(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117621
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】搬送車
(51)【国際特許分類】
B66C 9/16 20060101AFI20240822BHJP
B61B 3/02 20060101ALI20240822BHJP
B66C 7/02 20060101ALI20240822BHJP
B66C 9/04 20060101ALI20240822BHJP
B66C 9/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B66C9/16 Z
B61B3/02 C
B66C7/02
B66C9/04
B66C9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023820
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】荻須 基成
(72)【発明者】
【氏名】田村 健二
【テーマコード(参考)】
3F202
3F203
【Fターム(参考)】
3F202CB01
3F203CA02
3F203EB03
3F203EB14
3F203EB18
3F203EC05
3F203EC06
(57)【要約】
【課題】ガイドローラの可動範囲の調整作業に要する時間を短縮する。
【解決手段】搬送車(1)は、一対の走行レール(21)と、一対の走行レール(21)における特定箇所の上方に配置された上部ガイドレール(22)とを有する軌道(2)に沿って走行する。搬送車(1)は、一対の走行レール(21)上をそれぞれ転動する車輪(13)と、上部ガイドレール(22)の左右のいずれか一方の側面に接して転動するガイドローラ(17)と、軌道(2)における特定箇所に応じてガイドローラ(17)の上部ガイドレール(22)に接する位置を切り替える切替機構(18)と、ガイドローラ(17)の左右方向の移動を規制する移動規制部(19)と、を備える。移動規制部(19)は、ガイドローラ(17)の移動を規制する位置を複数の箇所で変更可能な構造を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の走行レールと、前記一対の走行レールにおける特定箇所の上方に配置された少なくとも1つのガイドレールとを有する軌道に沿って走行する搬送車であって、
前記一対の走行レール上をそれぞれ転動する車輪と、
前記ガイドレールの左右のいずれか一方の側面に接して転動するガイドローラと、
前記軌道における前記特定箇所に応じて前記ガイドローラの前記ガイドレールに接する位置を切り替える切替機構と、
前記ガイドローラの左右方向の移動を規制する移動規制部と、を備え、
前記移動規制部は、前記ガイドローラの移動を規制する位置を複数の箇所で変更可能な構造を有する、搬送車。
【請求項2】
前記移動規制部は、
前記ガイドローラの左側および右側に配置される一対の支持体と、
ボルトと、
前記ボルトに嵌め入れられる少なくとも1つのナットと、を備え、
前記ボルトは、その両端が前記一対の支持体の両面側のそれぞれに位置するように配置され、その頭部と1つの前記ナットとが前記一対の支持体のそれぞれを挟持し、または、2つの前記ナットが前記一対の支持体のそれぞれを挟持することにより前記支持体に支持される、請求項1に記載の搬送車。
【請求項3】
前記ボルトは、一定の高さの第1段差が一定の間隔をおくように複数形成されたネジ山を有し、
前記ナットは、前記第1段差に合致する第2段差が複数形成されたネジ溝を有する、請求項2に記載の搬送車。
【請求項4】
前記移動規制部は、
一定の間隔をおくように複数形成された、前記左右方向の一定の高さの第1段差を有し、前記ガイドローラの左側および右側に配置される一対の支持部材と、
前記第1段差に合致するように複数形成された第2段差を有し、前記第2段差が前記第1段差に合致した状態で前記一対の支持部材に着脱可能に固定される一対の固定部材と、を有し、
前記支持部材に対する前記固定部材の前記搬送車の進行方向における位置が変更可能であることにより、前記第2段差の前記第1段差に合致する位置が変更可能である、請求項1に記載の搬送車。
【請求項5】
前記移動規制部により規定される前記ガイドローラの左右方向の可動範囲の調整許容量は、前記車輪が前記一対の走行レールに接した位置と前記ガイドローラが前記ガイドレールに接した位置との間の距離を前記車輪の間隔で除した値に、前記ガイドローラが前記ガイドレールに接した状態で前記車輪が前記一対の走行レールに対して浮く浮き量の許容範囲を乗じることにより算出され、
