(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117620
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 37/08 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
F16L37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023819
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久須 祐典
(72)【発明者】
【氏名】一橋 瑞穂
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106AA02
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE01
3J106BE29
3J106CA19
3J106EA03
3J106EB03
3J106EC01
3J106EC07
3J106ED02
3J106ED06
3J106EE02
(57)【要約】
【課題】チューブの接続作業において、作業工数を削減すると共に狭小な作業空間での作業性を向上させることが可能な管継手を提供する。
【解決手段】管継手100は、雌部材10と、雌部材10に挿入される雄部材20とを備え、雄部材20は、チューブTが取り付け可能な複数のチューブ継手21と、複数のチューブ継手21を保持するリテーナ22と、を備え、リテーナ22は、チューブ継手21が嵌め込まれる複数の受け部22aと、複数の受け部22aを連結する連結部22bと、連結部22bから雄部材20の軸線に対して拡径傾斜して延びる棒状部22cと、を備え、棒状部22cは、雌部材10に雄部材20が挿入された状態において雌部材10の壁面に係合して雌部材10と雄部材20とを抜け止め状態とし、棒状部22cの押圧操作により棒状部22cが基端を固定端として弾性変形することで雌部材10の壁面との係合を解除する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌部材と、前記雌部材に挿入される雄部材とを備え、
前記雄部材は、
チューブが取り付け可能な複数のチューブ継手と、
前記複数のチューブ継手を保持するリテーナと、を備え、
前記リテーナは、
前記チューブ継手が嵌め込まれる複数の受け部と、
前記複数の受け部を連結する連結部と、
前記連結部から前記雄部材の軸線に対して拡径傾斜して延びる棒状部と、を備え、
前記棒状部は、前記雌部材に前記雄部材が挿入された状態において前記雌部材の壁面に係合して前記雌部材と前記雄部材とを抜け止め状態とし、前記棒状部の押圧操作により前記棒状部が基端を固定端として弾性変形することで前記雌部材の壁面との係合を解除する、
管継手。
【請求項2】
前記棒状部の一部分は、前記雄部材の軸線と平行に延び、前記一部分に設けられた窪みによって係合爪が形成されており、
前記係合爪が前記雌部材の壁面に係合する、
請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記複数のチューブ継手にそれぞれ取付けられた複数のチューブをさらに備える、
請求項1に記載の管継手。
【請求項4】
前記受け部は、前記複数のチューブ継手を着脱可能に形成されている、
請求項1に記載の管継手。
【請求項5】
前記受け部は、C型断面を有する、
請求項1に記載の管継手。
【請求項6】
前記リテーナは、前記受け部を2つ有し、
前記2つの受け部は、前記雄部材の軸線を挟んで配置されており、
前記C型断面の開口部は、前記雄部材の軸線とは反対側に向けられている、
請求項5に記載の管継手。
【請求項7】
前記リテーナは、前記受け部を4つ有し、
前記4つの受け部は、前記雄部材の軸線周りに環状に配置されており、
前記C型断面の開口部は、前記雄部材の軸線を中心とする放射方向外側に向けられている、
請求項5に記載の管継手。
【請求項8】
前記リテーナは、前記連結部に設けられ前記棒状部の変形を規制するストッパーをさらに備える、
請求項1に記載の管継手。
【請求項9】
前記雄部材は、非対称の外面形状を有し、
前記雌部材は、前記雄部材の軸線周りに関して所定の方向に向けられた状態では前記雄部材を受入れ可能であり、前記雄部材の軸線周りに関して所定の方向とは異なる方向に向けられた状態では前記雄部材を受入れ不能に形成されている、
