(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117594
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】振動アクチュエータ及び電気機器
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023770
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 勝博
(72)【発明者】
【氏名】前田 祥宏
(72)【発明者】
【氏名】木下 洋輔
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA05
5D107BB08
5D107CC09
5D107CD01
5D107DD03
5D107DD12
5D107DE10
(57)【要約】
【課題】共振を利用する振動アクチュエータにおいて、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅の広狭を自在に可変設定すること。
【解決手段】振動アクチュエータは、バネ-マス系におけるマス部を構成し、可動マグネットを有する可動体と、前記可動体の外周を夫々囲んで軸方向に並置され、通電されると前記可動体を前記軸方向で直線状に振動させるモータを、前記可動マグネットと共に構成する一対のコイルと、前記バネ-マス系におけるバネ部を前記可動マグネットと共に構成し、前記軸方向で前記可動体に対向して配置され、通電されると前記可動マグネットに対する反発力又は吸引力を発生させる電磁石と、を有する固定体と、を有する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バネ-マス系におけるマス部を構成し、可動マグネットを有する可動体と、
前記可動体の外周を夫々囲んで軸方向に並置され、通電されると前記可動体を前記軸方向で直線状に振動させるモータを、前記可動マグネットと共に構成する一対のコイルと、前記バネ-マス系におけるバネ部を前記可動マグネットと共に構成し、前記軸方向で前記可動体に対向して配置され、通電されると前記可動マグネットに対する反発力又は吸引力を発生させる電磁石と、を有する固定体と、
を有する振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記電磁石は、径方向の中央位置で前記両側から前記可動体に接近するよう延在して配置されている、
請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記電磁石は、駆動制御部の制御により、前記反発力及び前記吸引力のいずれか一方を選択的に発生させる、
請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記電磁石は、駆動制御部の制御により、前記反発力及び前記吸引力を可変可能に発生させる、
請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記電磁石は、駆動制御部の制御により、前記反発力及び前記吸引力を断続又は連続に発生させる、
請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記軸方向における前記可動体の両端部の夫々と前記固定体とを接続して設けられ、前記可動体を前記軸方向で直線状に振動可能に支持する一対の板バネをさらに有し、
前記バネ部は、前記一対の板バネと、前記電磁石及び前記可動マグネットを含む磁気バネと、の組合せにより構成されている、
請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1に記載の振動アクチュエータを実装した電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ及びこれを備える電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
振動機能を有する電気機器には一般に、振動発生源としてのアクチュエータ(振動アクチュエータ)が実装されている。電気機器は、振動アクチュエータを駆動してユーザに振動を伝達して体感させることにより、刺激を付与したり、着信を通知したり、操作感や臨場感を向上したりすることができる。なお、電気機器は、携帯型ゲーム端末、据置型ゲーム機のコントローラー(ゲームパッド等)、携帯電話やスマートフォン等の携帯通信端末、タブレットPC(Personal Computer)等の携帯情報端末等を含むほか、ユーザにマッサージ等を施す各種のヘルスケア機器や美容機器を含む。
【0003】
従来の振動アクチュエータの一例は、筒状ケースの内側に配置されたコイルと、永久磁石を有する可動子と、コイルの内側で可動子を軸方向に振動可能に支持する弾性支持部材と、を有する(例えば特許文献1参照)。このような振動アクチュエータでは、コイルに所定の周波数の電流を通電すると、コイルと永久磁石とで構成されるボイスコイルモータの駆動力により可動子が往復運動つまり振動して、振動が振動アクチュエータから外部に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した振動アクチュエータにおいて、可動子と弾性支持部材とは、バネ-マス系の振動モデルを構成する関係にある。すなわち、コイルにバネ-マス系の共振周波数に等しい周波数の交流波が入力されると、可動子は共振状態となり、振動アクチュエータからは、高出力の振動が得られる。換言すれば、共振を利用すると、振動アクチュエータの駆動効率が向上する。
【0006】
ところが、通常のバネ-マス系の振動モデルでは、その共振周波数近辺の交流周波数が入力される場合のみG値(衝撃値、振動強度とも呼ばれる)が高くなり、入力周波数が共振周波数に等しい値或いはその近傍の値から外れると、G値が極端に低くなる。すなわち、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅が狭い。
【0007】
ここで、可動子の駆動源であるボイスコイルモータを構成するコイルと永久磁石は、環境温度によって特性が変化する性質を有するため、共振周波数に影響を与える。また、特に機械バネを持たない磁気バネのみの構造の場合、更に共振周波数への影響が顕著に生じる。したがって、振動アクチュエータの環境温度に応じて、共振周波数が変化する場合がある。さらに、振動アクチュエータには、部品の製造公差や組付公差による個体差があり、その個体差に応じて共振周波数が変化する場合もある。
【0008】
そのため、共振を利用する振動アクチュエータにおいて、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅の広狭を個体差や環境に応じて自在に可変設定したいという要望がある。
