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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117646
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】エンジン制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
F02D29/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023857
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 智裕
【テーマコード(参考)】
3G093
【Fターム(参考)】
3G093AA07
3G093BA03
3G093DA06
3G093DA13
3G093DB10
3G093DB11
3G093DB19
3G093DB20
3G093DB25
3G093EA05
3G093EA09
3G093EA12
3G093EB03
(57)【要約】
【課題】変速ショックを抑制すること。
【解決手段】エンジン制御装置は、点火プラグ、インジェクタ、および、スロットルバルブを制御する制御装置を備え、制御装置は、1つまたは複数のプロセッサと、プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、を有し、プロセッサは、アクセルがオフされた際にエンジンの燃焼を休止させるフューエルカット制御を実行すること、アクセルがオフされ、クラッチが解除された際において、エンジン回転数を低下させる所定条件が成立する場合、フューエルカット制御を中断して、インジェクタから燃料を噴射させ、点火プラグにより点火させるファイアリング制御、および、スロットルバルブを閉じる速度を低下させる閉じ速度制御の少なくとも一方を実行すること、を含む処理を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに設けられた点火プラグおよびインジェクタと、
吸気管に設けられたスロットルバルブと、
前記点火プラグ、前記インジェクタ、および、前記スロットルバルブを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
アクセルがオフされた際に前記エンジンの燃焼を休止させるフューエルカット制御を実行すること、
前記アクセルがオフされ、クラッチが解除された際において、エンジン回転数を低下させる所定条件が成立する場合、前記フューエルカット制御を中断して、前記インジェクタから燃料を噴射させ、前記点火プラグにより点火させるファイアリング制御、および、前記スロットルバルブを閉じる速度を低下させる閉じ速度制御の少なくとも一方を実行すること、
を含む処理を実行する、
エンジン制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
シフトチェンジによりギヤが高速側になるほど、前記ファイアリング制御を実行する頻度を小さくすること、
を含む処理を実行する、
請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
シフトチェンジによりギヤが高速側になるほど、前記スロットルバルブを閉じる速度を増大させること、
を含む処理を実行する、
請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
エンジントルク消費量に応じて、前記ファイアリング制御を実行する頻度を変更すること、
を含む処理を実行する、
請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
エンジントルク消費量に応じて、前記スロットルバルブを閉じる速度を変更すること、
を含む処理を実行する、
請求項1~4のいずれか1項に記載のエンジン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マニュアルトランスミッション車において、シフトアップあるいはシフトダウン時にクラッチが解除され、シフトレバーが操作されると、マニュアルトランスミッションの入力軸回転数と、エンジン回転数とに差が生じる。このように、マニュアルトランスミッションの入力軸回転数とエンジン回転数とに差が生じている状態で、クラッチを接続すると、変速ショックが発生する。変速ショックが発生すると、乗員に不快感が生じる。
【0003】
