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特開2024-117665無線給電通信用構造、センサシステム、対センサ給電通信システム、サーボモータシステム、およびセンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117665
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】無線給電通信用構造、センサシステム、対センサ給電通信システム、サーボモータシステム、およびセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/02 20060101AFI20240822BHJP
   H02K 11/24 20160101ALI20240822BHJP
   H02K 11/35 20160101ALI20240822BHJP
【FI】
G01L3/02
H02K11/24
H02K11/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023881
(22)【出願日】2023-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】横浜 智明
【テーマコード(参考)】
5H611
【Fターム(参考)】
5H611AA01
5H611BB01
5H611PP07
5H611QQ08
5H611UA04
5H611UA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】メンテナンス・巻線・結線作業回数・労力を軽減でき、かつ好ましくない相互作用の発生を防止でき、発熱の低減、小型化、省スペース化も可能とする無線給電通信用構造を提供する。
【解決手段】モータ800、ホスト装置400、負荷Wにおける検出対象を検出するセンサ200からなる駆動システム900における、センサへの給電およびセンサとホスト装置の間を無線通信する構造であり、回転側トランス10Rの巻線20は一以上の接地切替え用部位25を有して二以上の巻線範囲20A、20B等に分割され、巻き数を変更する巻線変更用スイッチ手段30を備え、使用時には固定側トランス10Sを介してセンサ200側への通信データを冗長させた時間変動を有する電圧が供給され、回転側トランス10Rを介しセンサ200側からの通信データとして、巻き数の経時変化に基づくインピーダンス変化として検出可能なものがホスト装置400側へ通信される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、該回転体の上位に設けられていてこれを制御するホスト機能部と、該回転体により駆動される負荷における検出対象を検出するセンサとからなる駆動システムにおける、該センサへの給電および該センサと該ホスト機能部の間の通信を無線で行うための無線給電通信用構造であって、
該ホスト機能部側のトランスである固定側トランスならびに該センサ側のトランスである回転側トランスからなる一の回転トランスを備え、
該回転側トランスの巻線は一以上の接地切替え用部位を有することにより二以上の巻線範囲に分割されており、
該接地切替え用部位に作用して該巻線範囲に基づき巻き数を変更するための巻線変更用スイッチ手段を備えており、
使用時には、
該固定側トランスを介して、
該センサ側への通信用の通信データを冗長させた時間変動を有する電圧の供給がなされ、
一方、該回転側トランスを介して、
該センサ側からの通信データとして、
該巻き数の経時変化に基づくインピーダンス変化として検出可能なものが該ホスト機能部側へと通信されることを特徴とする、無線給電通信用構造。
【請求項2】
モータと、該モータを制御するホスト装置と、該モータにより駆動される負荷における検出対象を検出するセンサとからなる駆動システムにおける、該センサへの給電および該センサと該ホスト装置の間の通信を無線で行うための無線給電通信用構造であって、
該ホスト装置側のトランスである固定側トランスならびに該センサ側のトランスである回転側トランスからなる一の回転トランスを備え、
該回転側トランスの巻線は一以上の接地切替え用部位を有することにより二以上の巻線範囲に分割されており、
該接地切替え用部位に作用して該巻線範囲に基づき巻き数を変更するための巻線変更用スイッチ手段を備えており、
使用時には、
該固定側トランスを介して、
該センサ側への通信用の通信データを冗長させた時間変動を有する電圧の供給がなされ、
一方、該回転側トランスを介して、
該センサ側からの通信データとして、
該巻き数の経時変化に基づくインピーダンス変化として検出可能なものが該ホスト装置側へと通信されることを特徴とする、無線給電通信用構造。
【請求項3】
前記巻線変更用スイッチ手段を作動させるための制御手段を備えることを特徴とする、請求項2に記載の無線給電通信用構造。
【請求項4】
前記制御手段は前記センサに、または該センサと前記回転トランスとの間に設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の無線給電通信用構造。
【請求項5】
前記制御手段は、前記センサによる検出信号に基づいて前記巻線変更用スイッチ手段に対する作用を制御することを特徴とする、請求項4に記載の無線給電通信用構造。
【請求項6】
ステータおよびロータを備えてなり、
該ステータには前記ホスト側装置―固定側トランス間を媒介するDC/AC変換部と該固定側トランスが備えられ、
