(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117640
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】腫瘍に対する免疫を賦活させるための医薬組成物及びその方法
(51)【国際特許分類】
A61K 33/40 20060101AFI20240822BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240822BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240822BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240822BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240822BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240822BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240822BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240822BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240822BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K33/40
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K9/127
A61K9/06
A61K47/36
A61K47/42
A61K45/00
A61K39/395 U
A61K31/7068
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023847
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】523176679
【氏名又は名称】合同会社KORTUC JAPAN
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】須田 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 庸介
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA19
4C076CC07
4C076CC27
4C076EE37
4C076EE42
4C076FF70
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA24
4C084MA28
4C084NA05
4C084ZB09
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB12
4C085BB31
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA08
4C086HA22
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA28
4C086NA05
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
【課題】遠隔腫瘍に対する治療方法は報告されていない。
【解決手段】本発明の目的は、過酸化水素溶液、含む、放射線治療と一緒に使うことで腫瘍に対する免疫を賦活させるための医薬組成物を提供することである。また、本発明の別の目的は、腫瘍に対する免疫を賦活させるための方法であって、上記方法は、上記医薬組成物を提供する工程と、上記腫瘍を有する患者の標的部位に上記医薬組成物を投与する工程と、上記標的部位に放射線を照射する工程と、を有し、上記腫瘍は、上記腫瘍を有する患者の標的部位から遠隔に存在する、方法を提供することである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素溶液、含む、放射線治療と一緒に使うことで腫瘍に対する免疫を賦活させるための医薬組成物。
【請求項2】
前記腫瘍は、前記腫瘍を有する患者の標的部位から遠隔に存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ヒアルロン酸またはその塩を更に含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
リポソーム、ポリマーゲル、ハイドロゲル若しくはゼラチン又はその塩を含む、請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