前記第1段差および前記第2段差は、前記調整許容量よりも小さく設定される、請求項3または4に記載の搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道上を走行する搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
OHT(Over Head Hoist Transport)、OHS(Over Head Shuttle)などの搬送車は、天井に吊り下げられるように設置された軌道上を走行する台車によって被搬送物を所定の場所に搬送する装置として半導体製造、液晶製造などの分野において好適に用いられている。このような台車は、軌道を構成する左右一対の走行レール上で転動する車輪によって走行する。
【0003】
軌道が分岐および合流する箇所では、走行方向に応じて一対の走行レールのうちの左右いずれかが途切れ、台車の左右の車輪の片側のみが走行レール上を転動することとなる。片側の車輪のみでは、台車の姿勢を保持することが困難である。また、車輪は走行レールに沿うように動きを規制されていないため、走行レールがカーブしている箇所では、台車が直進しようとして、走行レールをはずれてしまう。
【0004】
このため、例えば特許文献1には、上記のような箇所において、台車が、補助的な軌道として走行レールの上方に設けられた上部ガイドレールにも支えられて走行することが開示されている。台車には、上部ガイドレールに支持されるガイドローラが設けられており、ガイドローラが上部ガイドレールに支持される左右の位置が必要に応じて切り替えられる。
【0005】
ところで、搬送車には個体差があるため、上部ガイドレールに支持される位置の切り替えのためにガイドローラが移動する可動範囲には、ばらつきがある。また、搬送車の車輪が摩耗することにより、車輪と上部ガイドレールの位置関係が徐々に変化し、上部ガイドレールが存在する箇所において搬送車の水平が保てなくなる場合がある。これらの場合、ガイドローラが上部ガイドレールに支持される位置が規定位置から大きくずれると、搬送車の傾きが大きくなる。その結果、上部ガイドレールが存在する箇所と存在しない箇所との境界で搬送車の挙動が不安定になる。具体的には、上部ガイドレールが存在する箇所で搬送車が傾くことにより片方の車輪が走行レールから浮いている場合、搬送車1が上部ガイドレールの存在しない箇所に移行すると、搬送車1が上部ガイドレールに支持されなくなる。このため、浮いた車輪が走行レールに落ちることにより、搬送車へ衝撃や大きな振動が発生する。
【0006】
従来、上記のような可動範囲のばらつきを許容範囲に収めたり、当該ばらつきを車輪の摩耗状態に応じて最適化したりするために、可動範囲を調整することが行われている。例えば、ガイドローラの可動範囲を規定する位置に、所定の厚みの板部材をシム(shim)として挿入したり抜き出したりして可動範囲を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような可動範囲の調整では、軌道を模した治具に搬送車を配置し、ガイドローラが上部ガイドレールに支持された状態での走行レールからの車輪の浮き量を確認しながら、板部材の抜き差しを行う。このため、作業時間がかかるという不都合があった。
【0009】
本発明の一態様は、ガイドローラの可動範囲の調整作業に要する時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る搬送車は、一対の走行レールと、前記一対の走行レールにおける特定箇所の上方に配置された少なくとも1つのガイドレールとを有する軌道に沿って走行する搬送車であって、前記一対の走行レール上をそれぞれ転動する車輪と、前記ガイドレールの左右のいずれか一方の側面に接して転動するガイドローラと、前記軌道における前記特定箇所に応じて前記ガイドローラの前記ガイドレールに接する位置を切り替える切替機構と、前記ガイドローラの左右方向の移動を規制する移動規制部と、を備え、前記移動規制部は、前記ガイドローラの移動を規制する位置を複数の箇所で変更可能な構造を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、ガイドローラの可動範囲の調整作業に要する時間を短縮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態1,2に係る切替機構を有する搬送車を搬送する搬送システムの構成を示す正面図である。
【
図3】上記搬送車におけるガイドローラが上記搬送車の進行方向に対する左側の位置に切り替えられた状態を示す上記搬送車の上部の構成を示す平面図である。
【
図4】上記ガイドローラが上記進行方向に対する右側の位置に切り替えられた状態を示す上記搬送車の上部の構成を示す平面図である。
【
図5】上記実施形態1に係る第1状態にある切替機構の構成を示す平面図である。
【
図6】