該ロータには前記回転側トランス―センサ間を媒介するAC/DC変換部と該回転側トランスが備えられていることを特徴とする、請求項2、3、4、5のいずれかに記載の無線給電通信用構造。
【請求項7】
前記DC/AC変換部―固定側トランス間には通信用の波形を生成する通信波形生成部が備えられていることを特徴とする、請求項6に記載の無線給電通信用構造。
【請求項8】
請求項6に記載の無線給電通信用構造と、該無線給電通信用構造を介して給電および前記ホスト装置との間の通信がなされるセンサとからなることを特徴とする、センサシステム。
【請求項9】
前記センサがトルクセンサであることを特徴とする、請求項8に記載のセンサシステム。
【請求項10】
請求項8に記載のセンサシステムと、該センサシステムに接続するホスト装置とからなる対センサ給電通信システムであって、該ホスト装置は、該センサシステムを構成するセンサに対しての通信データを冗長させた時間変動を有する電圧を生成する送信データ生成部と、該センサシステムを介して受信する該センサ側からの通信データに基づいて前記モータの駆動条件を演算し指令するモータ制御部とからなることを特徴とする、対センサ給電通信システム。
【請求項11】
前記センサがトルクセンサであることを特徴とする、請求項10に記載の対センサ給電通信システム。
【請求項12】
請求項10に記載の対センサ給電通信システムと、該対センサ給電通信システムのモータ制御部により制御されるモータとからなることを特徴とする、サーボモータシステム。
【請求項13】
前記ホスト装置が下記(H1)~(H3)のいずれかであることを特徴とする、請求項12に記載のサーボモータシステム。
(H1)モータコントローラ
(H2)サーボドライバ
(H3)モータコントローラおよびサーボドライバ
【請求項14】
前記対センサ給電通信システムを構成するセンサがトルクセンサであることを特徴とする、請求項13に記載のサーボモータシステム。
【請求項15】
本システムが駆動対象とする負荷がロボットアームであることを特徴とする、請求項14に記載のサーボモータシステム。
【請求項16】
請求項6に記載の無線給電通信用構造を介して給電および前記ホスト装置との間の通信がなされることを特徴とする、センサ。
【請求項17】
トルクセンサであることを特徴とする、請求項16に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線給電通信用構造、センサシステム、対センサ給電通信システム、サーボモータシステム、およびセンサに係り、特に巻線数および発熱の低減、小型化、省スペース化の可能な無線給電通信用構造等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トルクセンサはトルク検出部分と検出したトルクをデータに変換し通信するための電子制御部分が必要となり、電子制御部分に対する給電および通信のため、一般的に有線構造となる。この場合、ケーブルが障害となってトルクセンサの回転可能角度は有限角度に制限され、無限回転を要する用途には利用できない。この問題を解決するため、スリップリングを用いた手段や、電力供給用、通信用各々の巻線を有する回転トランス型の構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-118621号公報「回転部の状態検出装置、ホットローラ及び撹拌装置」
【特許文献2】特開2018-56215号公報「非接触伝送モジュール、撮像装置及びロボットハンド」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スリップリングを用いる方式では、ブラシ構造等を用いた接点による接触構造となり、摩耗等によりメンテナンスが必要となる。メンテナンスをできる限り軽減する観点から、この方式は避けたい。一方、電力供給用、通信用各々の巻線を有する回転トランスタイプとする方式では、巻線が複数種類となるため複数回の巻線作業を要し、結線作業も巻線の対数に応じて増加する。さらに、一つのトランスに複数の巻線を敷設することで各々の巻線に対し相互作用が生じることも考えられる。したがって、可能な限り少ない巻線によって電力供給と通信を実現できる方式が望ましい。
【0005】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点を踏まえ、スリップリングを用いる方式にも、電力供給用・通信用各々の巻線を有する回転トランスタイプとする方式にもよらず、メンテナンスを軽減でき、巻線・結線作業回数・労力を軽減でき、かつ各巻線に対する好ましくない相互作用の発生を防止でき、ひいては発熱の低減、小型化、省スペース化も可能とすることのできる、無線給電通信用構造を提供することである。
【0006】
なお本発明は、サーボモータシステムにおける新規な無線給電通信方式の実現を所期の課題として着想されたが、上述した特徴を有する新規な無線給電通信方式は、広く<回転体制御>における回転体に対する給電・通信手段としても適用可能である。たとえば、釣り竿における回転体・リールの制御に当り、リールにかかるトルクを検出するトルクセンサに対する給電・通信方式である。そこで本発明が解決しようとする課題は、<回転体制御>における回転体に対する給電・通信手段として、より小型化・省スペース化といった利点を高めることのできる、無線給電通信用構造を提供すること、とも言える。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は上記課題について検討した。具体的には、通信用、電力用巻線を分けず、電力用巻線にて通信も同時に実施する手段を検討した。その結果、巻線を、固定側すなわちステータ側、およびセンサ側すなわちロータ側の各々に実施して1対の回転トランスを形成するが、ここでセンサ側の巻線はスイッチにより途中で接地可能な構造とし、それによって見かけ上の巻き数を変更、調節可能な構成とすることによって解決できることを見出した。
