(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117655
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】中空シャフトおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16C 3/02 20060101AFI20240822BHJP
B21K 21/08 20060101ALI20240822BHJP
B21J 5/08 20060101ALI20240822BHJP
B21J 5/06 20060101ALI20240822BHJP
B21K 1/06 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
F16C3/02
B21K21/08
B21J5/08 Z
B21J5/06 C
B21K1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023869
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】593146017
【氏名又は名称】光精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(72)【発明者】
【氏名】西村 憲一
(72)【発明者】
【氏名】西村 昌能
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓二
(72)【発明者】
【氏名】水谷 崇人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩田 隆
(72)【発明者】
【氏名】福森 久登
【テーマコード(参考)】
3J033
4E087
【Fターム(参考)】
3J033AA01
3J033BA02
3J033BA07
3J033BC10
4E087AA10
4E087CA26
4E087EA11
4E087EC18
4E087EC27
4E087HA36
4E087HB01
(57)【要約】
【課題】製品コストを低減し、かつ、ねじれに対する剛性を高め得る中空シャフトおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】中空シャフト10は、中間部20、一端部30および他端部40を備える。中間部20は、内部空間27,28を区画する壁部25を軸方向ほぼ中央に有する円筒状である。一端部30は、中間部20の内部空間27の内径と同径の内部空間37を一端31aに有するとともに内部空間37よりも小径の内部空間38を他端31bに有して一端31aが中間部20の一端22aに接続される。他端部40は、中間部20の内部空間28の内径と同径の内部空間47を一端41aに有するとともに内部空間47よりも小径の内部空間48を他端41bに有して一端41aが中間部20の他端23aに接続される。これにより、材料コストが安価なコイル材を原材料にすることが可能になり、機械的な強度として周方向に対する剛性も高まる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を二つに区画する壁部を軸方向ほぼ中央に有する円筒状の中間部と、
前記壁部に区画された前記内部空間の一方側の内径と同径の端部空間を一端側に有しかつ前記端部空間よりも小径または大径の異径空間を他端側に有して前記一端側が前記中間部の一端に接続される一端部と、
前記壁部に区画された前記内部空間の他方側の内径と同径の端部空間を一端側に有しかつ前記端部空間よりも小径または大径の異径空間を他端側に有して前記一端側が前記中間部の他端に接続される他端部と、
を備えることを特徴とする中空シャフト。
【請求項2】
前記壁部は、その厚さが前記中間部の軸方向長さの55%以下に設定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の中空シャフト。
【請求項3】
円柱部をそれぞれ有する第1パンチと第1カウンターパンチの間に位置する中間部ワークに対して前記第1パンチを押圧することにより内部空間を二つに区画する壁部を軸方向ほぼ中央に備えた円筒状の中間部を形成する中間部成形工程と、
前記第1パンチの円柱部と同径の円柱部を有する第2パンチとこの円柱部よりも小径または大径の異径円柱部を有する第2カウンターパンチとの間に位置する一端部ワークに対して前記第2パンチを押圧することにより前記中間部の一端に接続可能な一端側を備えた一端部を形成する一端部成形工程と、
前記第1カウンターパンチの円柱部と同径の円柱部を有する第3パンチとこの円柱部よりも小径または大径の異径円柱部を有する第3カウンターパンチとの間に位置する他端部ワークに対して前記第3パンチを押圧することにより前記中間部の他端に接続可能な一端側を備えた他端部を形成する他端部成形工程と、
前記中間部の一端と前記一端部の一端側とを接続し、前記中間部の他端と前記他端部の一端側とを接続する接続工程と、
を含む、ことを特徴とする中空シャフトの製造方法。
【請求項4】
円柱部をそれぞれ有する第1パンチと第1カウンターパンチの間に位置する中間部ワークに対して前記第1パンチを押圧することにより内部空間を二つに区画する壁部を軸方向ほぼ中央に備えた円筒状の中間部を形成する中間部成形工程と、
前記円柱部と同径の円柱部を有する第2パンチと前記円柱部よりも小径または大径の異径円柱部を有する第2カウンターパンチとの間に位置する端部ワークに対して前記第2パンチを押圧することにより前記中間部の両端のいずれにも接続可能な一端側を備えた端部を形成する端部成形工程と、
前記中間部の両端に前記端部の一端側をそれぞれ接続する接続工程と、
を含む、ことを特徴とする中空シャフトの製造方法。
【請求項5】
前記壁部は、その厚さが前記中間部の軸方向長さの55%以下に設定されている、ことを特徴とする請求項3または4に記載の中空シャフトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空シャフトおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中空シャフトの一例として、例えば、下記特許文献1に開示される自動車用の駆動軸がある。この駆動軸では、一端側から他端側まで内部に空間を設けてパイプ状にすることによって内部に空間のない中実の駆動軸よりも軽量になるように構成し、さらに軸方向対象かつ回転対称に構成された中間部とその両端部との曲げこわさの比率を著しく大きくすることによって振動騒音の発生を減少可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1には、このように構成される駆動軸の製造方法については「精密変形加工によって一体に製造されており」との記載はあるものの、その詳細に関しては言及がない。このようなパイプ状の駆動軸は、典型的には、例えば、円筒状のパイプ材に対して絞り加工が行われることより製造されることが多い。ところが、パイプ材は、内部空間のない中実線状のコイル材(棒材、丸棒)に比べて材料コストが高い傾向にある。そのため、中空シャフトの被成形材にパイプ材を用いた場合には製品コストの低減が難しくなるという問題がある。