図5の上記切替機構における支持板およびボルトの構造を示す斜視図である。
【
図7】上記実施形態1に係る第2状態にある切替機構の構成を示す平面図である。
【
図8】上記実施形態1に係る第3状態にある切替機構の構成を示す平面図である。
【
図9】上記実施形態1の変形例に係る切替機構におけるボルトおよびナットの構造を示す側面図である。
【
図10】上記ボルトおよび上記ナットの構造を示す斜視図である。
【
図11】上記実施形態2に係る第1の状態にある切替機構の構成を示す平面図である。
【
図12】上記実施形態2に係る第2の状態にある切替機構の構成を示す平面図である。
【
図13】上記実施形態2に係る第3の状態にある切替機構の構成を示す平面図である。
【
図14】上記実施形態1,2に係る切替機構についての移動規制部に設けられた段差を規定するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔搬送システムの構成〕
本発明の実施形態1,2に係る搬送車1を有する搬送システムについて、
図1~
図4を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態1,2に係る切替機構を有する搬送車1を搬送する搬送システムの構成を示す正面図である。
図2は、搬送車1の構成を示す斜視図である。
図3は、搬送車1におけるガイドローラ17が搬送車1の進行方向に対する左側の位置に切り替えられた状態を示す搬送車1の上部の構成を示す平面図である。
図4は、ガイドローラ17が進行方向に対する右側の位置に切り替えられた状態を示す搬送車1の上部の構成を示す平面図である。
【0015】
図1に示すように、搬送システムは、天井100に吊り下げられるように設けられている。搬送システムは、搬送車1と、軌道2とを備えている。
【0016】
軌道2は、搬送車1が走行するために設けられており、走行レール21と、上部ガイドレール22(ガイドレール)と、保持枠23と、吊下金具24とを有している。
【0017】
走行レール21は、搬送車1の移動経路に互いに平行となるように一対配置されている。走行レール21は、搬送車1の移動経路において間隔をおいて配される複数の保持枠23の下部に設けられている。保持枠23は、複数の吊下金具24によって天井100に吊り下げられるように支持されている。
【0018】
上部ガイドレール22は、軌道2の合流部および分岐部において、走行レール21の一方が存在しない箇所(特定箇所)および軌道2がカーブしている箇所(特定箇所)の上方に配置されている。上部ガイドレール22は、搬送車1を搬送車1の上部で支持するとともに、軌道2に沿った移動をガイドする。上部ガイドレール22は、複数の保持枠23の上部における下端面に取り付けられており、後述するガイドローラ17が当接するように垂下する部分に、左側面22a(側面)および右側面22b(側面)を有している。左側面22aは、搬送車1の進行方向に対する左側の側面であり、右側面22bは、進行方向に対する右側の側面である。
【0019】
なお、
図1は、上部ガイドレール22が存在し、かつ右側の走行レール21が存在しない特定箇所を示しているが、車輪12と走行レール21との関係を示すために、便宜上、右側の走行レール21を含んでいる。
【0020】
搬送車1は、走行レール21上を搬送方向に走行することにより、容器(図示せず)を搬送先に搬送する。容器内には、例えば、半導体製造に用いられるウェハ、レチクルなどを収容する。
図2、
図3および
図4にも示すように、搬送車1は、搬送体11と、駆動部12と、車輪13と、支持軸14と、支持水平板15と、サイドローラ16と、ガイドローラ17と、切替機構18と、移動規制部19とを有している。
【0021】
搬送体11は、容器を収納するとともに、上部に移載機構(図示せず)が配置されている。搬送体11は、容器の出し入れが可能となるように、搬送体11の両側面側が開放されている。
【0022】
駆動部12は、車輪13を駆動する動力の発生源であり、モータなどにより構成されている。駆動部12は、搬送方向に少なくとも2つ設けられており、それぞれが搬送体11の上面に回動可能となるように取り付けられている。車輪13は、走行レール21のそれぞれ対応する上面上を転動しうる位置に一対配置されている。
【0023】
支持軸14は、搬送体11を駆動部12に吊り下げるように支持する軸部材である。支持軸140は、駆動部12の下端面と搬送体11の上端面とを接続するように設けられている。
【0024】
支持水平板15は、支持軸14に設けられており、水平面を有している。支持水平板15は、当該水平面上にサイドローラ16を回転可能に支持している。
【0025】
サイドローラ16は、支持軸14の両側に二対配置されており、走行レール21の側面に当接する。サイドローラ16は、側面上を転動することにより、駆動部12の姿勢を水平方向の規定範囲内に維持する。
