(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117636
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】マタタビ成分抽出液塗工紙
(51)【国際特許分類】
D21H 21/14 20060101AFI20240822BHJP
D21H 21/36 20060101ALI20240822BHJP
D21H 19/10 20060101ALI20240822BHJP
A01K 1/015 20060101ALI20240822BHJP
A01K 13/00 20060101ALI20240822BHJP
A01N 65/16 20090101ALI20240822BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240822BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20240822BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
D21H21/14 B
D21H21/36
D21H19/10 B
A01K1/015 A
A01K13/00 Z
A01N65/16
A01P3/00
A01P1/00
A01N25/04 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023841
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】樋澤 舞雪
【テーマコード(参考)】
2B101
4H011
4L055
【Fターム(参考)】
2B101AA13
2B101GB01
4H011AA02
4H011AA04
4H011BB22
4H011BC18
4H011BC19
4H011DA16
4H011DH02
4L055AG34
4L055AG43
4L055AG63
4L055AG71
4L055AH21
4L055AH37
4L055BE08
4L055EA10
4L055EA12
4L055EA14
4L055FA20
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で猫に対する良好な誘引効果を有し、抗菌抗ウィルス性能に優れるマタタビ成分抽出液塗工紙を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係るマタタビ成分抽出液塗工紙は、基材と、基材の表面に積層される塗工層とを備え、塗工層がマタタビ成分抽出物を含有し、塗工層が抗菌剤又は抗ウィルス剤を含有し、塗工層の片面あたりのマタタビ成分抽出物の含有量が固形分換算で0.005g/m2以上0.100g/m2以下であり、塗工層の片面あたりの抗菌剤又は抗ウィルス剤の含有量が固形分換算で0.005g/m2以上0.100g/m2以下であり、上記基材の透気抵抗度が42秒/100cm3以上80秒/100cm3以下である。上記塗工層がバインダを含有し、上記塗工層における上記バインダの含有量が固形分換算で1.00g/m2以上10.00g/m2以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
上記基材の表面に積層される塗工層と
を備え、
上記塗工層がマタタビ成分抽出物と、抗菌剤又は抗ウィルス剤とを含有し、
上記塗工層の片面あたりの上記マタタビ成分抽出物の含有量が固形分換算で0.005g/m2以上0.100g/m2以下であり、
上記塗工層の片面あたりの上記抗菌剤又は上記抗ウィルス剤の含有量が固形分換算で0.005g/m2以上0.100g/m2以下であり、
上記基材の透気抵抗度が42秒/100cm3以上80秒/100cm3以下であるマタタビ成分抽出液塗工紙。
【請求項2】
上記塗工層がバインダを含有し、
上記塗工層における上記バインダの含有量が固形分換算で1.00g/m2以上10.00g/m2以下である請求項1に記載のマタタビ成分抽出液塗工紙。