請求項1に記載の管継手。
【請求項10】
前記複数の受け部は、C型断面を有し、
前記雄部材の外面形状は、一の前記受け部における前記C型断面の開口端部から外側に延びる突起により、非対称に形成されている、
請求項9に記載の管継手。
【請求項11】
前記雄部材は、前記棒状部から前記雄部材の軸線周り両方向に90°の部分が非対称に形成されている、
請求項9に記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
管継手は、圧縮空気やガス・液体等の流体の配管などに用いられる。特許文献1には、適切なチューブ接続状態が得られる管継手が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された管継手では、雄部材がチューブ継手を備え、雌部材と雄部材の接続状態ではこれら相互間が流体密状態になる。雌部材の構成壁面には係合部が設けられ、雄部材には、円環部から雄部材の軸線に対して拡径傾斜して延びる棒状部が設けられている。棒状部における長さ方向の略中央部には係合爪が配置され、棒状部の自由端側に操作部が形成されている。係合爪と係合部との係止により雌部材と雄部材とは相互に抜け止め状態となり、操作部の内側への押圧操作により棒状部が取り付け端部を固定端として弾性変形することで係合爪と係合部とが非係止状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された管継手では、複数のチューブを雌部材に接続するためには、チューブの数だけ雄部材を雌部材に挿入する作業が必要であり、作業工数は非常に負荷のかかるものとなる。加えて、管継手が設置される周辺の作業空間は、管継手が搭載される装置等の小型化・省スペース化に伴い、縮小される傾向にある。
【0006】
本発明は、チューブの接続作業において、作業工数を削減すると共に狭小な作業空間での作業性を向上させることが可能な管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、雌部材と、前記雌部材に挿入される雄部材とを備え、前記雄部材は、チューブが取り付け可能な複数のチューブ継手と、前記複数のチューブ継手を保持するリテーナと、を備え、前記リテーナは、前記チューブ継手が嵌め込まれる複数の受け部と、前記複数の受け部を連結する連結部と、前記連結部から前記雄部材の軸線に対して拡径傾斜して延びる棒状部と、を備え、前記棒状部は、前記雌部材に前記雄部材が挿入された状態において前記雌部材の壁面に係合して前記雌部材と前記雄部材とを抜け止め状態とし、前記棒状部の押圧操作により前記棒状部が基端を固定端として弾性変形することで前記雌部材の壁面との係合を解除する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、雄部材は、複数のチューブ継手を保持するリテーナを備える。そのため、1つの雄部材を雌部材に挿入するだけで複数のチューブが雌部材に接続される。また、1つのリテーナで複数のチューブ継手を保持する構造とすることで、雄部材の外形寸法を小さくできる。したがって、チューブの接続作業において、作業工数を削減すると共に狭小な作業空間での作業性を向上させることが可能な管継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】第1実施形態に係る管継手の斜視図であり、雌部材と雄部材とを接続する前の状態を示す。
【
図1B】第1実施形態に係る管継手の斜視図であり、雌部材と雄部材とを接続した状態を示す。
【
図2A】第1実施形態に係る管継手の正面図であり、雌部材と雄部材とを接続する前の状態を示す。
【
図2B】第1実施形態に係る管継手の上面図であり、雌部材と雄部材とを接続する前の状態を示す。
【
図2C】第1実施形態に係る管継手の正面図であり、雌部材と雄部材とを接続した状態を示す。
【
図2D】第1実施形態に係る管継手の上面図であり、雌部材と雄部材とを接続した状態を示す。
【
図3A】
図2Bに示すIIIA-IIIA線に沿う断面図である。
【
図3B】
図2Aに示すIIIB-IIIB線に沿う断面図である。
【
図3C】
図2Dに示すIIIC-IIIC線に沿う断面図である。
【
図3D】
図2Cに示すIIID-IIID線に沿う断面図である。
【
図4】
図1Aに示す雄部材の斜視図であり、チューブ継手をリテーナから取り外した状態を示す。
【
図6A】
図2Aに示す雄部材を矢印VIAの方向に見た側面図である。
【
図6B】
