、当該信号d(t)に対して時間領域の窓関数による処理(時間領域窓関数処理)(例えば、(数式5)の窓関数g(t)を信号d(t)に畳み込む処理)を実行し、を行い、当該処理により取得した信号を、信号sig_d(t)(=g(t)*d(t)(*:畳み込み処理を示す演算子))として、スピーカアレイSpk_arryの第i番目のスピーカSpkiに出力する。
【0100】
(ステップS8):
ステップS8において、スピーカアレイSpk_arryの第i番目のスピーカSpkiが、ステップS7により取得された駆動信号sig_d(t)により駆動されることにより、(1)再生領域Zone1(Q1)にオーディオ信号s(Q1)(t)が再生され、かつ、(2)再生領域Zone2(Q2)にオーディオ信号s(Q2)(t)が再生され、かつ、(3)再生領域Zone1(Q1)、再生領域Zone2(Q2)以外の領域には、音が再生されない(無音領域(音が聞こえない領域となる)となる)。
【0101】
≪まとめ≫
以上のように、音場制御システム1000では、マルチスポット再生処理において、複数の再生領域(本実施形態では、2つの再生領域Zone1(Q1)、Zone2(Q2))で再生するオーディオ信号の短時間フーリエ変換の周波数ごとの振幅の大きさを比較し、振幅の大きい方(音圧レベルの大きい方)にHann窓関数、振幅の小さい方(音圧レベルの小さい方)に矩形窓関数を適用することで(複数の入力オーディオ信号を短時間周波数分析し、音圧レベルの大きい方をHann窓、小さい方を矩形窓として各時刻、各周波数ごとに独立なフィルタを適応的に算出し、当該フィルタを適用することで)、スピーカアレイSpk_arryの各スピーカを駆動するための駆動信号を取得する。つまり、音場制御システム1000では、マルチスポット再生処理において、複数の再生領域で再生するオーディオ信号の短時間フーリエ変換の周波数ごとの振幅の大きさに応じて、周波数および時間ごとに適応的に窓関数を切り替える処理(時間周波数適応フィルタ処理)により、スピーカアレイSpk_arryの各スピーカを駆動するための駆動信号を取得する。
【0102】
音場制御システム1000において、このように処理するのは、以下の根拠(事実)に基づく。
(1)振幅(各周波数(周波数ω(-N≦ω≦N)に相当)の周波数成分の振幅)の大きい方(音圧レベルの大きい方)のオーディオ信号は、自身の音(自身の再生領域での音)を目的領域外(例えば、隣の領域)にできるだけ漏らさないようにするのが良く、かつ、自身の音は目的領域外(例えば、隣の領域)で再生される音よりも大きいため、目的領域外(例えば、隣の領域)の音漏れには頑健であるので、Hann窓を適用した処理を行うのが好ましい。
(2)一方、振幅(各周波数(周波数ω(-N≦ω≦N)に相当)の周波数成分の振幅)の小さい方(音圧レベルの小さい方)のオーディオ信号は、自身の音(自身の再生領域での音)は目的領域外(例えば、隣の領域)よりも小さいためできるだけ再生領域での出力パワーを稼ぐようにするのが良く、かつ、自身の音は目的領域外(例えば、隣の領域)で再生される音よりも小さいため、目的領域外(例えば、隣の領域)に漏れても影響は小さいので、矩形窓を適用した処理を行うのが好ましい。
【0103】
なお、参考のため、図8に、直線スピーカアレイを用いた場合の駆動信号の空間フーリエ変換(角度スペクトル)を示す。図8から、Hann窓の方が低い次数にパワーが集中しているため、次数の打ち切りに頑健であることが分かる。そのため、有限個のスピーカを用いた場合はHann窓の方が再生領域と無音領域と間の音圧レベル差が大きくなる。
【0104】
音場制御システム1000では、上記で説明したように、マルチスポット再生処理を、オーディオ信号を短時間フーリエ変換した各周波数成分の振幅を比較して空間窓関数(空間フーリエ変換を行うときに適用する窓関数)を適用後、逆フーリエ変換した音信号を逐次再生するだけの単純な処理により実現できるため、マルチスポット再生処理をリアルタイム処理(所定の時間内に処理が完了することが保証される処理)で容易に実現できる。すなわち、音場制御システム1000では、上記のように処理することで、リアルタイム処理により、高精度なマルチスポット再生(再生信号適応型マルチスポット再生)を実行することができる。