抗腫瘍免疫療法剤との併用療法において用いられる、請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記併用療法により抗腫瘍効果が向上される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗腫瘍免疫療法剤は、PD-1、PD-L1又はCTLA-4に特異的に結合する、請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記抗腫瘍免疫療法剤は、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤又はCTLA-4阻害剤である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、ニボルマブ又はペンブロリズマブ若しくはその抗原結合性フラグメントである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記抗腫瘍免疫療法剤は、抗腫瘍免疫賦活化学療法薬である、請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記抗腫瘍免疫賦活化学療法薬は、ゲムシタビンである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記抗腫瘍免疫療法剤は、腫瘍免疫活性化薬である、請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記腫瘍免疫活性化薬は、41-BBアゴニスト、OX-40アゴニスト、TIGIT阻害薬、LAG-3阻害薬又はIDO阻害薬である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記抗腫瘍免疫療法剤は、免疫細胞、核酸分子又は増感剤である、請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項16】
腫瘍に対する免疫を賦活させるための方法であって、前記方法は、
請求項1から15のいずれかに記載の医薬組成物を提供する工程と、
前記腫瘍を有する患者の標的部位に前記医薬組成物を投与する工程と、
前記標的部位に放射線を照射する工程と、を有し、
前記腫瘍は、前記腫瘍を有する患者の標的部位から遠隔に存在する、
方法。
【請求項17】
抗腫瘍免疫療法剤を投与する工程を更に有する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療と一緒に使うことで腫瘍に対する免疫を賦活させるための医薬組成物及びその方法に関する。本発明の組成物は、過酸化酸素を含むことを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
放射線治療は、悪性腫瘍の局所治療法として外科的手術に次ぐ方法であり、高齢患者に適用でき、また正常臓器や組織が温存できるという点から、昨今治療患者数が激増している治療方法である。しかしながら、現在、当該放射線治療に汎用されているリニア・アクセラレータによる高エネルギーエックス線および電子線は、低LET(linear energy transfer)放射線であり、その生物学的効果は比較的低い。そのため、悪性黒色腫や種々の肉腫、多型性神経膠芽腫などの腫瘍にはリニア・アクセラレータによる放射線治療の効果は乏しい。また悪性黒色腫、種々の肉腫等に限らず、数cm以上にまで増大した局所進行癌は、低酸素性腫瘍細胞数が多く、また多量の抗酸化酵素を含むために放射性抵抗性であるため、リニア・アクセラレータによる放射線治療の効果は乏しい。また、その効果は放射線治療対象の腫瘍局所に限定され、遠位の転移巣の腫瘍がある患者への治療効果に貢献できないという問題点もある。
【0003】
また、古くは1953年のMoleらの報告から、放射線治療による抗腫瘍免疫は、アブスコパル効果として議論されてきた。抗腫瘍免疫は、(1)死にかけの細胞から誘導されるデンジャーシグナルによる樹状細胞、T細胞の活性化、(2)I型インターフェロン経路の活性に伴う樹状細胞の誘導や自然免疫賦活、(3)T細胞の遊走や浸潤に関わるケモカインや接着因子の誘導、(4)T細胞受容体のアミノ酸配列の多様化、などが報告されており、局所放射線照射による免疫変調機構が機能していると考えられている。そのため、アブスコパル効果を高率に誘導できれば遠隔転移の制御も可能になりうる。ただし、実臨床で放射線治療単独では、このアブスコパル効果に遭遇することは極めてまれである。
【0004】
近年の免疫チェックポイント阻害剤が開発されたことにより、放射線治療のアブスコパル効果に着目し、放射線治療と免疫チェックポイント阻害剤の併用治療が一気に注目されてきている。基礎研究では、抗PD-L1抗体や抗CTLA-4 抗体などの免疫チェックポイント阻害剤と放射線の併用により、高率にアブスコパル効果が誘導され、遠隔転移の抑制や生存も延長されることが明らかになりつつある。ただし、複数の大規模臨床試験が行われてきたが、その効果は限定的で、満足のいくものではなく、新たな治療方法として確立するには至っていない。より強力で、かつ安全性の高い腫瘍免疫を賦活する方法が求められている。