【0009】
本発明の目的は、共振を利用する振動アクチュエータにおいて、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅の広狭を自在に可変設定することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る振動アクチュエータの一態様は、
バネ-マス系におけるマス部を構成し、可動マグネットを有する可動体と、
前記可動体の外周を夫々囲んで軸方向に並置され、通電されると前記可動体を前記軸方向で直線状に振動させるモータを、前記可動マグネットと共に構成する一対のコイルと、前記バネ-マス系におけるバネ部を前記可動マグネットと共に構成し、前記軸方向で前記可動体に対向して配置され、通電されると前記可動マグネットに対する反発力又は吸引力を発生させる電磁石と、を有する固定体と、
を有する。
【0011】
本発明に係る電気機器の一態様は、
上記の振動アクチュエータを実装した電気機器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、共振を利用する振動アクチュエータにおいて、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅の広狭を自在に可変設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係る振動アクチュエータの外観斜視図
【
図2A】実施の形態に係る振動アクチュエータの側断面図
【
図2B】実施の形態に係る振動アクチュエータの斜視断面図
【
図3A】実施の形態に係る振動アクチュエータの、板バネを装着した可動体の斜視図
【
図4】実施の形態に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図
【
図5A】実施の形態に係る振動アクチュエータの振動動作の説明に供する図であって、可動体に上方移動の推力が作用する状況を示す図
【
図5B】実施の形態に係る振動アクチュエータの振動動作の説明に供する図であって、可動体に下方移動の推力が作用する状況を示す図
【
図6A】実施の形態に係る振動アクチュエータにおける電磁石と可動マグネットとの磁気的作用の説明に供する図であって、相互間に反発力が発生する状況を示す図
【
図6B】実施の形態に係る振動アクチュエータにおける電磁石と可動マグネットとの磁気的作用の説明に供する図であって、相互間に吸引力が発生する状況を示す図
【
図7】実施の形態に係る振動アクチュエータにおいて可変設定される周波数帯域幅を示す図
【
図8】実施の形態に係る振動アクチュエータを実装した電気機器の一例を示す図
【
図9】実施の形態に係る振動アクチュエータを実装した電気機器の他の例を示す図
【
図10A】実施の形態の変形例に係る振動アクチュエータの側断面図
【
図10B】実施の形態に変形例に係る振動アクチュエータの斜視断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
[振動アクチュエータの構成]
図1は、本実施の形態に係る振動アクチュエータを正面側から見た外観斜視図であり、
図2Aは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの側断面図であり、
図2Bは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの斜視断面図であり、
図3Aは、本実施の形態に係る振動アクチュエータの、板バネを装着した可動体の斜視図であり、
図3Bは、
図3Aに示す可動体の斜視断面図であり、
図4は、実施の形態に係る振動アクチュエータの固定体の斜視断面図である。
【0016】
以下の説明において、「上側」及び「下側」等における「上」及び「下」は、本実施の形態に係る振動アクチュエータ1の構成及び挙動を理解しやすくするために便宜上付与したものである。振動アクチュエータ1が電気機器(
図8、9参照)に搭載される場合には、ここに記載する「上」及び「下」が、逆になってもよいし、左右になってもよいし、斜めになってもよい。ちなみに、本実施の形態において、上下方向は、振動アクチュエータ1における可動体の振動方向であり、「上方向」は振動方向の一方であり、「下方向」は振動方向の他方向である。すなわち、振動アクチュエータ1は、可動体30を上下方向に直線状に振動させるリニアアクチュエータである。
【0017】
また、以下の説明において、特に断らない限り、「径方向」とは、振動アクチュエータ1において上下方向に延びる中心軸CAを中心として放射状又は遠心状に延びる方向を意味し、「外側」及び「内側」等における「外」及び「内」は、中心軸CAを中心とする径方向における外方及び内方を意味する。また、特に断らない限り、「周方向」とは、中心軸CAの周りを囲んで延びる方向を意味する。
【0018】
また、以下の説明で用いる形状に関する表現は、簡略的な概形説明のための便宜的な表現であって、幾何学的に正確な図形の定義が必ずしも当てはまるものでないことは、言うまでもない。ここに記載する装置全体或いは各構成部品の形状は一例であり、本発明は、本実施の形態で例示した形状に限定されない。
【0019】
振動アクチュエータ1は、電気機器として携帯型ゲーム端末機器(例えば、
図8に示すゲームコントローラGC)等の電子機器に振動発生源として実装され、電子機器の振動機能を実現する。この電子機器としては、スマートフォン等の携帯機器(例えば、
図9に示す携帯端末M)も含む。また、振動アクチュエータ1を実装可能な電気機器には、ユーザにマッサージ等を施すヘルスケア機器及び美容機器等も含まれる。振動アクチュエータ1は、各種電気機器に実装され、内部の可動体30の振動により振動アクチュエータ1自体が振動して、ユーザに対して着信を通知したり、操作感や臨場感を与えたり、物理的な刺激を与えたりする。
【0020】
<固定体>
振動アクチュエータ1は、ケース10を有する。ケース10は、上側蓋部11、上側周壁部12、下側周壁部13及び下側蓋部14を有する。上側蓋部11及び下側蓋部14は概して円盤状の形状を有し、上側周壁部12及び下側周壁部13は概して円筒状の形状を有する。本実施の形態では、ケース10を構成する上側蓋部11、上側周壁部12、下側周壁部13及び下側蓋部14はいずれも、非磁性及び非導電性の樹脂材料で形成されている。ケース10は、内部での可動体30の振動を吸収せずにケース10を介して振動アクチュエータ1の搭載機器へ確実に伝達可能な剛性を有する。
【0021】