【0005】
また、パイプ材は、一端側から他端側まで内部空間を有する。そのため、機械的な強度については、コイル材等に比べると、軸周り、つまり周方向に対する剛性(ねじり剛性)が低くならざるをえないという問題がある。ねじり剛性が低いと、中空シャフトは、中実線状のコイル材等から成形された中実のシャフトに比べてねじれ易い。したがって、中実のシャフトと同等のねじり剛性を得ようとすると、中空シャフトを太くせざるを得ないことから、配置やレイアウトの都合上、望ましくない場合も生じ得る。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、製品コストを低減し、かつ、ねじり剛性を高め得る中空シャフトおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載された請求項1の技術的手段を採用する。この手段によると、請求項1の中空シャフトは、中間部、一端部および他端部を備える。中間部は、内部空間を二つに区画する壁部を軸方向ほぼ中央に有する円筒状である。一端部は、壁部に区画された内部空間の一方側の内径と同径の端部空間を一端側に有する。また一端部は、この端部空間よりも小径または大径の異径空間を他端側に有し、一端側が中間部の一端に接続される。他端部は、壁部に区画された内部空間の他方側の内径と同径の端部空間を一端側に有する。また他端部は、この端部空間よりも小径または大径の異径空間を他端側に有し、一端側が中間部の他端に接続される。
【0008】
当該中空シャフトは、中間部に内部空間が存在しながらもその軸方向ほぼ中央に内部空間を二分する壁部を有する。このような壁部を有する中間部は、例えば、中実線状のコイル材から切り出した棒材や丸棒に対して鍛造により、当該棒材の一方側と他方側にそれぞれ内部空間を形成することによって成形することが可能である。また一端部や他端部についても、例えば、同様にコイル材から切り出した棒材や丸棒に対して鍛造により、当該棒材の一方側に端部空間を形成し、当該棒材の他方側に異径空間を形成することによって成形することが可能である。これにより、パイプ材に比べて材料コストが安価な中実線状のコイル材(棒材、丸棒)を当該中空シャフトの被成形材にすることが可能になる。また、当該中空シャフトは、中間部が軸方向ほぼ中央に壁部を有するため、このような壁部を有しないパイプ材を絞り加工等して製造された中空シャフトに比べて、機械的な強度として周方向に対する剛性が高まる。
【0009】
また、特許請求の範囲に記載された請求項2の技術的手段を採用する。この手段によると、壁部は、その厚さが中間部の軸方向長さの55%以下に設定されている。(※1)後述するように、例えば、中間部の軽量化よりもねじり剛性の増加を重視する場合には、中間部の軸方向長さに対する壁部の厚さ比率を50%前後(例えば45~55%)に設定することによって、壁部のない中間部の全部が中空であるときのねじり剛性に対する、中間部のねじり剛性の増加率を約14~32%に高めることが可能になり(
図5(B)参照)、また重量比率を約60~76%にすることが可能になる(
図5(A)参照)。
【0010】
また、例えば、中間部の軽量化を重視する場合には、中間部の軸方向長さに対する壁部の厚さ比率を10%以下(例えば1~10%)に設定することによって、中間部を中実で構成した場合の重量に対する中間部の重量の重量比率を約25~52%(ほぼ50%以下)に抑えることが可能になり(
図5(A)参照)、壁部のない中間部の全部が中空であるときのねじり剛性に対する、中間部のねじり剛性の増加率を約2~7%に高めることが可能になる(
図5(B)参照)。さらに、例えば、中間部の軽量化とねじり剛性の増加の両方を重視する場合においては、中間部の軸方向長さに対する壁部の厚さ比率を30%前後(例えば25~35%)に設定することによって、重量比率を約45~65%(55%前後)に抑えることが可能になり(
図5(A)参照)、ねじり剛性の増加率を約7.5~18%(12%前後)に高めることが可能になる(
図5(B)参照)。(※2)これらをまとめると、上記の壁部の厚さ比率は、例えば、1%以上55%以下の範囲内において設定されることで、トレードオフの関係にある、ねじり剛性の増加と重量の低減を任意に調整することができる。
【0011】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載された請求項3の技術的手段を採用する。この手段によると、請求項3の中空シャフトの製造方法は、中間部成形工程、一端部成形工程、他端部成形工程および接続工程を含む。中間部成形工程では、同径の円柱部をそれぞれ有する第1パンチと第1カウンターパンチの間に位置する中間部ワークに対して第1パンチを押圧することにより内部空間を二つに区画する壁部を軸方向ほぼ中央に備えた円筒状の中間部を形成する。一端部成形工程では、第1パンチの円柱部と同径の円柱部を有する第2パンチとこの円柱部よりも小径または大径の異径円柱部を有する第2カウンターパンチとの間に位置する一端部ワークに対して第2パンチを押圧することにより中間部の一端に接続可能な一端側を備えた一端部を形成する。また、他端部成形工程では、第1カウンターパンチの円柱部と同径の円柱部を有する第3パンチとこの円柱部よりも小径または大径の異径円柱部を有する第3カウンターパンチとの間に位置する他端部ワークに対して第3パンチを押圧することにより中間部の他端に接続可能な一端側を備えた他端部を形成する。そして、接続工程では、中間部の一端と一端部の一端側とを接続し、中間部の他端と他端部の一端側とを接続する。
【0012】
中間部成形工程により、内部空間を二つに区画する壁部を軸方向ほぼ中央に備えた円筒状の中間部が形成される。また、一端部成形工程により、中間部の一端に接続可能な一端側を備えた一端部が形成される。さらに、他端部成形工程により、中間部の他端に接続可能な一端側を備えた他端部が形成される。そして、接続工程により、中間部の一端と一端部の一端側とが接続され、中間部の他端と他端部の一端側とが接続されて、中空シャフトが製造される。これにより、パイプ材に比べて材料コストが安価な中実線状のコイル材(棒材、丸棒)を被成形材にすることが可能になる。また、当該中空シャフトは、中間部が軸方向ほぼ中央に壁部を有するため、このような壁部を有しないパイプ材を絞り加工等して製造された中空シャフトに比べて機械的な強度として周方向に対する剛性が高まる。