特許文献1には、フューエルカット条件が成立しているとき、全ての気筒内での燃焼を休止させるフューエルカット処理を実行することについて開示がある。また、特許文献1には、フューエルカット処理を一時的に中断して燃料噴射弁から燃料を噴射させることによって気筒内で燃焼を行わせるファイアリング処理を実行することについて開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-128728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フューエルカット処理を一時的に中断してファイアリング処理を実行することで、エンジン回転数の低下を抑制することができる。ところで、例えば、エアコンユニットの駆動は、エンジンの駆動力を消費することで駆動される。そのため、エアコンユニットの駆動がオンされている場合、フューエルカット制御中に低下するエンジン回転数は、エアコンユニットの駆動がオフされている場合に比べて大きくなる。エンジン回転数の低下が大きいほど、変速ショックが大きくなる。
【0006】
しかし、特許文献1の記載では、このようなエアコンユニットの駆動のオンおよびオフにより変動するエンジン回転数について何ら考慮されておらず、変速ショックを抑制することが困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、変速ショックを抑制可能なエンジン制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係るエンジン制御装置は、
エンジンに設けられた点火プラグおよびインジェクタと、
吸気管に設けられたスロットルバルブと、
前記点火プラグ、前記インジェクタ、および、前記スロットルバルブを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
アクセルがオフされた際に前記エンジンの燃焼を休止させるフューエルカット制御を実行すること、
前記アクセルがオフされ、クラッチが解除された際において、エンジン回転数を低下させる所定条件が成立する場合、前記フューエルカット制御を中断して、前記インジェクタから燃料を噴射させ、前記点火プラグにより点火させるファイアリング制御、および、前記スロットルバルブを閉じる速度を低下させる閉じ速度制御の少なくとも一方を実行すること、
を含む処理を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、変速ショックを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る車両の構成を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、本実施形態に係る変速ショックを説明するためのグラフである。
図4図4は、本実施形態に係る変速ショック制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図5図5は、本実施形態に係るファイアリング制御処理および閉じ速度制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る車両100の構成を示す図である。図1において、矢印Fは、車両の前進方向を示し、矢印Bは、車両の後進方向を示し、矢印Rは、車両の右方向を示し、矢印Lは、車両の左方向を示している。車両100は、前後輪駆動する4WD(4輪駆動)走行が可能な四輪駆動車である。ただし、これに限定されず、車両100は、4WD走行と、前輪と後輪のいずれか一方を駆動する2WD(2輪駆動)走行とを切換可能な四輪駆動車であってもよい。その場合、2WD走行時においては、前輪を駆動するようにしてもよいし、後輪を駆動するようにしてもよい。
【0013】
本実施形態では、車両100は、エンジン110およびモータ120の2つの駆動源を備えたハイブリッド車について説明する。ただし、車両100は、駆動源が、エンジン110のみであってもよく、エンジン車等、様々な車種を採用することができる。また、本実施形態では、車両100は、マニュアル車である。ここでは、本実施形態の特徴に関係する構成について詳細に説明し、本実施形態の特徴と無関係の構成については説明を省略する。
【0014】
図1に示すように、車両100は、エンジン110、モータ120、クラッチ130、トランスミッション140、インバータ150、バッテリ160、プロペラシャフト170、フロントデファレンシャルギヤ180、フロントドライブシャフト190、前輪200、リアデファレンシャルギヤ210、リアドライブシャフト220、後輪230を備える。また、車両100は、吸気管300、スロットルバルブ310、エアコンユニット320、コンプレッサ330、オルタネータ340、補機バッテリ350、電装装置360、制御装置400を備える。