【0105】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、上記実施形態と同様の部分については、同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0106】
<2.1:音場制御システムの構成>
図9は、第2実施形態に係る音場制御システム2000の概略構成図である。
【0107】
図10は、第1実施形態に係る音場制御システム2000のスピーカアレイSpk_arryの概略構成図である。なお、図10に示したように、x軸、y軸およびz軸を設定するものとする。また、xyz空間(3次元空間)の原点は、図10に点Oに設定するものとする。
【0108】
第2実施形態の音場制御システム2000は、入力オーディオ信号の数が4つ(音源の数が4つ。例えば、日英中独の言語による発話が考えられる。)であり、当該オーディオ信号S(Q1)(t)~S(Q4)(t)は、それぞれ、図10に示した再生領域Zone1~4(Q1~Q4)に再生させるオーディオ信号(音源)である。なお、再生領域Zone1~4(Q1~Q4)は、図10に示すように設定されるものとする。
【0109】
第2実施形態の音場制御システム2000は、第1実施形態の音場制御システム1000において、短時間フーリエ変換処理部3を短時間フーリエ変換処理部3Aに置換し、レベル比較処理部4をレベル比較処理部4Aに置換し、時間周波数適応フィルタ処理部5を時間周波数適応フィルタ処理部5Aに置換した構成を有している。
【0110】
短時間フーリエ変換処理部3Aは、図9に示すように、短時間フーリエ変換処理部3において、オーディオ信号S(Q3)(t)に対して短時間フーリエ変換処理を実行するための時間領域窓関数処理部31-3、離散フーリエ変換処理部32-3、および、オーディオ信号S(Q4)(t)に対して短時間フーリエ変換処理を実行するための時間領域窓関数処理部31-4、離散フーリエ変換処理部32-4を追加した構成を有している。なお、時間領域窓関数処理部31-3、31-4は、時間領域窓関数処理部31-1と同様の構成、機能を有しており、離散フーリエ変換処理部32-3、32-4は、離散フーリエ変換処理部32-1と同様の構成、機能を有している。
【0111】
レベル比較処理部4Aは、レベル比較処理部4と同様の機能を有しており、さらに、離散フーリエ変換処理部32-3から出力される信号S(Q3)(ω)と、離散フーリエ変換処理部32-4から出力される信号S(Q4)(ω)とを入力する。そして、レベル比較処理部4Aは、データS(Qi)(ω)(i:自然数、1≦i≦4)と、領域Qiに隣接する領域を領域adj(Qi)とすると、データS(adj(Qi))(ω)とに対して周波数ごとの成分(周波数スペクトル成分)の振幅値の大小を比較する処理(レベル比較処理)を行う(この処理は、領域Q1~Q4の全てについて行う)。そして、レベル比較処理部4Aは、当該処理結果のデータを、データD_Lev_det(ω)として、取得する。そして、レベル比較処理部4Aは、取得したデータD_Lev_det(ω)を時間周波数適応フィルタ処理部5Aに出力する。
【0112】
時間周波数適応フィルタ処理部5Aは、再生領域設定部1から出力されるデータD_bright_zone(Q)(再生領域の設定情報を含むデータ)と、伝達関数取得処理部2から出力されるデータD_Cと、離散フーリエ変換処理部32-1~32-4から出力されるデータS(Q1)(ω)~S(Q4)(ω)と、レベル比較処理部4Aから出力されるデータD_Lev_det(ω)とを入力する。時間周波数適応フィルタ処理部5Aは、データD_bright_zone(Q)、D_C、S(Q1)(ω)~データS(Q4)(ω)、および、D_Lev_det(ω)を用いて、時間周波数適応フィルタ処理を実行し、スピーカアレイSpk_arryの各スピーカを駆動するための信号(駆動信号)のデータ(時間周波数領域のデータ)D(ω)~D(ω)を取得する。なお、スピーカアレイSpk_arryは、同一円周上に等間隔に設置されたL個(L:自然数)のスピーカから構成されているものとし、i番目のスピーカを駆動するための信号のデータ(時間周波数領域のデータ)をD(ω)(i:自然数、1≦i≦L)とする。