【0013】
また、特許請求の範囲に記載された請求項4の技術的手段を採用する。この手段によると、請求項4の中空シャフトの製造方法は、中間部成形工程、端部成形工程および接続工程を含む。中間部成形工程では、同径の円柱部をそれぞれ有する第1パンチと第1カウンターパンチの間に位置する中間部ワークに対して第1パンチを押圧することにより内部空間を二つに区画する壁部を軸方向ほぼ中央に備えた円筒状の中間部を形成する。端部成形工程では、円柱部と同径の円柱部を有する第2パンチと円柱部よりも小径または大径の異径円柱部を有する第2カウンターパンチとの間に位置する端部ワークに対して第2パンチを押圧することにより中間部の両端のいずれにも接続可能な一端側を備えた端部を形成する。そして、接続工程では、中間部の両端に端部の一端側をそれぞれ接続する。
【0014】
中間部成形工程により、内部空間を二つに区画する壁部を軸方向ほぼ中央に備えた円筒状の中間部が形成される。また、端部成形工程により、中間部の両端のいずれにも接続可能な一端側を備えた端部が形成される。そして、接続工程により、中間部の両端に端部の一端側をそれぞれ接続されて中空シャフトが製造される。これにより、パイプ材に比べて材料コストが安価な中実線状のコイル材(棒材、丸棒)を被成形材にすることが可能になる。また、当該中空シャフトは、中間部が軸方向ほぼ中央に壁部を有するため、このような壁部を有しないパイプ材を絞り加工等して製造された中空シャフトに比べて、機械的な強度として周方向に対する剛性が高まる。
【0015】
また、特許請求の範囲に記載された請求項5の技術的手段を採用する。この手段によると、壁部は、その厚さが中間部の軸方向長さの55%以下に設定されている。これにより、上記の(※1)から(※2)の間で述べたように、中間部の軸方向長さに対する壁部の壁部の厚さ比率は、例えば、1%以上55%以下の範囲内において設定されることで、トレードオフの関係にある、ねじり剛性の増加と重量の低減を任意に調整することができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明では、パイプ材に比べて材料コストが安価な中実線状のコイル材(棒材、丸棒)を中空シャフトの被成形材にすることが可能になる。また、当該中空シャフトは、中間部が軸方向ほぼ中央に壁部を有するため、このような壁部を有しないパイプ材を絞り加工等して製造された中空シャフトに比べて機械的な強度として周方向に対する剛性が高まる。したがって、製品コストを低減し、かつ、ねじり剛性を高めることができる。
【0017】
請求項2の発明では、中間部が中実である場合に比べて重さをほぼ50%(52%)以下に減少させることができ、かつ、中間部の全部が中空である場合に比べてねじり剛性を増加させることができる。したがって、製品コストを低減し、かつ、ねじり剛性を高めることに加えて、より軽量化に資することが可能になる。
【0018】
請求項3の発明では、中間部成形工程、一端部成形工程、他端部成形工程および接続工程で中空シャフトを製造することにより、パイプ材に比べて材料コストが安価な中実線状のコイル材(棒材、丸棒)を被成形材にすることが可能になる。また、当該中空シャフトは、中間部が軸方向ほぼ中央に壁部を有するため、このような壁部を有しないパイプ材を絞り加工等して製造された中空シャフトに比べて機械的な強度として周方向に対する剛性が高まる。したがって、製品コストを低減し、かつ、ねじり剛性を高めることができる。
【0019】
請求項4の発明では、中間部成形工程、端部成形工程および接続工程で中空シャフトを製造することにより、パイプ材に比べて材料コストが安価な中実線状のコイル材(棒材、丸棒)を被成形材にすることが可能になる。また、当該中空シャフトは、中間部が軸方向ほぼ中央に壁部を有するため、このような壁部を有しないパイプ材を絞り加工等して製造された中空シャフトに比べて機械的な強度として周方向に対する剛性が高まる。したがって、製品コストを低減し、かつ、ねじり剛性を高めることができる。
【0020】
請求項5の発明では、中間部が中実である場合に比べて重さをほぼ50%(52%)以下に減少させることができ、かつ、中間部の全部が中空である場合に比べてねじり剛性を増加させることができる。したがって、製品コストを低減し、かつ、ねじり剛性を高めることに加えて、より軽量化に資することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る中空シャフトの構成例を示す説明図である。
【
図2】本実施形態に係る中空シャフトを構成する各部の構成例を示す図である。
図2(A)は中間部の軸方向部分断面図、
図2(B)は一端部の軸方向断面図、
図2(C)は他端部の正面図、である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る中空シャフトの製造方法を使用する加工装置の構成例および
図2(A)に示す中間部の製造工程の一例を示す工程図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る中空シャフトの製造方法を使用する加工装置の構成例および
図2(B)に示す一端部や
図2(C)に示す他端部の製造工程の一例を示す工程図である。
【
図5】
図5(A)は、中間部の壁部の厚さに対する重量の変化を表した特性図である。
図5(B)は、中空シャフトの中間部の壁部の厚さに対するねじり剛性の変化を表した特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の中空シャフトおよびその製造方法の実施形態について図を参照して説明する。まず、本実施形態に係る中空シャフト10の構成例を
図1および
図2に基づいて説明する。
図1は、中空シャフト10の構成例を示す説明図であり、一点鎖線で表した中心軸より上半分に外観、下半分に断面を図示している。
図2は、中空シャフト10を構成する中間部20、一端部30および他端部40の各断面を図示している。
【0023】
<中空シャフト10の構成>
図1に示すように、中空シャフト10は、中間部20と、この中間部20の一端22aに接続される一端部30と、中間部20の他端23aに接続される他端部40と、により構成されている。中空シャフト10は、例えば、自動車のドライブシャフトとして用いられる。ドライブシャフトは、エンジンやモータ等の駆動源からプロペラシャフトやディファレンシャルギア等を介して伝達された駆動力を駆動輪に伝えるものである。
【0024】