【0015】
エンジン110は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンで構成される。エンジン110は、不図示の燃料タンクから供給されるガソリンや軽油等の燃料を燃焼させることで駆動力を得る。
【0016】
具体的に、エンジン110には、インジェクタ112と、点火プラグ114とが設けられる。インジェクタ112は、燃料を噴射して不図示の燃焼室内に燃料を供給する。点火プラグ114は、先端が燃焼室内に配され、燃焼室内に供給された燃料と空気の混合気を点火する。燃料と空気の混合気は、所定のタイミングで点火プラグ114により点火され、燃焼される。かかる燃焼により、エンジン110は、駆動力を得ることができる。
【0017】
エンジン110は、得られた駆動力を、クラッチ130を介してトランスミッション140に伝達する。エンジン110は、制御装置400と接続され、制御装置400の制御指令に基づいてインジェクタ112および点火プラグ114の動作が制御され、駆動力が調整される。
【0018】
モータ120は、エンジン110と同軸に配される。モータ120は、インバータ150を介してバッテリ160から供給される電力により駆動力を得る。モータ120は、得られた駆動力をトランスミッション140に伝達する。また、モータ120は、電力の供給を受けていないタイミングで、発電機としても機能する。モータ120によって発電された電力は、インバータ150を介してバッテリ160に蓄積される。また、インバータ150は、制御装置400と接続され、制御装置400の制御指令に基づいて供給電力、すなわち、モータ120の駆動力が調整される。
【0019】
エンジン110やモータ120といった駆動源から出力された駆動力は、トランスミッション140により、トルク、回転数、回転方向が調整されてプロペラシャフト170に伝達される。プロペラシャフト170に伝達された駆動力は、フロントデファレンシャルギヤ180、フロントドライブシャフト190を介して前輪200に伝達される。また、プロペラシャフト170に伝達された駆動力は、リアデファレンシャルギヤ210、リアドライブシャフト220を介して後輪230にも伝達される。
【0020】
吸気管300は、内部に吸気流路が形成され、吸気流路により外部空間とエンジン110の不図示の吸気ポートとを連通させる。これにより、外部空間の空気(以下、吸気とも呼ぶ。)をエンジン110に導入させることができる。
【0021】
スロットルバルブ310は、吸気管300に設けられ、エンジン110に導入される吸気の量を調整可能に構成される。スロットルバルブ310は、吸気流路を開閉可能に構成される。スロットルバルブ310は、制御装置400と接続され、制御装置400の制御指令に基づいてスロットルバルブ310の開度が制御される。スロットルバルブ310は、不図示のアクセルペダルの踏み込み量に応じてアクチュエータにより駆動され、スロットルバルブ310の開度が調整される。これにより、エンジン110に導入される吸気の量を調整することができる。
【0022】
エアコンユニット320は、車両100の車室内を冷房または暖房により空気調和する空調ユニットである。エアコンユニット320は、外部空間の温度の変化に関係なく、車室内温度を常に適正温度に保持することにより、快適な車室内環境を提供する。エアコンユニット320は、コンプレッサ330、不図示のコンデンサ、不図示の膨張バルブ、不図示の蒸発器を有する。
【0023】
コンプレッサ330は、エアコンユニット320において循環する冷媒を圧縮する。コンプレッサ330は、不図示のクラッチを介してエンジン110に連結される。クラッチが締結されると、エンジン110の駆動力がコンプレッサ330に伝達され、エンジン110の駆動力により冷媒を圧縮するコンプレッサ330の作動が行われる。クラッチの締結が解除されると、エンジン110とコンプレッサ330との間の駆動力の伝達が解除され、コンプレッサ330の作動が停止される。
【0024】
コンデンサは、コンプレッサ330により圧縮された冷媒を凝縮して液化させる。膨張バルブは、コンデンサにより凝縮されて液化された冷媒を膨張させる。蒸発器は、膨張バルブで膨張された冷媒を蒸発させながら冷媒の蒸発潜熱を用いて、車室内に送風される空気を冷却する。
【0025】
エアコンユニット320は、制御装置400と接続され、制御装置400の制御指令に基づいてコンプレッサ330の駆動が制御される。例えば、エアコンユニット320は、冷房モードであるとき、コンプレッサ330により圧縮された高温、高圧の気相冷媒をコンデンサにより液状に凝縮した後、膨張バルブと蒸発器を経て再びコンプレッサ330に循環させる。この過程で膨張バルブにより膨張された低温、低圧の液状冷媒が蒸発器に供給され、蒸発器で蒸発される冷媒との熱交換により冷却された空気が車室内に吐き出され、これによって車室内の冷房が行われる。