【0113】
そして、時間周波数適応フィルタ処理部5Aは、上記により取得したデータ(時間周波数領域のデータ)D(ω)~D(ω)を短時間フーリエ逆変換処理部6に出力する。
【0114】
<2.2:音場制御システムの動作>
以上のように構成された音場制御システム2000の動作について以下説明する。
図11図12は、音場制御システム2000で実行される処理のフローチャートである。
【0115】
図13は、音圧P(φ)のグラフを示す図である。具体的には、図13は、再生するオーディオ信号の周波数成分の振幅が、大きい方から、領域Zone1(Q1)、領域Zone1(Q2)、領域Zone1(Q4)、領域Zone1(Q3)の順である場合(|S(Q1)(ω)|>|S(Q2)(ω)|>|S(Q4)(ω)|>|S(Q3)(ω)|である場合)の音圧P(φ)のグラフを示す図である。
【0116】
第1実施形態の音場制御システム1000では、再生領域が2つであったが、本実施形態では、再生領域が4つ設定されている。これに対処するために、本実施形態の音場制御システム2000では、時間周波数適応フィルタ処理部5Aで用いる空間フーリエ変換用の窓関数を、第1実施形態で説明した矩形窓の窓関数、Hann窓の窓関数に加えて、中心に対して非対称(左右非対称)である特性の窓関数を用いる。
【0117】
以下では、説明便宜のため、図10に示すように、領域Zone1(領域Q1)、領域Zone2(領域Q2)、領域Zone3(領域Q3)、領域Zone4(領域Q4)、を再生領域とし、領域Zone1(領域Q1)~領域Zone4(領域Q4)に再生させるオーディオ信号を、それぞれ、オーディオ信号s(Q1)(t)~s(Q4)(t)とする場合(一例)について、フローチャートを参照しながら説明する。
【0118】
(ステップS1):
ステップS1では、第1実施形態と同様に、再生領域設定処理が実行される。具体的には、以下の処理が実行される。
【0119】
再生領域設定部1は、音場制御対象とする領域(再生領域)である領域Q1~領域Q4についての情報(領域Q1~領域Q4を特定するための情報)を設定し、設定した音場制御対象とする領域(再生領域)についての情報を含むデータを、データD_bright_zone(Q)(Q={Q1,Q2,Q3,Q4})として、時間周波数適応フィルタ処理部5に出力する。
【0120】
(ステップS2):
ステップS2では、第1実施形態のステップS2と同様の処理が実行される。
【0121】
(ステップS3~S5):
ステップS3~S5では、第1実施形態のステップS3~S5と同様の処理が実行される。なお、本実施形態では、入力オーディオ信号の数が4つなので、オーディオ信号S(Q3)(t)、S(Q4)(t)についても短時間フーリエ変換処理が実行される。
【0122】
(ステップS6A):
ステップS6A(ステップS61A~S67A)では、時間周波数適応フィルタ処理が実行される。具体的には、以下の処理が実行される。
【0123】
(ステップS61A):
ステップS61において、時間周波数適応フィルタ処理のループ処理(ループ2)が開始(実行)される。なお、ループ処理(ループ2)は、データS(Qi)(ω)(本実施形態では、S(Q1)(ω)~S(Q4)(ω))の全ての周波数成分を対象として、実行される。
【0124】
(ステップS62A):
ステップS62Aにおいて、レベル比較処理部4Aは、レベル比較処理を行う。
【0125】
具体的には、レベル比較処理部4Aは、データS(Qi)(ω)(i:自然数、1≦i≦4)と、領域Qiに隣接する領域を領域adj(Qi)とすると、データS(adj(Qi))(ω)とに対して周波数ごとの成分(周波数スペクトル成分)の振幅値の大小を比較する処理(レベル比較処理)を行う(この処理は、領域Q1~Q4の全てについて行う)。そして、レベル比較処理部4Aは、当該処理結果のデータを、データD_Lev_det(ω)として、取得する。そして、レベル比較処理部4Aは、取得したデータD_Lev_det(ω)を時間周波数適応フィルタ処理部5Aに出力する。