図2Aに示す雌部材を矢印VIBの方向に見た側面図である。
【
図7A】第2実施形態に係る管継手の斜視図であり、雌部材と雄部材とを接続する前の状態を示す。
【
図7B】第2実施形態に係る管継手の斜視図であり、雌部材と雄部材とを接続した状態を示す。
【
図8A】第2実施形態に係る管継手の正面図であり、雌部材と雄部材とを接続する前の状態を示す。
【
図8B】第2実施形態に係る管継手の上面図であり、雌部材と雄部材とを接続する前の状態を示す。
【
図8C】第2実施形態に係る管継手の正面図であり、雌部材と雄部材とを接続した状態を示す。
【
図8D】第2実施形態に係る管継手の上面図であり、雌部材と雄部材とを接続した状態を示す。
【
図10】
図7Aに示す雄部材の斜視図であり、チューブ継手をリテーナから取り外した状態を示す。
【
図12A】
図8Aに示す雄部材を矢印XIIAの方向に見た側面図である。
【
図12B】
図8Aに示す雌部材を矢印XIIBの方向に見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。以下に示す各実施形態は、本発明の一例であり、本発明はこれに限られるものではない。各実施形態に関する以下の説明において、同様の構成については同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
<第1実施形態>
図1Aは、第1実施形態に係る管継手100の斜視図であり、雌部材10と雄部材20とを接続する前の状態を示す。
図1Bは、第1実施形態に係る管継手100の斜視図であり、雌部材10と雄部材20とを接続した状態を示す。
図2Aは、第1実施形態に係る管継手100の正面図であり、雌部材10と雄部材20とを接続する前の状態を示す。
図2Bは、第1実施形態に係る管継手100の上面図であり、雌部材10と雄部材20とを接続する前の状態を示す。
図2Cは、第1実施形態に係る管継手100の正面図であり、雌部材10と雄部材20とを接続した状態を示す。
図2Dは、第1実施形態に係る管継手100の上面図であり、雌部材10と雄部材20とを接続した状態を示す。
【0012】
図1A~
図2Dに示すように、管継手100は、雌部材10と、雌部材10に挿入される雄部材20と、を備えている。雄部材20が雌部材10に挿入されて雌部材10と接続された状態では、雄部材20と雌部材10との間が流体密状態になる。
図1A、
図1Bでは、2つの雄部材20が1つの雌部材10に両側から挿入される例が示されているが、本発明は、この形態に限られず、例えば雌部材10の片側に1つの雄部材20が挿入される形態であってもよい。また、雌部材10が90度曲がった形態でも良いし、空圧機器等に雌部材10の挿入部形状を直接加工したものでも良い。
【0013】
図3Aは、
図2Bに示すIIIA-IIIA線に沿う断面図である。
図3Bは、
図2Aに示すIIIB-IIIB線に沿う断面図である。
図3Cは、
図2Dに示すIIIC-IIIC線に沿う断面図である。
図3Dは、
図2Cに示すIIID-IIID線に沿う断面図である。
【0014】
図3A及び
図3Cに示すように、雌部材10は、2つの小径孔部11と、2つの小径孔部11に連続する共通孔部12と、を有する。2つの小径孔部11の中心軸は、雄部材20の挿入方向に略平行である。共通孔部12の壁面には、係合穴13が形成されている。
【0015】
雄部材20は、チューブTが取り付け可能な2つのチューブ継手21と、2つのチューブ継手21を保持するリテーナ22と、を備えている。
図1A~
図3Dでは、チューブ継手21の各々にチューブTが適正に取り付けられた状態が示されている。
【0016】
2つのチューブ継手21の中心軸は、互いに略平行であり、2つのチューブ継手21の中心軸の間隔は、雌部材10の2つの小径孔部11の間隔と略等しい。チューブ継手21の中心軸に沿って雄部材20を雌部材10に移動させることで、チューブ継手21が雌部材10の小径孔部11に挿入される。
【0017】
チューブ継手21の外周にはシールリング23が設けられている。
図3Cに示すように、チューブ継手21が雌部材10の小径孔部11に挿入された状態では、シールリング23は、チューブ継手21の外周面と小径孔部11の内周面との間を封止する。シールリング23により、雄部材20と雌部材10との間の流体密性が確保される。
【0018】
本実施形態において、2つのチューブ継手21の間を雄部材20の挿入方向に平行に延びる軸を「雄部材20の軸線」と称する。また、チューブ継手21を雌部材10の小径孔部11に挿入する方向を「前方」とし、前方の逆方向を「後方」とする。