【請求項3】
上記基材の表面の平滑度が0.5秒以上5.0秒以下であり、
上記基材におけるコブサイズ度が150g/m2以上300g/m2以下であり、吸油度が10秒以上50秒以下である請求項1又は請求項2に記載のマタタビ成分抽出液塗工紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マタタビ成分抽出液塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のペットブームにより、多くのペット関連商品が開発されている。例えば猫関連の商品においては、猫を誘引する方法として一般的にはマタタビが広く用いられている。マタタビ科の植物はネコ科の動物に特有の効果があり、ネコが本能的に好む植物である。従来技術においては、布にマタタビを乾燥粉砕した粉末が練りこまれたリラックスシートが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、衛生的で快適な生活を送るために、細菌及びウィルスの繁殖お抑制は重要な課題であり、猫に対して細菌、ウィルス等は、様々な疾病や皮膚障害を引き起こす原因となる。従って、猫関連の商品においても抗菌抗ウィルス機能の付加に対する要求が高まっている。
一方、従来技術のようなマタタビを用いた猫関連の商品においては、猫に対する良好な誘引効果を有することが望ましい。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、簡易な構成で猫に対する良好な誘引効果を有し、抗菌抗ウィルス性能に優れるマタタビ成分抽出液塗工紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るマタタビ成分抽出液塗工紙は、基材と、上記基材の表面に積層される塗工層とを備え、上記塗工層がマタタビ成分抽出物を含有し、上記塗工層が抗菌剤又は抗ウィルス剤を含有し、上記塗工層の片面あたりの上記マタタビ成分抽出物の含有量が固形分換算で0.005g/m2以上0.100g/m2以下であり、上記塗工層の片面あたりの上記抗菌剤又は上記抗ウィルス剤の含有量が固形分換算で0.005g/m2以上0.100g/m2以下であり、上記基材の透気抵抗度が42秒/100cm3以上80秒/100cm3以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構成で猫に対する良好な誘引効果を有し、抗菌抗ウィルス性能に優れるマタタビ成分抽出液塗工紙を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係るマタタビ成分抽出液塗工紙は、基材と、上記基材の表面に積層される塗工層とを備え、上記塗工層がマタタビ成分抽出物を含有し、上記塗工層が抗菌剤又は抗ウィルス剤を含有し、上記塗工層の片面あたりの上記マタタビ成分抽出物の含有量が固形分換算で0.005g/m2以上0.100g/m2以下であり、上記塗工層の片面あたりの上記抗菌剤又は上記抗ウィルス剤の含有量が固形分換算で0.005g/m2以上0.100g/m2以下であり、上記基材の透気抵抗度が42秒/100cm3以上80秒/100cm3以下である。
【0009】
当該マタタビ成分抽出液塗工紙は、基材の表面に積層される塗工層とを備え、上記塗工層がマタタビ成分抽出物を含有し、上記塗工層が抗菌剤又は抗ウィルス剤を含有し、上記塗工層の片面あたりの上記マタタビ成分抽出物の含有量が固形分換算で0.005g/m2以上0.100g/m2以下であり、上記塗工層の片面あたりの上記抗菌剤又は上記抗ウィルス剤の含有量が固形分換算で0.005g/m2以上0.100g/m2以下であることで、猫に対する誘引効果及び抗菌抗ウィルス性能が良好である。また、上記基材の透気抵抗度が上記範囲であることで、マタタビ成分抽出物並びに抗菌剤又は抗ウィルス剤を含有する塗工液における基材への過剰な浸透を抑制し、塗工層と基材との密着性を良好にできるので、猫に対する誘引効果及び抗菌抗ウィルス性能を高めることができる。
【0010】