【0126】
具体的には、データS(Qi)(ω)に含まれる周波数成分をS(Qi)(ω)(ω:整数、-N≦ω≦Nとする)とすると、
(1)|S(Qi)(ω)|>|S(adj(Qi))(ω)|である場合、レベル比較処理部4Aは、処理をステップS63Aに進め、
(2)|S(Qi)(ω)|>|S(adj(Qi))(ω)|ではない場合、レベル比較処理部4Aは、処理をステップS64に進める。なお、|x|は、xの絶対値を表す。
【0127】
なお、レベル比較処理部4Aは、上記の判定処理の結果のデータを、データD_Lev_det(ω)(周波数ωごとのレベル判定結果データを含むデータ)として取得し、取得したデータD_Lev_det(ω)を時間周波数適応フィルタ処理部5Aに出力する。
【0128】
(ステップS63A、S64A):
ステップS63Aにおいて、|S(Qi)(ω)|>|S(adj(Qi))(ω)|である場合の窓関数の設定処理が実行される。具体的には、以下の処理が実行される。
【0129】
時間周波数適応フィルタ処理部5Aは、レベル比較処理部4Aから出力されるデータD_Lev_det(ω)から、|S(Qi)(ω)|>|S(adj(Qi))(ω)|であることを把握し、
(1)Qiのデータ用の窓関数(隣接側の半分の領域についての窓関数)をHann窓に設定し、かつ、
(2)adj(Qi)(Qiに隣接する領域)のデータ用の窓関数(隣接側の半分の領域についての窓関数)を矩形窓に設定する。
【0130】
つまり、時間周波数適応フィルタ処理部5Aは、周波数成分ωのスペクトルの絶対値(振幅)が大きい方の信号(データ)に対して、隣接側の半分の領域についての窓関数をHann窓関数に設定し、周波数成分ωのスペクトルの絶対値(振幅)が小さい方の信号(データ)に対して、隣接側の半分の領域についての窓関数を矩形窓関数に設定する。
【0131】
そして、処理をステップS65Aに進める。
【0132】
一方、ステップS64Aにおいて、|S(Qi)(ω)|>|S(adj(Qi))(ω)|ではない場合の窓関数の設定処理が実行される。具体的には、以下の処理が実行される。
【0133】
時間周波数適応フィルタ処理部5Aは、レベル比較処理部4Aから出力されるデータD_Lev_det(ω)から、|S(Qi)(ω)|>|S(adj(Qi))(ω)|ではないことを把握し、
(1)adj(Qi)のデータ用の窓関数(隣接側の半分の領域についての窓関数)をHann窓に設定し、かつ、
(2)Qiのデータ用の窓関数(隣接側の半分の領域についての窓関数)を矩形窓に設定する。
【0134】
つまり、時間周波数適応フィルタ処理部5Aは、周波数成分ωのスペクトルの絶対値(振幅)が大きい方の信号(データ)に対して、隣接側の半分の領域についての窓関数をHann窓関数に設定し、周波数成分ωのスペクトルの絶対値(振幅)が小さい方の信号(データ)に対して、隣接側の半分の領域についての窓関数を矩形窓に設定する。
【0135】
そして、処理をステップS65Aに進める。
【0136】
(ステップS65A):
ステップS65Aにおいて、2次元円筒調和スペクトルの取得処理が実行される。具体的には、以下の処理が実行される。
【0137】
第1実施形態では、再生領域が2つだったので、空間フーリエ変換の窓関数(2次元円筒調和スペクトルan,win(n)(Φ,φ)を取得するための窓関数)は、矩形窓関数とHann窓関数の2つであったが、本実施形態では、再生領域が4つ(3つ以上)なので、空間フーリエ変換の窓関数に、非対称窓の窓関数を追加する。つまり、本実施形態で空間フーリエ変換の窓関数として、適用される窓関数は、下記の4つの窓関数である。