【0008】
さらに、電力の供給については一般的な回転トランス同様、ステータ側を1次側、ロータ側を2次側として行う構成、また、通信については、ホスト側(ステータ側)からのデータは給電用正弦波へ電圧として冗長させ、センサ側(ロータ側)からのデータはセンサでの巻線数変化をインピーダンス変化としてホスト側で検出する構成にも想到した。これらの成果については、追って図1により詳説する。これらの成果に基づいて本発明の体系を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0009】
〔1〕 回転体と、該回転体の上位に設けられていてこれを制御するホスト機能部と、該回転体により駆動される負荷における検出対象を検出するセンサとからなる駆動システムにおける、該センサへの給電および該センサと該ホスト機能部の間の通信を無線で行うための無線給電通信用構造であって、
該ホスト機能部側のトランスである固定側トランスならびに該センサ側のトランスである回転側トランスからなる一の回転トランスを備え、
該回転側トランスの巻線は一以上の接地切替え用部位を有することにより二以上の巻線範囲に分割されており、
該接地切替え用部位に作用して該巻線範囲に基づき巻き数を変更するための巻線変更用スイッチ手段を備えており、
使用時には、
該固定側トランスを介して、
該センサ側への通信用の通信データを冗長させた時間変動を有する電圧の供給がなされ、
一方、該回転側トランスを介して、
該センサ側からの通信データとして、
該巻き数の経時変化に基づくインピーダンス変化として検出可能なものが該ホスト機能部側へと通信されることを特徴とする、無線給電通信用構造。
〔2〕 モータと、該モータを制御するホスト装置と、該モータにより駆動される負荷における検出対象を検出するセンサとからなる駆動システムにおける、該センサへの給電および該センサと該ホスト装置の間の通信を無線で行うための無線給電通信用構造であって、
該ホスト装置側のトランスである固定側トランスならびに該センサ側のトランスである回転側トランスからなる一の回転トランスを備え、
該回転側トランスの巻線は一以上の接地切替え用部位を有することにより二以上の巻線範囲に分割されており、
該接地切替え用部位に作用して該巻線範囲に基づき巻き数を変更するための巻線変更用スイッチ手段を備えており、
使用時には、
該固定側トランスを介して、
該センサ側への通信用の通信データを冗長させた時間変動を有する電圧の供給がなされ、
一方、該回転側トランスを介して、
該センサ側からの通信データとして、
該巻き数の経時変化に基づくインピーダンス変化として検出可能なものが該ホスト装置側へと通信されることを特徴とする、無線給電通信用構造。
【0010】
〔3〕 前記巻線変更用スイッチ手段を作動させるための制御手段を備えることを特徴とする、〔2〕に記載の無線給電通信用構造。
〔4〕 前記制御手段は前記センサに、または該センサと前記回転トランスとの間に設けられていることを特徴とする、〔3〕に記載の無線給電通信用構造。
〔5〕 前記制御手段は、前記センサによる検出信号に基づいて前記巻線変更用スイッチ手段に対する作用を制御することを特徴とする、〔4〕に記載の無線給電通信用構造。
〔6〕 ステータおよびロータを備えてなり、
該ステータには前記ホスト側装置―固定側トランス間を媒介するDC/AC変換部と該固定側トランスが備えられ、
該ロータには前記回転側トランス―センサ間を媒介するAC/DC変換部と該回転側トランスが備えられていることを特徴とする、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕のいずれかに記載の無線給電通信用構造。
〔7〕 前記DC/AC変換部―固定側トランス間には通信用の波形を生成する通信波形生成部が備えられていることを特徴とする、〔6〕に記載の無線給電通信用構造。
【0011】
〔8〕 〔6〕に記載の無線給電通信用構造と、該無線給電通信用構造を介して給電および前記ホスト装置との間の通信がなされるセンサとからなることを特徴とする、センサシステム。
〔9〕 前記センサがトルクセンサであることを特徴とする、〔8〕に記載のセンサシステム。
〔10〕 〔8〕に記載のセンサシステムと、該センサシステムに接続するホスト装置とからなる対センサ給電通信システムであって、該ホスト装置は、該センサシステムを構成するセンサに対しての通信データを冗長させた時間変動を有する電圧を生成する送信データ生成部と、該センサシステムを介して受信する該センサ側からの通信データに基づいて前記モータの駆動条件を演算し指令するモータ制御部とからなることを特徴とする、対センサ給電通信システム。
〔11〕 前記センサがトルクセンサであることを特徴とする、〔10〕に記載の対センサ給電通信システム。
〔12〕 〔10〕に記載の対センサ給電通信システムと、該対センサ給電通信システムのモータ制御部により制御されるモータとからなることを特徴とする、サーボモータシステム。
【0012】
〔13〕 前記ホスト装置が下記(H1)~(H3)のいずれかであることを特徴とする、〔12〕に記載のサーボモータシステム。