【0019】
チューブ継手21の後方部分の外周は、前方に向かって僅かに膨出(単なる膨出でもよいし、いわゆる竹の子形状であってもよい)させた後、少し小径となるように形成されている。チューブTとチューブ継手21の接続は次の様に行う。チューブ継手21に対して、チューブTを強制的に外挿し、その後チューブTに外挿してあった環状体24をチューブTの膨出部上まで強制的に移動させる。チューブ継手21へのチューブTの挿入状態は目視できるので、チューブTがチューブ継手21に適正に外挿保持されるようにできる。
【0020】
環状体24は、チューブTをチューブ継手21の後方部分に密着させてチューブTがチューブ継手21から抜けることを防止するが、チューブ継手21の前記後方部分とチューブTの装着力が使用中に問題が生じないほど十分に強ければ、環状体24は、無くても構わない。
【0021】
図4は、
図1Aに示す雄部材20の斜視図であり、チューブ継手21をリテーナ22から取り外した状態を示す。
図4に示すように、リテーナ22は、チューブ継手21が嵌め込まれる2つの受け部22aと、複数の受け部22aを連結する連結部22bと、連結部22bから延びる棒状部22cと、を有している。受け部22aには、チューブ継手21の前後方向中間部分が嵌め込まれる。
【0022】
図3B及び
図3Dに示すように、棒状部22cは、連結部22bから雄部材20の軸線に対して拡径傾斜して延びている。棒状部22cの一部分は、雄部材20の軸線と平行に延びており、当該部分に設けられた窪み22dによって係合爪22eが形成されている。雄部材20を雌部材10に挿入した状態では、係合爪22eが雌部材10の係合穴13に入り込み、係合爪22eと係合穴13とが係合する。これにより、雌部材10と雄部材20とが抜け止め状態となる。
【0023】
棒状部22cの自由端側には操作部22fが設けられている。操作部22fを指でつまんで棒状部22cを雄部材20の軸線側に押圧すると、棒状部22cは、自由端とは反対側の基端を固定端として弾性変形する。これによって、雌部材10の係合穴13と棒状部22cの係合爪22eの係合が解除され、雌部材10から雄部材20の抜き出しが可能となる。
【0024】
管継手100では、雄部材20を雌部材10に挿入するだけで2本のチューブTが雌部材10に接続される。また、1つのリテーナ22で2つのチューブ継手21を保持する構造であるため、雄部材20の外形寸法を小さくできる。したがって、チューブTの接続作業において、作業工数を削減すると共に狭小な作業空間での作業性を向上させることができる。
【0025】
図5は、
図2Aに示すV-V線に沿う断面図である。
図4及び
図5に示すように、2つの受け部22aは、雄部材20の軸線を挟んで配置されている。受け部22aは、C型断面を有している。そのため、C型断面の開口部からチューブ継手21を受け部22aに嵌め込むことができるとともに抜き出すことができる。したがって、リテーナ22へチューブ継手21を容易に着脱することができる。
【0026】
2つのチューブ継手21をリテーナ22に取付けた状態では、チューブ継手21へのチューブTの取り付け作業が困難となる。リテーナ22へチューブ継手21を着脱可能とすることで、チューブ継手21にチューブTを取付けた後、チューブ継手21をリテーナ22に取付けることができる。したがって、複数のチューブTを雌部材10に接続する作業をより容易にすることができる。
【0027】
2つの受け部22aにおけるC型断面の開口部は、チューブ継手21の着脱性を考慮し、180°反対に、すなわち雄部材20の軸線とは反対側に向けられている。C型断面の腕部は、チューブ継手21の着脱時に腕部のたわみ量が均一になるように設定されている。C型断面の開口幅は、チューブ継手21の着脱時にC型断面の腕部が割れを起こさず、取りまわし時にチューブ継手21が受け部22aから外れないよう設定されている。
【0028】
図3B及び
図3Dに示すように、リテーナ22は、連結部22bから雄部材20の軸線に沿って延びるストッパー22gを有している。ストッパー22gは、棒状部22cの変形を規制する。したがって、棒状部22cの押圧操作時に棒状部22cが変形しすぎることを防止することができ、棒状部22cの破損を防止することができる。
【0029】
図5に示すように、2つの受け部22aの一方には、外側に突出する突起22hが設けられている。このような突起22hは、2つの受け部22aの他方には設けられていない。