(1)低角度側の半分の領域の音圧が、隣接する領域(再生領域)の音圧よりも高く、かつ、高角度側の半分の領域の音圧が、隣接する領域(再生領域)の音圧よりも高い場合(周波数成分ωのスペクトルの絶対値(振幅)について、低角度側の半分の領域で再生させるオーディオ信号の周波数成分ωのスペクトルの振幅が、隣接する領域で再生させるオーディオ信号の周波数成分ωのスペクトルの振幅よりも高く、かつ、高角度側の半分の領域で再生させるオーディオ信号の周波数成分ωのスペクトルの振幅が、隣接する領域で再生させるオーディオ信号の周波数成分ωのスペクトルの振幅よりも高い場合)(図13の領域Q1の場合)
適用する窓関数:Hann窓関数(下記数式に相当)
【数14】
(2)低角度側の半分の領域の音圧が、隣接する領域(再生領域)の音圧よりも低く、かつ、高角度側の半分の領域の音圧が、隣接する領域(再生領域)の音圧よりも低い場合(周波数成分ωのスペクトルの絶対値(振幅)について、低角度側の半分の領域で再生させるオーディオ信号の周波数成分ωのスペクトルの振幅が、隣接する領域で再生させるオーディオ信号の周波数成分ωのスペクトルの振幅よりも低く、かつ、高角度側の半分の領域で再生させるオーディオ信号の周波数成分ωのスペクトルの振幅が、隣接する領域で再生させるオーディオ信号の周波数成分ωのスペクトルの振幅よりも低い場合)(図13の領域Q3の場合)
適用する窓関数:矩形窓関数(下記数式に相当)
【数15】
(3)低角度側の半分の領域の音圧が、隣接する領域(再生領域)の音圧よりも低く、かつ、高角度側の半分の領域の音圧が、隣接する領域(再生領域)の音圧よりも高い場合(周波数成分ωのスペクトルの絶対値(振幅)について、低角度側の半分の領域で再生させるオーディオ信号の周波数成分ωのスペクトルの振幅が、隣接する領域で再生させるオーディオ信号の周波数成分ωのスペクトルの振幅よりも低く、かつ、高角度側の半分の領域で再生させるオーディオ信号の周波数成分ωのスペクトルの振幅が、隣接する領域で再生させるオーディオ信号の周波数成分ωのスペクトルの振幅よりも高い場合)(図13の領域Q2の場合)
適用する窓関数:非対称窓関数(低角度側の半分の領域が矩形窓関数で、高角度側の半分の領域がHann窓関数である窓関数)(下記数式に相当)
【数16】
(4)低角度側の半分の領域の音圧が、隣接する領域(再生領域)の音圧よりも高く、かつ、高角度側の半分の領域の音圧が、隣接する領域(再生領域)の音圧よりも低い場合(周波数成分ωのスペクトルの絶対値(振幅)について、低角度側の半分の領域で再生させるオーディオ信号の周波数成分ωのスペクトルの振幅が、隣接する領域で再生させるオーディオ信号の周波数成分ωのスペクトルの振幅よりも高く、かつ、高角度側の半分の領域で再生させるオーディオ信号の周波数成分ωのスペクトルの振幅が、隣接する領域で再生させるオーディオ信号の周波数成分ωのスペクトルの振幅よりも低い場合)(図13の領域Q4の場合)
適用する窓関数:非対称窓関数(低角度側の半分の領域がHann窓関数で、高角度側の半分の領域が矩形窓関数である窓関数)(下記数式に相当)
【数17】
そして、上記(1)の場合、時間周波数適応フィルタ処理部5Aは、空間フーリエ変換の窓関数(2次元円筒調和スペクトルan,win(n)(Φ,φ)を取得するための窓関数)をHann窓関数に設定し、第1実施形態と同様に、2次元円筒調和スペクトルan,win(n)(Φ,φ)を取得する。なお、この場合、win(n)=hannである。
【0138】
上記(2)の場合、時間周波数適応フィルタ処理部5Aは、空間フーリエ変換の窓関数(2次元円筒調和スペクトルan,win(n)(Φ,φ)を取得するための窓関数)を矩形窓関数に設定し、第1実施形態と同様に、2次元円筒調和スペクトルan,win(n)(Φ,φ)を取得する。なお、この場合、win(n)=rectである。
【0139】
上記(3)の場合、時間周波数適応フィルタ処理部5Aは、空間フーリエ変換の窓関数(2次元円筒調和スペクトルan,win(n)(Φ,φ)を取得するための窓関数)を非対称窓関数(低角度側の半分の領域が矩形窓関数で、高角度側の半分の領域がHann窓関数である窓関数)(これを非対称窓関数1という)に設定し、第1実施形態と同様に空間フーリエ変換を行い、2次元円筒調和スペクトルan,win(n)(Φ,φ)を取得する。なお、この場合、win(n)=asym1である。