上側蓋部11、上側周壁部12、下側周壁部13、下側蓋部14は夫々、外周から放射状に突出して設けられた連結部15を有する。上側蓋部11、上側周壁部12、下側周壁部13、下側蓋部14は、同心状に重ねて連結部15の周方向位置を揃えた状態で、例えば止着孔151への締結部材等での止着により互いに連結されて、一体のケース10となる。ケース10を含んで構成される固定体20の内部には、可動体30等の収容空間が形成される。連結部15を放射状に突出させ、ケース10の外周において連結部15以外の部分を小径化することで、収容空間の確保とケース10の小型化との両立が図られる。なお、本実施の形態ではケース10の構成部品点数が4個(上側蓋部11、上側周壁部12、下側周壁部13、下側蓋部14)であるが、ケース10の構成は種々変形して実施可能であり、部品点数についても4個に限定されない。
【0022】
ケース10は、振動アクチュエータ1において、固定体20を構成する。固定体20は、上述したケース10に加えて、駆動コイル組立体21及び磁気バネ調整部22を有する。固定体20の内部には、可動体30及び板バネ部40が収容されている。
【0023】
<駆動コイル組立体>
駆動コイル組立体21は、上側駆動コイル211と、下側駆動コイル212と、ボビン213と、固定ヨーク214と、を有する。
【0024】
上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212は、中心軸CAを中心に同心状に、且つ、中心軸CAの方向(「軸方向」に相当。本実施の形態では、上下方向と同一方向である。)に沿って並置された状態で、ボビン213に保持されている。ボビン213は、非磁性及び非導電性の樹脂材料で形成されている。ボビン213の内周面は、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の内周面を覆い、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212が可動体30と直接的に接触或いは衝突することから保護する保護壁として機能する。
【0025】
好ましくは、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212は、互いに同径で、上下方向の長さも互いに同一であり、可動体30の上下の最大振幅により定められる可動域の中間位置に対して上下方向で対称の位置に配置される。上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212を構成する巻線の巻回方向は、互いに逆方向である。
【0026】
ボビン213の外周面には、上下方向の中間部及び両端部の夫々から外側に延びる中間フランジ2131、端部フランジ2132、2133により区画された上下2つの溝2134、2135が設けられており、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212は夫々、上側の溝2134及び下側の溝2135に配置される。
【0027】
なお、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212を構成する巻線は、一本のワイヤで構成してよい。この構成の場合、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212が互いに繋がる部分に相当するワイヤ中間部は、中間フランジ2131を跨いで配置される。そして、上側駆動コイル211及び下側駆動212の夫々において互いに繋がる部分とは反対側の部分に相当するワイヤ両端部は、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212への通電を可能とするため、外部の駆動回路(例えば
図8、9の駆動制御部5203)に電気的に接続される。上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の夫々のワイヤ両端部は、例えば固定ヨーク214の上下両端部の上側或いは下側を迂回して、ケース10に設けられた開口部(図示せず)を介して外部へ引き出される。固定体20に外部への接続端子を設け、当該接続端子にワイヤ両端部を絡げる構成としてもよい。
【0028】
固定ヨーク214は、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の外周を囲むように配置されている。固定ヨーク214は、無着磁の磁性材料からなり、全体として筒状の形状を有する部材である。固定ヨーク214は、ボビン213の端部フランジ2132、2133の間に装着されている。好ましくは、固定ヨーク214の内径は、上下方向の全長にわたり同一である。また、好ましくは、可動体30の可動域の中間位置で広がる面を境界として区分される、固定ヨーク214の上半部と下半部とは、同一の長さを有する。
【0029】
駆動コイル組立体21は、上側周壁部12及び下側周壁部13により構成される周壁部の内周面に保持されている。本実施の形態では、駆動コイル組立体21は、上側周壁部12及び下側周壁部13により上下両側から挟まれて、上下方向において位置決めされている。これにより、上側駆動コイル211、下側駆動コイル212及び固定ヨーク214を上下方向において位置決めすることができる。
【0030】
固定ヨーク214は、可動マグネット31から発生する磁束の通り道(磁路)を規制して、可動マグネット31の磁場と上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の電場との間の電磁相互作用を促進するバックヨークとしての機能を有する。また、固定ヨーク214は、外部の電磁波を遮蔽する電磁シールドとしての機能を有する。さらに、固定ヨーク214は、固定ヨーク214自体の形状及び寸法に依存するが、可動マグネット31及び後述する上側電磁石221及び下側電磁石222と共に、磁気バネとして機能することもできる。この磁気バネは、本実施の形態において支持部材として機能する板バネ部40(上側板バネ41及び下側板バネ42)と共に、バネ-マス系におけるバネ部を構成する。
【0031】
磁気バネ調整部22は、可動体30から所望の振動強度を出力可能な帯域幅を調整するよう動作する。具体的には、磁気バネ調整部22は、上側電磁石221及び下側電磁石222を有する。上側電磁石221は、上側鉄芯2211に上側ワイヤ2212を巻回して構成され、可動体30に上側から対向して配置されている。下側電磁石222は、下側鉄芯2221に下側ワイヤ2222を巻回して構成され、可動体30に下側から対向して配置されている。上側電磁石221及び下側電磁石222は、通電されると、可動体30の可動マグネット31に対する磁気的な反発力又は吸引力を発生させる。
【0032】
なお、このように本実施の形態における電磁石(上側電磁石221、下側電磁石222)は、鉄芯(上側鉄芯2211、下側鉄芯2221)に所謂コイルであるワイヤ(上側ワイヤ2212、下側ワイヤ2222)を巻回して構成されているが、鉄芯がない所謂空芯コイルの形式においても使用可能であることは言うまでもない。
【0033】