(H1)モータコントローラ
(H2)サーボドライバ
(H3)モータコントローラおよびサーボドライバ
〔14〕 前記対センサ給電通信システムを構成するセンサがトルクセンサであることを特徴とする、〔13〕に記載のサーボモータシステム。
〔15〕 本システムが駆動対象とする負荷がロボットアームであることを特徴とする、〔14〕に記載のサーボモータシステム。
〔16〕 〔6〕に記載の無線給電通信用構造を介して給電および前記ホスト装置との間の通信がなされることを特徴とする、センサ。
〔17〕 トルクセンサであることを特徴とする、〔16〕に記載のセンサ。
【発明の効果】
【0013】
本発明の無線給電通信用構造、センサシステム、対センサ給電通信システム、サーボモータシステム、およびセンサは上述のように構成されるため、これらによれば、回転体制御における回転体に対する給電・通信手段として、より小型化・省スペース化といった利点を高めることができる。
【0014】
本発明の無線給電通信用構造、センサシステム、対センサ給電通信システム、サーボモータシステム、およびセンサによればまた、スリップリングを用いる方式にも、電力供給用・通信用各々の巻線を有する回転トランスタイプとする方式にもよらず、メンテナンスを軽減でき、巻線・結線作業回数・労力を軽減でき、かつ各巻線に対する好ましくない相互作用の発生を防止でき、ひいては発熱の低減、小型化、省スペース化も図ることができる。すなわち本発明によれば、回転トランスを用いた電力供給およびデータ通信を1対の巻線のみによって行うことができ、かつ、不要なエネルギー消費を行うことなくデータ通信が可能であるため、巻線数の低減、発熱の低減が可能となり、無線給電・通信機能における小型化、省スペース化を図ることができる。
【0015】
ロボットの制御にはトルクセンサが用いられているが、回転角度が有限であることが動作・機能の制限、弊害となり得る。たとえば、アームの先端にネジ締を行うためのドライバをセットし、ネジ締めのトルク管理を実施する場合、ネジのピッチおよびネジ穴の深さによってネジを回転させる回数は可変であり、数10回転することも十分考えられる。この時、ケーブルによる給電および通信を実施した場合、ケーブルの巻き付け回数にはいずれ限界を生じ、ロボットの可動範囲へ制約を与えることとなる。
【0016】
このように、有線構造であるために従来は実現できなかったトルクセンサの無限回転を伴う用途への適用が、本発明によって可能となる。したがって、上述のような有限回転回数であるために検討ができなかった用途への活用も、本発明を用いることによって進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明無線給電通信用構造完成の基礎となった検討成果について説明するブロック図である。
図2】本発明無線給電通信用構造の基本構成を概念的に示す説明図である。
図2-2】図2に示す本発明無線給電通信用構造の基本作用を示す説明図である。
図3】本発明無線給電通信用構造における通信データ冗長方法について示す説明図である。
図4】巻線変更用スイッチ手段を作動させる制御手段を備えた本発明無線給電通信用構造の構成を概念的に示す説明図である。
図5】巻線変更用スイッチ手段を作動させる制御手段を備えた本発明無線給電通信用構造の別の構成例を概念的に示す説明図である。
図6】本発明無線給電通信用構造のステータ構成をより詳細示した概念的説明図である。
図7】本発明センサシステムの基本構成を概念的に示す説明図である。
図8】本発明対センサ給電通信システムの基本構成を概念的に示す説明図である。
図9】本発明サーボモータシステムの基本構成を概念的に示す説明図である。
図10】トルクセンサに適用した場合の本発明体系を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面により本発明を詳細に説明するが、まず上述した本発明完成の基礎となった検討成果についてより詳しく説明する。
図1は、本発明無線給電通信用構造完成の基礎となった検討成果について説明するブロック図である。図示するように本成果では、電力供給については、周波数変調(FM変調)等の手段1により司令側(1次側)からの通信データを冗長させた時間変動のある電圧を固定側トランス4に対して供給し、2次側である回転側トランス5に磁束として受け渡す。回転側トランスの2次側巻線6、7には電磁誘導により電流が発生するため、AC-DC変換器9で直流電源を得て、センサ等の負荷0の電源として活用すると同時に、変調信号を復調し、負荷0側へと受け渡す。
【0019】
一方、センサ側からの通信データは、FETやリレー等を用いた巻線変更用スイッチ8の制御を負荷0側の切り替え信号によって行い、巻き数を変動させることで、1次側から見たインピーダンスを変動させ、時間分割した離散データとして1~複数bitのデータ通信を実施する。インピーダンスは、1次側に設置した電圧計2および電流計3により電圧および電流を得て算出することができる。(Z=V/I[Ω])
【0020】
なお、インピーダンスの表現方式としては、以下の通り複数考えられる。何れも、1次側と2次側の回転トランスの形態としては1対のトランスとして示され、巻き線の時間経過による変化のみで通信を実現する。
方式1_2状態通信
2個の巻き線6、7を用いる時間分割の2状態通信である。
巻き線が巻線1(6)のみのインピーダンスを、状態1=‘0’
巻き線が巻線1(6)+巻線2(7)の合計となっているインピーダンスを、状態2=‘1’
とする。この2状態を、時間経過により切り替え、通信を実施する。この方式が、2進数を用いた最も考えやすい通信となる。