「マタタビ」は、マタタビ科(Actinidiaceae)マタタビ属の植物を総称するものである。「マタタビ成分抽出液」とは、マタタビの成分が抽出された液であり、猫にマタタビ反応を誘起するネペタラクトール等の香気成分を含む。「マタタビ反応」とは、ネペタラクトール等の香気成分を顔や体に擦り付けることで蚊を忌避するための行動をいう。「透気抵抗度」は、JIS-P8117(2009)に記載の「紙及び板紙-透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)」に準拠し、ガーレー法によって測定できる。透気抵抗度は、プレス線圧で基材の平均厚さ、密度を変えることによって調整することができる。
【0011】
上記塗工層がバインダを含有し、上記塗工層における上記バインダの含有量が固形分換算で1.00g/m2以上10.00g/m2以下であることが好ましい。上記塗工層における上記バインダの含有量が上記範囲であることで、塗工層の耐久性が向上し、猫に対する誘引効果及び抗菌抗ウィルス性能をより高めることができる。
【0012】
上記基材の表面の平滑度が0.5秒以上5.0秒以下であり、上記基材におけるコブサイズ度が150g/m2以上300g/m2以下であり、吸油度が10秒以上50秒以下であることが好ましい。上記基材の表面の平滑度、並びに基材におけるコブサイズ度及びコブサイズ度が上記範囲であることで、当該マタタビ成分抽出液塗工紙においては、基材の表面が適度な平坦性を有するとともに、基材に対する塗工液の浸透性が良好な範囲になるため、猫に対する誘引効果及び抗菌抗ウィルス性能の向上を図ることができる。「平滑度」は、JIS-P8119(1998)の紙及び板紙-ベック平滑度試験機による平滑度試験方法に準じて測定される平滑度(秒)である。「コブサイズ度」は、JIS-P8140(1998)に記載の紙及び板紙-吸水度試験方法-コッブ法に準拠して、計測時間を10秒として測定された値である。「吸油度」とは、JIS-P8130(1994)に準拠して、軽油(5μl)を用いて測定した値である。
【0013】
[本発明の実施形態の詳細]
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0014】
<マタタビ成分抽出液塗工紙>
当該マタタビ成分抽出液塗工紙は、基材と、上記基材の表面に積層される塗工層とを備える。
【0015】
[基材]
上記基材は木材のパルプ繊維を主成分とし、パルプ繊維を抄紙して得られる層である。基材としては、紙(例えば、板紙、印刷用紙、包装用紙及び合成紙等があげられる)が挙げられる。基材は、単層であっても、複数層であってもよい。基材は、段ボール用ライナであることが、強度や加工のし易さの観点から、特に好ましい。上記パルプ繊維としては特に限定されず、例えば化学パルプ、古紙パルプ、機械パルプ等を使用することができる。
【0016】
化学パルプとしては、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の木材パルプを挙げることができる。
【0017】
古紙パルプとしては、例えば段ボール古紙、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、上白古紙、ケント古紙、構造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、脱墨・漂白古紙パルプ等が挙げられる。
【0018】
機械パルプとしては、例えばストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等が挙げられる。
【0019】
また、これらの木材パルプを主材とし、麻、木綿、藁、ケナフ等の非木材パルプや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル等を原料とした合成パルプ等を併用することができる。その他、アクリル繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の有機合成繊維やガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、シリカ・アルミナシリケート繊維、ロックウール等の無機繊維等を併用することも可能である。