【0005】
従来より、放射線治療(RT)の効果を増強するために種々の放射線増感剤が開発されている(例えば、特許文献1)。過酸化水素もその一つとして、放射線を増感することにより、その抗腫瘍効果を改善することが報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】R.H. Mole, Br J Radiol. 1953 May;26(305):234-41
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
放射線の治療効果は治療局所に限定しており、一般的な放射線増感剤を使用しても局所の効果が増強されるにとどまり、遠隔転移腫瘍に対する満足のいく治療効果は報告されていない。
【0009】
また、放射線治療と免疫チェックポイント阻害剤に代表される抗腫瘍免疫療法剤との併用治療も医療上満足のいく治療効果を得られておらず、確立した治療法になっていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、過酸化水素溶液を含む医薬組成品が放射線との併用により放射線増感作用だけでなく、腫瘍に対する免疫を賦活させることを見出した。それにより、本発明者らは、過酸化水素溶液を含む医薬組成物を投与した治療部位に放射線を照射すると、放射線を照射した局所での治療効果を改善するだけでなく、治療部位から遠隔に存在する腫瘍のサイズを低下させることを発見し、本発明は完成した。
【0011】
本発明者らは、さらに驚くべきことに、放射線治療と抗腫瘍免疫療法剤併用療法の効果を、この過酸化水素溶液を含む医薬組成品は、腫瘍免疫を賦活させることで各段に改善することを見出した。
【0012】
本発明の目的は、
[1]
過酸化水素溶液、含む、放射線治療と一緒に使うことで腫瘍に対する免疫を賦活させるための医薬組成物
を提供することである。
【0013】
本発明にかかる医薬組成物を用いて放射線照射を行うと、腫瘍に対する免疫を賦活させることにより治療部位から遠隔に存在する腫瘍のサイズを低下させることができる。
【0014】
[2]
[1]の医薬組成物において、上記腫瘍は、上記腫瘍を有する患者の標的部位から遠隔に存在してもよい。
【0015】
[3]
[1]又は[2]に記載の医薬組成物は、ヒアルロン酸またはその塩を更に含んでいてもよい。
【0016】
[4]
[1]から[3]のいずれかの医薬組成物は、リポソーム、ポリマーゲル、ハイドロゲル若しくはゼラチン又はその塩を含んでいてもよい。
【0017】
[5]
[1]から[4]のいずれかの医薬組成物は、抗腫瘍免疫療法剤との併用療法において用いられてもよい。
【0018】
[6]
[5]の医薬組成物は、上記併用療法により抗腫瘍効果が向上されてもよい。
【0019】
[7]
[5]又は[6]に記載の医薬組成物において、上記抗腫瘍免疫療法剤は、PD-1、PD-L1又はCTLA-4に特異的に結合してもよい。
【0020】
[8]
[7]の医薬組成物において、上記抗腫瘍免疫療法剤は、免疫チェックポイント阻害剤であってもよい。
【0021】
[9]
[8]の医薬組成物において、上記免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤又はCTLA-4阻害剤であってもよい。
【0022】
[10]
[9]の医薬組成物において、上記免疫チェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、ニボルマブ又はペンブロリズマブ若しくはその抗原結合性フラグメントであってもよい。
【0023】
[11]
[5]又は[6]の医薬組成物において、上記抗腫瘍免疫療法剤は、抗腫瘍免疫賦活化学療法薬であってもよい。
【0024】
[12]
[11]の医薬組成物において、上記抗腫瘍免疫賦活化学療法薬は、ゲムシタビンであってもよい。
【0025】
[13]
[5]又は[6]の医薬組成物において、上記抗腫瘍免疫療法剤は、腫瘍免疫活性化薬であってもよい。
【0026】
[14]
上記腫瘍免疫活性化薬は、41-BBアゴニスト、OX-40アゴニスト、TIGIT阻害薬、LAG-3阻害薬又はIDO阻害薬である、請求項[13]に記載の医薬組成物。
【0027】
[15]
[5]又は[6]の医薬組成物において、上記抗腫瘍免疫療法剤は、免疫細胞、核酸分子又は増感剤であってもよい。
【0028】
また、本発明の別の目的は、
[16]
腫瘍に対する免疫を賦活させるための方法であって、上記方法は、
[1]から[15]のいずれかの医薬組成物を提供する工程と、
上記腫瘍を有する患者の標的部位に上記医薬組成物を投与する工程と、
上記標的部位に放射線を照射する工程と、を有し、
上記腫瘍は、上記腫瘍を有する患者の標的部位から遠隔に存在する、
方法
を提供することである。
【0029】
本発明にかかる方法を用いることで、腫瘍に対する免疫を賦活させ、治療部位から遠隔に存在する腫瘍のサイズを低下させることができる。