【0021】
方式2_N状態通信
図1に示した巻線6、7対数を増やしてN個の巻き線を用い、N状態の通信を行う方式である。
巻線1~巻線Nまで巻き線の対数を増やし、インピーダンス変化をN段階とする。たとえば、巻線対数=4の場合には、4状態の通信を実現できる。
方式1よりも巻き線選択回路は複雑化するが、通信効率を向上させることができる。
【0022】
以下、本発明の各ヴァリエーションの説明は、共通する要素について同一の符号を付した各図を用いて行う。また、発明の構成要素の中には複数を備え得るものもあるが、その場合、各図はその一例を例示するものである。
図2は、本発明無線給電通信用構造の基本構成を概念的に示す説明図である。また、図2-2は、図2に示す本発明無線給電通信用構造の基本作用を示す説明図である。これらに示すように本無線給電通信用構造100は、モータ800と、モータ800を制御するホスト装置400と、モータ800により駆動される負荷Wにおける検出対象を検出するセンサ200とからなる駆動システムまたはサーボモータシステム900における、センサ200への給電、およびセンサ200とホスト装置400の間の通信を無線で行うための構造である。
【0023】
そして、ホスト装置400側のトランスである固定側トランス10S、ならびにセンサ200側のトランスである回転側トランス10Rからなる一の回転トランス10を備え、回転側トランス10Rの巻線20は一以上の接地切替え用部位25を有することにより二以上の巻線範囲20A、20B、・・・に分割されており、接地切替え用部位25に作用して巻線範囲20A、20B等に基づき巻き数を変更するための巻線変更用スイッチ手段30を備えており、使用時には、固定側トランス10Sを介して、センサ200側への通信用の通信データを冗長させた時間変動を有する電圧の供給がなされ、一方、回転側トランス10Rを介して、センサ200側からの通信データとして、巻き数の経時変化に基づくインピーダンス変化として検出可能なものがホスト装置400側へと通信されることを、主たる構成とする。
【0024】
なお、図では巻線変更用スイッチ手段30はセンサ200に備えられている構成として示されているが、本発明はこの配置に限定されず、センサ200とは別に配置されている構成であってもよい。以下の各図でも同様である。
【0025】
かかる構成の本無線給電通信用構造100によれば、ホスト装置400側のトランスである固定側トランス10Sを介して、センサ200側への通信用の通信データを冗長させた時間変動を有する電圧の供給がなされる。すなわち、ホスト装置400側からセンサ200側への無線給電、およびかかる方向の通信がなされる。一方、センサ200側のトランスである回転側トランス10Rを介して、センサ200側からの通信データとして、巻き数の経時変化に基づくインピーダンス変化として検出可能なものがホスト装置400側へと通信される。すなわち、センサ200側からホスト装置400側への通信がなされる。
【0026】
本無線給電通信用構造100では、ホスト装置400側-センサ200側間の通信は、固定側トランス10Sおよび回転側トランス10Rからなる回転トランス10によりなされる無線通信である。したがって、従前の有線構造による通信におけるセンサの回転化可能角度の制限がなく、無限回転を要する用途に利用できる。しかも本発明は、回転トランスによる電力供給およびデータ通信を最低1対の巻線のみによって行うことができ、また不要なエネルギー消費を伴わずにデータ通信が可能な構成であるため、上記各文献開示技術と比較して、メンテナンスの軽減、巻線・結線作業回数・労力の軽減、各巻線に対する好ましくない相互作用の発生防止、発熱の低減、小型化、省スペース化も図ることができる。
【0027】
センサ200側からホスト装置400側への通信に関し、回転側トランス10Rの巻線20における作用を説明する。巻線変更用スイッチ手段30が巻線20の接地切替え用部位25に作用することにより、接地切替えがなされ、導通する巻線が切替えられる。すなわち、図に例示するように巻線20を構成する巻線範囲が20A、20Bの二領域に分割されている場合には、巻線変更用スイッチ手段30の接地切替え用部位25に対する作用は、接地切替え用部位25において接地する、または接地しない――の2パターンである。「接地する」切替えがなされた場合には、巻線20は巻線範囲20Aと20Bの二領域を分ける当該接地切替え用部位25にて接地され、これにより巻線20の巻き数は、巻線範囲20Aの巻き数となる。
【0028】
一方、巻線変更用スイッチ手段30によって「接地しない」切替えがなされた場合には、巻線20は巻線範囲20Aと20Bの二領域を分ける当該接地切替え用部位25にては接地されず、巻線20全体としての通常の接地がなされる。これにより巻線20の巻き数は、巻線範囲20Aと20Bを合わせた巻き数、つまり巻線20全体の巻き数となる。このようにして、本発明の巻線20における特徴的な構成に基づき、巻線変更用スイッチ手段30の作用によって、みかけ上の巻き数の変化を生じさせることができる。そして、かかる巻き数の経時変化に基づいてインピーダンス変化を得ることができ、ホスト装置400側への通信に用いることができる。
【0029】
つまり、巻線を切替えた際のインピーダンス変化を用いて2値状態(0または1)を生成し、規定した一定周期、たとえば1bit=1msecでインピーダンスの変化を生じさせることで、2値状態の通信を行うことができる。本通信を1bit=1msecの条件で8回通信することにより、8msecで8bit=1byteのデータ通信を行うことができる。このように本発明では、巻線の時間経過による変化のみで通信を実現できる。