【0026】
オルタネータ340は、エンジン110の駆動力によって発電する小容量の発電機である。オルタネータ340は、制御装置400と接続され、制御装置400の制御指令に基づいてオルタネータ340の駆動が制御される。オルタネータ340の駆動がオン状態に制御されると、エンジン110の駆動力により電力を発電する動作が行われる。オルタネータ340の駆動がオフ状態に制御されると、エンジン110の駆動力により電力を発電する動作が停止される。
【0027】
補機バッテリ350は、オルタネータ340に接続され、オルタネータ340が発電した電力を充電する。また、補機バッテリ350は、電装装置360に接続され、電装装置360に電力を供給する。
【0028】
電装装置360は、例えば、車両100に装備された電装品であり、この電装品の動作のために、オルタネータ340で発電した電力が使用される。電装品は、例えば、ヘッドライト、リアライト、ウインカーライト、カーオーディオ、カーナビ等である。本実施形態では、電装装置360は、補機バッテリ350に接続され、補機バッテリ350から電力が供給される。しかし、これに限定されず、電装装置360は、補機バッテリ350を介さずにオルタネータ340に接続され、オルタネータ340から電力が供給されてもよい。
【0029】
制御装置400は、車両100の全体を制御する。制御装置400は、1つまたは複数のプロセッサ400aと、プロセッサ400aに接続される1つまたは複数のメモリ400bと、を有する。プロセッサ400aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。メモリ400bは、例えば、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。ROMは、CPUが使用するプログラムおよび演算パラメータ等を記憶する記憶素子である。RAMは、CPUにより実行される処理に用いられる変数およびパラメータ等のデータを一時記憶する記憶素子である。
【0030】
図2は、本実施形態に係る制御装置400の機能構成の一例を示すブロック図である。例えば、図2に示されるように、制御装置400は、フューエルカット制御部410、ファイアリング制御部420、閉じ速度制御部430、切替制御部440、オルタネータ制御部450を含む。なお、フューエルカット制御部410、ファイアリング制御部420、閉じ速度制御部430、切替制御部440、オルタネータ制御部450により行われる以下で説明する処理を含む各種処理は、プロセッサ400aによって実行され得る。詳細には、メモリ400bに記憶されているプログラムをプロセッサ400aが実行することにより、各種処理が実行される。なお、本実施形態では、インジェクタ112、点火プラグ114、スロットルバルブ310、制御装置400により、エンジン制御装置が構成される。
【0031】
また、車両100には、シフトポジションセンサ500、アクセルポジションセンサ510、クラッチスイッチ520、エアコンスイッチ530、電装スイッチ540、バッテリセンサ550が設けられる。シフトポジションセンサ500、アクセルポジションセンサ510、クラッチスイッチ520、エアコンスイッチ530、電装スイッチ540、バッテリセンサ550は、制御装置400に接続される。
【0032】
シフトポジションセンサ500は、ドライバが操作したシフトレバーのシフトポジションである変速ギヤ位置を検出し、当該変速ギヤ位置を示す信号を制御装置400に出力する。例えば、シフトポジションセンサ500は、1速、2速、3速、4速、5速、6速などの変速ギヤ位置を検出する。
【0033】
アクセルポジションセンサ510は、ドライバにより操作される不図示のアクセルペダルの踏み込み量を検出し、当該踏み込み量を示す信号を制御装置400に出力する。例えば、アクセルポジションセンサ510は、ドライバによりアクセルペダルが踏み込まれている状態をオンと検出し、オン信号を制御装置400に出力する。また、アクセルポジションセンサ510は、ドライバによりアクセルペダルが踏み込まれていない状態をオフと検出し、オフ信号を制御装置400に出力する。
【0034】
クラッチスイッチ520は、ドライバにより操作される不図示のクラッチペダルの踏み込み量を検出し、当該踏み込み量を示す信号を制御装置400に出力する。例えば、クラッチスイッチ520は、ドライバによりクラッチペダルが踏み込まれている状態をオンと検出し、オン信号を制御装置400に出力する。また、クラッチスイッチ520は、ドライバによりクラッチペダルが踏み込まれていない状態をオフと検出し、オフ信号を制御装置400に出力する。