【0030】
[17]
[16]の方法は、抗腫瘍免疫療法剤を投与する工程を更に有していてもよい。
【0031】
上記方法は、抗腫瘍免疫療法剤を投与する工程を更に有する。本工程を含む上記方法を用いることで、腫瘍に対する免疫を賦活させ、抗腫瘍免疫療法剤との併用療法にて抗腫瘍効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、がん細胞からダメージ関連分子パターン(DAMPs)であるHMGB1の生産量に関する棒グラフを示している。
【
図2】
図2は、MC38細胞を植えた位置と放射線治療(RT)を行った位置を図示したマウスと実験スケジュールを示している。
【
図3】
図3Aは、フローサイトメトリーを用いて測定した、非照射側部位に浸潤する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)における細胞障害性T細胞(CD8)の浸潤数に関する棒グラフを示している。
図3Bは、フローサイトメトリーを用いて測定した、照射側部位付近の腫瘍流入領域リンパ節(TDLN)における樹状細胞(DC)の浸潤数に関する棒グラフを示している。
【
図4】
図4Aは、照射側部位における腫瘍のサイズを経時的にプロットしたグラフである(n=6)。
図4Bは、非照射側部位における腫瘍のサイズを経時的にプロットしたグラフである(n=6)。
【
図5】
図5は、非照射部位における腫瘍のサイズを経時的にプロットしたグラフである(n=5)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
1 定義
便宜上、本願で使用される特定の用語は、ここに集めている。別途規定されない限り、本願で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。文脈で別途明記されない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の言及を含む。
【0034】
本発明で示す数値範囲及びパラメーターは、近似値であるが、特定の実施例に示されている数値は可能な限り正確に記載している。しかしながら、いずれの数値も本質的に、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含んでいる。また、本明細書で使用する「約」という用語は、一般に、所与の値又は範囲の10%、5%、1%又は0.5%以内を意味する。或いは、用語「約」は、当業者が考慮する場合、許容可能な標準誤差内にあることを意味する。
【0035】
用語「被験体」及び「患者」は、本明細書では互換的に使用され、本発明の合成ペプチド及び/又は方法によって治療可能な人類を含む動物を意味する。用語「被験体」又は「患者」は、1つの性別が特定されていない限り、オスとメスの両方の性別を指すことが意図される。従って、用語「被験体」又は「患者」は、本開示の治療方法から利益を得ることができる任意の哺乳動物を含む。「被験体」又は「患者」の例は、ヒト、ラット、マウス、モルモット、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、トリ及びニワトリを含むがこれらに限定されない。例示的な実施形態において、患者はヒトである。
【0036】
なお、本明細書において、特に制限がない場合、%(w/v)は重量/容積パーセント濃度を表す。
【0037】
ダメージ関連分子パターン(damage-associated molecular patterns(DAMPs))は、細胞死や細胞の損傷などの細胞ストレスに伴って放出される生体物質であり、細胞の危機を知らせるアラームとして機能する。DAMPsは、腫瘍免疫では免疫細胞惹起の初期反応として放出される。
【0038】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、例示であって、本発明の範囲は、以下の実施形態で示すものに限定されない。なお、同様な内容については繰り返しの煩雑をさけるために、摘示説明を省略する。
【0039】
2 腫瘍に対する免疫を賦活させるための方法
本実施形態に係る、腫瘍に対する免疫を賦活させるための方法は、過酸化水素溶液を含む医薬組成物を提供する工程と、上記腫瘍を有する患者の標的部位に上記医薬組成物を投与する工程と、上記標的部位に放射線を照射する工程と、を有し、上記腫瘍は、上記腫瘍を有する患者の標的部位から遠隔に存在する。
【0040】
3 医薬組成物
本実施形態に係る、腫瘍に対する免疫を賦活させるための医薬組成物は、過酸化水素溶液を含む。本実施形態にかかる医薬組成物は、腫瘍に対する免疫を賦活させることによって腫瘍を治療することができる。「腫瘍を治療する」又は「抗腫瘍効果」は、腫瘍のサイズを低減させる及び/又は腫瘍の成長を抑制することを意味する。
【0041】
4 過酸化水素溶液