中間部20は、円周壁を形成する外周壁21を備えた円筒状部材であり、内部空間27を有する中空部22、内部空間28を有する中空部23およびこれらの内部空間27,28を軸方向に区画する壁部25により構成されている。即ち、中間部20は、壁部25を中心に一端22aの方向に内部空間27を備え、また他端23aの方向に内部空間28を備えるように構成されている。
【0025】
図2(A)に示すように、中間部20の中空部22は、壁部25の一端側25aに連続して形成されている。本実施例では、中間部20の軸方向に沿って内周壁22cが均一の薄い肉厚を有するとともに、平坦な底端22bを有するカップ形状に形成されている。このカップ形状は、後述する鍛造工程により、その内部空間27とほぼ同形状の円柱部を有するパンチ55をワークWに押圧することによって当該ワークWがパンチ55の後方に押し出されて(後方押出し)形成される(
図3(B)等を参照のこと)。
【0026】
一方、中間部20の中空部23は、中空部22の反対側、つまり壁部25の他端側25bに連続して形成されている。本実施形態では、中空部22と同様に、中間部20の軸方向に沿って内周壁23cが均一の薄い肉厚を有するとともに、平坦な底端23bを有するカップ形状に形成されている。このカップ形状は、後述する鍛造工程により、その内部空間28とほぼ同形状の円柱部を有するカウンターパンチ58に対してワークWがパンチ55により押圧されることによって当該ワークWがパンチ55の前方に押出しされて(前方押出し)形成される(
図3(B)等を参照のこと)。
【0027】
本実施形態では、中空部22に形成される内部空間27と、中空部23に形成される内部空間28とは、内径および軸方向長さが同じ寸法形状に設定されている。そのため、中間部20の軸方向ほぼ中央に中実の壁部25が位置することから、中間部20は、内部空間27,28を二つに区画する壁部25を軸方向ほぼ中央に有する円筒状になる。なお、中間部20は、例えば、軸方向長さLが200mm、外径Dが30mm、肉厚tが3mm、内部空間27,28の軸方向長さが90mm、内径が24mm、壁部25の厚さTが20mm、にそれぞれ設定されている。
【0028】
一端部30は、中間部20の一端22aに接続される円柱状部材であり、大径部31と小径部32とにより構成されている。本実施形態では、これらは段部33を介して連続して形成されている。大径部31は、中間部20の一端22aと同じ外径でありかつ同じ内径の内部空間38を備えている。大径部31の一端31aは、後述するように、中間部20の一端22aと摩擦圧接が可能になるように構成されており、これらは一本のパイプのように内部空間27と内部空間37が連通し得るように構成されている。
【0029】
即ち、大径部31は、中間部20の中空部22と同様に、一端部30の軸方向に沿って内周壁31cが均一の薄い肉厚を有するとともに、平坦な底端31bを有するカップ形状に形成されている。本実施形態では、大径部31に形成される内部空間37は、中空部22に形成される内部空間27に比べて軸方向長さが短く設定されている。
【0030】
小径部32は、大径部31よりも軸方向長さが長く、その大半が中実部35で構成されている。段部33の反対側にあたる小径部32の他端32aには内部空間38が形成されている。この内部空間38は、例えば、軽量化のために設けられるものであり、必ずしも設ける必要はない。本実施形態では、大径部31の内部空間37よりも内径が小さくかつ軸方向長さも短く設定されている。つまり、小径部32の他端32aには一端部30の軸方向に沿って厚肉の内周壁32cと平坦な底端32bを有する凹形状に形成されている。
【0031】
本実施形態では、他端部40は一端部30と同形状に構成されている。一端部30と他端部40は同じものである。そのため、後述する鍛造工程では、これらは同じ加工装置60により成形される。図面表現の便宜上、
図1および
図2においては、他端部40には一端部30と異なる符号が付してあるものの、一端部30を構成する各部の符号の番号に10を加えたものが他端部40を構成する各部の符号に対応する。そのため、他端部40の構成については説明を概ね省略する。
【0032】
大径部41の一端41aは、中間部20の他端23aと摩擦圧接が可能になるように構成されており、これらは一本のパイプのように内部空間28と内部空間47が連通し得るように構成されている。なお、
図2(B)の断面図を紙面左右反転させたものが他端部40の断面図になる。また、
図2(C)の正面図を紙面左右反転させたものが一端部30の正面図になる。したがって、
図2(C)においては、同図の符号の番号から10を引いたものが一端部30を構成する各部の符号に対応する。
【0033】
次に、本実施形態に係る中空シャフト10の製造方法を使用する加工装置50,60の構成例を
図3および
図4に基づいて説明する。これらの加工装置50,60は、いずれも鍛造工程で用いられるものである。加工装置50は、前述した中間部20を成形する場合に使用される成形装置であり、また加工装置60は、前述した一端部30や他端部40を成形する場合に使用される成形装置である。
【0034】
<加工装置50の構成>
図3(A)に示すように、加工装置50は、主に、ダイ51、パンチ55、パンチホルダ56、カウンターパンチ58、リングスノックアウト59等により構成されている。ダイ51は、内部に成形空間等52を有する金型である。本実施形態では、成形空間等52は、ダイ51の一端側51aから他端側51bに向かって、ホルダ収容部52a、段部52c、ワーク成形部52bの順に構成されている。中間部20の被成形材であるワークWは、このうちのワーク成形部52bにセットされる。
【0035】
パンチ55は、前述した中空部22の内部空間27の内径とほぼ同じ寸法の外径を有するとともに内部空間27よりも軸方向長さが長い円柱部材である。パンチ55は、その基端部55bが固定ねじ57を介してパンチホルダ56に取り付けられており、パンチホルダ56は、加圧力を加え得るプレス装置等に接続されている。
【0036】
より詳細には、パンチホルダ56は、図略のプレス装置等に接続されるプレート部56aと、パンチ55の基端部55bの周囲を包み込むように覆うスリーブ部56bとにより構成されている。ダイ51のホルダ収容部52aは、このスリーブ部56bを収容可能な内径寸法に設定されている。パンチホルダ56は、押圧方向への移動がダイ51の段部52cにより制限される。そのため、先端部55aが所定位置に到達するとパンチ55はそれ以上、押圧方向、つまり他端側51bに移動することができない。
【0037】
パンチ55の先端部55aは、パンチホルダ56を介して図略のプレス装置等から加えられる加圧力によって、ワーク成形部52bにセットされたワークWの一方側Waを押圧する。本実施形態では、ワーク成形部52bは、パンチ55の外径よりも大径の内径を有する。そのため、パンチ55の外周壁とワーク成形部52bの内周壁との間には、パンチ55を囲むように形成される周囲空間Saが形成される。