【0035】
エアコンスイッチ530は、ドライバにより操作され、エアコンユニット320の駆動、非駆動、および、要求出力を示す信号を制御装置400に出力する。電装スイッチ540は、ドライバにより操作され、電装装置360の駆動、非駆動、および、要求出力を示す信号を制御装置400に出力する。バッテリセンサ550は、バッテリ160および補機バッテリ350の充電状態であるSOCを検出し、当該SOCを示す信号を制御装置400に出力する。
【0036】
フューエルカット制御部410は、アクセルがオフされた際にエンジン110の燃焼を休止させるフューエルカット制御を実行する。ファイアリング制御部420は、フューエルカット制御中において、当該フューエルカット制御を一時的に中断して、インジェクタ112から燃料を噴射させ、点火プラグ114により点火させるファイアリング制御を実行する。
【0037】
閉じ速度制御部430は、スロットルバルブ310を閉じる速度を制御する閉じ速度制御を実行する。切替制御部440は、ファイアリング制御と閉じ速度制御とを切り替える切替制御を実行する。
【0038】
オルタネータ制御部450は、電装スイッチ540およびバッテリセンサ550の出力に基づいて、オルタネータ340の駆動を制御する。例えば、オルタネータ制御部450は、電装スイッチ540により電装装置360の駆動を検出した場合、オルタネータ340が電力を発電するように制御する。また、オルタネータ制御部450は、バッテリセンサ550によりSOCが閾値未満であることを検出した場合、オルタネータ340が電力を発電するように制御する。
【0039】
ところで、クラッチ130が解除され、シフトレバーの操作によりシフトポジションが変更されると、トランスミッション140の入力軸回転数と、エンジン110の不図示のクランクシャフトの回転数(以下、エンジン回転数という)とに差が生じる。このように、トランスミッション140の入力軸回転数とエンジン回転数とに差が生じている状態で、クラッチ130を接続すると、変速ショックが発生し、乗員に不快感が生じる。
【0040】
変速ショックは、フューエルカット制御中およびクラッチ解除中において、エンジン回転速度(以下、エンジン回転数とも呼ぶ。)を低下させる所定条件が成立している場合に大きくなる。具体的に、例えば、エアコンユニット320の駆動がオンされた状態で、フューエルカット制御およびクラッチ解除が行われると、エアコンユニット320を駆動させるためにエンジン110の駆動力が使用され、その分エンジン回転数が低下する。エンジン回転数が低下した分、変速ショックが大きくなる。
【0041】
また、同様の理由で、オルタネータ340の駆動がオンされた状態で、フューエルカット制御およびクラッチ解除が行われると、変速ショックが大きくなる。オルタネータ340の駆動は、例えば、補機バッテリ350のSOCが閾値未満である場合や、電装装置360の駆動がオンされると開始される。つまり、本実施形態における所定条件は、エアコンユニット320の駆動がオンされた状態であるときや、オルタネータ340の駆動がオンされた状態であるときである。
【0042】
図3は、本実施形態に係る変速ショックを説明するためのグラフである。図3中、縦軸は、エンジン回転数を示し、横軸は、時間を示している。また、実線は、フューエルカット制御中およびクラッチ解除中において、エンジン回転数を低下させる所定条件が成立していない場合のエンジン回転数の変移を示す。破線は、フューエルカット制御中およびクラッチ解除中において、エンジン回転数を低下させる所定条件が成立している場合のエンジン回転数の変移を示す。
【0043】
例えば、エアコンユニット320の駆動がエンジン110の駆動力を使用することから、エアコンユニット320の駆動がオンされている場合、エアコンユニット320の駆動がオフである場合に比べ、エンジン回転数の低下速度が大きくなる。以下では、エアコンユニット320の駆動がオンされている状態を、所定条件が成立しているとし、エアコンユニット320の駆動がオフされている状態を、所定条件が成立していないとして説明する。
【0044】
図3では、所定条件が成立していない場合を実線で表し、所定条件が成立している場合を破線で表している。まず、図3中、実線に示すエンジン回転数の変移について説明し、その後、破線に示すエンジン回転数の変移について説明する。
【0045】
図3中実線の時間T1において、ドライバによりアクセルペダルの踏み込みが解除され、アクセルポジションセンサ510からオフ信号が制御装置400に出力される。制御装置400がオフ信号を受信すると、フューエルカット制御部410は、エンジン110の燃焼を休止させるフューエルカット制御を実行する。