【0020】
上記基材は紙力増強剤及びサイズ剤を含有してもよい。上記基材に含まれていてもよい他の成分としては、例えばサイズ剤、紙力増強剤、紙力増強剤、染料、顔料、歩留り向上剤、填料、pH調整剤、スライムコントロール剤、粘剤、防腐剤、防黴剤、難燃剤等を挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
(坪量)
上記基材の坪量としては、50g/m2以上400g/m2以下とすることが好ましく、90g/m2以上200g/m2以下とすることがより好ましい。上記基材の坪量を上記範囲とすることにより、マタタビ成分抽出液の浸透深さが良好な範囲になる結果、猫に対する誘引効果及び抗菌抗ウィルス性能を向上できる。
【0022】
(透気抵抗度)
上記基材の透気抵抗度の下限としては、42秒/100cm3であり、44秒/100cm3が好ましい。一方、上記基材の透気抵抗度の上限としては、80秒/100cm3であり、70秒/100cm3が好ましい。上記基材の透気抵抗度が42秒/100cm3未満の場合、塗工層を形成するために塗工したマタタビ成分抽出物並びに抗菌剤又は抗ウィルス剤を含有する塗工液が基材に浸透し過ぎて、猫に対する誘引効果及び抗菌抗ウィルス性能が不十分になるおそれがある。上記基材の透気抵抗度が上記基材の透気抵抗度が80秒/100cm3を超えると、塗工層と基材との密着性が低下して、猫に対する誘因効果が低下するおそれがある。
【0023】
(平滑度)
基材の表面の平滑度の下限としては、0.5秒が好ましく、0.8秒がより好ましい。一方、基材の表面の平滑度の上限としては、15.0秒が好ましく、10.0秒がより好ましく、3.0秒がさらに好ましい。上記基材の表面の平滑度が0.5秒以上10.0秒以下であることで、当該マタタビ成分抽出液塗工紙は、基材の表面が適度な平坦性を有するため、猫に対する誘引効果及び抗菌抗ウィルス性能をより良好にできる。基材の平滑度は、塗工液の塗工工程後の仕上工程時におけるオンマシンカレンダーの線圧によって調整することができる。
【0024】
(密度)
基材の密度は、JIS-P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ、密度及び比容積の試験方法」に準拠して測定される。基材の密度の下限としては、0.50g/cm3が好ましく、0.60g/cm3がより好ましい。基材の密度の上限としては、0.90g/cm3が好ましく、0.80g/cm3がより好ましい。上記基材の密度が0.50g/cm3未満の場合、塗工層を形成するために塗工したマタタビ成分抽出物を含有する塗工液が基材に浸透し過ぎて、猫に対する誘因効果が不十分になるおそれがある。上記基材の密度が0.90g/cm3を超えると、上記マタタビ成分抽出物を含有する塗工液の基材に対する浸透性が低く、猫に対する誘因効果が低下するおそれがある。なお、密度は、JIS-P8111(1998)に記載の「紙、板紙及びパルプ-調湿及び試験のための標準状態」のとおり、23±1℃、50±2%RHの雰囲気下で測定する。
【0025】
(基材の平均厚さ)
基材の平均厚さは、JIS-P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定される。基材の平均厚さの下限としては、55μmが好ましく、100μmがより好ましく、140μmがさらに好ましい。基材の平均厚さの上限としては、800μmが好ましく、400μmがより好ましく、180μmがさらに好ましい。上記基材の平均厚さが55μm未満の場合、塗工層を形成するために塗工したマタタビ成分抽出物の基材に対する浸透性が低く、猫に対する誘因効果が低下するおそれがある。上記基材の平均厚さが上記基材の平均厚さが800μmを超えると、上記マタタビ成分抽出物を含有する塗工液が基材に浸透し過ぎて、猫に対する誘因効果が不十分になるおそれがある。「基材の平均厚さ」とは、任意の20点での上記基材における平均厚さの平均値を意味する。