【0030】
以上述べた図2による構成例は、時間分割した離散データとして1bitのデータ通信がなされる構成、すなわち既に述べた方式1に該当する。しかしながら本発明はこの構成に限定されず、二以上の接地切替え用部位25を有して、巻線20が三以上の巻線範囲20A、20B、・・・に分割された構成とすることも、もちろん可能である。この場合は、時間分割した離散データとして複数bitのデータ通信がなされる構成、すなわち既に述べた方式2に該当する。
【0031】
巻線変更用スイッチ手段30としては、たとえばFET等のスイッチング素子、またはリレー等の部品を好適に用いることができる。また、FET等の駆動は、センサ200側の制御信号によって行う構成とすることができる。
【0032】
以上説明した基本構成を備える本発明無線給電通信用構造100により、モータ800、これを制御するホスト装置400、およびモータ800により駆動される負荷Wにおける検出対象を検出するセンサ200からなる駆動システムまたはサーボモータシステム900において、センサ200への給電、およびセンサ200とホスト装置400の間の相互通信を無線方式で行うことができる。つまり、ホスト装置400からセンサ200への指令、センサ200からホスト装置400へのフィードバックが、無線方式でなされる。
【0033】
図3は、本発明無線給電通信用構造における通信データ冗長方法について示す説明図である。図示するように、ホスト装置400側からの通信データは、給電用正弦波へ電圧として冗長させることができる。通信データのホスト装置400での形態は図中の「信号」である。本波形はホスト装置400から送信するデータに基づき、D/A変換等を用いて基準電圧を生成したものである。
「信号」と一定周期の交流波形である「搬送波」とを掛け合わせ、「合成」波形が得られる。これが、センサ200の電源および相互通信用としてセンサ200側へ伝送される。このようにして、給電用の正弦波(搬送波)に対して振幅変調(AM)、周波数変調(FM)等により、通信データ(信号)を冗長(合成)させることができ、通信データを冗長させた時間変動のある電圧を供給することができる。
【0034】
ホスト装置400側からセンサ200側へと伝送される変調信号である通信データは、センサ200側において復調される。この時は、図3における「合成」波形から「搬送波」が除去されて、「信号」が取り出される。
【0035】
図4は、巻線変更用スイッチ手段を作動させる制御手段を備えた本発明無線給電通信用構造の構成を概念的に示す説明図である。なお本図以降の各図は、前出図2-2のように作用を示す矢印を用いた、構成・作用具有の図とする。図示するように本無線給電通信用構造100は上述した構成に加えて、巻線変更用スイッチ手段30を作動させるための制御手段40を備える構成とすることができる。本図に示すように制御手段40は、センサ200に備えられた構成とすることができる。
【0036】
したがって、かかる構成の本無線給電通信用構造100では、制御手段40により巻線変更用スイッチ手段30が作動させられる。作動させられた巻線変更用スイッチ手段30は回転トランス10Rの巻線20の接地切替え用部位25に作用して、上述の接地切替えがなされる。図示する構成例では、センサ200に備えられている制御手段40が、同じくセンサ200に備えられている巻線変更用スイッチ手段30に対して、その動作の制御を行う。
【0037】
図5は、巻線変更用スイッチ手段を作動させる制御手段を備えた本発明無線給電通信用構造の別の構成例を概念的に示す説明図である。図示するように制御手段40は、必ずしもセンサ200に備えられている構成としなくてもよく、センサ200と回転トランス10Rとの間に設けられている構成としてもよい。図4、5いずれの配置構成にせよ、制御手段40は、センサ200による検出信号に基づいて巻線変更用スイッチ手段30に対する作用を制御する。
【0038】
図6は、本発明無線給電通信用構造のステータ構成をより詳細に示した概念的説明図である。図示するように本無線給電通信用構造100はステータSおよびロータRを備えてなり、ステータSにはホスト側装置400―固定側トランス10S間を媒介するDC/AC変換部50と固定側トランス10Sが備えられ、ロータRには回転側トランス10R―センサ200間を媒介するAC/DC変換部60と回転側トランス10Rが備えられている構成とすることができる。
【0039】
かかる構成の本無線給電通信用構造100のステータSでは、ホスト側装置400―固定側トランス10S間がDC/AC変換部50によって媒介されるため、ホスト装置400から通信されるDC信号は、DC/AC変換部50において、回転トランス10における無線通信方式に適合するAC信号に変換され、最終的に固定側トランス10Sへと伝送される。また、それとは逆に、センサ200側から回転側トランス10R、固定側トランス10Sへと伝送されたAC信号は、DC/AC変換部50でDC信号へと変換され、ホスト装置400側へと伝送される。
【0040】
一方、ロータRでは、回転側トランス10R―センサ200間がAC/DC変換部60によって媒介されるため、ホスト装置400側から固定側トランス10R、回転側トランス10Rへと伝送されたAC信号は、AC/DC変換部60でDC信号へと変換され、センサ200側へと伝送される。なお、センサ200側からは巻線変更用スイッチ手段30を用いて通信が行われ、回転側トランス10Rへと伝送され、ステータS側へと伝送される。