【0038】
このようなパンチ55に対向する位置でカウンターパンチ58がホルダ収容部52a内に収容されている。カウンターパンチ58は、その先端側58aがパンチ55に対向するようにダイ51の他端側51bからワーク成形部52b内に収容されており、ワーク成形部52bにセットされたワークWの他方側Wbに先端側58aが当接する。カウンターパンチ58は、前述した中空部23の内部空間28の内径とほぼ同じ寸法の外径を有するとともに内部空間28よりも軸方向長さが長い円柱部材である。
【0039】
本実施形態では、前述したように、内部空間27と内部空間28は、内径および軸方向長さが同じ寸法形状に設定されている。そのため、カウンターパンチ58は、パンチ55と同じ外径寸法を有することから、カウンターパンチ58の外周壁とワーク成形部52bの内周壁との間には、カウンターパンチ58を囲むように形成される周囲空間Sbが形成される。
【0040】
カウンターパンチ58の基端側58bには、後述するように、成形後においてワークWをダイ51の外に押し出すリングスノックアウト59が設けられている。本実施形態では、リングスノックアウト59は、カウンターパンチ58の外周を取り囲むように構成される長尺の円筒体であり、その外径はワーク成形部52bの内径よりも僅かに小径に設定されている。そのため、リングスノックアウト59は、ワーク成形部52b内においてカウンターパンチ58の周囲に形成される周囲空間Sb内に収容され得る。
【0041】
加工装置50をこのように構成することによって、ダイ51のワーク成形部52bにセットされたワークWは、次に説明する成形工程(鍛造工程)において加工されて中間部20として成形される。なお、ワークWは、例えば、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼等の鋼(鉄)や非鉄金属からなり、中実線状のコイル材を所定寸法(ワーク成形部52bに収容可能な外径および軸長)の棒状に切り出したものである。ワークWは、コイル材ではなく、バー材(棒材)として供給されるものでよい。
【0042】
<中間部20の成形工程>
図3(A)に示すように、パンチホルダ56がプレス装置等に加圧されてパンチ55がダイ51の一端側51aから他端側51bに向かって移動し始めると、ワーク成形部52bにセットされたワークWは、その一方側Waがパンチ55の先端部55aに押圧されて他端側51bに移動しようとする。しかし、ワークWの他方側Wbには固定されたカウンターパンチ58が存在することから、ワークWの他端側51bへの移動は阻止される。
【0043】
このため、
図3(B)に示すように、パンチ55が他端側51bにさらに移動することで、ワークW’は、その一方側Wa’にパンチ55の先端部55aが押圧され続けることによって当該一方側Wa’に塑性変形が生じてパンチ55の周囲空間Sa内に押し出される。つまり、一方側Wa’の一部が先端部55aの後方に存在する周囲空間Sa内に後方押出しされて円筒形状Wcを形成する。
【0044】
また、他端側51bへの移動がカウンターパンチ58により阻止されているワークW’の他方側Wb’においても、カウンターパンチ58の先端側58aに押圧され続けることによって、当該他方側Wb’に塑性変形が生じてカウンターパンチ58の周囲空間Sb内に押し出される。つまり、他方側Wb’の一部が先端側55aの前方に存在する、カウンターパンチ58の周囲空間Sb内に前方押出しされて円筒形状Wdを形成する。
【0045】
パンチ55の他端側51bへの移動(押圧方向への移動)がさらに進むことによって、パンチ55の周囲空間Sa内に押し出される円筒形状Wcはその軸長が増加し、またカウンターパンチ58の周囲空間Sb内に押し出される円筒形状Wdもその軸長が増加する。そして、
図3(C)に示すように、ダイ51の段部52cにより制限される位置までパンチホルダ56が他端側51bに移動すると、パンチ55による押圧が終了してワークW”の成形が完了する。
【0046】
これにより、パンチ55の先端部55aが当接しているワークW”の一方側Wa”が中間部20の中空部22の底端22bとして形成され、またカウンターパンチ58の先端側58aが当接しているワークW”の他方側Wb”が中間部20の中空部23の底端23bとして形成される。また、パンチ55の周囲空間Sa内に押し出されて軸長がさらに増加した円筒形状Wc’は、均一の薄い肉厚を有する内周壁22cとして形成され、カウンターパンチ58の周囲空間Sb内に押し出されて軸長がさらに増加した円筒形状Wd’は、均一の薄い肉厚を有する内周壁23cとして形成される。
【0047】
ワークW”の成形が完了すると、パンチホルダ56は、成形済みのワークW”である中間部20をダイ51から取り出す際に、当該中間部20に先端部55aが干渉しない位置までパンチ55を退避させる。これとほぼ同時に、
図3(D)に示すように、リングスノックアウト59がダイ51の一端側51aに移動することでその先端側59aが中間部20の他端23aに当接しさらなる移動により当該中間部20をダイ51から外部に押し出す。これにより、ダイ51から中間部20が取り出される。なお、このようなリングスノックアウト59の移動は、基端側59bに接続されている図略の駆動機構により行われる。
【0048】
なお、このような中間部20の成形工程は、特許請求の範囲に記載の「中間部成形工程」に相当し得るものである。
【0049】
<加工装置60の構成>
次に、一端部30や他端部40を成形する加工装置60の構成について説明する。本実施例では、前述したように、一端部30と他端部40は同形状に形成される。そのため、加工装置60は、一端部30および他端部40のいずれも成形することが可能な成形装置であるが、ここでは、これらを代表して一端部30を成形する場合を例示して説明する。
【0050】
図4(A)に示すように、加工装置60は、主に、ダイ61、パンチ65、パンチホルダ66、カウンターパンチ68、リングスノックアウト69等により構成されている。ダイ61は、内部に成形空間等62を有する金型である。本実施形態では、成形空間等62は、ダイ61の一端側61aから他端側61bに向かって、ホルダ収容部62a、段部62d、ワーク成形大径部62b、肩部62e、ワーク成形小径部62cの順に構成されている。一端部30の被成形材であるワークXは、ワーク成形大径部62bとワーク成形小径部62cの両方にセットされる。
【0051】