【0026】
(コブサイズ度)
コブサイズ度は、JIS-P8140(1998)に記載の紙及び板紙-吸水度試験方法-コッブ法に準拠して、計測時間を10秒として測定する。基材のコブサイズ度の下限としては、150g/m2が好ましく、180g/m2がより好ましい。一方、基材のコブサイズ度の上限としては、300g/m2が好ましく、260g/m2がより好ましい。上記基材の計測時間10秒におけるコブサイズ度が上記範囲であることで、基材に対する塗工液の浸透性が良好な範囲になるため、猫に対する誘引効果及び抗菌抗ウィルス性能の向上を図ることができる。上記コブサイズ度は、坪量、サイズ剤の種類、添加量や基材の灰分率等により調整できる。コブサイズ度の調整の観点から、サイズ剤の添加量は、固形分換算で0.01質量%以上2.0質量%以下が好ましく、灰分率としては、5.0%以上20.0%以下が好ましい。上記灰分率は、JIS-P8251(2003)に準拠して測定される値である。
【0027】
(吸油度)
上記基材の吸油度の下限としては、10秒が好ましく、15秒がより好ましい。一方、基材の吸油度の上限としては、50秒が好ましく、40秒がより好ましい。上記基材の吸油度が上記範囲であることで、基材に対する塗工液の浸透性が良好な範囲になるため、猫に対する誘引効果及び抗菌抗ウィルス性能の向上を図ることができる。上記吸油度は密度、サイズ剤の種類、添加量や基材の灰分率等により調整できる。吸油度の調整の観点から、サイズ剤の添加量は、固形分換算で0.01質量%以上2.0質量%以下が好ましく、灰分率としては、5.0%以上20.0%以下が好ましい。
【0028】
[塗工層]
当該マタタビ成分抽出液塗工紙は、基材の表面に積層される塗工層を備える。塗工層はマタタビ成分抽出物と、抗菌剤又は抗ウィルス剤とを含有する。
【0029】
抗菌剤としては、例えばピリチオン系、ベンズイミダゾール系、イソチアゾリン系、有機ヒ素系、有機銅系、有機ヨード系、有機銀系等の抗菌剤が挙げられる。上記抗菌剤としては、これらの中でもピリチオン系のピリチオン塩が好ましい。上記抗菌剤がピリチオン塩であることで、良好な抗菌効果が得られるとともに、安全性を高めることができる。
【0030】
抗ウィルス剤としては、例えば光触媒や金属化合物、無機化合物があり、光触媒としては酸化チタンや酸化タングステンなどに銅や鉄などを担持させた複合体が挙げられる。金属化合物としては銀イオン等を含む化合物や金属イオンとゼオライトやシリカゲル、珪藻土といった多孔性無機物を組み合わせたものが挙げられる。
【0031】
上記塗工層を形成するための塗工液は、マタタビ成分抽出物と、抗菌剤又は抗ウィルス剤と希釈剤とを含有する。マタタビ成分抽出物としては、例えばアルコール及び水を溶媒とするマタタビ成分が10質量%以上30質量%以下の溶液を用いることができる。
【0032】
上記希釈剤としては、純水、バインダが挙げられる。
【0033】
本発明で使用するマタタビ成分抽出物とは、マタタビの成分が抽出された液であり、猫にマタタビ反応を誘起するネペタラクトールを含む。
【0034】
当該マタタビ成分抽出液塗工紙が含有する抗菌剤又は抗ウィルス剤において有効な細菌等としては、大腸菌、院内感染で知られるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、腸内細菌、ブドウ球菌、緑膿菌、カンシダのような真菌(真菌感染症)等、カビ類等の微生物、バルトネラ菌等の動物やヒトに対して病原性を有する菌が挙げられる。が挙げられる。ウィルスとしては、ネコカリシウイルス、レトロウィルス、サイトメガロウィルス、ロタウィルス、パラミクソウィルス、ポリオウィルス、ハンタウィルス、コクサッキーウィルス、脳心筋炎ウィルス、ピコルナウィルス、ライノウィルスを含む、DNAウィルス又はRNAウィルス等の動物やヒトに対して病原性を有するウィルスが挙げられる。
【0035】