【0030】
図6Aは、
図2Aに示す雄部材20を矢印VIAの方向に見た側面図である。
図6Aに示すように、突起22hは、雄部材20の軸線に沿って雄部材20を見て、チューブ継手21よりも外側に突出している。つまり、雄部材20の外面形状は、突起22hにより非対称に形成されている。
【0031】
図6Bは、
図2Aに示す雌部材10を矢印VIBの方向に見た側面図である。
図6Cは、
図2Dに示すVIC-VIC線に沿う断面図である。
図6B及び
図6Cに示すように、雌部材10には、突起22hを受け入れ可能な溝14が1つだけ形成されている。そのため、雄部材20の軸線周りに関して突起22hと溝14との位置を合致させた状態では雄部材20を雌部材10に挿入可能であるが、雄部材20の軸線周りに関して突起22hと溝14との位置を合致させていない状態では突起22hが雌部材10と干渉し雄部材20を雌部材10に挿入不能である。そのため、雄部材20を意図しない向きで雌部材10に挿入することを防ぐことができる。したがって、2つのチューブTを、雌部材10における意図した小径孔部11に確実に接続させることができる。
【0032】
図5及び
図6Cに示すように、突起22hは、受け部22aにおけるC型断面の開口端部から外側に延びている。そのため、突起22hは、C型断面の腕部の拡径動作に影響を与えない。したがって、受け部22aへチューブ継手21を容易に着脱することができる。
【0033】
図2A~
図2Dに示すように、雌部材10には1つの識別マーク15が設けられており、リテーナ22の操作部22fに1つの識別マーク22iが設けられている。識別マーク15と識別マーク22iとは、雄部材20の軸線周りに関して突起22hと溝14との位置を合致させた状態で同じ方向を向くようになっている。そのため、雄部材20を雌部材10に対して意図した方向に向けているかを目視により確認することができる。したがって、2つのチューブTを、雌部材10における意図した小径孔部11により確実に接続させることができる。
【0034】
本実施形態では、識別マーク15及び識別マーク22iは、雌部材10の外周面及びリテーナ22の操作部22fに膨出するように形成された三角形状のマークであるが、本発明は、この形態に限られない。
【0035】
管継手100では、以下に示す順序でチューブTの接続ができる。
【0036】
まず、チューブ継手21に対して、チューブTを強制的に外挿し、その後チューブTに外挿してあった環状体24をチューブTの膨出部上まで強制的に移動させる。もう1つのチューブ継手21とチューブTも同様に接続する。次に、2つのチューブ継手21をリテーナ22の受け部22aに嵌め込み、雄部材20を構成する。次に、雄部材20の軸線周りに関して突起22hと溝14との位置を合致させ、雄部材20を雌部材10に挿入する。係合爪22eが係合穴13に到達するまで雄部材20を雌部材10に挿入すると、小径孔部11とチューブ継手21とはシールリング23により流体密状態になる。また、棒状部22cの係合爪22eと雌部材10の係合穴13とは係止しており、抜け止め状態となる。
【0037】
また、管継手100では、以下に示す順序でチューブTの分離ができる。
【0038】
まず、棒状部22cの操作部22fを指で摘んで雄部材20の軸線側に押圧操作する。これにより、棒状部22cの係合爪22eと雌部材10の係合穴13との係合が解除される。この状態において雄部材20を雌部材10から抜き出すと、雄部材20が雌部材10から分離される。雄部材20のリテーナ22からチューブ継手21を取り外すことでチューブ継手21とチューブTが分離できる。
【0039】
<第2実施形態>
図7Aは、第2実施形態に係る管継手200の斜視図であり、雌部材210と雄部材220とを接続する前の状態を示す。
図7Bは、第2実施形態に係る管継手200の斜視図であり、雌部材210と雄部材220とを接続した状態を示す。
図8Aは、第2実施形態に係る管継手200の正面図であり、雌部材210と雄部材220とを接続する前の状態を示す。
図8Bは、第2実施形態に係る管継手200の上面図であり、雌部材210と雄部材220とを接続する前の状態を示す。
図8Cは、第2実施形態に係る管継手200の正面図であり、雌部材210と雄部材220とを接続した状態を示す。
図8Dは、第2実施形態に係る管継手200の上面図であり、雌部材210と雄部材220とを接続した状態を示す。
【0040】