このように加工装置60は前述した加工装置50と構成が似ている。そのため、ここでは、加工装置50に対して構成が異なる点について主に説明し、構成が同じである点は説明を省略する。なお、加工装置60を構成する各部のうち、加工装置50と構成が同じであるものについては、各部の符号の番号から10を引いたものが加工装置50を構成する各部の符号に対応する。例えば、加工装置50のパンチホルダ56と同様に構成される加工装置60のパンチホルダには「66」が付されている。
【0052】
加工装置60は、加工装置50に比べて、ダイ61の成形空間62、カウンターパンチ68やリングスノックアウト69の形状が異なる。成形空間62の形状は、加工装置60により成形される一端部30や他端部40が段部33、43を有するために異なる。より具体的には、ワークXがセットされるワーク成形部において、当該ワークXに段部33を成形する必要から、ワーク成形大径部62bとワーク成形小径部62cの間に肩部62eが介在している点が加工装置50のワーク成形部52bと異なる。ワークXの径方向長さは、ワーク成形小径部62cの内径よりもわずかに小さく、ワーク成形大径部62bの内径よりもやや小さく設定されている。そのため、ワーク成形大径部62bにおいてはワークXの一方側Xaの周囲に隙間が形成される。
【0053】
また、カウンターパンチ68の形状は、一端部30や他端部40の他端32a,42aに形成される内部空間38,48が一端31a,41aに形成される内部空間37,47よりも内径が小さいため、径方向長さが小さく、つまり細くなっている。リングスノックアウト69の形状が異なるのは、カウンターパンチ68が細くなったことに伴うものであり、長尺の円筒体の肉厚が厚くなっている。なお、一端部30や他端部40の一端31a,41aに形成される内部空間37,47は、中間部20の一端22aに形成される内部空間27と同じ内径を有する。そのため、加工装置60のパンチ65は、加工装置50のパンチ55と同様に構成される。
【0054】
このように加工装置60を構成することによって、ダイ61のワーク成形大径部62bおよびワーク成形小径部62cにセットされたワークXは、次に説明する成形工程(鍛造工程)において加工されて一端部30や他端部40として成形される。ワークXの材質や供給形状は、ワークWと同様である。
【0055】
<一端部30の成形工程>
図4(A)に示すように、パンチホルダ66がプレス装置等に加圧されてパンチ65がダイ61の一端側61aから他端側61bに向かって移動し始めると、ワーク成形大径部62b等にセットされたワークXは、その一方側Xaがパンチ65の先端部65aに押圧されて他端側61bに移動しようとする。しかし、ワークXの他方側Xbには固定されたカウンターパンチ68が存在することから、ワークXの他端側61bへの移動は阻止される。
【0056】
このため、
図4(B)に示すように、パンチ65が他端側61bにさらに移動することで、ワークX’は、その一方側Xa’にパンチ65の先端部65aが押圧され続けることによって当該一方側Xa’に塑性変形が生じる。これにより、ワーク成形大径部62b内において形成されていた一方側Xaの周囲の隙間を、一方側Xa’の一部が埋めるとともに成形後に段部33になる段形状Xcを形成し、さらにそれらに伴い新たに形成されるパンチ65の周囲空間Pa内に一方側Xa’の一部が押し出される。つまり、一方側Xa’の一部が先端部65aの後方に存在する周囲空間Pa内に後方押出しされて円筒形状Xeを形成する。
【0057】
また、他端側61bへの移動がカウンターパンチ68により阻止されているワークX’の他方側Xb’においても、カウンターパンチ68の先端側68aに押圧され続けることによって、当該他方側Xb’に塑性変形が生じてカウンターパンチ68の周囲空間Pb内に押し出される。つまり、他方側Xb’の一部が先端側65aの前方に存在する、カウンターパンチ68の周囲空間Pb内に前方押出しされて円筒形状Xdを形成する。
【0058】
パンチ65の他端側61bへの移動(押圧方向への移動)がさらに進むことによって、パンチ65の周囲空間Pa内に押し出される円筒形状Xcはその軸長が増加する。そして、
図4(C)に示すように、所定位置までパンチホルダ66が他端側61bに移動すると、パンチ65による押圧が終了してワークX”の成形が完了する。
【0059】
これにより、パンチ65の先端部65aが当接しているワークX”の一方側Xa”が一端部30の大径部31の底端31bとして形成され、またカウンターパンチ68の先端側68aが当接しているワークX”の他方側Xb”が一端部30の小径部32の底端32bとして形成される。また、パンチ65の周囲空間Pa内に押し出されて軸長がさらに増加した円筒形状Xe’は、均一の薄い肉厚を有する内周壁31cとして形成され、カウンターパンチ68の周囲空間Pb内に押し出された円筒形状Xd’は、均一の厚い肉厚を有する内周壁32cとして形成される。
【0060】
ワークX”の成形が完了すると、パンチホルダ66は、成形済みのワークX”である一端部30をダイ61から取り出す際に、当該一端部30に先端部65aが干渉しない位置までパンチ65を退避させる。これとほぼ同時に、
図4(D)に示すように、リングスノックアウト69がダイ61の一端側61aに移動することでその先端側69aが一端部30の他端32aに当接しさらなる移動により当該一端部30をダイ61から外部に押し出す。これにより、ダイ61から一端部30が取り出される。なお、このようなリングスノックアウト69の移動は、基端側69bに接続されている図略の駆動機構により行われる。
【0061】
前述したように、加工装置60は、一端部30および他端部40のいずれも成形することが可能な成形装置である。そのため、このような一端部30の成形工程は、他端部40の成形工程でもある。なお、一端部30の成形工程は、特許請求の範囲に記載の「一端部成形工程」や「端部成形工程」に相当し、また他端部40の成形工程は、特許請求の範囲に記載の「他端部成形工程」に相当し得るものである。
【0062】
加工装置50により成形された中間部20と、加工装置60に成形された一端部30や他端部40は、次の接続工程において一体に接続される。本実施形態では、例えば、摩擦圧接により接続される。中間部20の一端22aに一端部30の一端31aを接続したり、他端23aに他端部40の一端41aを接続したりする際において、それぞれの軸を一致させる軸芯だしが容易になるためである。このような軸芯だしの容易よりも設備の簡素化等を重視する場合には、例えば、これらを溶接により接続してもよい。
【0063】
このように中空シャフト10を構成することによって、中間部20内には内部空間27,28が形成されることから、中実のシャフトに比べて中空シャフト10の重量を削減することが可能になる。例えば、
図5(A)に示すように、中間部20において、軸方向長さ(全長)L、外径D、肉厚t、壁部25の厚さTとし、かつ、単位体積あたりの重量を1に設定した場合には、当該中間部20の重量Yは次式(1)により求められる。