塗工層の片面あたりの上記マタタビ成分抽出物の含有量の下限としては、固形分換算で0.005g/m2であり、0.010g/m2が好ましい。一方、塗工層の片面あたりの上記マタタビ成分抽出物の含有量の上限としては、固形分換算で0.100g/m2であり、0.080g/m2が好ましい。上記マタタビ成分抽出物の含有量上が0.005g/m2未満の場合、猫に対する良好な誘引効果が得られないおそれがある。一方、上記マタタビ成分抽出物の含有量は、0.100g/m2で効果が頭打ちになる傾向がある。
【0036】
上記塗工液には、溶媒及びマタタビ成分抽出物以外に、例えば香料、消臭剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0037】
塗工層はバインダを含有することが好ましい。上記塗工層がバインダを含有することで、塗工層の耐久性が向上し、猫に対する誘引効果及び抗菌抗ウィルス性能を高めることができる。
【0038】
上記塗工層における上記バインダの含有量の下限としては、固形分換算で1.00g/m2が好ましく、2.00g/m2がより好ましい。上記バインダの含有量が1.00g/m2未満の場合、塗工層の耐摩耗性が低下し、猫に対する誘引効果及び抗菌抗ウィルス性能が下がるおそれがある。上記バインダの含有量の下限としては、固形分換算で10.00g/m2が好ましく、7.00g/m2がより好ましい。上記バインダの含有量が10.00g/m2を超えると、バインダにより猫に対する誘引する揮発成分が保持され猫に対する誘引効果が発揮できないおそれがある。
【0039】
塗工層の片面あたりの抗菌剤又は抗ウィルス剤の含有量の下限としては、固形分換算で0.005g/m2であり、0.010g/m2が好ましい。一方、塗工層の片面あたりの抗菌剤又は抗ウィルス剤の含有量の上限としては、固形分換算で0.100g/m2であり、0.080g/m2が好ましい。上記抗菌剤又は抗ウィルス剤の含有量上が0.005g/m2未満の場合、抗菌抗ウィルス性能が得られないおそれがある。一方、上記抗菌剤又は抗ウィルス剤の含有量は、0.100g/m2で効果が頭打ちになる傾向がある。
【0040】
なお、基材の両面に塗工層が積層される場合、各面の塗工層の成分及び含有量、塗工量等の構成を上記構成とすることができる。
【0041】
[マタタビ成分抽出液塗工紙の製造方法]
当該マタタビ成分抽出液塗工紙の製造方法は、例えばマタタビ成分抽出物、並びに抗菌剤又は抗ウィルス剤を含有する塗工層を基材の表面に積層する工程を備える。
【0042】
また、当該マタタビ成分抽出液塗工紙の製造方法は、基材の原料となるパルプスラリーを抄紙する工程を備えていてもよい。上記抄紙工程では、上述した原料パルプ、耐油剤及びその他の添加剤を含む原料スラリーを公知の抄紙機を用いて行う。さらに、当該マタタビ成分抽出液塗工紙の製造方法は、基材の表面にオフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット方式等により印刷層を形成する工程を備えていてもよい。
【0043】
[塗工層積層工程]
本工程では、基材の表面に塗工層を積層する工程を備える。上記塗工層はマタタビ成分抽出物、並びに抗菌剤又は抗ウィルス剤を含有する塗工液(塗工層用組成物)からなる。また、上記塗工層は、例えばフレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷方式により積層することができる。これらの中でも、フレキソ印刷方式で積層されることが好ましい。上記塗工層がフレキソ印刷方式により積層されることで、凸部状の網点パターンからなる塗工層を形成することができる。その結果、塗工層を均一形成することができるとともに、厚さ及び比表面積を増加させることができるので、当該マタタビ成分抽出液塗工紙における猫に対する誘引効果及び誘引効果及び抗菌抗ウィルス性能をより向上できる。
【0044】
上記マタタビ成分抽出物、並びに抗菌剤又は抗ウィルス剤を含有する塗工液の詳細は上述した通りであるので、説明を省略する。
【0045】