以下では、第1実施形態との相違点を主に説明し、第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、図中に第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
図7A、
図7Bでは、2つの雄部材220が1つの雌部材210に両側から挿入される例が示されているが、本発明はこの形態に限られない。
【0041】
本実施形態においては、雌部材210は、4つの小径孔部11を有する。4つの小径孔部11の中心軸は、雄部材220の挿入方向に略平行であり、4つの小径孔部11は、環状に配置されている。リテーナ222は、4つのチューブ継手21が雄部材220の挿入方向に平行に延びる所定軸周りに環状に配置されるように4つのチューブ継手21を保持する。
【0042】
【0043】
図9A~
図9Dに示すように、雄部材220が雌部材210に挿入された状態では、チューブ継手21の各々が雌部材210の対応する小径孔部11に挿入される。シールリング23は、チューブ継手21の外周面と小径孔部11の内周面との間を封止する。シールリング23により、雄部材220と雌部材210との間の流体密性が確保される。
【0044】
本実施形態において、4つのチューブ継手21の配置の中心となる所定軸を「雄部材220の軸線」と称する。
【0045】
図10は、
図7Aに示す雄部材220の斜視図であり、チューブ継手21をリテーナ222から取り外した状態を示す。
図10に示すように、リテーナ222は、チューブ継手21が嵌め込まれる4つの受け部22aと、4つの受け部22aを連結する連結部222bと、連結部222bから延びる棒状部22cと、を有している。
【0046】
図9B及び
図9Dに示すように、雄部材220を雌部材210に挿入した状態では、係合爪22eが雌部材210の係合穴13に入り込み、係合爪22eと係合穴13とが係合する。これにより、雌部材210と雄部材220とが抜け止め状態となる。
【0047】
操作部22fを指でつまんで棒状部22cを雄部材220の軸線側に押圧すると、棒状部22cは、自由端とは反対側の基端を固定端として弾性変形する。これによって、雌部材210の係合穴13と棒状部22cの係合爪22eの係合が解除され、雌部材210から雄部材220の抜き出しが可能となる。
【0048】
管継手200では、雄部材220を雌部材210に挿入するだけで4本のチューブTが雌部材210に接続される。また、1つのリテーナ222で4つのチューブ継手21を保持する構造であるため、雄部材220の外形寸法をより小さくできる。したがって、チューブTの接続作業において、作業工数を削減すると共に狭小な作業空間での作業性をより向上させることができる。
【0049】
図11は、
図8Aに示すXI-XI線に沿う断面図である。
図11に示すように、4つの受け部22aは、雄部材220の軸線周りに環状に配置されている。C型断面の開口部は、チューブ継手21の着脱性を考慮し、雄部材220の軸線とは反対側に、すなわち雄部材220の軸線を中心とする放射方向外側に向けられている。
【0050】
図9B及び
図9Dに示すように、リテーナ222は、連結部222bから雄部材220の軸線に沿って延びるストッパー222gを有している。ストッパー222gは、棒状部22cの変形を規制する。したがって、棒状部22cの押圧操作時に棒状部22cが変形しすぎることを防止することができ、棒状部22cの破損を防止することができる。
【0051】
図11に示すように、連結部222bは、棒状部22cから雄部材220の軸線周り両方向に90°の部分が非対称に形成されている。具体的には、連結部222bは、
図11中上側に位置する上面222mと、
図11中下側に位置する下面222nとを含むが、上面222mは、下面222nよりも軸線から離れている。
【0052】
図12Aは、
図8Aに示す雄部材220を矢印XIIAの方向に見た側面図である。
図12Aに示すように、連結部222bの上面222mと下面222nは、雄部材220の軸線に沿って雄部材220を見て、チューブ継手21に覆われておらず、露出している。つまり、雄部材220の外面形状は、連結部222bの上面222mと下面222nにより非対称に形成されている。
【0053】
図12Bは、
図8Aに示す雌部材210を矢印XIIBの方向に見た側面図である。
図12Cは、
図8Cに示すXIIC-XIIC線に沿う断面図である。
図12B及び
図12Cに示すように、雌部材210には、共通孔部12の中心に向かって突出する突部216、217が形成されている。突部216、217は、共通孔部12の中心を挟んで配置されている。