本実施形態にかかる過酸化水素溶液は、過酸化水素(H2O2;分子量34)を含む水溶液である。本実施形態にかかる医薬組成物に含まれる過酸化水素の割合は、0.01~3.5%(w/v)であってもよく、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4及び3.5%(w/v)からなる群より選択される2つの値間の範囲内であってもよい。「過酸化水素溶液」は、特に記載のない場合には、過酸化水素を日本局方等の蒸留水に溶解したものをいう。
【0042】
5 追加成分
本実施形態にかかる医薬組成物は、追加成分を含んでいてもよい。追加成分としては、ヒアルロン酸、リポソーム、ポリマーゲル、ハイドロゲル及びゼラチン又はこれらの塩を含む。また、追加成分は、医薬的に許容し得る生理的食塩水、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液及び酢酸緩衝液)、安定化剤、等張化剤及びpH調整剤であってもよい。
【0043】
過酸化水素に対するヒアルロン酸またはその塩の配合割合は、過酸化水素100質量部に対してヒアルロン酸またはその塩(総量として)1~10000質量部であってもよく、1、5、10、50、100、150、500、1000、50000及び10000からなる群より選択される2つの値間の範囲内であってもよい。
【0044】
本実施形態にかかるヒアルロン酸は、動物組織から抽出してもよく、発酵法で製造してもよい。本実施形態にかかるヒアルロン酸は、好ましくは発酵法で製造される。発酵法により製造されたヒアルロン酸は、安全性が高く製造安定性も高いためである。発酵法で使用される菌株として、自然界から単離されたヒアルロン酸産生微生物(例えば、ストレプトコッカス属)、特開昭63-123392号公報に記載されるストレプトコッカス・エクイFM-100(微工研菌寄第9027号)、特開平2-234689号公報に記載されるストレプトコッカス・エクイFM-300(微工研菌寄第2319号)を挙げることができる。
【0045】
本実施形態にかかるヒアルロン酸は、50万~1000万、好ましくは50万~800万、より好ましくは50万~500万程度の質量平均分子量を有する。
【0046】
ヒアルロン酸の質量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラム(SEC)と多角度光散乱検出器(MALLS)を使用するSEC-MALLS法によって測定可能である。
【0047】
本実施形態にかかるヒアルロン酸は、水溶液又は水膨潤ゲルとして使用されてもよい。
【0048】
本実施形態にかかるヒアルロン酸は、非架橋ヒアルロン酸及び架橋ヒアルロン酸を含む。架橋ヒアルロン酸は、三次元網目構造を有している高分子である。架橋ヒアルロン酸の架橋点が切断させれると、直鎖状のヒアルロン酸(非架橋ヒアルロン酸)が生成される。なお、架橋点を切断することによって生成するヒアルロン酸の質量平均分子量と分岐度は、ゲルパーミッションクロマトグラム(GPC)、示差屈折率計及び多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)を使用したGPC-MALLS(多角度光散乱)によって測定可能である。
【0049】
本実施形態にかかるヒアルロン酸は、非架橋ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸又はこれらの組み合わせてであってもよい。本実施形態にかかるヒアルロン酸は、異なる架橋ヒアルロン酸から構成されていてもよく、異なる分子量のヒアルロン酸から構成されていてもよい。本実施形態にかかるヒアルロン酸は、ヒアルロン酸塩であってもよい。ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム又はヒアルロン酸リチウムであってもよい。
【0050】
本実施形態にかかる医薬組成物に含まれるヒアルロン酸またはその塩の割合は、0.1~10%(w/v)であってもよく、0.1、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0及び10%(w/v)からなる群より選択される2つの値間の範囲内であってもよい。
【0051】
等張化剤は、塩化ナトリウム、グリセリン、ブドウ糖、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、果糖、キシリトール、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸ナトリウムを挙げることができ、好ましくは塩化ナトリウムである。pH調整剤は、塩酸及び水酸化ナトリウムを挙げることができる。 本実施形態にかかる医薬組成物のpHは、6~8.5、好ましくは6.8~7.8に調整される。本実施形態にかかる医薬組成物は、pH保持のために緩衝液を含んでいてもよい。
【0052】
6 医薬組成物を提供する工程
本実施形態にかかる「医薬組成物を提供する工程」は、医薬組成物を準備する工程であってもよく、医薬組成物を調製する工程であってもよい。ある実施形態において医薬組成物を調製する工程は、過酸化水素溶液とヒアルロン酸又はその塩を混合する工程を含む。