フレキソ印刷は、ゴム又は樹脂からなる凸版の刷版ロールと、表面に細かいセルが並列に彫刻されたアニロックスロールと、刷版ロールから被印刷体への転写時に低い圧力を加える圧胴ロールとを備えるフレキソ印刷機を用いる凸版印刷方式である。始めに、ファウンテンロール(ゴムロール)もしくはドクターチャンバーから水性インクとなる上記塗工液がアニロックスロールに供給される。供給される上記塗工液は、外気温などに応じて加温タンクにより温度調整が行われる。次に、アニロックスロールが、定量の上記塗工液を刷版ロールへ転移する。そして、刷版ロールと圧胴ロールとの間を通る基材の表面に対して塗工層が積層される。
【0046】
上記塗工層積層工程におけるフレキソ印刷方式で用いられるフレキソ印刷機のアニロックスロールの線数の下限としては、120線/インチが好ましく、165線/インチがより好ましい。方、上記線数の上限としては、特に限定されないが、500線/インチが好ましく、200線/インチがより好ましい。上記フレキソ印刷機のアニロックスロールの円筒部表面に彫刻された線数を上記範囲とすることにより、製造されるマタタビ成分抽出液塗工紙の塗工層の厚さが向上するので塗工層の耐久性をより向上できる。上記線数が上記下限未満の場合、猫に対する十分な誘引効果が得られないおそれがある。一方、上記線数が上記上限を超える場合は、転写不良(塗工ムラ)を起こし易いおそれがある。
【0047】
当該マタタビ成分抽出液塗工紙の製造方法においては、上記塗工層の塗工液を複数回塗工してもよい。また、上記塗工層がフレキソ印刷方式により積層されるので、凸部状の網点パターンからなる塗工層を形成することができる。その結果、上記塗工層を均一に形成することができるとともに、厚さ及び比表面積を増加させることができるので、耐摩耗性及び耐久性が優れる塗工層を形成できる。
【0048】
当該マタタビ成分抽出液塗工紙よれば、簡易な構成で猫に対する良好な誘引効果を有するとともに、抗菌抗ウィルス性能に優れる。
【0049】
<その他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【実施例0050】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
[実施例1~実施例5及び比較例1~比較例3]
(基材)
段ボール古紙パルプ100質量%からなるパルプスラリーに、紙力増強剤と、内添サイズ剤を添加した紙料スラリーを用いて抄紙して表1に記載の坪量を有する基材(段ボール用ライナ原紙)を得た。
【0052】
(塗工層)
(1)塗工層の塗工液の調整
表2に記載の含有割合からなるマタタビ成分抽出液と希釈剤としての純水を用いて実施例1~実施例5及び比較例1~比較例9の塗工液を調製した。また、実施例1~実施例5及び比較例1~比較例9の塗工液に用いたマタタビ成分抽出液の組成を表1に示す。
(2)塗工層の塗工液の調整
表2に記載の含有割合からなる抗菌剤又は抗ウィルス剤並びに希釈剤としてのバインダを用いて実施例1~実施例5及び比較例2~比較例9の塗工液を調製した。バインダは、スチレンアクリル系バインダ(サカタインクス社製:品名:ブライトーンG-790)を用いた。実施例1~実施例5及び比較例2~比較例4の塗工液に用いたマタタビ成分抽出液の組成を表2に示す。なお、以下の表2中の「-」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
(3)フレキソ印刷
基材に塗工液を固形分換算で表2に示す塗工量となるように、フレキソ印刷機を用いて2層の塗工層を形成した。
塗工層の塗工液を塗工後、塗工層の塗工液を塗工した。このようにして塗工層の表面に塗工層を積層した。
なお、フレキソ印刷の条件は下記の通りである。
塗工液の供給 :ドクターチャンバー方式
塗工液の温度 :20℃~25℃
印刷速度 :150m/分
アニロックスロールの線数 :200線/インチ
【0053】
[比較例4]
基材として市販のコピー用紙を用いた以外は、実施例5と同様にしてマタタビ成分抽出液塗工紙を作製した。
【0054】
[比較例5、比較例7及び比較例9]