【0041】
このように本無線給電通信用構造100を構成するステータS、ロータRのいずれにも、回転トランス10における通信形式に合うAC信号と、ホスト装置400やセンサ200における処理で用いられるDC信号とを、相互に変換する機能部が設けられ、DC信号-AC間の相互変換がなされる。
【0042】
なお、図示するようにステータSには、DC/AC変換部50―固定側トランス10S間に、通信用の波形を生成する通信波形生成部70が備えられた構成とすることができる。通信波形生成部70において、図3を用い上述した搬送波と信号が合成されて通信波形が生成される。また、図示するようにセンサ200では、その検出部DTによる検出信号に基づいて上述の制御手段40の作用がなされる。
【0043】
図7は、本発明センサシステムの基本構成を概念的に示す説明図である。図示するように、以上説明したいずれかの構成の無線給電通信用構造100と、無線給電通信用構造100を介して給電およびホスト装置400との間の通信がなされるセンサ200とからなるセンサシステム300もまた、本発明の範囲内である。センサ200としてはたとえばトルクセンサが挙げられるが、これに限定されない。モータ800により駆動される負荷Wにおける何らかの検出対象を、検出するためのセンサであれば、広くセンサ200に該当する。
【0044】
本発明センサシステム300によれば、駆動システムまたはサーボモータシステム900において、負荷Wにおける検出対象を検出するセンサ200に対する無線給電、およびホスト装置400とセンサ200との間における無線通信を、従来技術のような複雑な構成やメンテナンスを多く要する構成を用いることなく、実現することができる。
【0045】
図8は、本発明対センサ給電通信システムの基本構成を概念的に示す説明図である。図示するように本対センサ給電通信システム700は、図7を用いて上述したセンサシステム300と、センサシステム300に接続するホスト装置400とからなるシステムであって、ホスト装置400は、センサシステム300を構成するトルクセンサ等のセンサ200に対しての通信データを冗長させた時間変動を有する電圧を生成する送信データ生成部80と、センサシステム300を介して受信するセンサ200側からの通信データに基づいてモータ800の駆動条件を演算し指令するモータ制御部90とからなることを、主たる構成とする。
【0046】
すなわち本対センサ給電通信システム700では、これを構成するホスト装置400の発揮する機能・作用が重要である。ホスト装置400を構成する送信データ生成部80では、センサ200に対しての通信データを冗長させた時間変動を有する電圧が生成され、ステータSならびにロータRを主として構成される無線給電通信用構造100を介してのセンサ200への無線給電・通信用に用いられる。また、モータ制御部90では、センサシステム300を介して受信されるセンサ200側からの通信データに基づいてモータ800の駆動条件が演算され、これがモータ800に対して指令される。
【0047】
図8の対センサ給電通信システム700には、センサシステム300、および無線給電通信用構造100も同時に示されている。ここで改めて、矢印により示される各作用について要点を列挙する。ホスト装置400側からセンサ200側への作用をH→S作用、その反対方向の作用をS→H作用とする。
H→S作用1
ホスト装置400の送信データ生成部80では通信データを冗長させた時間変動を有する電圧すなわち通信データ冗長電圧がDC信号の方式で生成されて、これが無線給電通信用構造100を構成するステータSのDC/AC変換部50に送られる。
【0048】
H→S作用2
当該通信データ冗長電圧は、DC/AC変換部50においてAC信号に変換される。
H→S作用3
AC信号に変換された通信データ冗長電圧は、通信波形生成部70において処理され、無線通信用の通信波形を有する電圧が生成される。
H→S作用4
通信波形を有する電圧は、固定側トランス10Sに供され、ロータR側に備えられた回転側トランス10Rへと伝送される。
【0049】
H→S作用5
回転側トランス10Rに伝えられた通信波形を有する電圧は、AC/DC変換部60にてDC信号に変換され、センサ200側用の電源として給電され、無線給電が実現する。
H→S作用6
また、冗長されていた通信データが復号されてセンサ200側へと伝送され、ホスト装置400側からセンサ200側への無線通信が実現する。
【0050】
S→H作用1
センサ200の検出部DTにおける検出に基づき、制御手段40が巻線変更用スイッチ手段30の動作を制御する。
S→H作用2
巻線変更用スイッチ手段30はロータRの回転側トランス10R中の接地切替え用部位25に作用して、巻線20の接地切替えを行う。
【0051】
S→H作用3
巻線切替えによって変化を伴うこととなるAC信号が、回転側トランス10RからステータSの固定側トランス10Sへと無線伝送される。
【0052】
S→H作用4
ステータS側へ伝送されたAC信号は、DC/AC変換部50でDC信号に変換される。
S→H作用5
当該センサ200側からのDC信号は、ホスト装置400のセンサデータ受信部RCにて受信される。
S→H作用6
受信されたセンサ200側からのDC信号は、モータ制御部90での処理に供され、モータ制御用の信号が得られる。
【0053】
図9は、本発明サーボモータシステムの基本構成を概念的に示す説明図である。図示するように本サーボモータシステム900は、上述の対センサ給電通信システム700と、該対センサ給電通信システム700のモータ制御90部により制御されるモータ800とから構成される。