【0053】
7 腫瘍を有する患者の標的部位に医薬組成物を投与する工程
本実施形態にかかる医薬組成物は、腫瘍を有する患者の標的部位に投与される。局所への投与方法は、限定しない。ある実施形態において、標的部位は、医薬組成物が投与され且つ放射線が照射される部位である。別の実施形態において、医薬組成物が投与され、放射線が照射され且つ治療を要する腫瘍を有する部位である。
【0054】
本実施形態にかかる腫瘍は、腫瘍を有する患者の標的部位から遠隔に存在していてもよい。ある実施形態において、腫瘍は、腫瘍を有する患者の標的部位から遠隔に存在し、検出可能な腫瘍が標的部位には存在していない。別の実施形態において、腫瘍は、腫瘍を有する患者の標的部位から遠隔に存在し、且つ標的部位にも存在している。更に別の実施形態において、腫瘍は、第一腫瘍と第二腫瘍を含み、第一腫瘍は、腫瘍を有する患者の標的部位から遠隔に存在し、第二腫瘍は、腫瘍を有する患者の標的部位に存在する。第一腫瘍は、転移がんに由来し、第二腫瘍は、原発がんに由来していてもよい。
【0055】
「腫瘍」は、未制御の成長により特徴づけられる細胞であり、新生物発生前の過剰増殖、原発がん、転移がん、新生物及び固形腫瘍を含む。「腫瘍」は、「がん」によって引き起こされてもよい。「がん」としては、リンパ腫、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、肺扁平上皮がん、腹膜のがん、副腎がん、肛門がん、胆管がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、中枢または末梢神経系がん、子宮頚がん、結腸がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、胆のうがん、胃腸がん、神経膠芽腫、頭頚部がん、腎がん、肝がん、上咽頭がん、鼻腔がん、中咽頭がん、口腔がん、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、副甲状腺がん、下垂体がん、前立腺がん、網膜芽腫、肉腫、唾液腺がん、皮膚がん、小腸がん、胃がん、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、子宮がん、膣がんおよび外陰がんを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
ある実施形態において、標的腫瘍は転移がんにより引き起こされた腫瘍であり、非標的腫瘍は原発がんにより引き起こされた腫瘍である。別の実施形態において、標的腫瘍は原発がんにより引き起こされた腫瘍であり、非標的腫瘍は転移がんにより引き起こされた腫瘍である。
【0057】
8 標的部位に放射線を照射する工程
本実施形態にかかる「標的部位に放射線を照射する工程」は、「腫瘍を有する患者の標的部位に医薬組成物を投与する工程」の後に実施される。本実施形態にかかる医薬組成物は、医薬組成物が投与された標的部位に放射線が照射されることによって腫瘍に対する免疫が賦活されてもよい。
【0058】
本実施形態にかかる放射線は、X線、電子線、陽子線、重粒子線、α(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線又はその組み合わせであってもよい。エックス線又は電子線は、リニア・アクセラレータを用いて照射することができる。本実施形態にかかる放射線の線量は、1回あたり1.5~4Gyであってもよく、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.25、3.5、3.75及び4Gyからなる群より選択される2つの値間の範囲内であってもよい。本実施形態にかかる放射線の照射は、週に2~5回、好ましくは週4~5回行われてもよい。本実施形態にかかる放射線の照射は、1~5週間にわたって行われても良い。本実施形態にかかる放射線の総線量は、20~70Gyであってもよく、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65及び70Gyからなる群より選択される2つの値間の範囲内であってもよい。
【0059】
9 抗腫瘍免疫療法剤を投与する工程
本実施形態にかかる医薬組成物は、抗腫瘍免疫療法剤との併用療法において用いられてもよい。本実施形態にかかる方法は、「抗腫瘍免疫療法剤を投与する工程」を更に有していてもよい。ある実施形態において、「抗腫瘍免疫療法剤を投与する工程」は、「標的部位に抗腫瘍免疫療法剤を投与する工程」であってもよく、「標的部位以外の患者の部位に抗腫瘍免疫療法剤を投与する工程」であってもよい。
【0060】
本実施形態にかかる「抗腫瘍免疫療法剤を投与する工程」は、「標的部位に放射線を照射する工程」の後に実施されてもよく、「腫瘍を有する患者の標的部位に医薬組成物を投与する工程」と「標的部位に放射線を照射する工程」との間で実施されてもよく、「腫瘍を有する患者の標的部位に医薬組成物を投与する工程」の前に実施されてもよい。