比較例5の基材として市販のコピー用紙を用い、比較例7の基材として市販の新聞用紙を用い、比較例9の基材として市販のインクジェット記録用紙を用い、塗工層の塗工液がマタタビ抽出液の希釈剤として46.7質量%の純水及び抗菌剤抗ウイルス剤の希釈剤として46.7質量%のバインダを含有すること以外は、実施例5と同様にしてマタタビ成分抽出液塗工紙を作製した。
【0055】
[比較例6及び比較例8]
比較例6の基材として市販の新聞用紙を用い、比較例8の基材として市販のインクジェット記録用紙を用いた以外は、実施例2と同様にしてマタタビ成分抽出液塗工紙を作製した。
【0056】
基材の物性値の測定結果について表1に示す。また、マタタビ成分抽出液及び塗工液の組成について表2に示す。表2中の希釈剤成分における「純水及びバインダ」とは、マタタビ成分抽出液の希釈を純水で行い、抗菌剤又は抗ウィルス剤の希釈をバインダで行った後に混合したことを意味する。
【0057】
【0058】
【0059】
[評価]
実施例1~実施例5及び比較例1~比較例9のマタタビ成分抽出液塗工紙について下記の方法にて評価した。
【0060】
(マタタビ成分抽出物による誘引性評価)
予め、マタタビに反応する猫を10匹準備し、実施例1~実施例5及び比較例1~比較例9のマタタビ成分抽出液塗工紙を、猫から約50cm離れた場所に設置した。そして、5分以内にマタタビ成分抽出液塗工紙に擦り付けした猫の匹数を数え、マタタビ成分抽出物による猫の誘引性を評価した。猫の引付け割合が10匹中6匹以上あれば、猫に対する誘引効果が高く、実使用可能である。
【0061】
(呈色反応による抗菌性及び抗ウィルス性の評価)
抗菌剤及び抗ウィルス剤に含まれている金属成分に反応する試薬を実施例1~実施例5及び比較例2~比較例9のマタタビ成分抽出液塗工紙の表面に0.2ml滴下し、抗菌性及び抗ウィルス性を評価した。上記試薬滴下後に抗菌剤及び抗ウィルス剤による呈色反応を示すまでの時間を測定し、下記の4段階で評価した。反応時間が短いほど、抗菌剤又は抗ウィルスがマタタビ抽出液塗工紙の表面に多く蓄積、残留しており、より抗菌性又は抗ウィルス性が高いと判断した。なお、塗工層が抗菌剤及び抗ウィルス剤を含有しない比較例1は本評価を実施していない。
(評価基準)
A:11秒未満
B:11秒以上21秒未満
C:21秒以上100秒未満
D:100秒以上又は反応が見られない(抗菌・抗ウィルス性能無し)
【0062】
塗工層の構成、片面当たりのマタタビ成分抽出物の含有量、抗菌剤又は抗ウィルス剤の含有量、基材の透気抵抗度、並びにマタタビ成分抽出液塗工紙の評価結果について表3に示す。
【0063】
【0064】
表3に示すように、基材と、上記基材の表面に積層される塗工層とを備え、上記塗工層がマタタビ成分抽出物を含有し、上記塗工層が抗菌剤又は抗ウィルス剤を含有し、上記塗工層の片面あたりの上記マタタビ成分抽出物の含有量が固形分換算で0.005g/m2以上0.100g/m2以下であり、上記塗工層の片面あたりの上記抗菌剤又は上記抗ウィルス剤の含有量が固形分換算で0.005g/m2以上0.100g/m2以下であり、上記基材の透気抵抗度が42秒/100cm3以上80秒/100cm3以下である実施例1~実施例5は、猫に対する誘引効果及び抗菌抗ウィルス性能が優れていた。また、実施例2、実施例3及び実施例5の結果から、塗工層がバインダを含有し、塗工層におけるバインダの含有量が固形分換算で1.00g/m2以上10.00g/m2以下である場合、抗菌抗ウィルス性能が向上することがわかる。
【0065】
一方、塗工層の片面あたりの上記マタタビ成分抽出物の含有量が固形分換算で0.005g/m2未満である比較例1は、猫に対する誘引効果が実施例よりも劣っていた。塗工層がマタタビ成分抽出物を含有しない比較例2及び比較例3は、猫に対する誘引効果を有していなかった。また、透気抵抗度が80秒/100cm3を超える基材を用いた比較例4及び比較例5、並びに透気抵抗度が42秒/100cm3未満である基材を用いた比較例6~比較例9は、猫に対する誘引効果及び抗菌抗ウィルス性能が共に劣っていた。
【0066】
以上の結果、当該マタタビ成分抽出液塗工紙は、簡易な構成で猫に対する良好な誘引効果を有し、抗菌抗ウィルス性能に優れることが示された。