【0026】
ガイドローラ17は、上部ガイドレール22の垂下した部分(垂下部)の左側面22aまたは右側面22bに当接して転動するローラである。ガイドローラ17は、
図1において矢印にて示す一対の走行レール21の幅方向にスライドすることにより、垂下部に対する位置を変更して、垂下部の左側面22aまたは右側面22bに当接することが可能である。
【0027】
ガイドローラ17は、上述した軌道2の分岐部および合流部において走行レール21が存在しない側と反対側にある左側面22aまたは右側面22bに当接する。これにより、ガイドローラ17は、分岐部および合流部において存在する走行レール21とともに搬送車1の水平方向の姿勢を維持する。また、ガイドローラ17は、上述した軌道2のカーブ箇所において内側の走行レール21、すなわち曲率半径の小さい走行レール21の側にある左側面22aまたは右側面22bに当接する。これにより、ガイドローラ17は、内側の走行レール21とともに搬送車1の水平方向の姿勢を維持する。
【0028】
切替機構18は、ガイドローラ17の位置をガイドローラ17の移動方向にスライドさせて切り替える機構であり、駆動部12上に設けられている。切替機構18は、フレーム18aと、ガイド板18bと、キャリア18cと、突出部18dとを有している。
【0029】
フレーム18aは、駆動部12の上面に固定されており、ガイド板18b、キャリア18cおよび突出部18dを支持する。ガイド板18bは、ガイドローラ17の左右方向の移動をガイドする板状の部材である。キャリア18cは、その上にガイドローラ17を支持しており、ガイド板18bに沿って移動する移動体である。突出部18dは、キャリア18cが移動規制部19と接触しないようにキャリア18cと移動規制部19との間隔を設ける部材である。
【0030】
切替機構18は、その他、図示はしないが、キャリア18cを駆動するためのモータ、ボールねじなどの駆動機構を有している。当該駆動機構により、キャリア18cを左右方向にスライドするように駆動することができる。
図3に示すように、ガイドローラ17が左方向に移動した状態では、ガイドローラ17が左側面22aに接触する。一方、
図4に示すように、ガイドローラ17が右方向に移動した状態では、ガイドローラ17が右側面22bに接触する。
【0031】
移動規制部19は、ガイドローラ17の左右方向の移動を規制するように一対設けられており、それぞれフレーム18aの左端部および右端部に配置されている。移動規制部19は、進行方向に伸びるように、フレーム18aの進行方向に沿う幅のほぼ全体にわたって配置されている。
【0032】
図3に示すように、左側の移動規制部19は、キャリア18cが左側に移動した状態で、突出部18dが左側の移動規制部19の内側の面に当接することにより、キャリア18cの左方向の移動を規制する。また、
図4に示すように、右側の移動規制部19は、キャリア18cが右側に移動した状態で、突出部18dが右側の移動規制部19の内側の面に当接することにより、キャリア18cの右方向の移動を規制する。移動規制部19は、ガイドローラ17の移動を規制する位置を複数の箇所で変更可能な構造を有している。当該構造については、後述する実施形態1および2において説明する。
【0033】
なお、上部ガイドレール22は、上述した特定箇所において1つ設けられているが、特定箇所において複数設けられていてもよい。また、ガイドローラ17は、2個を1組として設けられているが、上部ガイドレール22の数に応じた組数設けられていてもよい。これは、後述する実施形態1,2においても同様である。
【0034】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る切替機構18について、
図5~
図8を参照して説明する。
【0035】
図5は、第1の状態にある切替機構18の構成を示す平面図である。
図6は、切替機構18における支持板191およびボルト192の構造を示す斜視図である。
図7は、第2の状態にある切替機構18の構成を示す平面図である。
図8は、第3の状態にある切替機構18の構成を示す平面図である。
【0036】
図5に示すように、切替機構18には、移動規制部19として移動規制部19Aが配置されている。移動規制部19Aは、一対の支持板191(支持体)と、ボルト192と、第1ナット193Aと、第2ナット193Bと、ナット194とを有している。
【0037】
支持板191は、それぞれ、ガイドローラ17の左側および右側の、フレーム18aの左端部および右端部の付近に配置されている。支持板191は、進行方向に伸びるように、フレーム18aの進行方向に沿う幅のほぼ全体にわたって配置されている。