【0046】
また、時間T1において、ドライバによりクラッチペダルが踏み込まれ、クラッチ130の締結が解除され、シフトレバーの操作によりシフトポジションの変更が開始される。時間T2において、ドライバのシフトレバーの操作およびシフトポジションの変更が完了し、ドライバによりクラッチペダルの踏み込みが解除され始め、クラッチ130が徐々に締結を開始する。
【0047】
時間T3において、ドライバによりクラッチペダルの踏み込みが完全に解除され、クラッチ130が完全に締結し、エンジン110のクランクシャフトとトランスミッション140の入力軸が一体的に回転する。
【0048】
また、時間T3において、ドライバによりアクセルペダルの踏み込みが開始され、アクセルポジションセンサ510からオン信号が制御装置400に出力される。制御装置400は、オン信号を受信すると、フューエルカット制御部410は、フューエルカット制御を終了し、エンジン110の燃焼を開始する。
【0049】
時間T1において、フューエルカット制御が開始されるため、フューエルカット制御中の時間T1から時間T3までエンジン回転数が徐々に低下している。また、クラッチ130は、時間T1において締結が解除され、時間T2において徐々に締結を開始し、時間T3において締結を完了する。クラッチ130の締結が開始される時間T2から完了される時間T3までの間において変速ショックが発生する。
【0050】
一方、図3中破線の時間T1においても、実線の時間T1と同様に、ドライバによりアクセルペダルの踏み込みが解除され、フューエルカット制御部410は、フューエルカット制御を実行する。また、時間T1において、ドライバによりクラッチペダルが踏み込まれ、クラッチ130の締結が解除され、シフトレバーの操作によりシフトポジションの変更が開始される。
【0051】
時間T2’において、ドライバのシフトレバーの操作およびシフトポジションの変更が完了し、ドライバによりクラッチペダルの踏み込みが解除され始め、クラッチ130が徐々に締結を開始する。時間T3において、ドライバによりアクセルペダルの踏み込みが開始され、また、ドライバによりクラッチペダルの踏み込みが完全に解除され、クラッチ130が完全に締結する。
【0052】
ここで、アクセルがオフされ、クラッチ130が解除された際において、エアコンユニット320の駆動がエンジン110の駆動力を使用することから、実線で示すエンジン回転数に比べ、破線で示すエンジン回転数の低下速度が大きくなる。そのため、破線で示す時間T1から時間T2’までのエンジン回転数の低下量は、実線で示す時間T1から時間T2までのエンジン回転数の低下量よりも大きくなる。
【0053】
そのため、時間T2’から時間T3までの間のクラッチ130の接続により発生する変速ショックは、時間T2から時間T3までの間のクラッチ130の接続により発生する変速ショックよりも大きくなる。
【0054】
そこで、本実施形態では、ファイアリング制御部420は、時間T1から時間T3の間において、所定条件が成立している場合、フューエルカット制御を一時的に中断して、ファイアリング制御を実行する。また、閉じ速度制御部430は、時間T1から時間T3の間において、所定条件が成立している場合、閉じ速度制御を実行する。
【0055】
図4は、本実施形態に係る変速ショック制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。図4に示すように、フューエルカット制御部410は、アクセルポジションセンサ510の出力に基づき、アクセルがオフされたか否かを判定する(S100)。アクセルがオフされた場合(S100のYES)、フューエルカット制御部410は、フューエルカット制御処理を実行する(S200)。一方、アクセルがオン状態である場合(S100のNO)、フューエルカット制御部410は、変速ショック制御処理を終了する。
【0056】
ファイアリング制御部420および閉じ速度制御部430は、フューエルカット制御中に、所定条件が成立しているか否かを判定する(S300)。ここでは、ファイアリング制御部420および閉じ速度制御部430は、エアコンスイッチ530から出力される信号に基づいて、エアコンユニット320の駆動状態を判定する。
【0057】
ファイアリング制御部420および閉じ速度制御部430は、エアコンユニット320の駆動がオンである駆動状態であると判定すると、所定条件が成立していると判定する。また、ファイアリング制御部420および閉じ速度制御部430は、エアコンユニット320の駆動がオフである非駆動状態であると判定すると、所定条件が成立していないと判定する。なお、所定条件の成立として、エアコンユニット320の駆動状態に加え、クラッチ130締結の解除を含めてもよい。