【0054】
本サーボモータシステム900によれば、負荷Wにおける検出対象を検出するセンサ200に対する無線給電、およびホスト装置400とセンサ200との間における無線通信を従来技術のような複雑な構成やメンテナンスを多く要する構成を用いることなく実現しつつ、負荷Wに対するモータ制御を行い、モータ800を駆動することができる。
【0055】
なお、本サーボモータシステム900を構成するホスト装置400としては、モータコントローラ単体、サーボドライバ単体、モータコントローラおよびサーボドライバの組合せ、いずれをも採用し得る。図ではモータコントローラ400Cおよびサーボドライバ400Dの組合せによる構成を例示している。ここで、モータコントローラ400Cには送信データ生成部80、およびセンサ200側からの信号を受信してモータ制御部90へと送るセンサデータ受信部RCが備えられ、一方、サーボドライバ400Dには、モータ制御部90が備えられている構成である。
【0056】
なお、上述の本発明無線給電通信用構造100を介して無線給電されるとともに、ホスト装置400との間において無線通信がなされるセンサ200自体もまた、本発明の範囲内である。センサ200としては、たとえばトルクセンサが挙げられるが、これに限定されない。モータ800により駆動される負荷Wにおける何らかの検出対象を、検出するためのセンサであれば、広く本発明センサ200に該当する。
【0057】
図10は、トルクセンサに適用した場合の本発明体系を示す説明図である。図中に示すように無線給電通信用構造100をP、センサ200をS、ホスト装置400をH、モータ800をM、負荷WをW、とすると、ここまで述べた本発明は、体系的には下記のように表すことができる。
無線給電通信用構造発明:P
センサシステム発明:P+S
対センサ給電通信システム発明:P+H+S
サーボモータシステム発明:P+H+S+M
センサ発明:S
【0058】
本図に示す全体構成の基礎は、図9に示したサーボモータシステム900と同じであるが、以下の通り補足説明する。
1)ホスト装置
・送信データ生成部80
生成されたトルクセンサ200の動作に関する指令がセンサ200側へ送信される。その指令には、アラームのリセット、ゼロ点のオフセット等が含まれ得る。
【0059】
2)無線給電通信用構造
・AC/DC変換部60からセンサ200への通信
ここで伝えられるホスト装置400からセンサ200側への指令としては、アラームリセットや、ゼロ点のオフセット調整が含まれ得る。
【0060】
3)トルクセンサ
・センサ200から無線給電通信用構造100への通信
ここで、センサ200側からホスト装置400側に向けてホストに向けて送信されるものとしては、 検出したトルク値、発生しているアラーム等が含まれ得る。
またここでは、センサ200側からホスト装置400側に向けて送信するデータ列に対応したスイッチ切替えが実施される。インピーダンスの大小を、デジタル信号の『1』、『0』の2値として扱い得る。
【0061】
4)ホスト装置
・センサデータ受信部RC
センサ200からの出力(トルク値、 アラーム発生状況等)が解釈され、モータ制御に使用される。
・ホスト装置400によるモータ800制御
センサ200からフィードバックされたトルク値を基にして制御がなされる。
【0062】
5)負荷
本発明システム900が駆動対象とする負荷Wの例としては、ロボットアームが含まれ得る。
【0063】
以上、回転体としてモータ800、ホスト機能部としてホスト装置400を想定した駆動システムすなわちサーボモータシステム900を中心として本発明を説明したが、上述の通り、本発明はかかる範囲に限定されない。回転体を制御する駆動システムであれば広くこれを応用することができ、当該駆動システムにおける無線給電通信機能を発揮する構造・システムとして用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の無線給電通信用構造、センサシステム等によれば、メンテナンスを軽減でき、巻線・結線作業回数・労力を軽減でき、かつ各巻線に対する好ましくない相互作用の発生を防止でき、発熱の低減、小型化、省スペース化も図ることができる。したがって、ロボット制御、サーボモータシステムの製造・利用分野を初めとして、回転体制御に関する広い分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0065】
0…センサ等の負荷
1…周波数変調(FM変調)等の手段
2…電圧計
3…電流計
4…固定側トランス
5…回転側トランス
6、7…回転側トランスの2次側巻線
8…巻線変更用スイッチ
9…AC-DC変換器
10…回転トランス
10R…回転側トランス
10S…固定側トランス
20…回転側トランスの巻線
20A、20B…巻線範囲
25…接地切替え用部位
30…巻線変更用スイッチ手段
40…制御手段
50…DC/AC変換部
60…AC/DC変換部
70…通信波形生成部
80…送信データ生成部
90…モータ制御部
100…無線給電通信用構造
200…センサ
300…センサシステム
400…ホスト装置
700…対センサ給電通信システム
800…モータ
900…駆動システムまたはサーボモータシステム
DT…検出部
R…ロータ
RC…センサデータ受信部
S…ステータ
W…負荷
図1
図2
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10