図6に示すように、支持板191は、板状の部材であり、両端に切欠き191aが設けられている。なお、便宜上、
図6においては、第1ナット193Aおよび第2ナット193Bとナット194の図示を省略している。
【0038】
ボルト192は、頭部192aと、軸部192bと、面当部192cとを有している。頭部192aは、軸部192bの一端に設けられている。軸部192bはネジ軸である。面当部192cは、軸部192bの他端に設けられており、円盤状に形成されている。面当部192cは、切替機構18の突出部18dが当接することから、当接面に当接時の衝撃を緩和するための緩衝材が貼り付けられている。緩衝材としては、例えば、ウレタン樹脂が設けられる。
【0039】
ボルト192は、支持板191の切欠き191a内に軸部192bが位置するように配置される。ボルト192は、その両端が支持板191の両面側のそれぞれに位置するように配置される。また、ボルト192は、面当部192cが突出部18dに対向する位置で、第1ナット193A、第2ナット193B、ナット194および頭部192aにより固定される。
【0040】
第1ナット193A、第2ナット193Bおよびナット194は、ボルト192の軸部192bに嵌め入れられる。第1ナット193Aおよび第2ナット193Bは、支持板191のガイドローラ17側の面(内側面)と面当部192cとの間に配置され、締結力を高めるようにダブルナットとして機能している。ナット194は、支持板191の内側面とは反対側の面(外側面)と頭部192aとの間に配置されている。
【0041】
図5、
図7および
図8に示すように、ボルト192は、面当部192cを有する先端がガイドローラ17の側に位置するように配置されている。また、ボルト192は、第1ナット193Aおよび第2ナット193Bと、ナット194または頭部とが支持板を191を挟持することにより支持板191に支持される。
【0042】
上記のように構成される移動規制部19Aにおいて、ガイドローラ17の可動範囲を調整するには、ガイドローラ17が上部ガイドレール22の左側面22aまたは右側面22bのいずれかに接触する位置にある状態で作業が行われる。なお、
図5、
図7および
図8では、便宜上、ガイドローラ17が中央にある状態(通常の調整時の状態ではない状態)として描かれている。これは、後述する
図11~
図13についても同じである。
【0043】
図5に示す第1状態では、第1ナット193Aおよび第2ナット193Bとナット194とが、第1ナット193Aと面当部192cとが密着する位置に挟持されている。この第1状態では、支持板191の外側面と面当部192cの当接面との間の距離L1が最も短くなる。したがって、ガイドローラ17の可動範囲は最も広く設定される。
【0044】
また、
図7に示す第2状態では、第1ナット193Aおよび第2ナット193Bとナット194とが、第1ナット193Aが面当部192cと間隔をおいた位置に挟持されている。この第2状態では、支持板191の外側面と面当部192cの当接面との間の距離L2が距離L1よりも長くなる。したがって、ガイドローラ17の可動範囲は第1状態よりも狭く設定される。
【0045】
また、
図8に示す第3状態では、第1ナット193Aおよび第2ナット193Bと頭部192aとが、第1ナット193Aが面当部192cと最も広い間隔をおいた位置に挟持されている。この第3状態では、ナット194が用いられず、支持板191の外側面と面当部192cの当接面との間の距離L3が最も長くなる。したがって、ガイドローラ17の可動範囲は最も狭く設定される。
【0046】
このように、実施形態1に係る移動規制部19Aによれば、ボルト192の先端に設けられた面当部192cの位置が、ボルト192が支持板191に支持される位置を調整することにより、上記の第1~第3状態だけでなく無段階に調整される。これにより、ガイドローラ17の可動範囲の調整作業を簡素化することができる。したがって、可動範囲の調整に要する時間を、従来の可動範囲の調整方法と比べて大幅に短縮することができる。
【0047】
また、ガイドローラ17が上部ガイドレール22の左側面22aまたは右側面22bのいずれかに接触する位置にある状態で作業が行われる。したがって、ガイドローラ17が位置する側の移動規制部19Aにおいて調整作業を行うことができる。
【0048】
続いて、実施形態1の変形例について説明する。
図9は、当該変形例に係る切替機構18におけるボルト195およびナット196の構造を示す側面図である。
図10は、ボルト195およびナット196の構造を示す斜視図である。
【0049】
図9および
図10に示すように、本変形例に係る切替機構18が備える移動規制部19Aは、ボルト192に代えてボルト195を有するとともに、第1ナット193A、第2ナット193Bおよびナット194をすべてナット196に置き替えている。
【0050】