上側ワイヤ2212及び下側ワイヤ2222の夫々のワイヤ両端部は、上側電磁石221及び下側電磁石222への通電を可能とするため、外部の駆動回路(例えば
図7、8の駆動制御部1203)に電気的に接続される。上側ワイヤ2212及び下側ワイヤ2222の夫々のワイヤ両端部は、ケース10に設けられた開口部(図示せず)を介して外部へ引き出される。固定体20に外部への接続端子を設け、当該接続端子にワイヤ両端部を絡げる構成としてもよい。
【0034】
上側電磁石221及び下側電磁石222に、一方向の電流が入力されると、上側電磁石221及び下側電磁石222は反発力を発生させ、一方向とは逆方向の電流が入力されると、上側電磁石221及び下側電磁石222は吸引力を発生させる。
【0035】
ここで、上側電磁石221及び下側電磁石222が可動マグネット31に対して反発力を発生させる場合を想定する。反発力は、振動する可動体30の振幅が大きくなるほど(換言すれば、振動する可動体30が振動の中間位置から上側及び下側へ離れるにつれて)、可動マグネット31と上側電磁石221及び下側電磁石222との距離が短くなるため、増大する。これは、上述した磁気バネのバネ定数が、振動する可動体30が振動の中間位置から上側及び下側へ離れるにつれて高くなることを意味する。磁気バネのバネ定数が高くなると、磁気バネのバネ定数と板バネ部40のバネ定数とを合成した、バネ部の合成バネ定数も高くなる。バネ-マス系におけるバネ部のバネ定数(前述した合成バネ定数)が高くなると、このバネ定数の平方根に比例する、バネ-マス系におけるマス部の共振周波数が高くなる。
【0036】
次に、上側電磁石221及び下側電磁石222が可動マグネット31に対して吸引力を発生させる場合を想定する。吸引力は、振動する可動体30の振幅が大きくなるほど(換言すれば、振動する可動体30が振動の中間位置から上側及び下側へ離れるにつれて)、可動マグネット31と上側電磁石221及び下側電磁石222との距離が短くなるため、増大する。これは、上述した磁気バネのバネ定数が、振動する可動体30が振動の中間位置から上側及び下側へ離れるにつれて低くなることを意味する。磁気バネのバネ定数が低くなると、バネ部の合成バネ定数も低くなる。バネ-マス系におけるバネ部のバネ定数(前述した合成バネ定数)が低くなると、バネ-マス系におけるマス部の共振周波数が低くなる。
【0037】
上述した「振動する可動体30の振幅が大きくなる」という現象は、駆動コイル(上側駆動コイル211、下側駆動コイル212)の入力電圧を上げる(電流を増加させる)以外には、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212へ入力される交流電流の周波数(駆動周波数)が低くなると発生する。なぜなら、駆動周波数が低いと、電流波形の波長が長くなり、これにより、振動する可動体30が上方移動/下方移動する時間長が長くなり、その結果として可動体30の上方移動/下方移動の距離が長くなるからである。
【0038】
逆に、振動する可動体30の振幅が小さくなるという現象は、駆動コイル(上側駆動コイル211、下側駆動コイル212)の入力電圧を下げる(電流を減少させる)以外には、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212へ入力される交流電流の周波数(駆動周波数)が高くなると発生する。なぜなら、駆動周波数が高いと、電流波形の波長が短くなり、これにより、振動する可動体30が上方移動/下方移動する時間長が短くなり、その結果として可動体30の上方移動/下方移動の距離が短くなるからである。
【0039】
要するに、可動マグネット31に対して反発力を発生させるように上側電磁石221及び下側電磁石222を駆動する場合では、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の駆動周波数が低くなると、共振周波数が高くなり、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の駆動周波数が高くなると、共振周波数が低くなる。したがって、駆動周波数が変化する方向とは反対の方向へ共振周波数が変化するため、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅が狭くなる(狭帯域化又はナローバンド化ともいう)。また、可動マグネット31に対して吸引力を発生させるように上側電磁石221及び下側電磁石222を駆動する場合では、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の駆動周波数が低くなると、共振周波数が低くなり、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の駆動周波数が高くなると、共振周波数が高くなる。したがって、駆動周波数が変化する方向と同じ方向へ共振周波数が変化するため、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅が広くなる(広帯域化又はワイドバンド化ともいう)。
【0040】
このように、上側電磁石221及び下側電磁石222の駆動制御を切り替えるだけで、共振周波数の帯域幅の広狭を自在に制御することができる。
【0041】
上側電磁石221及び下側電磁石222は、径方向の中央位置に配置(より詳細には中心軸CA上で同心配置)されている。上側電磁石221及び下側電磁石222が径方向の中央位置に配置されることで、当該中央位置に対して周囲に配置される、上側板バネ41及び下側板バネ42の夫々のアーム部411、421との物理的な干渉を抑制或いは防止することができる。上側電磁石221及び下側電磁石222は夫々、径方向の中央位置で、上側蓋部11及び下側蓋部14の内側面(内部空間側の面)に固定されている。
【0042】
また、上側電磁石221及び下側電磁石222は、上下両側から可動体30に接近するよう延在している。より具体的には、上側電磁石221及び下側電磁石222は、夫々固定された上側蓋部11の及び下側蓋部14から、上側板バネ41及び下側板バネ42の内周部412、422の中央開口部を通り抜けて、可動体30(可動マグネット31)の上面及び下面に対向する位置まで、到達する長さを有する。可動体30(可動マグネット31)の上面及び下面に対向する位置とは、例えば、上下方向において上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212の配置位置に対応する位置である。但し、上側電磁石221及び下側電磁石222は、可動体30の振動動作を阻害しないよう、可動体30(可動マグネット31)と接触し得る位置までは延在していない。
【0043】