【0064】
Y = ((D/2)2×π×L)-((D/2)-t)2×π×(L-T) … (1)
この式(1)において、第1項は、中間部20を内部空間のない中実で構成した場合の重量Z(=(D/2)2×π×L)であり、また第2項は、内部空間27,28を中実で構成した場合の重量である。
【0065】
このため、中間部20を中実で構成した場合の重量Zに対する中間部20の重量Yの比率、つまり重量比率(%)は、(Y/Z)×100により求めることができることから、この重量比率(%)を縦軸にし、中間部20の全長Lに対する壁部25の厚さTの比率(%)(=(T/L)×100)を横軸にして、次の4つの条件(条件1~3)についてそれぞれプロットして
図5(A)に示す特性図を得た。
【0066】
[条件1](プロット●印):中間部20の全長L=200mm、外径D=30mm、肉厚t=2mm、壁部25の厚さT=0mm,10mm,20mm,60mm,100mm,200mm
[条件2](プロット×印):中間部20の全長L=200mm、外径D=30mm、肉厚t=3mm、壁部25の厚さT=0mm,10mm,20mm,60mm,100mm,200mm
[条件3](プロット■印):中間部20の全長L=200mm、外径D=30mm、肉厚t=4mm、壁部25の厚さT=0mm,10mm,20mm,60mm,100mm,200mm
なお、壁部25の厚さT=0mmは、壁部25のない全部が中空のパイプである。
【0067】
これにより、上記の条件1では、壁部25の厚さTの比率が10%以下である場合に重量比率が約25~32%になることがわかった。また、条件2では、壁部25の厚さTの比率が10%以下である場合に重量比率が約37~42%になり、条件3では、壁部25の厚さTの比率が10%以下である場合に重量比率が約47~52%になることがそれぞれ確認できた。したがって、中間部20の全長Lに対する壁部25の厚さTの比率が10%以下である場合(中間部20の軽量化を重視する場合)には、中実である場合に比べて重さをほぼ50%(52%)以下に減少可能であることが理解できる。
【0068】
また、上記の条件1~3のそれぞれにおいて本願発明者らが行った計算機シミュレーションによって中間部20の軸周りのねじり剛性を確認した。そして、そのシミュレーション結果に基づいて、中間部20の全長Lに対する壁部25の厚さTの比率(%)(=(T/L)×100)に対して、中間部20のねじり剛性の増加率(%)をそれぞれプロットしたところ、
図5(B)に示すような特性図が得られた。これにより、上記の条件1~3のいずれにおいても壁部25の厚さTの比率が10%以下である場合には、壁部25のない全部が中空のパイプである場合に比べて軸周りのねじり剛性が約2~7%増加することが確認できた。なお、「中間部20のねじり剛性の増加率」とは、壁部25のない全部が中空のパイプのねじり剛性に対する中間部20のねじり剛性の増加率(%)のことである。
【0069】
中間部20の肉厚tは、条件1(●印)<条件2(×印)<条件3(■印)の順番に厚くなることから、中間部20の肉厚tが薄いほど壁部25の影響が大きく、ねじり剛性の増加率が高まることがわかる。また、中間部20の肉厚tが厚いほど壁部25の影響が小さくなり、壁部25の存在意義が薄れてしまうことがわかる。
図5(B)から、ねじり剛性の増加率は、壁部25の厚さTの比率が50%前後になるまでは、ほぼ壁部25の厚さTに比例して増加するが、それを超えると増加割合が減少することがわかる。この増加割合の減少は、中間部20の肉厚tが厚いほど顕著に現れることが同図から理解できる。
【0070】
即ち、
図5(B)に示す特性図から、中間部20は、その内部空間27,28に壁部25を備えることによって、当該中間部20の肉厚tが薄いほど「ねじり剛性を高める効果」が得られるものの、その厚さTが当該中間部20の全長Lに対して50%前後を超えると「ねじり剛性を高める効果」が低下し始めることがわかる。そして、このような効果の低下は、中間部20の肉厚tが厚いほど顕著になることがわかった(条件3(■印))。
【0071】
これらの特性図から、中間部20の軽量化を重視する場合には、例えば、中間部20の全長Lに対する壁部25の厚さTの比率を10%以下(例えば1~10%)に設定することによって、重量比率を約25~52%に抑えることが可能になり(
図5(A)参照)、ねじり剛性の増加率を約2~7%(5%前後)に高めることが可能になる(
図5(B)参照)。
【0072】
また、中間部20の軽量化よりもねじり剛性の増加を重視する場合には、例えば、中間部20の全長Lに対する壁部25の厚さTの比率を50%前後(例えば45~55%)に設定することによって、ねじり剛性の増加率を約14~32%に高めることが可能になる(
図5(B)参照)。ただし、この場合には、重量比率が約60~76%になることから、中実のシャフトよりも約24~40%の削減にとどまる(
図5(A)参照)。
【0073】
さらに、中間部20の軽量化とねじり剛性の増加の両方を重視する場合においては、例えば、中間部20の全長Lに対する壁部25の厚さTの比率を30%前後(例えば25~35%)に設定することによって、重量比率を約45~65%(55%前後)に抑えることが可能になり(
図5(A)参照)、ねじり剛性の増加率を約7.5~18%(12%前後)に高めることが可能になる(
図5(B)参照)。
【0074】
以上説明したように、本実施形態の中空シャフト10は、中間部20、一端部30および他端部40を備える。中間部20は、内部空間27,28を二つに区画する壁部25を軸方向ほぼ中央に有する円筒状である。一端部30は、中間部20の一端22a側の内部空間27の内径と同径の内部空間37を一端31aに有するとともに、この内部空間37よりも小径の内部空間38を他端31bに有し、一端31aが中間部20の一端22aに接続される。他端部40は、中間部20の他端23a側の内部空間28の内径と同径の内部空間47を一端41aに有するとともに、この内部空間47よりも小径の内部空間48を他端41bに有し、一端41aが中間部20の他端23aに接続される。中空シャフト10は、中間部20に内部空間27,28が存在しながらもその軸方向ほぼ中央に内部空間27,28を二分する壁部25を有する。
【0075】