ボルト195は、頭部195aと、軸部195bとを有している。頭部195aは、軸部195bの一端に設けられている。軸部195bは、ネジ軸であり、ネジ山195cを有している。ネジ山195cは、一定の高さHの段差195d(第1段差)が一定の間隔Dをおくように複数形成されている。ボルト195の先端には、図示を省略しているが、上述した面当部192cと同等の面当部が設けられている。
【0051】
ナット196は、ボルト195の軸部195bに嵌め合うネジ孔196aを有している。ネジ孔196aは、ネジ溝196bを有している。ネジ溝196bは、段差195dに合致する段差196c(第2段差)が複数形成されている。つまり、段差196cは、段差195dと同じく、一定の高さHを有するとともに、一定の間隔Dをおくように形成されている。
【0052】
上記のように構成される変形例によれば、ボルト195におけるナット196の位置をボルト195の段差195dとナット196の段差196cとが合致する位置で段階的に変更することができる。これにより、ガイドローラ17の可動範囲の調整量を規定の最少単位、すなわち段差195d,196cの高さHで調整することができる。
【0053】
また、上述した実施形態1では、第1ナット193Aおよび第2ナット193Bによるダブルナット構造でボルト192を強固に支持板191に支持することができる。しかしながら、搬送車1が走行時のガイドローラ17の切り替えで生じる衝撃の繰り返しや、走行時の振動などにより、第1ナット193Aおよび第2ナット193Bが緩んで、ボルト192における固定位置がずれる可能性がある。
【0054】
これに対し、上記の変形例によれば、ボルト195の段差195dとナット196の段差196cとの噛み合いにより、ボルト195におけるナット196の固定位置がずれにくい。
【0055】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る切替機構について、
図11~
図13を参照して説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0056】
図11は、実施形態2に係る第1状態にある切替機構18の構成を示す平面図である。
図12は、第2状態にある切替機構18の構成を示す平面図である。
図13は、第3状態にある切替機構18の構成を示す平面図である。
【0057】
図11に示すように、切替機構18には、移動規制部19として移動規制部19Bが配置されている。移動規制部19Bは、一対の支持部材197と、一対の固定部材198と、一対のネジ199とを有している。
【0058】
支持部材197は、それぞれ、ガイドローラ17の左側および右側の、フレーム18aの左端部および右端部の付近に配置されている。支持部材197は、進行方向に伸びるように、フレーム18aの進行方向に沿う幅のほぼ全体にわたって配置されている。支持板191は、板状の部材であり、段差面197aを有している。段差面197aは、ガイドローラ17の側に形成されており、複数の段差197b(第1段差)を有している。段差197bは、左右方向の一定の高さHを有するとともに、一定の間隔Dをおくように形成されている。
【0059】
固定部材198は、板状の部材であり、支持部材197の段差面197aと合わさる段差面198aを有している。段差面198aは、複数の段差198b(第2段差)を有している。段差198bは、支持板191の段差191bに合致するように、段差197bと同じく、左右方向の一定の高さHを有するとともに、一定の間隔Dをおくように形成されている。
【0060】
固定部材198は、左右方向に直交する方向、すなわち進行方向およびその逆方向に異なる位置で段差198bが段差197bに合致した状態で支持部材197に着脱可能に固定される。このため、固定部材198には、ネジ199に嵌め合うネジ孔198cが複数箇所に間隔をおいて設けられている。固定部材198は、支持部材197を貫通するネジ199がネジ孔198cに締め付けられることによって支持部材197に固定される。
【0061】
また、固定部材198における段差面198aと反対側の面(内側面)は、ガイドローラ17に面しており、平坦に形成されている。当該内側面は、切替機構18の突出部18dが当接することから、当接時の衝撃を緩和するための緩衝材が、少なくとも突出部18dが当接する箇所に貼り付けられている。緩衝材としては、上述した面当部192cの緩衝材と同じくウレタン樹脂が用いられる。
【0062】
上記のように構成される移動規制部19Bにおいて、
図11に示す第1状態では、固定部材198が、支持部材197の最も高い位置にある段差197bと、固定部材198の最も低い位置にある段差198bとが合致する位置で支持部材197に固定される。この第1状態では、支持部材197の段差面197aとは反対側の面(外側面)と固定部材198の内側面との間の距離L1が最も短くなる。したがって、ガイドローラ17の可動範囲は最も広く設定される。