【0058】
ファイアリング制御部420および閉じ速度制御部430は、所定条件が成立していると判定した場合(S300のYES)、ファイアリング制御処理および閉じ速度制御処理を実行する(S400)。一方、所定条件が成立していないと判定された場合(S300のNO)、ファイアリング制御部420および閉じ速度制御部430は、ファイアリング制御処理および閉じ速度制御処理を実行せずに、後述するS500の処理に移行する。
【0059】
図5は、本実施形態に係るファイアリング制御処理および閉じ速度制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。図5に示すように、ファイアリング制御部420および閉じ速度制御部430は、シフトポジションセンサ500の出力に基づいて、1速、2速、3速、4速、5速、6速などのシフトポジションを検出する(S410)。また、ファイアリング制御部420および閉じ速度制御部430は、エアコンスイッチ530の出力に基づいて、エアコンスイッチ530の要求出力を検出する(S420)。
【0060】
ファイアリング制御部420および閉じ速度制御部430は、検出したシフトポジションおよび要求出力に基づいて、ファイアリング制御および閉じ速度制御を実行する(S430)。
【0061】
S430において、ファイアリング制御部420がファイアリング制御を実行することにより、所定条件が成立している場合でも、エンジン回転数の低下速度を抑制することができる。その結果、図3中破線で示すエンジン回転数の変移を、実線で示すエンジン回転数の変移のように制御でき、変速ショックを小さく抑制することができる。
【0062】
なお、ファイアリング制御の実行に際し、ファイアリング制御部420は、エアコンスイッチ530の要求出力に基づいて、ファイアリング制御を実行する頻度を変更する。具体的に、エアコンスイッチ530には、強スイッチ、中スイッチ、弱スイッチが含まれる。強スイッチは、要求出力としての風量が最も大きくなる設定のスイッチであり、弱スイッチは、要求出力としての風量が最も小さくなる設定のスイッチであり、中スイッチは、要求出力としての風量が強スイッチと弱スイッチの間となる設定のスイッチである。
【0063】
風量が大きくなるほど、エアコンユニット320の駆動に使用されるエンジントルク消費量が大きくなる。エンジントルク消費量が大きくなるほど、エンジン回転数の低下速度が大きくなる。このように、エアコンスイッチ530の要求出力とエンジントルク消費量とは相関関係を有しており、エンジントルク消費量とエンジン回転数とは、相関関係を有している。
【0064】
したがって、ファイアリング制御部420は、エアコンスイッチ530の要求出力、ひいては、エンジントルク消費量に応じて、ファイアリング制御を実行する頻度を変更する。具体的に、ファイアリング制御部420は、エアコンスイッチ530の要求出力が大きくなるほど、ファイアリング制御の頻度が大きくなるように制御する。
【0065】
例えば、ファイアリング制御部420は、要求出力としての風量が最も大きくなる強スイッチが操作された場合、エンジン110のサイクル数が5回に1回の頻度でファイアリング制御を実行する。また、ファイアリング制御部420は、要求出力としての風量が強スイッチと弱スイッチの間となる中スイッチが操作された場合、エンジン110のサイクル数が10回に1回の頻度でファイアリング制御を実行する。また、ファイアリング制御部420は、要求出力としての風量が最も小さくなる弱スイッチが操作された場合、エンジン110のサイクル数が20回に1回の頻度でファイアリング制御を実行する。
【0066】
これにより、エアコンスイッチ530の要求出力の大きさに応じた適切な頻度でファイアリング制御を実行することができる。その結果、ファイアリング制御の実行により、エアコンスイッチ530の要求出力の大きさによらず図3中破線で示すエンジン回転数の変移を実線で示すエンジン回転数の変移のように制御することができる。
【0067】
また、ギヤのシフトチェンジが高速側になるほど、ギヤ比で増速される分のエンジントルクが小さくなることから、変速ショックが小さくなる。そのため、ファイアリング制御部420は、シフトチェンジによりギヤが高速側になるほど、ファイアリング制御を実行する頻度を小さくする。これにより、燃料を噴射する頻度が低減できるため、燃費を低下させることができる。
【0068】