このような上側電磁石221及び下側電磁石222の配置により、可動マグネット31の磁場と相互作用する磁場を、可動マグネット31に対して至近距離で発生させることができる。すなわち、周波数帯域幅を狭帯域化又は広帯域化し得る反発力又は吸引力を、効率的に発生させることができる。
【0044】
<可動体>
可動体30は、共振を利用する振動アクチュエータ1において、バネ-マス系におけるマス部を構成する。
【0045】
可動体30は、固定体20の内部に収容されており、固定体20の内部で上下方向に沿って直線状に振動可能である。可動体30は、支持部材により支持されている。本実施の形態では、支持部材は板バネ部40により構成されている。板バネ部40は、上側板バネ41及び下側板バネ42を有する。可動体30は、上側板バネ41及び下側板バネ42により上下方向に沿って直線状に振動可能に支持されている。
【0046】
可動体30は、可動マグネット31と、主可動ヨーク32、33と、副可動ヨーク34、35と、接続部36、37と、を有する。可動マグネット31の上面には、主可動ヨーク32及び副可動ヨーク34が順に積層され、可動マグネット31の下面には、主可動ヨーク33及び副可動ヨーク35が順に積層されている。接続部36、37は、径方向の中央位置で可動体30の上下両方向に突出する中央凸部を構成し、夫々の先端部で上側板バネ41の内周部412及び下側板バネ42の内周部422に接続されている。
【0047】
可動体30を振動させる推力を上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212との電磁相互作用により発生させるため、可動体30には可動マグネット31が必須である。振動アクチュエータ1の実用性向上のため、可動体30が主可動ヨーク32、33及び接続部36、37を有することが好ましく、可動体30が副可動ヨーク34、35をさらに有することが一層好ましいが、可動体30において、主可動ヨーク32、33、副可動ヨーク34、35及び接続部36、37は必ずしも必須ではない。以下説明する可動体本体の構成は、一例である。
【0048】
<可動体本体>
可動マグネット31、主可動ヨーク32、33及び副可動ヨーク34、35は、上述した通りに上下方向に積層されて一体の可動体本体を構成する。可動体本体の外径は固定体20の筒状部分の最小内径(具体的にはボビン213の内周面の径)よりも僅かに小径である。これにより、可動体30と固定体20との間にクリアランスを確保して、可動体30を固定体20の筒状部分に接触させずに振動させることができる。
【0049】
本実施の形態では、可動体本体の外径は、可動体本体の上下方向の全長にわたり一定である。但し、上下方向における可動マグネット31の中間位置で広がる面を境界として、可動体30の上半部と下半部とが面対称となる形状であれば、可動体本体の外径は一定でなくてもよい。
【0050】
可動マグネット31は、上下方向に着磁された永久磁石である。例えば、可動マグネット31の上面及び下面が夫々N極及びS極に着磁されている(
図5A等参照)。可動マグネット31は、可動体30を振動させる推力を発生させるモータ(より具体的にはボイスコイルモータ)を上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212と共に構成する。なお、モータの駆動による可動体30の振動動作については、後述する。また、可動マグネット31は、上側電磁石221及び下側電磁石222並びに固定ヨーク214と共に、バネ-マス系におけるバネ部のうちの磁気バネを構成する。
【0051】
本実施の形態では、可動マグネット31は、円板形状であり、上側の板面(上面)及び下側の板面(下面)が上下方向に直交する方向に広がるように配置されている。
【0052】
主可動ヨーク32、33は、無着磁の磁性体で構成されている。主可動ヨーク32、33は、可動マグネット31の磁束を集中させ、漏らすことなく効率良く流して、可動マグネット31と上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212との電磁相互作用を促進させる。主可動ヨーク32、33は、例えば、可動マグネット31の上面及び下面に接着することにより可動マグネット31に積層して配置することができる。
【0053】
本実施の形態では、主可動ヨーク32、33は、径方向の中央位置に貫通開口部を有する円環状の板状部材であるが、変形例として、貫通開口部のない円板状の部材であってもよい。本実施の形態では、主可動ヨーク32、33の貫通開口部には、接続部36、37が挿入されている。
【0054】
副可動ヨーク34、35は、無着磁の磁性体で構成されている。また、副可動ヨーク34、35は、本実施の形態では、主可動ヨーク32、33の貫通開口部の開口径よりも大径である貫通開口部を有する円環状の板状部材である。副可動ヨーク34、35は、主可動ヨーク32、33に集中させた可動マグネット31の磁束を上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212に向けて適度に分散させることで、可動マグネット31と上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212との電磁相互作用を促進させる。副可動ヨーク34、35は、例えば、主可動ヨーク32の上面及び主可動ヨーク33の下面に接着することにより主可動ヨーク32、33に積層して配置することができる。副可動ヨーク34、35の厚み(上下方向長さ)や幅(副可動ヨーク34、35の外周部と内周部との間の径方向幅)を適宜調整することで、可動体30の質量を適宜調整することもできる。
【0055】
接続部36、37は、可動体本体と上側板バネ41及び下側板バネ42とを接続する。接続部36、37は夫々、内側筒部361、371と外側筒部362、372とを有する。内側筒部361、371及び外側筒部362、372は、非磁性及び非導電性の樹脂材料で構成されている。
【0056】
なお、内側筒部361、371及び外側筒部362、372は、非磁性及び非導電性に限定されるものではなく、磁性及び導電性を有する材料であってもよく、例えば真鍮(黄銅)で構成されてもよい。
【0057】
外側筒部362、372は夫々、例えば第1の端部を主可動ヨーク32、33の貫通開口部に挿入することにより、可動体本体に装着されている。外側筒部362、372の第2の端部には、上側板バネ41及び下側板バネ42の内周部412、422が当接している。内側筒部361、371は、外側筒部362、372よりも小径であり、外側筒部362、372に上側及び下側から夫々挿入されて、外側筒部362、372に固定されている。
【0058】