このような壁部25を有する中間部20は、例えば、中実線状のコイル材から切り出した棒材や丸棒等のワークWに対して加工装置50により、ワークWの一方側Waと他方側Wbにそれぞれ内部空間27,28を形成することによって成形することが可能である。また一端部30や他端部40についても、例えば、同様にコイル材から切り出した棒材や丸棒等のワークXに対して加工装置60により、ワークXの一方側Xaに内部空間37を形成し、ワークXの他方側Xbに内部空間38を形成することによって成形することが可能である。これにより、パイプ材に比べて材料コストが安価な中実線状のコイル材(棒材、丸棒)を当該中空シャフト10の被成形材にすることが可能になる。また、当該中空シャフト10は、中間部20が軸方向ほぼ中央に壁部25を有するため、このような壁部25を有しないパイプ材を絞り加工等して製造された中空シャフトに比べて、機械的な強度として周方向に対する剛性が高まる。したがって、製品コストを低減し、かつ、ねじれに対する剛性も高めることができる。
【0076】
中空シャフト10の中間部20は、加工装置50による中間部成形工程によって、同径の円柱部をそれぞれ有するパンチ55とカウンターパンチ58の間に位置するワークWに対して第1パンチを押圧することにより内部空間27,28を二つに区画する壁部25が軸方向ほぼ中央に形成される。また、中空シャフト10の一端部30や他端部40は、加工装置60による端部成形工程によって、パンチ55と同径の円柱部を有するパンチ65とこのパンチ65の円柱部よりも小径の異径円柱部を有するカウンターパンチ68との間に位置するワークXに対して第2パンチを押圧することにより、中間部20の一端22aや他端23aに接続可能な一端31a,41a、これらの一端31a,41aに内部空間37,47や、他端32a,42aに内部空間38,48を形成する。そして、接続工程では、中間部20の一端22aと一端部30の一端31aとを接続し、中間部20の他端23aと他端部40の一端41aとを接続する。したがって、製品コストを低減し、かつ、ねじれに対する剛性も高めることができる。
【0077】
なお、上述した実施形態では、中間部20として、壁部25が当該中間部20の軸方向ほぼ中央に位置する場合を例示して説明したが、本発明の中空シャフトを構成する中間部はこれに限られることはなく、中間部20の一端22aまたは他端23aのいずれかに片寄るように壁部25を位置させてもよい。例えば、中間部20内において、一端22aに近づいた位置に壁部25を設けたり、他端23aに近づいた位置に壁部25を設けたりしてもよい。
【0078】
また、上述した実施形態では、中間部20として、一端22aの中空部22と他端23aの中空部23を同じ形状で構成する場合を例示して説明したが、本発明の中空シャフトを構成する中間部はこれに限られることはなく、一端22aの中空部22と他端23aの中空部23を異なる形状で構成してもよい。例えば、一端22aよりも他端23aを大径にしたり軸方向長さを長く設定したり、また逆に一端22aよりも他端23aを小径にしたり軸方向長さを短く設定したりしてもよい。
【0079】
さらに、上述した実施形態では、中空シャフト10を自動車のドライブシャフトに適用する場合を例示して説明したが、本発明の中空シャフトはこれに限られることはなく、例えば、自動車のプロペラシャフトやモータのシャフト、航空機、船舶、ロボット等を構成する棒状部材に適用してもよい。
【0080】
なお、上述した実施形態においては、中間部20の一端22aに一端部30を接続し他端23aに他端部40を接続する構成を有する中空シャフト10を例示して説明したが、一端部30や他端部40を接続することのない中間部20を単体で使用してもよい。例えば、中間部20自体を、ドライブシャフト、プロペラシャフトやトーションバー等の棒状部材に用いてもよい。トーションバーは、棒体をその軸を中心に周方向にねじる場合に生じる反発力を利用したばね部材であり、ねじり棒、ねじりばね、ねじり棒ばね、とも呼ばれるものである。
【0081】
前述したように、中間部20は、軸方向長さL、外径D、肉厚t、壁部25の厚さ(壁厚さ)Tのうち、軸方向長さLに対する壁厚さTの比(T/L)を変動させることによってねじり剛性を制御することが可能である。そのため、例えば、トーションバーのように、中間部20が軸周りにねじれることを前提にした棒状部材として機能させる場合においては、軸方向長さLに対する壁厚さTの比(T/L)を変更することによって、ねじれ角(ねじれ変形角)を任意に設定することが可能になる。したがって、中実の棒材を用いたトーションバー等では任意のねじり角を設定することが困難な場合があっても、上述した中間部20のような構成を採用することにより、中実の棒材でトーションバー等を構成する場合に比べて任意のねじれ角(ねじれ変形角)を容易に得ることができる。
【0082】
上述した中間部20を、トーションバー等の軸周りにねじれることを前提にした棒状部材として用いる場合の構成を技術的思想の創作として把握すると、例えば「軸方向に延びる内部空間を有する棒状部材であって、前記軸方向ほぼ中央に前記内部空間を二つに区画する壁部を有する、ことを特徴とする棒状部材。」のように表現することができる。
【0083】
また、トーションバー等のように、軸周りにねじれることを前提にした棒状部材を製造する方法は「軸方向に延びる内部空間を有する棒状部材の製造方法であって、円柱部をそれぞれ有する第1パンチと第1カウンターパンチの間に位置するワークに対して前記第1パンチを押圧することにより、前記軸方向ほぼ中央に前記内部空間を二つに区画する壁部を形成する、ことを特徴とする棒状部材の製造方法。」のように表現することができる。
【0084】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、上述した具体例を様々に変形または変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。さらに、本明細書または図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つ。なお、[符号の説明]の欄における括弧内の記載は、上述した各実施形態で用いた用語と、特許請求の範囲に記載の用語との対応関係を明示し得るものである。
【符号の説明】
【0085】
10…中空シャフト
20…中間部
22,23…中空部
22a…一端(中間部の一端)
23a…他端(中間部の他端)
25…壁部
27,28…内部空間
30…一端部
31,41…大径部
31a,41a…一端(一端側)
32,42…小径部
32a,42a…他端(他端側)
33,43…段部
35,45…中実部
37,47…内部空間(端部空間)
38,48…内部空間(異径空間)
40…他端部
50,60…加工装置
51,61…ダイ
52,62…成形空間等
55…パンチ(第1パンチ)
56,66…パンチホルダ
58…カウンターパンチ(第1カウンターパンチ)
59,69…リングスノックアウト
65…パンチ(第2パンチ、第3パンチ)
68…カウンターパンチ(第2カウンターパンチ、第3カウンターパンチ)
W…ワーク(中間部ワーク)
X…ワーク(一端部ワーク、他端部ワーク、端部ワーク)