【0061】
10 抗腫瘍免疫療法剤
本実施形態にかかる抗腫瘍免疫療法剤は、免疫機能を増強又は補助することによって腫瘍のサイズを低減又は腫瘍の成長を抑制する物質(例:化合物、細胞(例えば、免疫細胞)、タンパク質(例えば、抗体)及び核酸分子(例えば、DNA及びRNA))を意味し、抗腫瘍免疫賦活化学療法薬、免疫チェックポイント阻害剤及び腫瘍免疫活性化薬並びにこれらの組み合わせを含む。
【0062】
ある実施形態において、抗腫瘍免疫療法剤は、抗腫瘍免疫賦活化学療法薬(例えば、ゲムシタビン)であってもよい。
【0063】
ある実施形態において、抗腫瘍免疫療法剤は、PD-1、PD-L1又はCTLA-4に特異的に結合し得る。別の実施形態において、抗腫瘍免疫療法剤は、免疫チェックポイント阻害剤であってもよい。ある実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤又はCTLA-4阻害剤であってもよい。別の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ及び前述のいずれか1つの抗原結合性フラグメントから選択され得る。
【0064】
ある実施形態において、抗腫瘍免疫療法剤は、41-BBアゴニスト、OX-40アゴニスト、TIGIT阻害薬、LAG-3阻害薬又はIDO阻害薬であってもよい。
【0065】
11 他の実施形態
放射線治療と一緒に使うことで腫瘍に対する免疫を賦活させるための医薬組成物であって、
(i) 過酸化水素溶液を含有する、過酸化水素溶液及び抗腫瘍免疫療法剤との併用療法において用いられる、医薬組成物、
又は、
(ii) 抗腫瘍免疫療法剤を含有する、過酸化水素溶液及び抗腫瘍免疫療法剤との併用療法において用いられる、医薬組成物も提供される。
【0066】
抗腫瘍免疫療法剤を含有する、過酸化水素溶液及び抗腫瘍免疫療法剤との併用療法において、放射線治療と一緒に使うことで腫瘍に対する免疫を賦活させるために用いられる、医薬組成物も提供される。
【0067】
腫瘍に対する免疫を賦活させるための医薬組成物の製造における、過酸化水素溶液使用も提供される。また、腫瘍に対する免疫を賦活させるための医薬組成物の製造における、過酸化水素溶液、及び抗腫瘍免疫療法剤の使用も提供される。
【実施例0068】
実施例におけるデータは、平均±平均の標準誤差(SEM)として表している。スチューデントt検定を使用して平均を比較した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.00001。「ns」は、有意ではないことを意味する。
【0069】
実施例1
過酸化水素+放射線治療(RT)の併用によって、がん細胞からダメージ関連分子パターン(DAMPs)であるHMGB1が生産されるかを確認した。MC38細胞(マウス大腸がん細胞株)に対して、KORTUC(過酸化水素+ヒアルロン酸)を添加し、RTを行った。培地中の過酸化水素の濃度は、0.0067%(w/v)又は0.0335%(w/v)(10μM又は50μM 過酸化水素)、培地中のヒアルロン酸の濃度は、0.0111%(w/v)又は0.0556%(w/v)とした。RTの線量は、5.0Gy(1Gy/min)とした。また、MC38細胞に対するRTのみも行った。KORTUC投与もRTも行っていない処理をコントロール(control)とした。放射線照射の24時間後にMC38細胞と培養上清を回収して、ELISA法によりHMGB1を定量的に測定した。結果を
図1に示す。
【0070】
KORTUC投与+RT(RT+KORTUC)もRTもHMGB1を培養上清中に放出させたが、RT+KORTUCは、RTよりも多くHMGB1を培養上清中に放出させた。この結果から、KORTUC投与+RTは、免疫応答を惹起させる可能性が示唆された。
【0071】
実施例2
KORTUC(過酸化水素+ヒアルロン酸の混合液、混合液中の過酸化水素の濃度は0.5%, ヒアルロン酸の濃度は0.83%)投与+RTの併用がマウスにおいても免疫応答を惹起させるかを調べた。MC38細胞を植えたマウスにおいて更に実験を行った。
図2に示す通り、マウスの左足(照射側部位)と右腹部(非照射側部位)にMC38細胞を植えた(0日)。細胞移植から10日後、照射側部位に15 Gyの放射線を照射した(RT)又は照射側部位にKORTUCを投与し、15 Gyの放射線を照射した(RT+KORTUC)。KORTUC投与もRTも行っていない処理をコントロール(control)とした。
【0072】
図3Aは、フローサイトメトリーを用いて測定した、非照射側部位に浸潤する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)における細胞障害性T細胞(CD8)の浸潤数に関する棒グラフを示している。
図3Bは、フローサイトメトリーを用いて測定した、照射側部位付近の腫瘍流入領域リンパ節(TDLN)における樹状細胞(DC)の浸潤数に関する棒グラフを示している。