【0063】
また、
図12に示す第2状態では、固定部材198が、支持部材197の最も高い位置にある段差197bと、固定部材198の2番目に低い位置にある段差198bとが合致する位置で支持部材197に固定される。この第2状態では、支持部材197の外側面と固定部材198の内側面との間の距離L2が距離L1より段差197b,198bの高さHだけ短くなる。したがって、ガイドローラ17の可動範囲は第1状態よりも狭く設定される。
【0064】
また、
図13に示す第3状態では、固定部材198が、支持部材197の最も高い位置にある段差197bと、固定部材198の3番目に低い位置にある段差198bとが合致する位置で支持部材197に固定される。この第3状態では、支持部材197の外側面と固定部材198の内側面との間の距離L3が距離L2より段差197b,198bの高さHだけ短くなる。したがって、ガイドローラ17の可動範囲は第2状態よりも狭く設定される。
【0065】
このように、実施形態2に係る移動規制部19Bによれば、固定部材198の段差198bが支持部材197の段差197bと合致する位置が、固定部材198を進行方向およびその逆方向に移動させることにより、上記の第1~第3状態に調整される。これにより、ガイドローラ17の可動範囲の調整作業を簡素化することができる。したがって、可動範囲の調整に要する時間を、従来の可動範囲の調整方法と比べて大幅に短縮することができる。
【0066】
なお、段差197b,198bの数は、上記の例に限定されないことは勿論である。これにより、可動範囲の調整を上記の4段階以上に増やすことも可能である。また、可動範囲を、左右の移動規制部19Bについて個別に調整することも可能である。
【0067】
〔段差の規定〕
上述した実施形態1,2に係る切替機構18における段差の規定について、
図14を参照して説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1および2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図14は、切替機構18についての移動規制部19A,19Bに設けられた段差を規定するための図である。
【0068】
ここでは、実施形態1の変形例におけるボルト195のネジ山195cの段差195dおよびナット196のネジ溝196bの段差196cの高さHと、実施形態2における支持部材197の段差197bおよび固定部材198の段差198bの高さHとを規定することについて説明する。
【0069】
図1に示すように、両側の車輪13が走行レール21に接触している状態では、搬送車1の重心は下方にある。この状態から、ガイドローラ17の位置が少し左右にずれるだけで、搬送車1の全体が傾く。例えば、搬送車1が左側に傾くことにより、右側の車輪13のみが走行レール21から浮いた状態に変化すると、左側の車輪13の走行レール21との接触点と、ガイドローラ17の上部ガイドレール22との接触点とで搬送車1を支えることになる。左右の車輪13が、走行レール面に対して水平状態であることが理想的であるが、車輪13が走行レール21に対して浮く浮き量が許容範囲ΔAであれば、不都合なく走行が可能である。
【0070】
ここで、移動規制部19A,19Bにより規定されるガイドローラ17の左右方向の可動範囲の調整許容量ΔBは、ΔA:ΔB=L:Tの関係により、次式のように表される。
【0071】
ΔB=ΔA(T/L)
ここで、
図14に示すように、Lは一対の車輪13の間隔であり、Tは車輪13が走行レール21に接した位置(中心位置)とガイドローラ17が上部ガイドレール22に接した位置(中心位置)との間の距離である。
【0072】
また、上記の段差195d,196cおよび段差197b,198bの高さHは、上記の式により算出される調整許容量ΔBよりも小さく設定される。
【0073】
このように、高さHが調整許容量ΔBよりも小さい。それゆえ、移動規制部19A,19Bにより、1つの段差195d,196cおよび段差197b,198bの分だけガイドローラ17の移動を規制する位置を調整しても、当該位置が調整許容量ΔBを超えて調整されることを防止できる。
【0074】
〔まとめ〕
以上のように、本発明の態様1に係る搬送車は、一対の走行レールと、前記一対の走行レールにおける特定箇所の上方に配置された少なくとも1つのガイドレールとを有する軌道に沿って走行する搬送車であって、前記一対の走行レール上をそれぞれ転動する車輪と、前記ガイドレールの左右のいずれか一方の側面に接して転動するガイドローラと、前記軌道における前記特定箇所に応じて前記ガイドローラの前記ガイドレールに接する位置を切り替える切替機構と、前記ガイドローラの左右方向の移動を規制する移動規制部と、を備え、前記移動規制部が、前記ガイドローラの移動を規制する位置を複数の箇所で変更可能な構造を有する。