【0054】
突部216の先端は、突部217の先端よりも共通孔部12の中心から離れている。そのため、雄部材220の軸線周りに関して連結部222bの上面222mと雌部材210の突部216との位置を合致させ連結部222bの下面222nと雌部材210の突部217との位置を合致させた状態では、雄部材220を雌部材210に挿入可能である。一方で、雄部材220の軸線周りに関して連結部222bの上面222mと雌部材210の突部216との位置を合致させず連結部222bの下面222nと雌部材210の突部217との位置を合致させていない状態では、雌部材210の突部217が雄部材220の連結部222bと干渉し雄部材220を雌部材210に挿入不能である。そのため、雄部材220を意図しない向きで雌部材210に挿入することを防ぐことができる。したがって、4つのチューブTを、雌部材210における意図した小径孔部11に確実に接続させることができる。
【0055】
雄部材220の外面形状を非対称にする連結部222bの上面222mと下面222nとは、棒状部22cから雄部材220の軸線周り両方向に90°の部分であり、棒状部22cの弾性変形に影響しない部分である。そのため、雌部材210と雄部材220との嵌合強度に影響がなく、雌部材210と雄部材220との接合及び分離を容易に行うことができる。
【0056】
管継手200では、以下に示す順序でチューブTの接続ができる。
【0057】
まず、チューブ継手21に対して、チューブTを強制的に外挿し、その後チューブTに外挿してあった環状体24をチューブTの膨出部上まで強制的に移動させる。他の3つのチューブ継手21とチューブTも同様に接続する。次に、4つのチューブ継手21をリテーナ222の受け部22aに嵌め込み、雄部材220を構成する。次に、雄部材220の軸線周りに関して連結部222bの上面222mと雌部材210の突部216との位置を合致させると共に連結部222bの下面222nと雌部材210の突部217との位置を合致させ、雄部材220を雌部材210に挿入する。係合爪22eが係合穴13に到達するまで雄部材220を雌部材210に挿入すると、小径孔部11とチューブ継手21とはシールリング23により流体密状態になる。また、棒状部22cの係合爪22eと雌部材210の係合穴13とは係止しており、抜け止め状態となる。
【0058】
また、管継手200では、以下に示す順序でチューブTの分離ができる。
【0059】
まず、棒状部22cの操作部22fを指で摘んで雄部材220の軸線側に押圧操作する。これにより、棒状部22cの係合爪22eと雌部材210の係合穴13との係合が解除される。この状態において雄部材220を雌部材210から抜き出すと、雄部材220が雌部材210から分離される。雄部材220のリテーナ222からチューブ継手21を取り外すことでチューブ継手21とチューブTが分離できる。
【0060】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明は上記の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0061】
上記第1実施形態ではチューブ継手21は2つであり、上記第2実施形態ではチューブ継手21は4つであるが、チューブ継手21は3つであってもよいし5つ以上であってもよい。
【0062】
上記第1及び第2実施形態では、棒状部22cの係合爪22eが雌部材10、210の係合穴13と係合するが、本発明はこの形態に限られず、棒状部22cが雌部材10、210の壁面に係合して雌部材10、210と雄部材20、220とを抜け止め状態とできればよい。
【0063】
上記第1実施形態では突起22hにより雄部材20の外面形状が非対称に形成され、上記第2実施形態では上面222m、下面222nにより雄部材220の外面形状が非対称に形成されているが、本発明はこれらの形態に限られない。雄部材20、220が非対称の外面形状を有し、雌部材10、210が、雄部材20、220の軸線周りに関して所定の方向に向けられた状態では雄部材20、220を受入れ可能であり、雄部材20、220の軸線周りに関して所定の方向とは異なる方向に向けられた状態では雄部材20、220を受入れ不能に形成されていればよい。
【符号の説明】
【0064】
100、200 管継手
10、210 雌部材
20、220 雄部材
21 チューブ継手
22、222 リテーナ
22a 受け部
22b、222b 連結部
22c 棒状部
T チューブ