内側筒部361の上端部及び内側筒部371の下端部にはフランジが設けられており、内側筒部361の上端フランジと外側筒部362の第2の端部とで上側板バネ41の内周部412を挟持している。同様に、内側筒部361の上端部及び内側筒部371の下端部にはフランジが設けられており、内側筒部371の下端フランジと外側筒部372の第2の端部とで下側板バネ42の内周部422を挟持している。内側筒部361、371の内径は、内側筒部361、371の中空部に配置される上側電磁石221及び下側電磁石222の外径よりも若干大径であり、内側筒部361、371と上側電磁石221及び下側電磁石222との間には、可動体30の振動時に両者の接触を抑制或いは防止するクリアランスが確保されている。
【0059】
<板バネ部>
板バネ部40は、可動体30を支持する支持部材の一例である。板バネ部40は、上側板バネ41と下側板バネ42とを有する。上側板バネ41及び下側板バネ42は夫々、アーム部411、421と、内周部412、422と、外周部413、423と、を有する。
【0060】
内周部412、422は、小径の環状部であり、可動体30に接続されている。内周部412、422と可動体30の接続部36、37との接続構成については上述した通りである。なお、内周部412、422は、例えば可動体30の外径等と比べると小径であるが、中央開口部を通り抜けて配置される上側電磁石221及び下側電磁石222の外径よりも若干大径である。
【0061】
外周部413、423は、大径の環状部であり、固定体20に接続されている。本実施の形態では、外周部413は上側蓋部11と上側周壁部12とで上下方向に挟持され、外周部423は下側蓋部14と下側周壁部13とで上下方向に挟持されている。
【0062】
アーム部411、421は、内周部412、422と外周部413、423とを接続する。アーム部411、421は、可動体30の振動に伴って撓むことが可能な可撓部である。本実施の形態では、アーム部411、421は、内周部412、422と外周部413、423との間で渦巻き状に延在しているため、可動ストロークの確保が容易である。
【0063】
[振動アクチュエータの動作]
以下、振動アクチュエータ1の動作について説明する。
【0064】
図5Aに示す状況では、上側駆動コイル211には、上から平面視すると反時計回りの方向の電流が入力され、下側駆動コイル212には、上から平面視すると時計回りの方向の電流が入力されている。
【0065】
この場合、フレミングの左手の法則に従い、上側駆動コイル211には下向きの推力-f(ここで、-(マイナス)の符号は力が下向きであることを示す)が作用する。同様に、フレミングの左手の法則に従い、下側駆動コイル212にも下向きのローレンツ力-fが作用する。上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212は固定体20の一部であり移動不能であることから、作用反作用の法則に従って可動体30に作用する上向きの推力+F(ここで、+(プラス)の符号は力が上向きであることを示す)により、可動体30が上方移動する。
【0066】
図5Bに示す状況では、上側駆動コイル211には、上から平面視すると時計回りの方向の電流が入力され、下側駆動コイル212には、上から平面視すると反時計回りの方向の電流が入力されている。
【0067】
この場合、フレミングの左手の法則に従い、上側駆動コイル211には上向きの推力+fが作用する。同様に、フレミングの左手の法則に従い、下側駆動コイル212にも上向きのローレンツ力+fが作用する。上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212は固定体20の一部であり移動不能であることから、作用反作用の法則に従って可動体30に作用する下向きの推力-Fにより、可動体30が下方移動する。
【0068】
上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212に交流の駆動電流が入力されると、駆動電流の周波数(駆動周波数)に応じて、
図5Aに示す状況と
図5Bに示す状況とが交互に繰り返される。つまり、可動体30は上方移動と下方移動とを交互に繰り返す。これにより、可動体30は振動する。本実施の形態では、推力の作用する方向が上下方向であるため、可動体30は上下方向に直線状に振動する。
【0069】
本実施の形態では、可動体30は上側板バネ41及び下側板バネ42により弾性支持されている。よって、可動体30が振動の中心位置から上方又は下方に移動すると、撓んだ上側板バネ41及び下側板バネ42が元の形状に戻ろうとする復元力を発生し、この力を可動体30に伝達する。この力により可動体30は逆方向に付勢される。すなわち、可動体30は、上方移動していた場合は下方に、下方移動していた場合は上方に、振動の中心位置に復帰するよう移動する。さらに、本実施の形態では、可動体30の可動マグネット31と固定体20の固定ヨーク214とに磁気吸引力が働く。可動体30は、振動すると上記の復元力だけでなくこの磁気吸引力にも付勢されて、振動の中心位置に復帰するよう移動する。
【0070】
さらに、本実施の形態では、可動体30に対して上下両側から対向するように上側電磁石221及び下側電磁石222が設けられている。上側電磁石221及び下側電磁石222が通電されると、上側電磁石221及び下側電磁石222と可動マグネット31との間に磁気的な作用が発生し、磁気バネの特性、具体的には磁気バネのバネ定数に変化が発生する。
【0071】
なお、一変形例として、電磁石は、上側電磁石221のみが可動体30に接近するよう延在する構成であってもよく、さらに、下側電磁石222のみが可動体30に接近するよう延在する構成であってもよい。
【0072】
図6Aに示す状況では、上側電磁石221は、通電により、下端部が、対向する可動マグネット31の上面と同極性(図示された例ではN極)に磁化され、下側電磁石222は、通電により、上端部が、対向する可動マグネット31の下面と同極性(図示された例ではS極)に磁化される。この場合、
図6Aに示すように可動体30が上向きの推力により上方移動すると、可動体30が上側電磁石221に近づくにつれて、相互間を結ぶ磁束の量が増加して、下向きの反発力が増大する。また、可動体30に作用する推力が下向きに切り替わり、下方移動すると、可動体30が下側電磁石222に近づくにつれて、相互間を結ぶ磁束の量が増加して、上向きの反発力が増大する。
【0073】
すなわち、
図6Aに示す例では、磁気バネのバネ定数が、振動する可動体30が振動の中間位置から離れるにつれて高くなる。
【0074】
また、
図6Bに示す状況では、上側電磁石221は、通電により、下端部が、対向する可動マグネット31の上面と逆極性(図示された例ではS極)に磁化され、下側電磁石222は、通電により、上端部が、対向する可動マグネット31の下面と逆極性(図示された例ではN極)に磁化される。この場合、