同様に、S430において、閉じ速度制御部430が閉じ速度制御を実行することにより、所定条件が成立している場合でも、エンジン回転数の低下速度を抑制することができる。具体的に、閉じ速度制御により、スロットルバルブ310を閉じる速度を低下させることで、閉じる速度を低下させない場合に比べ、フューエルカット制御中のスロットルバルブ310の開度を大きくすることができる。
【0069】
スロットルバルブ310の開度が大きいほど、エンジン110の吸気ポートに供給される吸気量が多くなるため、ポンピングロスを低減することができる。ポンピングロスの低減により、エンジン回転数の低下速度を抑制することができる。その結果、図3中破線で示すエンジン回転数の変移を、実線で示すエンジン回転数の変移のように制御でき、変速ショックを小さく抑制することができる。
【0070】
また、閉じ速度制御部430は、エアコンスイッチ530の要求出力、ひいては、エンジントルク消費量に応じて、スロットルバルブ310の閉じる速度を変更する。具体的に、閉じ速度制御部430は、エアコンスイッチ530の要求出力が大きくなるほど、スロットルバルブ310を閉じる速度が小さくなるように閉じる速度を制御する。
【0071】
これにより、エアコンスイッチ530の要求出力の大きさに応じてスロットルバルブ310を閉じる速度を適切に制御することができる。その結果、ファイアリング制御の実行により、エアコンスイッチ530の要求出力の大きさによらず図3中破線で示すエンジン回転数の変移を実線で示すエンジン回転数の変移のように制御することができる。
【0072】
また、ギヤのシフトチェンジが高速側になるほど、ギヤ比で増速される分のエンジントルクが小さくなることから、変速ショックが小さくなる。そのため、閉じ速度制御部430は、シフトチェンジによりギヤが高速側になるほど、スロットルバルブ310を閉じる速度を増大させる。これにより、スロットルバルブ310の制御に費やす時間が短くなるため、プロセッサ400aの負荷を低減させることができる。
【0073】
なお、本実施形態では、ファイアリング制御および閉じ速度制御の双方を実行する例について説明したが、ファイアリング制御のみを実行するようにしてもよいし、閉じ速度制御のみを実行するようにしてもよい。つまり、本実施形態では、所定条件が成立した場合、ファイアリング制御および閉じ速度制御の少なくとも一方を実行する。
【0074】
また、本実施形態では、ファイアリング制御と閉じ速度制御とを切り替えて制御してもよい。具体的に、切替制御部440は、シフトチェンジによりギヤの低速側では、ファイアリング制御部420によりファイアリング制御を実行させ、ギヤの高速側では、閉じ速度制御部430により閉じ速度制御を実行させるように切替制御を行う。
【0075】
ギヤのシフトチェンジが高速側になるほど、ギヤ比で増速される分のエンジントルクが小さくなることから、変速ショックが小さくなる。また、ファイアリング制御の方が、閉じ速度制御よりも変速ショックを小さくすることができる。そのため、ギヤの低速側では、ファイアリング制御を実行させることで、変速ショックを効果的に抑制し、また、ギヤの高速側では、閉じ速度制御を実行することで、燃料を消費せずに変速ショックを抑制し、燃費の低下を抑制することができる。
【0076】
図4に戻り、フューエルカット制御部410、ファイアリング制御部420、閉じ速度制御部430は、アクセルポジションセンサ510の出力に基づき、アクセルがオンされたか否かを判定する(S500)。アクセルがオンされていない場合(S500のNO)、フューエルカット制御部410、ファイアリング制御部420、閉じ速度制御部430は、S200、S300,S400、S500の処理を繰り返し実行する。
【0077】
一方、アクセルがオンされた場合(S500のYES)、フューエルカット制御部410、ファイアリング制御部420、閉じ速度制御部430は、フューエルカット制御処理、ファイアリング制御処理、閉じ速度制御処理を終了する(S600)。これにより、変速ショック制御処理が終了される。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0079】
100 車両
110 エンジン
112 インジェクタ
114 点火プラグ
130 クラッチ
310 スロットルバルブ
320 エアコンユニット
330 コンプレッサ
340 オルタネータ
350 補機バッテリ
360 電装装置
400 制御装置
400a プロセッサ
400b メモリ
410 フューエルカット制御部
420 ファイアリング制御部
430 速度制御部
440 切替制御部
500 シフトポジションセンサ
510 アクセルポジションセンサ
520 クラッチスイッチ
530 エアコンスイッチ
540 電装スイッチ
550 バッテリセンサ
図1
図2
図3
図4
図5