【0140】
上記(4)の場合、時間周波数適応フィルタ処理部5Aは、空間フーリエ変換の窓関数(2次元円筒調和スペクトルan,win(n)(Φ,φ)を取得するための窓関数)を非対称窓関数(低角度側の半分の領域がHann窓関数で、高角度側の半分の領域が矩形窓関数である窓関数)(これを非対称窓関数2という)に設定し、第1実施形態と同様に空間フーリエ変換を行い、2次元円筒調和スペクトルan,win(n)(Φ,φ)を取得する。なお、この場合、win(n)=asym2である。
【0141】
また、本実施形態において、win(n)={hann,rect,asym1,asym2}とする。例えば、図13の場合、
(1)領域Q1の2次元円筒調和スペクトルは、an,win(n)(Φ,φ)、win(n)=Hannであり、
(2)領域Q2の2次元円筒調和スペクトルは、an,win(n)(Φ,φ)、win(n)=asym1であり、
(3)領域Q3の2次元円筒調和スペクトルは、an,win(n)(Φ,φ)、win(n)=rectであり、
(4)領域Q4の2次元円筒調和スペクトルは、an,win(n)(Φ,φ)、win(n)=asym2である。
【0142】
(ステップS66A):
ステップS66Aにおいて、データS(Qi)(ω)(本実施形態では、S(Q1)(ω)~S(Q4)(ω))の全ての周波数成分ω(-N≦ω≦N)(ωはnに対応)について、ループ処理(ループ2)が実行されたか否かを判定し、(1)全ての周波数成分ωについて、ループ処理(ループ2)が実行されたと判定された場合、処理をステップS67Aに進め、(2)全ての周波数成分ωについて、ループ処理(ループ2)が実行されていないと判定された場合、処理をステップS61Aに戻し、ループ処理(ループ2)を繰り返し実行する。
【0143】
(ステップS67A):
ステップS67Aにおいて、第1実施形態のステップS67と同様の処理(時間周波数領域の駆動信号の取得処理)が実行される。なお、第1実施形態では、Q∈{Q1,Q2}であったが、本実施形態では、Q∈{Q1,Q2,Q3,Q4}である。
【0144】
(ステップS7、S8)
ステップS7、S8において、第1実施形態のステップS7、S8と同様の処理が実行される。
【0145】
≪まとめ≫
以上のように、音場制御システム2000では、マルチスポット再生処理において、複数の再生領域(本実施形態では、4つの再生領域Zone1(Q1)~Zone4(Q4))で再生するオーディオ信号の短時間フーリエ変換の周波数ごとの振幅の大きさを比較し(隣接する再生領域のデータ(オーディオ信号の短時間フーリエ変換の周波数ごとの振幅)どうしの比較を行い)、振幅の大きい方(音圧レベルの大きい方)の半分の領域(比較対象領域と隣接する半分の領域)にHann窓関数、振幅の小さい方(音圧レベルの小さい方)の半分の領域(比較対象領域と隣接する半分の領域)に矩形窓関数を適用することで、スピーカアレイSpk_arryの各スピーカを駆動するための駆動信号を取得する。音場制御システム2000では、上記のように処理することで、マルチスポット再生処理において、複数の再生領域(3つ以上の再生領域)で再生するオーディオ信号の短時間フーリエ変換の周波数ごとの振幅の大きさに応じて、周波数および時間ごとに適応的に窓関数を切り替える処理(時間周波数適応フィルタ処理)により、スピーカアレイSpk_arryの各スピーカを駆動するための駆動信号を取得する。
【0146】
つまり、音場制御システム2000では、上記で説明したように、マルチスポット再生処理を、オーディオ信号を短時間フーリエ変換した各周波数成分の振幅を比較して空間窓関数(空間フーリエ変換を行うときに適用する窓関数(非対称窓関数を含む))を適用後、逆フーリエ変換した音信号を逐次再生するだけの単純な処理により実現できるため、マルチスポット再生処理をリアルタイム処理(所定の時間内に処理が完了することが保証される処理)で容易に実現できる。すなわち、音場制御システム2000では、上記のように処理することで、再生領域が3つ以上ある場合であっても、リアルタイム処理により、高精度なマルチスポット再生(再生信号適応型マルチスポット再生)を実行することができる。