図6Bに示すように可動体30が上向きの推力により上方移動すると、可動体30が上側電磁石221に近づくにつれて、相互間を結ぶ磁束の量が増加して、上向きの吸引力が増大する。また、可動体30に作用する推力が下向きに切り替わり、下方移動すると、可動体30が下側電磁石222に近づくにつれて、相互間を結ぶ磁束の量が増加して、下向きの吸引力が増大する。
【0075】
すなわち、
図6Bに示す例では、磁気バネのバネ定数が、振動する可動体30が振動の中間位置から離れるにつれて低くなる。
【0076】
磁気バネのバネ定数が高くなると、磁気バネのバネ定数と板バネ部40のバネ定数とを合成した、バネ部の合成バネ定数も高くなる。一方、磁気バネのバネ定数が低くなると、合成バネ定数も低くなる。合成バネ定数は次の式(1)で定められる。
【0077】
【0078】
上記の式(1)に示されるように、本実施の形態では、磁気バネのバネ定数は振幅に依存し、これに伴い、バネ-マス系におけるバネ部の合成バネ定数も振幅に依存する。
【0079】
そして、次の式(2)により、合成バネ定数が振幅の増大に伴って高くなる場合、可動体30の共振周波数も振幅の増大に伴って高くなり、その一方、合成バネ定数が振幅の増大に伴って低くなると、可動体30の共振周波数も振幅の増大に伴って低くなる。
【0080】
【0081】
ここで、振動アクチュエータ1の駆動原理を示す運動方程式及び回路方程式を以下に示す。振動アクチュエータ1は、下式(3)で示す運動方程式及び下式(4)で示す回路方程式に基づいて駆動する。
【0082】
【0083】
【0084】
すなわち、振動アクチュエータ1における質量m[kg]、変位x(t)[m]、推力定数Kf[N/A]、電流i(t)[A]、合成バネ定数Ksp(x)[N/m]、減衰係数D[N/(m/s)]等は、式(3)を満たす範囲内で適宜変更できる。また、電圧e(t)[V]、抵抗R[Ω]、インダクタンスL[H]、逆起電力定数Ke[V/(rad/s)]は、式(4)を満たす範囲内で適宜変更できる。
【0085】
上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212に可動体30の共振周波数に等しい周波数の交流波が入力されると、可動体30は共振状態となる。すなわち、電源供給部から上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212に対して、可動体30の共振周波数と略等しい周波数の交流波を入力することで、可動体30を効率良く振動させることができる。
【0086】
振動アクチュエータ1は、式(3)、(4)を満たし、式(2)で示す共振周波数を用いた共振現象で駆動すると、可動体30を低消費電力で直線振動させることができる。また、減衰係数を大きくすれば、高帯域にわたり振動を発生させることができる。
【0087】
本実施の形態では、共振周波数を通電制御により可変させることができる。
【0088】
通電制御により、可動体30と上側電磁石221及び下側電磁石222とに反発力を発生させるようにした場合、駆動周波数が低いと、共振周波数は高く、駆動周波数が高いと、共振周波数は低い。その結果として、周波数帯域幅が狭くなる。この場合における振動アクチュエータ1の周波数特性は、
図7において周波数特性曲線C2により示される。周波数特性曲線C2において、所望の振動強度(設定G値)以上の振動が確保できる周波数帯域幅W2は、通常の周波数特性曲線C1の周波数帯域幅W1よりも狭い。すなわち、通電制御により、周波数帯域幅の狭帯域化が可能となっている。
【0089】
通電制御により、可動体30と上側電磁石221及び下側電磁石222とに吸引力を発生させるようにした場合、駆動周波数が低いと、共振周波数は低く、駆動周波数が高いと、共振周波数は高い。その結果として、共振周波数の帯域幅が広くなる。この場合における振動アクチュエータ1の周波数特性は、
図7において周波数特性曲線C3により示される。周波数特性曲線C3において、所望の振動強度(設定G値)以上の振動が確保できる周波数帯域幅W3は、通常の周波数特性曲線C1の周波数帯域幅W1よりも広い。すなわち、通電制御により、周波数帯域幅の広帯域化が可能となっている。
【0090】
言うまでもなく、上側電磁石221及び下側電磁石222に通電しなければ、可動体30と上側電磁石221及び下側電磁石222との間には反発力が発生しない。この場合の周波数特性曲線は、上記の周波数特性曲線C1である。周波数特性曲線C1の周波数帯域幅W1は、狭帯域化された周波数帯域幅W2よりも広く、広帯域化された周波数帯域幅W3よりも狭い。
【0091】
このように、上側電磁石221及び下側電磁石222の駆動制御を切り替えるだけで、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅の広狭を自在に制御することができる。
【0092】
図8及び
図9は、振動アクチュエータ1と同等の振動アクチュエータを実装した電気機器の例を示している。
図8は、振動アクチュエータ1をゲームコントローラGCに実装した例を示し、
図9は、振動アクチュエータ1を携帯端末Mに実装した例を示す。
【0093】
ゲームコントローラGCは、例えば、無線通信によりゲーム機本体に接続され、ユーザが握ったり把持したりすることにより使用される。ゲームコントローラGCは、ここでは矩形板状を有し、ユーザが両手でゲームコントローラGCの左右側を掴み操作するものとしている。
【0094】
ゲームコントローラGCは、振動により、ゲーム機本体からの指令をユーザに通知する。なお、ゲームコントローラGCは、図示しないが、指令通知以外の機能、例えば、ゲーム機本体に対する入力操作部を備える。
【0095】
携帯端末Mは、例えば、携帯電話やスマートフォン等の携帯通信端末である。携帯端末Mは、振動により、外部の通信装置からの着信をユーザに通知するとともに、携帯端末Mの各機能(例えば、操作感や臨場感を与える機能)を実現する。
【0096】
ゲームコントローラGC及び携帯端末Mは夫々、通信部5201、処理部5202、駆動制御部5203、及び駆動部としての振動アクチュエータ1である振動アクチュエータ5204、5205、5206を有する。なお、ゲームコントローラGCの例のように、複数の振動アクチュエータ5204、5205が実装されてよい。
【0097】
ゲームコントローラGC及び携帯端末Mにおいて、振動アクチュエータ5204~5206は、例えば、端末の主面と振動アクチュエータ5204~5206の振動方向と直交する面、ここでは下側蓋部14の底面とが平行となるように実装されることが好ましい。
【0098】
端末の主面とは、ユーザの体表面に接触する面であり、本実施の形態では、ユーザの体表面に接触して振動を伝達する振動伝達面を意味する。なお、端末の主面と、振動アクチュエータ5204、5205、5206の下側蓋部14の底面とが直交するように配置されてもよい。
【0099】