【0073】
RT+KORTUCでは、コントロール及びRTよりも有意に細胞障害性T細胞(CD8)及びDCの浸潤数が増加した(それぞれ
図3A及び3B)。この結果から、RT+KORTUCは、生体内において免疫応答を惹起することが明らかになった。特に、RT+KORTUCは、非照射側部位においても免疫細胞である細胞障害性T細胞(CD8)が増加したことから、RT+KORTUCは、局所腫瘍だけでなく遠隔腫瘍に対しても効果を発揮することが明らかとなった。
【0074】
実施例3
KORTUC(過酸化水素+ヒアルロン酸の混合液、混合液中の過酸化水素の濃度は0.5%, ヒアルロン酸の濃度は0.83%)投与+RTの併用の腫瘍への効果を経時的に測定した。マウスの左足(照射側部位)と右腹部(非照射側部位)にMC38細胞を植えた(0日)(
図2参照)。移植の10日後、照射側部位にKORTUCを投与した(KORTUC単独)、照射側部位に15 Gyの放射線を照射した(RT単独)、又は照射側部位にKORTUCを投与し、15 Gyの放射線を照射した(KORTUC+RT)。KORTUC投与も放射線投与も行っていない処理をコントロール(control)とした。
【0075】
図4Aは、照射側部位における腫瘍のサイズを経時的にプロットしたグラフであり(n=6)、
図4Bは、非照射側部位における腫瘍のサイズを経時的にプロットしたグラフである(n=6)。照射側部位においては、RT単独とKORTUC+RTにおいて時間と共に腫瘍サイズの低下が見られた。非照射部位においては、KORTUC+RTにおいて腫瘍の増大に対する抑制効果が見られた。照射側の抗腫瘍効果がRT 単独とKORTUC+RTが同等であるのにも関わらず、非照射側でRT単独では腫瘍の増大を抑制せず、KORTUC+RTで腫瘍の増大を顕著に抑制していることから、KORTUCによる照射部位での放射線増感作用による効果ではなく、KORTUCによって腫瘍免疫が誘発されたことによるものであると思われる。
【0076】
実施例4
KORTUC(過酸化水素+ヒアルロン酸の混合液、混合液中の過酸化水素の濃度は0.5%, ヒアルロン酸の濃度は0.83%)投与+RT+抗腫瘍免疫療法剤の併用の効果を経時的に測定した。マウスの左足(照射側部位)と右腹部(非照射側部位)にMC38細胞を植えた(0日)(
図2参照)。抗腫瘍免疫療法剤として免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体(aPD1)を使用した。移植から10日後に腹腔内に抗PD-1抗体を投与した(aPD1単独)、あるいは腹腔内に抗PD-1抗体を投与し、照射側部位に15 Gyの放射線を照射した(RT+ aPD1)、又は腹腔内に抗PD-1抗体を投与しさらに照射側部位にKORTUCを投与して15 Gyの放射線を照射した(KORTUC+RT+aPD1)。KORTUC投与も抗PD-1抗体投与も放射線照射も行っていない処理をコントロール(control)とした。
【0077】
図5は、非照射部位における腫瘍のサイズを経時的にプロットしたグラフである(n=5)。
図5に示す通り、KORTUC+RT+aPD1において時間と共に腫瘍サイズの低下が見られた。まず、
図4BのKORTUC+RTの結果と
図5のKORTUC+RT+aPD1の結果を比較すると、KORTUC+RT+aPD1は、KORTUC+RTよりも遠隔腫瘍に対する抗腫瘍効果が高いことが明らかとなった。
【0078】
KORTUC(過酸化水素)投与とRTの併用は、免疫応答を惹起させ、特にRT照射や局所注射に関係ない遠隔腫瘍に対する抗腫瘍効果を発揮することを明らかとした。また、KORTUC(過酸化水素)と抗腫瘍免疫療法剤の投与とRTの併用は、KORTUC(過酸化水素)投与とRTの併用よりも免疫応答をより惹起させ、遠隔腫瘍に対する抗腫瘍効果をより発揮することを明らかとした。
前記免疫チェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、ニボルマブ又はペンブロリズマブ若しくはその抗原結合性フラグメントである、請求項9に記載の医薬組成物。
前記腫瘍免疫活性化薬は、41-BBアゴニスト、OX-40アゴニスト、TIGIT阻害薬、LAG-3阻害薬又はIDO阻害薬である、請求項13に記載の医薬組成物。
本実施形態にかかるヒアルロン酸は、非架橋ヒアルロン酸及び架橋ヒアルロン酸を含む。架橋ヒアルロン酸は、三次元網目構造を有している高分子である。架橋ヒアルロン酸の架橋点が切断させれると、直鎖状のヒアルロン酸(非架橋ヒアルロン酸)が生成される。なお、架橋点を切断することによって生成するヒアルロン酸の質量平均分子量と分岐度は、ゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC)、示差屈折率計及び多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)を使用したGPC-MALLS(多角度光散乱)によって測定可能である。