【0147】
[他の実施形態]
上記実施形態(変形例を含む)で説明した音場制御システム1000、2000、音場制御装置100、100Aにおいて、各ブロックは、LSIなどの半導体装置により個別に1チップ化されても良いし、一部または全部を含むように1チップ化されても良い。
【0148】
なおここではLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0149】
また集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用しても良い。
【0150】
また上記各実施形態(変形例を含む)の各機能ブロックの処理の一部または全部は、プログラムにより実現されるものであってもよい。そして上記各実施形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、コンピュータにおいて、中央演算装置(CPU)により行われる。また、それぞれの処理を行うためのプログラムは、ハードディスク、ROMなどの記憶装置に格納されており、ROMにおいて、あるいはRAMに読み出されて実行される。
【0151】
また上記実施形態(変形例を含む)の各処理をハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア(OS(オペレーティングシステム)、ミドルウェア、あるいは所定のライブラリとともに実現される場合を含む。)により実現してもよい。さらにソフトウェアおよびハードウェアの混在処理により実現しても良い。
【0152】
例えば上記実施形態(変形例を含む)の各機能部をソフトウェアにより実現する場合、図14に示したハードウェア構成(例えばCPU、GPU、ROM、RAM、入力部、出力部、通信部、記憶部(例えば、HDD、SSD等により実現される記憶部)、外部メディア用ドライブ等をバスBusにより接続したハードウェア構成)を用いて各機能部をソフトウェア処理により実現するようにしてもよい。
【0153】
また上記実施形態(変形例を含む)の各機能部をソフトウェアにより実現する場合、当該ソフトウェアは、図14に示したハードウェア構成を有する単独のコンピュータを用いて実現されるものであってもよいし、複数のコンピュータを用いて分散処理により実現されるものであってもよい。
【0154】
また上記実施形態(変形例を含む)における処理方法の実行順序は、必ずしも上記実施形態の記載に制限されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、実行順序を入れ替えることができるものである。
【0155】
前述した方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム、及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明の範囲に含まれる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、大容量DVD、次世代DVD、半導体メモリを挙げることができる。
【0156】
上記コンピュータプログラムは、上記記録媒体に記録されたものに限らず、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して伝送されるものであってもよい。
【0157】
なお本発明の具体的な構成は、前述の実施形態(変形例を含む)に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0158】
1000、2000 音場制御システム
100、100A 音場制御装置
3、3A 短時間フーリエ変換処理部
4、4A レベル比較処理部
5、5A 時間周波数適応フィルタ処理部
6 短時間フーリエ逆変換処理部
Spk_arry スピーカアレイ
Spk1~Spk16 スピーカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14