具体的には、ゲームコントローラGCでは、操作するユーザの指先、指の腹、手の平等が接触する面、或いは、操作部が設けられた面と、振動方向が直交するように振動アクチュエータ5204、5205が実装される。また、携帯端末Mの場合は、表示画面(タッチパネル面)と振動方向が直交するように振動アクチュエータ5206が実装される。これにより、ゲームコントローラGC及び携帯端末Mの主面に対して垂直な方向の振動が、ユーザに伝達される。
【0100】
通信部5201は、外部の通信装置と無線通信により接続され、通信装置からの信号を受信して処理部5202に出力する。ゲームコントローラGCの場合、外部の通信装置は、情報通信端末としてのゲーム機本体であり、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信規格に従って通信が行われる。携帯端末Mの場合、外部の通信装置は、例えば基地局であり、移動体通信規格に従って通信が行われる。
【0101】
処理部5202は、入力された信号を、変換回路部(図示省略)により振動アクチュエータ5204、5205、5206を駆動するための駆動信号に変換して駆動制御部5203に出力する。なお、携帯端末Mにおいては、処理部5202は、通信部5201から入力される信号の他、各種機能部(図示省略、例えばタッチパネル等の操作部)から入力される信号に基づいて、駆動信号を生成する。
【0102】
駆動制御部5203は、振動アクチュエータ5204、5205、5206に接続されており、振動アクチュエータ5204、5205、5206を駆動するための回路が実装されている。駆動制御部5203は、振動アクチュエータ5204、5205、5206に対して駆動信号を供給する。
【0103】
特に、本実施の形態では、駆動制御部5203は、上側駆動コイル211及び下側駆動コイル212を駆動するための駆動信号を供給するのみならず、別の駆動信号を上側電磁石221及び下側電磁石222に供給する。上側電磁石221及び下側電磁石222は、この別の駆動信号に基づく駆動制御部5203の制御により、上述した反発力及び吸引力のいずれか一方を選択的に発生させる。上側電磁石221及び下側電磁石222を駆動する別の駆動信号は、反発力及び吸引力を可変可能に発生させるものであることが好ましい。また、上側電磁石221及び下側電磁石222を駆動する別の駆動信号は、反発力及び吸引力を断続又は連続に発生させるものであることが好ましい。
【0104】
振動アクチュエータ5204、5205、5206は、駆動制御部5203からの駆動信号に従って駆動する。具体的には、振動アクチュエータ5204、5205、5206において、可動体30は、ゲームコントローラGC及び携帯端末Mの主面に直交する方向に振動する。
【0105】
ゲームコントローラGC又は携帯端末Mに接触するユーザの体表面には、体表面に垂直な方向の振動が伝達されるので、ユーザに対して十分な体感振動を与えることができる。ゲームコントローラGCでは、ユーザに対する体感振動を、振動アクチュエータ5204、5205のうちの一方、または双方で付与でき、少なくとも強弱の振動を選択的に付与するといった表現力の高い振動を付与できる。
【0106】
振動アクチュエータ1は、携帯端末や美顔マッサージ器等の電動理美容器具等の手持ち型の電気機器や、座席等に内蔵される据え置き型の電気機器おいて、ユーザとの接触部に実装すると効果的である。ユーザが身につけて使用するウェアラブル端末においても同様である。ユーザとの接触部は、例えばゲームコントローラGC等のような手持ち型の電気機器の場合は、例えばユーザが使用時に把持するハンドル部であり、例えば美顔マッサージ器等のようなウェアラブル型の電気機器の場合は、例えばユーザの体表面に対して加圧する加圧部である。
【0107】
また、座席等に内蔵される据え置き型の電気機器において、人体に対して振動による臨場感を付与するバーチャルリアリティー用途にも使用できる。
【0108】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述した特定の実施の形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、上記実施の形態に記載された具体例に対する種々の変形及び変更が可能である。
【0109】
例えば、
図10A及び
図10Bに示される本実施の形態の変形例に係る振動アクチュエータ1Aでは、上側電磁石221Aが、副可動ヨーク34に上側から対向し、且つ、接続部36を囲む4箇所に均等に分散して配置されている(2箇所の上側電磁石221Aのみ図示)。また、下側電磁石222Aが、副可動ヨーク35に下側から対向し、且つ、接続部37を囲む4箇所に均等に分散して配置されている(2箇所の下側電磁石222Aのみ図示)。上側電磁石221A及び下側電磁石222Aは、電磁石保持部215、216に保持されている。電磁石保持部215、216は、上側周壁部12及び下側周壁部13において駆動コイル組立体21を上下両側から挟む部分が上側板バネ41及び下側板バネ42よりも可動体30に近い位置で内側に延在するように構成されている。また、接続部36、37において、内側筒部361、371は挿入ピン361A、371Aに置き換わる。このような構成でも、上述した実施の形態と同様の制御により上述した実施の形態と同様の作用効果を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明に係る振動アクチュエータは、所望の振動強度を出力可能な周波数帯域幅の広狭を自在に可変設定することができ、ゲーム機端末及び携帯端末等の電子機器並びに各種のマッサージ機器及び美容機器等を含む電気機器に搭載されるものとして有用である。
【符号の説明】
【0111】
1、1A、5204、5205、5206 振動アクチュエータ
10 ケース
11 上側蓋部
12 上側周壁部(周壁部)
13 下側周壁部(周壁部)
14 下側蓋部
15 連結部
151 止着孔
20 固定体
21 駆動コイル組立体
211 上側駆動コイル
212 下側駆動コイル
213 ボビン
2131 中間フランジ
2132、2133 端部フランジ
2134、2135 溝
214 固定ヨーク
215、216 電磁石保持部
22 磁気バネ調整部
221、221A 上側電磁石
2211 上側鉄芯
2212 上側ワイヤ
222、222A 下側電磁石
2221 下側鉄芯
2222 下側ワイヤ
30 可動体
31 可動マグネット
32、33 主可動ヨーク
34、35 副可動ヨーク
36、37 接続部
361、371 内側筒部
361A、371A 挿入ピン
362、372 外側筒部
40 板バネ部
41 上側板バネ
411 アーム部
412 内周部
413 外周部
42 下側板バネ
421 アーム部
422 内周部
423 外周部
5201 通信部
5202 処理部
5203 駆動制御部
CA 中心軸
C1、C2、C3 周波数特性曲線
GC ゲームコントローラ
M 携帯端末
W1、W2、W3 周波数帯域幅