【0075】
上記の構成によれば、ガイドローラの移動を規制する位置が複数の箇所で変更されるので、従来技術のように当該位置を調整するための板部材の抜き差しが不要になる。これにより、ガイドローラの可動範囲を調整する作業が簡素化される。したがって、可動範囲の調整作業に要する時間を短縮することができる。
【0076】
本発明の態様2に係る搬送車は、上記態様1において、前記移動規制部が、前記ガイドローラの左側および右側に配置される一対の支持体と、ボルトと、前記ボルトに嵌め入れられる少なくとも1つのナットと、を備え、前記ボルトが、その両端が前記一対の支持体の両面側のそれぞれに位置するように配置され、その頭部と1つの前記ナットとが前記一対の支持体のそれぞれを挟持し、または、2つの前記ナットが前記一対の支持体のそれぞれを挟持することにより前記支持体に支持される。
【0077】
上記の構成では、ボルトのガイドローラ側の端、例えば
図5に示す面当部192cの位置によってガイドローラの左右の移動を規制する位置を調整することができる。ボルトの上記端の位置は、ボルトの支持体に支持される位置をナットの位置を変更することによって調整される。それゆえ、ガイドローラの可動範囲を容易に調整することができる。したがって、可動範囲の調整に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0078】
本発明の態様3に係る搬送車は、上記態様2において、前記ボルトが、一定の高さの第1段差が一定の間隔をおくように複数形成されたネジ山を有し、前記ナットが、前記第1段差に合致する第2段差が複数形成されたネジ溝を有する。
【0079】
上記の構成によれば、ボルトにおけるナットの位置をボルトの第1段差とナットの第2段差とが合致する位置で段階的に変更することができる。これにより、可動範囲の調整量を規定の最少単位で調整することができる。
【0080】
本発明の態様4に係る搬送車は、上記態様1において、前記移動規制部が、一定の間隔をおくように複数形成された、前記左右方向の一定の高さの第1段差を有し、前記ガイドローラの左側および右側に配置される一対の支持部材と、前記第1段差に合致する第2段差が複数形成された第2段差を有し、前記第2段差が前記第1段差に合致した状態で前記一対の支持部材に着脱可能に固定される一対の固定部材と、を有し、前記支持部材に対する前記固定部材の前記搬送車の進行方向における位置が変更可能であることにより、前記第2段差の前記第1段差に合致する位置が変更可能である。
【0081】
上記の構成によれば、支持部材に対して左右方向に直交する方向に固定部材の位置を適宜変更することで、第2段差面が第1段差面に合致する位置を段階的に変更することができる。これにより、固定部材のガイドローラ側の面の位置を左右方向に段階的に変更することができる。したがって、可動範囲の調整量を規定の最少単位で調整することができる。
【0082】
本発明の態様5に係る搬送車は、上記態様2または3において、前記移動規制部により規定される前記ガイドローラの左右方向の可動範囲の調整許容量が、前記車輪が前記一対の走行レールに接した位置と前記ガイドローラが前記ガイドレールに接した位置との間の距離を前記車輪の間隔で除した値に、前記ガイドローラが前記ガイドレールに接した状態で前記車輪が前記一対の走行レールに対して浮く浮き量の許容範囲を乗じることにより算出され、前記第1段差および前記第2段差は、前記調整許容量よりも小さく設定される。
【0083】
上記の構成では、第1段差および第2段差が調整許容量よりも小さいので、移動規制部により、1つの第1段差および第2段差の分だけガイドローラの移動を規制する位置を調整しても、当該位置が調整許容量を超えて調整されることを防止できる。
【0084】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、本発明は、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1 搬送車
13 車輪
17 ガイドローラ
18 切替機構
19,19A,19B 移動規制部
21 走行レール
22 上部ガイドレール(ガイドレール)
22a 左側面(側面)
22b 右側面(側面)
191 支持板(支持体)
192,195 ボルト
192a,195a 頭部
193A,193B,194,196 ナット
195c ネジ山
195d 段差(第1段差)
196b ネジ溝
196c 段差(第2段差)
197 支持部材
198 固定部材
197 支持部材
198 固定部材
197b 段差(第1段差)
198b 段差(第2段差)